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ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破 〜世評はともかく個人的にはイマイチに思える弁(汗)

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 2011年8月26日(金)21時より、日本テレビ金曜ロードショー」にて『エヴァンゲリオン新劇場版:破』(09年)が地上波初放映記念! とカコつけて……


ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』 〜世評はともかく個人的にはイマイチに思える弁(汗)

(文・T.SATO)
(2009年8月11日執筆)


 『宇宙戦艦ヤマト』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101207/p1)、『機動戦士ガンダム』(79年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19990801/p1)に続くアニメ史の殿堂入りが確定している、14歳の少年少女が巨大ロボ乗りに選抜されてナゾの巨大生物と戦う人気作品『新世紀エヴァンゲリオン』(95年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220306/p1)の、リメイク新劇場版4部作中の第2弾。


 新劇場版の第1作目『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』(07年)は、ほぼTV版の序盤まんまでも、ある種の映画的風格のあるコンティニュイティ(時間の流れ)を絵と間で見せて、個人的には没入体験させてくれた。


 しかし、今回の『新劇場版』第2作目には私的にはちょっとノれなかった。いや、決してつまらなかったり退屈したりはしなかった。むしろソツなくキレイにまとまっていたとは思う。


 イイ歳こいて事前に過剰にヘンな期待をしてしまったワケでもない。オリジナルのTV版と大差なかろうが大幅に改変されていようが、どちらでも面白ければそれはそれで構わない。


 とはいえ、TV版や旧劇場版とは異なり、快感原則に即した気持ちのイイ『エヴァ』にするという趣旨の、庵野カントクの作品の外(笑)での発言。
 それは、「作品構成の大幅改変」の意味ではなく、『劇場版 機動戦士Z(ゼータ)ガンダム』(85年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060325/p1)のようにオーラス・終着点を「微調整」して意味合いをより前向きにしようという、そこに集約させるための展開&キャラ改変にすぎなかったのか? いやまぁそれでもイイし誠実だともいえるが。


 『新劇場版』前作ラストの予告編、


 「次第に壊れゆく物語」
 「エヴァ5号機が」
 「6号機が!」


 という、主役級メカがTV版の3機どころか大挙登場というノリから勝手に連想された、すわエヴァ戦隊でも登場して、14歳主人公少年の級友全員がエヴァ乗り適格者ならば、学級委員少女からクラスのガヤ連中まで全員をエヴァ乗りにでも大改変するのか!? とプチ妄想した筆者がバカだったのだろう(笑)。



 さて本題。話をメインたる3人の少年少女&後見人の姉御・ミサトさんにしぼって、TV版8〜19話を歯抜けでもアラスジはそのままに一挙に見せてしまう構成はウマいとも思う。


 改変で生じた構成の隙間は、営業的には鳴り物入りで喧伝された、90年代というより00年代っぽい、クールでまぁまぁ力強い系の黒眼鏡巨乳の新少女キャラ1名(真希波・マリ・イラストリアス)を代入。前宣伝に見合った活躍はしていない狂言廻しにすぎないとも思うけど……。まぁイイか(新要素がまったくのゼロでもジミだしネ)。


 あと、本作はジャンル作品で近年プチ流行のいわゆる「(時間)ループもの」として(だよね?)、TV版における出来事もメタ的・パラレルワールド的には実在したものだったらしいとしている(?)。そして、そのやり直し、よりハッピーな終着に向けてか、メインの3人とミサトさんの言動はTV版よりトゲトゲしさを減じて、プチ余裕を持たされて、よりマシな言動の応酬をしていると私的には思える(ミサトさんがTV版より冷たい対応をするようになっているという感想も一部で聞いたが、個人的には首肯しない)。


 でもそれゆえに、コレは我ながらイジワルにすぎるツッコミだとも思うが、『エヴァ』という作品独特の思春期の不安定心性に訴える毒や切羽詰った感も減じているように思えてビミョー。


 もちろん大急ぎで付け加えておくと、筆者は何もウェルメイド(よく出来た)でマイルドなエンターテイメント作品を下に見て、テーマ主義や内面描写を持った文学的な作品をハイブロウ・高尚なものとして上に置こうとしているのではない。むしろふだんは逆の志向を持つ者である。


 だが、これは極私的な感慨になるかもしれないが、『エヴァ』だけは例外なのだ。
 『エヴァ』って娯楽活劇的な意匠ももちろんよくできていたしそのことは強調したいけど、やはり純文学の伝統(笑)にも則(のっと)った思春期的心性、ひいては内向的・ネクラ・オタク・コミュニケーション弱者的な心性をえぐることで、思春期世代および特定の人格類型の人間の共感をくすぐった作品だったとも思うので。そこを削るのは、一般的なエンタメ作品の場合には商業的・大衆ウケ的にも正しいと判断するけど、『エヴァ』の場合には作品のキモを破棄するようにも思えてチョット抵抗がある(笑)。



 ところで、無口少女レイや過剰元気少女アスカが、内向的なシンジ少年のためにお弁当作りを競う求心的な展開は、まとまりもよいし主人公のキャラも立つし、気持ちのイイ大団円のための(?)改変としてならば正しい作劇だとも思う。


 が、本作の絵柄が淡白だから現実度が減じて鼻につかないけど、リアルに考えればアスカみたいな元気少女がシンジみたいなネクラで弱いコを好きになったり気が合ったりするワケもない!(彼女みたいな性格タイプは同年代の異性ではなく、ダンディな成人男子の加持(かじ)さんの方に憧れるTV版のような描写こそがさもありなんでふさわしい)


 そもそも彼女は学校という場に退屈して、ストリートとかに出逢い&高揚を求めそうなタイプにも見えるのだし……(あの大破局後の復興途上世界に不特定多数が集う繁華街などはないか?)。そーいうイジワルなツッコミへの対策として、性格のみならず苗字までをも微改変したのならば納得だが(笑)。



 あのTV版最終回も旧劇場版ラストも個人的にはキライではないし云いたいこともまぁわかるが、頭デッカチで生硬な点では買えない。しかし、「他者」(この思想界隈の専門用語が堅苦しければ、身の回りにかぎらない「人間一般」と云い換えてもイイ)は、「自己」にとっての都合のイイお人形ではなく、「衣食住」など三大基礎欲求くらいはだいたい一致しても、思想・価値観・美意識・嗜好などでは大いに異なる、いわゆる「他人」である……という「近代」的な結論自体は、個人的にはしごく真っ当なものだったとは思う。


 まぁ、日本でも400年前のドイツ30年戦争みたく新教(プロテスタント)と旧教(カトリック)で殺しあって人口が1/3に減るくらいしないと、「自己」と「他者」の意見・価値観・美意識が異なったままで、それはそれとして棚上げし、棚上げせずともスリ合わせ程度はしつつ、でも異なるがゆえの血みどろな闘争には陥ったりはしないで共存できる「公共圏」――往年のマルクス主義共産主義が唱えたように、富の公平な分配さえできていれば、それだけで人間同士の意見の相違はなくなり、精神も満たされて社会も安泰だということもアリエナイ!――をせめて構築しようという「近代」はついにやってこないのかもしれないネ!


 ……だからみんな死んでしまえばイイのに!!(笑)


 といって筆者は別に「近代」至上主義者でもないけれど(汗)。


 その伝で、旧劇場版ラストでのアスカの「気持ち悪い」発言は正しい。


 しかし、10年経(た)って思うに、それも図式的にすぎる擁護だったナとも思う。


 主観の視点の位置を変えれば、仮に思ってもストレートに口に出して(笑)、アスカにとっての「他者」であるシンジをキズつけてもイイのか? というベタな問題設定も当然浮上する。会社でもキツいカミさんもらったヤツは軒並み離婚して慰謝料払っているので、みんなも気をつけよう(笑)。


 1対1の「自己」と「他者」関係ではなく、複数の多様な「他者」が相克しあえば、教科書で習ったホッブスの云う「万人の万人に対する闘争」状態にもなる。こちらの問題設定は、東映白倉伸一郎プロデューサー&脚本家・井上敏樹ラインの平成仮面ライダーシリーズ(https://katoku99.hatenablog.com/archive/category/%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%80%E3%83%BC)に期せずして受け継がれた(!?・笑)。


 TV版の心の持ちよう(汗)でオトすラストも含めて、図式的な結論とは異なるオチにするにはドーすればイイか? 「気持ち悪い」一辺倒ではない、日常において半永久的につづく「他者」との押したり引いたり譲ったり受け止めたり流したりをテーマにするしかないとも思う。


 が、それって気持ちイイ大団円でもないよなぁ(笑)。



 色々とケチもつけたが、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』第2作目たる本作ラスト。シンジがレイを救い出すハッピーな新展開で、同時に彼らふたりが過剰に接近しすぎたがゆえに(?)、同時にサードインパクトの大悲劇をも惹起するイジワルな展開自体はけっこうスキだ(汗)。


 庵野カントクがまたもヤル気を失い卓袱台返しをしたり、「気持ちのイイ大団円」の発言自体がフェイクである可能性も含めて(笑)、『新劇場版』の続編を今後も注視していきたい。


(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.48(09年8月14日発行))


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