ウルトラマンエース最終回「明日のエースは君だ!」
ウルトラマンメビウス#45「デスレムのたくらみ」 〜帰マン客演!
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(ファミリー劇場『ウルトラマンA』放映開始記念・連動連載!)
(脚本・田口成光 監督・山際永三 特殊技術・田渕吉男)
(文・久保達也)
『帰ってきたウルトラマン』第51話(最終回)『ウルトラ5つの誓い』の後日談である。新宿で犀(サイ)超獣ザイゴンに襲われた坂田次郎少年と村野ルミ子を助けに、M78星雲に帰還したハズの新ウルトラマン=郷秀樹が帰ってきた!
過去の人気怪獣やウルトラ兄弟のゲスト出演によって、第2期ウルトラシリーズはひとつの世界であることが明確にされているが、次郎やルミ子のような市井の人々のレギュラーキャラがこうした形でのちの作品にゲスト出演することは他に例を見ないものである。
そればかりかMATのファイルの「郷隊員は宇宙恐竜ゼットンとの戦いで戦死した」との記録が美川隊員によって語られたり、『帰ってきた』第4話『必殺! 流星キック』同様に郷のお見舞いに次郎がおはぎを持ってきたりなどの徹底したこだわりが実に嬉しいものがある。もちろんラストでは星空に浮かぶ郷の幻影に向かって、誓いのひとつの通りに裸足になった(!)次郎が「ウルトラ5つの誓い」を元気良く叫ぶのであるが。
ただ『帰ってきた』の第4話と第51話は上原正三の脚本であるが、今回は田口成光によるものだ。にもかかわらず過去の設定をキチンと踏まえ、まさに正規の続編として仕上げた氏の力量は賞賛に値する。
もっとも田口氏は『帰ってきた』第29話『次郎くん怪獣にのる』で既に次郎が主役の話を書いている。郷の正体が異次元人ヤプールの使い・変身怪人アンチラ星人だと判明したにもかかわらず、郷を慕うあまりに制止を振り切り、アンチラ星人に向かって飛び出していくあたりの次郎の心理描写など、子供を主役に据えた話で俄然本領を発揮する氏ならではのものだ。もちろん『帰ってきた』のBGMも随所に流用され、世界観の統一に絶大な効果をあげている。
自ら開発したという銃器ウルトラレーザーでザイゴンを一撃で仕留めた力量をかわれ、山中を中心に郷をTACに入隊させようという提案が出されるが、手柄を横取りされて面白くない北斗はその話をしぶる。竜隊長は「過半数の意見による決定はときに過ちを犯す。TACにおいては重大な決議は全員一致が原則なのだ」と主張する。いやあ、竜隊長の発言にはいちいち説得力がある。
今回登場するザイゴンはサイがモチーフであることもあって超獣には珍しく四つ足のスタイルで猪突猛進で突っ走る。それを利用してエースは赤い旗を利用して闘牛士を演じるが、まあこういう演出を気にいらないリアル志向の人々はやっぱり多いんでしょうなきっと。
でも『ウルトラマン』第10話『謎の恐竜基地』だってエリ巻恐竜ジラースのエリ巻きをもぎとったウルトラマンがやはりジラース相手に闘牛士を演じていたし、第35話『怪獣墓場』では亡霊怪獣シーボーズが完全に擬人化された芝居を演じ、『ウルトラセブン』第19話『プロジェクト・ブルー』では宇宙帝王バド星人がプロレス風バトルで反則凶器(!)を用いたり、第41話『水中からの挑戦』ではカッパ怪獣テペトがセブンに手を合わせて謝り、第46話『ダン対セブンの決闘』ではニセウルトラセブンに翻弄されたカプセル怪獣アギラがロダンの彫刻「考える人」のポーズをとっていたりしてたのだ。
誰も語ろうとはしないけど、第1期ウルトラシリーズの特撮演出の中でもそうしたコミカルな表現は行われていたのだ。ちなみに筆者はこういうのは決して嫌いではない。いやむしろ好きですよ。だってカワイイもん(笑)。
そうした演出ばかりではなく、今回は次郎やルミ子、兵器開発研究員・梶が閉じ込められた設定のミニチュアの病室のカーテンに挟まれた窓の内部から付近で暴れるザイゴンや攻撃するタックアローが見えるという凝ったカットが数ヶ所ある。
ザイゴンが新宿や近郊のTACメディカルセンター付近で暴れるシーンの火炎の使用量もハンパではなく、前話に続き異才・田淵吉男特撮監督による広大で精密なミニチュアセット(多数のビル・特に精巧なメディカルセンター・看板・街路灯・街路樹・電柱・送電線・高架・電話ボックス・球形と円筒のガスタンク・柵・建設中のビルの鉄骨・建設中の木造建築(!)・高架の高速道路下からのアングル(平成ガメラが初じゃないので念のため)・花まで再現された草木!)の徹底的な破壊が楽しめる一編でもある。
ウルトラレーザーを構える黒革の服に身を包んだミニチュアの郷秀樹の後姿の股下からザイゴンが見える、いわゆる東映の矢島信夫特撮監督風の縦の構図のカットもカッコいい。
<こだわりコーナー>
*今回登場するTACのメディカルセンター周辺のミニチュアセットは『ウルトラセブン』第38話『勇気ある戦い』でロボット怪獣クレージーゴンが破壊しようとした病院付近のミニチュアセットと建物や構図が酷似しているが、やはりロケ地が同じなんだろうか?
*もちろん、郷秀樹(偽者だけど)が登場するシーンで、『帰ってきたウルトラマン』主題歌のイントロがかかる演出は、超絶カッコよすぎ!!
*梶研究員がまたもや今回開発した新銃器(名称不明)。弾が超獣の体内で爆発するという。北斗がザイゴンの口を狙い一定の効力を収めるが、オイシいところは郷秀樹のウルトラレーザーに持っていかれる(笑)。けれど等身大のアンチラ星人に対してとどめを刺すことで無駄には終わっていない。
*ウルトラレーザーは第13話『死刑!ウルトラ5兄弟』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060803/p1)にも登場!
*アンチラ星人のデザインモチーフは、女性の子宮か?(汗)
*今回のエースの必殺技は「ウルトラナイフ!」の掛け声とともに、チョップでザイゴンを首チョンパ。第5話『大蟻超獣対ウルトラ兄弟』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060604/p1)、第6話『変身超獣の謎を追え!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060611/p1)同様、エースの声は納屋悟朗氏ではないようだ。
*ウルトラシリーズの脚本家、金城哲夫・上原正三・佐々木守・市川森一らに比べると、後期シリーズを担当したゆえか、初期マニア型評論の悪影響もあって、書籍『帰ってきたウルトラマン大全』(02年・双葉社)などでもその評価が劣り、相変わらずステレオタイプな位置付けがなされている田口成光氏。先入観を除いて見れば、その力量は実は極めて高いのだ。
『帰ってきたウルトラマン』の隠れた名編・第15話『怪獣少年の復讐』などは、やはり田口が執筆した『ウルトラマンエース』第3話のヤプールのセリフ「子供の心が純真だと思っているのは人間だけだ!」ばりに、ストーリー展開のフェイクやプチサプライズもさることながら、70年代初頭までギリギリ日本に残っていた古典的な貧乏や、子供の内面や主体、欠損家庭で身体障害者(びっこ)でもある少年の屈折をも描き切っている――友人獲得のために発揮する特殊技能や行為もまた彼の人物像を深めた――。
このエピソードの子供描写の成功とスタッフ側への衝撃が皮切りになったからこそ、『帰ってきたウルトラマン』第25話『ふるさと地球を去る』(脚本・市川森一 監督・冨田義治)のじゃみっ子や、第33話『怪獣使いと少年』(脚本・上原正三 監督・東條昭平)の佐久間少年をはじめ、60年代には考えられないような、イジケていたりヒネたりもしている近代的内面・主体を抱えた子供像も、第2期ウルトラシリーズには登場しつづけることができたのだ、とも捉えることができるのだ。
*視聴率16.6%
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