假面特攻隊の一寸先は闇!読みにくいブログ(笑)

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バンパイヤ 〜手塚漫画の実写版!真船監督も登板!

バンパイヤ①

(1968.虫プロ・フジテレビ CS日本映画専門チャンネルで06年10月より放映開始)
(文・森川由浩)
(06年11月執筆)
 昔からバラエティ番組で「懐かしの○○」と称して、昔のドラマや映画に出ていた有名スターの“お宝映像”が取り上げられる。
 本作もその常連であった。
 『傷だらけの天使』(74)『熱中時代』(78)『相棒』(2002〜)で有名な人気俳優・水谷豊が狼に変身する『バンパイヤ』(1968年・原作 手塚治虫(てづか おさむ))が今回のお題目である。


 「お宝特番」等では、マイケル・ジャクソンの「スリラー」のはしり的な評価を受けていたのが印象的。
 モノクロ作品と言うのも災いし、1970年代に入ってからは再放送に恵まれなかった。
 そのせいか、1978年発売の本作ムック本(少年画報社刊)でのストーリーガイドはでたらめとの話を耳にした。
 平成に入り、ようやくフィルムが発掘されDVD化が成された。


 作風も1968年の時代にしては、OPの書体からして既に“前時代的”アナクロ感が強い。このアナクロ感は、モノクロームの映像にも起因するだろうが。 それとタイトルクレジットの書体もどこかクラシカル。
 モノクロームの映像は、『ウルトラQ』(66)『ミステリーゾーン』(64・米)的な“恐怖感”を誘発する作風をもたらしている。 白と黒だけがかもし出す、ツートーンの陰影が“天然色”の現実から“異世界”に引き込む。
 これがもしカラーなら、然程怖さも感じないなと思う。
 現実社会での“差別問題”がテーマの根底に描かれているのは周知の通り。つまり“差別”は人間の恐怖心を根底に持つという側面も描いている。
 主人公たちはなにかのショックで人間から、突如動物に変身する能力を持つ。その人間離れした能力故の“マイノリティ”に、現実社会で迫害される側が投影される。


 ナレーションは『仮面ライダー』(71〜73)の“おやっさん”こと小林昭二(こばやし あきじ)。
 本作と同時期に円谷プロ怪奇大作戦』(68)の町田警部として活躍、またこの頃スタートした時代劇アニメ『佐武と市 捕物控(さぶといち とりものひかえ)』(68)もナレーターはこの人。
 今のナレーターとは違い、新劇出身の単語のディティールの明確な口調が聞き易い。
 EDの映像が全編次回予告編でもあり、主題歌が流れる中“おやっさん”の名調子で次回予告が始まる。 この“おやっさん”のナレーションだけでも見所だ。


 第一話の監督は、『レインボーマン』(72)『光速エスパー』(67)等で知られる山田健と菊地靖の連名。
 以後『帰ってきたウルトラマン』(71)第31話「悪魔と天使の間に……」でその名を特撮ファンに刻印した真船禎(まふね・てい)も登板する。
 最近の『ウルトラマンメビウス』(06)第24話「復活のヤプール」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061112/p1)でもオマージュとして描かれた、あのショッキングな“魚眼レンズで捉えた光る眼差し”の真船演出の原点が、本作での演出にありそうな気がする。
 まだ一話を見ただけの感想だが、以後益々面白くなりそうである。

(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2007年号』(06年12月30日発行)『近作評EXTRA』より抜粋)


(編:かつて、『テレビ探偵団』(86〜92年・TBS)で、本作『バンパイヤ』の映像が紹介された折、その映像が真船禎監督回であったことから(たしか『テレビ探偵団』側による後付けの「製作会社・脚本・監督」のテロップが映像の下隅に挿入されていた)、真船が本作を担当していたことを、そのテのマニアが広く知ることとなった)


バンパイヤ②

日本映画専門チャンネル 火 深夜一時半)
(文・Y.AZUMA)
(07年2月執筆)
 『シルバー仮面』(71年)は帯だけど、火曜日には日本映画専門チャンネルでこのドラマとカチ合っている。
 原作は手塚治虫。1966年に少年サンデーで描いたマンガを68年にドラマ化したもの。
 実写フィルムの中にアニメーションが追加されている。「ネガ紛失のため一話のみ現存」という話が続いていたが、どうやら全話見つかったらしい。
 日曜の昼に初回放送をやっているので、真剣に見ていたら、これが意外に面白い。映像表現も凝っているのに分かり易いし、手塚治虫が道楽で始めたと考えていた番組だったと思ったけど、結構真剣に楽しめている。
 そんな中で目がいった女優さんがいた。狼に変身してしまうバンパイヤの女性革命家・岩根山ルリ子の役の嘉手納清美(かてな・きよみ)である。
 この女優さん、初期の『ザ・ガードマン』(65年)あたりで、悪事をたくらむミニスカートの女犯罪者の役で四週に一度くらい出てきていた方で、CSチャンネルサーフィンで名前を覚えた人。始めは若林映子と間違えていたのだが、これだけ何度か出てくると覚えてしまう。ウルトラファンには、『ウルトラセブン』(67年)のサロメ星人の女性といえば、記憶があるかも。
 『バンパイヤ』の中では、悲しい運命とロックに騙される、ある意味複雑で可哀想なキャラクター・岩根山ルリ子をエキゾチックな顔立ちでキッチリ演じており、意外にはまり役であった。さすがに女優さん、横浜ドリームランドでのコンパニオン役の営業スマイルも完璧であった。
 その後、私たち六十年代少年少女たちの記憶にほとんど残らなかった人だったが、覚えておく必要のある人のようだ。
 それから、数年前閉園した「横浜ドリームランド」。まだ開園前の段階からロケしていた。悪の権化・ロックの野望の結晶として作られたテーマパーク(当時この言葉ないよね)として舞台になるのだけれど、果たしてドリームランド側は脚本の中を読んで許可したのかしら。それともどうでもいいからテレビに露出したかったのか。私は後者と踏んだ。
 最後に、不気味な占い師のお婆さん、うち二人は、何とプロレタリア演劇の第一人者の原泉(編註:プロレタリア文学者の中野重治夫人)と、黒澤映画の重鎮・本間文子だった。手塚治虫先生も妙なところで妙なこり方をするもんだ。

(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2007年冬号』(07年2月11日発行)『近作評EXTRA』より抜粋)


妖怪大戦争』05年版記事に、オタク第1世代のY.AZUMA氏による評を追加!

 http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060312/p1


バンパイヤ ~VAMPIRE~ DVD-BOX(2002)