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ウルトラマンエース39話「セブンの命! エースの命!」 〜新兵器シルバーシャーク!

ファミリー劇場ウルトラマンA』放映・連動連載!)


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(脚本・田口成光 監督・山際永三 特殊技術・高野宏一)
(文・久保達也)
 正月を前にしたある日、北斗から少し遅目のクリスマスプレゼントをもらったダン少年は、以前死んだはずの叔父が今日帰ってくるんだと嬉しそうに北斗に告げる。
 マンションの階段手すりから転落した子供を北斗とともに間一髪で助けた男こそ、ダンの叔父である梅津三郎であった。


 一方、TAC(タック)は新兵器シルバーシャーク(ネーミングのセンスが光る!)開発の警護のため、警戒を強化する。
 が、特殊車両タックパンサーで夜間パトロール中の山中と美川が、謎の敵から車両妨害を受けた末に銃撃を受ける。


 銃声を聞きつけた北斗と今野も加わって、山中で激しい銃撃戦が繰り広げられる。


 こんな新兵器破壊やTAC基地破壊を狙う侵略者との攻防戦は、本作では第3話『燃えろ! 超獣地獄』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060521/p1)、第6話『変身超獣の謎を追え!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060611/p1)、第11話『超獣は10人の女?』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060731/p1)、第17話『怪談 ほたるケ原の鬼女(きじょ)』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060904/p1)、第22話『復讐鬼ヤプール』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061010/p1)、第25話『ピラミッドは超獣の巣だ!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061021/p1)、第32話『ウルトラの星に祈りをこめて』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061210/p1)など頻繁に見られ、他のウルトラシリーズとは異彩を放つところである。
 これは当然アクション面の強化となり、スリルも加わって見ごたえのある本編場面の仕上がりとなっている。


 敵が落とした腕輪から正体がすぐに梅津三郎であることが北斗によって判明してしまい(笑)、リアル志向の人々なんかは「侵略者がそんなわかりやすい目印を身につけるか!」などと批判するであろうが、『仮面ライダー』(71年)第92話『凶悪! にせ仮面ライダー』なんかもにせ仮面ライダー1号のマフラーや手袋・ブーツが黄色なのに誰もニセモノであることに気がつかない(爆)わけで、両作品ともそんな重箱の隅をつついているヒマがないほど見せ場連続の娯楽色重視の作品なのである。


 一方で竜隊長と吉村がシルバーシャークジープを使って公道で輸送するというリアリティ溢れるディテールも見られ、どうせリアル志向にこだわるならこういう部分にこそ目を向けるべきであろう。


 また今回はシルバーシャーク開発中の秘密研究所を警護するため、本部を離れた竜隊長に代わって山中が指揮をとり、平成ウルトラ三部作(96〜98年)や『ウルトラマンコスモス』(01年)で慣例となった副隊長的役割を果たしており、TACの統率力の高さを浮き彫りにしている。
 次作『ウルトラマンタロウ』(73年・(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071202/p1)に登場する防衛組織・ZAT(ザット)の荒垣副隊長同様、実はこれらミリタリー的魅力の一端は第2期ウルトラが先駆けであることを忘れてはならないだろう。


 北斗とダン少年が住むアパートで早朝に待ち伏せしていた北斗は、脚をひきずって外出してきた梅津三郎を尋問。
 当然シラを切るが、傷跡を指摘されたことで逃走する。
 貨物列車の車両場での攻防のあと、駆けつけたTAC隊員たちに挟み撃ちにあった三郎は宇宙人の本性を現し(いかにも凶悪なメイクもそうだが、ヘアスタイルまで豹変!)、火炎超獣ファイヤーモンスを出現させる。


 30分もの後半Bパート冒頭で、北斗はエースに早くも変身!
 本作に登場する超獣は火炎攻撃を武器にする奴が目立つが、このファイヤーモンスは三郎の正体である火炎人ファイヤー星人に「炎の剣」を授けられ、それを振り回してエースに迫る!
 ただでさえファイヤーモンスの着ぐるみは口バシがやたらと出っぱっていて火が燃え移らないかと心配になるが、攻防の応酬の果てに、剣がエースの右肩に当たったり(アクデントではなく演出だと思われる)、エースの必殺技・メタリウム光線を剣で受けてかわしてしまったり、最後はなんとファイヤーモンスは火がついたままの剣をエースの胸に突き刺してしまう!
 エースのカラータイマーの音も途切れ途切れとなっていく。


 まさに命がけであるが、ここまでして我々を魅了しようとする高野宏一特撮監督をはじめとするスタッフの熱意・アクション演出のセンスには敬服するばかりである。


 そして倒れたエースのもとにウルトラセブンが駆けつける!
 当時小学館の学習雑誌では「レッド族」という武族階級の熱血感溢れるキャラとして扱われていただけに、この回へのゲスト出演はまさにセブンが適役だったのだ。
 だがセブンは「ひとりで生きていくのはつらいことだ。だがエース、負けてはならない。命の炎を燃やすのだ!」とのメッセージを残すのみであり、新たな技を与えたり、エースと共闘するわけでもなく、即座にウルトラの星へと去ってしまう。エースの身体に手をあてているので、エネルギーを与えているのかもしれないが。
 しかも、現実での出来事なのか、エース(北斗)の夢なのかもわからない幻想的な演出がなされている(今風に云うならば、魂だけを飛ばして精神世界で遭遇しているのだろうか? それはそれでカッコいいが)。
 まあこれには正直筆者としても不満がないわけではないのだが、セブンの活躍が描かれなかったのにはちゃんとわけがある。


 北斗はTAC隊員たちが見守る中、ダンの呼びかけで病室で目覚めるが、再度、ファイヤーモンスが出現。隊員たちは出撃し、北斗もあとを追う! TACと超獣との大激闘! 北斗はエースに変身するものの再びピンチに陥る。
 が、開発が完了して輸送途中であったTACの新兵器・シルバーシャークの2連装の砲口からのビームがなんとファイヤーモンスを木っ端微塵に粉砕してしまうのである!
 全編に渡ってTACに活躍の場を与え、最後までその魅力を強調することにより、ゲストであるセブンにおいしいところをさらわせないこんなやり方はある意味正解かもしれない。


 そして巨大化したファイヤー星人がやはり振り回す炎の剣に対し、エースは自分の足元に当たってショートした送電線の鉄塔を剣の代わりにしてこれに対抗(第8話『太陽の命 エースの命』((http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060624/p1)や第25話『ピラミッドは超獣の巣だ!』で使用したエースブレード(剣)についてはこの際、忘れておこう・笑)。
 『仮面ライダー』初作ではライダーとショッカー戦闘員の格闘に大方のイメージとは異なり実は既に敵味方の剣劇が頻繁に見られていたのだが、ウルトラではこれが初であり、特撮面でも本編同様に魅力溢れるアクションが展開。エースはファイヤー星人から奪い取った剣をファイヤー星人の頭部に突き刺し(やっぱり火がついたまま!)、メタリウム光線で吹き飛ばした!


 勝利したエースはなんと逆立ちとバック転を披露。
 これは冒頭で逆立ちができないことを近所の子供たちにからかわれたダン(その中の果物屋の息子が逆立ちどころかバック転まで披露していたのだ)に対するエースの励ましのエールである。セブンがエースに「負けてはいけない」とのメッセージを送ったように。


 夕焼けに染まる川岸で、子供たちにせかされたダンは立派に逆立ちができるようになった。
 「ダンが逆立ちできたら店のミカンを全部やる」と豪語していた果物屋の息子はジャンパーから手持ちの大量のミカンを全部渡し、「これで勘弁してくれ」と逃げてしまう(笑)。
 それを子供たちにひとつずつ分け、北斗と梅津香代子とともにダンがミカンを食べるという爽やかなラストシーンも印象的。


 北斗が「来年も頑張るぞ!」と締めくくるのをはじめ、香代子とダン姉弟の部屋の正月飾りや叔父の三郎に「正月は一緒に過ごそうよ」とダンがせがんだりなど、全編アクション面を強化した作品ながら放映時(72年12月29日放映)の季節感をもキチンと押さえている点も好感が持てる。



<こだわりコーナー>
*全編に渡って炎が強調され、まさに「燃える」展開となったこの回が放映された約十日後の73年1月7日、円谷プロ製作の『ファイヤーマン』がスタートしているが、まさかこの回はこれの番宣だったのか?(笑)
*セブンの声は多分前述の『仮面ライダー』第92話でにせ仮面ライダー1号を演じていた池水通洋(いけみず・みちひろ)であろうか? 氏は『仮面ライダー』初作や『変身忍者 嵐』(72年)の初期話数で変身後のヒーローの声を演じており、第2期ウルトラでゲスト出演するウルトラ兄弟の声ももっと演じてほしかった。
 それにしても前回のウルトラの父に続いて今回がセブンのゲスト出演……05年現在(執筆時点)放映中の『ウルトラマンマックス』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060311/p1)で本当にウルトラ兄弟共演やんないの?


*その『仮面ライダー』にせ仮面ライダー編(第92〜94話)や、『アイアンキング』(72年)第12話『東京非常事態宣言』〜第13話『地下要塞攻撃命令』、『サンダーマスク』(72年)第12話『残酷! サンダーマスク死刑』〜第13話『はるかなる銀河の果て』など、当時の年末に放映された変身ヒーロー作品ではヒーローの大ピンチを描いたり、前後編を製作したりとますます過熱する「変身ブーム」の渦中において、競合作品の中で勝ち残ろうとせんと様々な工夫を凝らした作品が目立った。そして「変身ブーム」は翌73年へと続き、新たな局面を迎えるのである。


*新兵器シルバーシャークは第45話『大ピンチ! エースを救え!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070310/p1)にも登場する。
 ちなみに第44話『節分怪談! 光る豆』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070304/p1)には新兵器ゴールデンホークが登場、ネーミングルールが統一されている。
 第17話『怪談 ほたるケ原の鬼女』のV7ミサイルや第25話『ピラミッドは超獣の巣だ!』のV9ミサイルなどの例もある。
 第10話『決戦! エース対郷秀樹』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060709/p1)でニセ郷秀樹ことアンチラ星人が持参したオーバーテクノロジーの銃器・ウルトラレーザーは、第13話『死刑! ウルトラ5兄弟』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060803/p1)では戦闘機タックアローの機首に搭載され超獣バラバ攻撃に使用されている。
 長らく偏見にさらされてきた第2期ウルトラ低評価による弊害で、こうしたマニアックな試みは特撮評論同人界などの先鋭的な場所では80年代から了解されてはいたものの、一般のマニア層には公平・正当に認識されて評価の光が当たることが少なかった。本項にて改めて『A』のミリタリックな魅力や試みを強く主張しておきたい。


*全編アクションの一大娯楽活劇巨編となった本話だが、病室で目覚めた北斗が、梅津三郎の正体が宇宙人であることを伝えたか? と山中に聞いて否と確認した上で、真相を梅津姉弟に伝えるシーン。
 唯一の肉親の正体をどうしても信じられないという姉弟の衝撃。彼らの申し出で仕方なく戦場まで連れていく件(くだ)りなどポイント的な点描ではあるものの、そこは70年代前半の第2期ウルトラ作品らしく例え少量でもドラマ面ではピリリとスパイスを効かせている。


*ラスト、エースはなんと逆立ちとバック転をダン少年に披露する。
 正義の味方で多くの人々のため、地球の平和のために戦うはずのエースが、一介の知り合いの少年のためだけに逆立ちとバック転をするなんて公私混同だ! ダン少年もエースを私物化している! と潔癖なマニアやマニア予備軍の子供は不快に思うかもしれない。
 が、本当に大の大人であればエースがひとりの少年に一瞬のサービスをしてあげたくらいで、いちいち目くじらを立てたりはしない。逆に話のわかる愛嬌もあるヒーローだとポイントもあがるくらいだろう。だから許してあげなさい(笑)。


(後日付記:一少年にバック転を披露するウルトラマンエースというシチュエーションは、後年の映画『ウルトラマンメビウスウルトラ兄弟』(06年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070128/p1)において、一少年にVサインを披露する約束を守るウルトラマンメビウスという図に踏襲された!)


*特撮同人誌『夢倶楽部VOL.8 輝け!ウルトラマンエース』(94年12月25日発行)によれば、ダン少年の叔父・梅津三郎を演じた片岡五郎は、円谷プロの『戦え! マイティジャック』(68年)最終回の新隊員役や、同じく円谷プロの『電光超人グリッドマン』(93年)にも出演しているとのこと。


*視聴率19.3%


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2007年号』(06年12月30日発行)『ウルトラマンA』再評価・全話評大特集より抜粋)


(編:本話の2連装の砲口を持つビーム兵器シルバーシャークの後継発展兵器かあるいは往年の戦歴にあやかった名称のみの別系列兵器かは知らないが、はるか後年の『ウルトラマンメビウス』(06年)#16「宇宙の剣豪」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060928/p1)にシルバーシャークGという大型レーザー兵器が登場することになろうとは!(怪獣要撃衛星と地上基地それぞれに配備されていて、しかも同じく2連装の砲口!))


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