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ウルトラマンエース17話「怪談 ほたるケ原の鬼女」 〜真船演出! #23のプロト!


「ウルトラマンエース」総論
「ウルトラマンA 再評価・全話評!」 〜全記事見出し一覧

#17「夏の怪奇シリーズ 怪談 ほたるケ原の鬼女」

(脚本・上原正三 監督・真船禎 特殊技術・高野宏一)
ファミリー劇場ウルトラマンA』放映・連動連載!)
(文・久保達也)


 TACが開発した超獣攻撃用大型ミサイルV7(正式名称はタックブイセブンか?)を破壊するためにヤプールは大蛍超獣ホタルンガを派遣。
 毎晩午前2時になるとほたるケ原バイパスに凶器を持った白装束姿の般若(はんにゃ)の面の鬼女が現れては蛍(ほたる)の幻影で交通事故を誘発し、被害者は蛍サイズの超獣ホタルンガの幼生の餌にされてしまう。


 ずっと忘れていたのだが、この『夏の怪奇シリーズ』に登場する超獣は皆人を食らう。『怪奇シリーズ』と銘打たれている割にはあまり恐くないと評されることが多いが、従来のウルトラ怪獣とは性質を異にしたこれらの超獣が登場するだけでも十分に怪奇性に満ちているといえるのではないだろうか
 (次作『ウルトラマンタロウ』(73年)では明朗な作風の一方で、怪奇性を増すために怪獣に人を捕食する属性を設けたことの原点ともいえる)。
 ちなみにホタルンガの餌にされた人間たちは全て白骨死体で発見される。今野隊員は「超獣はいいんだけどガイコツは……」と悲鳴をあげるが、これには筆者もまったく同意見である。


 5年前の交通事故で母を失ったことから車を憎み、ショックから歩行能力を失った少女・民子の心を利用してヤプールは彼女を鬼女に仕立てあげる。
 第4話『3億年超獣出現!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060528/p1)で脚本家・市川森一(いちかわ・しんいち)が描いた、人間の欲望や執念を利用してヤプールが超獣を作り出すという設定は他の脚本家が使ってはいないなどとの俗説もあるが、今回はうまく踏襲されている。


 元看護婦だった夕子と車椅子の少女との心の交流が本当の主題であり、『怪奇シリーズ』としての期待から観るといささか拍子抜けする感もあるだろうが、「女の子にも好かれるものを」との狙いがあったと当時、円谷プロに所属していた熊谷健プロデューサーが回想する(05年7月25日発行講談社『KODANSHA Official File Magazine ULTRAMAN VOL.7 ウルトラマンタロウウルトラマンレオウルトラマン80』(ISBN:4063671763)のインタビューより)ように、あまりに怪奇性を強調すればやはりある程度は存在する女子児童の視聴者を遠ざけることになりかねないのではなかろうか。


 車椅子を押しながら夕子が少女とともに蛍を主題にした


 「♪ ホ〜タルさんの嫁入りは〜、油もいらず〜、お提灯もいらず〜、お尻の先でピッカリピッカリ、飛〜んでお〜いで」


 なる童謡(曲名不明)を口ずさんだり、ラストシーンで本当の姉妹のように草木の中で遊ぶ描写は実に微笑ましく、少女が歩けるようになる場面なんかは『アルプスの少女ハイジ』(74年)の終盤で同じく車椅子の少女・クララが歩けるようになった場面を連想した。


 また優しいお姉さん的キャラの美川隊員がお守りとして強力なガスを詰めたペンダントを夕子に手渡したりするのも女子児童を意識した演出ではないかと思う
 (美川隊員が爆弾の専門家であり第3〜5話においてブローチなどに爆弾を内蔵させていた描写の変奏でもある)。


 夕子が単独で主役を張った通常回は意外にもこの回くらいしか存在せず(サブメインとして大活躍する回なら第11話『超獣は10人の女?』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060731/p1)が相当する)、いつもは媚びていないクールビューティーな彼女が少女に爽やかな笑顔をたくさん見せてくれたり、かと思いきやわざと手を離して、ゆるい山道で車椅子を滑落させて少女が本当に立ち上がれないのかを試す厳しさや、少女に大声で一喝を浴びせてヤプールの催眠を解いてみせる凛々しさといった、やさしいだけではない二面性をも見せたり(夕子演じる星光子の凛とした清潔感あるキャラクターにも合っている)、怪奇性云々以前に貴重な回ではないかと思うのだが。


 とはいえ、鬼女が逃げた先で深夜にも関わらず自宅の庭先にいる民子を夕子が発見、ひとりで留守をする少女を心配して警護のために彼女の家に宿泊したり、二晩目には寝室で就眠中にむらがる蛍の魔力にうなされて、それに気付いて心配した少女がいつの間に般若面の鬼女に変わり夕子は首を絞められて苦悶するなど、映像派の鬼才・真船禎(まふね・ていorただし)監督の映像美もあふれた夕子への美しい演出と、不気味な曲調に歌い替えた先の童謡を劇伴とした幽玄なる怪奇な映像演出も優れている。


 なぜか姿を見せない民子の母の捜査を今野と吉村隊員に命じつつ、TACの竜隊長は怪死事件が続発したほたるケ原バイパスを通行してV7の輸送計画の決行を決定する。
 本話脚本の上原正三がメインライターを務めた初期『戦隊』シリーズでもよく見られた輸送途上の重要アイテムや要人の警護をも連想させる。同時期放映の『人造人間キカイダー』(72年)第18話『クロカメレオン 幻の大強奪作戦』でも原子ウラトニウム輸送隊を悪の組織ダークが襲撃。警官隊と激しい銃撃戦が演じられるが、こんなスパイアクション的な攻防戦が描かれているのも魅力的であり、非現実的な超兵器でも現用車両の大型トラックを使用して公道で輸送するのには地に足のついたリアリティが感じられる。


 また『ウルトラ』シリーズを支えた円谷プロの高野宏一特撮監督が『A』に初登板。ナイトシーンの特撮を見せてくれた。大蛍超獣ホタルンガもマイナーな怪獣なのだろうが、昆虫怪獣らしいスマートな三角形体型に青黒い彩色と羽に相当する斜め下に突き出た長い甲羅も併せてけっこうカッコいいと思うゾ。夕子と民子を閉じ込めた尻尾の底部が内部から青緑色に光って透けて見える造形ギミックもナイス。
 その間、本編部分も青緑色の照明で統一されていて、特撮班と本編班の連携もできている。
 ミニチュア特撮では、トラックのアルミ(?)の荷台の天井が開扉しカタパルトが傾斜して、V7が超獣に狙いをつける。ここぞとばかりにTACはV7ミサイルを超獣に命中させて弱ったところを久々にエースが披露したメタリウム光線で撃破!



<こだわりコーナー>
*ほたるケ原バイパスは、TAC兵器工場(霞峠工場)とTAC本部をつなぐ道路でもあった。ゆえに連続交通事故・怪死事件を、警察ではなくTAC直々の調査とするあたり、展開の言い訳がうまくいっている(梶研究員がほたるケ「原」ではなくほたるケ「丘」バイパスと云っているセリフもあるが凡ミスだろう・笑)。


*山間の大きな道路のトンネルの出入口の上にあるトンネル名の碑には、「TAC SR−7(改行)KASUMITOGE CENTER」なる碑がかぶせられていて、リアリティを増している。監督なり本編美術班のこだわりには拍手。でも「SR」が「シークレット・ロード」の略ならば「SL」じゃなくっちゃ(笑)。あるいは「シークレット・ルート」の略なのかな。
 ちなみに同じく上原正三脚本の第11話『超獣は10人の女?』で登場した地下高速道のシークレット・ロードはNo.3であった。
*V7計画(=V7ミサイル輸送計画)の陣容は、ジープ・TACパンサー・トラック2台・普通車1台の車列だ。威風堂々とした行進の演出が施されていた。冒頭では交通事故で横転して窓ガラスも割れた自動車も登場するし、同時代の他社作品や後年の作品と比べて、本編部分もこの時期の『ウルトラ』は金をかけているとつくづく感心。
*第25話『ピラミッドは超獣の巣だ!』には対超獣用兵器として「V7」の後継発展兵器とおぼしき「V9」が登場しており、ちゃんと世界観が統一されている。


*車椅子の少女・民子の自宅は、暗い和風の大きな旧家であり、深夜の障子に映る影絵演出や、部屋の隅の鴨居の上や屋根の上に鬼女が潜むのにはもってこいのロケーションでもあった。
上原正三脚本作品や原作担当漫画で民子といえば、『宇宙刑事ギャバン』(82年)の母親・一乗寺民子に、『てれびくん』で連載されたカルトヒロイン漫画『銀河の女王スーパーレディ』(78年)の母親・流星民子。実は由緒正しき名前なのだ。


*今回は梶研究員も輸送作戦に参画して同行。超獣出現に際して他のTAC隊員たちと戦闘に参加し、特殊な銃器で応戦する勇ましさを見せている。
*鬼女に首を絞められた夕子が「星児さーーん!」と心の中で叫ぶと、聞こえるはずもない民家の外で周辺を見張っていた北斗が察知! 作品の骨格・基本設定に関わるふたりのロマンチック描写も忘れてはいない。
*Aパート・クロージングの夕子と民子を遠くで微笑み見守る北斗のアップだけは、演出と演技の両者がうまくいっていないような気もするが、あえて言挙げしてケナしたりするような愛のない行為は取らずに、『A』ファンならば生暖かく見守ってスルーしようよ(笑)。


*子供でさえも例外ではない人間の怨念や、夕子の優しさと厳しさの心理描写、それに映像美あふれるナイトシーンの怪奇演出……。勘の良い読者はお気付きの通り、『ウルトラ』シリーズベスト10入りは必至の真船禎が脚本&監督を務めた『A』の大傑作、第23話『逆転! ゾフィ只今参上』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061012/p1)・第24話『見よ! 真夜中の大変身』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061015/p1)は、本話がそのプロトタイプであったのだともいえるのだ。DVD『ウルトラマンA』Vol.6(asin:B00024JJHO)の解説書でも、真船は第23・24話についてこう語る。


 「17話と18話をやらせてもらったから(中略)引き金になったんだと思いますね」「愛とか、怨念とか、そういうメタフィジカル(編註:形而上(けいじじょう))みたいな部分ていうのをうんと強調して、そしてドラマにすることができるんだったら、すごく面白いと。しかも社会性もある。これだけ人間の事を描けるんだったら、僕が(脚本を)書いてみてもいいんじゃないかと思って」


*視聴率14.7%


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2006年号』(05年12月30日発行)『ウルトラマンA』再評価・全話評大特集より抜粋)


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