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ウルトラマンエース33話「あの気球船を撃て!」 〜最終回の着想はここに!?

ファミリー劇場ウルトラマンA』放映・連動連載!)


「ウルトラマンエース」総論
「ウルトラマンA 再評価・全話評!」 〜全記事見出し一覧


(脚本・石堂淑朗 監督・筧正典 特殊技術・佐川和夫)
(文・久保達也)
 ウルトラマンエースのお面をかぶり、上級生にいじめられていた子供たちを助けるなどしてすっかりエース気取りのだいすけちゃんとダン少年は、空き地に気球が舞い降りてくるのを目撃する。
 気球を操縦するヒッピー(70年代前半の若者風俗)風の若者たちに誘われ、空き地に集まってきた子供たちは気球に乗って空中散歩を楽しむ。
 気球に乗って帰ってきた子供たちはナゼかすっかりおとなしくなって大人の云うことを素直に聞くようになり、だいすけちゃんも勉強に励むようになった。だが実は子供たちは謎の気球にエネルギーを吸い取られて子供らしい覇気を失い、老人同様と化していたのだ!


 未来を担う子供たちが狙われるのは第23話『逆転! ゾフィ只今参上』(脚本&監督・真船禎)(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061012/p1)に通じるものであり、エースによって気球超獣バッドバアロンから救い出された子供たちが風船(!)を手に空から舞い戻ってくる*1イメージまで共通している。
 気球船に乗った子供が素直になるという噂を聞いた母親たちが「ぜひ我が子を気球に」と要望したために全国各地に気球が派遣され、昼夜問わずに運行されるようになるあたりが現実感を漂わせていて絶品である。


 自分の子供を先に乗せようとする母親たちが小競り合いをしたり、「気球! 気球! 気球!」などと書かれたプラカードを手に母親たちが行進する(生活に余裕が出てきた70年代は市民運動が盛んに行われ、主婦も積極的に参加した)などの描写があまりにリアルで笑えてしまう。
 ましてや気球の正体が超獣であることが判明したにもかかわらず、子供たちが気球に乗るのを止めようとしたTACを追い帰そうとする母親たちを見ていると、超獣の子供を育てる母親が登場する第24話『見よ! 真夜中の大変身』(脚本・平野一夫&真船偵 監督・真船偵)(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061015/p1)をも思わせ、近年親の資格のない親が激増しているという調査報告とも合わせて普遍のテーマが扱われているなと思ったりもする。自分のしつけを棚にあげて学校の責任を追求するのと同様、子供を気球に教育させてどうすんだ?(笑)


 子供を乗せた気球を攻撃できないTACは気球を操縦する若者を倒す方法を画策。ダンに白羽の矢が立つ。普段は大きなことばかり口にしているダンが珍しく「こわいよ」などと不安げな表情を見せているのが印象的である。
 オチとしては再びエースになりきっただいすけちゃんが元気に遊び回る姿を描いており、子供たちの心の隙間を描いた作品が多かった第2期ウルトラシリーズではあるが、「やはり子供は元気なのが一番!」というよくある結論に落ち着いている。


 ただ真っ先に気球に乗ろうと駆け出しただいすけちゃん(彼は一方でいじめられっ子を救った子でもあるのだが)によって女の子が転倒した際、ダンが「ちぇっ、女の子をこかして助けようともしないクセに、なにがウルトラマンエースだ!」と非難しており、多面的であったり人間としての大事な部分も忘れていないところがよい。
 また、ウルトラマンのお面を付けた少年という設定で賢明な読者ならピンと来るだろう。こうした視点は第52話(最終回)『明日(あす)のエースは君だ!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070429/p1)において、エースが子供たちに贈る最後のメッセージへと見事に昇華を遂げているのである。



<こだわりコーナー>
*謎の気球を最初にキャッチした際、北斗と吉村が調査に向かうが、終始気球のことを怪しむ発言をする吉村
 (第5話『大蟻超獣対ウルトラ兄弟』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060604/p1)でも他のTAC隊員たちは怪事件を軽視したのに、吉村のみ不審の目を向けていたキャラ設定をきちんと踏襲している。石堂はよく他人の脚本や設定を読まないと豪語して、それを真に受けているマニアも多いが、本心というより偽悪・韜晦としての物言いの側面も強いだろう〜その1。その2は第38話『復活! ウルトラの父』評(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070121/p1)にて・笑)。


 しかしそれに対して北斗は「なあんだ、ただの気球じゃないか」と判断し、吉村の云うことに対してまるでうわの空で「楽しそうだなあ」などと子供時代の思い出話を長々と始めてしまう。
 しかもだいすけちゃんが気球に乗ったあとにすっかりおとなしくなったというダンの話にも耳を貸さず、「ダンもそのバッドバアロンにやられた方がいいんじゃないか?」などとのたまうなど、今回の北斗はあまりに職務怠慢。自分もいつも「信じて下さい」などと必死で訴えることが多いのに(笑)。


 まあ確かにあんな夢の乗り物がまさか超獣などとは誰も思わないわけであり、おそらく異次元人ヤプールの残党とおぼしき連中(そう考えた方が楽しいし辻褄も合うでしょ・笑)による巧妙な侵略計画には舌を巻くばかりである。


*下級生をいじめる上級生の母親を演じたのは、このあと東宝の『レインボーマン』(72年)で魔女イグアナ、同じく東宝の戦隊ヒーローもの『円盤戦争バンキッド』(76年)でもレギュラーで宇崎とき枝(戦隊メンバーの溜まり場になっている副主役の少年の母役)を演じることになる塩沢とき
 80年代中後盤に小堺一機司会の平日午後1時からの番組『ライオンのいただきます』(84〜89年・ライオンはスポンサーの会社名)に大挙出演した熟年女優たちによる歯に衣(きぬ)着せぬユニークな言動から生じたおばさんブームに乗って、その髪型を巨大で怪異に編み上げて(笑)大ブレイクしバラエティ番組に頻繁に出演して人気を得ていたが、最近どうしているのか?
 そういえばダン少年を演じた梅津昭典も『円盤戦争バンキッド』ではバンキッドオックスに変身する牛島一郎を演じて、塩沢ときと再共演を果たしている。
 (後日付記:塩沢とき氏は、07年5月17日に胃がんで逝去された。合掌)


*特撮バトルは前話と同じセットを使用している。


*視聴率20.7%


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2007年号』(06年12月30日発行)『ウルトラマンA』再評価・全話評大特集より抜粋)


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  (当該記事)

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*1:後日付記:第31話『セブンからエースの手に』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061204/p1)に登場した赤い風船を持つ少女に続いてまた……。やはり『ウルトラマンメビウス』(06年)第1話(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060625/p1)の赤い風船を持つ少女は……!? 可能性は薄そうだが(笑)。