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仮面ライダーBLACK RX 〜肯定論・当時の状況と総括のための序論 発掘UP!

『仮面ライダーBLACK』 〜『BLACK』『ZO』脚本家・杉村升論 上原正三と杉村升の公私観は真逆か!?
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 それまでの「平成ライダー」9作品の「平行宇宙」をまたにかけて戦っている『仮面ライダーディケイド』(09年)の第26話「RX! 大ショッカー来襲」に、なんとついに昭和ライダーである仮面ライダーブラックRXまでもが登場記念! ついでに、『仮面ライダーX』(74年)の変身するライバルキャラであったGOD(ゴッド)秘密警察第一室長・アポロガイストまでもが登場記念! ……とカコつけて、『仮面ライダーBLACK RX』論 を発掘UP!――太陽の子・仮面ライダーRX vs 太陽神・アポロガイスト! といった、ロートルマニマ向けの組合せネタでもあったんですかネ!?――


仮面ライダーBLACK RX』 〜肯定論・当時の状況と総括のための序論


仮面ライダーBLACK RX』 ――君よ、英知の光もてこの世の闇を照らせ――

(文・彦坂彰俊)
(2000年12月執筆)


 本作は『仮面ライダーBLACK(ブラック)』(87年10月〜88年10月・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20001015/p2)の後番組として88年10月から89年9月まで放映された。


 ただし、倉田てつをが演じる主人公を同じくする改題継続作であること(そのため制作ナンバー自体は基本的に『BLACK』からの通し番号)と、とりあえず原点回帰を目指した前作との差別化の意図から、数多くの新機軸が導入された。


 しかし、当時一般的に認識されていた「仮面ライダー像」からあまりにも逸脱する世界観および基本設定や、根本的に刷新された作品雰囲気などが、作品内容そのものの実相とはかけ離れた次元で物議を醸し、ある意味で未だ一般評価が定まらないというジレンマを抱え込んでいる。



 ――知らない・または世代的にピンとこない読者のために念のため説明しておくと、当時の(メインターゲットである子供はともかく)特撮マニアのほとんどが本作に対して示した拒否反応は、本当に凄まじいものがあったのだ。


 批判の要点自体は非常にわかりやすい。



仮面ライダーが「武器を使う・車に乗る・タイプチェンジする」こと。


●光太郎のキャラクター造形・彼を取り巻く人物相関図が前作をほとんど無視した形で為(な)されていること。



 「仮面ライダーの定義」にこだわる旧作ファン。
 あくまで主人公・ブラックサン(仮面ライダーBLACK)こと南光太郎(みなみ・こうたろう)と親友・シャドームーンこと秋月信彦(あきづき・のぶひこ)の関係描写にこだわる『BLACK』ファン(女性ファンが多数)。


 その双方からの容赦ない非難の挟撃……


 この件について語ることは、当時から“絶賛派”の自分自身、如何(いか)にせよルサンチマン(怨恨)の発露を禁じ得ないが、それはともかく。


 問題の所在は、結局のところ個々人の価値基準や許容範囲に帰するものである。それゆえ、立脚点がそもそも異なる相手に「正当評価」を仕掛けることにはおのずと限界があったと言わなければならない。
 この点では最低限こちらも自身の立脚点を明確にしたつもりではあったが、その論法が相手の評価体系である「仮面ライダーの定義」と「BLACKからの連続性」を意識しすぎたきらいがあるし(もちろん状況がそうさせた一面も否定できないけれど)、自身の感性を客観化して語ることにも往時は慣れていなかったが、恥ずかしながら若気の至りで当時の特撮雑誌『宇宙船』(朝日ソノラマ)の読者投稿欄などで反論を述べ、それらを端緒に特撮批評系同人誌数誌にも進出して意見を述べさせていただいたものだ。


 このあたり、当時の気分も多少は相対化させつつ、自分の中での『BLACK』『RX』評価を整理してみたい。



 そもそも自分は『BLACK』をどうにも楽しめなかったクチなのだ。一般的にはどうあれ、個人的には『BLACK』の非・仮面ライダー性が非常に気に食わなかった。
 東映東京制作所(生田(いくた)撮影所)ではなく東映東京テレビプロ(大泉撮影所)のスタッフらによるビデオ合成にJAC(ジャック=ジャパン・アクション・クラブ)アクションの「武器を使わない宇宙刑事」のような作品雰囲気に対して強烈な違和感を抱いたと表現すれば、ニュアンスは多少掴んでもらえるだろうか?


 要するに当時の自分は、基本設定や世界観と同じくらいのウェイトでアクション演出や劇伴曲が組み合わさったうえでの「仮面ライダー性」にこだわるくらい、頑迷な形式主義者だったのである(大野剣友会のアクションに菊地俊輔のBGMなくして『仮面ライダー』成立し得ずなどと公言していたほどだから相当なもの)。


 その主題歌・BGM(ASIN:B0001A7V6U)は(音楽性はともかく)アグレッシブなノリの菊池節と比べて明らかに昂揚感に欠けていたし、そのアクションはあまりにもシャープすぎて殺陣(たて)としてのダイナミズムが失われているように感じたことも、自分にとっての事実ではあった。


 ――現在にしてみると我ながらつまらないことにこだわっていた気がするけれど、『BLACK』からして既にその「仮面ライダー性」を認めていなかったというワンクッションが逆に『RX』を受け入れるうえでプラスに作用したことは確かだと思う。『RX』における「仮面ライダーの定義」以前に『BLACK』で既に失われていた「仮面ライダーの定義」のほうが、個人的には重要だったという皮肉ゆえに。


 もっとも、それを差し引いても、エピソード・シリーズ構成での設定の活かされ方にもかなり不満を感じていた。


 まず、敵組織・暗黒結社ゴルゴムのキャラクター性が総じて無個性。


・見た目も言動も差別化されていない三神官
・人語を発せず人格も持たないうえ、デザインモチーフと能力描写がとうてい結び付かない怪人(オオワシ怪人が幻覚を見せ、ヤギ怪人が催眠術を使い、コブラ怪人が時間を操るというような、元の生物とは不釣合いな属性描写)
・万年単位での永世を保障するゴルゴム怪人にならんとする最終的な行動目的が俗世的欲望から解脱しすぎているため、劇中での俗っぽい作戦とは印象が乖離しており、人間でありながら逆に人間的な厚みがない黒松教授や坂田代議士に大宮会長などのゴルゴムメンバー
・外見&中身とも『宇宙刑事』系の敵幹部な剣聖ビルゲニア……


 大義名分は立派だが、作戦が抽象的で回りくどく、さらに視点の置きどころがおかしいために、ドラマとしても活劇としても中途半端な(それ以前にエキセントリックと言ったほうがいい)エピソードは数知れない。
 (のちに日本の特撮ジャンルを支える御仁になるも、当時は特撮ヒーローものの執筆体験がほぼなかった脚本家陣の作品に、活劇のカタルシスより陳腐なお説教の方を重視してしまう傾向が顕著であった)


 人間の母性本能を利用しようと母親たちを拉致、洗脳してカニ怪人の卵を養育させようとするも、その描写は単に母たちの「育て〜、育て〜、卵よ〜、育て〜」の大合唱(笑)であった13話「ママは怪人養育係」。


 最強を謳(うた)うマンモス怪人登場で、全編が死力を尽くした攻防戦の話かと思いきや。冒頭であっさり最強怪人が負けたり、怪人の強化に必要なエキスを取得するためゴルゴムがマグロを買い占めて、さらにはマグロの高騰で生活苦に陥ってしまう寿司屋の親子のスケールの小さな人情話に焦点が移っていき、唐突に母の命日だからと海辺へ向かった少年に同行する信彦の妹・秋月杏子(あきづき・きょうこ)と恋人・紀田克美(きだ・かつみ)が、一応はリアル・シリアス志向の作品であったはずなのになぜかエンディング主題歌「LONG LONG AGO, 20TH CENTURY」を劇中で歌ってしまい、少年が海に向かって「お母ちゃ〜ん!」と叫ぶのはまだしも、つられて杏子と克美も「信彦さ〜ん!」と叫んでしまう14話「マグロが消えた日」など。


 唯一、悪の仮面ライダーこと銀のボディーのシャドームーン復活前後の三部作(34話「復活?! 地獄王子」・35話「対決! 二人の王子」・36話「愛と死の宣戦布告」)は確かに当時としても見応えを感じたけれど、その後もまた同じノリでルーティン(連続要素がまったくない1話完結話)が続いたのにはさすがに閉口させられた。



 それにどう考えても登場時期が第3クール終盤と遅すぎるシャドームーン(=秋月信彦)。


 1・2話における回想シーンのあと、光太郎たちはシリーズ前半では信彦のことをほとんど思い返すことがない(作品の性格上、信彦の行方を毎回毎回気にしてもよいくらいなのに)。
 やっと信彦メインの話が来たと思わされた10話「信彦はどこに?」は、サブタイトルだけで中身は信彦の話ではなく、ラストで申し訳程度にナレーションが言及するだけ。


 信彦の友人や、信彦と光太郎の共通の旧友でもゲストで登場させて、信彦の人物像を脇から補強したり、信彦本人や杏子と克美を使った新たな撮り下ろし回想シーンがあるエピソードがたとえ数本でも、譲って最低1本でもシャドームーン登場前に作られていれば……。信彦の運命の悲劇性をもっと強めたり、杏子と克美の人物像も深めることができただろうに。


 あるいはゴルゴムのアジト内での事故で、シャドームーンへの脳改造が未完了の信彦が脱走して、一時的に光太郎らの許に帰ってくるとか、あるいは信彦の偽者が遣わされてくるようなエピソードなどがあれば……
 シャドームーン登場後も初期のうちはまだ洗脳が不完全な状態で、ブラックとの戦闘中に度々、信彦の意識や過去の記憶にその人間態が蘇って、自身の異形の姿や行為に苦悶するような、そしてまたその姿を見て光太郎が攻撃を躊躇してしまうような悲劇描写が度々あったなら(東映TV特撮『人造人間キカイダー』(72年)のように、不完全な良心回路を保持するゆえ敵首領・ギルの笛の音に悩まされ時に操られるキカイダー、あるいは産みの親・光明寺博士の脳髄を頭部に保持する宿敵・ハカイダーを倒せないキカイダーがごとく)。
 ついでにシャドームーン化が進行してからは、逆に光太郎の隙をついて反撃するために、卑劣にもわざと苦悩する姿を時折、擬態・演技してみせるようになっていく変遷のドラマなどもあったなら……


 そんな素人でも思いつくようなベタな作劇すらもが実現できなかった、信彦役の堀内孝人も3話以降は12話・17話、ずっと飛んで34~37話・41話「あぶない時間泥棒」と47話「ライダー死す!」にのみ一瞬だけ登場(!)という出演者絡みのトラブル(?)があったらしいことから推測するに(邪推だが当時はまだまだジャリ番と蔑(さげす)まれていた特撮ヒーロー番組なので、氏が降板を申し入れてきて揉めていたのではなかろうか?・汗)、シャドームーンは第3クール終盤でのっけから敵首領クラスとして登場するのではなく、シリーズ中盤で敵幹部・剣聖ビルゲニアが負ったポジション(前線に出張って幾度となくBLACKと対決する)にこそ本来在るべきはずだったのではないか? と思う。
 ヒロインたちにも信彦の妹・杏子と信彦の恋人・克美という劇的な境遇設定がありながらドラマとしてまともに活かされていないとか、信彦の人間性の喪失にもそれなりの理由付けや経緯変化の描写があるなら盛り上がるのにとか、だから対する光太郎のスタンス描写も最後まで煮え切らないのだとか、かなり手際が悪い印象を残す。


 加えてメインライターのはずだったベテラン脚本家・上原正三(うえはら・しょうぞう)は序盤のみの参加で早々に降板し、終盤では杉村升(すぎむら・のぼる)がメインライターとなるも、シリーズ中盤ではシリーズ構成を担当するようなメインライターがいない。文芸スタッフの面でもかなりの混乱が見受けられてしまうのだ。


 ――善と悪のライダー対決、かつての親友と戦い合わなければならない理不尽な運命……。


 その「設定」に思い入れる気持ちはわかる。筆者だってもちろん心惹かれた。
 ただ、それゆえ実「作品」においてことごとく幻滅させられた点で、完成フィルム上のキャラクターとしての「BLACKとシャドームーン」=「光太郎と信彦」には思い入れを抱く余地がなかったわけである。



 『BLACK』に関する個人的な評価は、だいたい以上のとおりである。言うなれば、優れた「設定」の魅力がそのまま「作品」への思い入れや評価にシフトするとは限らないということ、それよりもまず実「作品」における「設定」の達成度をこそ問題にしたいということ。その意味で『BLACK』という作品は、とにかく「根本的に設定倒れ」だった気がするのだ。


 そんな『BLACK』の続編である『RX』に対して、だからこそマニア誌での事前情報公開で「設定」が一新されたことについてもまったく意に介するところがなかったのだけれど、だからといって同作にさほど期待もしていなかったことを告白しておく。


 ……だがしかし!



 激戦の果てに暗黒結社ゴルゴムを打倒した仮面ライダーBLACK=南光太郎。だが結果的には、宿敵シャドームーンとして転生した親友=秋月信彦を救うこと叶わず、身も心もボロボロに疲れ果て、いずこともなく旅立った。
 ……やがてのち、佐原航空のヘリコプターのパイロットとなった彼は、一人の人間としてささやかだが平和な人生を全(まっと)うすることを望んでいた。
 しかし、もうひとつの地球である異次元・怪魔界を制圧したクライシス帝国・地球攻撃兵団の侵攻が、彼をふたたび戦場へといざなう。


 その軍門に下ることを拒んだ光太郎は、BLACKへの変身機能を破壊されて暗黒の宇宙空間に投げ出される。
 絶対の死を覚悟したそのとき、体内のキングストーンが太陽光線のエネルギーを吸収し光太郎の身体を変貌させた。
 そして誕生する太陽の子・仮面ライダーBLACK RX!


 いま、地球と怪魔界ふたつの世界の命運を懸けて、新たなるヒーロー伝説の幕が上がる!!



 なんなのだ、この盛り上がりは!


 救世主としての宿命を負うヒーローの再起と覚醒。
 ダイナミズム溢れる歌詞とパワフルなメロディーラインとで叩き込むように絶唱されるオープニングテーマ「仮面ライダーBLACK RX」(ASIN:B00012T31OASIN:B00005ENBX)が、否応なく期待感を昂揚させる。


 なによりもまず、後味が悪く煮え切らないあの前作ラストを受けながら、それを換骨奪胎して光太郎自身の行動原理として改めて昇華せしめた異化作用の見事さに唸らされた。
 感情を擦り切らせ生きる望みすら喪(うしな)って彷徨(さまよ)い続けていたであろう彼を、その過去の一切を問わずに迎え入れ、以前にも増して明るく立ち直らせた佐原一家のあたたかさ。それを知るがゆえ、新たな強敵により捕われの身となりながらも、人間の自由と平和を理不尽に踏み躙ろうとするクライシスの誘いを決然と高らかに拒否した、光太郎の魂の叫びは真に悲愴かつ切実さを秘める。


 そして、荘厳なる宇宙の奇跡によって太陽の子・RXとして転生した光太郎にキングストーンは語りかける。この世のすべて、生きとし生けるものすべてを守るRXの宿命を。もしもその力を誇示すれば、人々は始めは称賛するがやがて疎(うと)んじるようになり、孤独に生きることを強いられるだろうということを……。


 愛する者たちを守るため、世界に迫る強大な危機に敢然と立ち向かうことを自らに誓う南光太郎。それは使命を負った大いなる勇者の、ひとりの人間としての決意でもあったのだ。



 ――彼が立ち直るまでに費やされた時間をせめて回想ででも描写してほしかったという意見ももっともだ。
 しかし、ここで重要なのは作中のキャラクター描写のほうだろう。その空白の時間が確実に存在していたのだという実感は、そこに自ずと伴うものではなかろうか?(設定上の半年というのは確かに無理があるかもしれないが、それは二次的三次的な評価材料だ。実際、作中の雰囲気では1・2年くらい経過していそうな印象ではあったのだが)


 少なくとも、あえてあからさまには描かれなかった時間に思いを馳せて涙した視聴者が、ここにいる。


 また、いきいきとコミカルにも描かれる佐原一家はヒーローが真に守り抜かなければならないもののメタファー(隠喩・例え・象徴)であるとともに、ヒーローの孤独をより強く際立たせるギミックとしても機能しているのだ。光太郎への心理的な牽制ゆえ、クライシスの魔手は時に周囲の人間を直接のターゲットとして襲い来る。立場上、心ならずも彼を遠ざけねばならなくなる一家の苦悩(その頂点は26話「ボスガンの反撃」)。一家のぬくもりを知るがため、真に孤独の痛みをあじわう光太郎の悲嘆。


 単なる設定の羅列とは完全に一線を画する、人物造型のリアリティーに裏打ちされた深刻感・悲壮感。


 ――それはロンリーヒーローテーマをホームドラマという状況設定から逆説的に描出するという点でドラマ的にも高度な技巧であるが、この光太郎と佐原一家の関係構図こそ企画コンセプトの首尾一貫性を証明するものに他ならないはずである。
 (とはいえ、一家を危険にさらす可能性を顧みずに相変わらず出入りを続ける光太郎は無神経ではないかとか、また人知れず旅立つべきではないかという指摘も、彼に対してかなり酷だがリアル至上で考えれば論旨は間違っていない。映像上でもそこに対する明確なドラマ的処理があったならばさらに盛り上がったかもしれないという可能性は捨てがたいとも思うが、本編を見るかぎり、佐原一家はそれでも光太郎のすべてを受け入れているという暗黙の了解があったとしか思えないのだ。……涙)


 この幾重にも織り込まれたロンリーヒーローテーマの叙述にこそ、本作の根源的な「仮面ライダー性」が見出されるというのが、当時の自分が編み出した「正当評価」の論法だった。
 その主張の是非はともかくとして、それだけで『RX』という作品の豊穣さ――当時すでに一般ドラマに活躍の場を移していたベテラン脚本家・江連卓(えづれ・たかし)の筆による、強大な悪の軍団に立ち向かうヒロイズム! 巨悪にひとりで拮抗できる圧倒的なまでのスーパーヒーロー性! 明朗快活な娯楽活劇性! ヒロイン・白鳥玲子や戦友・霞のジョー(かすみのジョー)、水を操る少女・的場響子(まとば・きょうこ)との共闘!――をすべて説明しきれるものでもないとも今の自分は考えているが、この作品独自の要素の抽出としては間違っていなかったことだけは現在でも確信し続けているところだ。


 人知れず戦い続けるヒーローの孤独な日々と、その気高い行為に対してもたらされる癒しとを、静かにそして高らかに謳いあげるエンディングテーマ「誰かが君を愛してる」が本編ドラマの感動の余韻を締めくくる。



 先に評価の所在は個々人の価値基準や許容範囲に帰する問題であり、実「作品」における「設定」の達成度こそが重要だということを指摘した。そのことに準じて言うなら、自分にとっての『RX』評価は以下の動機から始まっている。


 燃えるオープニングテーマと泣けるエンディングテーマ……そのダブルインパクトがさらに本編の作劇ベクトルを見事なまでに象徴していたこと。
 必ずしも自分は「仮面ライダー性」にこだわっていたわけではなかったのかもしれない。しかも、もとより『BLACK』の続編を見たかったわけでもない。ただ真実「面白い」と感じられる特撮ヒーロードラマが見たかっただけなのだ。


 「仮面ライダーの定義」や「BLACKからの連続性」について弁解がましく論陣を張るよりも本当は初めからそう説明すべきだったのだろう。
 だからこそRXが「武器を使い、車に乗り、タイプチェンジする」ことというほとんど従属的な条件設定に、価値判断を縛られるのはバカバカしいとも感じていた。商業的にも販路を拡大するためには武器や車やタイプチェンジ路線しかないとも当時から感じてはいたのだが、商業主義や視聴率は(必要悪ですらなく)悪であると素朴にも圧倒的大多数の特撮マニアが断言していた時代であり、娯楽性やコミカル風味を下に見てひたすらにハード&リアル&シリアス至上主義であった当時の特撮マニア間での風潮では、そんな意見を堂々と発言できたり、異論の存在を同意はしてくれなくても許容はしてくれる……というような状況ですらなかったのである。



 その意味では、まがりなりにも賛否両論、自由に発言できる雰囲気が成立している現在の『仮面ライダークウガ』(00年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20001106/p1)は、そんなところでも恵まれていると思う。


 もっとも『RX』が一気に切り開いてしまった世界観の地平は、さらに以後のシリーズの歴史(92年のビデオ『真・仮面ライダー 序章(プロローグ)』、93年の映画『仮面ライダーZO(ゼットオー)』、94年の映画『仮面ライダーJ』)によって相対化されている面もたしかにあるのだが。


 本作『RX』については、最大の問題点といわれる最終回ラストへの言及も含めて語るべきことはまだまだ尽きない。しかし今回は都合上、当時の状況を再確認するところまでに止めておく。


 ただし少々付け加えておくと、この作品の可能性のすべては1・2・3話に集約されていたと言っていい。RXが本来、地球と怪魔界ふたつの世界を救う救世主として設定されていたことは、まずもって疑いのない事実であろう。東映作品でも『宇宙刑事シャリバン』(83年)と『電撃戦隊チェンジマン』(85年)くらいしか前例がなかった本格的な大河ドラマ性を有する、反帝国ゲリラや亡命者といったゲストたちが続々と登場するシリーズ構成。


 よって最終展開は必然的に、日本の特撮ヒーローもの史上類を見ない大スケールのリベレーション(=解放)ドラマが用意されていたはずであり、おそらくは歴代ライダーのなかで唯一「戻るべき場所」に帰結するヒーローだったはずなのだ。


 それは諸々のやむをえない放映事情や当時はまだまだラフであった東映作品の制作体制やシリーズ構成ゆえに果たされずといえど、最初から「設定倒れ」だった前作『BLACK』とは未完成の意味が本質的に異なる。


 なぜ実作品のごとき結末を余儀なくされたかを語るのは、これもまたルサンチマンを伴わずにはいられない作業なのだが……。今回は締切の都合で力およばず。



 ふと思う。


 もしも『RX』がもう少しだけ作品的に幸福な終わり方をしていたら、自分の人生の何十分の一かも幸せになっていたかもしれないなぁ……とか(←いや、それはかなりナサケナイ話だぞ実際・汗)。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2001年号』(00年12月30日発行)所収『仮面ライダーシリーズ大特集』「仮面ライダーBLACK RX」評より抜粋)



仮面ライダーBLACK RX』平均視聴率:関東9.3%・中部7.5%・関西9.5%
 1クール相当(10〜12月):関東10.8%・中部9.0%・関西10.7%
 2クール相当(1〜3月):関東8.9%・中部8.3%・関西9.4%
 3クール相当(4〜6月):関東8.7%・中部6.3%・関西9.2%
 4クール相当(7〜9月):関東9.0%・中部7.1%・関西9.1%
 最高視聴率:関東13.0%(#8)・中部12.2%(#18)・関西13.3%(#1)
 最低視聴率:関東6.0%(#30)・中部4.5%(#41)・関西5.8%(#22)
 (10%越え:関東18回・中部6回・関西18回)


 『仮面ライダー1号〜RX大集合』(#1放映1週前の宣伝番組):
 1988年10月16日(日):関東12.6%・中部7.1%・関西11.9%


 毎日放送(TBS)系 毎週日曜日10:00〜10:30放送
 中部日本放送のみ毎週日曜10:30〜11:00放送(同日30分遅れネット)
 関西地区のみ#22は選抜高校野球中継のため時間移動して放映
 (平均視聴率EXCEL表計算:森川由浩)
・裏番組の『笑っていいとも!増刊号』が20%以上を取っていた時代に、視聴率は中々の健闘。(森川 由浩)

仮面ライダーBLACK RX』はじめ、「スカイライダー」(79)〜「仮面ライダーW」(09)関東・中部・関西の全話視聴率表を、09年末発行の『假面特攻隊2010年号』「平成ライダー東西視聴率10年史」大特集に掲載!(完売)


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『假面特攻隊2001年号』「仮面ライダーシリーズ」大特集・記事一覧(完売)

・「仮面ライダー」 〜「全98話の変化を東映の同時期作品と絡めて考察」(文・森川 由浩)
・「仮面ライダー」 〜「元・旧1号至上主義者の告白」(文・旗手 稔)
・「仮面ライダー」 〜「相対化風潮にさらされる旧1号編を援護射撃」(文・いちせ たか)
・「仮面ライダーV3」 〜「全話の変化を同時期作品と絡めて考察」(文・森川 由浩)
・「仮面ライダーX」 〜「リスペクト! 長坂秀佳の脚本世界」(文・トオトウミ)
・「仮面ライダーアマゾン」 〜「怪奇性と原点回帰で評価高き初期編」(文・トオトウミ)
・「仮面ライダーアマゾン」 〜「アマゾン#5以降を再評価!」(文・ヤフール)
・「仮面ライダーストロンガー」 〜「前半ブラックサタン編・積極評価」(文・JIN)
・「仮面ライダーストロンガー」 〜「評価高き後半デルザー軍団編」(文・トオトウミ)
・「仮面ライダー(新)」 〜「原点回帰の前半」(文・トオトウミ)
・「仮面ライダー(新)」 〜「スカイライダー後半の先輩続々登場称揚!」(文・T.SATO)
・「仮面ライダースーパー1」 〜「ポジティブなライダー像」(文・ビオラン亭 ガメラ
・「仮面ライダースーパー1」 〜「脚本家・江連卓論」(文・ビッキー)
・「仮面ライダースーパー1」 〜「ヒロイン・草波ハルミ考察」(文・ビッキー)
・「仮面ライダーブラック」 〜「原点回帰と新機軸」(文・トオトウミ)
・「仮面ライダーブラック」 〜「脚本家・杉村升論」(文・sugi)
・「仮面ライダーブラックRX」 〜「RX肯定・序論」(文・彦坂 彰俊)
・「仮面ライダーZO」 〜「雨宮慶太監督のライダー像」(文・旗手 稔)
・「仮面ライダーJ」 〜「脚本家・上原正三論」(文・sugi)
・「ライダーシリーズ脚本家・伊上勝論 〜娯楽の王様」(文・フラユシュ)
・「ライダーシリーズの脚本世界 〜全ライダー脚本家」(文・ビッキー)
・「ライダーシリーズ短評集」(文・鹿取 しいね)
・「“後期ライダーシリーズ”の時代 〜X・アマゾン・ストロンガーの独自性」(文・旗手 稔)
・「仮面ライダー世代のひとつの証言 〜幼児期のごっこ遊び」(文・つくね かずゆき)
・「ライダー同世代への疎隔感 〜ブームに乗り遅れた幼児の証言」(文・久保 達也)
・「ライダーヒロイン超全集 〜ライダー全ヒロイン」(文・ビッキー)
・「ライダー悪の幹部・軋轢構図の解析」(文・鷹矢凪 矢寿士)
・「インプレッションオブ70’Sライダー 〜塚田正煕・折田至監督の映像美」(文・あべ けんすけ)
・「仮面ライダークウガ」 〜完結目前! 有志10数名による合評!
★「仮面ライダー批評20年史検証 〜力作3万字評! 主要書籍・主要商業ライターの個性と傾向・ライダーシリーズ数度の復活の歴史」(文・森川 由浩)



仮面ライダーBLACK RX

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仮面ライダーRX』肯定論・当時の状況と総括のための序論!
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