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オールライダー対大ショッカー 〜劇場版 仮面ライダーディケイド

『仮面ライダーディケイド』最終回「世界の破壊者」!
『仮面ライダージオウ』最終回・総括 ~先輩続々変身のシリーズ後半・並行宇宙間の自世界ファーストな真相・平成ライダー集大成も達成!
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 映画『仮面ライダー×仮面ライダー W&ディケイド MOVIE大戦2010』(『仮面ライダーディケイド 〜完結編〜』『仮面ライダーW 〜ビギンズナイト〜』『MOVIE大戦2010』)公開記念! ……とカコつけて(汗)、『劇場版 仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカー』評をUP!


『劇場版 仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカー』

(2009年8月8日封切)
(脚本・米村正二 監督・金田治 アクション監督・宮崎剛 特撮監督・佛田洋

速報! これがオールライダー対大ショッカーだ

(文・森川由浩)
(2009年8月13日執筆)


 『仮面ライダーディケイド』(09・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090308/p1)の劇場映画として、2009年8月8日より全国劇場で『劇場版 仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカー』(09)が公開されている。知ってのとおり、昭和の一号ライダーに始まり平成ライダー最新作までの歴代のシリーズを代表する歴代オール主人公ライダーの活躍を最大のセールスポイントにした、平成ライダー10周年記念行事で送り出された諸作品の中でも最も大きな存在の作品である。


 今回はその速報レビューをお届けしよう。


 本作はいきなり仮面ライダーバトルのトーナメントよりスタートする。
 最初のバトルは仮面ライダーディケイド仮面ライダーアマゾン(74)。
 ディケイドが勝利すると、次は仮面ライダーBALCK RX(ブラック アールエックス)(88)が対戦。
 その次にはクウガことユウスケが変身、仮面ライダークウガ仮面ライダーX(エックス)(74)の対戦になった。


 このカードを見てもお分かりのように、テレビシリーズ『仮面ライダーディケイド』後半にも出演した昭和ライダーが対戦相手として登場。昭和ライダーを未視聴でテレビ『ディケイド』のみしか視聴していない観客にもわかりやすいように構成されている。特にRXの声は、この時点で本来の主演俳優・倉田てつを本人が担当しており、先にテレビシリーズでの華麗なる復活を見た直後だけに尚更嬉しいものがあった。


 そしてこのバトルの発端は……。
 主人公である仮面ライダーディケイド・門矢士(かどや つかさ)が新たに訪れた異世界がかつての自宅で、そこには妹・小夜(さよ)がいた。記憶喪失だった士は自分が家を出た後に妹の面倒を見ていた執事(しつじ)・月影ノブヒコという男に出会う。彼の助言もあり、世界の破壊を止めるために仮面ライダー同士のバトルを行うことになった。


 そんな中、衝撃の真実が発覚した。実は士は悪の組織・大(だい)ショッカーの首領だったのだ!
 士は大ショッカー首領の記憶を取り戻してその活動を再開する。しかし、月影ノブヒコことシャドームーンの策略でその座を奪われて追放されてしまうのだ。そこに「世界の破壊者」という単語の意味が士にシンクロしてくるのである。


 
 この多くの観客の意表を突いた士が大首領という設定だが、思えば本家である一作目の『仮面ライダー』(71・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20140407/p1)も本来は悪の秘密結社・ショッカーの改造人間兵士として誕生したものの、実際はショッカーを裏切り敵対する存在となったヒーローだったのだ。
 ストーリー展開や意表外な新事実にはかなり苦しまぎれな唐突感が否めないのだが、好意的に見るならば原典作品にあった「悪に生まれし者が正義の側に付くコンセプト」の再生だとも解釈ができ、本家『仮面ライダー』(一作目)の原点に帰るという意味合いだけではなく、根幹が相通ずる設定だとも受け取れる。そういったこともあり、「大ショッカー」という敵組織の存在やネーミングもまた、原点回帰のコンセプトを点と線でつないでくる。


 実際、テレビ版26話「RX! 大ショッカー来襲」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090726/p1)にて『ディケイド』における正義の若者たちの後見人、いわゆる「おやっさん」ポジションにある光栄次郎(ひかり えいじろう)が発した


 「人は常に仮面を被り、真の姿を隠している」


 という台詞(せりふ)には、石森章太郎の手による原作漫画『仮面ライダー』(71・ISBN:4257960116)の最終章である「仮面の世界(マスカー ザ ワールド)」の冒頭を飾った


 「人間はだれでも仮面をもっている。その仮面の下に真実(ほんとう)の顔がある」


 というテーゼを範とした本作『ディケイド』に終盤で付与された原作漫画の精神を感じさせるものがあり、この台詞の存在も今回の『劇場版 仮面ライダーディケイド』における大ショッカーの位置づけ、士や栄次郎の意表外な正体に対する一応の伏線として機能させていたのだろう。


 大ショッカーでありながら、本家『仮面ライダー』(一作目)のショッカー幹部だけではなく、『仮面ライダーBLACK(ブラック)』(87・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20001015/p2)の暗黒結社ゴルゴムのキャラクターなどが中枢に存在するのには古い世代には少々違和感があるのだが、もちろん原典オリジナルの『仮面ライダーBLACK』のゴルゴムそのものではなく、似て非なるパラレルワールドゴルゴムほかのライダーシリーズ歴代の敵組織の大連合としての大ショッカーなのだから、ゴルゴムの幹部がこの大ショッカーの中枢に存在していても不思議ではないことは理性では承知している。



 尚、本作で大ショッカーの行動隊長的な活躍を見せる『仮面ライダーBLACK』の宿敵であり「悪の仮面ライダー」でもある世紀王・シャドームーンの人間態・月影ノブヒコを設定しておきながら、南光太郎(みなみ こうたろう)・仮面ライダーBLACKこと世紀王・ブラックサンとの因縁や対決がなかったのが、長年のライダーマニアたちにとっては本作最大の残念なところではあるだろう。


 ノブヒコの存在自体が光太郎のライバルではなく、本作では士の妹・小夜の世話人的なものであるために、オリジナルの『BLACK』の世界観のままでの復活を望んではいけないのかも知れない。『仮面ライダーディケイド』では“リ・イマジネーション”なる言葉とともに平成ライダーはもちろん、一部の昭和ライダーも含めての原典作品とは異なるパラレルワールドを描いてきたことを思えば、仮面ライダーBLACKとの因縁がないシャドームーンという設定も許容されてしかるべきなのかもしれない。


 しかし、今回の映画にてシャドームーン対BLACK(orRX)の再戦を期待したオールドファンはやはり多かったと思われる。この映画の公開直前に放映された『ディケイド』テレビシリーズ終盤では『仮面ライダーBLACK』の並行世界に闖入(ちんにゅう)する「BLACKの世界」編(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090802/p1)が大いに盛り上がっていたが、やはりシャドームーンが登場しなかったことは少々残念ではあった。
 まぁ実は原典である『仮面ライダーBLACK』テレビシリーズ本編自体も、シャドームーンの初登場は製作側の裏事情で第3クールにまでズレこんでしまい、当時の特撮マニア目線でも遅過ぎたくらいであったのだが、登場後はその不満を吹き飛ばすほどの活躍を見せていただけに、その両者の宿命の再戦は“お約束”として楽しみにしていたファンも多かったと思われるだけに。


 南光太郎はエピローグ前に1カット出演するだけだったが、映画を観る側からすれば先にテレビで「BLACK」編を見ているので、映画でもそれ相応の活躍をするものだと思っていた人も多かっただろう。実際にはテレビでの「BLACKの世界」編&「RXの世界」編や「アマゾンの世界」編(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090809/p1)の方が、この映画での出演がきっかけで『ディケイド』の物語的には時系列的に遡行したかたちで作られたエピソードなのではあったのだが。


 南光太郎「ノブヒコ! なぜお前がこの世界にいるんだ!?」
 ノブヒコ「久しぶりだな、南光太郎。いや、仮面ライダーBLACK!」


 ノブヒコが変身するや、『仮面ライダー電王』(07・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080217/p1)のイマジン怪人・キンタロスも演じた本家の声優・てらそままさきの声に変わり(もちろんシブくてクールなカッコいい低音ボイスで)、


 「我が名はシャドームーン……」


 などという台詞の応酬をお約束でも、今回の映画で観てみたかった。



 本作の敵組織であり、『ディケイド』テレビシリーズの終盤でも今回の映画の伏線的に登場した大ショッカーだが、本家ショッカーがそれぞれのライダーワールドの悪の組織を吸収して成長した組織であることは第26話にて言及されており、『ディケイド』テレビ本編には登場していないが、『BLACK』の直続編『仮面ライダーBLACK RX』(88・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20001016/p1)の宿敵・クライシス帝国のジャーク将軍、『BLACK』の宿敵・ゴルゴムの大神官ビシュム、そして『仮面ライダー』一作目の宿敵・ショッカーの地獄大使死神博士が、幹部クラスのキャラクターとして登場する。


 周知のとおり、本家『仮面ライダー』で死神博士を演じた天本英世(あまもと えいせい)、地獄大使を演じた潮健児(うしお けんじ)は既に物故している。そこで本作テレビ版で光栄次郎に扮する石橋蓮司死神博士に扮し、地獄大使は今や数多くの映画やドラマで活躍する有名ベテラン男優・大杉漣(おおすぎ れん)が演じ、そのビッグネームスターの意外な配役は話題を呼んだ。


 もちろん本家同様、人間体からショッカー怪人に変身するシステムもそのままであるが、いかにも“オヤジギャグ”という“寒い”感覚のギャグを取り入れているのが本作独自の色付けである。死神博士スルメイカと瓶ビールを出し、


 「イカでビールでイカデビル」


 と発して怪人イカデビルに変身。


 地獄大使


 「ガラガラガラガラ……」


 とうがいをはじめ、怪人ガラガランダに変身する。


 基本的にはリアルなシリアス志向として『仮面ライダークウガ』(00)から始まった平成ライダーシリーズも、『仮面ライダー電王』(07)あたりからギャグやコミカル描写を大量に投入しだしてはいるのだが、このふざけた描写にはたしかに賛否あるだろう。しかし、筆者は大阪在住だが、少なくとも筆者の鑑賞した映画館では、この大ショッカー幹部のオヤジギャグには年少者の観客も大笑いしていた。難し過ぎない、わかりやすいお笑いは好感触であったようだ。



 大ショッカーの戦闘員は、「新一号ライダー」編時期(第53話〜78話)のショッカー戦闘員の骨模様の入ったものを着用しているが、これは世間一般のショッカー戦闘員のイメージがこの「新一号」時代のものであるのもあってだろう。「旧一号ライダー」時代(第1話〜13話)のベレー戦闘員や、「旧二号ライダー」編(第14話〜52話)の服に模様のないプロレスラー風の覆面を用いたスタイルのものも筆者にはそれぞれ思い入れがあるのだが、一般層にはこの新一号時代のショッカー戦闘員の姿が一番浸透しているのは間違いがないところだ。


 登場する怪人だが、大ショッカー怪人といいつつ、本家ショッカー怪人はシオマネキング・イカデビル・ガラガランダしかいなく、ゲルショッカーのガニコウモルを加えても四人しかいないというのは少し残念な気がした。他の怪人は平成ライダー時期の怪人が大半で、珍しいところでは映画『仮面ライダーJ(ジェイ)』(94)のコブラ男がいるくらいだろう。
 これらのショッカー怪人のコスチュームは近年のアトラクションやイベント用に製作されたものだというのは明白であるが、製作予算が許すならばという前提で個人的な好みを言わせてもらえれば、「旧一号」時代の蜘蛛男(くもおとこ)・蜂女(はちおんな)・蝙蝠男(こうもりおとこ)などのいかにも“代表的”なショッカー怪人をはじめ、「旧二号」編のサボテグロン・スノーマン・ゴースターくらいは加えても良かったとは思う。


 そして大ショッカーとしてだけでなく、基本が等身大ヒーローの仮面ライダーシリーズでも、稀有(けう)な巨人キャラクターとしてその名を誇る悪の大幹部・キングダーク(『仮面ライダーX』(74・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20141005/p1))の復活も本作の目玉だろう。歴代ライダーシリーズには他にも、岩石大首領(『仮面ライダーストロンガー』(75))、恐竜型のネオショッカー大首領(『仮面(スカイ)ライダー』(79))、フォッグ・マザー(『仮面ライダーJ』)といった巨大な悪役キャラもいるのだが、やはり元祖であるキングダークの印象が世代人には強いからだ。


 テレビ『ディケイド』では大ショッカー幹部として秘密機関GOD(ゴッド)の幹部・アポロガイストが活躍しているが、そのGODの大首領的な存在の巨大ロボット・キングダークはライダーシリーズ初の巨大キャラとして高い知名度を誇る。顔立ちこそオリジナルの面影を残してはいるが、ボディスタイルはスマートなイメージにリファインされていた。もちろんキングダークはシリーズ唯一の巨大化できるライダー・仮面ライダーJの対戦相手として無理矢理配役された印象はある。



 そこでライダーJもそのままで闘うのではなく、ディケイドとの合体による変身、いやディケイド自身の他のライダーを人外の形態や武器に変形させるファイナルフォームライド能力による助力を得て、Jのパワーアップ、またはJを素体としてのディケイド自身の巨大化変身が実現する。


 『ディケイド』におけるいわゆる2号ライダー、または3号ライダーポジションである仮面ライダーディエンドが、いつもはディケイドのお約束である「ちょっとくすぐったいけど」の言葉を発すると、突如ディケイドの後ろに立って手のひらで背中にふれるや、ディケイドは巨大なディケイドライバー(変身ベルト)に変形し、Jの腹部(ベルトのバックル部)に飛んで行く。そして巨大なJの姿がそのまま仮面ライダーディケイドの最強形態・コンプリートフォームの姿と化す!


 この仮面ライダーJの活躍、他のゲストライダーの中では大きな扱いであるのはうなずけるが、これだけのためだけにという印象も否めない。ライダーシリーズ唯一の巨大ライダーであるのだが、最初から巨大化したままではなく、最初は原典通りに等身大の姿で登場し、最後はディケイドに乗っ取られてしまうにしても、終盤に台詞つきで主体的に自らの意志で巨大化してキングダークに立ち向かうシーンがあった方がストーリー的にも見せ方的にもベターだったと思う。



 次に『仮面ライダーV3(ブイスリー)』(73・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20140901/p1)の後半を彩(いろど)ったもう一人のヒーロー・結城丈二(ゆうき じょうじ)の復活というトピックにも言及しなければならない。
 知ってのとおり仮面ライダー四号こと元祖ライダーマン・結城丈二(ゆうき じょうじ)を演じた俳優・山口暁(やまぐち あきら。のちに山口豪久(やまぐち たけひさ)は既に物故している。そのため本人による再演は不可能である。しかし『仮面ライダーディケイド』の世界ではパラレルワールドでの平成ライダー昭和ライダーたちと彼らとの共演を描く番組スタイルであるため、別人による仮面ライダーの活躍が描かれても不思議ではない作品世界が既に構築はされている。


 そこで映画版のセールスポイントとして、テレビ&映画版主題歌を歌唱する人気歌手・GACKT(ガクト)がその結城丈二役に挑戦した。しかしこれは本当に話題だけに終わってしまった印象が強かった。実際にGACKTがマスクを着用してライダーマンへと変身した姿を見せなければ意味がない。たとえリファインしたデザインであったとしても実際にライダーマンへと変身して派手に戦わなければ意味がないと思う。義手を取り外しその痛みに耐えてメカニックなアームを付けた姿を描くだけでは存在価値が薄く、余りにも生かし方が下手だとしか思えない。



 また、仮面ライダークウガの今回の映画だけでのニューフォーム・ライジングアルティメットもこの映画のセールスポイントである。
 『ディケイド』テレビシリーズ前半(特に仮面ライダーディエンドが登場する前)ではツインヒーローの一人として設定されていた『ディケイド』世界の仮面ライダークウガだが、テレビでの活躍はなぜか意外に少なく変身しないことも多々あっただけに、本作でのライジングアルティメットフォームとしての活躍はイベント性が高かった。
 しかも、本家『仮面ライダークウガ』(00)終盤(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090907/p1)に於けるクウガ究極形態・アルティメットフォーム本来の「究極の闇をもたらす者」である「悪のヒーロー」としてのコンセプト、超古代文明の伝説で語られてきた黒い瞳の「凄まじき戦士」として設定された本家『クウガ』のアルティメットフォームのさらなる強化バージョンとしての描写であった。
 本作では小夜=大ショッカー女幹部・大神官ビシュムの持つ“地の石”(ビシュムの原典である『BLACK』でも登場したアイテム!)の手によりユウスケが凶暴化させられたが、士の熱い懸命な呼びかけでビシュムの石の力を自力で跳ね返して正気に戻り、本家のアルティメットフォーム同様、自我を維持しての「悪者としての黒い瞳」から「正義の味方としての赤い瞳」に変化する展開は、性善説が勝利するこの手の少年漫画やヒーローものの常套(じょうとう)ではあるのだが、やはりかくあってしかるべきだろう。



 ディケイド&ライジングアルティメットクウガ VS シャドームーンのクライマックスに、見慣れないバイクを駆るツートーンカラーのライダーの勇姿が。
 そう、本作のもう一つの目的である『ディケイド』の後番組としてオンエアされるネクストヒーローの宣伝だ。彼が後番組である『仮面ライダーW(ダブル)』(09・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100809/p1)その人である。


 『マジンガーZ(ゼット)』(72・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200119/p1)最終回に於ける『グレートマジンガー』(74)の初登場的に圧倒的なパワーで敗北に追いやられて窮地に陥った現役ヒーローを救う最新ヒーローとして初登場するのかと思いきや、圧倒的な強さは見せるものの『宇宙刑事ギャバン』(82)最終回に登場した『宇宙刑事シャリバン』(83)的なラストバトルの最後までは参戦しない顔見せ程度での登場ではあった。



 最後に……。こうした審判を下すのは不本意であるが、平成ライダー10周年の最大のお祭り映画である本作なのに、キャラクターのシフトと配置、その生かし方には物足りなさを多少なりとも感じさせられた。これだけの数のキャラクターを描くには時間不足も痛感するし、テレビシリーズの各エピソード以上に気を配って物語を構成しなければならない点を更に認識させられた。


 テレビシリーズ『ディケイド』の各エピソード程の密度や完成度を求めて観ると失望するかも知れないと言及させていただく。実際テレビシリーズがあれだけ視聴者を惹きつけるだけの魅力があるだけに、これだけのキャラクターを揃えながら生かしきれなかった点は今後のオールスタームービー製作への反省の材料にすべきだろう。


 ここ数年の平成仮面ライダーの映画版は、劇場公開版のDVDを発売後に間を置いてから、“ディレクターズ・カット版”と銘打って尺数の関係でカットされたシーンを追加編集したバージョンを発売している。果たして本作のディレクターズ・カット版にはこの映画で描ききれなかった部分を補う描写はあるのか、その部分を入れれば及第点レベルに達する作品としての評価を抱けるかが気になるところではある。


 そして映画でテレビの流れを補完するだけでなく、映画の方で先に最終回を描いた『劇場版 仮面ライダー龍騎 EPISODE FINAL』(02・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20021104/p1)のように、結果的にこの映画も『ディケイド』最終回としての側面も持ち合わせていたはずである。
 しかし、映画としてのラストシーンは、良くありがちな“これからも旅は続く”的なものになっていた。まぁ無難なところだろう。というか、そうせざるを得ない事情は本編終了後、エンドロールを挟んでの速報にて顕著に伺えた。


 映画終了後、「平成ライダー10周年 冬の陣」のクレジットが画面に現れた。今度の映画は『仮面ライダーディケイド仮面ライダーW』らしい(09年8月時点)。てっきり『超・仮面ライダー電王』シリーズ第二弾『超・仮面ライダー電王&W』を予想していたファンの方が多かったと思われる中、何故『ディケイド&W』に?
 『仮面ライダーディケイド仮面ライダーW』では『仮面ライダーディケイド』「Wの世界」編と言わんばかりに、士が「Wの世界」に闖入しての活躍と仮面ライダーWとの共闘を描くのであろうか?



 筆者が映画を観に行ったのは8月9日(日)。封切り日の翌日だ。だが、その翌日には衝撃の情報が!

 
 「劇場版仮面ライダー 公開2日で40万人 初登場1位でハリポタのV5を阻止!」

 
 既に前売り券が新記録達成などの情報も耳にしていたが、まさか二日ほどで40万人もの観客を動員し、『ハリーポッターと謎のプリンス』(09)を破り、初登場1位を獲得するとは。もちろん夏の児童向け映画プログラムの王様的存在『劇場版ポケットモンスター ダイヤモンド&パール アルセウス 超克(ちょうこく)の時空へ』(09)も追い越してのランキングという成果を見せたのだ。
 作品のクオリティとしての評価はさておき、歴代ライダー総登場のイベント性や、現在放映中のテレビシリーズ『仮面ライダーディケイド』人気、徹底的な宣伝もあってだろう。


 そしてメインターゲットである子供たちのちょうど親の世代にも浸透度の高い“ショッカー”が宿敵ということもポイントが高い。『ウルトラマン』シリーズでもバルタン星人や怪獣レッドキング知名度が高いのと同じで、やはり『仮面ライダー』シリーズの宿敵はショッカーというのが一般的だからだ。平成ライダー10周年記念に相応(ふさわ)しい快挙である。作品としての評価は辛口になったが、この映画の興行成果が新記録を樹立することを心待ちにしている。



 今回は映画公開から原稿締切までに間がなく、作品についての感想で描き足りない部分も多大に感じてはいるが、夏コミ売りの折込みコピー速報ということもありこの辺りで筆を置かせていただこう。

(文中敬称略)


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2010年準備号』(09年8月14日発行・速報折込みコピー)〜『仮面特攻隊2010年号』(09年12月31日発行)所収『劇場版 仮面ライダーディケイド』合評1より抜粋)


『假面特攻隊2010年号』「オールライダー対大ショッカー」評・記事一覧
・1:「速報! これがオールライダー対大ショッカーだ」
・2:「新たなる旅立ち!!」
・3:ループ設定をもっと活かせ! 「オールライダー対大ショッカー」


仮面ライダーディケイド』はじめ、「スカイライダー」(79)〜「仮面ライダーW」(09)関東・中部・関西の全話視聴率表を、09年末発行の『假面特攻隊2010年号』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20091201/p1)「平成ライダー東西視聴率10年史」大特集に掲載!


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