假面特攻隊の一寸先は闇!読みにくいブログ(笑)

★★★特撮・アニメ・時代劇・サブカル思想をフォロー!(予定・汗)★★★ ~身辺雑記・小ネタ・ニュース速報の類いはありません

ウルトラマン80 43話「ウルトラの星から飛んで来た女戦士」 〜星涼子・ユリアン編開始

(「ウルトラの星から飛んできた」という表記は間違い。「きた」ではなく「来た」が正解です・笑)
ファミリー劇場ウルトラマンエイティ』放映記念「全話評」連動連載!)
『ウルトラマン80』#41「君はゼロ戦怪鳥を見たくないかい?」 〜石堂脚本が頻繁に描く戦後の核家族、情けない父・ちゃっかり息子!
『ウルトラマン80』#42「さすが! 観音さまは強かった!」 〜観音さまが勝利! 児童編終了
『ウルトラマン80』 総論 〜80総括・あのころ特撮評論は思春期(中二病・笑)だった!
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『ウルトラマン80』全話評 〜全記事見出し一覧


第43話『ウルトラの星から飛んで来た女戦士』 〜星涼子・ユリアン編開始!

侵略星人ガルタン大王 遊牧星人ガラガラ星人登場

(作・水沢又三郎 監督・湯浅憲明 特撮監督・神澤信一 放映日・81年2月4日)
(視聴率:関東6.9% 中部13.1% 関西10.9%)
(文・久保達也)
(2010年執筆)


 富士山上空を飛行する未確認飛行物体をキャッチする防衛組織・UGM。


 イトウチーフ(副隊長)とフジモリ隊員が戦闘機・シルバーガルで出動するや、国籍不明の黒い翼の戦闘機もまた、3機編隊で未確認飛行物体を追跡!


 画面左手から右手へと飛行する未確認飛行物体、続いてそれを追跡する3機の戦闘機を、シルバーガルのコクピット内からイトウとフジモリの目線でとらえた主観カットが臨場感満点。地上スレスレに急降下した未確認飛行物体が画面手前で急上昇、さらに追跡する戦闘機もまた3機編隊で同じくそれを披露する操演はまさに妙技!


 戦闘機群の攻撃を受けて、未確認飛行物体は船尾から黒い煙をあげ、UGM専用車・スカウターS7(エスセブン)で出動した主人公・矢的猛(やまと・たけし)隊員と城野エミ(じょうの・えみ)隊員の眼前で富士の樹海に墜落する!


 合流したイケダ隊員やUGM広報班のセラと、墜落した未確認飛行物体の捜索をはじめる矢的とエミ。


エミ「どこから来たのかしら? 誰に追われていたのかしら?」
矢的「いや、あの円盤は……」
エミ「矢的隊員、あなたあの円盤がどの星から来たものか知ってるみたいね」
矢的「いやぁ……」


 矢的のおもわぬピンチに、イケダが意図せず助け舟を出すことになる。


イケダ「とにかくさ、何か破片でも落ちていないか探してみよう。分析すれば何かわかるかもしれない」


 付近一帯を捜索する一同だが……


セラ「なんにもないですよ…… アレ? なんだこりゃ? 空から砂金が降ってきたぜ」
矢的「これは砂金じゃないよ。おそらく円盤を形成していた宇宙の物質だよ」


 画面いっぱいに空から舞う宇宙の物質は、樹木に登った助監督たちが粉を降らせたのではなく(笑)、金属状の荒々しい粒子が空から舞う様子を本編に合成するといった芸コマな映像である。


 そのとき……


女性の声「矢的…… 矢的……」


 おもわず右耳に手をあてる矢的。


エミ「どうしたの?」
矢的「誰かが俺を呼んでるんだ」
エミ「そんな…… 何も聞こえないわよ」


 だが矢的、いやウルトラマンエイティの耳には、助けを呼ぶ声がハッキリと聞こえた!


女性の声「矢的…… 助けて…… 矢的!」
矢的「間違いない。俺に救いを求めてる!」


 イケダの制止を振り切り、矢的は声の主を救うために樹海の奥へ!


 そして、彼の眼前に飛びこんできたのは、はるか後年の映画『ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦! ベリアル銀河帝国』(10年12月23日松竹系公開・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20111204/p1)に登場した惑星エスメラルダの第2王女・エメラナ姫を思わせるような王族のお姫さまのような、白いドレスをまとった若い女性が白いハイヒールで樹海をさまよう姿であった!


矢的「待ちたまえ! 待ちたまえ! 僕はUGMの矢的猛だ。君だね、テレパシーで僕に救いを求めたのは」
謎の女「矢的……」


 崩れおちる謎の女性。それをしっかりと抱きとめる我らの矢的猛!


 そのとき、周囲からガラガラヘビが発するような異様な物音がした!


 ただならぬ気配を感じてあたりを見回す矢的。


 昼間でもウス暗い樹海の中で、一条の陽光が差しこむのをとらえた映像が美しい!


 身構えていた矢的のそばに生えていた樹木に、登山用のステッキであるピッケルがいっせいに突き刺さった!


 そして、矢的の目前に、登山服姿のハイカー風の5人組が突然現れた!


矢的「誰だ? おまえたちは何者だ!?」


 しかし、「矢的隊員〜~!」「先輩〜~~~!」というエミ・イケダ・セラの3隊員の呼び声に気付いて、怪しい5人組はいっせいに姿を消してしまう!


 ブレスレットやイヤリングに宝石が使用されていることから、樹海で発見された女性を「良いところのお嬢さん」だと考えるセラ。いや、宝石泥棒の一味だと考えてしまうイケダ(笑)。ひとり考えこむ矢的。こういうちょっとしたリアクションの点描(てんびょう)によって、登場人物たちの人となりを描き分けていくこともまた実に重要なのだ。


 そんな作戦室に、オオヤマキャップ(隊長)とイトウチーフが入ってくる。


イトウ「矢的、おまえ富士の樹海で、ガラガラヘビの音を発する不気味な人間に出会ったと報告したな」
矢的「ハイ」
イトウ「それで調べてみたんだが、おそらくそれは、宇宙の遊牧民と云われているガラガラ星人ではないかと思うんだ」
矢的「ガラガラ星人? やっぱりそうか」
イトウ「なんだおまえ、知ってたのか」
矢的「いいえ……」
エミ「矢的隊員、あなたはときどき宇宙人みたいなことを云うのね」
矢的「いや、ただそんな気がしたもんだから……」


 ワザとらしいといえばワザらしい描写で(笑)、本話の前にもこのような矢的の宇宙人的な描写はあった。しかし、のちの第50話(最終回)『あっ! キリンも象も氷になった!!』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210315/p1)では、オオヤマキャップの口から彼とイトウチーフが矢的の正体に気づいていたことが明かされている。いま観返すと、この場面はそのキッカケとなった出来事のようにも映り、もちろん後付けでも一応の「伏線」として機能できていたのだと、好意的に解釈したくなるのだ。
 とはいえ、ガラガラヘビと同様の音を発する宇宙人種族のネーミングがガラガラ星人だというのは、あまりに安直にすぎるが(笑)。


 UGMに保護された謎の女性がベッドで目を覚ますと、そばに花束を携えたエミがにっこりと微笑(ほほえ)んでいた。


エミ「気がついたのね」
謎の女「ここはどこ?」
エミ「UGMのメディカルセンターよ」
謎の女「UGM……?」


 赤い縦ジマ模様のワンピースを着せられた謎の女性が、エミに連れられて作戦室に入ってくる。


エミ「皆さん。彼女、元気になりました!」
オオヤマ「おいおい君、寝てなくていいのか」
イトウ「傷の具合…… あれ?」
エミ「あら? 傷がすっかり治っているわ! すごい回復力!」


 お約束でも、こういう超常的な回復力といった描写で、彼女が常人ではないことをシッカリと押さえてもいるのだ。


イトウ「君はどっから来たんですか?」
謎の女「どこから?」
イトウ「どこから来たんですか?」
謎の女「わかりません」
イトウ「わからない? 君はどこから来て、爆発した円盤とはどういう関係なんですか?」
謎の女「わからないんです。私は何も覚えてません」
イトウ「そんなバカな」


 おもわず、彼女に突っかかろうとするイトウ。しかし、仮にもチーフ(副隊長)なのに、血気が強すぎるだろ!(笑)。しかし、それをオオヤマが制止する。


 テレパシーで彼女に語りかける矢的。


矢的「君は僕と同じ、ウルトラの星から来た人間だね。僕にはすぐわかったよ。君はなぜガラガラ星人なんかに追われていたんだ。なんのために地球に来たんだ」
謎の女「わからない。何もわからない」
矢的「だけど君は、僕の名前を呼んで救いを求めてきたじゃないか」
謎の女「わたしは何も覚えてない」


オオヤマ「ショックのために記憶を失ってしまったようだな」
エミ「どうしたらいいんですか?」
オオヤマ「彼女が思い出すのを待つより、仕方がないかもしれんな」
エミ「そんなの消極的です!」
イトウ「そうだ。まず彼女の健康を回復すること。そうすれば記憶を取り戻すかもしれません、キャップ」
エミ「まず、健康第一! ねぇ、名前も忘れちゃったの?」
謎の女「名前?」
エミ「名前がないとなんて呼んだらいいかわからないから困っちゃうなぁ。キャップ、どうします?」
オオヤマ「う〜ん、とりあえずそうだなぁ…… 星涼子(ほし・りょうこ)さん」


 企画段階ですでに彼女の地球人名は決まっていただろうとはいえ(爆)、オオヤマキャップとしては彼女が爆発した円盤の乗組員に違いないと考えていたことから、「星から来たクール・ビューティー」ということで、そう名づけたのだろうか? 即興(そっきょう)のネーミングながらも実にいいセンスである(笑)。ちなみに、「クール・ビューティー」という語句は、1950年代に活躍したアメリカの名女優グレース・ケリーを評して一般化したようだが、本話放映の1981年当時の日本では、まだ「クール・ビューティー」という語句も概念も一般化していなかった。この語句が流通しだしたのは90年代後半ではなかったかと思う。


エミ「うわぁ〜、いい名前! それでは星涼子さん、あなたが記憶を取り戻すのに、わたし全面的に協力しま〜す!」
オオヤマ「矢的、手伝ってやれ」
矢的「はい」


 腕組みしたまま、目線を矢的からチラッとエミの方に向けて矢的に指示を出すオオヤマキャップの演技が、実にそれらしくてよい(笑)。


 まず、健康第一と、矢的とエミ、そして涼子が縄跳びをする。


 画面に映るのは胸から上のみであり、おかげでエミの巨大なバストが上下に激しくブルンブルンと揺れる様子がバッチリ楽しめる…… 今だと女性に対する「セクハラ」だと即座に批判をされてしまうし、そもそもそういった批判を先回りして自粛してしまうところだ。しかし、この当時はそういった概念がまだ不明瞭だったので、各スタッフもそうだとはハッキリ明言せずとも、ドサクサに紛れて下心があるシーンを挿入してしまったといったところか?(笑)


 そういえば、『ウルトラマンタロウ』(73年)第2話『その時ウルトラの母は』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071209/p1)でも、主人公・東光太郎(ひがし・こうたろう)の下宿先の娘・白鳥さおり(しらとり・さおり)が、ほとんど何の必然性もないのに玄関先で縄跳びをしており、演じた朝加真由美(現・あさかまゆみ)の巨大なバストがブルンブルンと揺れていた(汗)。同話を監督した山際永三(やまぎわ・えいぞう)の作品の一部を振り返ってみると、


帰ってきたウルトラマン』(71年)
*第16話『大怪鳥テロチルスの謎』
*第17話『怪鳥テロチルス 東京大空爆
*第23話『暗黒怪獣 星を吐け!』


ウルトラマンA(エース)』(72年)
*第4話『3億年超獣出現!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060528/p1
*第9話『超獣10万匹! 奇襲計画』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060708/p1
*第21話『天女(てんにょ)の幻を見た!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061009/p1
*第28話『さようなら 夕子よ、月の妹よ』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061111/p1


ウルトラマンタロウ
*第1話『ウルトラの母は太陽のように』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071202/p1
*第11話『血を吸う花は少女の精』
*第39話『ウルトラ父子餅つき大作戦!』


 といった具合に、レギュラー・ゲストを問わず、女性の活躍する姿が印象的な作品が多い。



「僕の作品では、女優さん達が縛られたり、着替えたりと、多少なりともエロティシズムを感じるなんて言われたりしているらしいけど、子ども達も結構Hな話は好きだしね。勿論(もちろん)僕らも遠慮はしながらも、そんなテイストを盛り込もうと色々とやっていたわけですね(笑)」

(DVD『ウルトラマンA』Vol.6(デジタルウルトラプロジェクト・04年8月27日発売・ASIN:B00024JJHO)山際永三インタビュー)



 本筋とはなんの関係もない描写なのだが、実は男児向けの子供番組にはこうした場面も味付けとしては必要なのである!? いわば「さわやかエッチ」とでも表現すればよいのであろうか? むしろ、近年の特撮変身ヒーロー作品では各方面に遠慮して、こうした描写が皆無に近いことの方が個人的には実に嘆かわしい(汗)。



 マット運動で前転してズッコケてしまった矢的を笑ったエミが、赤いタンクトップと短パン姿(冬場なのに・笑)で吹き替えなしで前転を披露! バストの次はヒップが拝めるのである(笑)。
 そして、涼子はマットの上でなんと連続でバック転! さらには宙返りまで披露した!! 涼子のアクションはどう見ても吹き替えだが、涼子がショートカットであるのをいいことに、多分小柄な男性が吹き替えているのではなかろうか?(女性のようにも見えるので、極めてビミョーだが!?)


 やはり「健康第一」ということで、涼子にナイフでリンゴをむいて食べさせてあげるエミ。リンゴのおいしさと献身的なエミの姿に感動した涼子は……


涼子「エミさん」
エミ「なあに?」
涼子「あの〜、これ、して下さい」


 左腕にハメていた青い石が光る金色のブレスレットをはずして、エミに手渡そうとする涼子。


エミ「ダメよ。だってそれ、あなたの大切なものなんでしょ?」
涼子「いいんです。お世話になったお礼に、これをエミさんにプレゼントしたいの」
エミ「まあ」
涼子「あたし今、これしか持ってません。エミさんとわたしの友情のために、ぜひそうしてほしいんです」
エミ「わかったわ。ありがとう。わあ、ステキ」


 涼子になにかを食べさせてあげようと果物を買い出しに、もらったブレスレットを腕にハメて出かけるエミ。入れ違いに矢的が入ってくる。


矢的「星くん、なにか思い出したかい?」


 エミとの会話で見せていた明るい表情が一変して、寂しげな表情で無言で首を横に振ってみせる涼子。



●エミに連れられて、作戦室でオオヤマキャップやイトウチーフと初対面した際のポ〜ッとした表情
●イトウチーフや矢的に質問責めにあった際の困惑した表情
●エミと過ごしている際の楽しそうな表情


 涼子を演じている女優・萩原佐代子(はぎわら・さよこ)はセリフはたどたどしいものの、当時は今は亡き化粧品会社・カネボウキャンペーンガール出身の新人でありながら、表情の演技だけは実は見事だったりする。



 なんとUGMの隊員服姿(!)で、自ら商店街の青果店フルーツバスケットを購入するエミ。


 リアルに考えれば、地球防衛軍には600人ほどいるらしい後輩の女性隊員にお遣(つか)いを頼むか、店に配達でもさせればよさそうなものである。しかし、こうしたエミの自らの体を張ったあまりに献身的な姿こそが、のちに皮肉にも彼女に悲劇をもたらす要因になったことを強調するといった意味では、やはり当人自身がこのような行動をとってみせる必要があるのだ。


 その素姓(すじょう)もハッキリとはわからない涼子からもらったブレスレットを身につけて隊員服姿で外出するなどは、真にリアルに考えてみれば防衛組織の隊員として実に迂闊(うかつ)な行為であるには違いない。しかし、これとてエミと涼子に接点をつくって、悲劇ドラマを盛り上がるためという理由から描かれたものだろう。


 買いものを終えたエミを、富士の樹海で矢的が出くわしたハイカー風の男たち=ガラガラ星人のうちのふたりが尾行していく……


 まったく無言で人間体の姿でも「ガラガラガラ」という奇怪な音を立てている不気味さを際立たせる演出が、子供向け変身ヒーロー番組としてはベタなのだが、相応に効果的でもある。


 パトロールから戻る途中のイケダに出くわして、UGM専用車で基地まで送ってもらおうとするエミ。


 そこに、ガラガラ星人が襲いかかる! イケダの奮闘も空(むな)しく、エミは白い車で連れ去られてしまった!


 基地に戻ったイケダの報告を受けて、矢的はイケダを連れて現場の青葉公園に出動!


 エミに恩義を感じていた涼子も……


涼子「わたしも行かせて下さい!」
イトウ「よし!」


オオヤマ「おい。星くん、大丈夫か?」
イトウ「いや、何か思い出すかもしれません」



 そのころ、エミは暗い洞窟の中で、石の柱に鎖で縛りつけられていたのだった。


謎の声「ウルトラの星の使者・ユリアン王女、どうかな気分は?」
エミ「ユリアン王女?」
謎の声「そうだ」
エミ「ちょっと待ってよ。私は城野エミよ。ウルトラの星のユリアン王女って何よ?」
謎の声「黙れ! ブレスレットがなによりの証拠ではないか!」
エミ(心の声)「これは…… そうか、ガラガラ星人はわたしと涼子さんを間違えたんだ。すると涼子さんの正体はウルトラの星の……」


 洞窟の奥の祭壇(さいだん)のような場所から、声の主である侵略星人ガルタン大王が姿を現し、エミにじわじわと近づいていく!


 その名が示すとおり、ガルタン大王は昭和ウルトラ怪獣の中ではかなり特異なスタイルである。例えて云うなら、『タロウ』第14話『タロウの首がすっ飛んだ!』に登場したえんま怪獣エンマーゴと、第33話『ウルトラの国大爆発5秒前!』~第34話『ウルトラ6兄弟最後の日!』の前後編に登場した極悪宇宙人テンペラー星人を、足して2で割ったような感じだとでも形容すればいいのだろうか?


 『ウルトラマンメビウス』(06年)のころになると、第16話『宇宙の剣豪』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060928/p1)に宇宙剣豪ザムシャーなどといった、SF的な未知なる神秘の宇宙人などではなく、「日本の侍」を模してイイ意味での「B級」であることにも開き直って、「SF」ではなく「劇画」的にカッコよくした宇宙人キャラクターなども登場してくる。そして、幼児はともかく、往時はハイブロウ指向であった年長の特撮マニアたちも、それに対して「リアルじゃない!」などといった中二病的な批判などもしないようになってきた。
 ガルタン大王も、放映当時の年長の特撮マニアたちは今までのウルトラシリーズに登場してきた宇宙人たちとはややラインが異なることに抵抗感は持っただろうが(汗)、今となっては許せるのではなかろうか?(汗)


 ガルタン大王もはまさにそのザムシャーとも同様の「鎧武者(よろいむしゃ)」といった趣である。しかし、近世の武士道や騎士道を兼ね備えた孤高の気高い武士ではなく、古代の未開な蛮族の王といった感じでタチは悪そうだが(笑)。


 金色と青を中心とした配色が、不思議にも涼子がハメていたブレスレットと共通しているというのも、広い意味での因縁(いんねん)を感じさせている。


 背中の金色のマントは、布ではなく硬質ウレタンを用いて製作されたようだ。しかし、なんとそのマントには多数の穴が開けられており、さらには武器である中国の青龍刀のような幅広の長剣にまで穴が開けられている!


 冒頭でユリアンの宇宙船を追撃する際に、ガラガラ星の宇宙船を地球の戦闘機にカモフラージュしているあたりなどは、宇宙の遊牧民という設定や野蛮な見た目に反して、なかなかの知能犯で高い技術であったりもする!(ウルトラ宇宙人の中ではあまり類例を見ない。とはいえ、高度な科学力ではなく呪術のような能力由来のものなのかもしれないが!?)


 宇宙の遊牧民という設定のとおりで、都に住む高貴な大王さまではなく、草原に割拠する蛮族の大王としての威容を誇る風格のあるデザインではある。赤い目や開きっぱなしの口にぎっしりと歯が並んでいる表情などは、どことなく愛嬌(あいきょう)を感じさせて、憎めないものがあるのだ(笑)。



ガルタン大王「ユリアン王女。ウルトラマンエイティはどこにいる? どんな姿になっている!?」
エミ「ウルトラマンエイティ?」
ガルタン大王「おまえは、ウルトラマンエイティに会いに来たはず」
エミ(心の声)「ガラガラ星人はウルトラマンエイティを探しているんだわ」
ガルタン大王「奴はどこで何をしてるんだ!?」
エミ「ウルトラマンエイティを探してどうするつもりなの?」
ガルタン大王「知れたことよ…… 奴を殺す! 白状しろ!」


 エミの首のそばに、手にした剣を激しく打ちつけるガルタン大王!


 ここ4話ほどは「戦闘」中心とは真逆な「ユルユル」としたエピソードが続いていた『80』だった。しかし、第39話『ボクは怪獣だ~い』評()でもふれたとおり、タツミムック『検証・ウルトラシリーズ 君はウルトラマン80を愛しているか』(辰巳出版 06年2月5日発行・05年12月22日実売)での同話を脚本を担当した平野靖士のインタビュー「善悪の割り切りがはっきりある中での痛快な戦いというのが、最もウルトラマンらしい形」をまさに体現したかのような「勧善懲悪」劇としての「悪党」描写となっており、ガルタン大王の声を担当している当時は同人舎プロに所属していた村松康雄の熱演も実にハマっている!


エミ「知らない! 知ってたって云うもんか!」


 当初はユリアン王女であることを否定したエミであった。しかし、あの涼子の正体がそうであったことを知るや、エミはとっさに健気にも大局を考えて、彼女の身代わりとなって、場合によっては果てる道を選ぶ決意をここでしてみせたのだといえよう!


 本話でのガラガラ星人たちの目的は「地球侵略」ではない。「ウルトラマンエイティを殺すこと」。ただそれのみなのである。近視眼的な「地球防衛」という観点からすれば、いわば「厄介者(やっかいもの)」であるエイティやユリアン王女をガルタン大王にくれてやった方がよいのではないのか?……


 これとよく似たシチュエーションが、『ウルトラマンA』第26話『全滅! ウルトラ5兄弟』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061030/p1)で描かれている。地獄星人ヒッポリト星人がウルトラマンエースを明け渡せと、火炎地獄や風地獄を起こして街に壊滅的な被害を与えて、市民たちからエース不要論が高まる中で、防衛組織・TAC(タック)の隊員たちですら市民たちと同じ心境に陥(おちい)ってしまい、山中隊員がついそれを口走ってしまうのだ。


 TACの竜五郎(りゅう・ごろう)隊長は


「バカモン! 君たちはそれでもTACの隊員か!?」


 と隊員たちを一喝(いっかつ)し、徹底坑戦を叫ぶのである! このときの竜隊長は本当にカッコよかった。本話でのエミの姿はまさにそれを彷彿(ほうふつ)とさせるものがある。だが、まさにこの姿勢こそが竜隊長とは真逆の結果を引き起こして、彼女自身に悲劇をもたらすことになってしまうのだ……



ガルタン大王「ユリアン王女。おまえがシラをきっても、ウルトラマンエイティはユリアン王女が我々に捕らわれたと知れば、必ずここにかけつけてくるんだぞ!」
エミ「ウルトラマンエイティがここに?」
ガルタン大王「こやつ〜~、拷問(ごうもん)にかけろ!」


 ガラガラ星人のひとりがエミを激しくムチ打つ! と云いたいところだが、ガラガラヘビというよりも触角があることからナメクジのような印象も受けるガラガラ星人のマスクは、視界があまりよくなかったのか、なにか動きがモサ〜っとしていて、正直エミの痛みがあまり伝わってはこない(笑)。


ガルタン大王「苦しめば苦しむほど、エイティを早く呼び寄せられる!」


 そのとき、エミが左腕にハメていたブレスレットから、鈴の音(ね)のようなリンリンという音が鳴り響いた!


 ガラガラ星人を追ってアジトの近くにたどり着いた矢的・涼子・イケダの3人。しかし、矢的は涼子の耳のシルバーイヤリングが揺れている様子に気づいた!


矢的「星くん、君のイヤリングが」
涼子「思い出したわ! このイヤリングはブレスレットが鳴ると共鳴するのよ! 矢的さん、これでエミさんの居場所がわかるわ!」
イケダ「あ〜、そりゃあ最高だ!」


 歓喜する一同の前に、例の謎の5人組が華麗にジャンプを披露して現れた!


イケダ「あっ、おまえら何者だ!?」
涼子(心の声)「彼らの正体は、ガラガラ星人だわ!」


 涼子が指を「パチッ」と鳴らすや、いっせいに謎の5人組がガラガラ星人の正体を現した!


 その指パッチンは単なる指パッチンではなく、涼子のウルトラ族としての超能力を発現するものでもあるのだろう!


 矢的・涼子・イケダがガラガラ星人たちと格闘!


 しかし、この場面でもガラガラ星人の動きが妙にモサ〜としている(笑)。まだ新人でアクションが不得手だと思われる涼子役の萩原佐代子に気を遣ったのだろうか? イケダが「おい、ホラ!」とガラガラ星人に上を向かせて油断させ、首を絞める演出など、どことなくほのぼのとしている。



 ところで、昭和ウルトラシリーズに登場する宇宙人は圧倒的に単体での行動が多い。集団で隊員たちと等身大アクションが展開された例は非常に数少ないのだ。第1期ウルトラシリーズでは皆無であり、第2期ウルトラシリーズでも『A』第50話『東京大混乱! 狂った信号』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070415/p1)において、宇宙怪人レボール星人である赤・青・黄色の体色の3人組が(まさに信号機を自在に操った宇宙人らしい・笑)、東京の地底で主人公の北斗星司(ほくと・せいじ)や山中隊員とトランポリンアクションのバトルを繰り広げたくらいなのだ。


 当時は『仮面ライダー』(71年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20140407/p1)の大ヒットに影響されて、『スペクトルマン』(71年・ピープロ フジテレビ)・『ミラーマン』(71年・円谷プロ フジテレビ)・『ジャンボーグA(エース)』(73年・円谷プロ 毎日放送)・『流星人間ゾーン』(73年・東宝 日本テレビ)・『スーパーロボット レッドバロン』(73年・宣広社 日本テレビ)などの特撮巨大ヒーロー・特撮巨大ロボット作品の中でも、人間大サイズの集団宇宙人や戦闘員たちとの等身大バトルが描かれることが目立つようになっていた。
 それにもかかわらず、頑(かたく)なにそうした要素を低俗と見てか、等身大アクションを導入せずに、人間ドラマや社会派テーマの充実を優先していたことこそが、後年に「長じてからの再視聴でも再鑑賞に堪えうる高いドラマ性」を達成すると同時に、TBS・橋本洋二プロデューサー主導の第2期ウルトラシリーズが抱(かか)えていた「弱点」でもあったのだと、近年になって筆者はそのように考えだしている。
 とはいえ、『ウルトラマンレオ』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090405/p1)では、ようやく等身大宇宙人と防衛組織・MAC(マック)との等身大バトルが描かれるようにはなった。しかし、末端の二等兵・戦闘員クラスのザコが多数いる悪役キャラではなく、単体のメインゲストである敵宇宙人相手であったからか、これを即座に倒してしまうかたちでのMAC隊員たちの強さを描くワケにはいかなかった(汗)。そして、他社作品と比較すればウルトラシリーズの美点だったともいえるややリアルタッチな演出が災いして、「爽快感」よりも「凄惨」そのもの(爆)だったりもする、子供たちでもドン引きするような描写になってしまった点においては、また別の致命的な「大きな問題」が生じてしまってもいたのだが(笑)。


 それを思えば、本作『80』では、第5話『まぼろしの街』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100530/p1)の四次元宇宙人バム星人、第13話『必殺! フォーメーション・ヤマト』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100725/p1)のドクロ怪人ゴルゴン星人、第30話『砂漠に消えた友人』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101120/p1)の変身宇宙人ザタン星人、そして今回のガラガラ星人と、シリーズ初期のころから集団宇宙人がたびたび登場して等身大バトルが展開されていた事実は、幼児や子供たちが退屈しがちな本編ドラマ部分にアクション場面の見せ場を導入できたことにもなっており、改めて再評価されてもよいことだろう。



 激しい戦い(には見えない?・笑)の末に、ガラガラ星人の姿はいっせいに消滅、爆発を遂げた!


 爆風で倒れ伏した涼子を介抱(かいほう)する矢的。


矢的「星くん、しっかりしろ! 星くん!」
涼子「矢的!」
矢的「どうした!?」
涼子「思い出したわ! 私はウルトラの星のユリアンよ!」
矢的「えっ、ユリアン? ユリアン王女か!? そうか、僕がウルトラの星から地球に来たとき、君はまだちっちゃな女の子だったもんなぁ」


 ……えっ!? ウルトラ一族の数万歳単位での長寿設定を考えると、ユリアンがまだちっちゃな女の子だった時期は数千年だろうし、エイティが地球に来訪したのも数年前のことだろうから、ちょっとおかしな描写だなぁ(笑)。



 はるか後年のウルトラマンエイティ客演編である『ウルトラマンメビウス』第41話『思い出の先生』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070218/p1)において、防衛組織・GUYS(ガイズ)のヒビノ・ミライ=ウルトラマンメビウスに対してエイティがこう語りかける場面がある。


エイティ「もともと私は地球にマイナスエネルギーの調査のために訪れた。そして人間と触れ合ううちに、人間の持つ、限りのない可能性を感じた。それはメビウス、君も同じだろ?」
ミライ「ハイ」
エイティ「しかし人間は、その可能性を間違った方向に向けかねないこともわかった。そのことによって生まれるのが」
ミライ「マイナスエネルギー」
エイティ「そうだ。そして私は考えたのだ。教育という見地(けんち)からマイナスエネルギーの発生を抑えられるのではないかと。私は勉強を重ね、思春期といわれる不安定な時期の中学生の教師になった」



 なるほど、矢的猛として中学教師となる数千年も前(!)からエイティは地球に滞在しており、マイナスエネルギーについて勉強を重ねていたのかもしれない!? ということは、エイティは『ウルトラマン』(66年)第1話『ウルトラ作戦第一号』で、初代ウルトラマンが宇宙怪獣ベムラーを追って地球に来たころには、すでに地球に来訪していたのかもしれないのだ!? ……そのワリには矢的猛は世慣れていないところが多いので、我ながら心にもないことをつらつらと書きつらねているけど(笑)。



涼子「矢的、ガラガラ星人はあなたを殺すために地球にやって来たのよ」
矢的「なんだって? 俺を?」
涼子「ええ。ウルトラの星を侵略しようとしたガルタン大王は、あたしたちに反撃されて、王子を失ったのよ。ガルタン大王はその復讐のために、ウルトラマンエイティを殺そうとしているの。私はそれを知らせるために……」


 この涼子のセリフは、まさに当時の小学館『てれびくん』で連載されていた居村眞二(いむら・しんじ)先生によるコミカライズの最終章『ウルトラマン80 宇宙大戦争』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110107/p1ISBN:4813020089)で描かれた、ウルトラ一族VSバルタン星人大軍団のスペース・オペラを彷彿とさせるものがある。特撮予算的には大変だろうが、願わくばセリフのひとことのみで終わらせるのではなく、こういったところこそをきちんと映像化して、目で見てもわかるようなスケール感を出してワクワクさせてほしかったところだ(笑)。



矢的「そうか、それでわかった。それで奴らは、君と間違えて城野隊員を…… 城野隊員が危ない! 城野隊員は、俺がウルトラマンエイティだってことを知らないんだ!」
涼子「急ぎましょう! 矢的!」


 矢的・涼子・イケダはエミの救出に向かう! ガラガラ星人のアジトである、オープンセットに作られた高くそびえる山と、画面右側に実景の山と手前に小さく映る3人の合成カットも目を引く! そして、ホリゾントではない本物の青い空は、実にリアルな感覚を醸(かも)しだすのだ。


イケダ「あっ、鉄条網(てつじょうもう)だ。よし、俺にまかせとけ! このカッターで」


 どう見ても単なる工作用のカッター(笑)で鉄条網を切断しようとしたイケダを矢的が制止し、カッターを取り上げて鉄条網に投げつける!


 火花が散る鉄条網! セリフでそれと語らせずに、カッターでふれたら感電死していたことを映像で示してみせつつ、同時に敵の悪辣さをも示している描写でもある!


 だが、それを見て、涼子は即座に鉄条網に向かって走りだして、人間技とは思えない跳躍力で華麗に宙返りでそれを跳び越えてしまったのだ! もちろん、彼女の正体が人間ではなくウルトラ一族であることを示す描写でもある!


涼子(心の声)「どうしたの、矢的? 早くいらっしゃい!」


 自分がウルトラの星の王女・ユリアンであることを思い出した途端に突然、矢的に対して命令口調になる涼子(笑)。


 しかし、そんな超人的な跳躍力を第三者に見せてしまっては、矢的の正体も疑われてしまうことにも思い至らない「世間知らず」さも、このひとことで二重三重に含意させてもいるのだ。これまた、「世間知らず」=「王族」といったイメージで、ウルトラ一族の王族であるという設定を念押しにしている描写でもある。


矢的(心の声)「ダメだ! イケダやみんなは、俺がウルトラマンエイティであることを知らないんだ。俺は俺の方法でやる!」


 矢的、崖の前に生(は)えていた竹の1本を引っこ抜いて、それを持って走りだして、まさに棒高跳びの要領で鉄条網を跳び越える!


矢的「イケダ、俺と同じ方法で来るんだ!」
イケダ「ハイ、了解! よ〜し!」


 イケダもまた竹を引っこ抜き、矢的と同様にカッコよく決めようとするが…… 途中で見事にコケてしまった!


イケダ「あっ、痛っ! あイタ〜~~」


 こんな緊迫した場面においても確実に笑いをとってしまうイケダ隊員は、なんとも愛すべきキャラクターであった(笑)。



 ガラガラ星人の配下の報告を受けているガルタン大王。


ガルタン大王「なに!? いよいよ来たか、ウルトラマンエイティ!」


 思わず身を乗り出そうとするエミを、剣で制止してくるガルタン大王。


ガルタン大王「あわてることはない、ユリアン王女。(配下の者たちに)散れ〜~!」


 物陰にいっせいに身を潜めて、エイティこと矢的たちの突撃に備えるガラガラ星人たち。


 そこにエイティ=矢的とユリアン=涼子が突入! ガラガラ星人の槍を奪い取って、格闘を演じる矢的!


 その姿に衝撃を受けるエミ!


エミ「矢的隊員!?」
矢的「城野隊員!」
ガルタン大王「動くなエイティ! 武器を捨てろエイティ! これが見えんのか!」


 エミに剣を突きつけるガルタン大王! 矢的、やむなく光線銃・ライザーガンを捨てる。


ガルタン大王「エイティ、UGMの隊員とはうまく化けたものだな」
エミ(心の声)「矢的隊員、あなたはやっぱりウルトラマンエイティだったのね……」


 絶体絶命のピンチに際して、矢的に口頭ではなくテレパシーを送る涼子。


涼子「猛、あたしになにかできることはない?」
矢的「ダメだ、動いちゃ。城野隊員が危ない!」


エミ(心の声)「矢的隊員、わたしをダマすなんて……」


 そのとき、ガラガラ星人のひとりが矢的に向かって槍を投げつけた!


エミ「猛、あぶない!」


 エミ、ガルタン大王の剣から逃れて、華麗に宙返りして矢的の前に着地し、背中に槍の直撃を受ける! まさに矢的の盾となったのだ!


 ……ウ~ム。ユリアン王女のようなウルトラ一族でもないのに、ユリアンのように華麗な宙返りをしてしまうとは、ややムリのある描写ではあった(笑)。


 とはいえ、もたもたと駆け寄っていたら、矢的をかばうのには間に合わなかっただろうし、このエピソードのノルマ(爆)としてはここで死んでもらわないと仕方がない(汗)。そう考えると、それではどのような描写であればよかったのかの代案も思いつかないのだ。そうなると、やや苦しいけれども、とっさの華麗な宙返りでの駆け寄りが落としどころだったといったところか?


矢的「エミ!」
エミ「猛……」
矢的「しっかりしろ!」
エミ「お願いよ…… ガラガラ星人をやっつけて……」
矢的「わかった! 頼む!」
涼子「はい!」


 瀕死のエミを涼子に任せて、矢的はガラガラ星人の配下を蹴散らして、憎むべき凶悪な敵・ガルタン大王を倒すため、変身アイテム・ブライトスティックを高々と掲げた!


矢的「エイティ!」


 宙を華麗に回転して、アジトの山から出てくるウルトラマンエイティ!


 オープンセットの岩山が大爆発!


 オープンのあおりで撮られたエイティが岩山に向かって身構える!


 ガルタン大王も巨大化! 下から見上げたアングルでのオープン撮影で、崩れた岩石を盛大に蹴り飛ばしていくサマは大迫力!


 ファイティングポーズを決めるエイティの上半身もオープンのあおりで撮られているが、巨大感をさらに出すための対比として、画面右には樹木のセットが律義に用意されてもいる!
 がっちり組み合う両者までオープンのあおりで撮られており、これまた巨大感が絶妙に表現されている。しかし、ガルタン大王がエイティに左足でキックをかましてエイティを投げ飛ばし、エイティが着地してからはスタジオセットに移っている。


 ガルタン大王、鞘(さや)から剣を引っこ抜いて、エイティに襲いかかる! その際に鞘を乱暴に投げ捨てているのがまた、ガルタン大王の粗暴な性格をも表現できていてよい!


 エイティ、ガルタン大王の剣をなんと宙返りでよけた!


 さらに、襲いかかってくる剣を、今度はバック転でかわした!


 エイティ、ガルタンの剣を真剣白刃取り(しんけんしらはどり)の要領で、両手の素手で挟んで受けとめる!


 そして、白刃取りのお約束で(笑)、両手をヒネることで、剣ごとガルタン大王を投げ飛ばす!


 しかし、ガルタン大王も即座に反撃に転じて、素早く剣でエイティを小突き回してくる!


 ここで再びオープンのあおり撮影が併用されるが、ガルタン大王のアクションは等身大のガラガラ星人配下たちよりもスピーディだ! 大王の方がよほど動きにくそうなボリューミーな造形なのに! 着ぐるみうんぬんよりも、スーツアクターの技量が優れていたといったところか!?


 今度はスタジオの天井上から見下ろしたアングルで(!)、エイティが豪快にガルタン大王を投げ飛ばす!


 再びオープンのあおり撮影。


 ファイティングポーズを決めるエイティ!


 ガルタン大王は長剣を大地に勢いよく突き刺した!


 すると、スタジオ天井上からのアングルで、剣が刺された地点からエイティに向かって、地面を勢いよく光弾が地走りしていく!


 エイティ、画面手前からジャンプし、大きな岩がある画面奥へと逃れる!


 剣を大きく振り回すガルタン大王!


 エイティ、盾になってくれた大岩を持ち上げ、ガルタン大王に向かって投げつける!


 ガルタン大王、剣で岩を蹴散らすや、剣の先から波状光線を発射!


 エイティの足元が大爆発!


 たまらず大地に倒れるエイティだが、ここで再びオープンのあおり撮影!


 しかも、逆光でエイティの姿はシルエットのように黒く映し出されて、カラータイマーが赤く点滅する様子だけが印象強く残る演出!


 つい最近、2010年11月26日にバンダイビジュアルから発売されたばかりのオリジナルビデオ作品『ウルトラ銀河伝説外伝 ウルトラマンゼロVSダークロプスゼロ STAGE Ⅰ(ステージ・ワン) 衝突する宇宙』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20111201/p1)の冒頭で描かれた、逆光に浮かんだニセウルトラ5兄弟たちの演出なども個人的には想起されてきてしまう(笑)。


 再びセットに戻って、画面手前に倒れたエイティの顔を配置し、後方に剣で襲いかかろうとしてくるガルタン大王を映す!


 大地を転がって剣をよけていくエイティのカットをつなげるあたりもカッコいい!


 剣を振り回して襲いかかってくるガルタン大王に、エイティは左右の手から手裏剣状の光線・ウルトラダブルアローを放った!


 そして、ガルタン大王の剣を遂に切断された!


 エイティ、さらにジャンピングキック!


 ガルタン大王の右腕に致命傷を与える!


 そして、両腕をL字型に組んで、必殺のサクシウム光線を放った!!


 遂に大地に崩れ落ち、大爆発を遂げるガルタン大王!



――第43話『ウルトラの星から飛んで来た女戦士』のガルタン大王の立ち回りはダイナミックですね。
「これはもうまさに時代劇、チャンバラものをやりますっていうね。星人が刀を持っていたし。岩をちぎっては投げ、ちぎっては投げっていう。「講談ものみたいなことを特撮でやったらどうなる?」というのを試そうという思いがあったんですよ。前半は割とシリアスな話が多かったのが、中盤になるとくだけた怪獣が出てきてたりもしたから、なんでもありになったんですね(笑)」

タツミムック『検証・ウルトラシリーズ 君はウルトラマン80を愛しているか』(辰巳出版・06年2月5日発行・ISBN:4777802124)特撮監督 神澤信一


(引用者注:「岩をちぎっては投げ」という描写は実際には存在しない。「土砂が盛大に蹴散らされる」が正解だが、「千切っては投げ」は古代中国の「戦記もの」や大正時代の「講談」(チャンバラもの)などに登場する英雄豪傑が一騎当千するさまを形容する際の常套句であるので念のため・笑)



 のちに、『ウルトラセブン 太陽エネルギー作戦』(94年3月21日・日本テレビ)・『ウルトラセブン 地球星人の大地』(94年10月10日・日本テレビ)・『ウルトラマンティガ』(96年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961201/p1)・『ウルトラマンガイア』(98年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19981206/p1)、オリジナルビデオ作品『ウルトラマンネオス』(00年)・平成『ウルトラセブン』98年版と99年版などの監督も務めた、神澤氏の特撮監督としての『80』での初仕事が本話なのだった(ちなみに氏のデビューは、先の『A』終盤の第50話『東京大混乱! 狂った信号』)。


 時代劇の殺陣(たて)を応用したスピーディなアクション、オープン撮影を多用した巨大感の表現、変幻自在に切り替わるカメラワークともう見応え満点! いくら助監督として現場を長く経験してきたとはいえ、特撮監督としての初仕事とは思えない見事な凝りまくったものであった。同書籍で脚本家・平野靖士が主張していた「善悪の割り切りがはっきりある中での痛快な戦い」を表現するには、氏の起用はうってつけとなっていた!



 遂にガルタン大王を倒したエイティ。赤い渦に包まれて矢的の姿に戻るや、即座にエミのもとへと駆け寄っていく!


 美しい夕暮れの中、涼子の介抱も空(むな)しく、横たわるエミ……


矢的「あっ、ユリアン。城野隊員は!?」
涼子「あらゆる手を尽くしたけれど、ダメだったわ」
矢的「えっ!? ……城野隊員!」
エミ「……ありがとう、猛……」
矢的「隠していて悪かった。俺がウルトラマンエイティなんだ」
エミ「薄々感じていたわ……」
矢的「エミ、君は俺のために……」
エミ「あなたは、地球にとって大切な人なのよ。あなたには、これからも地球のために、戦ってほしい人なのよ。だから…… だから…… だから わたし、少しも後悔なんかしてないわ」


 「だから」を3回もリフレインすることにより、「少しも後悔なんかしてないわ」といった想いがいっそう強調されているのだ。


矢的「エミ!」
エミ「……涼子さん…… 涼子さん、どこ……」


 末期(まつご)が迫って、目が見えなくなってしまったことを示すこのセリフがまた、この場面の「悲劇性」をダメ押ししていくのだ……


涼子「わたしはここよ。ゴメンなさい、エミさん。わたしがあなたにブレスレットをプレゼントしたばかりに……」
エミ「……いい…… いいのよ、気にしないでね、涼子さん。そんなことより、お願いがあるの」
涼子「なんなの? エミさん!」
エミ「わたしの代わりにUGMの隊員になって、矢的隊員を助けてあげて…… 約束して……」


 「悪い怪獣や宇宙人と戦って」でも「地球の平和を守って」でもないのだ。UGMの隊員となって「矢的隊員を助けてあげて」なのである。ハッキリとは語らずとも、エミが矢的に好意を持っていたことをも匂わせる粋(いき)な描写ではある……


涼子「私がUGMの隊員に!? わかったわ、約束するわ!」
エミ「ありがとう…… 猛…… さよなら……」
矢的「エミ……」


 そのまま顔を伏せ、ピクリともしないエミ……


イケダ「せんぱ〜~い! 城野隊員は?」


 今ごろになって現れるイケダの問いに、矢的は無言で首を振る……


イケダ「え〜~~っ!? 城野たいい〜~~ん!!」


 イケダの絶叫がこだまする!



 そして、作戦室では……


オオヤマ「なに? 城野が!?」
フジモリ「キャップ!」
イトウ「どうしました?」
オオヤマ「殉職した」
フジモリ「え〜~~っ!?」
イトウ「まさか?」
オオヤマ「城野…… 君はよくやった……」


 おもわず目を伏せるオオヤマキャップ。悔しそうに目を閉じるフジモリ。


イトウ「そんな…… そんなバカな!?」


 絶句したまま、かすかな涙があふれ出るイトウチーフ。


 この場面の一同のさりげない泣きのお芝居は、役者陣がみんな達者であることもあってか絶品であり、こちらも連られて目頭が熱くなってくる……


 ここで名作テレビアニメ『宇宙戦艦ヤマト』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100829/p1)の劇中女声コーラスでも有名な川島和子のスキャットによる、悲しみを表現する楽曲が使用されているのがまた泣かせてくれるのだ。


 『ウルトラマン80』第18話『魔の怪獣島へ飛べ!!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101207/p1)ラストでも、実は正体は本話同様に宇宙人であったゲストヒロイン・星沢子(ほし・さわこ)によって蘇生されたイトウチーフと矢的が海を見つめるシーンに使用されていた名曲である。劇中音楽をほぼ完全収録した2枚組の音盤『ウルトラマン80 ミュージック・コレクション』(日本コロムビア・96年8月31日発売・ASIN:B00005ENF5)では、本曲を収録したブロックに「無償の愛」なるタイトルがつけられていた。エミの行為はまさに「無償の愛」なのかもしれない……(コロムビアはなぜ「放映30周年記念」としてこれを再発しなかったのか!?・笑)



 エミを抱え上げて、沈む夕日に向かってエミに誓う矢的。そして涼子。


矢的「エミ、約束するよ。地球の平和のために、俺は力いっぱい戦っていくよ」
涼子「エミさん、私もあなたに約束します」
イケダ「……ウヒッ……」


 言葉にならず、ただ嗚咽(おえつ)して上を向くイケダ……


ナレーション「城野隊員の美しい愛の行為は、UGM隊員の心に、いつまでも、深く深く残ることだろう」





 連続ドラマのレギュラーが降板する理由としては、役者本人のスケジュールの都合や健康上の理由などの個人的なものと、作品のイメージ一新をはかるために意図的にキャラクターを入れ替えするものと、二通りが挙げられる。


 『80』と同時期の作品の場合、『(新)仮面ライダー』(79年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210102/p1)で主人公の筑波洋(つくば・ひろし)をスカイライダーに改造し、その後はネオショッカーと戦う洋に協力した志度敬太郎(しど・けいたろう)博士を演じた田畑孝は、第13話『アリジゴクジン 東京爆発3時間前』をもってレギュラーを降板している。これは氏の健康上の理由によるものであり、放映中の翌80年に氏は亡くなっている(合掌)。
 第14話『ハエジゴクジン 仮面ライダー危機一髪』以降、代わりに筑波洋の年長者の後見人として、洋の大学時代の先輩・谷源治郎(たに・げんじろう)がレギュラー入りすることとなった。まさにこれが転機となり、以降は初期のレギュラー出演者たちが次々と番組を降板することとなっていった。
――『帰ってきたウルトラマン』の防衛組織・MAT(マット)の初代隊長・加藤勝一郎(かとう・かついちろう)役でも知られている故・塚本信夫は、『仮面ライダースーパー1(ワン)』(80年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210822/p1)でも引き続いて、この谷源治郎の役で出演することになった。もちろんご存じのとおり、第1期仮面ライダーシリーズこと『仮面ライダー』初作(71年)~『仮面ライダーストロンガー』(75年)で、ライダーたちの良き年長者の後見人であった立花藤兵衛(たちばな・とうべえ)役だった故・小林昭二(こばやし・あきじ)の処置に準じたものでもあった――


 続く第15話『恐怖 アオカビジンの東京大地震』を最後に、志度ハンググライダークラブのメンバー・杉村ミチを演じていた伏見尚子がなんの説明もなく姿を消してしまう(第16話『不死身のゴキブリジン G(ゼネラル)モンスターの正体は?』では、ネオショッカー出現を知らせる電話の声のみを演じていた)。そして第16話を最後に、ネオショッカー出現に必ず出くわしてしまうルポライター・飛田今太(とんだ・こんた)を演じていた東隆明も降板してしまう(氏は『ウルトラマンレオ』第12話『冒険野郎が来た!』では「東龍明」の名義でアフリカ帰りのMAC隊員・佐藤三郎を演じていた)。これは第14話から喫茶ブランカの従業員として、沼さん(演・高瀬仁)がコメディリリーフとして設定されたことが大きかっただろう。
 さらに、第17話『やったぞ! Gモンスターの最後』をもって、志度博士の助手だった叶みどり(かのう・みどり)を演じていた田中功子と、志度ハンググライダークラブのメンバー・野崎ユミを演じていた巽かおりも、ネオショッカー大幹部・ゼネラルモンスターに「全治10ヶ月」の重傷を負わされたためにという理由をつけて姿を消してしまう――ただし、ユミは第33話『ハロー! ライダーマン ネズラ毒に気をつけろ!!』で、喫茶ブランカのバイトとして復帰して、第54話(最終回)『さらば筑波洋! 8人の勇士よ永遠に……』まで出演することにはなる――。
 その当のゼネラルモンスターを演じた堀田真三(ほった・しんぞう)自身もまた、その正体である怪人ヤモリジンに変身するもスカイライダーに敗北し、ライダーともども自爆を試みるが、次なる大幹部・魔神提督に抹殺されるかたちで同話をもって降板していた。


 この第17話の時点でシリーズ序盤から出演していたレギュラーで残ったのは、主人公の筑波洋を演じた村上弘明と、叶みどりの弟・シゲルを演じた白鳥恒視のみである。「そして誰もいなくなった」とはならなかったものの毎週、確実にレギュラー出演者が少しずつ姿を消していくというのは異例の事態であったが、昭和のライダーシリーズは脇役キャラクターがほとんどドラマやテーマを抱えていないために、作品の重要な何かが棄損してしまったといった感じにはならず、あまり気にならなかったことも事実だが(笑)。


 第3次怪獣ブームの中、講談社の幼児誌『テレビマガジン』における旧作の特集記事や関連書籍の出版、再放送などから新作を求める声が高まって、それに応えるかたちで製作された『(新)仮面ライダー』であった。しかし、当初は視聴率が10%台半ばであったために(それでも当時としては高視聴率の番組だとは思うものの、製作者側はそうは思わなかったのだ)、第1クールを放映中の時点で、東映毎日放送の間で大きな軌道修正を図ることが検討された。
 まず、海外SF映画『スーパーマン』(78年アメリカ・79年日本公開)の公開に影響を受けて設定されたという、スカイライダーの飛行能力の事実上の排除などもそれにあたる。脚本家の入れ替えもあった。第1期ライダーシリーズの中心人物であり、『(新)仮面ライダー』でもメインライターだった故・伊上勝(いがみ・まさる)でさえ、2クールをもって脚本から降りている――同人ライター諸氏による関係各位へのインタビューによると、伊上勝はスランプに陥っており書けなくなっていたようだが(汗)。代わりに、江連卓(えづれ・たかし)がメインライターに昇格し、次作『仮面ライダースーパー1』でもメインライターとして続投した――。


 しかし、レギュラー陣の交代の話とはズレてしまうが、この軌道修正で提案された「歴代ライダーの客演」という強化案こそが、この番組を救うこととなった! ちなみに、この強化案では、実現はしなかったが、7人ライダーのエネルギーによって新仮面ライダー・V9(ブイナイン)が誕生し、スカイライダーと交替、もしくはスカイライダーと共闘するという、実に劇的な案までもが検討されていたという!
 その仮面ライダーV9とは米航空宇宙局NASA(ナサ)の宇宙飛行士・沖正人(おき・まさと)が変身するメカニックライダーである。仮面ライダースーパー1の原形となる設定が、早くもこの時点で生み出されていたのだ。V9は80年春公開の映画『東映まんがまつり』での『(新)仮面ライダー』劇場版でのデビューも想定されており、ギリギリまで実現が検討されたものの、『仮面ライダー』次作製作のGOサインも出たために、V9は次回作の主人公ヒーローとして、改めて企画が練り直されることとなったのだ。


 話を戻すが、『スカイライダー』におけるレギュラー出演者の総入れ替えは、番組刷新をはかったものである。しかし、それが功を奏したのかはわからない。同作の視聴率の上昇は第2クール中盤から第3クールいっぱいまで頻発される先輩ライダー客演編にあったと思うからだ(笑)。



 『80』放映開始の直前まで放映されていた、東映スーパー戦隊シリーズバトルフィーバーJ』(79年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20120130/p1)でも、1年間の放映期間中に主役級のヒーロー・ヒロインのうち、2名ものメンバーチェンジが発生するという異例の事態が発生している。
 第24話『涙! ダイアン倒る』においては、外人女性ダイアン・マーチンことフィーバー隊の女戦士であるミス・アメリカの正体が敵組織・エゴスに知られてしまい、さらにはゲスト怪人・ドラキュラ怪人に襲撃されて体力を失ってしまう。ダイアンの妹・キャサリンの護衛のために来日していたFBIの捜査員・汀マリア(なぎさ・まりあ)(演・荻奈穂美(おぎ・なおみ))は、ダイアンからバトルスーツを託されて、以降は彼女が2代目ミス・アメリカとなって活躍することとなり、ダイアンはそのまま戦線を離脱するのである(シナリオタイトル初稿は『涙! ダイアン死す』(!)。しかし、完成作品と同様、ダイアンが死ぬという展開にはなっていなかった詐欺のサブタイトルであったようだ・笑)。
 これはダイアンを演じていたダイアン・マーチンが、当初からまともにロケに参加ができないくらいにスケジュールの調整が難しく、いよいよ出演不能となったことが理由らしい。ちなみに、彼女は演じる役者そのままの名前でネーミングされている。当時のフジテレビで放送されていたイレギュラー特番『オールスター水上大運動会』に彼女が出演しているのを見かけた記憶があるので、けっこう売れっ子だったのかもしれない? そのような事情で、名作刑事ドラマ『Gメン’75』(75〜82年・東映 TBS)でもよくメンバー交替劇を執筆していた、脚本家の高久進(たかく・すすむ)に発注された話だそうだ。


 同作の第33話『コサック愛に死す』では、父である国防省の三村教授を目の前でエゴスに殺された少女・まゆみから、以前は兄のように慕われていたのにもかかわらず、「血のにおいがするから」(!)と拒絶された白石謙作(しらいし・けんさく)が、バトルスーツを持たずにまゆみと出かけた末に、彼女を守るためにエゴスの凶弾に倒れてしまう!
 そして、彼の先輩である神誠(じん・まこと)が白石からバトルスーツを託されて、以降は彼が2代目バトルコサックとして活躍することとなる…… この交代劇は白石を演じていた伊藤武史の個人的な事情が原因だったようである――神誠を演じた伴直弥(ばん・なおや)はもちろん、『人造人間キカイダー』(72年・東映 NET→現テレビ朝日)の主人公・ジロー、『イナズマン』(73年・東映 NET)の主人公・渡五郎(わたり・ごろう)役などで知られる、70年代変身ブーム世代の特撮ファンにとっては今でいうところの「神(かみ)俳優」の再登板でもあった!――。


 ミスアメリカ交代もバトルコサック交代も、いずれも役者本人の都合によるものではあった。しかし、どちらも交替劇のエピソードの作劇自体は成功しており、かつ感動も呼び起こす高品質の仕上がりともなっていた。もともと同作は当初から評判がよかったために、大きな番組刷新をはかる必要もなかったのだが――もっとも、同作のメインライターであった高久進の代表作『キイハンター』(68〜73年・東映 TBS)を思わせるようなスパイ・アクション風味は次第に薄くはなっていったが――、メンバー交替によるマイナス効果は微塵(みじん)も感じられない作品なのだ。



 さて、『80』では、すでに第12話『美しい転校生』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100718/p1)をもって、学校編の設定をすべて排除したことにより、桜ヶ岡中学校の生徒・教師役を務めていたレギュラー俳優たちは全員が降板している。ただし、事務員のノンちゃんを演じていた白坂紀子(しらさか・のりこ)のみ、第21話『永遠(とわ)に輝け!! 宇宙Gメン85』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100919/p1)よりノンちゃんのそっくりさん(笑)であるUGMの気象班・小坂ユリ子隊員として再レギュラー入りを果たしてはいる。ファミリー劇場『ウルトラ情報局』11年1月号にゲスト出演した小坂によれば、これには本人が一番驚いたそうだが(笑)。
 『(新)仮面ライダー』以上の大規模な番組刷新が行われたともいえるのだが、これが正解だったかどうかは賛否両論渦巻くところでもあり、筆者としても一長一短とは思っていて、どちらの路線にも可能性はあったと思うので、一方向での断言をする気はない。


 さらに、第26話『タイムトンネルの影武者たち』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101023/p1)をもって、ハラダ時彦(はらだ・ときひこ)隊員を演じた無双大介(むそう・だいすけ)、タジマ浩(たじま・ひろし)隊員を演じていた新田修平(にった・しゅうへい)が、地球防衛軍オーストラリア・ゾーンに転任したという設定で降板している――第50話(最終回)『あっ! キリンも象も氷になった!!』では、ふたりとも日本の危機に駆けつけているが――。



「きっと僕ら若い連中が、あまりにスタッフの云うことを聞かなかったからじゃないかな? 主役じゃなかったら、僕もはずされていたかもしれない(笑)」

(『君はウルトラマン80を愛しているか』「矢的猛役 長谷川初範インタビュー」)


「無双大介君は以前、(東京)12チャンネル(現・テレビ東京)の『天下一大物伝』(76年)の主役でした(引用者註:梶原一騎原作の『週刊少年サンデー』連載漫画(75年)の実写ドラマ化でその役名を芸名とした)。俳優さんも飛んだり跳ねたりするから、運動神経がないとやはり大変です。そんなに難しいことはいりませんが簡単なことくらいは……。ちょっと転んだりしただけでケガしたりと、最初の2人の交替はそんな理由によります。とにかくあの2人はついてなかったですね」

(『君はウルトラマン80を愛しているか』「監督・湯浅憲明が語った『ウルトラマン80』)



 両氏の話には微妙な食い違いがあるのだが、どちらが正しいにせよ、劇的な交替劇を描いてはおらず、第27話『白い悪魔の恐怖』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101030/p1)では、フジモリ新八郎(ふじもり・しんはちろう)隊員を演じる古田正志(ふるた・まさし)、イケダ登(いけだ・のぼる)隊員を演じる岡本達哉(おかもと・たつや)が、何食わぬ顔をしてレギュラー入りを果たすこととなった。



 そして、またしてもの今回の降板劇である。今回はご承知のとおり、イベント編をきちんと設けて、エミを演じる石田えりを「名誉の戦死」扱いとして降板させるに至っている。桜ヶ岡中学校の生徒や教師たち、ハラダやタジマのように、ろくに説明もないままに突然画面から消え失(う)せるかたちで終わらなかったのは、不幸中の幸いであった。


●『帰ってきたウルトラマン』では、第37話『ウルトラマン夕陽(ゆうひ)に死す』をもって、坂田アキを演じる榊原るみが、坂田健(さかた・けん)を演じる故・岸田森(きしだ・しん)ともども、暗殺宇宙人ナックル星人に殺害
●『ウルトラマンA』では、第28話『さようなら 夕子よ、月の妹よ』をもって、北斗星司とダブル主人公であった南夕子を演じる星光子が、故郷である月を死の星にした元凶・満月超獣ルナチクスを倒して、北斗ひとりにエースの使命を託し、仲間が移住した冥王星へと旅立つ


 坂田アキが姿を消して以降の『帰ってきた』は、侵略宇宙人が手下の宇宙怪獣を連れて地球に来襲するパターンとなった。
 『A』ではウリであった合体変身と異次元人ヤプールが消滅したこともさることながら、「ウルトラ6番目の弟」=梅津ダン(うめづ・だん)少年がレギュラーとなり、『80』第31話『怪獣の種(たね)飛んだ』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101127/p1)〜第42話『さすが! 観音さまは強かった!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110212/p1)の「児童ドラマ編」の元祖であるかのような展開となった。
 ともに従来の作風からは大きく路線変更を遂げたのである。


 ただし特撮マニアには、『帰ってきた』の第4クール目も、『A』第29話『ウルトラ6番目の弟』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061120/p1)から第43話『冬の怪奇シリーズ 怪談雪男の叫び!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070224/p1)に至るダン少年編も、いまだに評判が芳(かんば)しくはない。
 しかし実は、『帰ってきた』も『A』も、本放映で最も視聴率を稼いでいたのは、まさにこの時期の作品群ではあったのだ。もろもろの複合的な内的・外的要因があったのだろうから、ヒロイン降板に便乗したかたちでの路線変更だけで功を奏したのだとは一概にはいえない(前者は『仮面ライダー』『シルバー仮面』といった作品による「変身ブーム」の勃興、後者はウルトラ5兄弟やウルトラの父の客演の余波)。しかし、これらの路線変更は作品的には賛否あるにしても、視聴率的には一応の成功をおさめていたのだ。


 それらに比べるとあまり話題にのぼらないように思うが、『ウルトラマンタロウ』で当初ヒロインの白鳥さおりを演じていた朝加真由美も、第16話『怪獣の笛がなる』をもって降板し、第17話『2大怪獣タロウに迫る!』・第18話『ゾフィが死んだ! タロウも死んだ!』・第19話『ウルトラの母愛の奇跡!』の3部作をはさんで、第20話『びっくり! 怪獣が降ってきた』以降は、朝加とはルックスも個性も正反対というくらいにまったく異なる小野恵子が白鳥さおり(しらとり・さおり)を演じることになった。
 これは現在の観点ではハッキリ云ってメチャクチャいい加減である(汗)。本来ならば海外に留学するなり何なりでの理由をつけて、さおりとはまったく別人の新ヒロインを設定しそうなものである。だが、『タロウ』ではそうした刷新をする必要性を感じていなかったのかもしない。


 『タロウ』の平均視聴率は17.4%であり、『A』の18.6%をやや下回った程度である。『タロウ』の最高視聴率は第1話『ウルトラの母は太陽のように』の21.7%であったが、『A』の第1話『輝け! ウルトラ五兄弟』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060514/p1)は28.8%も稼いでいたのである。だが、第1話の視聴率の差が7%もあるのに、平均視聴率の差が1%くらいしか開きがないということは、『A』は視聴率の高低の差が激しかったと考えられる――『A』はウラ番組に石森章太郎原作の特撮時代劇『変身忍者 嵐』(72年)があったことを思えば、その実力は平均視聴率の18.6%どころではなく、もっと上だったとは思うものの――。それに比べて、『タロウ』は全話の視聴率が公表されていないのだが、『A』ほどではないものの、年間を通して比較的に高めで安定していたという推測ができる。
 ということは、『タロウ』では大きな路線変更をする必要がなかったということになる。なので、朝加真由美が降板しようが、別の女優にそのままさおりをやらせればいいや、となったのではなかろか?(笑) とはいえ、いくらなんでもメインターゲットである子供たちにとっては、役者さんの交代は違和感バリバリだっただろうし、ウルトラシリーズがフィクションであることがモロバレにされてしまう「夢」を壊されてしまうような事態ではあっただろうが(爆)。



 『80』に話を戻そう。本誌『假面特攻隊2011年号』に掲載された森川 由浩氏が調査した本作の視聴率表によれば、『80』の関東地区での最高視聴率は第2話『先生の秘密』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100507/p1)の18.7%であり、『タロウ』第1話より3%下回っているだけだと考えれば、この時点ではけっこう健闘していたともいえる。
 しかしながら、全話の平均視聴率は10.0%にとどまり、第2期ウルトラとの差は歴然である。この数字は『A』のような高低の激しさにとどまるものではない。各クールの平均を見ると1クール目が13.2%、2クール目が9.4%、3クール目が8.4%と、まさに落ちこむ一方であった。


 『80』は、


●第1話『ウルトラマン先生』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100502/p1)から第12話『美しい転校生』までの学校編(学園編・教師編・桜ケ岡中学編)
●第13話『必殺! フォーメーション・ヤマト』から第30話『砂漠に消えた友人』までの『ウルトラセブン』を意識したSF色の強いUGM編
●第31話『怪獣の種(たね)飛んだ』から第42話『さすが! 観音さまは強かった!』の児童編(子供編)


 と便宜上は分けられており、クール(週1の3ヵ月分の放映期間で全13話)とは完全には符合はしないものの、それぞれが各クールの象徴ともなっている。


 放映当時は『3年B組金八先生』(79年・TBS)などのヒットによる学園ドラマブームへの迎合(げいごう)であるとして、当時の特撮マニアたちからは批判が強かった学校編ではあるが、児童層も仮に内心では不満を募らせていたのだとしてもまだ離れてしまうほどではなかったと解釈できるだろう。学校編に該当する作品群の中では、唯一学校の場面が描かれなかった第11話『恐怖のガスパニック』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100711/p1)が関東にかぎらず中部・関西でも第10話『宇宙からの訪問者』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100704/p1)に比べて意外にも視聴率が低下、それまでの最低を記録している。しかし、第12話『美しい転校生』はどの地区でも第11話に比べて5%前後もの上昇を遂げるという現象が起きていたのだ。


 しかし、UGM編の一発目である第13話『必殺! フォーメーション・ヤマト』は、関東と関西では第12話と比べて、5%前後も落ちこんでいる。「ウルトラマン先生」という目新しさに注目して視聴していた層にとっては、「なんだ、またいつものウルトラマンに戻るのか?」というような感覚であったのだろうか? それとも視聴率調査の誤差といったものなのだろうか? まぁ、視聴率は該当回への好悪ではなく、その直前回に対する好悪の影響が大きいかもしれないので(爆)、その価値判断には慎重を要する必要があるのだが……


 円谷プロ的には「学校編」はTBSからの押しつけ企画として嫌われていたようだ(『君はウルトラマン80を愛しているか』のスタッフ・インタビューでは総じてそう語られている)。しかし、円谷プロが本当にやりたかった、特撮マニアたちも観たかったであろうSF色が強い「UGM編」も、必ずしも視聴率を好転させてはいなかったのだ。
 70年代には受け入れられたであろう良質な児童ドラマが続出した「児童編」も、当時のMANZAI(漫才)大ブームで「軽佻浮薄」な時代の空気が蔓延(まんえん)し始めた1980年当時にはもうそぐわないものだったのかもしれない――共に国際放映の製作による児童向けテレビドラマでも、良い子が主人公の『ケンちゃん』シリーズ(69〜82年・TBS)よりも、悪ガキが主人公の『あばれはっちゃく』シリーズ(79〜85年・テレビ朝日)の方が大人気を博し始めていたころでもある――。
 視聴率が低落していく一方の中で、『80』はさらなる変革を迫られていた。そこに城野エミを演じる石田えり降板の話が持ち上がった。円谷プロはそれに便乗して、新たな路線変更を試みたのであろうか。



 70年代末期の第3次怪獣ブームは、児童間では小学館の『コロコロコミック』や『てれびくん』、学年誌においては内山まもる大先生を筆頭にかたおか徹治(かたおか・てつじ)先生、居村眞二(いむら・しんじ)先生らが描いていた、地球という舞台を離れたスペース・オペラとして展開するウルトラ兄弟たちのオリジナル漫画が牽引(けんいん)していたという部分が大きかった。
 それまでは頑(かたく)なにウルトラ兄弟を登場させなかった『80』ではあったが、遅まきながらようやくそれらのオリジナル漫画の偉大さに気づいたのか、まさに当時のあまたのオリジナル漫画を彷彿とさせるかのような


 「ウルトラの星とガラガラ星の全面戦争(!)」


 を発端(ほったん)とする、設定的にはスケールの大きな展開の中で(セリフのみなのが残念であるが)、新たなウルトラの戦士、しかも「ウルトラの星の王女」という新ヒロインを誕生させることになったのだろう。


 そして、続く第44話『激ファイト! 80VS(たい)ウルトラセブン』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110226/p1)では「妄想(もうそう)ウルトラセブン」、第45話『バルタン星人の限りなきチャレンジ魂』では宇宙忍者バルタン星人6代目、第46話『恐れていたレッドキングの復活宣言』でどくろ怪獣レッドキング3代目と、人気先輩ヒーロー(の偽もの)や往年の人気怪獣が登場する作品を連打しだしたことが、たとえわずかではあっても「児童編」の後期よりも視聴率を上向かせて、4クール目の平均視聴率は関東地区では8.9%と、3クール目よりも上昇させることにつながった。


 『ウルトラマンレオ』第40話『恐怖の円盤生物シリーズ! MAC全滅! 円盤は生物だった!』における、防衛組織・MACは全滅、メインヒロイン・山口百子(やまぐち・ももこ)、レギュラーの野村猛(のむら・たけし)青年、そして少女・梅田カオルまでもが、円盤生物シルバーブルーメのために命を落としてしまうという衝撃の急展開と同様、後出しジャンケンの意見だが、今回の新ヒロインの誕生は遅きに失したのかもしれない。
 石田えりの降板とは別に、やはり3クール目中盤くらいにはもうユリアンを登場させて、児童ドラマを展開しつつも、第3クール終盤〜第4クールでは、それこそ『A』の北斗と南の合体変身ならぬ、矢的と涼子の「ダブル変身」をたびたび披露するようなイベント編を配置していたならば、少々の視聴率の回復も期待できただろう…… などといった妄想をしたりもする。


 もちろん、本作『80』が『(新)仮面ライダー』のように、月に1回は先輩ウルトラ兄弟が客演したり、ウルトラサインで呼ばれて宇宙の小惑星上などで30分まるまるの仮面劇でウルトラ兄弟たちと怪獣軍団が戦ったり、シリーズの折り返し地点や最終章ではウルトラ兄弟が全員勢ぞろいをするような作品だったら、それに越したことはなかったのだけど!(笑)



ウルトラの母のほかにも、女性のウルトラ族を出してえ! 内山先生、おねがい!」(愛知県・IKさん)

(『コロコロコミック特別増刊号 ウルトラマンPART1』(小学館・78年7月24日発行・6月24日実売・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210110/p1)『コロコロウルトラファンプラザ』(読者投稿欄))



 男児向けのコンテンツとしては、このような女子児童の願いを仮に主軸として女性ウルトラマンを主人公にしてしまったならば、男児たちは気恥ずかしを感じて視聴しなくなってしまうだろうから、そこまでは必要はなかっただろう。しかしサブ要素としては、そのような要素を包含してみせるような度量が、円谷プロやTBS側にはほしかったところでもあった。



 ちなみに本話の脚本は、当時は『仮面ライダースーパー1』のメインライターも務めていた江連卓(えづれ・たかし)が、水沢又三郎のペンネームで執筆している。


 『バトルフィーバーJ』第16話『格闘技! 闇の女王』、『(新)仮面ライダー』の最終章3部作、『仮面ライダースーパー1』第22話『怪人墓場の決闘! メガール将軍の最期(さいご)』といった、ゲストヒロインが劇的に死ぬパターンが多い印象がある氏の起用は功を奏したようだ。


 少なくとも城野エミの最期は、MAC隊員たちや百子・猛・カオルのような報われない「犬死に」ではなかった。城野エミが主人公・矢的猛の盾となって命を落とすという見事な死にざまを視聴者に見せつけたのである。


 しかもそれが、ユリアン自らの行動が招いたことであるという負い目と、矢的の正体がウルトラマンエイティであることを知ってしまった城野エミから直々に地球の防衛という重たい使命のバトンタッチを受けるという描写、このふたつが実に的確に組み込まれてもおり、ユリアンがこの地球にとどまってUGM隊員として参画し続けるという強い動機付けに昇華できたことこそが、ユリアンというキャラクターを視聴者に強く印象づけることに成功したことも事実なのだ。


 云うならば、石田えりの降板なくして、当時の円谷プロの発想だけではユリアンは誕生しなかったわけであり、その意味では『80』は決して運に恵まれないばかりの作品ではなかったのかもしれない。



<こだわりコーナー>


*城野エミ隊員を演じた石田えりは、60年11月9日生まれ。『スターチャレンジ』(76年・NET)のアシスタントで芸能界デビューして以降、その後の幅広い活躍についてはキリがないのでここでは割愛。
 ネット版百科事典「ウィキペディア」によれば、『80』を降板したのは「ウルトラシリーズに出演する女優は大成しない」というジンクスを懸念(けねん)した事務所の方針だったとされているのが、なんとも引っかかる。2010年の『80』放映30周年記念のイベントやDVD−BOX(ASIN:B003E3X5OIASIN:B003E4AZI6)などにも、出演やコメントなどが一切ない。『タロウ』で東光太郎を演じた篠田三郎とはまた異なる心境なのだろうが、せめて『ウルトラ情報局』の『80』最後の号にでも出演してはもらえないものであろうか?……


*星涼子=ユリアンを演じた萩原佐代子(はぎわら・さよこ)は、62年12月1日生まれ。日大鶴ヶ丘高校在学中の80年、カネボウ化粧品の夏のキャンペーンガール『レディ’80(エイティ)』に選ばれ(まさに『80』に出るべくしてデビューしたのだ!)、さらにモデルと並行して『俺んちものがたり!』(80年・TBS)で女優デビューを果たしている。
 『80』終了後は、東映スーパー戦隊シリーズ科学戦隊ダイナマン』(83年・テレビ朝日)で立花レイ(たちばな・れい)=ダイナピンクを演じて、さらに同じく戦隊シリーズの『超新星フラッシュマン』(86年・テレビ朝日)では敵幹部のレー・ネフェル役でレギュラー出演していた。『ダイナマン』出演時に『80』でもお世話になった東絛昭平(とうじょう・しょうへい)監督に「バカ!」と云われた際に、彼女はおもわず「私、バカじゃありません!」と云い返したらしく(笑)、のちに「俺に云い返してきたのは、おまえが初めてだったよ」と云われたとか。その後の『フラッシュマン』では東絛監督は一転して「佐代子〜」などと親しげに声をかけてきたそうだが、萩原はそれを聞き、おもわずあとずさりをしたそうだ(爆)。
 なお、エイティ客演編である『ウルトラマンメビウス』第41話『思い出の先生』放映直後、彼女は「涼子=ユリアン役で出たい」と自身のブログで発言していた(おそらくその時期にはもう最終回まで撮影は完了していたであろうが・汗)。ちなみに、彼女が2010年現在、所属する事務所は「オフィスユリアン」である(自身の電話番号しかないような個人事務所なのだろうと思われるが・笑)。まさに石田えりとは対照的である……


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2011年冬号』(2011年2月6日発行)〜『仮面特攻隊2012年号』(2011年12月29日発行)所収『ウルトラマン80』後半再評価・各話評より分載抜粋)


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ウルトラの星から飛んで来た女戦士

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