『ヲタクに恋は難しい』 ~こんなのオタじゃない!? リア充オタの出現。オタの変質と解体(笑)
『女子ーズ』『アキバレンジャー』『アフターV』『エアーズロック』 ~戦隊パロディでも公私葛藤描写が光る!
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2020年1月24日(金)深夜から実写ドラマ版『女子高生の無駄づかい』が放映中記念! とカコつけて……。
深夜アニメ版『女子高生の無駄づかい』(19年)と同じく深夜アニメ『ちおちゃんの通学路』(18年)評をアップ!
『女子高生の無駄づかい』
(文・T.SATO)
(2019年8月2日脱稿)
昨2018年夏の『ちおちゃんの通学路』に続いて、美少女が主人公ではない女子高生アニメが登場!
平均身長よりやや低めでズン胴・短足な(汗)女子力が低いガラっぱちで少年チックな元気女子(声・赤崎千夏)。お目々もパッチリしておらず、表情もニコやかに作らず、マユ毛も細かく剃って整えず、そもそも化粧っ気がナイどころか愛嬌もデリカシーもない。
ヤンキーやギャルではないし粗暴の域にも達してないけど、往年のアムロ少年や水野亜美に碇シンジくんや綾波レイに長門有希のごとく、虚弱・気弱・繊細ナイーブな内面ゆえの対人躊躇から来る劣等感などは感じられず、退屈な日常をそれなりに謳歌している。
トドメはイスに座っても脚を閉じずにガニ股にしている姿だ(爆)。彼女は善人だとは思うけど、異性の対象には思えないし、筆者もペンライトをふって応援したくなるようなスター性は感じない(笑)。
彼女は高校に入ったらカレ氏がほしいとのたまうも、そのために女性誌を読んで服飾や化粧を学ぶでもなく、クラスの2軍・3軍として、下手のヨコ好きで漫画家志望の赤髪のBL好きオタク女子(声・戸松遥)、微生物や細菌を培養(!)している黒髪ロングの無表情な理系女子(声・豊崎愛生)といった小学校以来の友人とつるんで、部活も入らずストリートに繰り出して異性をゲットするでもなく、学校と自宅を行き来するだけの日々を送っている姿が描かれる。
同じオタでも漫画オタであれば受容されても、可愛いモノしか観たくないような美少女アニメ専門の萌えオタは本作を観ないのではなかろうか?(汗)
この3人を中心に、可愛い扱いされることをキラって反発するも心体ともに弱いので安全に回収されてしまう低身長のロリ美少女や、身体の各所に包帯・絆創膏・湿布を貼って弱い自分を鎧っている金髪ツインテの(ひとり)ボッチ少女などに、主人公少女がちょっかいをかけることで始まる騒動を愉快につづっていく。
この3人には新人ではなく汚れ芝居もできる人材だからか中堅を配置。
総監督にも『狼と香辛料』(08年)『ヨスガノソラ』(10年)『まおゆう魔王勇者』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200123/p1)『citrus(シトラス)』(18年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191208/p1)などの良作を手掛けてきた高橋丈夫。
予算もあるのか高品質作画で、観返してみると繊細複雑な心情も表現するデリケートな小芝居もたくさんしているけど、このテの胸キュン要素が皆無なギャグ作品は『はじめてのギャル』『僕の彼女がマジメ過ぎるしょびっちな件』(共に17年)同様、誇張芝居で笑いが取れてしかもそこがキモなので、美麗な作画や小芝居がナイ記号的な表現でも大丈夫に思えて、まさに優秀なアニメスタッフの才能の無駄づかいといった感もなくはない。
個人的には序盤は面白かったので#1切りはしなかったけど、それ以降は並みの作品とも思っており、切ってもイイのだけれども、切り捨てるには惜しい良さもあり(笑)。
『ちおちゃんの通学路』
(文・T.SATO)
(2018年8月1日脱稿)
ウワッ! なんだこのマユ毛・マツ毛・瞳もキラキラしていない地味な女子高生たちのキャラデザは!?
スクールカーストの序列は、最下位の(ひとり)ボッチならぬ、「中」の「下」だと自らの分をわきまえている女子高生たちが主人公を務める作品だ。
大昔の80年代中盤までだったら、その程度であればフツーの「中」だけど、80年代末期のイケてるイケてない系のカーストが拡大した時代以降だと、「下」寄りのイケてない系としてレッテル貼りされ、過剰にダメ意識・劣等感まで持たされて……(以下、ルサンチマンが続くので略・笑)。
異性との輝かしい出逢いもなく――そもそも魅力的な異性として見てもらえず――、劇的な出来事や、引いては人間的な成長もなく、地味な学校生活を送り、自宅では深夜までムダにゲームなどに明け暮れる主人公のメガネ少女。まるで我が似姿を見るようで胸がイタい(笑)。
先行作で例えると『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190606/p1)のボッチでチビの女子高生主人公がメガネをかけて身長も伸ばし、多少はコミュ力や愛嬌や友人も増やしたらこうなる! という感じか?
劇中で起きている事件は、遅刻しそうなので通学路を通らず、塀の上や屋根の上を近道していくファンタジーなノリと、遅刻しそうなので路地を通ったら暴走族のバイクを倒しちゃって咄嗟のアドリブ&ハッタリで切り抜けるみたいなナンセンスなノリ。
だけど、その過程で挟まれる、ゲームの世界ではともかく3次元では「中の下」を自覚する、イイ意味で自虐的な自己認識。
それでは達観してるのかと思えば、さにあらず。
現世に未練はやはりあり、ドングリの背比べで「中の下」の女子高生同士でドチラがよりマシ? よりリア充? かで競って、優越感・マウンティング合戦の口論をはじめたり、カースト上位の女子高生に話し掛けられると、舞い上がって光栄に思ってそれを友人に誇ったり。
ちっとも解脱(げだつ)できていない俗物たちじゃねーか!?(笑)
もちろん作品はそこに糾弾の目は向けず、生暖かくそれすらも笑いのオブラートで包んでいくワケだけど。
いやマジな話、オタの生き方の理想ではなく現実的なゴールは、適度な自虐&達観 ⇒ やはり煩悩 ⇒ ハッとそれを自覚して反省 ⇒ 適度な自虐&達観 ⇒ やはり煩悩 ⇒ ハッとそれを自覚して反省 ⇒ 適度な自虐&達観 ⇒ やはり煩悩 ⇒ (略) の無限ループかとも思われて……(自説を一般化するなってか?・汗)。
やっぱりスゴロクのアガリ的にエラぶったり、オタクの草創期を描いたマンガ『アオイホノヲ』に登場するオタキング・岡田斗司夫(おかだ・としお)のごとく、「俺ってスゴいだろ」擬音がかぶるようなオーラ(笑)を出す輩はダメですよ。
我々は常に自らを低うしてピエロ・河原乞食にならなければ……。
ただ#1~2は神懸かった出来に思えたけど、#3がイマイチに思えたので、継続視聴の決断にはまだ猶予がほしい(笑)。
『ちおちゃんの通学路』
(金曜22時 TOKYO MX他)
(文・久保達也)
(2018年9月6日脱稿)
目立つことが嫌いなのに一応軟式テニス部に所属し、ルックス的にも結構カワイイんじゃね? と思える、オレンジ色ショートボブヘアのメガネっ娘(こ)女子高生・ちおちゃん独特の思考回路がもたらす、トホホな日常が描かれる。かの『サザエさん』(69年~)や『ドラえもん』(79年~)のように、ギャグアニメとしては定番の30分枠で数話を放映する形式だ。
ある朝、クラスのカースト上位で陸上部に所属する人気者で、青髪ショートヘアの早川さんが、登校中のちおちゃんに向かって元気よく、
「おはよう~!」
と手を振ってきた。
これがちおちゃんに大パニックをもたらしてしまう。自分は早川さんにどう反応すればいいのか?
クラスのカースト上位者が、ちおちゃんみたいにカーストが「中の下」(笑)の人間にあえて笑顔を向けてくるのは、何かウラが、悪意が、魂胆(こんたん)があるに違いない。
学校をはじめとする集団生活で周囲からやさしさを向けられたことがなく、それを期待しては散々裏切られてきた者としては、そんな思考回路に陥(おちい)ってしまうのは自然の道理なのだ!
もしかしたら、早川さんは自分ではなく、自分の背後にいる友達に手を振っているのではないのか? でも本当に後ろに誰かいるのか? 確かめたいけど今振り返ったら早川さんに不審がられてしまう。
そうだ、ゴミ捨て場に誤って転倒したふりをしたら、早川さんが駆け寄れば自分に好意があるのが証明されるし、後ろに誰かいるのかも確認できて一石二鳥だ! と、ちおちゃんは足をヨロヨロさせ、頭からおもいっきりゴミ捨て場に特攻する!
ちおちゃん、キミは大正解だ!(爆)
捨て身の行為で早川さんが間違いなく自分に手を振ってくれていたことをちおちゃんはやっと確信したが、苦難はこれだけでは終わらない。
早川さんとふたりで学校に向かいながらも、いったいどんな話題をすればいいのか困ったちおちゃんは、とりあえず部活について話そうとするが、「部活」と口にしたものの、それにつづく言葉が出てこない(笑)。
すると今度は早川さんに向かって「おはよう~!」と手を振る友達が出現! このまま早川さんと歩いていたら、間違いなく自分の存在は空気になってしまう。
ちおちゃんはとっさにコンビニに駆けこみ、トイレにこもって早川さんたちが立ち去るのを待つ。ちおちゃんは早川さんたちと緊張しながら歩くよりも、コンビニのトイレの方がずっと居心地が良いことをあらためて思い知ることとなるのだ……
ちおちゃんみたいな人種としては、わずか十数分の登校時間でさえ、70年代後半から80年代前半にかけてテレビ朝日の『水曜スペシャル』枠で放送された『川口浩探検隊』シリーズ並みの、サバイバルの連続なのではあるまいか? 学校での居心地の悪さ・居場所の無さ以前に、そこに至るまでに極度の緊張が連続することに耐えられず、不登校に陥る若者たちも少なからず存在するのだろう。
そうした観点からすれば、本作が一応の学園ものでありながら、学園そのものではなく、通学路をメインの舞台としているのは実に的確だとさえ思えるのだ。
だが、やっとトイレから出てきたちおちゃんがゲーム雑誌を立ち読みしていたら、とうに去ったと思っていた早川さんが外から手を振っている!
早川さんは友達を先に行かせてちおちゃんを待ってくれていたのであり、ちおちゃんがトイレでねばっていたのも「お腹が弱いから」(爆)と解釈していたのだ!
世間には圧倒的に少数だろうが、我々みたいな人種に対してすらも、早川さんみたいに親切に接してくれる奇特な人も存在するのだろう。それすらもいつものマイナス思考で疑ってかかり、関係性を悪化させるのは努めて避けるべきだ。
ちおちゃんが早川さんに罪悪感と謝罪の念を心の声でつぶやきながら、学校へと走るクライマックスには感動すらおぼえるほどだ!
ちおちゃんが早川さんに最大の感謝を示しながら、「ずっと云えなかったけど、おはよう~!」と叫ぶや、周囲にいた冴えない感じの男子高校生たちがいっせいにちおちゃんを振り返り、「オレに云ったのか?」と頭を悩ませる係り結び的なオチがまた絶妙であり、ちおちゃんと同様の悩みをかかえる若い視聴者に対して、決して君だけではない! というエールとして届いたのではあるまいか?
本作はちおちゃんの自虐的なモノローグを中心に進行するが、『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』(13年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20151102/p1)の主人公・黒木智子(くろき・ともこ)=もこっちが、実際にはカースト最下位なのにそれを自覚できずに、あくまで世をスネたシニカルでやさぐれた「怨(うら)み節(ぶし)」全開(爆)なのとは異なり、「中の下」を自覚するちおちゃんは、まさに平成仮面ライダーシリーズのキャラクターたちみたいに、エキセントリックな口調で絶叫することもあり、どことなくポジティブな印象も感じられ、もこっちとはうまく差別化ができていると云えるだろう。
早川さんをめぐる「リアル」な話とカップリングされたのは、明け方の4時30分までゲームをしたために寝坊して遅刻しそうになったちおちゃんが、学校までの近道が工事中で使えないことから電柱をよじ登り、連なる民家の屋根を渡って登校するこれまた「リアル」な話、なワケねぇよ!(笑)
寝ている猫に気をつかったり、なぜか2階でハミガキをするオヤジが吐き出した汚物をメガネに浴びたり、なんてそれなりの苦労もあったが、先述した早川さんと登校する回に比べ、ちおちゃんが明らかに楽しそうなのがまた妙に「リアル」だ。
「中の下」のちおちゃんにとって、下界を見下ろすのは実に気分がいいのだろう。私事で恐縮だが、筆者も高い場所が大好きだ(笑)。
風船が高い木にひっかかって泣いている男児の母の頼みを、「ブランドもののスーツが汚れる」「成功報酬がない」と断ったサラリーマン=地域社会の悪党を、屋根の上から「ライダーキック!」(笑)をかまして退治するちおちゃんは、やはり愛すべきいいコなのだ。
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http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20040406/p1
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