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映像研には手を出すな! ~イマイチ! 生産型オタサークルを描くも不発に思える私的理由

2020年冬アニメ『異種族レビュアーズ』 ~異世界の性風俗を描いたアニメで、性風俗の是非を考える!?
2020年冬アニメ『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』 ~『まどマギ』が「特撮」から受けた影響&与えた影響!
2020年冬アニメ映画『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』 ~意外に豊かでモダンな戦前!? 終戦の日の慟哭・太極旗・反戦映画ではない説をドー見る!?
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『映像研には手を出すな!』 ~イマイチ! 生産型オタサークルを描くも不発に思える私的理由

(文・T.SATO)
(2020年3月3日脱稿)


 高校の部活動である映像研究会、実質的にはアニメを製作するサークルが舞台のNHKで放映中の深夜アニメ。


 こう書くと、山脈が近くに見える地方の高校のアニメ研究会でアニメ製作にいそしんでいた美少女キャラ5人が上京してアニメ業界の底辺で右往左往する大ヒット深夜アニメ『SHIROBAKO』(14年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20151202/p1)の#1冒頭や、暑苦しい黒縁メガネのオタク少年が学園№1や№2の美少女たち――その実態はガチな女オタク(笑)――とゲーム製作に明け暮れる大ヒット深夜アニメ『冴えない彼女(ヒロイン)の育てかた』(15年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191122/p1)の二番煎じや三番煎じを想起する。


 あるいは、00年代からあったような、高校大学や校内校外を問わずに生産者型から消費者型までさまざまなオタク系サークルを描いたマンガやアニメ――『げんしけん』(02年・04年に深夜アニメ化)や『ヨイコノミライ』(03年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071021/p1)――。超メジャーなところだと、マンガ家を目指す少年たちがその作劇術をメタ的に開陳もしていく群像劇を熱血に描いた『バクマン。』(08年・10年にTVアニメ化・15年に実写映画化)といった「週刊少年ジャンプ」連載の大人気マンガなども想起する。


 そーいう意味ではオタク的な気質がある人間の全員とはいわずとも、本作のようなオタ趣味それ自体を単なる消費で終わらせずに批評・生産・創作に昇華していかんとするオタク集団を描いている物語についつい惹かれてしまう御仁も多いことであろう。


 本作の場合も、小学6年の夏に引っ越した先の高層団地群をつなぐ高架の通路やそこから見下ろせる光景や足許のコンクリ河川を、もう思春期に入る時期であろうに精神年齢幼稚園児の純粋さで(半分揶揄・笑)、冒険物語の舞台に見立ててコーフンしてハシャギまわって、そんな彼女が深夜に布団に隠れて宮崎駿が初カントクした往年の名作アニメ『未来少年コナン』(78年)モドキの劇中アニメを鑑賞して激甚なショックを受けているサマなども描かれる。
 コレをもってして人生を変えられてしまった彼女は、アニメ研究会がある高校に入学するものの、諸般の事情でそれとは別の映像研究会を立ち上げることになってしまう……といったあたりが、本作の導入部となる。


 ウ~ム。題材は面白いハズなのに、出来上がった作品は個人的にはあんまり面白くないなぁ――本作を評価する方々にはゴメンなさい(汗)――。


 多少の異世界感を作品世界に醸すためにか、この作品はSF洋画の名作『ブレードランナー』(82年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20171110/p1)モドキのウス汚れた東南アジア的な近未来の日本を舞台としているのだけれども、その舞台設定って意味があるのかなぁ。
 むしろ背景美術に「非日常」的な要素が混入すると、主人公たちが作ろうとしている冒険アニメの「非日常」的な妄想の映像表現部分との「落差」が減ってしまってメリハリも弱くなってしまっているような……。


 そして、小柄な主人公少女のメンタルやルックスにそのボイス。
 意識的にか無意識にか男に媚びている気配がまるでないガラっぱちなところからして、往年の『ジャリん子チエ』(78年・81年に劇場&TVアニメ化)みたいな感じなのだが(笑)、それならば性別は少年でもよかったのではなかろうか? 性別が少女であることにさして意味がナイというか、むしろ女性の方が男性よりも同性内でのファッション&スイーツなカースト優劣意識が強いことを思えば、今どき化粧っ気もなくてボサボサ髪の女子高生の彼女が、クラスメートたちにそーいう目線で見られて少々の劣等感やダメ意識をいだくことがフツーのハズだと思えるのに、この作品世界は1970年代以前の学校の教室ですか?(爆)


 今季2020年の冬アニメだと、アイドルアニメも爛熟の果ての変化球で、『22/7(ナナブンノニジュウニ)』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200621/p1)では主人公のアイドル少女が、『推しが武道館いってくれたら死ぬ』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210418/p1)では主人公のヤンキー女子に推されているアイドル少女が両方ともに極度に内気なコミュ力弱者で、かたや浮わついたことがキライだけど成り行きで母子家庭の貧困のタシのために、かたや歌や踊りがスキでも(ヘタだけど・汗)人前トークはあまりできないというキャラ付けで、昆虫パニックものの『7SEEDS(セブンシーズ)』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210509/p1)でもロリ可愛いけどそれを端(はな)にかけて媚びたりはせずに単に意志薄弱でトロいだけなのに、コレまた女リーダーに「ドジっ娘を演じて男に助けてもらおうと媚びるのはやめなさい!(大意)」――一般的には正論なのだが、彼女の場合は素でトロいのに……(爆)――などという人物描写をスパイスで入れることで、ストーリー展開以前のところで視聴者の感情移入の端緒を作って、それがフック・引っかかりにもなっていく。
 しかし、本作にはそーいう創作活動の動機・触媒にもなりうる劣等感・欲求不満・内的葛藤といった、オタク視聴者にとっての感情移入のフックがさしてナイように思えるのも個人的には引っかかるのだ。


 良くも悪くも、というか悪しきことに、コレだけスクールカーストコミュ力ルッキズム(見た目至上主義)に苦しんでいることが、日本のみならずアメコミ洋画『スパイダーマン:ホームカミング』(17年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170901/p1)や『パワーレンジャー』(17年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170715/p1)などでも議題となっていて、先進各国共通の若者間でのテーマとなっているご時世だともいうのに……。
 まぁそもそも本作では、放課後の部活動の光景のみが描かれて教室やクラスメートがほぼ出てこないので、そこは意図的な確信犯での除外なのやもしれないけれども、その意図が成功しているようには見えずに不自然さに帰結してしまっている……というのが、筆者個人の見立てである。


 同じような議論は、小学校低学年ならばともかくとっくにイロ気付いているハズの小学校高学年なのに、色恋やスクールカーストの匂いがしてこない部分が不自然だ……などといった議論もあった、かつて同じくNHKで放映された地方都市を舞台にVR(仮想現実)ならぬAR(拡張現実)を題材としていた、インテリオタク間では高評価であった『電脳コイル』(07年)という作品をめぐってもあったけど。


 加えて、美少女であるとも平均的な少女だとも描かずに醜めにクズした絵柄の女の子キャラたちのキャラデザは良く云えば挑戦的だけど、良くも悪くも通俗エンタメの本質とは文芸批評用語で云うところの「俗情との結託」なのであり、無意識に根差した男尊女卑感情なども視聴時のモノサシに入ってくるので、この絵柄だと健気な美少女キャラだから応援してあげよう! という情動はまずは喚起はされないような気もしてしまう(汗)。
 もちろんその代わりに、アニメ作りにおける艱難辛苦(かんなんしんく)を突破していく少年マンガ的な熱血ド根性で視聴者の感情移入やストーリー展開を強制的に駆動していく手法もあるけれども――アマゾンが「あなたにおすすめです」と教えてくれた月刊「ジャンプSQ(スクエア)」連載で本作と同じく高校の生産型アニメ研を舞台としたマンガ『戦場(いくさば)アニメーション』(13年)などはそーいう少年マンガ的な作りで駆動されており面白かったけど――、本作はそーいう感じの作りでもなく、ワリと淡々と事態が展開していくのだ。


 作品を作る前に主人公少女が開陳する、往年の月刊模型誌に連載された『宮崎駿の随想ノート』(84~90年・97年に書籍化・ISBN:4499226775)みたいなラフな鉛筆書きのデッサンに淡彩画のような色彩を付けた架空メカや背景美術、そしてそれに細々とした手書き文字でビッチリとウラ設定や演出意図が描き込まれたノートのような「妄想」も映像化されていくのだけれども、それはあくまでも劇中キャラの脳内妄想にすぎなくて、アニメ製作における実際やその苦労などには直結していかないので、「達成感」のようなカタルシスにも帰結していかない。
 だけれども、「カタルシス発生装置としての物語」という下部構造・インフラ部分には眼を向けずに、社会派テーマだの良心的な作風といった上部構造のみで判定してしまうプチインテリオタクの皆さまがいかにもホメそうな作品には仕上がっているとは思うのだ(汗)。


 深夜アニメ『四畳半神話体系』(10年)やその変型続編映画『夜は短し歩けよ乙女』に『夜明け告げるルーのうた』(共に17年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190621/p1)や『デビルマン crybaby』(18年)といった佳作をものしてきた湯浅政明カントクにしても、原作マンガありきとはいえこの程度の作品に留まってしまった……というのが、あくまでも筆者個人の感慨にすぎないけれども極私的な見立てである。


(了)
(初出・当該ブログ記事~オールジャンル同人誌『DEATH-VOLT』VOL.84(2020年3月8日発行予定⇒コロナ禍で即売会中止により4月5日発行))


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