『Dr.STONE』『手品先輩』『彼方のアストラ』『かつて神だった獣たちへ』『炎炎ノ消防隊』『荒ぶる季節の乙女どもよ。』 ~2019年夏の漫画原作アニメ6本から世相を透かし見る!
『トクサツガガガ』(TVドラマ版)総括 ~隠れ特オタ女子の生態! 40年後の「怪獣倶楽部~空想特撮青春記~」か!?
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2023年のトップ人気作になるであろうアイドルアニメ『【推しの子】』大人気にカコつけて……。同作の作画担当者が手掛けていたマンガ『クズの本懐』(17年)評をアップ!――『【推しの子】』の原作を担当した漫画家さんによる『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』はすでに拙ブログでアップ済でして(笑)―― 加えて、『【推しの子】』とはまったくの無関係でも(汗)、『クズの本懐』とも同様に倦怠感もある男女関係を描いた作品だからだとカコつけて……。『継母の連れ子が元カノだった』(22年)評もアップ!
『クズの本懐』『継母の連れ子が元カノだった』 ~愛情ヌキの代償行為としての男女関係と、一度は破綻した同士の男女関係を描いた2作評!
(文・T.SATO)
『クズの本懐』
(2017年冬アニメ)
(2017年4月27日脱稿)
男子高校生と女子高校生がお耽美な絵で「H」する深夜アニメ。しかも、愛情はナシの代償行為としての肉体だけの関係。
……うらやまケシカラン!(爆) あぁこんな爛れた高校生活が送りたかったのにィ(オイ)。
サラサラヘアのクールな男子高校生が恋い焦がれる、栗色ロングヘアのゆるふわ女教師が彼に応えてくれる見込みはナイ。黒髪オカッパの女子高生が恋い焦がれる、幼少時からの知り合いでもある黒ブチ眼鏡の男性教師も彼女を異性として見てくれることはナイ。そして、類似した境遇同士の男子高校生と女子高校生はその淋しさを埋めるために契約を結ぶことにする……。
キレイで静的だけれども索漠として空虚な感じも漂わす、ドチラかというと少女漫画絵寄りな8等身の絵柄。キャラの描線も最新のデジタル技術のたまものか微妙にカスれた感じに加工されており、それがまた本作に儚さや切なさや切迫感、気怠げな空気を醸す。
非モテの我々オタと同様、異性のゲットには苦労しないモテるリア充にも、それはそれで異性との交流における満たされない想いがあり、人間みんな悩みがあるという次元においては同じ・平等なんだよネ! というお話(……全然違う・汗)。
いやぁ実際のところ、悩みの種類にも高低はあるよネ。本作におけるカレとカノジョの悩みはモテる者のゼイタクに過ぎる悩みだよネ。
かてて加えて、黒髪オカッパ女子高生に懸想する戸松遥が演じる赤髪ロングの女子高生も登場。黒髪オカッパは心の空虚感を埋めるために、赤髪ロングにも身体を許してレズの関係になってしまう。男子高校生を幼時から懸想してきた金髪ツインテール娘までもが出現。非モテの筆者にはウェルカムじゃん! と思うものの(笑)、彼が金髪ツインテ娘をお相手に選ぶことはナイ。
一見は清楚でゆるふわ女教師も、その本性は男の視線が自分に集まる瞬間の快感こそが行動原理で、そればかりか他の女性が懸想する男にチョッカイ出しては当の女性が嫉妬や悲嘆にかられるサマに喜悦&優越感を抱き、時にその男を寝取りもするビッチ女性。黒髪オカッパ少女の男性教師への恋情に気付いた女教師は、彼女の前でワザと男性教師とイチャついてみせもする。
耐えきれずにその場を立ち去る黒髪オカッパだが、女教師は同時に黒髪オカッパのことをこうも評する。彼女に自覚はナイけど男子生徒たちの視線を集めている黒髪オカッパは、「こちら側」(女教師側=モテる側=搾取する側)であると……。
じゃあ、筆者のような非モテは「あちら側」の本作のオモテ舞台にすら上がれない存在かよ!? この世界に筆者の居場所はねぇよ!(笑)
まさに人間のクズばかりが登場する作品だが、彼らの人間模様やHを覗き見する分には芸能ワイドショー的な意味で実に面白い。
ただし大変残念なことだけど、ここまでヒドくはなくとも、棲息するジャンルは違えど大なり小なり人間一般には彼ら彼女らのような醜い心性がたしかに存在はするよネ。むろんそれは開き直ってガンガン増幅すべきモノではなく、ゼロにはできないにしても自覚して減らしていくべき性質のモノではあるけれど。
中盤以降は、各キャラの延々とした独白と過去回想が増えて、それはそれでアリだけど、ヨコ方向や対角線方向の人間関係が描かれなくなるキライがあったあたりはチョット……。
本作中では唯一、セイント(退屈?)な存在であった男性教師に調子を狂わされて女教師が彼とゴールする終盤も、個人的にはイマイチだ。もっとヒリヒリと痛い六角関係をずっと観ていたかった気もするので。劇中でも自己言及していたけど、リアルに考えれば女教師が浮気を連発して、あのふたりは離婚すると思う(笑)。
本作放映中には、同TV局の曜日違いで実写版の深夜ドラマも放送。積ん録を中盤まで消化したが、コチラも悪くない。異なるスタッフであるにも関わらず、内容といい各話の区切りといいほぼ同じ。となると両作ともに原作には忠実であったということか。
ジャンルファン的には仮面ライダーNEW電王のコが男子高校生、『炎神戦隊ゴーオンジャー』(08年)のゴーオンイエローが女教師であることに注目。ウブな女子高生だったイエローは10年弱後の今日だと今回の女教師は実にハマリ役。
失礼ながら多少腫れぼったい顔のNEW電王のコは賛否が割れそうだけど、このテの題材の実写作品の場合、男性のちょっとした表情の変化がイヤラしさや下心だと受け取られかねない危険もあるので、ポーカーフェースの彼の配役も成功に思える。
『継母の連れ子が元カノだった』
(2022年夏アニメ)
(2022年12月25日脱稿)
タイトルそのまんまではあるが、本作もタイトル負けしていない良作。
黒髪ロングのしっとりとした制服女子高生の美少女。クールでマジメで知的そうなしっかりとした男子高生。この両者がドギマギして気マズくなっているところから開幕するのではなく、再婚した両親の前では仮面をカブって仲の良さをアピール。家族がいなくなったところで、気マズさや恥ずかしさではなく、互いに「あーいうところやそーいうところがキライだった」とディスりだし、女子が男子を「くそオタク」、男子が女子を「くそマニア」と罵倒することで開幕する。
まぁ、オタにとっては縁遠いメンドい出逢い描写やハント描写を省いて、美少女と(美少年も)強制的に同一空間に投入することでドラマを始めてしまう手法は、スレたマニア的には少々自堕落で安直に見えてもしまうだろう。
しかし、本作の場合は良くも悪くも女子も少年も読者家でやや知的なインテリでもあり、いちいちヒネったり穿ったり深い見方をすることで、ストーリー展開や細部の心理描写の端々も単調にはなっていない。
少年マンガではなく(ひとり)ボッチものであったりやや文学的な香りもあるラノベを読むような人種は、大むかしであれば内省的な文学などもたしなんでいた人種であったことは間違いない(書き手の方もそうだけど)。
本作も小説投稿サイト出自だそうだけど、そういったところで先モノ買い的な見巧者・読み巧者によって見出されて、世に出た作品だともいえるだろう。
もちろん、タイトル的にもこのふたりの再接近を描いていくことは見えているし、だからダメではなく、そうでなければ詐欺である(笑)。
しかし、作家は適度に悪魔でなければならない。いかに劇中人物にイジワルな試練を与えて、ヒイてジラしていくかたちでストーリーを続行させていくのか。そして、時に合理的ではなく好悪や嫉妬や羨望などで登場人物の目を曇らせるかたちでゴールになかなか辿り着けないようにする。すぐにハッピーエンドに決着させてはダメなのだ(汗)。
その意味では作りものなのだが、パラドキシカルなことにイイ意味で作り込んで並び替えていくほどにピタッとハマって最初からそうであったかのような血肉や魂が宿ることもあるモノなのだ。
そういった意味では、一度は破綻していた両者の想いの残り香が、家や学校の教室でのやりとりや学友たちからのハントに感じてしまうプチ嫉妬などで、焚きつけられたり水をかけられたりといった描写のプリプリとした密度感が、本作を飽きさせない作品に仕上げてもいるのだ。
野郎オタク的には、高飛車ではなく気安くもある優等生を演じきっている元カノこと黒髪ヒロインは実に魅力的だ。加えて、実は中学時代はコミュ力弱者の地味女子であったと判明していくあたりと、その過去とのギャップでも萌えポイントを上げることができている。
そんな彼女の内面も相当に描き込まれているあたりで、彼女は男から見た客体にとどまらず主体ともなっており、近年では野郎オタクにも可視化されてきた、女オタクも男とは異なるツボではあるもののフェッティッシュな性癖を個々に持っており、実は元カレのルックスがツボであり、その意味では今でもツボであって、その点では「ハァハァ」としたり、罰として元カレにバックハグ的なことを望むあたりなどは、マーケティング的に女性オタクもゲットしようとねらったモノなのか!? ともあれ、彼女のモノローグも実に多い両サイドからの作品なのでもあった。
もちろん、脇にも快活な元気少女でありながらも好意を持った相手にややストーカー・重たい感じで迫る女子。元カノが高校デビューできなかった場合の鏡像キャラでもある図書室オタク女子なども配置する。図書館女子の主人公少年への恋慕を元カノが心ならずも応援する! といった挿話などでも、ストーリー展開を錯綜させていく。といったあたりも含めて、ナチュラルでも技巧的な良作なのだ。