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冴えない彼女の育てかた♭ ~低劣な萌えアニメに見えて、オタの創作欲求の業を美少女たちに代入した生産型オタサークルを描く大傑作!

『WHITE ALBUM 2』 ~「冴えカノ」原作者が自ら手懸けた悲恋物語の埋もれた大傑作!
『冴えない彼女の育てかた Fine』 ~「弱者男子にとっての都合がいい2次元の少女」から「メンドくさい3次元の少女」へ!
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 2019年10月26日(土)から深夜アニメ『冴えない彼女(ヒロイン)の育てかた』(15年)とその続編『冴えない彼女の育てかた♭(フラット)』(17年)の完結編映画『冴えない彼女の育てかた Fine(フィーネ)』が公開記念! とカコつけて……。『冴えカノ』原作者の丸戸史明(まると・ふみあき)が自ら全話の脚本を手懸けた『冴えない彼女の育てかた♭』評をアップ!


冴えない彼女の育てかた♭』 ~低劣な萌えアニメに見えて、オタの創作欲求の業を美少女たちに代入した生産型オタサークルを描く大傑作!

(文・T.SATO)
(2017年7月29日脱稿)


「学園一の美少女がラノベを読むなんて!」


と金髪ツインテール娘が、夕陽が差す人気のない放課後の階段で、恋敵の黒髪ロング娘をさげすむ!


 ……そうか。やはりライトノベルを読むのはカッコ悪いことで、バレたらスクールカースト最下層に落ちるから、こんな脅迫が成立するんだネ!(爆)


 後日、


「オタク差別は根が深いのよ!」
「(小学生の時)毎日毎日はやし立てられて、先生だって判ってくれなくて……」


と自身もオタのクセに、男性向け18禁同人誌の大人気作家の正体を隠していた金髪ツインテは、校舎の屋上で黒髪ロングにそのことで迫られて取り乱す!


 ……そうそう、30年前のMクン事件直後の大弾圧の時代と比すれば、オタも随分と市民権を得たけれど、差別がなくなった! イケてる系とイケてない系が等価になった! なんて極論はウソだよネ!


 同時に、黒髪ロングは金髪ツインテ


「アナタはヒトを楽しませるために絵を描いてるんじゃない。いわば復讐みたいなもの!」


と評す。金髪ツインテも売り言葉に買い言葉で、黒髪ロングを


「あなたが書く大ヒットラノベはヒトの感情をテクニックで操る単なる計算。復讐みたいなモチベーションすらない!」


と切り返す!



 池袋の複合映画館シネマサンシャインで――後日付記:2019年夏に閉館して近隣で再オープン!――、『あの花』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191103/p1)ならぬ『あの雪』(笑)を鑑賞した黒髪ロングは、


「脚本は陳腐もいいトコ。絵・音楽・声優の演技で『何だかわからないけどスゴい』と押し切られてるだけ」


と語る。


「それは演出が良かったと評すべき」


と反駁する黒ブチ眼鏡の主人公で消費ブタなオタク高校生男子に、黒髪ロングは


「妄信的な信者こそが制作者を堕落させる」


と手厳しい。


 黒髪ロングと主人公男子のデート(?)をストーカー(汗)していた金髪ツインテは、対照的に『あの雪』鑑賞後に滂沱の涙を流している。


 あまつさえ、自身の境遇と重ねてか「幼馴染エンド」の素晴らしさを、鑑賞後の喫茶店で鼻息荒く語り出して(笑)、本作メインヒロイン(?)のユルふわでサバサバ、刺激と腰がない柔らか~い声質&スローモーな語り口調が特徴で、非オタの黒髪セミロングの加藤さんが「フ~~ン」と受け止めてあげている(受け流している?・笑)姿も描くことで、ヒロイン3人の対比の妙まで描き出す。


 絶妙なまでの魅力的な美少女キャラの描き分け&ギャグ描写の両立を通じて抽出される、オタを取り巻く状況論・オタが創作に走る動機論・同じオタでも個々人の感動のツボの違い。それらをメタ的に言及してみせる数々の展開が、「あるある」的に刺さる刺さる(笑)。


 コレらは大昔なら、文芸小説の肉筆回覧同人誌であったモノが、美術部や漫研サブカル評論のサークルや文化系部活に取って代わり、さらに現在ではパソコンゲームを作る高校生サークルの面子に変化したモノだともいえるだろう。
 しかも、ゲームだから、脚本・(止め)絵・プログラム・監督などの複数名での役割分担。
 しかし、表層の意匠は違えど、創作の苦楽、才能の限界やスランプにその突破などは、我々のような人種なら、それらに共感・憧憬するトコロが大だろう。


 まぁそれらのスキルは、プロで大成功したならともかく実社会で通用するものではなかったり、世間一般での成長・人格鍛錬・コミュ力向上とは真逆で、鍛えれば鍛えるほど現実不適応になっていく半面もあるけれど(汗)。


 とはいえ、安直なオタ賛美、オタク・イズ・ビューティフル、オタク・エリート説にも陥らず、オタクサークル漫画『げんしけん』(02年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071021/p1)における春日部さんや、深夜特撮『非公認戦隊アキバレンジャー』(12年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200223/p1)におけるアキバブルーみたく、外部や他者である非オタのヒロイン・加藤さんのサメた視線を配することで、オタの言動の奇矯さや滑稽さ、その善悪両面をビビッドに多角的にウキボリにするあたりも、非常にフェアだと思う。


 もちろんオタのサークルに非オタが紛れ込んで、その本心や知見を開陳し合うことなどまずはナイ。学園№1&№2の美少女の正体が業の深いオタで、ゲーム制作を手伝ってくれてオタク少年にデレたり誘惑したりプチ嫉妬して、フェチ的なアングルや描線の数々とも相俟って胸キュンさせてくれることなど現実にはアリエない。
 しかし、フィクションは事実よりも真実。現実世界では非リアルな出来事でも、物語世界では人間のリアルを突いてくることはありうる!


 終盤、次は伝奇ファンタジーではなく、日常での女の子のナマっぽい可愛さを描くゲームを作ろうとオタク少年は決意する。コレなぞも宇宙SFやファンタジー、果ては宇宙人・未来人・超能力者が学園に存在しなくても、女の子とのやりとりだけで間が持たせられるように進歩したジャンルへの自己言及ですらある。
――他方で35年前の「アニメ新世紀宣言」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19990801/p1)で言明されたアニメの未来は、こんな小市民的な作品の隆盛ではなかったとも思うけど(笑)――


 一昨年2015年冬アニメの売上的覇者だった本作第1期は、個人的にはヒドい安っぽい作りで、同じ原作者が本作同様に脚本も手懸けた『ホワイトアルバム2』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191115/p1)の足元にも及ばない出来だと感じたけど、原作ラノベ番外編『冴えない彼女の育てかた ガールズ・サイド』全2巻分を背骨に据えた第2期たる本作は、打って変わって大傑作。第1期は観ない方がイイ、第2期の方から観てください! という傑作に仕上がったと思う(私見です・汗)。


(了)
(初出・オールジャンル同人誌『DEATH-VOLT』VOL.79(17年8月12日発行))


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