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GODZILLA 決戦機動増殖都市 〜地球人・X星人・ブラックホール第3惑星人・インファント島民 ゴジラvsメカゴジラ!?

(2018年9月12日(水)UP)
『ゴジラ評論60年史』 ~50・60・70・80・90・00年代! 二転三転したゴジラ言説の変遷史!
『シン・ゴジラ』 〜震災・原発・安保法制! そも反戦反核作品か!? 世界情勢・理想の外交・徳義国家ニッポン!
『GODZILLA 怪獣惑星』 〜『シン・ゴジラ』との相似と相違!
『GODZILLA 星を喰う者』 〜「終焉の必然」と「生への執着」を高次元を媒介に是々非々で天秤にかける!
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GODZILLA 決戦機動増殖都市』

(2018年5月18日(金)・封切)

GODZILLA 決戦機動増殖都市』 〜合評1

(文・T.SATO)
(2018年6月16日脱稿)


 21世紀前半に怪獣軍団に蹂躙されて、人類は2大異星人種族の助力を得るも、それでもゴジラをはじめとする怪獣たちを撃滅することはできず、外宇宙へと脱出した。
 しかし、生存に適した地球型惑星を見つけることはできず、過酷な船内生活に倦(う)んだ人々は地球帰還を決断する。
 ウラシマ効果で2万年が過ぎた地球。しかし、そこはゴジラ型生物で生態系が激変した地球であった!


 ……といったCGアニメ表現だからこそ可能な、SF仕立ての『ゴジラ』映画3部作の第2章『決戦機動増殖都市』――SF風『ゴジラ』といえば、もう40年近くもむかしに特撮雑誌『スターログ』日本版(79年)で、『ア・スペース・ゴジラ』という絵物語の連載があってですネェ(ゴホッ、ゴホッ)――。
 アニメ製作は元は下請けCG屋で、近年ではメカも人物も(ほぼ)フルCGの宇宙SF深夜アニメ『シドニアの騎士』(14年)の製作で、好事家を驚かせたポリゴン・ピクチュアズであり、スタッフもだいたいスライドしており、絵柄的にも『シドニア』の延長線上のモノ。


 もちろん怪獣映画『シン・ゴジラ』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160824/p1)級の超特大ヒットなぞを、物事の細分化が進展した果ての21世紀に住まう今の東宝の若手プロデューサー陣がねらうワケもなく、大衆ではなくニッチなハイブロウマニア層をねらっているとの発言をドコかでも眼にしたけど、まさに本作はそのようなクールでシリアスな方向性で構築されている。
 20世紀のSFアニメ全盛の時代とは異なり、21世紀の萌えアニメ全盛の時代に、アニメのゴジラ映画で今の若いオタが釣れるのだろうか? と思いきや……。『シン・ゴジラ』の余波に、脚本・シリーズ構成が『魔法少女まどか☆マギカ』(11年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20120527/p1)の虚淵ブランドで、イケメンボイスの人気声優の登板もあってか、劇場にはけっこう若いオタが来てますナ。
 2014年のハリウッド版『GODZILLA』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190531/p1)では、客層が50代メインという感じだったので、よかったよかった。まぁ両作ともに子供の観客は見当たらなかったけど(爆)。


 生き残りの人類から進化したのか、別種の昆虫などから進化したのか、東宝怪獣映画『モスラ』(61年)シリーズで、モスラを崇めるインファント島の民のような(改変された)自然と共生する部族が2万年後の箱根に住まっていたり、それとの対比でかつてメカゴジラを建造したマッチョなブラックホール第3惑星人の超科学技術・合理主義・富国強兵志向もウキボリとなって、自然志向と科学志向の両者の相容れない価値観の相克と、その狭間で揺れる地球人や宗教的・瞑想的な価値観で生きるX(エックス)星人との多様な対比も描かれたりはする。


 地上に上陸した部隊の地球人たちも、厭戦派・主戦派に分かれており、復讐の対象であるゴジラを打倒せんとするネバギバな主人公青年のハルオは後者であり、その不屈の闘志にブラックホール第3惑星人も共感を示していたのだが、ゴジラに勝つためにはメカ(=ナノ・メタル)との融合も辞さない第3惑星人にはハルオが拒否を示すサマを、ゴジラとの最終ロボットバトル中に描くことで、バトルとドラマのクライマックスも同時に持ってくる。
 筆者のようなヒネくれた人間には、別に当人――第3惑星人や地球人のメインヒロイン――が承知の上で行なうなら、TVシリーズ最終回のあと、外宇宙から新たに飛来した金属生命体との戦争で、最後には意思疎通が不能なハズの金属生命体とも融合して戦争を終結してみせた主人公を描いた『劇場版 機動戦士ガンダム00(ダブルオー) ―A Waking of the Trailblazer―』(10年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100920/p1)みたいなオチもあってイイとも思うけど(笑)。
 もちろん、それはシニカルなあえてするツッコミで、本作では人間とメカとの融合が「一線を超えた非人間性の象徴」として描かれる。まぁそのへんはSF物語のバリエーションのひとつとして、相対化して受け止めさせてもらおう。


 しかし基本的にはそれらの対比・対立劇は本作を高尚っぽく見せるための言い訳であり、前作では空飛ぶバイク型メカ群vs50メートル級ゴジラとの激闘を描いたけど、本作では高速で空を飛ぶ中型ロボット数機&メカメカ都市vs300メートル級の超ゴジラとの大激闘をメインに描いていく。
 メカゴジラをキチンと登場させた同時期公開の洋画『レディ・プレイヤー1(ワン)』(18年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180616/p1)の方がエラいともいえるけど、まぁ本作の設定・作風からして、たとえ登場しなかったとしても不思議じゃなかったし、予想や期待をハズしてくるだろうと、大衆はともかくスレたマニア層であれば、鑑賞途中で想起されてくるので、この試みを手放しでは絶賛はしないけど、まイっか! といったところか?(異論は受け付けます・笑)
 筆者個人が最上級で理想とする作劇ではないし、大スキという作品でもないけれど、むろん自分の好み以外の作品は身体が受け付けないというほどにはケツの穴が小さくはないつもりなので、本シリーズもそーいう中間ポジションにおいては楽しめたし肯定もしておきたい。


 この第2章の脚本は、クレジットの順番的にも実質的には虚淵ではなく、『シドニアの騎士』でもメインライターを務めて、『ブギーポップは笑わない』(00年)・『キノの旅』(03年)・『魍魎の匣(もうりょうのはこ)』(08年)・『夏目友人帳』(08年)シリーズなどのハイブロウ系アニメばかりを手掛ける印象がある村井さだゆきの筆によるものだと思われる。特撮マニア的には『ウルトラマンダイナ』(97年)の怪作である#38、実相寺昭雄カントク担当回「怪獣戯曲」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971209/p1)の衒学的で頭デッカチな脚本が印象に残るが、併映作品の短編アニメ映画『ウルトラニャン』(97年)の脚本家でもあった(笑)。


(了)


GODZILLA 決戦機動増殖都市』 〜合評2

(文・仙田 冷)
(2018年6月12日脱稿)


 見ての感想だが、かなり『魔法少女まどか☆マギカ』(11年、以下『まどマギ』)の要素が入っているなというのが、正直な印象である。
 例えば、目的を果たすために犠牲が出るのは、それが合理的なものである限り許容するというビルサルドのスタンスは、まどマギのキュゥべぇことインキュベーターを思わせる。実態をろくに説明せずに結果だけを押しつけるあたりも何だか似ている。
 一時はビルサルドの思想に共鳴するも、真相を知って恐怖の悲鳴を上げることになるヒロイン・ユウコは、何だか魔法少女の一人・美樹さやかを思い出させる。さやかもまた、奇跡を願って魔法少女になるも、やがて実態を知り、絶望に沈むキャラだった。そのプロセスをもうちょっと急激にやると、今回の映画のようなことになる感じか。
 まあそれを言ったら、ゴジラまどマギのクライマックスに現れた大魔女・ワルプルギスの夜で、それに憎悪を燃やすハルオは魔法少女暁美ほむらのポジションか。しかしながら、この事態を救済するはずの鹿目まどかにあたる存在は、未だに姿を見せない。今回本格的に活躍したフツアの双子の少女・マイナとミアナなのか、それとももっと別の誰かなのか。いずれにしても結論は、11月公開予定の第3部で出るはずである。


 今回のバトルは、ゴジラ対メカゴジラという触れ込みだったが、ふたを開けてみれば、全長300メートルのゴジラ・アース対メカゴジラをベースに構築された要塞都市という異種戦であった。特定の何かを迎撃するために要塞都市を構築するというところで、『新世紀エヴァンゲリオン』(95年)または『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』(07年)シリーズ(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220306/p1)の第3新東京市を思い出した向きは多かろうと思う。
 怪獣同士のガチバトルを期待した向きには、外されてしまった感じもあるのではないかと想像する。私などは、ちょっとばかり意外な成り行きで、これはこれで面白いと思った方であるが。三部作の2話目にはよくあることで、物語の発端とクライマックスとの間に挟まれて、中だるみとは言わないまでも、どうしてもつなぎっぽい感じになるのは仕方のないところか。ハルオの作戦も、基本的には第1部『GODZILLA 怪獣惑星』(17年)での対ゴジラ作戦のブローアップヴァージョンだし、そういう意味では新鮮味はないかも知れない。
 でも、伏線の張り方は面白かった。
 クライマックスで戦闘メカ・ヴァルチャーに乗った3人のうち、なぜハルオだけがナノメタルによる浸食を免れたのか。その前振りとなるのが、フツアの民と出会ったビルサルドが、フツアが自分たちのナノメタルを加工して武器にしていることに気づく場面である。つまり、なぜ日常的にナノメタルに触れているフツアの人々が、ナノメタルの浸食を免れているのか、ということ。それに回答を提示するのが、途中で提示される、フツアの村で傷の手当を受けた人間が、メカゴジラシティに入ったとたんに、ハルオも含めて、軒並み体調を崩しているという事実。フツアの民がまとう鱗粉は、ナノメタルと相性が悪いというか、何らかの相互作用があるのではないか、というわけである。
 それで思い出したのが『怪奇大作戦』(68年・円谷プロ)の第2話「人喰い蛾」。動物を溶かして消化する作用を持つ細菌・チラス菌を植え付けた蛾を使っての殺人を描いた話だが、こう思った人は少なくないのではあるまいか。チラス菌を植え付けられた蛾は溶けないのか? と。劇中ではその辺、特に説明はなかったが、個人的には蛾の鱗粉が、チラス菌に対して防御作用を持つのではないかと想像している。フツアの鱗粉も、ナノメタルに対してそういう作用があったのではという話である。
 実はもう一つ、面白い伏線だと思った部分があったはずなのだが、どこだったのか思い出せない。いずれこの原稿も、改稿する機会があると思うので、その時までには思い出しておこうと思う。


 さて本作、第3部『GODZILLA 星を喰う者』(18年)への布石もいろいろちりばめられている。
 まずフツアの双子少女は、どう見てもモスラ出現のフラグだ。X星人をもじってエクシフ、ブラックホール第三惑星人をもじってビルサルドであるように、フツアというのも多分関連する何かのもじりなのだろう。彼女たちはやっぱり、ザ・ピーナッツやコスモスのように、あの歌を歌うのだろうか。てゆーか、ここまで旧作のネタを取り込んでおいて、今さら歌わないなんて言われたら、その方が嘘だ。
 また本作のラストでは、エクシフの文明を滅ぼした怪獣が「ギドラ」と呼称されていることが明かされる。となれば当然、キングギドラの登場も予想される。実際、次回予告の一枚絵では、幾何学的に絡み合った3本の龍の首が描かれている。何だかその絡み具合が、三浦健太郎氏のダークファンタジーマンガ『ベルセルク』(白泉社ヤングアニマル連載)において、「贄(にえ)」(悪魔に捧げられた生け贄と思えばいいかと)とされた者につけられるマーキングと似ているのは、果たして故意か偶然か。
 ゴジラモスラキングギドラ……あれ、この並びは、金子修介監督の『ゴジラモスラキングギドラ 大怪獣総攻撃』(01年)と同じじゃないか。これでバラゴンが出てくれば完璧なのだが、まあそこまではないだろう。いずれにせよ第3部は、いよいよ本当に「大怪獣総攻撃」になりそうだ。そこにハルオたち人類勢がどう絡むのか。ビルサルドとの信頼関係には、今回の件でひびが入ったことは容易に想像できる。まさか今度はエクシフとも一悶着起こすんじゃあるまいなという不安もある。ハルオは、エクシフのメトフィエスとは仲がいいみたいだから、よほどのことがなければそういうことにはなるまいが。
 泣いても笑っても、物語はいよいよ次で完結する。いったいどんな結末を迎えるのか、楽しみに待つとしよう。


(了)


GODZILLA 決戦機動増殖都市』 〜合評3

(文・久保達也)
(2018年5月27日脱稿)

*見よ! メカゴジラの超進化!


 前作のアニメ映画『GODZILLAゴジラ) 怪獣惑星』(17年・東宝http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20171122/p1)のラストで、身長300メートル・体重10万トンの超巨大ゴジラの襲撃で全滅したかに見えた人類だったが、主要キャラは全員ちゃんと生きていた(笑)。


 各種宣材のキービジュアルにあったように、今回の『GODZILLA 決戦機動増殖都市』(18年・東宝)最大のウリは、映画『ゴジラ対メカゴジラ』(74年・東宝)以来、往年の東宝怪獣映画・ゴジラシリーズに再三に渡って登場し、「昭和」から「平成」にかけ、世の男子たちをワクワクさせてきたロボット怪獣メカゴジラ対怪獣王ゴジラの決戦絵巻だ。
 果たして、アニメで描かれるメカゴジラとはいったいどんな姿なのか? と、大半の観客、いや、少なくとも筆者の興味の中心はそれだったのだが、今回は実にいいかたちで裏切られたといった感が強い。


 ゴジラのデザインをベースに、全身シルバーに光る装甲で武装したメカゴジラは、再登場を繰り返すたびにそのデザインを変化させていったが、今回登場したのはまさにその究極体である。
 前作『GODZILLA 怪獣惑星』に登場した、本来は惑星開発用の掘削(くっさく)機能を持つ重機を兵器に転用したパワードスーツが、ロボットアニメ『機動戦士ガンダム』シリーズ(79年〜・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19990801/p1)のモビルスーツだとするなら、今回のメカゴジラはロボットアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズ(95年〜)の主役メカ・エヴァンゲリオンだと云っても過言ではない。
 いや、実際異様にヒョロ長い腕と足をした、全体的に超スリムなボディは、誰がどう見てもエヴァンゲリオンだし(笑)、巨大な鳥のような翼で宙を高速で舞い、ゴジラに奇襲攻撃をかけるさまは、まさに「蝶(ちょう)のように舞い、蜂(はち)のように刺す」という表現がピッタリとくるものがある。
 実はこの兵器はメカゴジラではなく、ハゲタカ=猛禽類(もうきんるい)を意味するヴァルチャーと名づけられているのだ。かのアメコミヒーロー・スパイダーマンの長年の宿敵にも同名の怪物がいるほどなので、ベタではあるものの戦闘メカにはふさわしい力強いネーミングと云えるだろう。
 もっとも、翼で宙を高速で舞う姿からすれば、メカゴジラと云うよりは映画『空の大怪獣ラドン』(56年・東宝)の主役怪獣を戦闘メカにアレンジした、メカラドンと呼ぶ方がふさわしいかも(笑)。


 おいおい、これでは肩すかしだ、拍子(ひょうし)抜けだ、詐欺(さぎ)だ、と怒る熱心なゴジラファンもいるかもしれないが、このヴァルチャー登場の経緯にはうならされるを得ないのだ。
 前作の冒頭で描かれた、西暦1999年から2048年に至る怪獣たちと人類との半世紀にもおよぶ激闘史の中で、2036年に母星を捨てて地球に来訪した種族・ビルサルドがゴジラ対抗兵器としてメカゴジラを開発するも、2046年に基地ごとゴジラに破壊されたことが、ほんのわずかだが映像でも説明されていた。
 このとき、破壊されたメカゴジラの残骸(ざんがい)を構成する自立思考金属体・ナノメタルが、ごく一部の人類が生存可能な星を求めて地球を離れていた20年=地球時間で2万年(!)の間に増殖を遂げ、メカゴジラシティなる、巨大な金属からなるコンビナートのような都市を形成するに至っていたのだ。
 メカゴジラ自体は劇中には登場しないものの、このメカゴジラシティがメカゴジラの残骸から形成されていることに説得力を持たせるため、逆算するかたちで先述したヴァルチャーと同じく腕や足が細く、背から尾にかけてゴジラのようなヒレが多数並ぶ、全体的にシャープな印象のメカゴジラも、製作の過程でデザインされている――マニア向けの高額商品を売るブランド・プレミアムバンダイ限定でソフビ人形を売るという目的も大きいだろうが(笑)――。


 そもそも、ビルサルドは先述した『ゴジラ対メカゴジラ』にメカゴジラで地球を侵略する悪役として登場したブラックホール第3惑星人がモチーフであり、そのビルサルドのメカゴジラ建造プラントがあった場所、つまり現在の機動増殖都市は、かつての富士山麓(ふじ・さんろく)にあることが今回語られるのだ。
 そう、映画『怪獣総進撃』(68年・東宝)で、宇宙超怪獣キングギドラ対地球怪獣連合軍の決戦場となったのをはじめ、映画『ゴジラモスラキングギドラ 大怪獣総攻撃』(01年・東宝)の時代に至るまで、幾度(いくど)となく怪獣たちが活躍する舞台として描かれた、あの富士山麓なのだ!
 往年のゴジラファンの心の琴線(きんせん)に触れるキーワードを巧妙に散りばめつつも、それらをそのままリメイクするのではなく、時代に受け入れられやすいかたちで昇華させていることこそ、メカゴジラのみならずゴジラシリーズ自体の超進化と云っても過言ではないのだ。


*萌え系キャラに転生した「小美人」


 それは前作のラストで、主人公のハルオ・サカキを超巨大ゴジラの襲撃から助けた存在としてチラッとだけ描かれた、今回主に前半で活躍するエキゾチックな美少女キャラについても同様だ。
 ハルオを助けたミアナと双子の姉・マイナの姉妹は、映画『モスラ』(61年・東宝)から映画『ゴジラ FINAL WARS(ファイナル・ウォーズ)』(04年・東宝http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060304/p1)に至るまで、巨大蛾(が)怪獣モスラを呼び寄せる存在として登場しつづけた、インファント島の小美人をモチーフとしたものだ。
 『恋のバカンス』『ウナセラディ東京』『恋のフーガ』などのヒット曲で人気絶頂だった双子デュオのザ・ピーナッツを小美人に起用することに成功した『モスラ』『モスラ対ゴジラ』(64年・東宝)『三大怪獣 地球最大の決戦』(64年・東宝)。
 そして、現在はすっかりメジャーな女優と化し、アニメ映画『コクリコ坂から』(11年・東宝)や『君の名は。』(16年・東宝)をはじめ、声優としての実績もある長澤まさみ(ながさわ・まさみ)が小美人を演じた映画『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』(03年・東宝)『ゴジラ FINAL WARS』に至るまで、小美人は20歳前後の女優たちによって演じられてきたものだった。
 ちなみに、映画『ゴジラVSモスラ』(92年・東宝)では、当時『愛がとまらない』『淋(さび)しい熱帯魚』などのヒット曲を連発していたアイドルデュオ・ウインクを小美人に起用する案もあったが、残念ながら流れてしまった。


 だが、今回登場したミアナとマイナの姉妹は、従来描かれてきた小美人の系譜を継承しつつも、萌(も)え系の美少女キャラとなったのだ。
 そしてポイントとなるのが、従来の小美人は身長が30センチ(!)だったのが今回は身長145センチと、人類の少女と同じ姿に改変されたことである。
 大人に近い年齢の女性たちが演じてきた小美人の身長を人間大にしたのと反比例するかのようにキャラが低年齢化したのだが、身長30センチのキャラよりも観客の感情移入を容易にするためでもあったのだろう。
 そして、その狙いはかなり的(まと)を得ていたのだ。


 たとえば、地底王国の洞窟(どうくつ)に築(きず)かれた祭壇場で、巨大な卵や謎の文字が描かれた壁画に手をかざしたミアナとマイナが、「卵をたたえよ、大地の闇こそ、フツアの憩(いこ)い……」などと、従来の小美人のように精神感応(かんのう)=テレパシーで呪文(じゅもん)を唱(とな)えつづける場面だ。
 水色とグレーの中間色のショートボブヘアで、前髪部分をモスラが翼を閉じたような形状に整(ととの)えた、ハルオを助けたやさしいミアナはややタレ目、ハルオの仲間たちを敵と認識して攻撃をかけてきた姉のマイナはややツリ目と、一応の差別化がはかられた双子の美少女キャラの、気高(けだか)さと神秘性を強調した演出は、筆者の萌え感情を呼び起こさずにはいられなかった(笑)。
 ミアナがハルオの名前をうまく呼ぶことができず、「は……る……おい」と呼んでしまう場面の、「おい」もまたしかりだ(爆)。


 ミアナとマイナの呪文の中で、「フツアの神もゴジラに敗れ、今や卵を残すのみ」とあるように、ミアナとマイナをはじめとする人型種族・フツア族は、モスラを神として崇(あが)めていることが明確に描かれながらも、メカゴジラ同様、モスラも今回は登場しない。
 だが、フツア族は人型の種族でありながらも、単なる人類の生き残りではなく、昆虫の遺伝子を持つ突然変異体として設定されており、モスラの必殺技であった鱗粉(りんぷん)を発したり、モスラの巨大な羽根と同様の模様が、褐色(かっしょく)の肌の全身に細かく描かれていることで、たとえモスラは登場しなくとも、往年のインファント島の原住民以上に、モスラと因縁(いんねん)が強い種族として描くことに成功しているのだ。
 もっとも、フツア族の長老のキャラクターデザインは、初期モスラ作品に登場したインファント島の長老そのまんまという感が強いのだが(笑)。
 また、先述した『モスラ』で小美人が発する声として製作された、ハモンドオルガンで演奏されたメロディを彷彿(ほうふつ)とさせる音楽が、洞窟の一連の場面で流れていたことも相乗効果を高めていたように思える――なお、『モスラ』の音楽を手がけた故・古関裕而(こせき・ゆうじ)は、先述した『君の名は。』の元ネタ(?)となった純愛映画『君の名は』(54年・東宝)の音楽も担当していた――。
 そして、小美人を身長30センチではなく、身長145センチの小さな美人として描いたのは、主要キャラに心の変遷(へんせん)を生みだし、それらの関係性に大きな変化を与えるためでもあったのだ。


*「群像劇」で魅せるゴジラ映画


 特に目立ったのが、ハルオの幼なじみであり、ハルオにあこがれる後輩女性として描かれながらも、前作『怪獣惑星』ではキャラの味付けがやや薄いと思えたユウコ・タニの躍進ぶりだ。
 先述した「は……る……おい」(笑)をはじめ、ミアナがハルオと親しくしていることに、ユウコは「なによあれ」と、露骨に不快感を示すのだが、もしミアナが従来の小美人のように身長30センチのキャラとして描かれていたならば、ユウコがこのような感情を呼び起こすことはなかったに相違ない。
 この直後、ハルオがミアナの呼びかけで難を逃れたのと同じ場所で、映画『ゴジラVSビオランテ』(89年・東宝)に登場したバイオ怪獣ビオランテの触手を彷彿とさせる捕食植物にユウコが襲われるのがのちの伏線となっているのだが、これについては後述する。


 前作でゴジラ討伐作戦に同胞たちを巻きこむこととなったハルオだが、ゴジラを倒したとは云え多くの犠牲者を出したことを悔(く)いたり、代わって現れた超巨大ゴジラを本当に倒すことができるのか? と悩んだりと、前作では決して見せなかった面が今回は描かれる。
 前作と比べると出番はかなり少ないが、母星を怪獣に滅ぼされて地球に来訪した宗教国家の種族・エクシフのメトフィエスが隊員たちの心を癒(いや)す集会にハルオがフラリと現れ、メトフィエスが「めずらしいね」とつぶやく場面が、まさに象徴的に機能しているのだ。
 ゴジラに復讐(ふくしゅう)の炎を燃やす一方だったハズが、いつしか救いを求めるようになっていたハルオに、ユウコは「どこまでも先輩についていきます」とハルオを励(はげ)ますのみならず、自分の方からハルオにディープキスをかましてしまう!
 ミアナとマイナの姉妹が地球連合の動きを監視しているのを承知のうえで、ユウコはミアナに見せつけるために強硬な手段に出たとしか思えない(笑)。おそらくフツア族にはないであろう習慣を物陰から目撃していたミアナが、案の定、ビクっ! とした動きを見せるのがまたカワイイ(爆)。


 さらに、ユウコはおそるべき変化を見せる。
 ゴジラ打倒のためにビルサルドは部隊全員がナノメタルと同化し、メカゴジラシティの一部となるべきだと主張する。ハルオをはじめ人類は猛反発するが、ユウコはビルサルドの主張に同調してしまうのだ!
 原始時代のような生活を営むフツア族を、科学の最先端をいくビルサルドが露骨に見下す描写が何度もあるのだが――フツア族が矢じりやナイフにナノメタルを使用するのを見たことから、ビルサルドが近辺にかつての基地があることを確信するのも良い伏線となっている――、ユウコもまた、ミアナに対する個人的な反発に端を発するかたちで、フツア族を蔑視(べっし)するビルサルドに同意しているかのように見受けられるのだ。
 どちらかと云えば、端正な顔つきをしたメインヒロインであるにもかかわらず、ここまでイヤ〜ンな女(笑)を極めてしまうユウコは、脚本の虚淵玄(うろぶち・げん)がメインライターを務めた『仮面ライダー鎧武(ガイム)』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20140303/p1)に登場した湊燿子(みなと・ようこ)=仮面ライダーマリカを個人的にはどことなく彷彿としてしまうのだが、この10年間勢いがとまらない、ユウコ役の花澤香菜(はなざわ・かな)の演技には要注目だ。「また花澤かよ」などと云ってる場合ではない。個人的に花澤のカエル顔は好みだし(爆)。


 ゴジラを倒すにはゴジラを超える存在にならねばならず、そのためには肉体も感情も不要だと主張するビルサルド。人間であることを捨ててゴジラに勝っても価値はないと主張するハルオ。激情に突き動かされるままに、ヴァルチャー搭乗を決意するユウコ。フツア族やメカゴジラシティとの出会いを機に、主要キャラが心の変遷をとげ、立ち位置をシャッフルさせていく展開は、『鎧武』のみならず、まさに「平成」仮面ライダー最大の魅力である群像劇を彷彿とさせる!


 そして迎える衝撃の結末……


 「感情を持つことが人類の最大の弱点」(大意)なるビルサルドの主張がクライマックスで最大の説得力をもって響くこととなり、ユウコはゴジラ攻撃の中で絶体絶命の危機に陥(おちい)り、ユウコを救いたいがために感情を捨てられなかったハルオは、最大の目的だったハズのゴジラ打倒が困難となってしまう……
 ゴジラに復讐の炎を燃やしていたにもかかわらず、前作ではハルオがその感情を終始押し殺していたのは、まさに確信犯的な演出だったと云うよりほかにない。
 それにしても、自身の目的を果たすために周囲の人間を巻きこんできた本来は「巻きこみ型」の主人公が、いつしか周囲に翻弄(ほんろう)されてしまう「巻きこまれ型」のキャラに転じてしまうとは!?


 80年代以降のジャンル作品では、地球の存亡をかけた大人たちの陰謀(いんぼう)に巻きこまれてしまう『仮面ライダー鎧武』の若者たちをはじめ、「平成」、いや、「昭和」の仮面ライダーの主人公たちも、圧倒的に「巻きこまれ型」が多くなっている。本稿執筆時点で放映中の『仮面ライダービルド』(17年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180513/p1)もまたしかりだ。
 アイドルグループやバンドを結成したいがために周囲の生徒たちを巻きこんでしまう美少女アイドルアニメ『ラブライブ!』(13年〜・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160330/p1)や美少女バンドアニメ『BanG Dream(バンドリ)!』(17年〜・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190915/p1)の女子高生主人公のような「巻きこみ型」は、特撮ジャンルにおいては「この学校の全員と友達になる男だ!」として、仮面ライダー部を結成したヤンキー高校生・如月弦太朗(きさらぎ・げんたろう)を主人公にした『仮面ライダーフォーゼ』(11年)が希有(けう)な例ではなかろうか?


 その意味では、今回ハルオが「巻きこまれ型」へと転じたのは、2018年11月公開予定の最終作『GODZILLA 星を喰(く)う者』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20181123/p1)で、ハルオがついに超巨大ゴジラを倒す真のヒーローへと至る成長過程として描かれたのかと見るべきかもしれない。
 そして、「平成」仮面ライダーが、登場キャラを一面ばかりではなく、常に多面的に描いているように、ハルオもまた決して一枚岩ではいかない存在として描くことで、観客の感情移入を増幅させる効果を発揮しているのだ。


 従来のゴジラ映画の常として、肝心の主役であるハズのゴジラが、なかなか出てこないという不満があったものだ。
 だが、ハルオの苦悩、ユウコの激情、ビルサルドの合理主義、エクシフの心の救済といった、それまで描かれてきた知的生命体の営みをあざ笑うかのように、超巨大ゴジラがクライマックスでのみ、破壊の限りを尽くすさまが存分に描かれるからこそ、怪獣王ゴジラとしての尊厳が保たれるのではないのか? と思えたほど、今回の群像劇は実に魅力的に描かれており、「平成」ライダーを彷彿とさせる作風は、今後の展望を考えるならば正しいのではなかろうか?
 筆者は静岡県静岡市のシネシティザートで公開2週目の土曜日のレイトショーを鑑賞したが、観客は20〜30代の若い層が圧倒的であり、ハルオ役の宮野真守(みやの・まもる)、メトフィエス役の櫻井孝宏(さくらい・たかひろ)ら、声優目当てとおぼしき女性客の姿もかなり見られたものだ。
 ハリウッド版『GODZILLA』(14年・東宝)の観客層が「メインは50代の方だった」ことから――筆者が観た劇場でもそうだった(爆)――、若い層を獲得するためにアニメ版のゴジラを構想した東宝の戦略は、結果的に正しかったことが実証されたと云っても過言ではないだろう。
 まぁ、だからと云って、筆者を含めた中高年の観客が皆無(かいむ)に近くなるほどまでに(汗)、切り捨ててもよいのか? という問題もあるのだが、つづく最終作『GODZILLA 星を喰う者』には、モスラメカゴジラと来たら、古い世代にはたまらないハズのアイツが、ついに帰ってきますよ! そう、サイボーグ怪獣ガイガンです、って違う!(笑)


2018.5.27.
(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2018年初夏号』(18年6月17日発行)〜『仮面特攻隊2019年号』(18年12月29日発行)所収『GODZILLA 決戦機動増殖都市』評3〜5より抜粋)


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