(2018年9月13日(木)UP)
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BRAVE STORM ブレイブストーム
(17年11月10日(金)・封切)
シルバー仮面×レッドバロン×歴史改変SF×超能力戦闘美少女!
(文・T.SATO)
(17年12月20日脱稿)
ピーカン・晴天下の大東京の巨大河川を、ナゾの巨大物体が潜航! 『帰ってきたウルトラマン』(71年)#1などでもおなじみ、巨大鉄橋・勝どき橋を下側から破って、黒い巨大ロボットが出現する! 外側からじゃなくて、橋の上にいる人間の主観での内側からの映像ですよ!
ナゾの黒い巨大ロボ・ブラックバロンの猛攻で大東京が大ピンチのそのとき、我らが紅の城である巨大ロボ・レッドバロンがやってくる! そして、『ゴジラ』初作(54年)の舞台ともなった銀座は和光の時計台がある、昭和初頭のモダンなビルも林立する交差点で白昼堂々、ブラックバロンvsレッドバロンとのガチンコ・バトルが勃発する!
そこに助っ人参戦するのは、巨大化こそしないものの、第2形態の新スーツに身を包んだシルバー仮面! 俊敏に立ち回り、ブラックバロンにも飛び乗って、TVアニメ『進撃の巨人』(13年)チックな、敵の体表に飛び乗って走行する人間の主観で、巨大な敵の迫力も描き出す!
往年の特撮巨大ヒーロー『アイアンキング』(72年)や『ウルトラマンタロウ』(73年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071202/p1)でも、等身大の人間が巨大な怪獣にムチャにも飛びつき飛び乗る展開があった。それは類似作との差別化でもあって、製作者の当初の脳内イメージにおいては本作のような映像だったのやもしれない。しかし、往時のチャチな特撮だと、映像的な説得力がなく、リアリズムの観点から無謀さが際立ったのも事実ではある。てなワケで、今なら『アイアンキング』のリメイクも映像的にイケるかも!? と思いきや……。
ネタバレするけど、なんとラストでは、『アイアンキング』の主人公である静弦太朗(しずか・げんたろう)リメイク版が登場し、「アイアンキング」と「不知火(しらぬい)ロボット」のリメイク版の巨大戦まで登場! というところで、「TO BE CONTINUED」となる……(ウソつけ!・笑) いやもちろん、続いたら嬉しいけどね。
本作の冒頭シーンは、西暦2050年の未来の地球が、往年の特撮変身ヒーロー『シルバー仮面』(71年)序盤でもおなじみ、両目の眼球が左右斜め上にツノのごとく突き出たヒト型宇宙人・キルギス星人の侵略によって、人類滅亡寸前の大ピンチに瀕している姿が描かれる。
この危機に、原典作品でもおなじみ春日5兄妹は、もう西暦2050年の現代では挽回は困難であると看て取って、タイムマシン(?)を開発し、過去の世界で先行して超兵器である巨大ロボット・レッドバロンを建造し、キルギス星人の侵略の先手を打つことに決定! とはいえ、タイムマシンを指令室側から制御することも必要で、5兄弟のうちの長男・長女、光一(こういち)兄さんと壇蜜(!)演じるひとみ姉さんは、この時代に残ることとなる。
そして我々にとっての現代である2017年よりもちょっと過去の時代、2013年の世界に到着した光二・光三・ひとみの春日3兄弟は、往年の特撮巨大ロボット『スーパーロボット レッドバロン』(73年)の序盤でおなじみ、ロボット工学の権威・紅健一郎(くれない・けんいちろう)博士に、先出しジャンケン(?)で未来の設計図を提示して、紅博士にレッドバロンを秘かに建造してもらうのであった……。
未来の歴史やテクノロジーを、当人の努力もナシに先行して知ってしまうだなんて反則ワザだし倫理的にもドーだかって? いやいや人命どころか人類存亡の危機なのだから、それを上回る倫理的な正当性があるでしょ!(笑) てなワケで、コレはコレで映画『ターミネーター』(84年)シリーズにかぎらず、古典SFの時代からアリがちな題材ではある。
けれど、時間SF・タイムパラドクスの要素も入れることで、単調で先がミエミエな善vs悪との拳骨ド突き合い攻防劇からは若干逸して、ちょっとした、ほんチョットだけ(笑)、知的・ミステリ的な物語展開への興味も惹起することができる。
たとえば、本作においては、せっかく先行してレッドバロンを開発したのに、キルギス星人にその存在がバレてしまったことから、キルギス星人も歴史通りにはふるまわず、歴史に先行して巨大ロボット・ブラックバロンを完成させてしまう。こー来なくっちゃ!
とはいえ、今どきの作品である以上、子供にもツッコミされるようなタイムパラドクス、つまりは過去の歴史を変えてしまえば、今の自分の在り方も変わってしまう、今の自分はタイムマシンを開発し、兄妹を過去の世界に送り込まなかったかもしれない……。それでは、やはりキルギス星人に地球は蹂躙されたままとなる……。という矛盾を避けるため、タイムスリップした先の時間から、世界はキルギス星人に蹂躙される歴史を送る世界と、レッドバロンでキルギス星人撃退に成功するであろう歴史を送る世界のパラレルワールド・2つの並行世界に分岐するという大設定で、この矛盾は回避されるあたり、今では邦洋SF作品の新たなお約束となっていて(笑)、本作でもそれを踏襲する。
よって、光一兄さんとひとみ姉さんが残った西暦2050年の世界は滅びを待つのみなのだが……。扉を開けるや別世界となっており、アイアンキングと不知火ロボットが激闘中! この世界にもまた別の歴史改変があって第3の並行世界と化したのか、あの時空研究施設だけ異世界に飛ばされたのかはナゾである……というところで、さらに捻ってみせた妙!
こう書くと、本格的な時間SFみたいだが、基本的には脳ミソがキン肉の作品である(笑)。原典ではフェードアウトする春日はるかは、ここでは日本刀をふりまわす超能力少女に改変。特撮バトル以外の本編部分でのアクションを担っている。コレまたスゴい姉ちゃんを連れてきたナと思ったら……。髪型を変えてたからすぐには気付かなかったけど、2017年現在放映中の『ウルトラマンジード』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180213/p1)の刀剣ヒロインも演じている山本千尋(やまもと・ちひろ)ちゃんじゃねーか! 本作にも出てたのかよ! ググってみると、本作の方が『ジード』ほかよりも先に製作。
そして、シルバー仮面に変身するマジメな光二くんはともかく、紅博士の弟にしてレッドバロンを操縦する紅健(くれない・けん)は、アングラの賭けボクサー出自! ――コレは94年の巨大ロボ同士の格闘競技を描いたTVアニメ版『レッドバロン』からの引用か?――
まぁこーいう個人としての強さや情熱のたぎりだけを求める輩が、抽象的な世界平和・真の意味での公共のために身をやつすことはないだろうけど(?)、そんな輩でも個別具体の兄との情を媒介とするならば、世界を守るためにレッドバロンの操縦を決意するあたり、個人的には良くも悪くもリアルには思える。それでも月面まで行って、レッドバロン操縦の特訓をするあたり、結局は精神主義&肉体主義の70年代的スポ根(スポーツ根性)ノリ。本作の精髄は推して知るべし(笑)。
尺は子供向け映画並の80分しかないが、飽きることなく鑑賞できた。
海の向こうの『パワーレンジャー』シリーズ(93年〜・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080518/p1)を牽引し、いちスーツアクターから監督、ついには製作総指揮にまで登り詰めた坂本浩一カントクを我らが日本に呼び戻した御仁は、円谷プロダクション&造形会社・ビルドアップの買収・合併騒動で、後者側から円谷プロの副社長に就いた、本作『ブレイブストーム』の監督・岡部淳也であった。
オタク上がりらしからぬガハハ親父的な豪放磊落さ、高いコミュ力&行動力で、またたくまにそれまでのミニチュア特撮を捨て去って、背景美術を高精細なフルCGに置き換えて、下手な人間ドラマも捨て去り、カッコいいアクロバティックなアクション&多数の仮面キャラクター&多数の怪獣キャラクターたちによる順列組み合わせマッチメイクの攻防劇、大逆転劇に徹した映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』(09年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101224/p1)を放った事件は、筆者の記憶にも鮮烈だ。2010年代のウルトラも悪くはないけど、岡部氏には円谷に残って大暴れしてほしかったものだ。なかなかに厳しいだろうが、氏の今後の勇躍を祈りたい。
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http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20171125/p1

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