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GODZILLA 怪獣惑星 〜『シン・ゴジラ』との相似と相違!

(2018年9月13日(木)UP)
『ゴジラ評論60年史』 ~50・60・70・80・90・00年代! 二転三転したゴジラ言説の変遷史!
『シン・ゴジラ』 〜震災・原発・安保法制! そも反戦反核作品か!? 世界情勢・理想の外交・徳義国家ニッポン!
『GODZILLA 決戦機動増殖都市』 〜地球人・X星人・ブラックホール第3惑星人・インファント島民 ゴジラvsメカゴジラ!?
『GODZILLA 星を喰う者』 〜「終焉の必然」と「生への執着」を高次元を媒介に是々非々で天秤にかける!
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GODZILLA 怪獣惑星

(17年11月17日(金)・封切)

シン・ゴジラ』との相似と相違!

(文・久保達也)
(17年11月30日脱稿)


 1999年5月、アメリカを襲ったカマキラスの出現に端を発し、ドゴラ・ラドンアンギラスダガーラ・オルガ……と、21世紀前半、世界各地は巨大生物=怪獣たちの襲撃により、壊滅的な打撃を受ける。
 そして2030年、アメリカ西海岸に出現した怪獣ゴジラは、人類のみならず、ほかの怪獣たちをも駆逐(くちく)する脅威(きょうい)的な存在であり、以後人類は15年以上にも渡ってゴジラとの戦いを強(し)いられることとなる。
 度(たび)重なる怪獣たちの出現により、地球は劣悪な環境となり、世界の総人口は7億人にまで減少してしまう。
 地球で生きることもゴジラと戦うこともあきらめざるを得なくなった人類は、ついに2048年、コンピューターが選抜した1万5千人の人々を地球外に移住させる計画を実行する……


 この半世紀に渡る人類対怪獣の激闘を描くだけでも、実に豪華なエンターテイメントとして完成するだろうが、今回の『GODZILLAゴジラ) 怪獣惑星』では、その歴史は冒頭でダイジェストとして説明されるのみだ。
 新天地を求めて宇宙に旅立ったものの、移民船の極限状況の中では命を失う者が続出、生息可能な星も発見できなかった移民たちは、ついに地球への帰還を決意、ゴジラを倒すことで地球を奪還しようとする!


 本作企画当時は、興行収入85億円と、怪獣映画としては史上空前のメガヒットとなった映画『シン・ゴジラ』(16年・東宝http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160824/p1)の製作も、すでに稼働(かどう)していた。
 ゴジラの圧倒的な巨大感や重量感、都市破壊場面の大迫力など、特撮で描かれるからこそ得られるゴジラ最大の魅力に対し、アニメでは到底太刀(たち)打ちできないと考えたスタッフたちは、それ以外の部分でゴジラを魅力的に描くことに勝負をかけたそうだ。
 本作の前提として設定された、半世紀に渡る人類と怪獣たちの激闘史、つまり、世界各地に出現して大暴れする怪獣たちに、人類がさまざまな超兵器で立ち向かうという、映画『怪獣総進撃』(68年・東宝)や、映画『ゴジラ FINAL WARS(ファイナル・ウォーズ)』(04年・東宝http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060304/p1)などではしっかりと描かれた、怪獣映画としては最高に魅力的な要素を、今回あえてはしょったのは、やはり『シン・ゴジラ』との差別化という意味合いが強かったからではなかろうか?


シン・ゴジラ』との差別化! 都市破壊ではなく宇宙。SFメカ戦闘!


 『シン・ゴジラ』から約1ヶ月遅れで公開され、2016年度最大の話題作となったほど、バケモノ的なヒットを飛ばしたアニメ映画『君の名は。』(16年・東宝)のみならず、近年の劇場アニメや深夜アニメの背景美術の飛躍的な進歩を思えば、怪獣たちが暴れる舞台として、実在する世界各都市を忠実に描くことは、技術的には充分に可能なハズなのだ。
 また、2017年末に「最終章」の劇場版が公開される、美少女高校生たちが戦車でドンパチに明け暮れるアニメ『ガールズ&パンツァー』(12年)における、ミリタリー描写の完成度の高さを思えば、たとえアニメであれ、往年の東宝特撮怪獣映画で描かれた防衛隊=自衛隊の対怪獣作戦や攻撃などの活躍をも、リアルに再現することもできるだろう。
 特にアメーバ状の不定形怪獣であるドゴラは、映画『宇宙大怪獣ドゴラ』(64年・東宝)での登場の少なさからしても、むしろ特撮よりもアニメ向きの素材であり、今回はドゴラだけでも都市破壊場面を描いてほしかったと、個人的には思ったりもするのだが……
 それらを切り捨ててまで、アニメならではのゴジラの魅力を追求した『GODZILLA 怪獣惑星』の達成度はいかに?


 地球外惑星移民計画、ワープ航法の一種である亜空間航行、恒星間移民船、人工知能、パワードスーツ……SFチックな用語やメカ描写が散見され、登場人物たちが疑似科学的な議論をかわす世界観。
 これは今から40年前、映画『STAR WARS(スター・ウォーズ)』(77年・アメリカ)や、再放送を機に若い世代の注目を集めたテレビシリーズの総集編として公開されたアニメ映画『宇宙戦艦ヤマト』(77年・東急および東映系で公開・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101207/p1)などで描かれ、当時の若者たちの間に一大SFブーム、アニメブームを巻き起こすこととなった要因と重なるものである。
 これに付随(ふずい)するかたちで70年代末期に巻き起こった第3次怪獣ブームの中で、映画『メカゴジラの逆襲』(75年・東宝)以来途絶えていた怪獣映画・ゴジラシリーズの復興を願った当時のマニアたちは、ゴジラは、そして特撮映画は、『STAR WARS』や『宇宙戦艦ヤマト』に匹敵するような、「SF」としてつくられねばならないと、声高(こわだか)に叫んだものだった。


 だが、その後40年間、日本で「SF」としてつくられた特撮映画の中で、先述した『シン・ゴジラ』や『君の名は。』のように大ヒットし、世間の話題となった作品は、果たしてどれほどあったのだろうか?
 若干(じゃっかん)の偏見(へんけん)を含むことを承知のうえで、あえて書かせてもらうのだが、たとえば熱心なマニアたちの声から一時的にゴジラが復活をとげた映画『ゴジラ』(84年・東宝)で、対ゴジラ兵器として登場したメカ・スーパーX(エックス)は、当時も、そして現在も、筆者にはまるでファーストフードチェーン・マクドナルドの看板メニューであるビッグマックの容器が空を飛んでいるように見えたりする。
 その反面、スーパーXを細長くしたような形状の、『GODZILLA 怪獣惑星』に登場した揚陸艇(ようりくてい)が、移民船アストラム号から発進したり、地上から浮上する場面には説得力を感じてしまう、といった一種矛盾(むじゅん)した、世間の一般人たちとさして変わらないような感覚が、正直筆者にもあるのだ。


 先述したように、今回のスタッフたちは、ゴジラ映画最大の魅力である、重量感あふれる怪獣による都市破壊描写の迫力を描くことはアニメでは困難だと考えたようだ。
 だが、それとは逆に、『ヤマト』のように、広大な宇宙空間を移民船がワープ航法したり、ロボットアニメ『機動戦士ガンダム』シリーズ(79年〜・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19990801/p1)に登場するモビルスーツを彷彿(ほうふつ)とさせるパワードスーツが、揚陸艇から次々に出撃するといったSFチックな描写は、特撮マニアがこんなことを云うのもなんだが、やはりアニメの方がよりふさわしい手法であるかと思えるのだ。
 そうしたアニメの方が優勢かと思える、「SF」という同じ土俵で勝負しようとしてきたからこそ、日本の特撮映画はこの40年間、アニメ映画に負けっぱなしだったのではあるまいか!?
 やはり特撮映画は、特撮でこそ、あるいは特撮でしか描けない魅力こそを、前面に押しだすべきではなかったか。
 『シン・ゴジラ』があそこまで大ヒットをとげたのは、ひょっとしたら、特撮映画がアニメには到底太刀打ちできないと思われる、SFチックな要素を切り捨てたからこそではなかったのか? と、今は思えるのだ。


 かのロボットアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズ(95年〜・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110827/p1)の監督として著名な庵野秀明(あんの・ひであき)は、自身も往年の東宝特撮映画やウルトラマンシリーズ、スーパーロボットアニメなどが大好きであるにもかかわらず、総監督を務めた『シン・ゴジラ』では、対ゴジラ兵器として、往年のゴジラ映画に登場したようなスーパーメカをいっさい登場させなかった。
 クライマックスでゴジラ退治に出動したのは、新幹線爆弾や在来線爆弾、クレーンをはじめとする重機など、本来戦闘用ではない車両を兵器に転用したものだった。
 そして、本編ドラマの中核を成したのは政界の群像劇と、まさに「SF」とは対極に位置するものであり、これは生身の俳優によって演じられるからこそ、やはり説得力が増すと思われるものだ。


 SFチックな要素が大好きな者としては若干残念に思える部分もあったのは確かだが、『シン・ゴジラ』が大ヒットしたのはもちろんのこと、各新聞や雑誌で知識人たちが大絶賛したことを思えば、庵野氏がアニメにはかなわないと思われる要素を切り捨て、実写映画ならではの魅力を追求した選択は、やはり正しかったと云うべきではあるまいか?
 その『シン・ゴジラ』と比較されることがどうしても避けられない今回の『GODZILLA 怪獣惑星』が、アニメでしか描けない魅力を追求することとなったのは、必然と云うよりほかにないのだ。


『シンゴジ』と近似。地球人・X星人・ブラックホール第3惑星人の政治劇


 ただ、本来『シン・ゴジラ』との差別化をはかったハズの『GODZILLA 怪獣惑星』だが、無意識なのか意図的なのか、実は『シン・ゴジラ』に結構似ていると思える要素が2点ほどあったりする。


 先述した人類VSゴジラの半世紀に渡る激闘の中では、母星を失い、地球への移住を求めた宇宙人が、2035年と2036年に立てつづけに来訪しているのだ。
 2035年に地球に来たエクシフなる種族の名称は、古い世代的には映画『怪獣大戦争』(65年・東宝)や、先述した『ゴジラ FINAL WARS』に登場したX(エックス)星人が元ネタだとすぐに気づいてしまった。
 だが、2036年に来訪したビルサルドが、映画『ゴジラ対メカゴジラ』(74年・東宝)に登場したブラックホール第3惑星人をもじった名称であるとは、うかつにも鑑賞後まで気づくことはなかった……


 移住の条件として、エクシフは予知能力と宗教による地球人の魂の救済、ビルサルドは科学技術による地球の軍備の強化と、ともに怪獣たちとの戦いに疲弊(ひへい)していた地球人たちに有益なものを提供すると申し出たことで、地球人はエクシフとビルサルドの移住を承諾、信頼関係がめばえた末に、3星人による地球連合が結成される。
 移民船アストラム号の船内では、地球連合の中央委員会による会議場面が何度か描かれるが、地球人・エクシフ・ビルサルドの3つの種族の間で、それぞれの思惑が錯綜(さくそう)するさまは、まさに『シン・ゴジラ』で描かれた、政界の群像劇をスケールアップさせたものなのだ。
 宗教国家であるエクシフの種族が、皆一様に青白い顔で穏やかな表情をしているのに対し、科学こそ進歩しているものの、日に焼けた浅黒い顔でガテン系の強靱(きょうじん)な体つきの者が多いビルサルドは、本来は闘争本能が強い種族として描かれているようでもある。


 実はビルサルドはゴジラとの戦闘の中で、元ネタとなったブラックホール第3惑星人と同様、ロボット怪獣メカゴジラを出動させようとするも、起動せずにゴジラに敗れたことが、冒頭のダイジェスト場面の中で語られているのだ。
 一見友好的に見えながらも、実は地球侵略をたくらんでいた宇宙人は、往年の東宝特撮映画によく登場したものだが、もしビルサルドがメカゴジラゴジラに勝っていたならば、『ゴジラ対メカゴジラ』のように、今度はメカゴジラを地球侵略の手段に使ったかも? と解釈することも可能なのだ!
 メインで描かれたビルサルドの軍人たちは、見かけとは違って穏健(おんけん)派が多かったが、中にはゴジラを倒すことで反逆の機会をうかがっている者も含まれるようにも見えるあたり、群像劇としてリアルでもあり、なかなかにスリリングでもあった。


『シンゴジ』と近似。ゴジラの生態に即した、未来過ぎないメカでの戦闘


 もうひとつは、移民たちが地球から脱出した二十数年後、地球時間では2万年後(!)のあまりに遠い未来を描いているにもかかわらず、クライマックスの地球連合ゴジラの激闘場面の中では、『シン・ゴジラ』と同じく、いわゆる未来的なスーパーメカが登場しない点である。
 アストラム号はあくまで移民船であるために、戦闘用の兵器をまともに装備していないという、上手な言い訳が前提としてあるためだが、ゴジラ攻撃の中心となるのは、ひとり乗り用の小型ホバーの編隊と、本来は惑星開拓用の掘削(くっさく)機能を持つ重機として開発されたパワードスーツなのだ。
 高速で宙を舞うホバーにまたがる隊員の主観から、俯瞰(ふかん)して地上を進撃するゴジラをとらえたり、ホバーがゴジラに至近距離から攻撃を加えたり、あるいはゴジラの巨大な尾や口からの放射能火炎で吹き飛ばされてみたりと、臨場感にあふれる戦闘描写はまさに絶品であった!
 いくら未来を描いた「SF」であるとはいえ、あまりに非現実的な超兵器では一般層を興(きょう)ざめさせてしまう、との製作側の想いもあったこととは思うが、たとえて云うなら『帰ってきたウルトラマン』(71年)に登場した防衛組織・MAT(マット)の兵器群に共通する、現実の世界に根ざしたメカ描写は、一般層をも納得させる、説得力にあふれるものであったかと思えるのだ。


 今回登場するゴジラはクライマックスに至るまで、その全体像はほとんど描かれないのだが、ゴジラの体表に発生する電磁波エコーの分布グラフが中央委員会の会議の中でやたらと描かれたり、セルヴァムと呼称される、ゴジラと同じ細胞を持つ翼竜型の怪獣の群れが、地球を偵察(ていさつ)する隊員たちを急襲するショッキングな場面などをたたみかけることが、ゴジラの圧倒的な猛威(もうい)を示す伏線として有効に機能している。
 身長が「昭和」のゴジラと同じく50メートルとして設定されているのも、先述したホバー隊やパワードスーツとの激闘を描くのに、あまりにデカすぎては迫真性が失われるとの計算からはじきだされたものだろう。
 ただ体型はかなりマッチョになったのに、体重が「昭和」ゴジラの半分の1万トンというのは、古い世代としてはちょっと解(げ)せないものがあるのは事実だ。
 もっとも今回ゴジラのデザインのモチーフとなっているのが、地球上の生物の中で最も巨大に成長し、何千年も生きるほどに寿命が長い「樹木」であることからすれば、若干体重が軽いことにも説得力は感じられる。
 柊(ひいらぎ)の葉をモチーフにしたらしい形をした背びれのゴジラが、地上を重量感たっぷりに進撃するさまは、さながら森林が生(お)い茂った巨大な山が動いているようでもあり、この狙いもまさに的中したと云えるのではなかろうか?


 セルアニメの時代、たとえば『ザ☆ウルトラマン』(79年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971117/p1)なんかでも、特に最終展開におけるスペース・オペラ的な世界観こそ、まさにアニメならではの魅力を発揮したものであったが、そこに登場する怪獣たちの「存在の耐えられない軽さ」だけは、到底隠し通せるものではなかった。
 以後、ウルトラマンのテレビシリーズがまともにアニメで製作されなかったのは、製作側も視聴者側も、それがトラウマとなってしまったためでもあろう。
 だが、特撮でもアニメでもCGがあたりまえに使われるようになった現在では、その隔(へだ)たりはもはや解消しているかに見えるのだ。
 少なくとも、この『GODZILLA 怪獣惑星』は、アニメでも立派にゴジラを、そして怪獣映画を製作可能であることを立派に証明してくれたように思える。


続編にメカゴジラ!? 連年製作することで新たな才能&ファンも開拓せよ


 実は2018年5月に公開される、キービジュアルから推測すればメカゴジラとの怪獣バトルが描かれるであろう(!)、『GODZILLA 決戦機動増殖都市』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180622/p1)を含め、今回のアニメによるゴジラ映画は全3部作として製作されている。
 これで16年7月の『シン・ゴジラ』を皮切りに、3年連続でゴジラ映画の新作が公開されることとなるのだ。
 04年の『ゴジラ FINAL WARS』から『シン・ゴジラ』の間に生じた12年間(!!)ものあまりに長いブランクを思えば、もし仮に『シン・ゴジラ』や『GODZILLA 怪獣惑星』に対して不満を抱(いだ)いた人がいたとしても、この3年連続の新作ゴジラ映画公開には、ゴジラファンなら素直に喜ばしいと思うべきだ、と筆者には思えてならないものがある。


 『シン・ゴジラ』は立ち見の客までもがいた(!!)ほど、あれだけ満員御礼となり、観客の層も老若男女(ろうにゃくなんにょ)、一般層・マニア層問わず幅広かったにもかかわらず、小中学生の姿はほんのわずかしか見られなかったものだった。
 今回の『GODZILLA 怪獣惑星』に至っては、子供の姿は皆無(かいむ)に近かったと云ってよいほどだ。
 「ガキがいないから静かでいいや」などと喜んでいる場合ではない。現在のゴジラファンの圧倒的多数を占める、我々中年世代があの世に行ったら、いったい誰がゴジラを観てくれるというのか?
 ゴジラの商品的価値急落を招いたのは、先述したように、12年間もの長すぎるブランクが生じたことが最大の要因なのである。
 これではゴジラが、怪獣映画がオワコンと化してしまうのも必然であり、たとえ今は人気があるシリーズ作品ではあっても、長期休養に入るや危機的状況を招いてしまうという好例であろう。


 『GODZILLA 怪獣惑星』のメガホンをとった監督のひとり・静野孔文(しずの・こうぶん)は1972年生まれである。70年代の関東地方では春休みや冬休みの夕方になるとフジテレビで頻繁にゴジラ映画を再放送していたそうだし、70年代末期の第3次怪獣ブームの頂点の時期である79年度には春の番組改変期・夏休み・年末・祝日の夜のゴールデンタイム枠でゴジラ映画が放送されたくらいだから、当時は新作こそなかったけれども、熱烈なゴジラファンであっても不思議ではない世代なのだが、実は今までゴジラ映画をまったく観たことがないそうだ。
 むしろ静野監督より10歳以上も年下の83年生まれで、今回主人公のハルオ・サカキを演じたアイドル声優宮野真守(みやの・まもる)が幼稚園児から小学生だったころは、映画『ゴジラVSビオランテ』(89年・東宝)から映画『ゴジラVSデストロイア』(95年・東宝)に至るまで、毎年新作のゴジラ映画が公開されていた時代だった。
 昭和後期シリーズの正義の味方のゴジラではなく、人類の敵であったはずの平成ゴジラを「ヒーロー」として観ていたらしい(笑)宮野だが、彼の世代も、すでに親となり始めている人々も多いことだろう。
 ゴジラを小中学生のころに観ていたその世代であれば、ゴジラの新作が公開されたなら、子供の手をひいて劇場に足を運んでくれることが、おおいに期待できるというものではないのか?
 その状況を毎年確実なものにすることこそ、ゴジラの商品的価値向上につながるのかと、筆者は考えるのだ。


 かのウルトラマンシリーズにせよ、『ウルトラマンメビウス』(06年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070506/p1)終了から『ウルトラマンギンガ』(13年)に至るまで、6年数ヶ月にも渡って地上波での新作の放映が途絶えたことが、商品的価値凋落(ちょうらく)を招いたのではなかったか?
 あの坂本浩一監督の作品だったにもかかわらず、映画『劇場版ウルトラマンギンガS(エス) 決戦! ウルトラ10勇士!!』(15年・松竹)の客の入りはガラガラだったものだ。
 だが、『ギンガ』から最新作『ウルトラマンジード』(17年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180213/p1)に至るまで5年連続で新作が放映されたことにより、映画『劇場版ウルトラマンオーブ 絆(きずな)の力、おかりします!』(17年・松竹)は、地元の静岡市では近年客入りが低調な「平成」仮面ライダーの劇場版並みには客が入るようになった――もちろん全国レベルで見れば、ハコの数でも人気の面でも、ライダーほどの興行成績とはいかないのだが(汗)――。
 なので、アニメ・特撮の手段を問わず、毎年確実に新作のゴジラ映画をつくりつづけることこそ、肝要となるのである。


 なお、『ウルトラマンジード』ではウルトラマンゼロをあいかわらずのヤンキー口調で演じている宮野だが、ハルオは4歳のころに両親をゴジラに殺され、以来20年以上に渡ってゴジラに復讐(ふくしゅう)の炎を燃やしてきたにもかかわらず、宮野は終始感情を押し殺した、静かな演技に徹している。
 ハルオはキャラクターデザイン的にも、実に平均的な、黒髪の日本男児という趣(おもむき)であり、優等生でも不良でもなく、主人公としては意外なくらいにこれといった特徴がないのだ。
 だがこれも、冒頭では反逆者として描かれたものの、終始おだやかな口調で語る、エクシフ族のメトフィエスが良き理解者となり、ハルオが居場所を得られたことで心の変遷(へんせん)をとげ、ヒーローへと転じていく展開に、より観客の感情移入を誘うよう、確信犯的に設計されたキャラクター造形なのだろう。
 メトフィエスの声を演じたのは、最近では故・赤塚不二夫原作のギャグアニメ『おそ松さん』(第1期・16年 第2期・17年)の主人公・松野おそ松役で新境地を拓(ひら)いたベテラン声優・櫻井孝宏(さくらい・たかひろ)だが、ハルオのキャラに次第に厚みを与えていく重要な役どころを、氏は器用に演じきっていたかと思えるのだ。


 ネタバレ防止のために、衝撃的なラストに対する言及は控えておくこととしたい。
 まぁ、代表作のアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』(11年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20120527/p1)や、本誌の読者的には『仮面ライダー鎧武(ガイム)』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20140303/p1)のメインライターとして知られる、虚淵玄(うろぶち・げん)がストーリー原案と脚本を務めているのだから、いかにも、といった感じではあるのだが(笑)、これでこそゴジラだ! と、思える幕切れであったことだけは確かだ。
 ちなみに虚淵ゴジラを知らない静野監督と同じ72年生まれなのに、筆者と同世代の67年生まれで、共同監督を務めた瀬下寛之(せした・ひろゆき)並みに、ゴジラには詳しいようだ。静野監督は大のゴジラファンである虚淵氏と瀬下監督の暴走をとめる役割を果たしたようだが、これは78年生まれでウルトラマンに想い入れが薄いハズの作家・乙一(おついち)が、先述した『ウルトラマンジード』のシリーズ構成・メインライターを立派に務めていることを彷彿とさせるようでもある。
 ゴジラに想い入れが強すぎるために、かえってつまらないゴジラ映画をつくってしまった監督も実際にいたのだから――具体例はあげません(爆)――、やはり映画が「総合芸術」である以上、静野監督や乙一氏のような、ゴジラウルトラマンに想い入れのない世代とはいえ、我々の世代をも納得させてくれる感性を持つ人財がメインとして参加することこそ、今後の怪獣映画・特撮番組の未来のために必要なのかもしれない。


2017.11.30.
(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2018年号』(17年12月30日発行)所収『GODZILLA 怪獣惑星』評より抜粋)


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