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猿の惑星:聖戦記 〜往年の『猿の惑星・征服』『最後の猿の惑星』再評価!

(2018年9月13日(木)UP)


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猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)

(17年10月13日(金)・日本封切)

往年の『猿の惑星・征服』『最後の猿の惑星』再評価!

(文・T.SATO)
(17年12月3日脱稿)


 人類がほぼ絶滅した近未来の北米大陸で、かろうじて生き残っていた少数の人類――というか軍人・軍隊――と、アンドロイドや人造人間ならぬ、進化したサルの部族が抗争をくりひろげる映画『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』(17年)。


 斜面の森林を深く静かに潜行して、丘の頂にあるサルの砦に銃器で攻撃を仕掛けるも、弓矢の雨アラレによる猛反撃で敗退していく人類軍!
 続けて、大きな滝のウラ側の巨大空洞に隠れ住む数百人のサルの部族が寝静まった深夜に、滝の上方から縄を垂らして伝い降りて、殺戮せんとしてくる人類側の特殊部隊!


 殺人・闘争・戦争の歴史をくりかえしてきた人類とは同じ道を歩まない。サルはサルを殺さない――同族殺しはしない――をモットーとしてきたサル部族のリーダーでもある主人公・シーザーも、妻子を殺されて憤懣やるかたないのか、部族のメンバーたちにはムダな抗争を避けて「出エジプト」を命じる理性はあるものの、彼はひとり群れを離れて、人類軍に対する復讐を誓う。
 そこに合流するのは、彼の古参の友人でもある進化したチンパンジー1名と進化したオランウータン1名に同じく進化したゴリラ1名だ。ほとんど出入り(喧嘩)に出掛ける正義のヤクザ・任侠(にんきょう)映画のノリである(笑)。
 ついでに道中、なりゆきで射殺してしまった人類軍の脱走兵の娘で、猿インルエンザに冒されて言葉を喋れなくなった年端も行かない少女も同行することとなる。


 本作の後半は、冬の雪山や雪原が舞台だ。主人公のサルの部族とは無縁で、動物園で見世物としてひとり暮らしていたという、やや知恵遅れっぽいおサルさんとの泥棒乗馬チェイスが、まずはアクション場面での目玉。
 彼の情報も総合して、長旅の末に辿り着いた人類軍の根拠地で、何たる皮肉な巡り合わせ! 囚われの身となっている、かつて自身が率いてきたサルの部族たちをシーザーたちは発見する。
 夜は野天の収容所に隔離され、昼間は強制労働に狩り出される囚われのサルの部族。
 今度は収容所近辺の地下空洞を利用してトンネルを掘削し、往年の名作ハリウッド映画『大脱走』(63年)ばりの大救出作戦を敢行せんとする!


 ウン、まぁ観ている間は、タイクツすることなく鑑賞することができた。ノリはほとんど戦争映画である。コレはコレで娯楽活劇作品としてはイイし、元祖『猿の惑星』シリーズファンの筆者としても、割り切って別物として観てはいる。
 しかしググってみると(汗)、海の向こうでは「道徳的に複雑な内容」「オリジナル版以来最高の映画」とのレビューも頻出しているようだ。そこまで絶賛されてしまうと、それはドーかな? とプチ抵抗を覚えなくもないのだが(笑)。


元祖『猿の惑星』シリーズ回顧! 『征服』『最後の』再評価!


 2011年から再々開された『猿の惑星』新々シリーズは、元祖『猿の惑星』シリーズ第4作『猿の惑星・征服』(72年)と第5作(最終作)『最後の猿の惑星』(73年)を大胆に換骨奪胎してリメイクしたものであろう。
 世評はともかく、実はこの2作品を「神傑作」(かみ・けっさく)と崇めており、『猿の惑星』シリーズ最高傑作はこの第4作&第5作であると考えている筆者は、この機会にカルく元祖『猿の惑星』シリーズの概略や往時の受容のされ方を解説させてもらいたい。


 今は昔の半世紀も前にスタートした元祖『猿の惑星』(68年)シリーズ。筆者も世代的にリアルタイムで劇場で鑑賞したクチではないけれど、毎度のオッサンオタクの繰り言で恐縮だが、1970年代後半にはTBS月曜夜9時の『月曜ロードショー』やフジテレビ金曜夜9時の『ゴールデン洋画劇場』ワクにて、大作映画扱いで何度かシリーズがTV放映されてきたので、特別にマニアでなくても世代人であれば『猿の惑星』は著名な洋画シリーズであったハズだ。筆者もおそらく数度目のTV放映の際に初見した。
 「ただの人間には興味ありません!」(笑)という、人間だけが登場するドラマや映画には興味が持てない往時の子供たちにとっても、異形(いぎょう)の存在――ここでは進化して乗馬もする着ぐるみや特殊メイクの人語も発するサルたち――がブラウン管の中を闊歩する本作は、特撮変身ヒーローものの世界観にも近しい異世界・非日常への扉を開くようなワクワク感を惹起する作品群として受容されていたと思う。


 元祖『猿の惑星』シリーズは、第1作では亜光速飛行のウラシマ効果で約2000年後の未来の時間の惑星に着陸した宇宙飛行士たちが、人語も喋れないほどに退化した人類を進化したサルたちが支配する世界を目撃し、ネタバレするけどラストはそこが未来の地球であることを知って、大俳優チャールトン・ヘストン演じる主人公が悲嘆にくれるサマを描いていた。
 第2作『続・猿の惑星』(70年)では、実は地底世界で人語を喋れる人類が延命していたことが判明するものの、彼らは核戦争による放射能の影響で、人工肌をめくれば毛細血管が無数に浮き出た青白い姿が正体であり、超能力も使えるミュータント(突然変異)と化しており、サルとミュータントとの抗争の果てに、主人公はコバルト爆弾を起動して地球自体が爆発四散するエンドを迎えた(汗)。
 第3作『新・猿の惑星』(71年)では、第1作で不時着した宇宙船を用いて地球爆発時にかろうじて脱出したサル夫婦が時空の歪みによりタイムスリップして、1973年の北米海域に不時着。一時は大衆にアイドル視されるものの、未来の地球の歴史を知った米政府の特殊機関に危険視されるサマを描く。
 第4作『猿の惑星・征服』(72年)では、1991年の北米を舞台に、奴隷扱いされていた進化したサルたちが、先のサル夫妻の息子・シーザーの指導で、一地方都市で革命を起こして自治権を獲得するサマを描く。そして彼は人類の血塗られた歴史をくりかえさぬよう、「我々サルは横暴な人類さえをも赦(ゆる)そう」と演説をぶつ!
 第5作『最後の猿の惑星』(73年)では、核戦争後の2003年の世界を舞台に、先のミュータントの先祖も登場。進化したサルがついに人類を奴隷として支配するに至る歴史を描くのかと思いきや……。
 未来は確定しているハズなのに(?)、ここでもシーザーは「サルと人類の対等・平等」を宣言して幕となり、時は飛んで600年後の西暦2600年。この時点でもまだサルと人類が対等であるとのシーザーの教えを忠実に守り、彼らが平和裏に共存しているエンディングが描かれる――歴史が改変されたのか、それからさらに1400年が経てばサルが人類を支配する未来がやはり到来するのか、それは誰にも判らない――


 ドーしても二番煎じ・三番煎じのイメージで見られて、元祖『猿の惑星』後半シリーズは酷評の憂き目を見ているようであるが、筆者個人はむしろ元祖『猿の惑星』シリーズは後半の方が面白いと思うし、ストーリーテリング面でも思想的にも非常に高度な作品群だと思う。
 誤解を怖れずに感情的なホンネを云わせてもらえば、第4作『猿の惑星・征服』と第5作『最後の猿の惑星』は、筆者としては珍しいことに(汗)、土下座して心服してもイイ! くらいに思っているほどの作品群なのである。


『征服』『最後の』リメイク・新『猿の惑星』3部作は、原典を超ええたか!?


 その伝で云うならば、今回の新々シリーズ最終作『猿の惑星:聖戦記』が、「道徳的に複雑な内容」だと評されてしまうのはチョットなぁ……。
 あの内容だと、サルと人類の間に和解の余地はナイであろう。いやもちろんサル側は人類軍の敗残兵を虐殺したり捕虜にすることなく無傷で返還して、和平や棲み分けの意図を彼らに代理で伝えさせているほどに寛容だけど、人類軍側のリーダー(?)こと「大佐」は絵に描いたような非寛容で差別主義の暴君であったから、もうサル側は全面戦争に入って自力で生存圏を獲得するしかないワケで。よって、あの世界での人的リソース(資源)においては、リアルポリティクス・現実政治的に両者間に和解の余地はなく、激突するしかナイというのもリアルではあるけれど(汗)。
 しかし、物語の展開や作品テーマをもっと多面的・多角的にするのであれば、サル側ばかりに、強硬派・和平派・奴隷的平和主義者・我が身可愛さの裏切り者を配置するのではなく、圧制者としての一面しか見せない人類軍側にもサルとの和平交渉派や共存派などの「大佐」以外の顔や人格が見える人物を設定した方がよかったのではあるまいか?


 ただまぁ『征服』『最後の』と同じようなことをするのも芸がナイので、だったらいっそバトル色を前面に出すことで差別化しようという意図があるのなら、コレもOKだとは思うけど。
 厳密には、人類側も「大佐」ひとりが大将というワケではなく、姿形を見せない別集団がおり、彼らから見れば「大佐」は手に負えない鼻つまみ者であるらしく(笑)、「大佐」によるサルの強制使役は、この別の人類集団の襲撃を怖れての防壁作りであったことが明らかになっていく。


 最後のクライマックスは、おサルさんたちの大脱走、特殊車両やヘリを用いての人類軍vs別の人類軍、シーザーと大佐の1対1の対決、自己保身で人類側に付いていた卑屈な某おサルさんが目の前で同胞が虐殺されていくのを見ての改心、そしてすべてを洗い流していく大雪崩……などが同時並行して描かれていく。
 意図的な演出か結果的なものかはわからないが、混戦ではあるものの、舞台背景が我らが『忠臣蔵(ちゅうしんぐら)』の四十七士の吉良(きら)邸討ち入りと同様、雪が舞ったり積もったりの中での出来事なので、最後の戦いには血みどろ感はなく、偽善であろうが欺瞞であろうが逆に清涼ささえキワ立ってくるようにも思うので、意訳した邦題『聖戦記』もあながちハズしたものではなかったとも思ってしまう。
 ラストは長年月の放浪の末に「出エジプト」における「カナンの地」を見つけたおサルさんたちの図でエンドとなる。


 本シリーズのおサルさんたちはかつての特殊メイクではなく、モーションキャプチャーによるCGだそうだけど、実にナチュラルで実物がそこにいるようにしか見えない――まぁたしかにオランウータン族のおサルさんたちは人間とは明らかに異なる骨格だからCGだというのはわかるけど――。
 主人公のシーザーを演じたアンディ・サーキスは、今年の2017年版ではなく、2005年版の映画『キング・コング』のコングや2014年版のハリウッド映画版『GODZILLA』のゴジラモーションキャプチャーも担当した御仁だそうである。まぁご本人のご尊顔が見えないし、巨大ゴリラの野生的なコングと、ほとんど人間のようなナチュラルな芝居をするシーザーを同一の俎上で語る技量は筆者にもナイけれど、ジャンル系世界3大キャラクターを制覇!


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2017年晩秋号』(17年12月3日発行)〜『仮面特攻隊2018年号』(17年12月30日発行)所収『猿の惑星:聖戦記』評より抜粋)


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