假面特攻隊の一寸先は闇!読みにくいブログ(笑)

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LOGAN/ローガン 〜老X-MEN映画に、活劇の教科書を見る! 殺ってもイイ悪党の造形法(笑)

(2018年9月13日(木)UP)
『スパイダーマン:ホームカミング』 〜クイズ研究会(?)に所属する文化系スパイダーマンの弱者友人たち(汗)
『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』 〜日本のヒーロー「VS」「大集合」映画と比較!
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LOGAN/ローガン

(2017年6月1日(木)・日本封切)

X−MEN映画に、活劇の教科書を見る! 殺ってもイイ悪党の造形法(笑)

(文・T.SATO)
(2017年8月11日脱稿)


 反則ワザの変化球のスーパーヒーローもので、その範疇のジャンル内ジャンルの作品としては……という限定は付けるけど、とても面白かった。


 往年のスーパーヒーローらしくて、ヨレヨレのワイシャツやジャケットを羽織り、やや大柄で筋骨隆々のマッチョなれどもクタビれていて、口ヒゲ&顎ヒゲをたくわえた初老のオッサン。彼は強いけれども、ドコとなく気持ち片足ビッコを引いて走りつつも、やや息切れしているようにも見える――ように演技・演出されている――。
 そんな彼がドコまでも平原が続く、雨も少ないのであろう、陽光も強くて白っ茶っけた砂ボコリにまみれた乾いた大地の、アメリカ南西部かその南隣りのメキシコとおぼしき片田舎の街を舞台に、物語は始まる。


 で、静かに生活したいのであろうに、運が悪いかガタイがイイからヘンに目立つのか、それとも娯楽活劇作品のご都合主義か(笑)、ドコにでもいる田舎のヤンキーDQN(ドキュン)・不良ギャング青年どもに、商売道具である自家用高級タクシー(リムジン)の高価なクロームメッキの車輪フレームが今まさに盗難されようとしている現場に出くわす。
 そこで忠告のイエローカードを出したら案の定、逆ギレされる。集団リンチでボコボコにされて、あげくの果てに拳銃でズキュン!(汗) ……もちろんヒーローがココで死んでしまったなら、物語は終わってしまう。なので、主人公は死なない(笑)。


 加えて、ココまで悪逆非道でヒトの命を無下にするギャング青年たちが相手だと、この街のダニどもに対して同情の余地はなくなる。主人公の反撃にあってボロカスにされても当たり前! 因果応報! ザマァ見ろ! という心理が観客にも働く。
 そこで始まる逆転アクション劇! ヤンキーDQNどもがボロカスに殴られ蹴られてヤラれていく! あぁ実にイイ気味だ。やれやれ、もっとやれ! 悪いヤツはみんな死んじまえばイイんだよ(爆)。


 ……あげくの果てに、両拳の先から3本ずつ金属のカギ爪がニョキッと生えてきて、それも武器にする!
 もう街のダニとは関わりたくないとばかりに、現場からリムジンを運転して去っていくオッサン主人公。いかに正当防衛とはいえ、警察には自首しないのかヨ!? DQNとはいえ相手を殺しちゃってもイイのかヨ!? という疑問符がかすかに沸くものの、それは本作にかぎった話ではないし、このテのアクション作品のお約束(笑)。
 実のところ、本作はこのような悪いヤツ、悪そうなヤツ、政府の諜報機関の悪い輩、単に地域で利権をむさぼっているボス(笑)らが次々と攻めてきて、自分が襲われたり、老いてヨボヨボになったヒーロー仲間が被害にあったり、自身と同類のミュータント(突然変異)少女が狙われたり、股旅もの=ロードムービーっぽく一宿一飯でお世話になって情の沸いた現地の親分さんや無辜(むこ)の民たちが被害にあっていく……。
 それに対する主人公の怒り・義憤! さぁ、正義の復讐・反撃の暴力ショーの始まりだ!(笑) 主人公の戦い方はヒーロー的なスマートさはなく、ヒール(悪役)のような野蛮で威嚇的で時に誇示的なもの。それでも鼻に付いたりイヤ〜ンな感じがしてこないのは、対する悪党の方が種類はさまざまなれど、いかにもワルらしい悪党だからだろう。
 よって、少々残酷な(さほどでもナイけれど)アクション描写ゆえに「R指定」映画となったのであろうけど――それすら実は宣伝・営業・興行的にハクを付けるためのナンチャッテ「R指定」という気がしないでもナイけれど(汗)――。
 とはいえ、穿った見方をして、作品のウラ側の作劇術のことまで気にすれば、気持ちのよい娯楽活劇アクション映画の何たるか、その教科書的な正解のひとつがココにある! ……ような気もする。


 もちろん本作にも、初老の枯れた寂寞とした想い、一応の正義を守ったあとの世界での思い通りにはならない余生を送るヒーロー、マイノリティ(少数派)や移民問題も投影した、新世代ミュータントの子供たちの束の間の人里離れたコミュニティとそこをも襲撃されて出エジプト・エグゾダス(脱出)して、アメリカ縦断ウルトラクイズで北のカナダへと越境していかざるをえない、現今の世情の風刺的な苦難が描かれていたのは、いかな浮き世離れしたオタクな筆者でもさすがにわかる。
 主人公とミュータント少女が滞在先のホテルの部屋で鑑賞した、往年の名作西部劇映画『シェーン』(53年)にカラめて、古典的な公平無私のロンリーヒーローは街の問題を解決したらもはや不要・用済みで、後年の少々のミーイズムも肯定した人間クサいヒーローのようには日常生活へと帰還できずに、街の遠くの外の世界へと去って行くといったようなことどもで――映画マニアに対しては、『シェーン』ラストにおける主人公の死亡フラグの有無が議論されてきた歴史も同時に想起させつつ――、何事かを訴えようとしていることもわかる。わかるのだけれども、そこだけを過剰に重視して語ってしまうのは、個人的にはチョット……。


 もしもそっちの映画マニア好みの風刺的なテーマの方を土台・基盤として、本作を作劇してしまったなら、この作品はもっと頭デッカチで「云ってることは正しいけれども、作品としては退屈ゥ〜」というような作品に成り下がってしまったのではなかろうか?
 実際にもこの作品は、何か重めのドラマが煮詰まってくると、事件が起きたり悪人が闖入してきて、サッサとバトルへとなだれ込む! 何回、戦闘シーンがあるんだよ! 的に、シャケット姿やタンクトップシャツのオジサン・ヒーローが、両拳から金属のカギ爪を生やして、バッタバッタと敵の戦闘員(?)どもを倒し続けている印象が強い。しかも、そこには一応の道義的な正当性もある。やっちゃってもOKな暴力なのだ!?(笑)


 ウラを返せば、ヒーローのアクションが最高のカタルシスを発揮するためには、ヒーローが暴力を振るっちゃっても観客にイヤ〜ンな感じを与えずに、むしろ相手への懲罰として正当・爽快にも思えてくるさまざまな諸条件を、いかに構築できるかが、娯楽活劇作品の成否をにぎるカギなのであろう――もちろん過剰防衛・過剰反撃に陥ってもならないのだ!――。
 そうやってテクニカルに考え出していくと、あらゆるジャンル作品・フィクション作品は、しょせんは「作りもの」であることが暴露されてしまうともいえる。とはいえ、そこでマニアどもはみんなニヒリズムに陥ってしまえ! と露悪的に主張したいのでもナイ。
 非常に逆説的ではあるけれど、ニヒルで技巧的な匠(たくみ)による良く出来た「作りもの」に徹することによって、むしろその作品には単なる「段取り」のスカスカなアラスジではなく、劇中内での物語的「必然」のような因果や密度のある血肉や生命がやどり、魂も込められていくようにも思うのだ。
 「血肉」や「魂」を作品に宿らせるのは、皮肉にも「愛」などではさらさらなく「技巧」、つまりは作劇の組み立て方などのテクニックであるように思う。コレには異論もあろうけど、筆者個人はそのように考える。
 まぁもちろん「愛」も「技巧」も両方ともにあれば、それに越したことはナイけれど。しかし、「愛」だけあっても「技巧」がナイのでは往々にしてその作品は空回りした出来となるであろう。であれば、たとえ「愛」がなくても「技巧」がある作品の方がはるかにマシなように思える。


 本作はアメコミ洋画『X−MEN(エックス・メン)』シリーズの一編。のハズだが、本作にかぎったことではないけれど、タイトルには『X−MEN』の『エ』の字もナイ。
 コレはいかがなモノだろう? 『スーパーマン』や『バットマン』の知名度には劣るにしても、有象無象のアメコミヒーローたちと比したら本シリーズの知名度は高いし、西暦2000年からもう15年以上も継続して、シリーズの映画が本作以前に8本も作られているくらいのメジャーな作品だ。
 コレでは『X−MEN』シリーズの一編だとは、一般層は認知できないであろう。少なくとも本国・アメリカでは、『X−MEN』が今や超メジャーだから、逆にその文言を付けなくてもOKで、付けないくらいの方が逆にオシャレでカッコいい! くらいならば、本国ではその露出方法で正解だとも思うけど……。我らが本邦・ニッポンで、『X−MEN』がその域にまで達しているかといったら……、それはナイだろう。
 だったら、少なくとも邦題にはサブタイトルに通俗的に「〜最後のX−MEN〜」の煽り文句でも入れておいた方が、もっと一般層を誘致できるどころか、興行収入も2倍くらいになったのではなかろうか?――実際にもX−MEN最期(さいご)の日といった内容なのだし(爆)――
 いやまぁアメコミ信者の皆さんの逆鱗(げきりん)に触れるような、作品の内実よりも商業主義を優先するトーシロの発言でしたら、申し訳ございませんが(汗)。


 洋画『X−MEN』もシリーズが長いものだから、中途の作品で過去の世界にタイムスリップして歴史改変。それにより、歴史(世界)が「改変前の世界」と「改変後の世界」に2分岐したけれど、いずれの世界の延長の近未来であったとしても本作『ローガン』には矛盾があるそうで。そうすると第3の分岐世界なんですかネ? ググってみると、本作に限らず、長期シリーズにアリがちだけど、洋画『X−MEN』シリーズ自体に今や歴史改変でも説明できない、小さな矛盾(凡ミス?)が大量に発生しているようで……。ウ〜ム。このテの矛盾は、日本の70年代特撮にかぎった話じゃなかったんですネ(笑)。


 本作鑑賞の数日後に、本作が映画『仮面ライダー1号』(16年)にも通じるものがあると事前に畏友が述べていたことを思い出す。そう云えばそうだ。老いて半ば引退したヒーローと少女との交流。そして、彼らに迫る魔手。
 しかし、テイストというか作品の密度感やエンタメ度合いは相当に開きがある。その彼我の差はドコに起因するのか? その答えはひとつ。それはやはり、爽快感のある「暴力」や「アクション」の方を作品の中核・起点に据えたのか、人間としての「礼節」や「道徳」の方を中核・起点に据えたのか、その相違であったと筆者は私見する。
 もちろんコレは、100とゼロのオール・オア・ナッシングでの全肯定と全否定といった話ではない。「礼節」や「道徳」を否定しようというのでもない。「礼節」や「道徳」は、人間にとって何よりも大切なものである。
 しかし、「礼節」や「道徳」それ自体ではありえない、「遊興」に過ぎない「娯楽活劇作品」においては、6対4だか7対3だかの比率で、あくまでも前者の「アクション」「暴力」「娯楽」を「主」とし、後者の「礼節」「道徳」を「副」として作劇した方が、「娯楽」作品としてもより良く成立し、なおかつその方が作品が主張する「礼節」「道徳」も、鼻に付かずに観客により良く伝わったであろう……ということなのである。


――とはいえ、非暴力・非武装という絶対平和主義の立場に完全に依拠してしまうと、いかな「礼節」や「道徳」を訴えようとも、「娯楽活劇作品」や「アクションもの」自体を原理的には肯定できないけどネ(笑)。もちろん筆者は、ムダに好戦的であるハズもなくヘタレの平和主義者ですけど、いついかなるときでも非服従・無抵抗、イエス・キリスト新約聖書で説くような「右の頬を打たれたら、左の頬も差し出せ」を貫く絶対平和主義者でもナイ、ヒーローによる正当な暴力や武力は肯定する立場の者なので(〜そうでないと、特撮変身ヒーローものも肯定できなくなっちゃうし・笑)――


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2018年準備号』(17年8月12日発行)〜『仮面特攻隊2018年号』(17年12月30日発行)所収『LOGAN/ローガン』評より抜粋)


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