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ウルトラマンエース4話「3億年超獣出現!」


「ウルトラマンエース」総論
「ウルトラマンA 再評価・全話評!」 〜全記事見出し一覧


ファミリー劇場ウルトラマンA』放映開始記念・連動連載!)
(脚本・市川森一 監督・山際永三 特殊技術・佐川和夫)
(文・久保達也)


 中学1年生のときに観た再放送で筆者を美川隊員にイカレさせた罪深い一編である。
 中学生のころから美川隊員に一方的に好意を寄せ続ける漫画家・久里虫太郎(くり・むしたろう)は同窓会を装って美川を自宅の怪しい洋館に招き入れ、卒業式の日に渡そうとしてつき返されたラブレターを再度渡したり(!)、睡眠薬入りのジュースで彼女を眠らせて監禁したりと、90年代後半ごろから社会問題となったストーカーの元祖とでも呼ぶべき行動を見せる。


 久里役の清水紘治のあまりに病的な演技は米国映画『コレクター』(65年)の主役(テレビ放映の際はかつてのアイドル歌手・沢田研二が吹替を担当していた)や『誰にもいえない』(93年・TBS)に登場した佐野史郎(『ウルトラマンマックス』(05年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060311/p1)のナレーターを担当!)が演じる麻利夫を思わせる毒々しさがある。
 正直子供には刺激が強過ぎると思われるが、「人間を滅ぼすのは人間だ」というヤプールのセリフ通り、人間の欲望・妄想・執念というマイナスエネルギーが怪獣化するという設定はのちの『ウルトラマン80(エイティ)』(80年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971121/p1)に立派に受け継がれたものであり、人間を最大の怪奇なものとして描いた『怪奇大作戦』(68年)にその源流をたどることもできる。美しい星を環境汚染で汚してしまう人間より自分こそ地球の支配者としてふさわしいと考える侵略者が登場する『宇宙猿人ゴリ』(→『スペクトルマン』71年)同様、高度成長期が陰りを見せた当時ならではのものと云えるだろう。


 作風自体は大人になってからの方がより楽しめる印象ではあるが、美川に渡すために自ら考案し、三日間も学校を休んで描き続けた怪魚超獣ガラン(やっぱコワイわ・笑)が久里が執筆する漫画のとおりに暴れ続けるという描写は子供の興味を惹くには十分である。ガランも直前の第3話『燃えろ! 超獣地獄』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060521/p1)の一角超獣バキシム同様に青空を突き破り、次元の裂け目から登場するが、これは全編押し通してほしかった気がする。
 ガランがエースのタイマーショットで右腕を吹き飛ばされるや久里が右腕を押さえて苦しみ出し、パンチレーザーを浴びると久里の身体にも火が付き、とどめのメタリウム光線でガランが大爆発すると久里の自宅である洋館が炎上するというシンクロは実に見事である。
 山際監督はボランティアとして刑務所を出所した者の身元引受人となる活動を続けている(05年4月には「獄中者の家族と友人の会」を設立している)が、彼でさえ久里に対しては断罪するしかなかったようである。



<こだわりコーナー>
*美川隊員が着用する光沢のある緑色のワンピースは超ミニであるが、彼女が久里邸の階段を降りるシーンではもうちょっとで見えそうで見えないのがなんとももどかしい……
*DVD『ウルトラマンA』Vol.11(asin:B00024JJJ2)の特典映像「TAC同窓会」によると、美川隊員が『A』劇中で使用したオシャレな私服のほとんどは、なんと美川隊員こと西恵子女史の父君のお手製だったそうである(!)。父君のご職業はテーラー洋服屋)。


石灰岩の中から発見された、古生代後期デボン紀の魚類生物。化石ではなく深い昏睡状態にあったものを、生物科学センターへの輸送中にヤプールが強奪。改造して仕立て上げたのが、怪魚超獣ガランだ。
 全身が魚のウロコに覆われた緑色の体。80年代中盤以降の怪獣怪人ならばともかく、当時としてはまだ珍しい、振り回すことで戦闘時の演技や表情をつけやすい巨大な手が、強く印象に残る。
*前話における広大なセットをロングで引いて見せる特撮演出とは異なり、本話での特撮監督・佐川和夫は、工業地帯の建造物や高速道路で挟んだアングルの中に超獣ガランを配置する、いわゆる平成『ガメラ』的な特撮演出の手法を主に取っている。
*九里虫太郎が消しゴムで漫画原稿のガランを消すと、現実のガランも消しゴムでキュッキュッと左右に消したように、消えていく特撮演出も秀逸。次作『ウルトラマンタロウ』(73年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071202/p1)第41話『母の願い 真冬の桜吹雪!』での落書き怪獣ゴンゴロスの回でも、同様の特撮演出が見られる(特撮監督は高橋勝)。


*九里「中学時代は劣等生もいいとこだったのにな」。「美人で秀才の美川のり子くん。僕みたいな劣等生には声もかけてもらえなかった」。
 美川「ひがみっぽいとこは、むかしと同じだけど(笑)」。「いいえ。じゃ、私も中学時代の気持ちに帰って、改めて(ラブレターを)お受けいたしますわ」。大人の態度であくまで明るく笑顔で切り返す、あるいは根っから陰の世界とは無縁なのかもしれない美川隊員。
 永遠に埋まらないかもしれないギャップに、前者寄りの我々オタク族視聴者は、世の無常・非情を感じるかもしれない。九里はおなじく人付き合いが不得手な、『帰ってきたウルトラマン』第34話『許されざるいのち』(脚本・石堂淑朗(いしどう・としろう))に登場した動植物怪獣レオゴンの産みの親、主人公こと郷秀樹の幼友達・水野青年の発展形とも捉えることができる。
*とはいえ、70年代長髪痩身、クールな低音ボイスの九里は、完全にあちら側の世界へ行ってしまっている。髪をかきあげ、美川隊員の肩にいやらしくさわり、指でアゴをはさんでこちらに向けさせて……。淡々とした陰気な性格演技もまた怖い。
*九里を演じた清水紘治は、『ウルトラマンダイナ』(97年)第38話『怪獣戯曲』(脚本・村井さだゆき 監督・実相寺昭雄http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971209/p1)でも鳴海浩也(なるみ・ひろや)役で出演。
 (後日付記:清水紘治は、最新作『ウルトラマンメビウス』(06年)終盤でも復活した異次元人ヤプールの人間体として3話にわたって登場(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070408/p1)。ナイスキャスティング! 裏設定である『WEBメビナビ』によれば、ヤプールは九里虫太郎をモデルに変身したらしいとのこと・笑)


*九里いわく「悪魔からテレパシーをもらっている」。今でいう「電波」である。
*「電波」。超獣ガランとの初戦では、戦闘中に突如、戦闘機の操縦や銃器の使用ができなくなる。「電波」による遠隔操作が疑われたが、各種計器に物理的異常はない。精神感応・テレパシー・霊の力(劇中のセリフより)の類いによる妨害だろうと、竜隊長は推測する。
*同じく竜隊長が推測した通り、本話でヤプールは、物理的力押しの攻撃ばかりではなく、人間の心にひそむ底知れない欲望と執念・妄想の力を利用することに目をつけたのだ。九里の妄想と漫画は次々と現実化していく……
*その漫画原稿は、当時の小学館学年誌『小学三年生』と『小学館BOOK(ブック)』(『てれびくん』の祖形?)に『ウルトラマンA』の漫画連載を行っていた林ひさお氏の筆によるもの。


*九里邸に囚われた美川隊員の救出で、本話では吉村隊員が大活躍。本話ラストでも、九里からもらったラブレター(中身は超獣ガランのイラスト!)を見つめて苦悩する美川隊員に、ライターとつづけて灰皿を差し出すオイシイ役回りを務める!
*救出されて、今回の任務への参加は危険だからと謹慎を命じられてしまった美川隊員。涙目で北斗と南に訴えて、タックアローで出撃してしまう。あの山中隊員も、「美川隊員は責任を感じているのです。超獣が暴れるのは自分のせいだと思って」と適格な人間観察を示し、彼女をかばう。TACのメンバーは、人の心がわかる人たちなのです。
*TACの戦闘シーンでは、今野隊員が新たにバズーカ状の新兵器を用いている。


*第4の変身パターン「フライングタッチ!」も登場。上と下から交差して互いに空中前転。第3話以上に変身の瞬間が、周囲の人々に見られてしまい正体がバレそうなシーケンスであるが、好意的に脳内補完することとしよう(笑)。なお、変身シーンにも一工夫を加えて、本作における新たなサスペンスや見せ場のひとつにしようとしたのは、本話の脚本家でもあるメインライター市川森一(いちかわ・しんいち)の企画書段階からのアイデアでもある。文句があるなら、市川森一先生に云ってくれ!(笑)


*九里虫太郎。その名は戦前の推理小説家、推理小説三大奇書のひとつ『黒死館殺人事件』(34年)などで有名な小栗虫太郎から引用したもの。


*視聴率16.2%


(了)



付記
 『ウルトラマンA』第4話『3億年超獣出現!』評の中で触れた映画『コレクター』の詳細が判明しましたので、一応紹介しておきます。


『コレクター』(1965年・アメリカ)
監督 ウイリアム・ワイラー
原作 ジョン・ファウルズ
脚本 スタンリー・マン、ジョン・コーン
音楽 モーリス・ジャール
出演 テレンス・スタンプサマンサ・エッガー
   モーリス・ダリモア、モナ・ウォッシュボーン


ストーリー
 蝶の収集を生きがいとする若い銀行員フレディ。ある日フットボールの賭けで大金を入手した彼はもっと美しいものを収集しようと企て、人里離れた一軒家を手に入れる。若く美しい女性ミランダに麻酔をかがせてその別荘に閉じ込めるフレディだったが、何をするでもなく、ただじっと観察を続ける……


 ストーカーなる言葉が一般化するずっと以前にこうした輩(やから)が存在したのは事実のようであり、一軒家や麻酔といったアイテムなど『A』第4話の描写はこの作品に強く影響を受けていると思えます。
 また蝶の収集は『ずっとあなたが好きだった』(92年・TBS・asin:B0001X9BN8asin:B0006FGWT2)に登場した冬彦(演・佐野史郎)の趣味として活かされていました。
 05年9月28日にソニー・ピクチャーズエンタテインメントから2千円の低価格でDVD(asin:B000ALVXSWasin:B0002J5766asin:B000JVRTHM)が発売されていますので、興味がおありの方はぜひどうぞ。



(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2006年号』(05年12月30日発行)『ウルトラマンA』再評価・全話評大特集より抜粋)


『假面特攻隊2006年号』「ウルトラマンエース」#4関係記事の縮小コピー収録一覧
朝日新聞 2005年4月3日(日) 受刑者家族の会設立へ監獄法見直し「要望、当局に伝えたい」 〜「獄中者の家族と友人の会」呼びかけ人は山際永三監督
・『小学一年生』72年9月号ふろく「小一怪獣ひみつ百科」 〜美川隊員・西恵子のサイン付(笑)2005.2.2


[関連記事] 〜エース全話評・主要記事!

ウルトラマンA 再評価・全話評!」 〜序文

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060513/p1

ウルトラマンエース#4「3億年超獣出現!」

  (当該記事)

ウルトラマンエース#13「死刑! ウルトラ5兄弟」

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060803/p1

ウルトラマンエース#14「銀河に散った5つの星」

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060805/p1

ウルトラマンエース#17「怪談 ほたるケ原の鬼女」 〜真船演出! #23のプロト!

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ウルトラマンエース#18「鳩を返せ!」 〜名作傑作!

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ウルトラマンエース#19「河童屋敷の謎」 〜夕子活躍!

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ウルトラマンエース#23「逆転! ゾフィ只今参上」 〜メビウスの名の由来はA#23にあり!?

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ウルトラマンエース#24「見よ! 真夜中の大変身」 〜赤い雨! ヤプール壊滅二部作後編!

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ウルトラマンエース#28「さようなら夕子よ、月の妹よ」 〜南夕子降板の真相異論!

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ウルトラマンエース#30「きみにも見えるウルトラの星」 〜主役窮地の作劇極北!

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ウルトラマンエース#33「あの気球船を撃て!」 〜最終回の着想はここに!?

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ウルトラマンエース#34「海の虹に超獣が踊る」 〜長坂秀佳脚本第2弾!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061223/p1

ウルトラマンエース#35「ゾフィからの贈りもの」 〜子供に過ちを犯す主役!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061231/p1

ウルトラマンエース#43「怪談 雪男の叫び!」 〜身勝手な大衆に批判の視点!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070224/p1

〈DVD付きフォトブック〉「ウルトラマンA 1972」レビュー

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070210/p1

『エース』同人誌の歴史1 〜『A』再評価の端緒を築いた伝説の名同人誌『全員脱出!』

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070331/p1

ウルトラマンエース最終回「明日のエースは君だ!」

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070429/p1