(ファミリー劇場『ウルトラマンA』放映・連動連載!)
『ウルトラマンエース』#33「あの気球船を撃て!」 〜エースのお面をかぶった少年! 最終回の着想はここに!?
『ウルトラマンエース』#34「海の虹に超獣が踊る」 〜子供をスポイルする庇護的な母性愛への懐疑! 長坂秀佳脚本・第2弾!
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『ウルトラマンエース』35話「ゾフィからの贈りもの」 ~子供に対して過ちを犯してしまう主人公!
(脚本・久保田圭司 監督・古川卓巳 特殊技術・高野宏一)
(文・久保達也)
9才になっても寝小便が治らないことを級友にからかわれる雪夫は、サッカーの仲間に加わりたいがために、級友たちにそそのかされて防衛組織・TAC(タック)に、
「超獣ドリームギラスが出た!」
というニセの通報電話をかけてしまう。
現在においても絶えることのない典型的ないじめのパターンである。
TACの特殊車両・タックパンサーで駆けつけ、まったく異常がないことを知った主人公・北斗星児(ほくと・せいじ)隊員は、「被害者」である雪夫少年を
「バカモン!」
と怒鳴りつけてしまうのだ。そして、そのあいだに真犯人でもある級友たちはコソコソと逃げ出してしまうのであった。筆者の子供時代にも、こういうことって、よくあったよな……(汗)
レギュラーのダン少年から雪夫がいじめられている件を聞かされた北斗は「なさけねえ奴だなあ」などと口にする。しかし、いじめの原因が「寝小便」であることを知って、自身も同様に9才まで寝小便に悩まされていたことから、雪夫に対する態度が急変する(笑)。
TAC本部でコーヒーを入れてくれた美川隊員に対し、今野隊員が、
「美川隊員、いい嫁さんになれますよ!」
などとカラったことから、美川隊員は照れて、
「まあ〜、ヤな人!」
と云って今野隊員を突き飛ばす。
それが原因で、北斗隊員の尻の部分にコーヒーのシミができ(笑)、北斗が寝小便のことを思い出すあたりも、うまいのだ。
加えて、TACチームのアットホームな心地よい描写でもある。余談だが、美川隊員を演じた西恵子氏は本当に「いい嫁さん」になってしまわれたようで…… 現在、彼女は旦那さんともども、喫茶店を経営されているのであった……
「寝小便はちっとも恥ずかしいことじゃない。それよりもウソをついたり、友達の悪口を云ったりすることの方がもっと恥ずかしいことなんだ」
と北斗は雪夫を諭(さと)して、胸にウルトラマンエースのバッジを付けてあげる。
劇中では「ワッペン」と称されているエースの缶バッジであるが、小学館の学習雑誌で頒布されていた読者サービスである怪獣バッジを見てもわかるように、当時はバッジといえば金属製のものが主体であった。しかし、このバッジは当時の市販品であるとは思えず、この回のために用意されたものかと思われる。
北斗の「寝小便なんかに負けずに、どこまでも頑張るんだ!」と励ましを受けた雪夫だった。
余談だが、雪夫の部屋は現在のウルトラシリーズマニアがよだれを垂らすような「お宝」グッズで埋めつくされている。ブルマアクの怪獣ソフビ・超獣バキシムや超獣アリブンタをはじめ、『ウルトラQ』(66年)~『帰ってきたウルトラマン』(71年)初期までに登場した怪獣100匹が市街地で大暴れする様子を描いた絵巻物のようなジャンボポスターであった『怪獣ジャンボスコープ』(71年・出版社不詳)も、壁に貼られている! これは2005年9月に小学館から発売された書籍『ウルトラマンDNA』Vol.4(ISBN:4091106730)の巻頭付録として復刻されている。
しかし、またしても前夜同様、夢幻超獣ドリームギラスに追いかけられて全身に水をかけられるという夢を見てしまった。そして、案の定、寝小便をしてしまった。布団に残った寝小便の形跡は、まるで超獣のような形をしていた。
夢の話をダンに話した雪夫は、夢の中に出てくる場所が昨年の遠足で行った実在の場所であったことをダンに聞かされて、電車で現地へと向かった。
すると、夢と同じ湖からドリームギラスが出現!
航空機2機を撃墜し、湖の中に姿を消してしまったのだ。
雪夫はTACに通報する。しかし、レーダーに反応はなかったし、先に雪夫少年からのニセの通報の一件があったことから隊員たちは信用しない。
雪夫を信じた北斗隊員だけは単身出動する。しかし、やはり超獣の気配はまるでなかった。警察からも、事故の原因は航空機の「空中衝突」であったとする連絡がTACに入った。
裏切られたと誤解した北斗隊員は雪夫少年に、
「もう友達じゃない!」
と雪夫からバッジを取り上げてしまうのだ!
第29話『ウルトラ6番目の弟』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20061120/p1)評でもふれたことを繰り返すが、前作『帰ってきたウルトラマン』(71年)第15話『怪獣少年の復讐』でもゲスト少年・史郎の父が運転する電車が怪獣エレドータスに転覆させられたという話(=劇中内での実話)に対して、主人公・郷秀樹が、
「ウソをつくな!」
と史郎を平手打ち(!)にしてしまうシーンがあった。
子供の味方・人気者である変身ヒーローがあろうことか無謬(むびゅう)ではないのだ。ヒーローに変身する前の人間としての姿においては、まだ未完成で発展途上の若者・青年に過ぎないのだとして描かれているのだ。それどころか、子供を傷つけてしまう場面をも描いてしまうのだ! これによって、人間ドラマ性を高めて、また子供と正面から真剣に向き合うことがいかに難しいかを、これらの作品では問いかけているのである。
そしてもちろん、失態があっても、彼らは事態を改善しようとして、子供たちに向き合い続けていくのであった……。ただまぁ、子供向けの娯楽活劇番組としては、やはりヤリすぎではあって、重たすぎるといった欠点もあるのだが……
その夜、北斗はダンから「兄ちゃん、厳しすぎるよ」などと責められる。そう。ダン少年の云うとおり。北斗どころか、このストーリーそれ自体が、ある意味ではキビしすぎるのだ。今風に云うと、作品それ自体に対する自己言及的なセルフ・ツッコミでもあったのだろう(笑)。
ところで、ふだんは「北斗さん」と呼んでいるダン少年が、本話にかぎっては北斗を「兄ちゃん」と呼んでいる。もちろん、北斗はダンを「ウルトラ6番目の弟」扱いにしているのだから、ダン少年に「兄ちゃん」呼ばわりされても不思議はないのかもしれない。しかし、ダン少年は北斗隊員とウルトラ5番目の弟ことウルトラマンエースが合体していることを知っているワケではないのだ。その意味では、少々不自然ではあったかもしれない。その意味では、ダン少年がクダけて媚びて甘えてみせるかたちで、北斗に幸夫少年の窮状や彼への同情を訴えたのだと捉えたい。しかし、この処置にはおおいなる前フリとしての意図もあったのだろう。
ダン少年が部屋から出ていった直後、北斗は「ウルトラの星」から、
「弟よ、よく聞け。おまえは過ちを犯したのだ。信じるべきものを信じず、少年の心を深く傷付けてしまったのだ。おまえは償(つぐな)わなければならない」
といった警告を受けるのだ! その声の主はエースの「兄ちゃん」(笑)でもある、ウルトラ兄弟の長男・ゾフィであったのだ!
ゾフィの警告から「雪夫の話が真実であったのかもしれない」と考え直した北斗は、雪夫に謝罪する。
しかし、時はすでに遅かった! 北斗に事実を否定された雪夫少年は、そのショックから口がきけなくなってしまったのだ! そして、北斗隊員はダン少年からも「兄ちゃんのせいだ!」と責めたてられてしまうのであった……
脚本や監督は異なるものの、今回は前回の第34話『海の虹に超獣が踊る』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20061223/p1)と同様のテーマを扱っている。このことから、一種の「前後編」のような趣も感じられてくる。前回は「大人にウソをつかれたことからひきこもってしまう少年」を描いていた。今回は「大人に真実を否定されたことから口がきけなくなる少年」を描いているのだ。
大人との信頼関係が崩れた子供の結末。今回は一見は「色モノ」的な印象を受けるものの、良くも悪くも実は極めて重たいテーマを扱った作品でもあったのだ。
また、前話においてTACの竜隊長は「子供が生きる力を失おうとしているのだとしたら、それは超獣以上の脅威だ」と語っていた。本話では北斗は雪夫に「超獣以上の脅威」を与えてしまったことになる。
雪夫に生きる力を与えるため、エースは超獣ドリームギラスに敢然と立ち向かう!
雪夫が寝小便という「水」に苦しめられたのと同様に、エースが実は「水中戦」が苦手で、湖底での戦いに苦戦する様子が描かれている(笑)。
超獣と「超獣以上の脅威」の両方に苦しめられるエース!
そこに、おそらくはウルトラの星にいるのであろうゾフィは、遠隔操作なのであろうか、万能アイテム「ウルトラマジックレイ」で湖の水を蒸発させて、これを助けるのだ!
エースはメタリウム光線で超獣と、「超獣以上の脅威」に見事に打ち勝ったのであった!
といったところで、最終的にはやや安直なオチではある(汗)。やはり、巷間(こうかん)で云われているとおりで、ゾフィ兄さんはエースに対して甘いのではなかろうか?(笑)
もちろん、ゾフィ兄さんを顔見せでも登場させたことそれ自体はよいのだ。しかし、今回にかぎった話ではないのだが、本話で子供たちが本当に観たかったものは、ゾフィ兄さんがサブタイトルにうたわれている以上は、本作の第5話『大蟻超獣対ウルトラ兄弟』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20060604/p1)のように、ラストでゾフィ兄さんが地球に飛来してきて、エースと気持ちよく共闘するようなエピソードではあっただろう。そこは子供の時分から残念ではあったのだ(笑)。
<こだわりコーナー>
*本話を演出した古川卓己(ふるかわ・たくみ)監督は日活映画出身で、本項執筆の2005年現在では東京都知事になっている作家の石原慎太郎(いしはら・しんたろう)原作小説の映画『太陽の季節』(56年)などを担当した大ベテランである。テレビ時代劇『鬼平犯科帖(おにへい・はんかちょう)』(69年)、『右門捕物帖(うもん・とりものちょう)』(69年)、『大忠臣蔵(だい・ちゅうしんぐら)』(71年)なども監督した御仁でもあった。
*脚本の久保田圭司は、『A』と同時期の大ヒットテレビアニメ『科学忍者隊ガッチャマン』(72年)をはじめとする、あたまのタツノコプロのテレビアニメや、テレビ時代劇『大江戸捜査網(おおえど・そうさもう)』(70〜84年)などでも有名だ。特撮では、東映特撮ヒーロー『アクマイザー3(スリー)』(75年)と『宇宙刑事シャリバン』(83年)。円谷プロ作品でも、テレビアニメ『ウルトラマンキッズのことわざ物語』(86年)と『ウルトラマンキッズ 母をたずねて3000万光年』(91年) に参加している。
*視聴率22.6%
各種ウルトラ関連書籍で、『A』後半に登場する色モノ的超獣の図版を見ただけで、作品自体を食わず嫌いにしているマニア諸氏も多いのではないだろうか? 今後も騒音超獣サウンドギラー・鈍足超獣マッハレス・伝説怪人ナマハゲなど、色モノ的な超獣が『A』には次々に登場してくる。それはそのとおりなのだが、しかし、作品そのものは決して色モノでもなかった! 長らく誤解と偏見を受けてきた第2期ウルトラシリーズの名誉のためにも、筆者は今後も微力ながらも尽くしていきたいと考えている……
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