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ウルトラマンエース18話「鳩を返せ!」 〜名作! 真船演出×高野特撮×田口脚本の相乗

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ウルトラマンエース』18話「鳩を返せ!」 〜名作! 真船演出×高野特撮×田口脚本の相乗

(脚本・田口成光 監督・真船禎 特技監督・高野宏一)
(文・久保達也)


 東京の路地のある下町、ガラリと威勢よく開かれた引き戸の玄関から、鳩を抱いた三郎少年が母親から突き出された。


「痛いじゃないか!」
「ダメよ! ほんとうにダメよ! 今度こそお母さんの云うこと聞いてちょうだい! そんな汚いものウチの中に置いとくわけにはいかないんだから!」
「ヤだ! 小次郎(鳩の名)を捨てるなら、オレもこの家を出ていっちゃうよ!」
「出ていく? いいわよ! どこへでも行ってらっしゃい!!」


 一方、本作の防衛チームであるTAC(タック)の北斗星児隊員は、TACの専用車・タックパンサーで都内をパトロールしていた。助手席には南夕子隊員も同席している。


夕子「あら、鳩よ」
北斗「平和だよなあ、まったく」
夕子「星児さん、平和そうに見えてもね、それはここだけの話よ。この地球だって、どこかで必ず戦争してるんですもの」
北斗「そうだ。訂正する。平和そうに見えるだけだ……」


 その通りだ。たしかに日本はある程度は平和なのかもしれない。しかし、1972年は米ソ(アメリカ・ソビエト)の2大国の代理戦争の面を持つ、北ベトナム共産主義)VS南ベトナム(資本主義)の戦争の真っ最中であった。ベトナムの隣国・カンポジアでも内戦が起きていた。前年71年には第3次印パ戦争(インドVSパキスタン)が、翌73年には第3次中東戦争も勃発する。
 近未来ではなく1972年当時の現代が舞台だとしか思えない本作『ウルトラマンA(エース)』(72年)の世界でも、たとえ異次元人による地球侵略に危機にあったとしても、世界各地で戦争が継続していたとしても不思議はないという、子供向け番組らしからぬ、なんともシニカル(冷笑的)な現状認識のセリフなのだ。


 そこへ林道の中に、急に後ろ向きで飛び出してくる少年が!


夕子「危ない!!」(急ブレーキ!)


 北斗と南はパトロール中に伝書鳩を可愛がっている少年・三郎に出会った。その鳩は国内レースで3回も優勝したという。三郎は飛んでいた鳩を鳩笛で呼び寄せる。
 平和の象徴とされている鳩。しかし本話では安易になごんだシーンにしたりはしない。今も世界のどこかで戦火が絶えないことにも言及し、これから劇中で起こるであろう悲劇の不穏な予兆を醸すような演出も行っている……


 この冒頭では鳩を飼うことに反対する母親に三郎が家を追い出され、「オレたち、どこに行けばいいんだ……」と途方にくれながらトボトボと歩く三郎の姿が描かれる。この鳩もブラックピジョンにその後に改造されて、行き場のない悲しみを背負ってしまうわけであり、この短い場面もまた大いなる悲劇の前兆として象徴的に機能している。


 片や三郎少年も、決して一方的にかわいそうな少年でもない。


「鳩の糞(ふん)にはサルモネラ菌があるから、家の人が中毒になるって云うんだ」


という母の理屈を北斗との会話で少年に語らせることで、母には母なりの一理があることを示して、作品自体を一面的・一方的な主張内容にはしていない。どころか、三郎は少年らしい機転を効かして鳩は捨ててきたことにして、林の中に鳥小屋を設けて学校の帰りに世話をしようという、「家庭」と「鳩」の両方を両立させるような良い意味でのズルさ、たくましさまで見せているのだ(笑)。感心する北斗と南。
 
   
 北斗と南が定期パトロールからTAC作戦室に戻る。すると、隊長・隊員たち・梶研究員はTACの無人飛行機の設計図に夢中になっていた。それはやり方によっては月でも海の底でも地面の中でも行けるのだという。しかし、回収機能に問題があることが梶の口から語られる。
 このへんは本話の基本トーンである抒情には流れず、超近代的な科学を有しているTACの設定を活かしてクールさも醸し出すことで、シリーズとしてのTACの何たるかも改めて視聴者に示してもいるのだ。


 北斗は鳩の帰巣本能を利用することを思いついた。その意見は採用され、TACは鳩の習性を実験することが決まった。その鳩に選ばれたのは……


 北斗は三郎から鳩を借り、TACは実験を開始する。


 しかし、その途中、北斗の眼前で鳩は微細な閃光とともに消失、行方不明になってしまう!


 それはTAC基地襲撃を企てる異次元人ヤプールの仕業(しわざ)だったのだ!


ヤプール「フハハハハハ。この鳩はTACへ飛んでいくのだ! 鳩の頭脳を超獣に移し変えれば、超獣はTACへ向かって進むのだ。それっ!」


 ヤプール人は異次元世界で鳩の脳髄を取り出し、「超獣製造機」によって大鳩超獣ブラックピジョンを生み出していた。「超獣製造機」は第6話『変身超獣の謎を追え!』(超獣ブロッケン編)(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060611/p1)にも登場している。久々の登場なのだ。


 そうとも知らずに、北斗が鳩を見落としたか、鳩がどこかへ行ってしまったのだろうと隊員たちは疑う。


 帰巣本能の実験中に鳩を見失ってしまった北斗を山中が例によって(笑)、


「バカなことを云うな!! 鳩が突然消えるなんてことがあるか!」


と怒鳴りつける。毎回、超常的なことが起きる『A』世界で、このようなセリフは幼児はともかく小学生でもオカシいと思うワケで、そこが『A』の弱点であることは認めざるをえない(汗)。TBSの橋本洋二プロデューサーは各話単位での人間ドラマ性やテーマ性は重視していても、各話を通じた作品世界全体の世界観的な整合性については疎かったことも偲ばれよう。


梶研究員「鳩の帰巣本能はかなり強いものだ。ひょっとすると少年の家に帰ってるんじゃないかな?」
竜隊長「うん、私もそんな気がする。北斗、行って鳩の巣を調べてきたまえ」
北斗「ハイッ!(喜)」
山中「隊長! 私も行かせて下さい。あいつひとりじゃどうも心配です!」
竜隊長「いいだろう。しかし相手は鳩なんだ。あまりムキにならんようにな」(山中の肩をたたく)


 この一連の作戦室のシーンには、『A』という作品のらしさも全開している。『A』定番の、レギュラーたち各キャラの個性や性格、価値観やその違いとそこから来る相克、信と疑や、時に意外なリアクションでその人間の別な一面をも浮かび上がらせて、メリハリを付けつつドラマも進行させていく、『A』という作品の特徴がよく出てもいるのだ。


 映像的にも、ただ真っ正面からカメラを据えているだけなのに実にカッコいいアングルなのだ。奥には別室の小部屋の通信室をも写して奥行きも与えている。凡庸な映像派監督であるならば静的な画面になるところを、TAC隊員たちにセリフの最中前後でも上下(階段)や左右の動きも与えて飽きさせず、しかもワンカットの長廻しで撮っているところがまたスゴいのだ。



ヤプール「バァカめ、いくら探してもムダなことだよ。ハハハハハ、ハハハハハ……」


三郎「お兄さーん、実験うまくいった?」
山中「あの子が鳩の持ち主か? 北斗、ホントのことを云ってしまえ!」


 責任感と申し訳なさから悲痛な顔をする北斗。それを見た山中が代わりに云う。「鳩が行方不明になっちまったんだよ」


三郎「ウソだ! (中略)お兄さんたち、なんかしたんだ!」。


 走り出す三郎。それを追いかける北斗。腰を落とし両肩をつかみ三郎に真剣に向かい合う北斗はこう語りかける。


「オレにひとつ考えがあるんだ。行方不明になった場所はわかっている。だからそこで君の鳩笛を吹こうと思うんだ!」


三郎「……これを?」


 行方不明になった野っ原で、鳩が帰ってくるかもしれないと鳩笛を吹く三郎。


 すると逆に鳥小屋の方に、ヤプールによって脳髄を抜け殻にされながらも(!)、それでも必死になって鳩・小次郎が帰ってきた。


 しかし、巣箱にまではたどり着けずに人知れず地に伏してしまう……


 すると、三郎たちの前に巨大な鳩のような超獣が姿を現し、狂ったように暴れはじめた! その鳴き声は鳩の声だ!


ヤプール「ええい、なんたることだ。わしの命令も聞かずに勝手に飛び出したりして。戻れ! 戻るんだ! ブラックピジョン!!」


 ひとしきり暴れたあと、ヤプール人の命令で超獣ブラックピジョンは姿を消す。


三郎「小次郎〜!! TACのバカ! 超獣なんかと戦っている間にまた小次郎がどっか行っちゃったじゃないか! バカ! バカ!」



 照明を落とした深夜のTAC作戦室の自席でひとり沈痛な面持ちでいる北斗。うしろに夕子の影が浮かんで、北斗を心配したのか夕子がゆっくり近づいてくる。


夕子「星児さん」
北斗「夕子。オレにはわからないことがあるんだ。あのとき、オレの耳にもハッキリ鳩の鳴き声が聞こえたんだ」
夕子「鳩の声? あれは超獣の声よ」
北斗「何だって? 超獣の声が? (略)もしかすると、あの超獣はヤプールが鳩を使って造りだしたものかもしれない! (略)三郎くんが鳩笛を吹いたとき、超獣が現れたんだ。あの超獣がきっと三郎くんの鳩なんだ」
夕子「じゃあ、三郎くんが鳩笛を吹いたらまた現れるかもしれないわ」
北斗「大変だ! 三郎くんが笛を吹いたら!!」


 作戦室から急ぎ、飛び出していく北斗!


夕子「ああ、待って! 待ってよ! 隊長に報告しなくちゃ!!」


 下町の子供たちに訊きつつ、北斗と南は三郎くんの自宅を突き当てた。三郎の母の言葉で、東京湾岸の晴海埠頭(はるみ・ふとう)に北斗と南は急行する。鳩が忘れられずに鳩笛を吹こうとする三郎を北斗と南は必死に説得するが……


三郎「(あの超獣が小次郎だなんて)ウソだ! お兄さん(北斗)の云うことは全部ウソだ!」


 三郎の鳩笛に誘われ、ブラックピジョンが再度出現! 夕子の通信で駆けつけた戦闘機・タックファルコンとタックスペースが攻撃を開始する。


 Aパートでは野っ原にブラックピジョンが出現していたが、Bパートではそれとはまた別の特撮セットまでをも用意! このへんが東宝に下請けに出されていた『A』の時期の特撮のスゴいところである。
 晴海埠頭の倉庫街と、そのすぐ眼前の東京湾岸を再現して「水」を満々とたたえた特撮セットがスゴい!(タンカーまで航行している!)


ヤプール「少年の笛におまえは狂わされているのか。ええい、仕方がない。今の間にTACを全滅させてしまえ。ピジョン! 光線を吐け! 光線を吐くんだ!!」


 なぜか光線ではなく(笑)、ブラックピジョンの口から吐かれた火炎放射で燃え上がる晴海の倉庫街。


ヤプール「ブラックピジョ〜ン!! その三人(北斗・南・三郎少年)を殺してしまえ〜〜!!!」


 三郎を守るために北斗と南はエースに変身するが、メタリウム光線すらも腹部で吸収してしまい、意外に強力な、どころか最強超獣クラスかと思える腕力の殴打の連打で猛攻を開始するブラックピジョンにエースは押されまくり大ピンチに陥り、二度も地面に伏してしまう。


 円谷プロの高野宏一特撮監督は、倉庫街と湾が隣接・同居した両所で立体的なバトルを展開してみせた。


 何よりすごいのがワイヤー(吊り)で超獣を羽ばたかせながら何度も飛ばして前後上下に移動もさせるのだ!


 挙句の果てに超獣が足でビルをつかみ剥ぎ取って空中に持ち上げて(!)、緒戦で超獣が吐いた白濁液によって失神しているエースの体にそのビルをまるごと叩き落してみせるダメ押しの特撮演出!


 巨大特撮シーンで「人形」を人間に見立てて登場させるシーンは賛否が別れそうだが、ブラックピジョンの肩なめで地上の小さなTAC隊員人形たちがTACガンを連射すると小さなフラッシュが点滅するシーンはうまくいっていると思う。同時期の『ミラーマン』(71年・円谷プロ)といい、この時期の高野宏一はアイデア豊富な特撮演出・アクション演出をたくさん見せてくれるのだ。


ヤプール「エースも倒れた。次はTACの皆殺しだ! ゆけぇ〜〜〜っ!! ゆけぇ〜〜〜っ!! ブラ〜ック ピジョ〜〜ン!!!」


 脳ミソの血管がブチ切れそうなハイテンションなヤプールのセリフ。冷めたオトナ目線・マニア目線で一歩引いて観てしまうと、半分は笑ってしまうのだが、もちろんそれゆえに本話のヤプールの悪党性が増強されて、対比としてゲスト少年と鳩の悲劇が引き立ってくる効果をもたらすのである。


 エースとTACの絶体絶命の危機を見て、思わず鳩笛を吹く三郎。


「小次郎〜! 一回りしたら降りてこ〜い!!」


 すると、ブラックピジョンが反応を見せ、笛の鳴る場所を探すように周囲を見回しエースにうしろを見せた!


 その一瞬の隙をついて、何とか立ち上がったエースはブラックピジョンの後頭部にダイヤ光線を見舞う!


 ついにブラックピジョンは倒れた。エースを、ひいては人々を救うため、鳩が変化した超獣を倒すために、三郎は鳩の奪還をあきらめたのだ。しかし、心情的に完全に割り切れるものではなく、涙を流して遺骸を見つめる三郎。


 大鳩超獣ブラックピジョン。ボディは複雑な装飾の多い緑と赤ほかの超獣カラーだが、頭部は白色の鳩の顔でかわいらしい。眼も超獣にありがちなカラーの電飾ではなく、白目に目玉があり可動もする生物的なものだが、どこかあさっての方向を向いた虚ろな眼は怖いものとなっている。もちろん何より終始むちゃくちゃに強いのが、ブラックピジョン最大の個性である。三郎が鳩笛を吹かなければ明らかにエースは負けていたのだ。


 鳩の巣箱の場所に戻る一同。その地に鳩はいた。鳩は三郎のもとへと帰ってきていたのだ。脳髄を抜かれた亡骸となって。涙にむせぶ三郎と無言で慰める北斗を見つめ、TAC一同はヤプールに対し、静かに怒りの炎を燃やすのであった……



 本話においては地球侵略のためには手段を選ばないヤプールが徹底的に悪辣な「悪役」としての存在として描かれることで、かえって被害に見舞われてしまうゲスト少年の「悲劇」としての色合いを増すことに成功している。
 エピソードによっては登場すらしなかったこともあったヤプールであるが(単に尺の都合でのカットされたのだろうが・笑)、今回は劇中で頻繁に登場して、やたらとテンションの高いキレまくりのセリフを発している。
 本話のヤプールは別にゲスト少年の精神性を悪魔のように試したり誘惑してきたワケではなく、鳩の帰巣本能を流用して物理的な攻撃を仕掛けてきたのに過ぎない。しかし、メインライター・市川森一(いちかわ・しんいち)が手掛けた『A』の第1話からして、ヤプールが精神攻撃などではなく怪獣型兵器・超獣を繰り出して大掛かりな物理的破壊工作を仕掛けてきた以上は、その目的に物理的な破壊が入っていなかったと考えることもまた不自然なのだ。
 それを考えれば、ヤプールがゲスト少年と直接にカラむワケではないにしても、ヤプールが終始、憎々しげなセリフを発しつづけることで、善悪や攻防劇としてのメリハリを強めることもできているのだ。
 『A』の基本設定を考案したメインライター・市川森一が去ったあとといえども、ヤプールは適切に料理されていたことが確認できるはずだ(別に本話に限ったことではないのだが)。


 それはともかく、鳩を捜しに行こうとする北斗に自ら同行し、超獣出現に際して三郎の危機を救ったり、鳩の死に涙する三郎を背後から見てヤプールに怒りを燃やすラストシーンなど、本話の山中隊員はなかなかのいい人ぶりである。根っ子はやはり人情を解する常識人であることも見せており、日頃の北斗に対する態度も先輩としての愛情から来るものであると解釈しても不都合がなくなるのだ。
(前々話に引き続いて、薄めのサングラスを着用。本話でも煙草を一服しているシーンがさりげにあったりもするけども。このへんは1970年代という「時代」でもあり、おそらくシナリオ上での指示ではなく山中隊員役の沖田駿一の発案による演技付けではなかろうか?・笑)


 なお、内山まもる小学館の『小学二年生』に連載していたコミカライズ作品でも、山中は「ばかやろう。鳩が空に消えただと」と、実にそれらしく北斗を怒鳴っている(笑)。しかも、「本当です。僕はちゃんと見たんです」と主張する北斗に対して「とうとううそまでつくようになったか」と徴発し、北斗も「なにいっ」と食ってかかっている(爆)。
 しかし、アンハッピーエンドのラストシーンは子供向け作品としてはやはり重たすぎると思ってか、エースに倒された大鳩超獣ブラックピジョンが無事に鳩の姿に戻って少年の元に帰るハッピーエンドとなっている。


 この決着もひとつの在り方ではあり、小学校低学年向け学年誌という年少の読者に対する配慮としてはむしろ妥当なところだろう。しかし、ペットブームと呼ばれる一方で動物虐待の報道も絶えない昨今においては、本編のように鳩の亡骸に涙する少年を見せるアンハッピーエンドの手法も、命の尊さを一層印象づけるかと思われるので捨てがたい。
 「人は死んでもまた生き返る」などと思っている小中学生の割合がけっこう高いらしいという話は近年にかぎらず、むかしから時々、議題に挙がる話だ。それをしたり顔で真に受けている御仁もあとを絶たなかったりもするのだが(冷笑)。このような話は民俗学者柳田國男(やなぎだ・くにお)の『明治大正史 世相篇』(1931・昭和6年)などの昔からあったりするくらいなのだ(笑)。


 子供個人の性格次第だが、我々のようなヒネたオタク・タイプはともかくたいていの幼児や小学校低学年は、先生ごときにおもねってヘンに深読み・先読みしてしまって、先生の意に沿うようにアンケートなどに回答、あるいは「生き返る」ではなく「生き返ってほしい」という旨での「文学的な回答」(笑)をした方が先生にウケがいいかも? 覚えがめでたくなるかも? 可愛がってもらえるかも? などといった小ズルい自己保身的な判断が直感的に働いていたり(爆)、中学生くらいになると逆にそもそもマジメに答えずに成績や内申書とは無関係なアンケートであれば、ヒネくれてみせて心にもない回答をイキがってワルぶって書いてみせたりもしそうだから、この手の調査結果を真に受けている連中の安っぽい人間観自体がどうかとも思うのだ(笑)。
 筆者個人の小中学生時代を振り返ってみても、「人は死んでもまた生き返る」などと思っていた同級生たちがいたとは思われない。そういった見方をする御仁たちこそが、たとえ悪気はないのだとしても、子供たちをバカにしすぎ、あるいは子供たちの性善性悪・相半ば拮抗していることの実相が見抜けていない浅薄な人間観の持ち主なのである。



 ちなみに、真船監督はこの件についてデジタルウルトラプロジェクト発売のDVD『ウルトラマンA』Vol.6(asin:B00024JJHO)の解説書の中で以下のように語っている。


「あと、鳩……あれ死んじゃうんだもんね。あれがあの時代のスゴイところなの。今だとすぐにハートウォーミングするためにね、鳩が生き返ったりする。今のTVドラマってみんなそうですよ。当時だって「生き返らせよう」というディスカッションはあったかもしれません。でも鳩は死ぬ。それは作り手側の厳しい情熱だよね。「よかったよかった」で終わらせないところがドラマチックでもあるってそう認めてくれたプロデューサーがスゴイと思うよ」


 長らくの間、幼稚で人間ドラマや社会派テーマがないと、誤解と偏見を受けてきた第2期ウルトラシリーズではあるが、実はこうしたスタッフたちの熱意により、極めて重いテーマが実にドラマチックに描かれた作品も多数存在するのである。むしろその数や比率は、第1期ウルトラシリーズよりも多いというのが真実だ――逆にそれゆえ、SF的なクールでドライなカッコいい話は減ってしまったという欠点も同時にあるけれど――。


 もちろん、特撮やアニメといったジャンルの数十年間の爛熟の果てに、さまざまな試みが果たされ尽くしてしまった現在では、たとえば『ウルトラマンレオ』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090405/p1)や『ウルトラマンネクサス』(04年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041108/p1)のような重たいテーマのリアルな作品を作ればよいのだともまた安直には云えない。
 単純な子供向け作品としてのつくり方、頭を空っぽにして観られる職人芸的な娯楽活劇作品のよさ、人間の善意が勝利したり、死者が復活するような、奇跡をもたらすご都合主義のハッピーエンドも否定すべきではないのだし、むしろそちらの方こそうまく作劇することはむずかしいことなのかもしれないのだ――当の第2期ウルトラシリーズ自体にも、ウルトラ一族の再生光線で人々が復活してしまうようなエピソードもあるのだし(汗)――。


 ただし、それはそれとして、本作のような悲劇的な話にも心を打つ良さはあるのだ。本話は、水のない星で怪獣化してしまった宇宙飛行士の悲劇を描いた初代『ウルトラマン』(66年)第23話『故郷は地球』や、『ウルトラセブン』第42話『ノンマルトの使者』、『帰ってきたウルトラマン』第33話『怪獣使いと少年』などにも通じる悲劇を、ややチャイルディッシュなテイストながらも子役ゲストに仮託した作品だったのだとも整理ができるだろう。
 『スペクトルマン』(71年 ピー・プロダクション)第48話『ボビーよ怪獣になるな!!』でも天才犬が怪獣化した悲劇を描いていた。やはり1970年代前半という、60年代までの楽天的な時代、あるいは70年代後半の低成長で落ち着いた時代とも異なる、実に混沌とした時代のパワーがあったからこそ生み出された作品ではあると思う。
 SF性には欠如してしまうのだが、明るい科学的な未来像ばかりを夢想していた60年代では成し得なかった魅力が、第2期ウルトラシリーズにはギッシリと詰まっている。



<こだわりコーナー>


*本編部分では、鳩・小次郎が中空に消失した際の、北斗演じる高峰圭二の驚愕の表情のさりげないうまさ。ラストシーンで子役の泣きの演技にほだされてか、TAC隊員たちのこらえる涙目の演技も視聴者の琴線にふれる。


*『ウルトラセブン』第42話『ノンマルトの使者』(脚本・金城哲夫)と『帰ってきたウルトラマン』第33話『怪獣使いと少年』(脚本・上原正三)において、多用されたオカリナによるメロディが本話では何度か流用されている。鳩を呼び戻そうと必死に鳩笛を吹き続ける少年を描写するのにこの哀愁漂う曲はなんともふさわしく、悲劇性を際立たせるのに一役買っている。
 そして本作もまた、それら2作の名作(もちろん云うまでもなく、その2作は王道娯楽派の名作ではなく、異色作としての名作ではあるけれど)に決して劣らない、ある点では勝っているところもある作品であることは、偏見なしに第2期ウルトラシリーズや本話を鑑賞して愛し続けている者には自明のことであろう。
 第1期ウルトラ至上主義の悪弊によって、その優れた内容にも関わらず、一部で根強い支持を受けつも、埋もれ気味になっている第2期以降の傑作エピソードは数多い。本話もまたそんな中の1本だ。そのすばらしさを本稿のスペースを借りて強く訴え続けたい。


*偶然の一致だろうが、TVアニメシリーズ『ザ★ウルトラマン』(79年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971117/p1)第3話『草笛が夕日に流れる時…』(脚本・星山博之http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090516/p1)も本話と同趣向のお話。ストーリー展開はもちろん異なるが、こちらも機会があれば鑑賞して頂きたい悲劇話の傑作。


*視聴率14.3%


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2006年号』(05年12月30日発行)『ウルトラマンA』再評価・全話評大特集より抜粋)


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『A』18話「鳩を返せ!」放映50年評  ~名作!真船演出×高野特撮×田口脚本の相乗!
#ウルトラマンA #ウルトラマンエース #ウルトラマンA50周年 #真船禎 #ブラックピジョン



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