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ウルトラマン80 33話「少年が作ってしまった怪獣」 〜阿井文瓶、ウルトラシリーズ最後の脚本! 阿井が描いたゲスト子役たちのヒネり描写!

(ファミリー劇場『ウルトラマンエイティ』放映記念「全話評」連動連載!)
『ウルトラマン80』#31「怪獣の種飛んだ」 〜児童編開始
『ウルトラマン80』#32「暗黒の海のモンスターシップ」
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『ウルトラマン80』全話評 〜全記事見出し一覧


『ウルトラマン80』第33話「少年が作ってしまった怪獣」 〜阿井文瓶、ウルトラシリーズ最後の脚本! 阿井が描いたゲスト子役たちのヒネり描写!

工作怪獣ガゼラ登場

(作・阿井文瓶 監督・湯浅憲明 特撮監督・佐川和夫 放映日・80年11月12日)
(視聴率:関東7.8% 中部9.8% 関西12.1%)


(文・久保達也)
(2009年11月執筆)


 ある夜、手術の成功率15%という難病を抱える少年・健一が入院する西山病院の院長からUGMに「怪獣出現」の通報が入った。UGMの矢的猛(やまと・たけし)隊員らが急行するものの、怪獣が出現したと思われる痕跡は皆無だった。
 矢的はガウン姿で庭にいた健一の姿を見かける。院長と看護婦の話で健一が翌日に控えた手術を恐がっていると知った矢的は、院長からの電話の少し前に、やはり「怪獣出現」を通報してきた少年が健一であると直感し翌日、城野エミ(じょうの・えみ)隊員をお供に健一を訪ねた。


健一「お父さん、お母さん。手術なんかヘッチャラだよ」


 手術が失敗する可能性もあることを知っているものの、病院の中庭で両親に明るく語る健一は、粘土細工と廃物を利用して作った手製の怪獣人形・ガゼラの特徴や能力を誇示していた。


矢的「両親に心配かけまいと、一所懸命、明るくけなげに振るまっているんだ」


 病院にほど近い長浜海岸で、健一について語る矢的とエミ……


矢的「あの少年の苦しみや悲しみを、目に見えるもので表現したら、いったいどんなものなんだ……」


 吉永小百合主演の『愛と死をみつめて』(64年・日活)から『世界の中心で、愛をさけぶ』(04年5月8日公開・東宝。興行収入85億円、観客動員数620万人を記録!)や、双方ともに美少女ゲーム原作(00年・04年)で京都アニメーション製作の深夜アニメのヒット作『AIR(エアー)』(05年)や『CLANNAD(クラナド)』(1期07年・2期08年)に至るまで、近年に至ってもほぼ毎年のように映画やスペシャルドラマで製作され続ける「闘病モノ」。
 年齢を重ねてそのような作品をいくつも鑑賞してきた筆者としてはいささか食傷気味の感がある。しかし、そのどれもがことごとく高い興行収入や視聴率や人気を稼いでいることから、やはり古今東西・普遍的な「苦悩」や「悲劇」といったものに共感・同情する人間心理を突いている定番コンテンツとなり得ているのだろう。特撮ジャンルのヒーロー作品が主に扱うのは「苦悩」や「悲劇」ではなく、「アクション」や「勧善懲悪」ではある。しかし、題材の普遍性・商業的安定性という一点については、学ぶべき点も多いのではないだろうか?


 さて、「ウルトラ」で同様のシークエンスを扱った作品としては、やはり『ウルトラセブン』(67年)第38話『勇気ある戦い』(脚本・佐々木守)が筆頭に挙げられるだろう。心臓手術を恐れる少年・杉崎治と手術に立ち会うことを約束するセブンこと主人公モロボシ・ダン隊員との交流と、資源不足に悩むバンダ星人が地球に送りこんだロボット怪獣クレージーゴン対ウルトラ警備隊との戦いを並行して描いて、


「ダンはウソつきだ! 人間の科学を信じろなんて、あんなウソつきの云うことが信じられるもんか!」


 と手術の立ち会いに来られないダンを責める治。そして、クレージーゴンに重傷を負わされながらも治との約束を果たすために病院に向かうダンの献身的な姿。『セブン』後半では予算の関係でほとんど描かれることのなかった徹底的な都市破壊場面。そして、ロボット怪獣を倒すための意外な必殺技! といったものを描いていた。


――杉崎治少年を演じたのは、特撮ヒーロー作品『マグマ大使』(66年・ピープロ フジテレビ)第17〜20話の怪獣ガレオン&ドロックス登場編で、二宮秀樹に代わってマグマ大使とその妻・モルの息子であるロケット人間・ガム役を務め、その後は主に青春ドラマなどで活躍した吉田継明であった――


 実は第1期ウルトラシリーズ至上主義者たちが酷評してきた、第2期ウルトラシリーズに時折り登場する少々生意気でメイン視聴者の子供たちもやや不快感を抱いてしまうような少年をゲスト主役として、「人間ドラマと特撮バトルがやや分離して並行」している弱みがある作劇を、かの『ウルトラセブン』でよりにもよってアンチテーゼ編専門の感もある佐々木守が描いていたのだ!
 しかし、「人間ドラマ」と「特撮バトル」の「空中分解」はかろうじて免れてはおり、メカニックなルックスで変型機能も有するロボット怪獣のカッコよさと、ウルトラセブンは自身の身長を伸縮自在に変えることが可能であるという、ヒーローSF的な超能力設定を合理的に有効活用して敵を倒すことで、やや陰気なドラマをヒーローの万能性に基づいたバトルのカタルシスが一掃してみせるような「少年ドラマ編」&「バトル編」ともなっていた。


 第2話『緑の恐怖』が同作シリーズ最高の視聴率32.3%を稼ぎながらも、第3クールには10数%にまで低迷してしまった『セブン』が、「こりゃいかん!」と『ウルトラQ』と初代『ウルトラマン』(66年)を支えるも、当時は京都でモノクロのテレビ時代劇『風』(67年)を撮影していたTBSの飯島敏宏監督を急遽、呼び戻して製作された、この第38話と続く第39~40話『セブン暗殺計画』前後編といった娯楽活劇性を高めた3本は、個人的には『セブン』ベスト3に挙げたいくらいなのだが…… 閑話休題。


 この『セブン』第38話と『80』第33話は、どちらも手術を恐れる少年をゲスト主役に据えている。しかし、その描き方にはかなり大きな違いがある。治の場合、のちに青春ドラマにもよく出演していた吉田継明が演じていたこともあるのかもしれないが、その風貌も立ち居振舞いもどちらかといえば「やんちゃ坊主」風であった。治が手術を露骨に嫌がる様子が終始、セリフ(脚本)や演技(本編演出)でハッキリと明確にされていたのである。


 だが、健一の場合、


「僕、大きくなったら、UGMの宇宙技術班に入るつもりなんです」


 などと丁寧語で矢的に語るほどのインテリ風・美少年といった趣(おもむき)であった。内心では手術を恐れながらも、両親に対しては心配させまいとそれを素直に表現することもなく、明るく振る舞うといった二面性が強調されているのだ。ワガママな逆ギレなどではなく、この理知的で健気(けなげ)な姿は、矢的やエミにとどまらず、視聴者に反発ではなく同情の涙を誘うのに絶大な効果をあげている。そして、そればかりではなく、もうひとつ大きな役割を果たしていたのである。


 手術前夜、健一は担当の看護婦・吉村鈴子には、


「人は死んだらどうなるんだろう。天国って本当にあるのかなぁ」


 と自らの死の不安を素直に打ち明ける。そして、母を手術の失敗で喪(うしな)って廊下で涙する姉妹の姿(!)を見て不安を一層強くするのだ! ここでのイメージシーンの本編演出がまた実に秀逸なのである。泣き出しそうな健一の顔に、手術台の天井の大きな照明や、メスをはじめとする手術用具の数々をオーバーラップさせているのだ。


 感極まった健一は、手製の幻燈機で夜空にガゼラの幻影を映し出す。そして、再びUGMに「怪獣出現」を通報してしまうのであった……


 冒頭で西山院長や看護婦たちが目撃したガゼラの姿も、実は健一が投影したものだったのである! この騒ぎによって、健一の手術は1日延期されたのであった……


 基本的には性格の良い子である健一ではあっても、自分の命に関わる大きな不安を抱えてしまうと、手術から逃げたいという現実逃避の気持ちから、ついつい遠回りなウソをついてしまうという心理描写! このへんのこれ見よがしではない、さりげないヒネリの描写が秀逸(しゅういつ)なのである。


 従来の商業誌などでの第1期ウルトラシリーズ至上主義に基づいた「ウルトラ」評論においては、やや否定的に扱われてきた脚本家・阿井文瓶(あい・ぶんぺい)ではある。しかし、80年代後半以降の特撮評論同人界での第2期・第3期ウルトラシリーズ再評価の流れのなかでは、実は実力派・技巧派でもあり、心理面での屈折はあっても、それを露骨に可愛げもなく発露はせずに、内へと秘めてしまうような子供像を担当作では描いているのだと、先達の目利きたちが再評価をしてきてもいた。そんな氏の脚本テクニックであり、妙味でもあったのだ。



 ちなみに、阿井文瓶のデビュー作は、『ウルトラマンタロウ』(73年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20071202/p1)第26話『僕にも怪獣は退治できる!』であった。


 本邦初の草創期のマニア向け書籍『ファンタスティックコレクション№10 ウルトラマンPARTⅡ 〜空想特撮映像のすばらしき世界〜』(78年・朝日ソノラマ)における『ウルトラマンタロウ』についての解説文の中で、



「ファンに「僕にも『タロウ』のシナリオは書ける!」と云わせたほど、この時期の内容的な後退は著しかった。つまりほとんどの話が怪獣に親を殺された子供の復讐話か、過去の作品の完全な焼き直しに終わっていたのである」



といった、『ウルトラマンタロウ』第26話のサブタイトルをパクった、実にイヤミったらしい一節があった。


 この記述によって、のちに東映制作の刑事ドラマ『特捜最前線』(77年)では、かの長坂秀佳とメインライターの座を争った、現在は小説家でもある阿井文瓶(現・阿井渉介)のデビュー作でもある『タロウ』第26話については、ウルトラ批評史上、もっとも偏見にさらされた回となってしまったのであった。


 しかし、実際の作品は、再鑑賞してみれば、理解をしてもらえるであろう。生身で人間が怪獣にしがみつくような、『タロウ』の第1話などから想起される作風、つまりはヤンチャで元気いっぱいな子供がひとりで怪獣に挑むような無謀な話などではなかったのだ!


 むしろ、『タロウ』における、そういった描写に対する「アンチテーゼ編」として、「怪獣とケンカばかりしているタロウなんかキライだ!」「お父さんは僕に暴力を振るえというの?」などと非暴力・絶対平和主義の精神を実践して(汗)、小さな子をいじめる中学生をトガめたことで、逆に袋叩きにあってしまった白鳥健一少年をそのまま見ているだけであったり、父・仙吉の紙芝居屋という職業を毛嫌いしているような、妙に冷めている竹雄というゲスト少年が登場するのだ。


 しかし、仙吉が子供たちを逃がすためにムカデンダーに重傷を負わされたり、小さな子ばかりか光太郎をも救出しようとする健一の姿を見ていくうちに、次第に変容していき、ラストでは紙芝居の列に割り込む少年にケンカを挑むまでに成長する姿を描いた作品でもあったのだ。


 仙吉の以下のセリフが、このエピソードのテーマを端的に表現している。


「男には、自分の損になるとわかっていても、他人のために働らかなきゃならないときがある。そのときに逃げないのが本当の男なんだ!」


 ……往年の名作テレビアニメ『宇宙海賊キャプテンハーロック』(78年)のセリフじゃないよ(笑)。


 実に感動を呼ぶこのセリフを放った仙吉を演じたのは、声帯模写を得意とする芸人で、円谷プロ製作の特撮コメディドラマ『快獣ブースカ』(66年)の主人公少年・屯田大作(とんだ・だいさく)の父・栄之助や、『ジャンボーグA(エース)』(73年)第20話『ポンコツ自動車の大反乱!』でも父親役を演じた故・江戸屋猫八(えどや・ねこはち)であった。


 前述の「ほとんどの話」うんぬんが完全にイメージに基づいた誤解であったことは、『タロウ』をキチンと視聴をしていれば明らかではあった。本文中で具体的に挙げられた作品は、「怪獣と人間のドラマが分離して並行する奇妙な現象」の例として挙げられた第40話『ウルトラ兄弟を超えてゆけ!』のみであったからだ。


 実際に「怪獣に親を殺された子供の復讐話か、過去の作品の完全な焼き直し」に該当するであろうエピソードは、第8話『人喰い沼の人魂』・第12話『怪獣ひとり旅』・第38話『ウルトラのクリスマスツリー』といった3本くらいのものだろう。そして、怪獣に家族を殺された子供の復讐話というプロット自体がダメだというのならば、特撮マニア連中が絶賛している怪獣映画『ガメラ3 邪神〈イリス〉覚醒』(99年)のプロットも否定をしてみせなければスジが通らないのだ!


 ……などとエラそうに語ってきたが、小学6年生でこの書籍を読んだ筆者は、中学1年生のときに再放送された『タロウ』を妙な先入観をもって視聴することになった(よりにもよって、前番組は『ウルトラセブン』(67年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20240211/p1)であった!)。そして、「やっぱり本に書いてあるとおりだ!」などと思ってしまったのであった(笑)。同じような偏見の目を植えつけられたのは、筆者だけにととまらず相当の数にのぼった。これが現在まで脈々と続く「第2期ウルトラ批判」を形成しているのだ。
 ただし、この書籍に子供ながらに惑わされなかった者も少数ながらいる。そのようなヒネくれた奇人変人たちが特撮評論同人界には巣くってもいる(爆)。その意味では、筆者も洗脳されやすい凡俗であったということで、エラそうにする資格はないのだが(汗)。


 なお、この文章は、『ファンタスティックコレクション№2 空想特撮映像のすばらしき世界 ウルトラマン』(77年・朝日ソノラマ)と合本し、『ザ★ウルトラマン』(79年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/19971117/p1)や『ウルトラマン80(エイティ)』(80年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/19971121/p1)を加えて、『ウルトラマン白書』(82年・朝日ソノラマ)として復刻されて以降、87年の第2版、91年の第3版(ISBN:4257033223)、95年の第4版(ISBN:4257034505)に至るまで、そのままのかたちで掲載され続けた。そのために、その影響力はやはり計り知れないものがあった。


 以前は「こんな事実誤認をいつまでそのままにしておくのか?」とおおいに疑問だったものだ。しかし、現在ではむしろ時代の貴重な記録として、今日のマニア世論の元凶として、そのままの形でぜひ復刻してもらいたいものだと思ったりもするのだが(ただし、注意書きを添えること!)。とはいえ、それらの言説を得々とウケウリしてしまった我々後続世代も、いわゆるA級ではなくてもB・C級には戦犯であることも自覚していなければならないのではあった……



 初代『ウルトラマン』(66年)第15話『恐怖の宇宙線』のラストでは、二次元怪獣ガヴァドンがウルトラマンに宇宙へと運ばれて「夜空の星」になったといった、いわゆる「文学的なオチ」があったものだ。幼児の時分にはともかく、科学少年でもあることが多い怪獣博士タイプの小学生たちであれば、クソ生意気にも子供心に「そんなことがあるワケねーだろ」との不満を抱いたものだろう(笑)。
 同話の劇中では、「一番ぼ~し(星)、見~つけた~」なる童謡『一番星みつけた』(1932年・昭和7年)の一節が、1960年代までの往時の主流でもあった子供のウラ声(笑)での歌唱で流れてもいた。こういったあたりがまた、小学生男児であれば気恥ずかしさを感じたとも思うのだ。それと当時に、(当時の)大人たちが考えていた「良心的な子供向けの作品としてのつくりや演出とはこういったものなのだ!」といった意図を透かし見てしまって、マセている子供としては「それは少々勘違いをしている~!」「見下されてもいる~!」といった感慨を直感してしまったものでもあるだろう(とはいえ、20歳前後になって以降の再鑑賞だと、いたいけな子供たちのウラ声での歌唱に、「心の琴線(きんせん)」を揺さぶられてしまって、ウルウルしてしまったりもするのだが……・笑)。


 そういったことに対するアンサー・応答でもあったのか、阿井文瓶の脚本回でもあった『ウルトラマンタロウ』第43話『怪獣を塩漬にしろ!』こと食いしん坊怪獣モットクレロン編においては、「今は亡き母親は『星』になったのよ……」との『タロウ』のヒロイン・白鳥さおり嬢のセリフに対して、ゲスト少年が、


「なに云ってんだい。星は宇宙の恒星だよ。でも…… 母ちゃんが星になったとしたら、あの優しそうな星かな……(大意)」


といったワンクッションを入れたセリフになってもいたのだ。たしかに、こういったエクスキューズがひとことでも存在していれば、クソ生意気なマニア予備軍の小学生男児であっても、そういった抵抗感はウスまるのではあった……。その意味では、子供たちの描写についても、実に巧妙に処理されてもいたのだ。


 そして、例示してきた『セブン』第38話と『80』第33話のゲスト少年は、第1期ウルトラシリーズにおける「内なる屈折をそのまま発露した子供像」と、第3期ウルトラシリーズにおける「内なる屈折を隠しとおした果てに、隠しきれずにネジれたかたちで発露してしまった子供像」、その両者の典型ともなっているのだ(この両者の安直な優劣の話ではないので、念のため)。



 ここまでの一連の場面を観ていると、『80』では長らく忘れ去られていたある重要な設定に、鋭い視聴者は気がつくことだろう。そう。それだと謳(うた)わないまでも「マイナスエネルギー」である。


 『80』第1話『ウルトラマン先生』〜第12話『美しい転校生』の「学校編」(教師編)では、「醜い心や悪い心、汚れた気持ち、憎しみ、疑い、嫉妬」などといった人間の心が生み出す悪意に染まった感情が結晶化し、それが怪獣を生み出したり怪獣にエネルギーを与えていると設定されていた。本話では導入部から登場していた「青白い火の玉」状の物体が(ラストのエミのエリフでは「怪獣の魂」だとされている)、健一が長浜海岸に置き忘れてきたガゼラの人形に生命を与え、工作怪獣ガゼラを誕生させることになるのである。その意味では、『80』が本来、描こうとしていた路線を実はさりげなく復活させてもいるのだ。


 そして、それを描くにはマイナスエネルギーが人間の心の裏側に潜む悪意から発せられているという設定であった以上は、見るからに悪ガキである少年による「悪意」や「害意」などの「積極的な悪」でももちろんよいのだが、ふだんはいい子なのに同情の余地はあるけれども、実はやはりそれは「消極的には悪」なのだともいえる、その「恐怖心」や「現実逃避」や「屈折」といった心理の持ち主が……といったような少年を主軸に展開する方が、ストーリーに「意外性」や「起伏」や「深み」も生じてドラマチックではあったのだ。
 その意味でも、健一がそのような二面性を持った少年として描かれたのは正解だったと思うのだ(あまり安易に現実社会と結びつける気はないのだが、近年はこうした真面目で優しい子供たちの方が、日常生活では損をこうむっているので、内に秘めたる鬱屈を解毒ができなくて、問題をひき起こす事態が増えているのではなかろうか?)。



 ちなみに、東映特撮ヒーロー『超神(ちょうじん)ビビューン』(76年・東映 NET→現・テレビ朝日)第18話『古銭から煙が? ヒネクレ少年の初恋』に登場する、同作のゲスト敵怪人である妖怪カネダマは、


「母ちゃんなんか、逆さ磔(はりつけ)になってしまえ!」
「おまえたちなんか、石の下敷きになっちまえ!」
「先生なんか、池にハマって死んじまえ!」


 などという、少年の捨てゼリフを現実のものにしようと大暴れする。


――このセリフ中の「先生」とは、『仮面ライダーアマゾン』(74年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20001008/p2)のメインヒロイン・岡村リツコ役や、『ウルトラマンレオ』(74年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20090405/p1)第24話『美しいおとめ座の少女』のアンドロイド少女・カロリン役で知られる松岡まり子が演じていた。妖怪カネダマが彼女を池にひきずりこもうとする場面は、スカートの裾がめくれまくり、なかなかエロい(汗)――


 これなどもマイナスエネルギーの露骨な発露である。しかし、いかにも東映らしい即物的な表現なのだが(笑)、母親のセリフで


「本当は優しいいい子なのに……」


 などという言及があったり、本当は好きな同級生女子の好意を無にしたあとで、


「オレってどうして素直じゃないんだろう……」


 などと思い悩む場面があったりと、今回のレビュー対象である本話の健一少年とは性格がまったく逆ではあったものの、ゲスト主役がやはり二面性を持った少年として描かれているという共通点が面白い。妖怪カネダマも人間の怨み(うらみ)を吸い取って生きているという設定であり、やはりマイナスエネルギーの産物なのである。


 なお、例示した『超神ビビューン』第18話の脚本は、『ウルトラマンA(エース)』(72年)第29話『ウルトラ6番目の弟』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20061120/p1)、第34話『海の虹に超獣が踊る』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20061223/p1 〜同話に登場するゲスト少年・ユウジの姉は、完全に虹超獣カイテイガガンにマイナスエネルギーを与えていたと思うのだ・汗)、第36話『この超獣10,000ホーン?』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20070109/p1)のほか、『人造人間キカイダー』(72年)、『快傑ズバット』(77年・東映 東京12チャンネル→現・テレビ東京)、名作刑事ドラマ『特捜最前線』(77〜87年・東映 テレビ朝日)などで数々の傑作を残してきた長坂秀佳(ながさか・しゅうけい)であった。



 ちなみに、健一が夜空にガゼラの幻影を浮かび上がらせるのに使用していたのは、そのむかし、小学館の学習雑誌によく付録として付いていた組立式の幻燈機であった。あんなものでそんな芸当ができるわけがないのだが(笑)。
 ただ、世代人としては、まだビデオデッキも普及していなかったころ、付録とともに付いていた薄いビニール製のフィルムを壁に映写して楽しんだ想い出は、実に懐かしく残っている。それが今ではDVDが付録に付いてしまうんだからねぇ…… とはいえ、海辺の病院だから夜霧が多いという設定なのか、白いスモークの中に巨大なガゼラの姿が浮かび上がる合成カットは実によくできている。



 そんなマイナスエネルギーを放っている健一の再度の電話に、急行した矢的は病室で、


「あのね、僕も本当はすごく怪獣が恐いんだよ。ビルみたいにデッカいし、ものすごい顔をしているし、それに力も強い。火を吐いたり、殺人光線を吐いたり、すごく恐いよ。でも、戦うんだ! (中略)恐いものに向かっていく。それが本当に勇気があることなんじゃないかな?」


健一「ウルトラマンエイティも怪獣が恐いのかなぁ」


矢的「そうだと思うよ」


 などと健一と会話をする。ここでの矢的は隊員服姿ではあるものの、その表情や語り口はUGMの矢的猛隊員ではなく、どことなく桜ヶ岡中学校の矢的猛先生に見えてくるのであった。


矢的「勇気を持って! いいね!」


 と帰り際に右腕でガッツポーズを示した矢的に励まされ、健一は不安気だった表情が一変する。ここはやはり矢的猛が今でも「矢的先生」であることを象徴する場面なのだ。



 手術に臨(のぞ)む決意をした健一は当日の朝、長浜海岸に置き忘れたガゼラの人形を元気に取りに行く。


 健一の心からは矢的先生によってマイナスエネルギーは取り払われてはいたのだろう。しかし、すでに強大化していた怪獣の魂に取り憑(つ)かれたガゼラの人形の方が動き出した!


 矢的先生に「勇気」をもらった健一は落ちていた棒切れを手に、「恐いもの」に立ち向かう!


 だが、ガゼラは人間大サイズの大きさとなって、健一を襲ってきた!



 三度目の健一からの電話に出動していく矢的に対して、


フジモリ「あいつは何度ダマされたら気が済むんだ?」
イケダ「アキれちゃうよ」


 とふたりがヌカした途端、


「フジモリ隊員! ちょっと云いすぎよ!」


 と城野エミ(じょうの・えみ)隊員がエラい剣幕!


フジモリ「お〜、こわ〜っ」


 この一連から、矢的とエミはすでにUGM公認の仲となっていたと解釈できるのではないか?(笑)


 矢的以外のUGM隊員には、健一がイソップ童話の「狼少年」のように映っていたようだ。当然ではある。しかし、本話は『帰ってきたウルトラマン』第15話『怪獣少年の復讐』などとはテーマが異なるため、健一を「ウソつき少年」として糾弾するような場面は描かれていなかったので、念のため。



 そういえば、田口成光(たぐち・しげみつ)脚本回ではあったものの、『怪獣少年の復讐』に登場するゲスト子役の史郎少年も、「今にエレドータスが現れて、鉄道なんかメチャクチャにしてやるからな!」とか、都市を破壊する吸電怪獣エレドータスに対して「暴れろ、暴れろ!」と当時、流行していた玩具のアメリカンクラッカーをせわしなく打ち鳴らしてケシかけたりしていた(史郎の内心のイライラを象徴していて実によい!)。その次作『ウルトラマンA』においては、「人間の欲望・妄想・執念が超獣を生み出すこともある」と設定されたりもしていたのであった。
 初代『ウルトラマン』第33話『禁じられた言葉』に登場した悪質宇宙人メフィラス星人が、科学特捜隊の紅一点であるフジ隊員の弟・サトル少年の心を試そうと、アメとムチで「地球をあげます」と云うように迫るような行為も広義では同じことであっただろう。だから、ぶっちゃけ云えば、マイナスエネルギーが怪獣に力を与えるという設定の原型は、すでにウルトラシリーズ中にもあったのだ。『80』放映開始当時、第2期ウルトラ以前のシリーズにもすでにそんな要素を内包していたという事実に、気づいている特撮マニアが当時は少なかったというだけの話である。


 ……といった意見も、後出しジャンケンではある(汗)。90年代に入ると、純然たる「生物」ではなく人間の「精神エネルギー」が怪獣化したり野生の怪獣に人間の精神エネルギーが力を与えるような、古典SF映画『禁断の惑星』(56年・アメリカ)に登場した人間の潜在意識が具現化した「イド(自我)の怪物」のようなSF設定をも許容するように、特撮マニアの意識も急速に改革されていった。
 よって、『ウルトラマンティガ』(96年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/19961201/p1)第38話『蜃気楼の怪獣』では、一部の高官の「軍拡的なメンタリティ」(汗)が怪獣を出現させたり呼び寄せているのだといった、『80』のマイナスエネルギー怪獣に近似した「唯心論」「独我論」のようなオカルト的な設定を持った怪獣観が登場してきて、少々の違和感は抱かれたのだとしても、特撮マニアたちの大勢からは特に大きな反発を受けることもなく、それもアリだとして許容されるようにもなっていくのだ。


 だが、本作『80』の放映当時は、「潜在意識」だの「精神エネルギー」だのの「物理的な実体化」といった概念は、ジャンル作品ではあまり一般的ではなかった。よって、人間の負の精神が異次元人ヤプールのような存在による媒介などもなしに、物理的な巨大怪獣と化したり、怪獣の出現や怪獣の生態にさえも影響を与えるといったSF設定には、特撮マニアたちの大勢が相当の無理感が抱いてしまっていたのは、それもまた歴史的な事実なのではあった(笑)。



 本話では、UGMのオオヤマキャップ(隊長)は登場するものの、なんと一切セリフを喋らなかった! 西山院長の通報から事態を重く見て矢的にアイコンタクトで出動を命じたり、健一からの二度の通報で出動を懇願する矢的に無言でうなずいたりするだけなのである。氏が出演していた、往年の大人気スポ根ドラマ『サインはV』(1期69年・2期73年)的な「あうん」の呼吸のノリである(笑)。
 演じる中山仁(なかやま・じん)のスケジュールの都合で、この回のアフレコへの参加が困難だったことから、それを前提に当初はシナリオにあったセリフが編集段階でカットされたのかとも推測する(ヘタに別人に声をアテられるよりかはマシではある)。しかしこの処置も、この時期のUGM隊員たち、あるいはオオヤマと矢的であれば、正規の仕事である怪獣退治ではなくても、純真な子供が相手ならば余力があるかぎりは、無碍(むげ)にせずにトコトン付き合ってあげようとする無言の合意があるようにも思えてきて、それっぽくてかえっていい感じでもある。



 再度、健一に呼び出された矢的がUGM専用拳銃・ライザーガンで射撃し、ガゼラは海中に転落。


 だがその直後、ガゼラは巨大化して矢的と健一の前に姿を現した!


 ふたりの眼前に海中から巨大化して出現するガゼラを合成した場面は正直、ガゼラのサイズが大きすぎなんじゃねぇの? と思ってしまうが、主観的かつ圧倒的な巨大感を表現するには、これくらいオーバーでアバウトな演出でもまぁいいか(笑)。


 健一が作ったガゼラの人形は薄い青緑色で着色されていたが、巨大化した途端に全身が濃い青色となっていた。これもひょっとしたらマイナスエネルギーの作用によるものなのか?(笑)


 ところで、ガゼラ人形の左腕には洗濯バサミが取りつけられている。しかし、右腕のパンチはなんとスーパー戦隊シリーズ『バトルフィーバーJ』(79年・東映 テレビ朝日・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20120130/p1)に登場した巨大ロボ・バトルフィーバーロボのポピー(現・バンダイ)製の玩具のものをそのまま流用しているらしい!


 あと、口には健一の父が捨てたライターが修理して取りつけられている。「ダイヤモンドも3秒で溶かすモンスターファイヤー」を吐くと、健一が設定していたのにもかかわらず、巨大化したガゼラがそれを披露することはなかった。ダイヤモンドを3秒で溶かすくらいだから、エイティなんかイチコロだったのでは?(笑)



「怪獣にガゼラっているでしょう。非常に個人的な話になるんですけど、原案は僕の息子なんです(笑)。デザインの山ちゃん(山口修)から、子供が発想した怪獣だから大人の発想にしたくないと、僕のところに相談があって。ちょうど息子が6〜7歳だったから、僕は何も言わないで粘土だけ与えて作らせたんです。最終的には人間が入るから直した部分もあったと思うけど、洗濯バサミとか電池ボックスなんていうのは息子が作った通りだった。息子はデザイン料として小道具で使ったモーターボートのラジコンをもらったんですよ(笑)」

(『君はウルトラマン80を愛しているか』(辰巳出版・06年2月5日発行・05年12月22日実売・ISBN:4777802124)撮影・大岡新一インタビュー)



 そのラジコンボートって、第32話『暗黒の海のモンスターシップ』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20101204/p1)で、明少年が遊んでいたヤツですね(笑)。


 先に話題にしたロボット怪獣クレージーゴンは、廃材で作ったガゼラ同様に、こちらもいかにも資源不足に悩むバンダ星人が作っただけあって、カッコよさと同時にポンコツ感もにじみ出ていた。短い足に終始、発する機械音。同じ『セブン』第14~15話『ウルトラ警備隊西へ』に登場する宇宙ロボット・キングジョーのスタイルの良さと機械音を比較するとなおさらだ。
 怪獣デザインはキングジョーのような美しさも大事だが、それとは別に、デザインはB級でたとえ美しくなくてもキャラとして面白いか? といったまた別の尺度もあるのではないのか? とも考えるのだ。



 イトウチーフ(副隊長)が搭乗するUGM戦闘機・スカイハイヤー、フジモリ・イケダ両隊員が搭乗する同じくUGM戦闘機・シルバーガル、地球防衛軍の戦闘機群が出撃する!


 それらの攻撃を、ガゼラは腹の増幅機で吸収! その威力を倍にしてハネ返した!


 胸から発する赤い稲妻状の光線で次々に撃ち落とされていく戦闘機群!



 遂にウルトラマンエイティが登場!!


 海中から跳び上がったエイティが宙を反転し、『仮面ライダー』(71年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20140407/p1)のライダーキックや、『ウルトラマンレオ』のレオキックのように、オープン撮影でトランポリンを使用し、キックポーズのまま下降していく様子をていねいに描いて、ガゼラに猛烈なキックを見舞う描写は迫力満点!


 サクシウム光線をガゼラが増幅器でハネ返す場面は、フィルムを逆回転させる、古典的な手法で表現されている。


 しかし、そのサクシウム光線が赤い稲妻状の光線となって、ガゼラのツノと右腕から発射され、逆にエイティを襲った!


健一「エイティ、胸だよ! そいつの胸はちょっとのことですぐハズれるんだ! そいつの胸の増幅機をハズせば、そいつはただの怪獣なんだ!」


 隣の病室のおばさんが落として壊したラジオから、分けてもらった「増幅機」(笑)をガゼラの腹につけたものの、重くてすぐに落っこちてしまうのが難点だったのだが、これを伏線として健一はそれがガゼラ最大の弱点であることをエイティに教えたのだ!


 これは先述の『A』第29話『ウルトラ6番目の弟』において、地底超人アングラモンに苦戦するウルトラマンエースに対し、梅津ダン少年が自らも崖から転落しそうになりながらも、


「地底人の弱点は、胸だよう!!」


 と叫んでいたのを彷彿とさせる。やや安直な弱点設定だともいえるのだが、ゲスト少年がウルトラマンに勝機を与えることで、少年の成長物語である「本編」と、怪獣・侵略者との戦いを描く「特撮」双方のクライマックスをリンクさせて、ゲストの「人間ドラマ」と「特撮バトル」の分離を緩和してクライマックスを一体化させてもいたのだ。


 それを聞きつけたエイティは、ガゼラを一本背負いで豪快に投げ飛ばす!


 第18話『魔の怪獣島へ飛べ!(後編)』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20100829/p1)で吸血怪獣ギマイラを葬り去ったムーンサルトキックを、増幅器にくらわした!


 このムーンサルトキックは空中で身体をヒネって、足先にエネルギーを集中させて相手に飛び蹴りをくらわす大技である! それにしても、この技名の「ムーンサルト」(月面宙返り)といったネーミングはカッコいい! エイティの脚部に生じた空気との摩擦熱が後方に飛ばされていくのを表現したかのような、黄色の線画合成が加えられているのも芸コマだが、増幅機がバチバチと派手に火花を散らしながらガゼラの腹から落下するのもよい。



 華麗に側転を披露したあと、エイティはガゼラを連続して投げ飛ばし、断崖に向かって叩きつけた!


 ガゼラは元が人形であったせいか、まるで壊れたゼンマイ仕掛けの玩具のように全身をドタバタさせながら大地に沈んでいく。


 この描写も、『A』第13話『死刑! ウルトラ5兄弟』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20060803/p1)と第14話『銀河に散った5つの星』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20060805/p1)の前後編に登場した殺し屋超獣バラバの断末魔を彷彿とさせるものがある。並クラスの工作怪獣と最強クラスの殺し屋超獣を同じ壇上で論じるのは不謹慎かもしれないが、ガゼラとバラバってけっこうスタイルが似ていると思うのだよなぁ。熱心なバラバ・ファンがいたら怒られるのかもしれないが(笑)。


 ガゼラは緑色の炎に包まれて消滅した。


 しかし、青白い火の玉=怪獣の魂が上空へと飛び去った!


 エイティが右腕から光線技・ウルトラアローショットを放つ!!


 遂にこの怪獣の魂は消滅した。


 しかし、いつまたこの魂が、人間のマイナスエネルギーを受けて復活するともかぎらないのかもしれない……


 青白い火の玉=怪獣の魂というと、『帰ってきたウルトラマン』(71年)第47話『狙われた女』と『ウルトラマンメビウス』(06年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20070506/p1)第33話『青い火の女』に登場した、宇宙から来た人魂が人間にやどって怪獣化する人魂怪獣フェミゴンを、ウルトラシリーズのマニアであれば思い出してしまったことだろう(笑)。



「矢的さん、エイティ、僕も向かっていくからね。恐いけど、向かっていくからね」


 健一が手術中にそんなうわごとを繰り返していたと吉村看護婦から聞く矢的。健一と矢的の「勇気ある戦い」は、ここに一応の終わりを告げたのであった。



 本話をもって、『80』のメインライターでもあった阿井文瓶氏は降板してしまった。すでにテレビドラマ『夜明けの刑事』(74~77年)や『七人の刑事』第3シーズン(78年)などの大人向け作品に進出しており、『特捜最前線』(77~87年)では長坂秀佳とメインライターの座を争っていた阿井氏のことだから、この80年当時もご多忙であったことだろう。


 本サークル主宰者が10年前に発行した『仮面特攻隊2000年号』「ウルトラマン80」再評価・大特集号(99年12月発行)を阿井文瓶(現在は小説家の阿井渉介)氏に進呈したところ、ていねいな返信を受領して、それが次号『2001年号』(00年12月発行)にも収録されている。それによれば、「20年も前の自作が俎上に乗せられ分析的に語られてしまうのは面映ゆい(大意)」というご感想と当時に、「脚本の内容を正確に読めないTBS側のプロデューサーに嫌気がさして、最後に「もう結構です」と原稿用紙の隅をトントンと揃えて会議を退席したことが記憶に残っている……(大意)」のだそうである(爆)。


・『80』第1話『ウルトラマン先生』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20100502/p1)〜第12話『美しい転校生』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20100718/p1)の「学校編」
・第13話『必殺! フォーメーション・ヤマト』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20100725/p1)〜第30話『砂漠に消えた友人』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20101120/p1)の「UGM編」
・第31話『怪獣の種(たね)飛んだ』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20101127/p1)〜第42話『さすが! 観音さまは強かった!』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20110212/p1))の「児童編」


 それぞれのトップバッターも務め、各々(おのおの)の路線が氏の本意であったかはともかくとしても、大人の態度で各路線ごとに独特の個性がある作品世界やその空気感を見事に構築していたと思えるだけに、氏の降板は残念ではある。



 その代わりになのか、阿井氏が30歳になった1971~72年に上京して真っ先に転がり込んだ先である、師匠筋に当たるベテラン脚本家・石堂淑朗(いしどう・としろう)先生がウルトラシリーズにカムバック! 独特の土俗的・落語的で魅惑的なワールドを展開していくことになるのだ。


(当の阿井氏は、石堂先生の口利きで第2期ウルトラシリーズの本編撮影現場を手伝いながら、『ウルトラマンタロウ』(73年)で早くも脚本家デビューを果たしたのであった!)


 ウルトラシリーズを手掛けてきた金城哲夫(きんじょう・てつお)・上原正三(うえはら・しょうぞう)・佐々木守(ささき・まもる)・市川森一(いちかわ・しんいち)と比したら、酷評に見舞われてきた(汗)石堂先生の作劇術や作家性についての分析や再評価については、次回の第34話『ヘンテコリンな魚を釣ったぞ!』などのレビュー(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20101218/p1)を通じて語っていきたいと思う。



<こだわりコーナー>


*今回からオープニングのタイトルバックが変更され、従来のウルトラ伝統の「影絵」から、矢的をはじめとするUGM隊員の活躍イメージや、第2話『先生の秘密』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20100507/p1)、第9話『エアポート危機一髪!』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20100627/p1)などの特撮場面を編集した実写映像となった。
 その中に盛りこまれている大津波の場面に怪獣の黒い足…… どう見ても『ウルトラマンレオ』第1話『セブンが死ぬ時! 東京は沈没する!』と第2話『大沈没! 日本列島最後の日』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20250330/p1)に登場した双子怪獣ブラックギラスのフィルムを使用したと思われるのだが…… 都市破壊描写は比較的充実していた『80』だけに、なぜわざわざそんな古い映像を流用したかは不明だが、迫力あふれるカッコいい豪華な特撮映像だからまぁいいか(笑)。


*西山院長を演じた中山昭二(なかやま・しょうじ)は特撮マニアには説明不要だろうが、『ウルトラセブン』に登場する防衛組織・ウルトラ警備隊のキリヤマ隊長役で広く知られている。
 意外なことに元々はバレエダンサーとして幾多の舞踏団に在籍し、1952(昭和27)年に故・越路吹雪(こしじ・ふぶき)の相手役として舞台に出演していたところを、太平洋戦争末期に南海の無人島に漂着した日本人男性30人を毒婦的な日本人女性ひとりが翻弄した実話を元にした日米合作映画『アナタハン』(53年)製作のために来日していたジョセフ・フォン・スタンバーグ監督にスカウトされたのが、映画俳優への転身のきっかけだそうである。なお、『アナタハン』には撮影スタッフとして特撮監督の故・円谷英二も参加している。
 翌53年に新東宝に入社し、映画『憲兵』(53年)に主演。59年に東映東京に移籍しニュー東映製作の数々の映画に出演する傍ら(かたわら)、『ヘッドライト』(62年・日本テレビ)や『青年弁護士』(63年・日本テレビ)に主演するなど開局草創期のテレビドラマにも進出を果たしている。
 主なレギュラー出演は、『少年ケニヤ』(62年・東映 NET→現・テレビ朝日)の主人公ワタルの父・村上大介博士、『特別機動捜査隊』(63〜77年・東映 NET)の藤島主任(氏の出演は71年まで)、『忍者部隊 月光』(64〜66年・国際放映 フジテレビ)のあけぼの機関長・南郷、『流星人間ゾーン』(73年・東宝 日本テレビ)のゾーンファミリーの父・防人陽一郎(さきもり・よういちろう)など、やはりキリヤマ隊長同様にグループのリーダー的存在を演じることが多かった。


 時代劇や刑事ドラマへのゲスト出演は数えきれないが、特撮作品ではやはり初代『ウルトラマン』第31話『来たのは誰だ』の二宮博士役が有名。変わったところでは『イナズマン』第21話『渡五郎(わたり・ごろう) イナズマン死す!?』で村人のひとりを演じている。
 98年にバップが製作したオリジナルビデオシリーズ『ウルトラセブン』誕生30周年記念3部作への出演オファーを快諾していたが、残念ながら健康上の理由で出演は果たせず、同年12月1日に肺炎のため70歳で亡くなっている。


*西山病院に健一を訪ねる矢的とエミは私服姿だが、今回のエミは黒のタイトスカートを着用! ムチムチボディにピッタリとフィットしてまぶしすぎるぜ(笑)。


*それに負けないくらいに今回まぶしかったのが、看護婦の吉村鈴子を演じた田中エミ(こちらもエミ・笑)。どことなく女優の紺野美沙子を思わせる清楚な雰囲気である。特撮ヒーロー作品ではチョイ役として看護婦がよく登場するが、今回はかなり出番も多く、ことさら印象に残る。
 なお、本文中でも「看護婦」と称したが、現在は「看護士」と呼ぶのが正しい。だが、「看護士」なる名称は「ブルマー排斥運動」と根っこは同じ、形式や言葉尻を合わせるための表層だけの男女平等主義であり、個人的にはどうかと思うため、今後も筆者は「看護婦」と呼称させていただきたく思っている。ご了承を願いたい。


*健一からの「怪獣出現!」の二度目の通報に、フジモリ隊員が「怪獣反応にもレーダーにも、怪獣の「か」の字も出てません!」なる迷セリフ。レーダーに「か」なんて文字が現れる方がよっぽどコワいわ(笑)。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2010年春号』(2010年4月11日発行)〜『仮面特攻隊2011年号』(2010年12月30日発行)所収『ウルトラマン80』後半再評価・各話評より分載抜粋)


[デジタル・ウルトラ・プロジェクトのチーフプロデューサーによるインタビュー]

電子書籍『脚本家 阿井文瓶の原点「脚本家として、小説家として」』

  http://www.ebookbank.jp/eobook/ep/item/1-106041/(2019年現在・リンク切れ・汗)



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