假面特攻隊の一寸先は闇!読みにくいブログ(笑)

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ウルトラマン80 4話「大空より愛をこめて」 ~姉の結婚・父の再婚話に揺れる少年像を、親子怪獣の喧嘩でも照射!

(「大空より愛を込めて」という表記は間違い。ひらがな表記の「こめて」が正解です・笑)

ウルトラマン80』再評価・全話評! ~序文

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100501/p1

ウルトラマン80』第1話「ウルトラマン先生」 ~矢的猛先生!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100502/p1

ウルトラマン80』第2話「先生の秘密」 ~「思い出の先生」の塚本登場! 不登校の描き方!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100507/p1

ウルトラマン80』第3話「泣くな初恋怪獣」 ~「思い出の先生」のホー登場! 鬱展開なようで明朗さも!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100516/p1


ウルトラマン80』第4話「大空より愛をこめて」 ~姉の結婚・父の再婚話に揺れる少年像を、親子怪獣の喧嘩でも照射!

だだっ子怪獣ザンドリアス 親怪獣マザーザンドリアス登場

(作・阿井文瓶 監督・深沢清澄 特撮監督・高野宏一 放映日・80年4月23日)
(視聴率:関東13.9% 中部18.1% 関西14.6%)

ウルトラマン80』第4話「大空より愛をこめて」 ~合評1

(文・内山和正)
(1999年執筆)


 これまではゲスト生徒がストーリーの中心だったが、今回はレギュラー四人組であるハカセ・落語(らくご)・スーパー・ファッションの生徒のひとり、スーパーがメインキャラとなる。ちなみにスーパーとは、彼の実家がスーパーであることからついたニックネーム。本名はススムという。


 母亡きあと、スーパーと父を世話するために結婚しないでいた姉がついに結婚することになった。娘が家族のことで心配しないで嫁(とつ)がせるために、父は自分も再婚を準備しているように装った。本心では思春期の息子のスーパーを傷つける再婚などはせずに、ふたりで暮らすつもりだったのだ。


 矢的はスーパーの気持ちを思って、再婚の件について思いとどまるように進言した。しかし、再婚の件は演技なのだと父から告白されて、父の家族愛に感動する。けれど、その真実を知らないスーパーは荒れてしまう。


 彼は学校をサボって、『80』放映前年の1979年に発売されて、当時は大ヒットしていた携帯カセットプレーヤーであるSONY(ソニー)のウォークマンのイヤホンで音楽を楽しみながらローラースケートに興じる。


 矢的が学校をサボる理由を問いただすとスーパーは、


「教科書を捨てよ、町に出よう! 寺山修司(てらやま・しゅうじ)」


 とオチャラケたかと思えば、


「世の中なんて、ブッ壊れちゃえばいいんだ!」


 と叫ぶなど、思春期特有の揺れ動く少年の心を多面的に見せている、常套的でも的確な演出が秀逸であった。寺山修司とは、1960~80年代初頭の有名な劇作家のことだ。



 これまでの回に比べると学園ドラマとしての比重は軽めか? それでも本話の主役であるスーパーたち当事者の家族にとっては、重大な家族問題のはずである。


 主人公・矢的猛(やまと・たけし)とオオヤマキャップ(隊長)がパトロール中に防衛組織・UGMの専用車両を止めて、街の灯りを見下ろしながら、


矢的「あの灯りのひとつひとつに、いろんな人間、いろんな愛や喜び、悲しみがあるんですね」


オオヤマ「ウン。あの灯りの下のひとつひとつの生活を守る。それがわれわれUGMの使命なんだよ」 


 それらのひとつひとつの灯火のなかに家族の愛が存在していることを思って感慨にひたるシーンは、本話の作品構成のなかでは蛇足のような妙なバランスの悪さや、子供番組らしい綺麗事っぽさを与えながらも、それなりに本話の重要なヒューマン要素であって、UGM側のオオヤマキャップのキャラも立てつつ、UGM側にもドラマ的な接点を持たせているのだ。


 それだけに、


 「体は一人前だというのに甘えてやがんのか、アイツは。まるでスーパーだな」


 と子供怪獣ザンドリアスを見て矢的が言い放ってみせるのは、その意見に一理は認めつつも、スーパーの心の痛みを考えないようなセリフで、個人的には少しイヤだった。


 第2話「先生の秘密」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100507/p1)に登場した羽根怪獣ギコギラーと同様に翼竜タイプであるザンドリアスは、かわいい系・かわいそう系ワケありキャラクターの一種たる存在である(親怪獣とケンカして地球に来たのだ)。しかし、その顔面が悪党的であるのは、『ウルトラマンティガ』(96年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961201/p1)30話「怪獣動物園」の変異怪獣キングモーラットなどに先鞭(せんべん)をつけたものか。


 団地で赤ちゃんが眠っている部屋をザンドリアスがのぞきこんで、しかし何もしないでいるシーンは、怖(こわ)さとザンドリアスの子供っぽさが両方表現されていて良い。


 ワケありとはいえ破壊力が強い怪獣なだけに、怪獣の事情を知った途端にオオヤマが攻撃中止命令を出すのはやや不自然で、最終的には中止するにしろ、もう少し様子をうかがうなどの演出の「間」がほしかった。本話のこの描写が特にヒドいということではなく、この当時の子供向けヒーロー番組ではよくある常套的な性急展開ではあったのだが。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2000年号』(99年12月26日発行)『ウルトラマン80』大特集・合評8「ウルトラマン80全話評」より分載抜粋)


ウルトラマン80』第4話「大空より愛をこめて」 ~合評2

(文・黒鮫建武隊)
(1999年執筆)


 わざと怪獣に負けてやるウルトラマン! 本放映当時に感激したシチュエーションである。


 既存シリーズの主人公に比べると、矢的猛は三枚目ぶりが強調されている一方、(3話「泣くな初恋怪獣」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100516/p1)までの)ウルトラマンエイティは従来通りのヒーローという感が強かった。故に、変身してしまうと何だか取っつきにくくなるなあ、という漠然とした思いが筆者にはあったのだ(特にエイティは地球人と合体したのではなく、ウルトラセブンウルトラマンレオ同様に地球人に化けただけであり、猛とエイティは全くの同一人格の筈(はず)なのだから)。


 それが、4話にして遂に、その人格的一致を実感できる活躍が描かれたのだ。エイティのカッコイイ活躍を期待する幼児・児童からすると、今回のエイティの姿は物足りなかったかも知れぬ。しかし、当時既に高校生だった筆者には、今回のエイティは普段以上にカッコよく思われた。俺は惚れたね。


 我々の実生活上では「損な役回り」が必要とされるケースが多い。その役回りを自ら買って出る度量とそれに必要な実力(マザーザンドリアスは地球防衛軍・北アメリカエリアの戦闘機隊を全滅させた強敵である。これにザンドリアスを加えたペアと戦い、自分が殺されない程度に敗北を演じなければならない)の双方を兼ね備えたエイティは、実にカッコイイ、正しくウルトラマンの名にふさわしいヒーローであると、筆者は今でも思う。


 さらに、エイティの魅力の一端を見せた今回の活躍が、(コミカル路線に転換したシリーズ後半でなく)4話という初期に用意されたことの意義にも注目したい。


 本編の方は、スーパーことススムが主人公。姉の結婚・父の再婚に揺れる弟、というけっこう深刻な役回りだが、レギュラー四人組の一人であるため、2話「先生の秘密」の塚本幸夫(つかもと・ゆきお)・3話「泣くな初恋怪獣」の真一といったゲスト生徒たちよりもカラッとした印象が強い。同じ悩むにしても、学校をさぼってウォークマンを聴きつつローラースケートで滑り回るといったように、陽性の悩み方なのだ。
 その親父(おやじ)さんの方も良い味を出しており、カラッとした良い親子関係が描き出されていたと思う。親子関係を猛が性急に修復してしまう(父の思いをススムに直接伝えてしまう)あたりが多少惜しいかな、とも感じられるが、その時の父親の表情も良いので、まあ良しとしたい。ラストでのファッションの「恋人バイト」オチも明るく効いている。


 学校とUGM(怪獣)との配分も良く、レモンのような『80』特有の爽やかさが全体を覆っているエピソード。欲を言えば、人間の親子と怪獣の親子をあまりにも直接的にオーバーラップさせ過ぎた点が短所と指摘されようか。



(重箱のスミ)


・戦闘機シルバーガルがα(アルファ)とβ(ベータ)に初分離。
・4話のゲストというと島本須美(しまもと・すみ)が有名である(前作『ザ★ウルトラマン』(79年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100430/p1)の科学警備隊ムツミ隊員や、のちの『風の谷のナウシカ』(84年)や『めぞん一刻』(86年)の主役で有名なベテラン声優)。しかし、『帰ってきたウルトラマン』(71年)48話「地球頂きます!」・『ウルトラマンタロウ』(73年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071202/p1)41話「母の願い 真冬の桜吹雪!」・『ウルトラマンレオ』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090405/p1)26話「ウルトラマンキング対魔法使い」で、憎まれ役を演じた五月晴子も主婦役で顔を出している。
・怪獣襲来で校内が大騒ぎになる描写(校内放送で怪獣襲来が放送されるなど)は、日常と非日常を交互に描く本番組ならではの面白さが出ている。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2000年号』(99年12月26日発行)『ウルトラマン80』大特集・合評1「ウルトラマン80教師編・各話評」より分載抜粋)


後日編註


 だだっ子怪獣ザンドリアスは、ナンと! 2010年代初頭からスタートした、ウルトラ怪獣美少女アニメ調に擬人化する『ウルトラ怪獣擬人化計画』で人気沸騰! そのWeb5分アニメ版シリーズである『怪獣娘(かいじゅうガールズ) ~ウルトラ怪獣擬人化計画~』(16・17年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210919/p1)にも登場を果たした。
 2017年1月に出来レースなのかもしれないけど(汗)、レコード会社・ポニーキャニオン主導で着ぐるみを新造する「スペシャル企画 ザンドリアスをもう一度地球へ呼ぼう!」なる企画でクラウドファンディングを実施! 目標の4倍ものカンパが集まった! そして、同年度のウルトラ怪獣ソフビのラインナップにも加わり、2017年度のTVシリーズ『ウルトラマンジード』#10(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200523/p1)に晴れてゲスト出演!(オリジナルよりも、やや可愛く造形されている)
 翌々年2019年度の『ウルトラマンタイガ』#1(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190811/p1)にも、同じ着ぐるみがヤングマザーザンドリアス(笑)として登場し、人間の手のひらサイズの幼生体・ベビーザンドリアスも登場!
 Web配信シリーズ『ウルトラギャラクシーファイト 大いなる陰謀』(20年)#7にも登場。『ウルトラマントリガー』(21年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20211021/p1)#7にもベビーザンドリアスの別個体が登場している。映画『ウルトラマンデッカー最終章 旅立ちの彼方へ…』(23年)にも、さらなる別個体のヤングマザーザンドリアスとベビーザンドリアスとして登場を果たしている!


[関連記事] ~怪獣ザンドリアス登場作!

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ウルトラマン80』再評価・全話評! ~序文

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ウルトラマン80』#1「ウルトラマン先生」 ~矢的猛先生!

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ウルトラマン80』#3「泣くな初恋怪獣」 ~「思い出の先生」のホー登場! 鬱展開なようで明朗さも!

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ウルトラマン80』#4「大空より愛をこめて」 ~姉の結婚・父の再婚話に揺れる少年像を、親子怪獣の喧嘩でも照射!

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ウルトラマン80』#5「まぼろしの街」 ~4次元を舞台にロボット怪獣と戦う特撮編!

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ウルトラマン80』#12「美しい転校生」 ~教師編終了

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ウルトラマン80』#25「美しきチャレンジャー」 ~フォーメーション・ヤマト再使用!

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ウルトラマン80』#31「怪獣の種飛んだ」 ~児童編開始

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ウルトラマン80』#33「少年が作ってしまった怪獣」 ~阿井文瓶、最後の脚本!

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大空より愛をこめて
#ウルトラマン80 #ウルトラマンエイティ
『80』4話「大空より愛をこめて」43周年評! ~姉の結婚・父の再婚話に揺れる少年像!
#ウルトラマン80 #ウルトラマンエイティ #ザンドリアス #マザーザンドリアス #桜ヶ丘中学



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