假面特攻隊の一寸先は闇!読みにくいブログ(笑)

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ウルトラマン80 44話「激ファイト!80VSウルトラセブン」 ~妄想ウルトラセブン登場

ファミリー劇場ウルトラマンエイティ』放映記念「全話評」連動連載!)
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『ウルトラマン80』全話評 〜全記事見出し一覧


第44話『激ファイト! 80(エイティ)VS(たい)ウルトラセブン』 ~妄想ウルトラセブン登場

妄想ウルトラセブン登場

(作・吉田耕助 監督・湯浅憲明 特撮監督・神澤信一 放映日・81年2月11日)
(視聴率:関東9.3% 中部14.4% 関西15.3%)


(文・久保達也)
(2011年2月執筆)


 少年サッカーチーム・モンキーズに所属する田島直人は、幼いころに母を亡くし、父は3年前から海外出張、姉の亜矢と二人暮らしである。ひっこみ思案(じあん)だった直人の唯一のよりどころは、M78星雲の光の国の戦士・ウルトラセブンのソフトビニール人形だった。


 ある日、友人からモンキーズへの入部の誘いを受けて断ってしまった直人は、亜矢から「そんな弱い子、ウルトラセブンさんに嫌われる」と云われて、半日セブンの人形とにらめっこをした末に、モンキーズへの入部を決意。以来、見違えるように明るく、快活な少年に育っていった。


 セブンの人形をポケットに忍ばせ、今日もサッカーの練習に励む直人だったが、そこに暴走族の一団が乱入してきた! 直人のライバルであるジャッキーズ所属の多田実(ただ・みのる)の兄・敏彦が率いるサターン党である!


 少年たちをバイクで追いかけ回した末、サターン党のひとりが「可愛い子ちゃんだ!」と今度は亜矢を標的に! サターン党の目線で高速で亜矢に迫っていくカメラは臨場感があるが、亜矢はバイクに接触されて転倒!


「姉ちゃんに何するんだ! ちくしょう!」


 直人が蹴り上げたサッカーボールが直撃して、バイクごと転倒するサターン党の一味!


「あのガキゃ〜!」


 と直人をバイクで追いかけ回す敏彦! ウルトラセブンに助けを請(こ)いながら逃げる直人だが、遂にバイクにひかれてしまう!


 直人をかばう亜矢ごとトドメを刺そうとする敏彦だが、その行く手をバイクで阻(はば)む、我らが主人公・矢的猛(やまと・たけし)隊員!


 防衛組織・UGMの隊員服姿で乗っているために、このバイクはUGMの専用車・スカウターS7(エスセブン)同様に、UGMにパトロール用として装備されているものだろう!?


 サターン党は退散して、直人は瀕死(ひんし)の重傷を負って入院することになる。



 病室のベッドに横たわる直人の枕元にある人形に矢的は注目する。


矢的「セブン、ウルトラセブンだ」


 矢的の脳裏に浮かぶウルトラセブンの勇姿が『ウルトラセブンの歌』をバックに、回想場面として流される!


・『ウルトラセブン』(67年)第3話『湖のひみつ』から、宇宙怪獣エレキングの長い尾をふりほどき、ツノをエメリウム光線で破壊し、宇宙ブーメラン・アイスラッガーで八つ裂きにするウルトラセブン
・第23話『明日を捜せ』から、猛毒怪獣ガブラと組んずほぐれつの大格闘の末に、アイスラッガーで首を切断するウルトラセブン!――本編ではこのあとガブラの首が宇宙ゲリラ・シャドー星人に遠隔操作されてセブンの左肩に噛(か)みついて、深手を負いながらもセブンがシャドー星人の円盤を光線で破壊することで難を逃れる場面が続く――
・第5話『消された時間』から、宇宙蝦(えび)人間ヴィラ星人が口から放った光線をウルトラバリヤーで阻んで、ストップ光線でヴィラ星人の足の動きを封じ、アイスラッガーで首を切断するウルトラセブン


 『ウルトラマンメビウス』(06年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070506/p1)・『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル』(07年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080427/p1)・『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル NEVER ENDING ODYSSEY(ネバー・エンディング・オデッセイ)』(08年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20091230/p1)はもちろんのこと、『ウルトラマン ライブステージ』などのアトラクションショーや、バンダイビジュアル発売の『ウルトラキッズDVD』などの再編集映像ソフト、バラエティ番組へのゲスト出演に至るまで、近年では往年のウルトラ戦士たちを再登場させる際には、マニア上がり世代のスタッフたちのこだわりなのだろう、オリジナルの効果音をきちんと使用することが慣例になっていて好ましいかぎりである。


 若者向けの歌番組『MUSIC JAPAN』(07年〜・NHK)の2010年12月12日放送分においては、映画『ウルトラマンゼロ THE MOVIE(ザ・ムービー) 超決戦! ベリアル銀河帝国』(10年・松竹・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20111204/p1)――興行的には「大惨敗」であったが、映像レベルや内容的にはウルトラ劇場版史上最大の傑作であると断言したいくらいだ!――の宣伝として、ウルトラ6兄弟にウルトラマンゼロとカイザーベリアルが登場し、アイドルグループ・AKB48(エーケービー・フォーティーエイト)と「ジャンケン宇宙一決戦」(笑)を繰り広げていた。
 その際にもタロウの声が、『ウルトラマンタロウ』(73年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071202/p1)本編で使用されていた、主人公・東光太郎(ひがし・こうたろう)隊員を演じていた篠田三郎(しのだ・さぶろう)の声を加工した声ではなく、映画『ウルトラマン物語(ストーリー)』(84年・松竹)以降――2011年3月25日にバンダイビジュアルから発売される8枚組DVD−BOX『ウルトラシリーズ45周年記念 メモリアルムービーコレクション1966−1984』にも収録――、タロウの声を演じている石丸博也(いしまる・ひろや)の声を加工した声を使用していた以外は、すべて「本物」が使用されていた。もっともタロウの声も、東光太郎と合体する前の素の声は、今となっては石丸版が「本物」であると解釈ができるのだが……


 AKB48の小嶋陽菜(こじま・はるな)はこの際、ウルトラマンジャックウルトラマンエースゾフィーにジャンケンで3連勝した末、遂にウルトラセブンには敗れたのだが、退場する際「やっぱりセブンは強い!」などと云い残していたことから、ウルトラには結構くわしいのだろうか? それとも放送台本にそう書いてあったのだろうか?(笑) 「ウルトラシリーズ45周年記念映画」にはぜひ彼女を「お姫さま」役で出演させてほしい! 閑話休題


 話を戻すが、『80』放映当時はこのあたりが非常にラフであった。
 同時期に放映されていた『(新)仮面ライダー』(79年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210102/p1)の3クール目に歴代ライダーが頻繁(ひんぱん)にゲスト出演した際にも、変身や必殺技などの効果音がオリジナルとはまったくかけ離れたものが使用されており、当時すでに中学生の小賢しい特撮マニアとなっていた筆者はこれが実に腹立たしくて「許せないっ!」と思ったものだった(笑)。
 今回とてまた例外ではなく、エメリウム光線アイスラッガーなどのセブンの必殺技の効果音もオリジナルとはまったく異なるものである。エレキングの鳴き声が『タロウ』第28話『怪獣エレキング満月に吼(ほ)える!』に登場した月光怪獣・再生エレキングの声であるのはまだしも、ヴィラ星人の声などは『帰ってきたウルトラマン』第4話『必殺! 流星キック』に登場した古代怪獣キングザウルス三世の鳴き声だったりする(ただし不思議と違和感がないことから、むしろ恐竜型であるキングザウルス三世にあんなユルユルとした声を使用した方が誤りだったのか?・笑)。
――再生エレキングの声も元々は『帰ってきたウルトラマン』(71年)第1話『怪獣総進撃』と第2話『タッコング大逆襲』に登場したオイル怪獣タッコングの声である。『タロウ』では第29話『ベムスター復活! タロウ絶対絶命!』と第30話『逆襲! 怪獣軍団』の前後編に登場した宇宙大怪獣・改造ベムスターにこの声が、第28話の再生エレキングに続いて使用されていた。テキトーだなぁ・笑――


 ただし『メビウス』でウルトラ兄弟がゲスト出演した際も、過去作品の映像がウルトラマンエースウルトラマンレオの変身のバンクフィルムを除いて一切使用されなかったことを思えば、効果音の不統一程度でこのような贅沢(ぜいたく)は云ってはいけないのかもしれない。
 矢的猛を演じた長谷川初範(はせがわ・はつのり)がウルトラマンエイティとしてゲスト出演した『メビウス』第41話『思い出の先生』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070218/p1)でも、「一所懸命」と書かれた黒板の前でにっこりと微笑む矢的と相原京子(あいはら・きょうこ)先生に1年E組の生徒たちや、ドキュメントUGMに「マイナスエネルギー怪獣」として記録された硫酸怪獣ホー・月の輪怪獣クレッセント・羽根怪獣ギコギラー・変形怪獣ズルズラーなどはすべて「動画」ではなく「静止画像」として映し出されたのみであった。
 


 かつてはバンクフィルムの使用は予算削減が理由で行われたものであり、初代『ウルトラマン』(66年)第13話『オイルSOS』や、『ウルトラセブン』第1話『姿なき挑戦者』と第10話『怪しい隣人』などのコンビナート炎上シーンがウルトラにかぎらず、そのほかの円谷プロ作品に流用され続けた。
 『戦え! マイティジャック』(68年)第12~13話『マイティ号を取り返せ!!』の前後編では、敵組織・Qに奪われた万能戦艦マイティ号が東京を襲撃する場面は『ウルトラ』からのバンク流用のオンパレードだったので、初代『ウルトラマン』第22話『地上破壊工作』からの流用場面では地底怪獣テレスドンの姿がモロに映ってしまっている(笑)。
 東映作品の場合でも、『ジャイアントロボ』(67年・NET→現テレビ朝日)第3話『宇宙植物サタンローズ』で同話のゲスト怪獣であるサタンローズの触手にからみつかれたガソリンスタンドが爆発炎上する場面が、『巨獣特捜ジャスピオン』(85年・テレビ朝日)の時点でもまだ流用されていたものであった(笑)――編註:90年代初頭の東映作品に至ってもまだ使用され続けていた(汗)――。


 だが現在では映像の権利関係が充実したことにより、バンクフィルムの使用はむしろ逆に金がかかるようになってしまっているため、なかなかおいそれとは使用できなくなっているのが実情のようである。先述したバンダイビジュアルの『キッズDVD』などでも、使用作品の脚本・監督・特殊技術(特撮監督)などのスタッフがこと細かくクレジットされているのは、つまりはそういうわけなのである。


 同じく先述の『MUSIC JAPAN』でもオープニング映像に初代『ウルトラマン』第24話『海底科学基地』からウルトラマンVS深海怪獣グビラ、『ウルトラセブン』第41話『水中からの挑戦』からウルトラセブンVSカッパ怪獣テペトの場面が使用されていたが(この番組に映像を提供した円谷プロ側のスタッフは第1期ウルトラシリーズ至上主義者か?・笑)、やはり画面左下に脚本・監督の名前がクレジットされるなど、近年ではたとえ十数秒程度の使用であってもこれをするのが当然になっている。


 80年代によく放送されていた懐かしのヒーローを懐古する番組ではこうしたことは一切行われてはいなかったものだが、近年そうした番組がほとんど放送されないのはそのような経費がかかる事情もあるようなのだ。もっとも多チャンネル化やDVDの発売で昔の番組を手軽に楽しめるようなご時世では、そのような需要も減っているのかもしれないが。
 元祖テレビ特撮ともいえる『月光仮面』(58年・宣広社 KRテレビ→現・TBS)の原作者・川内康範(かわうち・こうはん)が亡くなった際でさえ、それを報じるワイドショーで作品の名場面が一切流されなかったりするのは個人的には実に残念に思うのだが、要は短い映像の使用に対しても脚本・監督などの主要スタッフに対するものも含めての相応に高額な金銭の支払が発生してしまうということの証(あかし)ではあるのだろう。


 そのようなわけで、たとえ効果音がデタラメであろうが、こうした名場面がテレビ番組で比較的自由に使用できた時代の貴重な記録でもある。


 ちなみに、『タロウ』第40話『ウルトラ兄弟を超えてゆけ!』においては、「35大怪獣・宇宙人登場!」としてウルトラ兄弟の決戦名場面が延々と流された(当時すでに年長に達していたファンからは最後のバトルでウルトラ兄弟がタロウを助けに来なかったことにガッカリしたようで、後年の再放送では筆者もそのように思うようになるのだが、小学1年生だった筆者にとってはこれでも凄くうれしかったものだ・笑)。この際にも、使用されたバンクフィルムの効果音はほとんどデタラメであったにとどまらず、『ウルトラマンA(エース)』(72年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070429/p1)の主題歌などはオリジナルの東芝レコード版ではなく、日本コロムビアのカヴァー・バージョンが使用されていたりする(汗)。
 しかし、はるか後年の『メビウス』ではウルトラ兄弟のゲスト回でさえ主題歌すら使用されず、アレンジしたBGMが流されていたものである。


 これもテレビの放映だけならばともかく、映像ソフト化をする際には、既製の歌曲を使用している場合は日本音楽著作権協会JASRACジャスラック)にかなり高額な金銭を支払わなければならないために、低予算作品(汗)である『メビウス』では使用を控えたためだろう。それを思えばホンモノではなくカヴァー楽曲の使用に過ぎない! などという文句を云うべきではないのであろうが。そう考えると今回、『ウルトラセブンの歌』が本編で数回流されるのも、実にありがたいものに思えてくる。


 時代の貴重な記録といえば、直人が大事にしているセブンの人形は、『キングザウルスシリーズ』というブランド名で78年のゴールデンウィークの時期に、ポピー(83年にバンダイに吸収合併)から発売されたものである。
 これは現在、バンダイから発売されている『ウルトラヒーローシリーズ』の人形とほぼ同サイズであり、当時の価格は380円。このシリーズ最大の特徴は足のウラに当時の怪獣図鑑などによく掲載されていた足跡である「足形」がモールドされていることであり、封入されていた「足形シール」を20枚集めて送ると『ウルトラマン怪獣大図鑑』なるノベルティがもらえたことがコレクション性を高めて、第3次怪獣ブームの主力商品となり得ていた。


 ちなみに、初期発売の初代マン・セブン・ウルトラマンジャック(当時の商品名は「帰ってきたウルトラマン」)は目とカラータイマーが塩化ビニール製の別パーツ仕様になっていたが、外れやすいという難点から2期発売分からは通常の仕様になっている。今回の映像で確認するかぎり、背面は整形色の赤のままでほとんどまともに塗装されていないのだが(笑)、このような仕様でもバカ売れしたくらいに第3次怪獣ブームの熱気はすさまじいものがあったのである。
 そういえば、『キングザウルスシリーズ』のテレビコマーシャルは、初代『ウルトラマン』第2話『侵略者を撃て』のウルトラマンVS宇宙忍者バルタン星人、『ウルトラセブン』第15話『ウルトラ警備隊西へ(後編)』のウルトラセブンVS宇宙ロボット・キングジョー、『ゴジラ対メカゴジラ』(74年)のゴジラVSメカゴジラ、以下はやや記憶があいまいで間違っていたら恐縮なのだが、ゴジラ映画『怪獣大戦争』(65年)のキングギドラVSゴジラなどの決戦場面に、『帰ってきたウルトラマン』の明るく勇ましいおなじみのマーチ風のメイン戦闘楽曲をBGMにして、『マン』『セブン』の決戦名場面やアトラクション用の着ぐるみ対決の新撮分で構成された平日夕方に放送されていた帯番組『ウルトラファイト』(70年)風の実況を加えたものであったが、こうした過去映像の流用作品でさえ現在では製作困難なのかもしれないなぁ……



 真上から見下ろすと「UGM」という文字に見えるように設計されたUGM基地の建造物群という(このアルファベットをかたどっているたビルは個人的には好きである。このバンクフィルムの全景カットを見るのもかなり久しぶりだ)、これから舞台となる場所の説明映像を経て、UGM司令室で直人の轢き逃げ事件を徹底的に捜査するべきだと主張する矢的を、警察に任せておけばいいと軽くあしらうオオヤマキャップ(隊長)であったが……


オオヤマ「おい、矢的。だいぶ疲れているようだな。特別に休暇を与える。思う存分手足を伸ばしてこい」


 オオヤマキャップの真意をくみとった矢的は元気に作戦室を飛び出していく!


 こういう描写は往年の名作刑事ドラマ『太陽にほえろ!』(72〜86年・日本テレビ)などでもよく見られたシチュエーションである。七曲署(ななまがりしょ)の管轄(かんかつ)外で起きた事件の捜査を力強く主張した刑事に対して、故・石原裕次郎(いしはら・ゆうじろう)演じるボス=藤堂(とうどう)係長が休暇を与えて、個人的に捜査をすることに暗黙の了解を与えるといった、上司のせめてもの温情が感じられるような、どちらかというと子供よりも長じてからの再鑑賞で理解ができるようなイキな描写ではある。


 通路を駆け出していく矢的に、殉職した城野エミ(じょうの・えみ)隊員に代わって「準隊員」(書籍ではこう紹介されていることが多いが、本編では具体的には語られてはいない)として通信係を担当する星涼子(ほし・りょうこ)隊員が、テレパシーで語りかける!


涼子「猛」
矢的「ユリアン、君はまたテレパシーを使う。もし宇宙人であることがわかったらどうするんだ」
涼子「でも、ひとりで大丈夫?」
矢的「大丈夫だ。僕は地球を第二の故郷だと思ってる。地球人以上の能力は、地球人として暮らしていくためには不必要なんだ。ユリアン、もし君が本気で地球に住む気なら、地球人と同じ暮らしをすることだ。地球人といっしょに走り、笑い、泣く。それで初めてわかりあえるんだ」
涼子「わかったわ。そう努力してみる」


 『ウルトラマンレオ』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090405/p1)の主人公・おおとりゲン=ウルトラマンレオもまた、故郷の獅子座・L77星をサーベル暴君マグマ星人に滅ぼされ、地球を第二の故郷であると語っていた。矢的のこの発言は、近ごろ発売されたばかりであるオリジナルビデオ作品『ウルトラ銀河伝説外伝 ウルトラマンゼロVSダークロプスゼロ STAGE I(ステージ・ワン) 衝突する宇宙』、および『STAGE II(ステージ・ツー) ゼロの決死圏』(10年・バンダイビジュアルhttps://katoku99.hatenablog.com/entry/20200314/p1)のおかひでき監督がインタビューで語っていた「砂にまみれ、汗にまみれたウルトラマン像」にも通底するものがあり、地球人のことをよく知らない涼子=ユリアンに語って聞かせることで、ユリアン編独自のドラマも描けているのだ。


 だがここで、イトウチーフが涼子の肩をポンと叩(たた)く。


イトウ「なにをひとりでもの想いにふけっている。テレパシーで通信でもしているのか?」
涼子「いえ、なんでもないんです」


 って、バレバレやないか!(笑)
 このような調子で頻繁にテレパシーのやりとりをしていたら、仮にそれが精神波などではなく物理的な電波だとすれば、たとえ微弱な電波でも感知してしまうUGMのレーダーのことだ。矢的と涼子の関係が怪しまれるのに決まっている。矢的はそれをも警戒したのかもしれない。
 だが、この時点でイトウチーフはすでに薄々気づいたかもしれないなぁ……



 直人に重傷を負わせた敏彦がバイクで帰宅するや、弟の実がサッカーボールをぶつけて叫ぶ!


実「兄ちゃんだな! モンキーズの練習になぐりこんだ暴走族は! ちくしょう!」


 敏彦としては、実が所属するジャッキーズを勝たせてやろうという想いからの行動であったのだが、とんだ「弟想い」となってしまったのである。


実「兄ちゃん、田島をハネたろ! 入院している田島のところにあやまりに行け! クソっ、こんなオートバイなんか!!」


 敏彦のバイクの前輪を蹴りまくる実。


実「田島は僕のライバルだったんだ。その田島をケガさせた兄ちゃんなんか大キライだ! 顔も見たくないよ!!」


 結果的にはおまえのためになったなどと主張する敏彦だったが……


実「兄ちゃんのおかげで僕がどんな想いしてるのか知ってんのか! 暴走族の弟だって……」


 頭に来てバイクで走り去る敏彦に、


実「バカヤロ〜! 兄ちゃんのバカヤロ〜~!」


 右腕で涙を拭う実。角刈りで目の細い、やや小太りな印象の実を演じる子役俳優だが、彼の演技は同情を誘う味わい深い名演に感じられるのだ。



 ガソリンスタンドで店員たちにサターン党の居場所をたずねる矢的。紺のバイクスーツに黒の手袋とブーツ、首には白いマフラー――『A』の主人公・北斗星司(ほくと・せいじ)や『タロウ』の主人公・東光太郎がマフラーをしていたことも彷彿(ほうふつ)としてしまう――とスタイリッシュだが、そこに深い剃(そ)りこみの入ったパンチパーマにサングラスをかけたガラの悪そうな(笑)小太りの男がミニバイクで給油にやってきた。


矢的「すいません、サターン党の連中、どこでたむろしてるか知ってますか?」
ライダーA(シナリオ表記より)「ああ、あのピーマン野郎か」
矢的「ピーマン?」
ライダーA「中身のない奴のことさ。知らねぇな」


 それを近くで見ていた敏彦率いるサターン党!


敏彦「やっぱりアイツか! オレたちのことをかぎまわってやがったのは!」


 バイクで疾走する矢的を待ちぶせしていた敏彦は、


敏彦「おお、来たぞ! おい、行けホラ! 行け、行け!!」


 とサターン党に矢的を襲撃させる!


 数台のバイクで走りながら、先端に白い旗がついた長い竹をかざして、矢的の行く手を阻もうとするサターン党だが、矢的はそれを華麗にバイクで跳び越えた!(当然吹き替えではあるのだが)。


 だがその行く手を横切ったバイクのために矢的は転倒! 次々にバイクで矢的に当て身をくらわせるサターン党だが、この場面では矢的を演じる長谷川初範が吹き替えなしでまさに体当り演技を披露しているようだ!?


 倒れた矢的を旗で突っつき回す敏彦だが、そこに珍しくサイレン音をなびかせてスカウターS7が走ってきた! 退散するサターン党。



 降りてきた涼子から直人の容体が悪化したことを聞いて、病院に急行する矢的。「面会謝絶」の札がかかった病室の前で泣き崩れる亜矢。病床で苦しむ直人の枕元に置かれたウルトラセブンの人形に、直人の心の叫びがこだまする!


直人「ウルトラセブン! ぼくを守って! セブン! ウルトラセブン!!」


 夢の中で、夜、サターン党の一味に囲まれる直人。


直人「ウルトラセブン! 僕に力を貸して! セブン!!」


 直人がセブンの人形を高々と掲(かか)げるや、直人の全身に青いオーラが走り、そのままウルトラセブンの姿へと巨大化する!
 サターン党を手前に、あおりで直人がセブンの姿に巨大化する過程を合成しているのも秀逸だが、ここでセブンの変身時の効果音(これだけは本物!)、さらには『ウルトラセブン』のオープニングタイトルのコーダ部分を登場ブリッジ曲として用いるセンスは感涙ものである!


直人「ウルトラセブン! 聞いて! お願い! ぼくの命をあげるよ! だから悪い暴走族をやっつけて!!」


 病床の直人の目から一筋の涙がこぼれて、枕元のセブンの人形にしたたり落ちる!(その瞬間、セブンの人形にいくつか星がきらめく作画合成が芸コマ!)


 『ウルトラセブンの歌』をバックに、セブンの人形がむっくりと起き上がり、直人の願いをかなえるために外へ飛び出していく!
 この場面、セブンの人形が病室の壁を通り抜けて一旦姿を消し、その壁にある窓から再び夜空を飛行する姿が映しだされるといった凝(こ)った演出である。普通は窓をそのまま通り抜けて外に出るといった感じで描かれるだろうが、ワンクッションのジラしを入れることでのイイ意味でのもったいぶりで微量な盛り上げも入れてくる!


 夜の大都会に巨大化して降り立つウルトラセブン


 たとえて云えば『セブン』第18話『空間X(エックス)脱出』において、ベル星人の怪音波に苦しめられた主人公モロボシ・ダン隊員が倒れこんでテレポーテーションするや、別の場所に頭部から次第にセブンの姿となって現れる過程が描かれていたように描写されている。
 この『空間X(エックス)脱出』は、68年7月21日に東映が配給した『東映まんがパレード』でも劇場公開されている。音波怪人ベル星人が張りめぐらした空中の小島のような疑似空間に迷いこんだウルトラ警備隊のアマギ隊員とソガ隊員が、宇宙蜘蛛(ぐも)グモンガや宇宙植物、吸血ダニや底なし沼に次々と襲われる「秘境探検もの」であり、セブンとベル星人のバトルもモロに「怪獣プロレス」と、年少の子供でもストレートに楽しめる作品である。
 同話のセブンのテレポート変身の場面は、『(新)コメットさん』(78年・国際放映 TBS)第17話『私の親友ウルトラマン』にセブンがゲスト出演した際にも、コメットさんの前にセブンが出現する場面に流用されていた。


 このセブンの登場場面、手前に池、その奥に幾多の建造物を配置し、さらにその背後にセブンが現れるといった演出であり、セブンの巨大感と画面の奥行きが絶妙に感じられる名演出である。



敏彦「弟のヤツ、なんにもわかっちゃいねぇ! あいつのためにやったのに怒りやがって! クソ〜、こうなったらヤケクソだ! 徹底的にやったるぞ!」


 夜の大都会を暴れ回るサターン党! バイクを疾走させながら叫ぶ敏彦!


敏彦「オレたちは怪獣だ! 人間の体を持った怪獣なんだ! さからう奴は容赦(ようしゃ)しねぇぜ!」


 この敏彦の叫びに、筆者は『80』第1話『ウルトラマン先生』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100502/p1)において、地震の調査をしていた矢的がオオヤマキャップと初対面した際に語っていた力強い主張を思い出さずにはいられない。


矢的「見て下さい、この子供たちを。このまま育てば怪獣になってしまうような子供もいるんです! 僕は怪獣の根本をたたきつぶしたいんです! 僕は怪獣と戦うのと同じような気持ちで先生になったんです!」


 「学校編」があのまま続けば、暴走族に憧(あこが)れる中学生をゲスト主役にした作品が生み出された可能性だってある。直人をハネたサターン党の居場所を突きとめて、直人に謝罪させようとする矢的の姿は、「地球防衛」を任務とするUGM隊員としては明らかに逸脱(いつだつ)してはいるものの、桜ヶ岡中学校の教師としての職務の延長線上にあるとするならば、充分アリである行為ではなかろうか?


 便宜上は「ユリアン」編として分類されているこの第44話ではあるが、マイナスエネルギーに満ちあふれたそのテイストはまさに「学校編」を彷彿とさせるものもあり、「原点回帰」の趣も感じられるのである。


 そして、このマイナスの精神エネルギーが怪獣を招来するという概念は、平成のウルトラシリーズにも継承されていく。特撮評論同人ライターの仙田冷氏は90年代後半の時点でこう語っている。



「『ウルトラマン80(エイティ)』(80年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971121/p1)で「怪獣は人間の心の闇が作り出すものだ」というテーゼが提示された事で、そういう設定の怪獣を出しやすくなったのは事実だろう(特に『80』44話に登場した妄想ウルトラセブンは、まぎれもなく『ウルトラマンティガ』(96年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961201/p1)44話「闇を継ぐもの」のイーヴィルティガと同類の「闇の力によって生まれたウルトラマン」だ。単に素体となったものが、人形か石像かというだけの違いにすぎない)」

(特撮同人誌『仮面特攻隊99年号』(98年12月29日発行)「ウルトラマンダイナ」後半合評1(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971202/p1))



 そんな敏彦の前に、突然姿を現したのは……


敏彦「ウルトラセブンだ!」


 敏彦の目線のローアングルで地上に降りたセブンの巨大な足元をとらえて、頭へとズームアップしていくカットが臨場感にあふれてよい!


 セブン、サターン党に向かって進撃を開始する!
 画面手前の電線をスパークさせ、進んでくる描写がやはり画面の奥行きが感じられる!


 セブン、ひざまずいて巨大な手を画面手前に伸ばす! やはりサターン党目線の超ローアングル!
 逃げ遅れたサターン党のひとりをバイクごとつかみあげるセブン!
 セブンの目線で俯瞰(ふかん)してとらえた夜間ロケのサターン党に、セブンの巨大な手が覆(おお)いかぶさるかたちで合成されているのだが、シンプルな手法ながらもなかなかの大迫力!


 つかみあげたサターン党をにらみつけるセブンの上半身、助けを請うサターン党のアップ、それを放り投げるセブンの全身という、連続性を感じさせるカットの編集の妙が絶品!


 しかも、バイクごと放り投げられたサターン党が、宙でバイクから落ちていく様子がアップでとらえられていて、これがまた実にいい感じで(笑)宙でバイクのミニチュアからタイミングよく離れていくのである! サターン党の人形も実にリアルな出来だ!


 セブンに放り投げられたバイクが地上に落下、停めてあった車の列を炎上させる!
 このカットも手前にガードレールを配置し、まさに地上の人間の目線でとらえた超ローアングル!


 林立するビル群(その下には街灯が並ぶ!)の奥にあおりでとらえたセブンの全身、その手前を逃げるサターン党のバイクのミニチュアが、なんとアクロバット走行のように画面手前でジャンプを披露する!


敏彦「クソ〜っ、住宅の密集地帯や路地を走るんだ! ビルや民家を壊せば、ウルトラセブンは犯罪者だ! UGMが始末してくれるぜ!」


 悪知恵も働かせる敏彦だが、その思惑(おもわく)どおりにセブンは建造物を次々に破壊し、車も踏みつぶして、あくまでサターン党を追い続ける!


 駐車場を手前に配置し、両側にビル群、奥からセブンが足元の電線をスパークさせて手前に進撃してくるという、奥行きと立体感が感じられる画面構成も絶品だが、まさに直人の怒りを体現するかのように、おおげさに全身を震(ふる)わせて、両手をあげてサターン党につかみかかろうと進撃する、セブンのスーツアクター・渥美博のヒール(悪役)に徹した熱演も光る!
 セブンの巨大な足に踏みつぶされて炎上する車の列! セブンの足元でヘシ折れる街灯! ロングとアップを巧みに使いわけるカメラワークもその迫力を倍増させる!



警報の声「ウルトラセブンが暴れています! 民家を踏みつぶし、ビルを壊し、被害は甚大(じんだい)です! UGM、出動して下さい! UGM、UGM、速(すみ)やかに出動して下さい!!」


 この警報をバックに、作戦室のランプが赤く点滅するのに続いて、オオヤマキャップ・イトウチーフ・フジモリ・イケダ・矢的・涼子と、緊張が走るUGMのメンバーを順にアップで映していく演出が緊迫感にあふれており、これまた絶品!


矢的「キャップ、ウルトラセブンが悪いことをするはずがありません! 僕が責任を持ちます! 様子を見に行かせて下さい!」
イケダ「そうですよ! ウルトラセブンが暴れるなんて、そんなバカな!」


警報の声「UGM、UGM、速やかに出動して下さい!」


オオヤマ「出動だ!」
一同「え〜~っ!?」
オオヤマ「ただし警戒のためだ。オレもウルトラセブンを信じている。なぜウルトラセブンがこんな行動を起こしたのか、よく見極めるんだ」


 矢的と涼子が戦闘機・シルバーガル、フジモリがスカイハイヤー、そしてイケダがなんと本来はイトウチーフの専用機であるエースフライヤーで出動!


イケダ「あ〜、ホントだ〜。ウルトラセブンが暴れている!」


 イケダの目線で俯瞰した夜のビル街のあまりに豪華なミニチュアセットの中を、画面左手から右手にセブンが進撃していくさまは、空間の広がりを感じさせ、実際にはそれほど広くはないであろうスタジオを広く見せる効果を発揮している!


涼子「あれはセブンじゃないわ!」


 手前にビルを配置し、その背後のセブンをあおりでとらえて、ビルを破壊するや、セブンがそれをまたいで画面手前に進撃する場面でさえ、足元の手前にきちんと街灯が配置されているなど、実に細かなところまで設計が行き届いた都市破壊演出が臨場感満点!


フジモリ「おかしい」
イケダ「オレたちの知ってるセブンじゃないぞ!」


 セブンの背後から俯瞰し、手前にセブンの後ろ姿、その奥をサターン党のバイクがミニチュアセットの道路を画面奥へと逃げていく場面、4台のバイクのミニチュアがきれいに並んで自走しているさまは小さな感動すらおぼえてしまう。
 手前に駐車場、画面奥に林立するビル群の前でセブンが暴れ、右手からシルバーガルがセブンに向かって飛行する!
 とにかくセブン大暴れの場面は常に手前に何かを配置し、それに向かってセブンが進撃してくるという、画面に立体感と奥行きが感じられる演出なのだ!


涼子「セブンの脳波を探(さぐ)ってみるわ」


 目を閉じ、正体は女ウルトラマンユリアンならではの超能力を発揮する涼子!


 その間にもセブンの進撃はやまない! 画面手前に配置されたビルをあおりでとらえたセブンが組んだ両手を降りおろして破壊するや、爆風と炎が窓から吹き上がるビルをアップでとらえるカット割りが最高!


 セブンから必死で逃げるサターン党一味の本編カットが何度か挿入されるが、すべてセブンの目線で俯瞰した、画面奥へとバイクを走行させる後ろ姿で統一されており、本編と特撮の華麗なる連係プレーも見事だ!
 さらには炎上するビルを手前のフェンスのミニチュア越しに撮らえるといった、あまりに芸コマなカットまで! ここでも左手に街灯が配置されている!


 セブン、遂に戦闘機・シルバーガルをつかみあげる!


矢的「セブン、何をする!」
涼子「ちがう! このセブンはウルトラ星人じゃない!」


 ウルトラ一族も“ウルトラ星”の“星人”であるからには、他の宇宙人とも共通する一般名詞としての“ウルトラ星人”という呼称があってもよいし、その名称が用いられた方が合理的でもあるだろう。小学生の怪獣博士タイプの子供が知的な喜びを覚えそうな呼称でもある(笑)。ちなみに『帰ってきたウルトラマン』第51話(最終回)『ウルトラ5つの誓い』でも「ウルトラ兄弟抹殺作戦」をたくらむ触覚宇宙人バット星人が、ウルトラ兄弟たちのことを“ウルトラ星人”と呼称しているように聞こえるシーンが1箇所あったと記憶している。


 セブン、シルバーガルを放り投げる!
 コクピットが開き、矢的と涼子のミニチュア人形が脱出!


 シルバーガルが墜落していく場面も、画面手前に民家の屋根、その右手奥にアパート、さらにその奥にマンションを配置し、それに向かって左手からシルバーガルが次第に降下していき、画面奥で炎があがるや、画面上からふたつのパラシュートがアパートとマンションの間に降下していき、民家の屋根の奥に消えていくという細やかさである! 常に比較対象物を配置することがリアル感を醸(かも)し出しているのだ!



 地上を駆けてくる矢的と涼子!
 あまりに多くの建造物が配置されたセットの中、画面左手奥から右手前に進撃するセブンを、画面中央に配置された鉄塔越しに、矢的と涼子が見上げるような目線でカメラが次第にスームアップしていくのもまた実に臨場感にあふれる演出である!


涼子「あのセブンには実体がないわ! 怒りのオーラが全身から立ちのぼっている!」
矢的「敵の正体が何者でも、これ以上、暴れさすわけにはいかん!」


 画面左右にビルを配置し、あおりでとらえたセブンの上半身の周囲を、炎をかたどったような青いオーラが迸(ほとばし)る!


矢的「エイティ!!」


 矢的、遂にウルトラマンエイティに変身!
 ローアングルで画面右手にエイティの両足を背後からとらえ、左手奥にセブンを配置と、決戦に入っても奥行きのある画面構成は続いていく!


 エイティ、宙を高々とジャンプ!
 そのままセブンに飛びかかっていくさまを真横から撮らえている。
 セブンにのしかかった瞬間、またもや超ローアングルで画面手前に駐車場を配置し、両者が組みついたまま、画面奥へと大地を転がっていくという迫力のある演出!


 セブン、右足でエイティに蹴りをかけるや、エイティ、その下から回りこんでセブンを投げる!
 着地したセブンがエイティを投げる!
 投げられて立ち上がったエイティの背後の股の間から、奥でこちらにファイティングポーズを決めるセブンが見えているという、矢島信男特撮監督が『タロウ』『レオ』でよく用いた演出が見られるが、今回はもうひとひねりしてエイティの股の間に民家の屋根を配置し、さらにその奥にセブンの姿を映すという応用を効かせている!


 エイティ、セブンに向かってキックをかますが、セブンは高々とジャンプ、宙を1回転してこれをかわす!
 両者の華麗なアクロバットの演技もさることながら、画面やや左よりの中央手前に鉄塔を配置し、その上を両者が宙でスレ違うさまがまたイイ!
 もちろん画面下部にはビル群が並ぶ! 今回の特撮パートの一番の名場面である!


 セブン、画面奥へと宙を1回転してエイティに突撃! 体勢を低くしてこれをかわすエイティ!
 エイティ、セブンの右足回し蹴りを体勢を低くしてかわすや、それを両腕でつかんで投げ飛ばす!
 この間、画面右手前に置かれた黄色のコンクリートミキサー車が妙に気になるが(笑)、のちにセブンが見せる行動への伏線のつもりの演出か?


 投げられたセブン、画面右手前のブロック屏の奥を転がって、大地にたたきつけられる!
 この際にも画面左手前の電柱に張られた電線が、セブンの頭に接触してスパーク!
 しかもブロック屏の手前に配置された電柱が、その衝撃で揺れる様子まで撮られている!


 セブン、ビルを持ち上げるや(足元の電線がいちいちスパークするのも芸コマ!)、エイティの頭に凶器攻撃!
 セブン、ひざまづいたエイティを抱えて投げ飛ばす!


 再度投げようとするセブンから後ろに宙返りして逃れるエイティ!
 だが再度セブンにつかまれ、ビルに放り投げられるエイティ!


 画面左手前に背後から撮られたエイティに向かって、右奥から迫るセブンの手前を、画面右からスカイハイヤーとエースフライヤーがそれを遮(さえぎ)るように高速飛行! どこまでも立体感のある画面構成!


 UGMの援護を受けたエイティ、高々とジャンプしてセブンにキック!
 ここで再び超ローアングル、工事現場に置かれたクレーン車などの重機を手前にセブンの巨大な足が迫り、続いてセブンがコンクリートミキサー車を蹴り上げる全身カット!
 セブン、エイティに向かって次々に重機を蹴り上げるが、このキックフォームがまた実に美しいのだ!


エイティ「あのキックフォームはたしか……」


 回想場面。亜矢がサターン党のバイクに接触されて転倒するのを見た直人は……


直人「姉ちゃんに何するんだ! ちくしょう!」


 直人が蹴り上げたサッカーボールを喰らって、転倒するサターン党。


エイティ「まさか直人くんの、ウルトラセブンの人形が!? 実体のない怒りのオーラ…… そうか、直人くんの生き霊(いきりょう)が! ユリアン、直人くんの枕元にセブンの人形があるかどうか調べてほしい! 早く!」
涼子「了解!」


 この会話の間にも、画面左手奥のエイティに向かって右手前から迫るセブンの背後(セブンが踏んだ車が画面手前で炎上!)、さらに画面左手のエイティの背後から右手奥のセブンに向かい、エイティの目線でカメラがズームアップと、今回はあまりにも特撮演出が凝っている!


 セブン、さらに重機を蹴り上げる!
 エイティ、ジャンプしてこれを逃れる!
 この場面もまた、画面左斜め上から右斜め下へと電線が張られており、ジャンプして画面上方に姿を消すエイティが背後から撮られて、奥にいたセブンが蹴り上げた重機が画面には映らない電線の上方に激突し、その衝撃で電線が揺れる様子までもがハッキリ撮られているのだ!


敏彦「エイティが逃げた! オレたちはセブンに殺されるぞ!」


 やはりセブン目線で俯瞰し、画面奥へと逃げていくサターン党!


フジモリ「エイティが逃げた!」
イケダ「セブン、お願いだ! もう暴れるのをやめてくれ! あなたは正義の味方でしょ!?」


 さすがのイケダ隊員も、今回ばかりはお笑い演技はやや封印か?(笑)
 ちなみに、ファミリー劇場『ウルトラ情報局』2010年12月号にゲスト出演したイケダ隊員こと岡元八郎(当時・岡本達哉)氏は、あのセリフは子供のころに観ていた『ウルトラセブン』に対する本心も込もった演技であったと述懐している。まぁ我々特撮マニアたちへのファンサービス・リップサービスかもしれないが、1955(昭和30)年生まれの岡元氏は『マン』『セブン』を小学校高学年でギリギリ視聴していた世代でもある。


 イケダの目線で俯瞰した夜の大都会のミニチュアセットの中を、画面左手から右手へと進撃していくセブン! 画面右手上空にはフジモリが搭乗するスカイハイヤーが飛行! 豪華な大破壊絵巻なのだ!



 直人の病室の前で眠りこける亜矢を尻目に、「面会謝絶」でカギのかかったドアを念動力で開けて病室に入る涼子。緊急事態なのだから、固いことは云わずにセブンが暴れている現場からテレポーテーションした方が早かったんじゃないのか?(笑)


涼子「やっぱりセブンの人形がないわ」


 病床でうなされている直人。


直人「エイティ、なぜ邪魔をするんだ…… ぼくは、ぼくのセブンといっしょに、悪い奴らをやっつけているのに…… エイティは正義の味方じゃないか?……」


 自らを「人間の体を持った怪獣」だと叫んでいた敏彦もそうだったが、それをやっつけることが「正義」だと信じている直人もまた、マイナスエネルギーを発動させて、セブンの人形を意のままに動かしていたのである! 実はマイナスエネルギーVSマイナスエネルギーの戦いでもあったのだ!


涼子「エイティ、聞こえる?」
エイティ「ユリアンか?」
涼子「今暴れているセブンは、直人くんのセブンの人形に、直人くんの生き霊が宿(やど)ったものよ」
エイティ「了解!」


 涼子、テレポーテーションで病室から姿を消す。ってだから、入るときもそうすればよかったのでは?(笑)



 涼子からセブンの正体を聞いて、再びセブンに挑むエイティ!


 ここで荘厳(そうごん)に響き渡るのが、『ザ★ウルトラマン』(79年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110430/p1)の挿入歌『怪獣レクイエム』のインストゥルメンタルである。
 第12話『怪獣とピグだけの不思議な会話』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090719/p1)において、同居怪獣オプトの怪獣3兄弟の兄・チョウとジンを殺され、凶暴化してウルトラマン・ジョーニアスに襲いかかる弟怪獣のサンを描写するのに初使用されて以来、第16話『生きていた幻の鳥』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090816/p1)で瀕死の鳥が電気ショック治療の副作用が原因で巨大化した古代怪鳥キングモア、第40話『怪獣を連れた少年』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100212/p1)でヘラー軍のロイガーにだまされたオペルニクス星人フェデリコが暴れさせたペット怪獣オロラーンなど、哀れな宿命を背負った怪獣たちを描写する際に定番で使用された名曲である。


 画面両側に奥へと居並ぶビル群と街灯の群れの中央を、手前に向かって進撃してくるセブンの前に、画面上部からエイティが降りたって立ちはだかり、その行く手を阻む!


 セブン、両手の指先を額(ひたい)のビームランプに当てて、エメリウム光線を発射!
 『ウルトラセブン』ではエメリウム光線の色は白と緑が確認されているが、今回は青である。これは登場時にセブンの全身を覆っていた怒りのオーラの色と共通しており、あくまでもホンモノのウルトラセブンとは別物であることも意味させた色彩イメージの統一であろう。


 エイティはこれを側転でかわす!
 この場面も画面左手前に民家の屋根(その上には物干し台!)、その上にセブンの脇から下の背面を映して、エメリウム光線は画面中央よりやや左寄りの上部から斜め右下に流れていき、それをエイティがかわして画面左へと側転していく!
 エイティの背後にはやはりビルが立ち並んでいる! どこまでも立体感のある画面構成だ!


 エイティ、紫色の光の矢・ウルトラダブルアローを両手の指先から放つが、セブンはこれを宙返りしてかわす!
 この場面も画面下には建造物群が立ち並んでおり、その上空をセブンが華麗に舞うのである!


 体育館風の丸屋根の建造物を画面左手前にして、華麗にジャンプしてセブンに突撃をかけるエイティ!
 民家の屋根を画面中央手前にして、バック転の連続で画面奥へとかわすセブン!
 両スーツアクターのまさに超人的なアクションもさることながら、常に比較対象物を配置することが一層迫力を増している!


 エイティ、左足で足払いをかけて、セブンは宙でひっくり返り、大地にたたきつけられる!
 エイティ、今度は右足で回し蹴り!


 大地にたたきつけられたセブンは、低い姿勢のままで右腕を前方に突き出して、左肘(ひじ)を曲げて左手をこぶしにした挑発的なポーズ!(セブンというよりタロウのファイティングポーズに近い・笑)
 これまた超ローアングルで、手前にクレーン車の先端を配置しているのだ……


エイティ「直人くん! 君は君以外のウルトラセブンを慕う少年たちの心を傷つけるつもりか!? ウルトラセブンは平和の守り神ではないのか!?」


 セブンの後ろ姿を画面左手前に、体育館を右手前に、その奥に立つエイティの顔にカメラがズームアップ!
 続いて、民家の屋根を画面右手前に、その上にエイティの両足を背後から、左手奥に立っているセブンの顔にズームアップ!
 変幻自在なカメラワークがセブン、いや直人を説得するエイティに、それこそ説得力を与えてくれている! いわゆる本編と特撮の華麗なる融合である!


 セブン、直人の揺れる心を体現するかのように、うつ向き加減で両手のこぶしをじっと見つめる。


 エイティ、胸中央区のカラータイマーから白色の波状光線と、それを覆うように連続して青いリングを発射するタイマーショットをセブンに放った!


 セブンの全身が青いオーラに包まれる!


直人「わぁ〜~っ!! わぁ〜~~っ!!!」


 病床で絶叫する直人!


 セブン、両腕を高々と掲げたまま、大地にひっくり返る! この場面でも手前には民家の屋根である。



 スカウターS7が現場に到着。降りてきたイトウチーフと涼子に、もう暴走族はやめると泣きつく敏彦らサターン党の一味。
 画面手前に駐車場、その奥に横たわるセブン、さらにその奥にエイティと、奥行きのある画面構成の中(左にはマンション、右には体育館!)、エイティはセブンを抱えて夜空の彼方に去っていく。


 病床でにっこりと微笑(ほほえ)む直人……



 すっかり回復した直人がキャプテンを務めるモンキーズと、実少年がキャプテンを務めていたジャッキーズの、サッカー決勝戦が無事に開催される。


実「田島くん、兄ちゃんのこと……」
直人「多田くん、今日の決勝戦、力いっぱいがんばろう!」
実「ありがとう、田島くん!」


 固い握手を交わす直人と実。
 観戦に訪れていた矢的と涼子。矢的は「一所懸命」を象徴するような熱血感あふれる赤いブルゾン、涼子は白のタートルネックのセーターに水色のブルゾンを着用と、まさにキャラクターのイメージにぴったりのコーディネイトである。


矢的「よかったなぁ、元気になって」
亜矢「ありがとうございます。決勝戦にはどうしても出るんだって、気力でがんばったそうです」
涼子「まぁ、気力でケガを治しちゃうなんて、まるでウルトラマンみたいね」


 思わず涼子をにらんでしまう矢的に、いたずらっぽく笑う涼子の表情がかわいい。


亜矢「直人ったら、夢の中でウルトラセブンになって、悪い暴走族をやっつけたそうです」
矢的「そう、そうかもしれないなぁ。(以降、心の声)いや、きっとそうだよ直人くん。君のテレパシーが、セブンの人形を魂あるもののように動かしたんだ」
涼子「猛」
矢的「また…… ユリアン、テレパシーを使っちゃダメだよ」


 ラストのオチで、あくまでも本話がユリアン編の一編であったことも強調してみせる!


涼子「だって、亜矢さんととっても楽しそうなんだもの」


 嫉妬じみたことを云ってみせて、またいたずらっぽく笑(え)みを浮かべる涼子。


矢的「そんな……」


 困惑する矢的だが、直人が見事にシュートを決めるや、亜矢と抱き合って喜ぶ矢的! 実に面白くなさそうにひとりむくれる涼子(笑)。



――第44話『激ファイト! 80VSウルトラセブン』では、神澤さんとはその後も縁が深いウルトラセブンが登場しました。このときは暴走族のバイクのミニチュアをセブンが追いかけたり、家を持ち上げてぶん投げるっていうのも、インパクトがあったのですが。
「なんか面白いことないかなっていうので、家を持ち上げて投げたり、ということもやっているんですよ。子供の話だったし、一応テーマでサッカーっていうのがあったので、車のミニチュアを蹴ってみたりとか。もう暴れまくって、大変だったんですけど(笑)。2クール、3クールと進んで撮影も軌道にも乗ったし、変わったことやりたいねということで、いろいろ頭をひねって、そういうのが出てきたのが僕のやった2本なんじゃないんですかね」

(『タツミムック 検証・ウルトラシリーズ 君はウルトラマン80を愛しているか』(辰巳出版・06年2月5日発行・05年12月22日実売・ISBN:4777802124)特撮監督 神澤信一インタビュー)



 とにかく今回のBパートは、ほぼ全編が「妄想ウルトラセブン」の大破壊絵巻と、エイティとの「激ファイト!」で埋めつくされているのだ!
 今回のような派手な都市破壊が描かれたのは、第36話『がんばれ! クワガタ越冬隊』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110101/p1)以来のことである。約2ヶ月もの間、まともな都市破壊描写がなかったわけであり、特撮怪獣番組としてそりゃダメでしょうと云いたくもなるのだが、テレビシリーズの製作というものは後期になるにつれ、次第に予算が切り詰められていくのが常であるのだ。


 だが、今回のように敵キャラクターが既存のコスチュームの再利用で済ませられるのならば、着ぐるみ製作の予算が浮いた分を特撮ミニチュアの増量に回すことができるのだろう。人気も知名度も高いウルトラ兄弟ウルトラ怪獣の再登場であれば視聴者の注目も集めることができて一石二鳥! いや、それ以上の効果をあげることができるのである!
 実際に第44話の視聴率は、第43話『ウルトラの星から飛んで来た女戦士』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110219/p1)と比べて、関東地区では2.4%、中部地区では1.3%、関西地区に至っては4.4%もの上昇を遂げているのだ!(中部地区は第43話の視聴率も13.1%とほかの地区に比べて好調であり、普段から安定していたから極端な上昇とはならなかったのだろう) 新ヒロイン・ユリアン登場よりも、ウルトラセブン客演の方が視聴者からの訴求力が高かったということでもあるのだが。


 だが今回、本話の良さは、最大のウリである「エイティVSウルトラセブン」というイベント性の高さだけではなかったと、今回の再視聴では強く感じられた。


 80年代当時はなにかと話題にのぼることが多かった暴走族を登場させるという通俗性の高さを漂(ただよ)わせながらも(真面目なマニアの方々はイヤがるだろうが、一般視聴者に対してはキャッチーだろう)、児童ドラマもきっちりと描いており、かつユリアン=涼子にも超能力などの活躍の場を何度も与えて、ラストに象徴されるように矢的に対するほのかな恋情の芽生(めば)えも生じさせたりと、極めて密度が高くてバランスもよいのである。
 正味20分強のドラマの中で、これだけの要素を盛りこんでいることは驚嘆(きょうたん)に値するが、特撮パートの比重を高くしようが、その気になればしっかりとしたドラマを描くこともできるということを証明している。


 「学校編(教師編・学園編・桜ヶ岡中学編)」・「UGM編」・「児童編(子供編)」・「ユリアン編」と、便宜上4つの章に分類されている『80』ではあるが、今回はそのすべてを結集した、まさに『80』の「総決算」といった趣(おもむき)の仕上がりになっている。個人的には4クール目の最高傑作として掲(かか)げたい。



<こだわりコーナー>


*今回登場するウルトラセブンは、現在の公式設定では「妄想ウルトラセブン」と呼称されているが、劇中では単に「ウルトラセブン」とだけ呼ばれている。朝日ソノラマの特撮雑誌『宇宙船』Vol.6(81年4月30日発売)の『80』放映終了特集に掲載された作品リストでは「怨念セブン」と呼称されていた。この「怨念セブン」が実に印象深い古い世代のマニアとしては、今回の再視聴でも「妄想セブン」という呼称は若干ニュアンスが異なるようにも感じられて、「怨念セブン」の方がふさわしかったような気もしてしまう……


*直人「多田くん、今日の決勝戦、力いっぱいがんばろう!」


 ラストシーンにおける直人のこのセリフ。実は直人を演じる坂本真吾が、アフレコの際に「多田」を「ただ」ではなく「おおた」と読んでしまい(笑)、それがそのままOKになってしまっているのである! 子役のセリフにはシナリオにふりがなくらい印刷しとけよ! つーか、誰か気づけよ! それともアフレコ現場で監督なり録音技師さんが間違った読みの指示を強制してしまったのだろうか?(汗)


*重箱のスミつつきでもう一点。セブンが重機を蹴り上げるキックフォームを見て、エイティはそれが直人と同一であることに気づく。しかし、冒頭の場面では矢的はすでに直人が敏彦のバイクにひかれて倒れたあとに現地に駆けつけたのであり、直人のキックフォームは見ていないはずである(笑)。もし見ていたのなら、タイミング的に直人がひかれるのを防ぐことができたのであり、今回の事件も起きなかったはずである。それに亜矢の身の上話からも、矢的は直人と今回が初対面なわけで、周知の間柄で以前から直人の活躍する姿を知っていたわけではないのだ…… まぁ、以上の二点の些細(ささい)なミス(ではないとも思うが・笑)は水に流そう!


ウルトラシリーズで暴走族が登場する作品としては、『A』第36話『この超獣10,000ホーン?』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070109/p1)も存在する。ファミリー劇場の『ウルトラ情報局』06年11月号において、ゲストの脚本家・長坂秀佳(ながさか・しゅうけい)先生は、自身が執筆した『A』第36話について、以下のようにコメントしていた。


「あれはねぇ、久しぶりに観たら腹立ったけどね。な〜んかベタベタ、あれこそベタベタだよね。もう(主人公の北斗星司が)いい子になっちゃってさぁ〜。ものすごく腹が立ったんだけど。だけど多分ねぇ、あれを書いた動機は暴走族が許せないくらいに、たぶんこのときに毎日新聞の記者が暴走族、どっかの湘南(しょうなん)のあたりかなぁ、わぁ〜ってやってんのを「やめろ」って云いに行って撲殺(ぼくさつ)されちゃうんだよねぇ。そんな事件があったの。


(編註:これは長坂センセイの記憶違い。毎日新聞・論説室顧問が片瀬江ノ島駅前で撲殺されてしまった事件は1989(平成元)年4月のことであり、72年放映の『A』とは時代が随分と異なる。氏が鉄パイプを片手に持って抗議に行ったのはやや迂闊(うかつ)だったとしても、もちろんそのことを理由に集団撲殺行為を正当化してもならない)


 で、ウチのまわりもものすごかったしねぇ。だから許せなかったんだよ。許せないんだけど、書いてるとそいつらを悪者にしていくだけだとダメなんだよね。だからドラマ(フィクション)としてはいいのかなぁと思うような小粒(な作り)でさぁ。(北斗が暴走族を説得する場面について)いや、あのときだけは殴りたかったんだけどね(笑)。子供を使って「お兄ちゃんカッコいいね」って云わせてさぁ、もうアレ観て気持ち悪かった。いやホントに(笑)。だから今観ると気持ち悪いけど、あの当時は怒りから始まったんだけど、書き始めるとやさしくなっちゃうんだよね、やっぱりね」


 それを象徴するのが以下の場面である。しかし、この際の北斗星司の心情吐露(しんじょう・とろ)は、長坂先生の本意とはまったく正反対のものだったのである(笑)。


美川隊員「あたし、ああいう暴走族、超獣以上に許せない気がするわ」
北斗「さびしいんだよ、あいつら」
美川「暴走族の味方をするの?」
北斗「そうじゃない。そうじゃないが、なぜあいつらがあんなことをしたくなるのか…… オレにもあんなふうになりかけた時期があったんだ……」


 おもわず遠い目になる北斗。ただし、ドラマとしてはよいシーンなのだが、長坂先生がほのめかしているように、彼らも親なり周囲に虐待されたり邪険にされたとか、社会(の変化)の犠牲者にすぎないのだから、暴走族や不良やイジメっ子が常にいつでも同情の余地がある存在であるのか? それとも、その本人個人のもって生まれたヤンチャで粗暴でモラルにはやや欠けた気質なり、若者間でのイキがったりワルぶったりすることの競争の果てにおける暴走行為であって、優しい母性の持ち主が包摂・バックハグでもしてあげれば立ちどころに解消(笑)されるような安っぽいものであるのか?――そんなことをされても彼らはキモがって反発されるだけのことだとは思うのだが(爆)―― そのあたりについては、議論の余地はあるところだろう。


*「暴走族」の前身は、戦後の1950〜60年代にかけて、富裕層を中心にまだ高価だったオートバイを集団で乗り回す若者たちが登場し、マフラーをはずして爆音を響かせながら走行していたことから「カミナリ族」と呼ばれていたことにさかのぼる。当時は高度経済成長期でもあったことから、社会が大きく変容することのストレスを受けたモラトリアム(青年期の延長)の範疇(はんちゅう)であるとして、マスコミや文化人の間では「カミナリ族」をある程度容認する傾向も見られたという話もある。
 しかしながら、72年に富山(とやま)県富山市で暴走族が起こした騒動が全国に広がったことで、関東ではこのころからグループ化が確認され、暴力事件や暴走族同士の抗争事件が頻発(ひんぱつ)するようになったらしい(60年代後半に全国の大学や進学校の高校で吹き荒れたやや意識高い系の学生たちによる学園紛争が70年代初頭に終息したのと、まさに入れ替わるかたちで学力的(汗)には底辺層によるこうした動きが起きていたのだ。若者の社会に対する不満のはけ口の表出の仕方が、時代とともに若者の学歴・社会的階層も含めて変化していったとも見て取れる)。先の『この超獣10,000ホーン?』が描かれたのは、長坂先生が語っていたように、まさにこうした時代背景が存在していたからこそである。


 『80』が放映されていた1980年前後は暴走族の最盛期でもあり、警察庁の80年11月の調査では全国で754グループ、3万8千9百人ものメンバーの数が確認されていた。『3年B組金八先生(PART2)』(80年・TBS)で暴走族のたまり場である「スナックZ」が舞台となったのも、こうした時代背景があったのだ。オデコの両上脇に剃(そ)りこみを入れた前髪を整髪料で固めてヒサシのように突き出してから後ろに流したリーゼントの髪型に、刺繍(ししゅう)を入れた特攻服という彼ら独特のスタイルが、やや不良的な少年少女たちにも「つっぱり」ファッションとして定着したのがこの時代である。
 この項を執筆中である2011年2月現在、飲料「十六茶(じゅうろくちゃ)」のCMで若手女優の新垣結衣(あらがき・ゆい)ちゃんが、ポップにアレンジされた往年の大ヒット曲『ツッパリ High School Rock’n Roll(ハイ・スクール・ロックン・ロール) 登校編』の替え歌を披露している。その原曲である81年1月12日に発売されたシングル・レコードを大ヒット(第44話が放映されたのはまさにこのころ)させたロックバンド・横浜銀蝿(よこはま・ぎんばえ)が大人気となったり、つっぱりファッションを子猫にコスプレさせた「なめ猫」――近年リバイバル人気もあったので、最近の若い人もご存じかと思う――のグッズがバカ売れするなど、こうした不良文化がセルフパロディも含めて立派な若者文化となっていたのだ――今で云うチョイ悪やゴスロリにも少しだけ通じるものがある?――。
 ちなみに、横浜銀蝿が歌番組『ザ・ベストテン』(78〜89年・TBS)に初出演した際に、ボーカルの翔(しょう)は「銀蝿」の由来について「実在する虫じゃなくて、ウルトラマンみたいな架空の存在なんですよ」と語っていた(笑)。彼らの登場以降は「翔」という漢字を子供の名前に付けることも流行したものだ(汗)。


 だが90年代以降、いわゆる「シブヤ系」といったカジュアルなファッション性を重視する少年層の増加や、若者たちが集団への帰属意識をキラう傾向が強まったこともあって、こうした文化は「時代遅れ」な恥ずかしいものであるとして、都心部では次第に廃(すた)れていった。現在では若者離れのためにメンバーの高齢化が進み、40代や50代の暴走族OBが集団で走行して道路交通法違反容疑で逮捕される始末である。もっともメンバーの高齢化については、われわれ特撮評論同人界も「対岸の火事」ではないような気もするが(笑)。


 しかしながら、地方によってはいまだにこうした文化が根強く残っているところもある。筆者が2005年以来、居住する静岡県静岡市では、通勤時に市の中心部を爆音を鳴らして突っ走る暴走族ならぬ「暴走個人」(笑)をよく見かける。また、筆者の出身地である三重県四日市市(みえけん・よっかいちし)は、若者たちの一部にいまだに「つっぱり」ファッションが根づいており、帰省時にこうしたスタイルの若者たちに出くわす度に「田舎(いなか)はこれだから……」と頭をかかえてしまう(笑)。


*その『エース』第36話で暴走族・俊平を演じた役者さん・小沢直平氏は、本話でも暴走族の青年役で出演されていたという情報もある!?(名義は清家栄一) 真偽の程はいかに!?


(了)
(初出・当該ブログ記事〜特撮同人誌『仮面特攻隊2012年号』(2011年12月29日発行)所収『ウルトラマン80』後半再評価・各話評より分載抜粋)


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