假面特攻隊の一寸先は闇!読みにくいブログ(笑)

★★★特撮・アニメ・時代劇・サブカル思想をフォロー!(予定・汗)★★★ ~身辺雑記・小ネタ・ニュース速報の類いはありませんので、悪しからず!(笑)

ウルトラマン80 44話「激ファイト!80VSウルトラセブン」

ファミリー劇場ウルトラマンエイティ』放映記念「全話評」連動連載!)
(……の予定でしたが、準備が間に合わないので遅延します。以後は随時連載で・汗)


ウルトラマン80再評価・全話評! 〜序文
ウルトラマン80#1「ウルトラマン先生」 〜矢的猛先生!
ウルトラマンメビウス#41「思い出の先生」 〜80客演!


ウルトラマン80#45「バルタン星人の限りなきチャレンジ魂」
『ウルトラマン80』全話評 〜全記事見出し一覧

第44話『激ファイト! 80VS(たい)ウルトラセブン

妄想ウルトラセブン登場

(作・吉田耕助 監督・湯浅憲明 特撮監督・神澤信一 放映日・81年2月11日)
(視聴率:関東9.3% 中部14.4% 関西15.3%)


(文・久保達也)
(2011年2月執筆)


 少年サッカーチーム・モンキーズに所属する田島直人は、幼いころに母を亡くし、父は3年前から海外出張、姉の亜矢と二人暮らしである。
 暗く、ひっこみ思案(じあん)だった直人の唯一のよりどころは、M78星雲の光の国の戦士・ウルトラセブンのソフトビニール人形だった。


 ある日、友人からモンキーズへの入部の誘いを受けて断ってしまった直人は、亜矢から「そんな弱い子、ウルトラセブンさんに嫌われる」と云われ、半日セブンの人形とにらめっこをした末、モンキーズへの入部を決意、以来見違えるように明るく、快活な少年に育っていった。


 セブンの人形をポケットに忍ばせ、今日もサッカーの練習に励む直人だが、そこに暴走族の一団が乱入してきた! 直人のライバルであるジャッキーズ所属の多田実(ただ・みのる)の兄・敏彦が率いるサターン党である!


 少年たちをバイクで追いかけ回した末、サターン党のひとりが


 「カワイコちゃんだ!」


 と今度は亜矢を標的に! サターン党の目線で高速で亜矢に迫っていくカメラがなんとも臨場感があるが、亜矢はバイクに接触されて転倒!


直人「ねえちゃんになにするんだ! ちくしょう!」


 直人が蹴り上げたサッカーボールが直撃し、バイクごと転倒するサターン党の一味!


 「あのガキゃ〜!」


 と直人をバイクで追いかけ回す敏彦! ウルトラセブンに助けを請(こ)いながら逃げる直人だが、遂にバイクにひかれてしまう!


 直人をかばう亜矢ごととどめを刺そうとする敏彦だが、その行く手をバイクで阻(はば)むわれらが矢的猛(やまと・たけし)!


 隊員服姿で乗っているため、このバイクは専用車・スカウターS7(エスセブン)同様に、UGMにパトロール用として装備されているものか?


 サターン党は退散し、直人は瀕死(ひんし)の重傷を負って入院することになる。



 病室のベッドに横たわる直人の枕元にある人形に矢的は注目する。


矢的「セブン、ウルトラセブンだ」


 矢的の脳裏に浮かぶウルトラセブンの勇姿が『ウルトラセブンの歌』をバックに、回想場面として流される!
 『ウルトラセブン』(67年)第3話『湖のひみつ』から、宇宙怪獣エレキングの長い尾をふりほどき、角(ツノ)をエメリウム光線で破壊し、宇宙ブーメラン・アイスラッガーで八つ裂きにするウルトラセブン
 第23話『明日を捜せ』から、猛毒怪獣ガブラとくんずほぐれつの大格闘の末、アイスラッガーで首を切断するウルトラセブン!――本編ではこのあとガブラの首が宇宙ゲリラ・シャドー星人に遠隔操作され、セブンの左肩に噛(か)みつき、深手を負いながらもセブンがシャドー星人の円盤を光線で破壊することで難を逃れる場面が続く――
 第5話『消された時間』から、宇宙蝦(えび)人間ヴィラ星人の口からの光線をウルトラバリヤーで阻み、ストップ光線でヴィラ星人の足の動きを封じ、アイスラッガーで首を切断するウルトラセブン


 『ウルトラマンメビウス』(06年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070506/p1)や『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル』(07年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080427/p1)、『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル NEVER ENDING ODYSSEY(ネバー・エンディング・オデッセイ)』(08年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20091230/p1)はもちろんのこと、『ウルトラライブステージ』などのアトラクションショーや、バンダイビジュアル発売の『ウルトラキッズDVD』などの再編集映像ソフト、バラエティ番組へのゲスト出演に至るまで、近年では往年の人気キャラを再登場させる際はオリジナルの効果音をきちんと使用することが慣例になっている。


 若者向けの歌番組『MUSIC JAPAN』(07年〜・NHK)の10年12月12日放送分において、映画『ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦! ベリアル銀河帝国』(10年・松竹。興行的には「大惨敗」であったが、映像レベルや内容的にはウルトラ劇場版史上最大の傑作であると断言したいくらいだ!)の宣伝として、ウルトラ6兄弟にウルトラマンゼロ、カイザーベリアルが登場し、アイドルグループ・AKB48(エーケービー・フォーティーエイト)と「じゃんけん宇宙一決戦」を繰り広げた際も、タロウの声が『ウルトラマンタロウ』(73年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071202/p1)で使用されていた、主人公・東光太郎(ひがし・こうたろう)を演じた篠田三郎(しのだ・さぶろう)の声を加工した声ではなく、映画『ウルトラマン物語(ストーリー)』(84年・松竹。11年3月25日にバンダイビジュアルから発売される8枚組DVD−BOX『ウルトラシリーズ45周年記念 メモリアルムービーコレクション1966−1984』に収録される。『ゼロ THE MOVIE』の原点がここにあるので、作品を知らない若い世代はぜひこの機会に!)以降タロウの声を演じている石丸博也(いしまる・ひろや)の声を加工した声を使用していた以外、全て「本物」が使用されていた。もっともタロウの声も、今となっては石丸版が「本物」であるのかもしれないが……


 ちなみにAKB48の中で個人的に最も好みな小嶋陽菜(こじま・はるな)は、この際ウルトラマンジャックウルトラマンエース、そしてゾフィーにじゃんけんで3連勝した末、遂にウルトラセブンには敗れたのだが、退場する際「やっぱりセブンは強い!」などと云い残していたことから、ウルトラには結構詳しいのであろうか? だとしたら個人的には実に嬉しいものがあるのだが。「ウルトラシリーズ45周年記念映画」にはぜひ彼女を「お姫様」役で出演させてほしい! 閑話休題


 話を戻すが、『80』放映当時はこのあたりが非常にラフであり、同時期に放映されていた『(新)仮面ライダー』(79年)の3クール目に歴代ライダーが頻繁(ひんぱん)にゲスト出演した際も、変身音や必殺技などの効果音がオリジナルとはまったくかけ離れたものが使用されており、当時既に中学生となっていた筆者はこれが実に腹立たしく、「許せねえっ!」と思ったものだった(笑)。
 今回とてまた例外ではなく、エメリウム光線アイスラッガーなどのセブンの必殺技の効果音もオリジナルとはまったく異なるものである。エレキングの声が『タロウ』第28話『怪獣エレキング満月に吼(ほ)える!』に登場した月光怪獣・再生エレキングの声
 ――元々は『帰ってきたウルトラマン』(71年)第1話『怪獣総進撃』と第2話『タッコング大逆襲』に登場したオイル怪獣タッコングの声である。『タロウ』では第29話『ベムスター復活! タロウ絶対絶命!』と第30話『逆襲! 怪獣軍団』の前後編に登場した宇宙大怪獣・改造ベムスターにこの声が第28話の再生エレキングに続いて使用されていた。テキトーやなあ(笑)――
 であるのはまだしも、ヴィラ星人の声なんかは『帰ってきた』第4話『必殺! 流星キック』に登場した古代怪獣キングザウルス三世の声だったりする(ただし不思議と違和感がないことから、むしろ恐竜型であるキングザウルス三世にあんなユルユルとした声を使用した方が誤りだったのでは?・笑)。


 ただ『メビウス』でウルトラ兄弟がゲスト出演した際も、過去作品の映像がウルトラマンエースウルトラマンレオの変身のバンクフィルムを除いて一切使用されなかった
  ――矢的猛を演じる長谷川初範(はせがわ・はつのり)がエイティとしてゲスト出演した第41話『思い出の先生』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070218/p1)でも、「一所懸命」と書かれた黒板の前でにっこりと微笑む矢的と相原京子(あいはら・きょうこ)先生に1年E組の生徒たちや、ドキュメントUGMに「マイナスエネルギー怪獣」として記録された硫酸怪獣ホー、月の輪怪獣クレッセント、羽根怪獣ギコギラー、変形怪獣ズルズラーなどはすべて静止画像で映し出されたのみであった――
 ことを思えば、こんな贅沢(ぜいたく)は云ってはいけないのかもしれない。


 かつてはバンクフィルムの使用は予算削減が理由で行われたものであり、『ウルトラマン』(66年)第13話『オイルSOS』や、『ウルトラセブン』第1話『姿なき挑戦者』、第10話『怪しい隣人』などのコンビナート炎上シーンがウルトラに限らず、そのほかの円谷プロ作品に流用され続けたり――『戦え! マイティジャック』(68年)第12&13話『マイティ号を取り返せ!!』の前後編で、敵組織Qに奪われた万能戦艦マイティ号が東京を襲撃する場面はウルトラからのバンク流用のオンパレードだが、『ウルトラマン』第22話『地上破壊工作』からの流用場面では地底怪獣テレスドンの姿がモロに映っている(笑)――、東映の場合だと『ジャイアントロボ』(67年・NET→現テレビ朝日)第3話『宇宙植物サタンローズ』でサタンローズの触手にからみつかれたガソリンスタンドが爆発炎上する場面が、『巨獣特捜ジャスピオン』(85年・テレビ朝日)の時点でもまだ流用されていたものであった(笑 〜編註:90年代前半の東映作品に至ってもまだ使用されていた・笑)。


 だが現在では映像の権利関係の諸事情により、バンクフィルムの使用はむしろ金がかかるようになってしまっているため、なかなかおいそれとは使用できなくなっているのが実情のようである。
 先述したバンダイビジュアルの『キッズDVD』などでも、使用作品の脚本・監督・特殊技術(特撮監督)などのスタッフがこと細かくクレジットされているのは、つまりはそういうわけである。


 同じく先述の『MUSIC JAPAN』でもオープニング映像に『ウルトラマン』第24話『海底科学基地』からウルトラマン対深海怪獣グビラ、『ウルトラセブン』第41話『水中からの挑戦』からウルトラセブン対カッパ怪獣テペトの場面が使用されていたが(この番組のスタッフは第1期ウルトラ至上主義者か・笑)、やはり画面左下に脚本・監督の名前がクレジットされるなど、近年ではたとえ十数秒程度の使用であってもこれをするのが当然になっている。


 80年代によく放送されていた懐かしのヒーローを懐古する番組ではこうしたことは一切行われてはいなかったものだし、近年そうした番組がほとんど放送されないのはそんな事情もあるのだろうか(もっとも多チャンネル化やDVDの発売で昔の番組を手軽に楽しめるようなご時世では、そんなものに対する需要もあまりないのかもしれないが)。
 『月光仮面』(58年・宣広社 KRテレビ→現・TBS)の原作者・川内康範(かわうち・こうはん)が亡くなった際でさえ、それを報じるワイドショーで作品の名場面が一切流されなかったりするのは個人的には実に残念に思うのだが、日本ではなかなか根づかなかった「著作権」に対する意識というものが、近年ようやく芽生(めば)えてきた証(あかし)ではないかという思いもある。


 そんなわけで、たとえ効果音がデタラメであろうが、こうした名場面がテレビ番組で比較的自由に使用できた時代の貴重な記録でもある。


 ちなみに『タロウ』第40話『ウルトラ兄弟を超えてゆけ!』において、「35大怪獣・宇宙人登場!」としてウルトラ兄弟の決戦名場面が流された(当時既に年長に達していたファンからは「ハッタリだ!」ととらえた向きもあったようだが、小学1年生だった筆者にとってはこれでも凄くうれしかったものだ!)際も、使用されたバンクフィルムの効果音はほとんどデタラメ(笑)であったにとどまらず、『ウルトラマンA(エース)』(72年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070430/p1)の主題歌なんかはオリジナルの東芝レコード版ではなく、日本コロムビアのカヴァー・バージョンが使用されていたりするが(笑)、『メビウス』ではウルトラ兄弟のゲスト回でさえ主題歌すら使用されず、アレンジしたBGMが流されていたものである。


 これもテレビ番組ではともかく、映像ソフト化を前提としている近年の作品の場合、既製の歌曲を使用する場合は日本音楽著作権協会JASRACジャスラック)にかなり高額な金を払わなければならないために、低予算の『メビウス』では使用できなかったと思われるのだ。それを思えばカヴァーだなんだと贅沢を云うべきではないのであろうが。
 だから今回『ウルトラセブンの歌』が本編で数回流されるのも、実にありがたいものに思えるのである。


 時代の貴重な記録といえば、直人が大事にしているセブンの人形は『キングザウルスシリーズ』のブランド名で78年のゴールデンウィークの時期に、ポピー(83年にバンダイに吸収合併)から発売されたものである。
 現在バンダイから発売されている『ウルトラヒーローシリーズ』とほぼ同サイズであり、当時の価格は380円。このシリーズ最大の特徴は足の裏に当時の怪獣図鑑などでよく掲載されていた「足型」がモールドされていることであり、封入されていた「足型シール」を20枚集めて送ると『ウルトラマン怪獣大図鑑』なるノベルティがもらえたことがコレクション性を高め、第3次怪獣ブームの主力商品となり得ていた。


 ちなみに初期発売の初代マン・セブン・ウルトラマンジャック(当時の商品名は「帰ってきたウルトラマン」)は目とカラータイマーが塩化ビニール製の別パーツ仕様になっていたが、外れやすいという難点から2期発売分からは通常の仕様になっている。今回映像で確認する限り、背面は整形色の赤のままでほとんどまともに塗装されていないのだが(笑)、こんな仕様でもバカ売れしたくらいに第3次怪獣ブームの熱気はすさまじいものがあったのである!
 そういや『キングザウルスシリーズ』のテレビコマーシャルは『ウルトラマン』第2話『侵略者を撃て』のウルトラマン対宇宙忍者バルタン星人、『ウルトラセブン』第15話『ウルトラ警備隊西へ(後編)』のウルトラセブン対宇宙ロボット・キングジョー、『ゴジラ対メカゴジラ』(74年)の決戦場面に(『怪獣大戦争』(65年)のキングギドラゴジラの場面を使用したバージョンもあったような)、『帰ってきたウルトラマン』の明るく勇ましいおなじみのメイン戦闘楽曲をBGMにして、『ウルトラファイト』(70年・『マン』『セブン』の決戦名場面や、アトラクション用の着ぐるみ対決の新撮分で構成された、平日夕方に放送された帯番組)風の実況を加えたものであったが、こうしたものでさえ現在では製作困難なのかもしれないなあ……



 真上から「UGM」という文字に見えるように設計されたUGM基地の建物(このセンスは素晴らしいものがあるが、この全景カットを見るのもかなり久しぶり)に戻り、直人のひきにげ事件を徹底的に捜査するべきだと主張する矢的を、警察に任せておけばいいと軽くあしらうオオヤマキャップであったが……


オオヤマ「おい、矢的。だいぶ疲れているようだな。特別に休暇を与える。思う存分手足を伸ばしてこい」


 オオヤマキャップの真意をくみとった矢的は元気に作戦室を飛び出していく!
 これは往年の名作刑事ドラマ『太陽にほえろ!』(72〜86年・日本テレビ)なんかでもよく見られたシチュエーションだが、七曲署(ななまがりしょ)の管轄(かんかつ)外で起きた事件の捜査を力強く主張した刑事に対し、故・石原裕次郎(いしはら・ゆうじろう)演じるボス=藤堂(とうどう)係長が休暇を与え、個人的に捜査することに暗黙の了解を与えるといった、なんとも温情が感じられる配慮なのである!


 通路を駆け出していく矢的に、殉職した城野(じょうの)エミ隊員に代わり、「準隊員」(書籍ではそう紹介されていることが多いが、本編では具体的には語られてはいない)として通信係を担当する星涼子(ほし・りょうこ)が、テレパシーで語りかける!


涼子「猛」
矢的「ユリアン、君はまたテレパシーを使う。もし宇宙人であることがわかったらどうするんだ」
涼子「でも、ひとりで大丈夫?」
矢的「大丈夫だ。僕は地球を第二の故郷だと思ってる。地球人以上の能力は、地球人として暮らしていくためには不必要なんだ。ユリアン、もし君が本気で地球に住む気なら、地球人と同じ暮らしをすることだ。地球人といっしょに走り、笑い、泣く。それで初めてわかりあえるんだ」
涼子「わかったわ。そう努力してみる」


 『ウルトラマンレオ』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090405/p1)の主人公・おおとりゲン=ウルトラマンレオもまた、故郷の獅子座・L77星をサーベル暴君マグマ星人に滅ぼされ、地球を第二の故郷であると語っていたものであるが、矢的のこの発言はオリジナルビデオ作品『ウルトラ銀河伝説外伝 ウルトラマンゼロVSダークロプスゼロ STAGE I(ステージ・ワン) 衝突する宇宙』および『STAGE II(ステージ・ツー) ゼロの決死圏』(10年・バンダイビジュアル)のおかひでき監督が語っていた「砂にまみれ、汗にまみれたウルトラマン像」をまさに象徴するものであり、地球人のことをよく知らない涼子=ユリアンに語って聞かせるには実に説得力あふれるものとなり得ているのである!


 だがここで、イトウチーフが涼子の肩をポン! と叩(たた)く。


イトウ「なにをひとりでもの想いにふけっている。テレパシーで通信でもしているのか?」
涼子「いえ、なんでもないんです」


 って、バレバレやないか!(笑)
 こんな調子で頻繁にテレパシーのやりとりをしていたら、仮にそれが精神波などではなく物理的な電波だとすれば、たとえ微弱な電波でも感知してしまうUGMのレーダーのことだ。矢的と涼子の関係が怪しまれるに決まっている。矢的はそれを警戒したのである。
 だが、この時点でイトウチーフは既に気づいてたみたいだなあ……



 直人に重傷を負わせた敏彦がバイクで帰宅するや、弟の実がサッカーボールをぶつけて叫ぶ!


実「にいちゃんだな! モンキーズの練習になぐりこんだ暴走族は! ちくしょう!」


 敏彦としては、実が所属するジャッキーズを勝たせてやろうという想いからの行動であったのだが、とんだ「弟想い」となってしまったのである。


実「にいちゃん田島をはねたろ! 入院している田島のところにあやまりに行け! くそっ、こんなオートバイなんか!」


 敏彦のバイクの前輪を蹴りまくる実。


実「田島は僕のライバルだったんだ。その田島をケガさせたにいちゃんなんか大キライだ! 顔も見たくないよ!」


 結果的にはおまえのためになったなどと主張する敏彦だが……


実「にいちゃんのおかげでぼくがどんな想いしてるのか知ってんのか! 暴走族の弟だって……」


 頭にきてバイクで走り去る敏彦に、


実「バカヤロ〜! にいちゃんのバカヤロ〜!」


 右腕で涙を拭う実。
 角刈りで目の細い、やや小太りな印象の実を演じる子役俳優だが、実くらいの子供がいても不思議ではない年齢に達したせいか、彼の演技はなんとも同情を誘う、味わい深い名演に感じられるのである!



 ガソリンスタンドで店員たちにサターン党の居場所をたずねる矢的。紺のバイクスーツに黒の手袋とブーツ、首には白いマフラー
 ――『A』の主人公・北斗星司(ほくと・せいじ)や、『タロウ』の東光太郎を彷彿(ほうふつ)とさせる!――
 となんともスタイリッシュだが、そこに深い剃(そ)りこみの入ったパンチパーマにサングラスをかけた、なんともガラの悪そうな(笑)小太りの男がミニバイクで給油にやってきた。


矢的「すいません、サターン党の連中どこでたむろしてるか知ってますか?」
ライダーA(シナリオ表記より)「ああ、あのピーマン野郎か」
矢的「ピーマン?」
ライダーA「中身のない奴のことさ。知らねえな」


 それを近くで見ていた敏彦率いるサターン党!


敏彦「やっぱりアイツか! オレたちのことをかぎまわってやがったのは!」


 バイクで疾走する矢的をまちぶせしていた敏彦は、


敏彦「おお来たぞ、おい、行けホラ、行け行け!」


 とサターン党に矢的を襲撃させる!


 数台のバイクで走りながら、先端に白い旗がついた長い竹をかざし、矢的の行く手を阻もうとするサターン党だが、矢的はそれを華麗にバイクで跳び越えた!(当然吹き替えではあるのだが)。


 だがその行く手を横切ったバイクのために矢的は転倒! 次々にバイクで矢的に当て身をくらわせるサターン党だが、この場面では矢的を演じる長谷川初範が吹き替えなしでまさに体当り演技を披露している!


 倒れた矢的を旗で突っつき回す敏彦だが、そこに珍しくサイレン音をなびかせてスカウターS7が走ってきた! 退散するサターン党。



 降りてきた涼子から直人の容体が悪化したことを聞き、病院に急行する矢的。「面会謝絶」の札がかかった病室の前で泣き崩れる亜矢。
 病床で苦しむ直人の枕元に置かれたウルトラセブンの人形に、直人の心の叫びがこだまする!


直人「ウルトラセブン! ぼくを守って! セブン! ウルトラセブン!」


 夢の中で、夜、サターン党の一味に囲まれる直人。


直人「ウルトラセブン! 僕に力を貸して! セブン!」


 直人がセブンの人形を高々と掲(かか)げるや、直人の全身に青いオーラが走り、そのままウルトラセブンの姿へと巨大化する!
 サターン党を手前に、あおりで直人がセブンの姿に巨大化する過程を合成しているのも秀逸だが、ここでセブンの変身音(これだけは本物!)、さらには『ウルトラセブン』のオープニングタイトルのコーダ部分を登場ブリッジ曲として用いるセンスは感涙ものである!


直人「ウルトラセブン! 聞いて! お願い! ぼくの命をあげるよ! だから悪い暴走族をやっつけて!」


 病床の直人の目から一筋の涙がこぼれ、枕元のセブンの人形にしたたり落ちる!(その瞬間、セブンの人形にいくつか星がきらめく作画合成がなんとも芸コマ!)


 『ウルトラセブンの歌』をバックに、セブンの人形がむっくりと起き上がり、直人の願いをかなえるために外へ飛び出していく!
 この場面、セブンの人形が病室の壁を通り抜けて一旦姿を消し、その壁にある窓から再び夜空を飛行する姿が映しだされるといった、なんとも凝(こ)った演出である!
 普通の感覚なら窓をそのまま通り抜けて外に出るといった感じで描かれるはずであり、これまた職人芸であるとしかいいようがない!


 夜の大都会に巨大化して降り立つウルトラセブン


 たとえて云えば『セブン』第18話『空間X脱出』
 ――68年7月21日に東映が配給した『東映まんがパレード』で劇場公開されている。音波怪人ベル星人が張りめぐらした疑似空間に迷いこんだウルトラ警備隊のアマギ隊員とソガ隊員が、宇宙蜘蛛(ぐも)グモンガや宇宙植物、吸血ダニや底なし沼に次々に襲われる「秘境探検もの」であり、セブンとベル星人のバトルもモロに「怪獣プロレス」と、年少の子供でもストレートに楽しめる作品であり、これをセレクトしたのが東映ならば東映ってやっぱ「商売上手」だなあ(笑)――
 において、ベル星人の怪音波に苦しめられた主人公・モロボシダンが倒れこんでテレポーテーションするや、別の場所に頭部から次第にセブンの姿となって現れる過程が描かれていたように描写されている
 ――このテレポート変身の場面は『(新)コメットさん』(78年・国際放映 TBS)第17話『私の親友ウルトラマン』にセブンがゲスト出演した際、コメットさんの前にセブンが出現する場面に流用されていた――。


 このセブンの登場場面、手前に池、その奥に幾多の建造物を配置し、さらにその背後にセブンが現れるといった演出であり、セブンの巨大感と画面の奥行きが絶妙に感じられる名演出である!



敏彦「弟のヤツなんにもわかっちゃいねえ! あいつのためにやったのに怒りやがって! くそ〜こうなったらヤケクソだ! 徹底的にやったるぞ!」


 夜の大都会を暴れ回るサターン党!
 バイクを疾走させながら叫ぶ敏彦!


敏彦「オレたちは怪獣だ! 人間の体を持った怪獣なんだ! さからう奴は容赦(ようしゃ)しねえぜ!」


 この敏彦の叫びに、筆者は『80』第1話『ウルトラマン先生』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100502/p1)において、地震の調査をしていた矢的がオオヤマキャップと初対面した際に語っていた力強い主張を思い出さずにはいられない!


矢的「見て下さい、この子供たちを。このまま育てば怪獣になってしまうような子供もいるんです! 僕は怪獣の根本をたたきつぶしたいんです! 僕は怪獣と戦うのと同じような気持ちで先生になったんです!」


 「学校編」があのまま続けば、暴走族に憧(あこが)れる中学生をゲスト主役にした作品が生み出された可能性だってある。直人をはねたサターン党の居場所を突きとめ、直人に謝罪させようとする矢的の姿は、「地球防衛」を任務とするUGM隊員としては明らかに逸脱(いつだつ)してはいるものの、桜ヶ岡中学校の教師としての、職務の延長線上にあるとするなら、十分考えられる行為ではないのか?


 便宜上は「ユリアン」編として分類されているこの第44話ではあるが、マイナスエネルギーに満ちあふれたそのテイストはまさに「学校編」を彷彿とさせるものであり、「原点回帰」の趣も感じられるのである!


 そして、このマイナスの精神エネルギーが怪獣を招来するという概念は、平成のウルトラシリーズにも継承されていく。特撮評論同人ライターの仙田冷氏は90年代後半にこう語っている。



 「『ウルトラマン80(エイティ)』(80年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971121/p1)で「怪獣は人間の心の闇が作り出すものだ」というテーゼが提示された事で、そういう設定の怪獣を出しやすくなったのは事実だろう
 (特に『80』44話に登場した妄想ウルトラセブンは、まぎれもなく『ウルトラマンティガ』(96年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961201/p1)44話「闇を継ぐもの」のイーヴィルティガと同類の「闇の力によって生まれたウルトラマン」だ。単に素体となったものが、人形か石像かというだけの違いにすぎない)。」
 (特撮同人誌『仮面特攻隊99年号』(98年12月29日発行)「ウルトラマンダイナ」後半合評1(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971202/p1)より抜粋)



 そんな敏彦の前に突然姿を現したのは……


敏彦「ウルトラセブンだ!」


 敏彦の目線のローアングルで地上に降りたセブンの巨大な足元をとらえ、頭へとズームアップしていくカットが臨場感にあふれてよい!


 セブン、サターン党に向かって進撃を開始する!
 画面手前の電線をスパークさせ、進んでくる描写がやはり画面の奥行きが感じられる!


 セブン、ひざまずいて巨大な手を画面手前に伸ばす! やはりサターン党目線の超ローアングル!
 逃げ遅れたサターン党のひとりをバイクごとつかみあげるセブン!
 セブンの目線で俯瞰(ふかん)してとらえた夜間ロケのサターン党に、セブンの巨大な手が覆(おお)いかぶさる形で合成されているのだが、シンプルな手法ながらもなかなかの大迫力!


 つかみあげたサターン党をにらみつけるセブンの上半身、助けを請うサターン党のアップ、それを放り投げるセブンの全身という、連続性を感じさせるカットの編集の妙が絶品!


 しかも、バイクごと放り投げられたサターン党が、宙でバイクから落ちていく様子がアップでとらえられているのだが、これがまた実にいい感じで(笑)宙でバイクのミニチュアからタイミングよく離れていくのである! サターン党の人形も実にリアルな出来だ!


 セブンに放り投げられたバイクが地上に落下、停めてあった車の列を炎上させる!
 このカットも手前にガードレールを配置し、まさに地上の人間の目線でとらえた超ローアングル!


 林立するビル群(その下には街灯が並ぶ!)の奥にあおりでとらえたセブンの全身、その手前を逃げるサターン党のバイクのミニチュアが、なんとアクロバット走行のように、画面手前でジャンプを披露する!


敏彦「くそ〜っ、住宅の密集地帯や路地を走るんだ! ビルや民家を壊せば、ウルトラセブンは犯罪者だ! UGMが始末してくれるぜ!」


 なんとも悪知恵を働かせる敏彦だが、その思惑(おもわく)どおりにセブンは建造物を次々に破壊し、車を踏みつぶし、あくまでサターン党を追い続ける!


 駐車場を手前に配置し、両側にビル群、奥からセブンが足元の電線をスパークさせ、手前に進撃するという、なんとも奥行きと立体感が感じられる画面構成も絶品だが、まさに直人の怒りを体現するかのように、おおげさに全身を震(ふる)わせ、両手をあげてサターン党につかみかかろうと進撃する、セブンのスーツアクター・渥美博の熱演が光る!
 セブンの巨大な足に踏みつぶされて炎上する車の列、セブンの足元でヘシ折れる街灯と、ロングとアップを巧みに使いわけるカメラワークもその迫力を倍増させる!



警報の声「ウルトラセブンが暴れています! 民家を踏みつぶし、ビルを壊し、被害は甚大(じんだい)です! UGM、出動して下さい!
UGM、UGM、速(すみ)やかに出動して下さい!」


 この声をバックに、作戦室の警報ランプが赤く点滅するのに続いて、オオヤマキャップ、イトウチーフ、フジモリ、イケダ、矢的、涼子と、緊張が走るUGMのメンバーを順にアップで映していく演出が緊迫感にあふれ、これまた絶品!


矢的「キャップ、ウルトラセブンが悪いことをするはずがありません! 僕が責任を持ちます! 様子を見に行かせて下さい!」
イケダ「そうですよ! ウルトラセブンが暴れるなんて、そんなバカな!」


警報の声「UGM、UGM、速やかに出動して下さい!」


オオヤマ「出動だ!」
一同「え〜っ!?」
オオヤマ「ただし警戒のためだ。俺もウルトラセブンを信じている。なぜウルトラセブンがこんな行動を起こしたのか、よく見極めるんだ」


 矢的と涼子がシルバーガル、フジモリがスカイハイヤー、そしてイケダがなんと、本来イトウチーフの専用機であるエースフライヤーで出動!


イケダ「あ〜、ホントだ〜。ウルトラセブンが暴れている!」


 イケダの目線で俯瞰した夜のビル街のあまりに豪華なミニチュアセットを、画面左手から右手にセブンが進撃するさまは空間の広がりを感じさせ、実際にはそれほど広くはないであろうスタジオを広く見せる効果を発揮している!


涼子「あれはセブンじゃないわ!」


 手前にビルを配置、その背後のセブンをあおりでとらえ、ビルを破壊するや、セブンがそれをまたいで画面手前に進撃する場面でさえ、足元の手前にちゃんと街灯が配置されているなど、実に細かなところまで設計が行き届いた都市破壊演出が臨場感満点!


フジモリ「おかしい」
イケダ「オレたちの知ってるセブンじゃないぞ!」


 セブンの背後から俯瞰し、手前にセブンの後ろ姿、その奥をサターン党のバイクがミニチュアセットの道路を画面奥へと逃げていく場面、4台のバイクのミニチュアがきれいに並んで自走しているさまは感動すらおぼえる!
 手前に駐車場(とにかくセブン大暴れの場面は常に手前に何かを配置し、それに向かってセブンが進撃してくるという、画面に立体感と奥行きが感じられる演出なのだ!)、画面奥に林立するビル群の前でセブンが暴れ、右手からシルバーガルがセブンに向かって飛行する!


涼子「セブンの脳波を探(さぐ)ってみるわ」


 目を閉じ、ウルトラ星人ならではの超能力を発揮する涼子!


 その間にもセブンの進撃はやまない! 画面手前に配置されたビルをあおりでとらえたセブンが組んだ両手を降りおろして破壊するや、爆風と炎が窓から吹き上がるビルをアップでとらえるカット割りが最高!


 セブンから必死で逃げるサターン党一味の本編カットが何度か挿入されるが、全てセブンの目線で俯瞰した、画面奥へとバイクを走行させる後ろ姿で統一されており、本編と特撮の華麗な連係プレーも見事だ!
 さらには炎上するビルを手前のフェンスのミニチュア越しに撮らえるといった、あまりに芸コマなカットまで!
 ここでも左手に街灯が配置されてる! これだけ名場面が続くとさすがに泣けてくるわ!


 セブン、遂にシルバーガルをつかみあげる!


矢的「セブン、何をする!」
涼子「ちがう! このセブンはウルトラ星人じゃない!」


 ウルトラ一族も“ウルトラ星”の“星人”であるからには、他の宇宙人とも共通する一般名詞として“ウルトラ星人”という呼称があってもよいし合理的でもあるだろう。小学生の怪獣博士タイプの子供が知的な喜びを覚えそうな呼称だ(笑)。
 ちなみに『帰ってきたウルトラマン』第51話(最終回)『ウルトラ5つの誓い』でもウルトラ兄弟抹殺作戦をたくらむ触覚宇宙人バット星人が、ウルトラ兄弟のことを“ウルトラ星人”と呼称しているように聞こえるシーンが1箇所あったと記憶する。


 セブン、シルバーガルを放り投げる!
 コクピットが開き、矢的と涼子のミニチュア人形が脱出!


 シルバーガルが墜落していく場面も、画面手前に民家の屋根、その右手奥にアパート、さらにその奥にマンションを配置し、それに向かって左手からシルバーガルが次第に降下していき、画面奥で炎があがるや、画面上から二つのパラシュートがアパートとマンションの間に降下し、民家の屋根の奥に消えていくという細やかさである! 常に比較対象物を配置することがリアル感を醸(かも)し出しているのだ!



 地上を駆けてくる矢的と涼子!
 あまりに多くの建造物が配置されたセットの中、画面左手奥から右手前に進撃するセブンを、画面中央に配置された鉄塔ごしに、矢的と涼子が見上げるような目線でカメラが次第にスームアップしていくのが実に臨場感あふれる演出である!


涼子「あのセブンには実体がないわ! 怒りのオーラが、全身から立ちのぼっている!」
矢的「敵の正体が何者でも、これ以上暴れさすわけにはいかん!」


 画面左右にビルを配置、あおりでとらえたセブンの上半身の周囲を、炎を形どったような青いオーラがほと走る!


矢的「エイティ!」


 矢的、遂にウルトラマンエイティに変身!
 ローアングルで画面右手にエイティの両足を背後からとらえ、左手奥にセブンを配置と、決戦に入っても奥行きのある画面構成は続く!


 エイティ宙を高々とジャンプ!
 そのままセブンに飛びかかっていくさまを真横から撮らえているが、セブンにのしかかった瞬間、またもや超ローアングルで画面手前に駐車場を配置し、両者が組みついたまま、画面奥へと大地を転がっていくという迫力ある演出!


 セブン、右足でエイティに蹴りをかけるや、エイティ、その下から回りこんでセブンを投げる!
 着地したセブンがエイティを投げる!
 投げられて立ち上がったエイティの背後の股の間から(笑)、奥でこちらにファイティングポーズを決めるセブンが見えているという、矢島信男特撮監督が『タロウ』『レオ』でよく用いた演出が見られるが、今回はもうひとひねりしてエイティの股の間に民家の屋根を配置し、さらにその奥にセブンの姿を映すという応用を効かせているのがスゴい!


 エイティ、セブンに向かってキックをかますが、セブンは高々とジャンプ、宙を1回転してこれをかわす!
 両者の華麗なアクロバットの演技もさることながら、画面やや左よりの中央手前に鉄塔を配置し、その上を両者が宙ですれ違うさまがまたいいのだ! もちろん画面下部にはビル群が並ぶ! 今回の特撮パートの一番の名場面かも!?


 セブン、画面奥へと宙を1回転してエイティに突撃! 体勢を低くしてこれをかわすエイティ!
 エイティ、セブンの右足回し蹴りを体勢を低くしてかわすや、それを両腕でつかんで投げ飛ばす!
 この間、画面右手前に置かれた黄色のコンクリートミキサー車が妙に気になるが(笑)、のちにセブンが見せる行動への伏線か?


 投げられたセブン、画面右手前のブロック屏の奥を転がって大地にたたきつけられるが、この際も画面左手前の電柱に張られた電線がセブンの頭に接触してスパーク、しかもブロック屏の手前に配置された電柱がその衝撃で揺れる様子まで撮らえられている!


 セブン、ビルを持ち上げるや(足元の電線がいちいちスパークするのも芸コマ!)、エイティの頭に凶器攻撃!
 セブン、ひざまづいたエイティを抱えて投げ飛ばす!


 再度投げようとするセブンから後ろに宙返りして逃れるエイティ!
 だが再度セブンにつかまれ、ビルに放り投げられるエイティ!


 画面左手前に背後から撮らえたエイティに向かい、右奥から迫るセブンの手前を、画面右からスカイハイヤーとエースフライヤーがそれを遮(さえぎ)るように高速飛行! どこまでも立体感のある画面構成!


 UGMの援護を受けたエイティ、高々とジャンプしてセブンにキック!
 ここで再び超ローアングル、工事現場に置かれたクレーン車などの重機を手前にセブンの巨大な足が迫り、続いてセブンがコンクリートミキサー車を蹴り上げる全身カット!
 セブン、エイティに向かって次々に重機を蹴り上げるが、このキックフォームがまた実に美しいのだ!


エイティ「あのキックフォームは確か……」


 回想場面。亜矢がサターン党のバイクに接触されて転倒するのを見た直人は……


直人「ねえちゃんに何するんだ! ちくしょう!」


 直人が蹴り上げたサッカーボールをくらい、転倒するサターン党。


エイティ「まさか直人くんの、ウルトラセブンの人形が!? 実体のない怒りのオーラ……そうか、直人くんの生き霊(りょう)が! ユリアン、直人くんの枕元にセブンの人形があるかどうか調べてほしい! 早く!」
涼子「了解!」


 この会話の間にも、画面左手奥のエイティに向かって右手前から迫るセブンの背後(セブンが踏んだ車が画面手前で炎上!)、さらに画面左手のエイティの背後から右手奥のセブンに向かい、エイティの目線でカメラがズームアップと、今回はあまりにも凝りすぎだぞ!
 (嬉しい悲鳴とはまさにこのことだ! いちいち書かねばならんだろうが!・笑)


 セブンさらに重機を蹴り上げる!
 エイティ、ジャンプしてこれを逃れるが、この場面もまた、画面左斜め上から右斜め下に電線が張られており、ジャンプして画面上方に姿を消すエイティが背後から撮られ、奥のセブンが蹴り上げた重機が画面には映らない電線の上方に激突し、その衝撃で電線が揺れる様子までもがハッキリ撮らえられているのだ!
 ホンマにもうええ加減にせえや!(笑)


敏彦「エイティが逃げた! オレたちはセブンに殺されるぞ!」


 やはりセブン目線で俯瞰し、画面奥へと逃げていくサターン党!


フジモリ「エイティが逃げた!」
イケダ「セブン、お願いだ! もう暴れるのをやめてくれ! あなたは正義の味方でしょ!?」


 さすがのイケダ隊員も、今回ばかりはお笑いは遠慮か?(笑)
 ちなみにファミリー劇場『ウルトラ情報局』2010年12月号にゲスト出演したイケダ隊員こと岡元八郎(当時・岡本達哉)氏は、あのセリフは子供のころに観ていた『ウルトラセブン』に対する本心もこもった演技であったと述懐している。まあファンサービス・リップサービスかもしれないが、昭和30年生まれの岡元氏は『マン』『セブン』を小学校高学年でギリギリ視聴していた世代でもある。


 イケダの目線で俯瞰した夜の大都会のミニチュアセットの中を、画面左手から右手へと進撃するセブン! 画面右手上空にはフジモリが搭乗するスカイハイヤーが飛行! なんて豪華な大破壊絵巻なんだ!



 直人の病室の前で眠りこける亜矢を尻目に、「面会謝絶」でカギのかかったドアを念動力(?)で開け、病室に入る涼子、ってセブンが暴れる現場からテレポーテーションした方が早いんじゃないのか?(笑)


涼子「やっぱりセブンの人形がないわ」


 病床でうなされている直人。


直人「エイティ、なぜ邪魔をするんだ……ぼくは、ぼくのセブンといっしょに、悪い奴らをやっつけているのに……エイティは正義の味方じゃないか……」


 自らを「人間の体を持った怪獣」だと叫んでいた敏彦もそうだが、それをやっつけることが「正義」だと信じる直人もまた、マイナスエネルギーを発動させ、セブンの人形を意のままに動かしていたのである!


涼子「エイティ、聞こえる?」
エイティ「ユリアンか?」
涼子「今暴れているセブンは、直人くんのセブンの人形に、直人くんの生き霊が宿(やど)ったものよ」
エイティ「了解!」


 涼子、テレポーテーションで病室から姿を消す、ってだから入るときもそうすればよかったやないか(笑)。



 涼子からセブンの正体を聞き、再びセブンに挑むエイティ!


 ここで荘厳(そうごん)に響き渡るのが『ザ★ウルトラマン』(79年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110430/p1)の挿入歌『怪獣レクイエム』のインストゥルメンタルである!
 第12話『怪獣とピグだけの不思議な会話』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090719/p1)において、同居怪獣オプトの怪獣3兄弟の兄・チョウとジンを殺され、凶暴化してウルトラマン・ジョーニアスに襲いかかる弟怪獣のサンを描写するのに初使用されて以来、第16話『生きていた幻の鳥』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090816/p1)で瀕死の鳥が電気ショック治療の副作用が原因で巨大化した古代怪鳥キングモア、第40話『怪獣を連れた少年』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100212/p1)でヘラー軍のロイガーにだまされたオペルニクス星人フェデリコが暴れさせたペット怪獣オロラーンなど、哀れな宿命を背負った怪獣たちを描写する際に定番で使用された名曲である!


 画面両側に奥へと居並ぶビル群と街灯の群れ(ホントに今回はこれが目立つ!)の中央を手前に向かって進撃するセブンの前に、画面上部からエイティが降りて立ちはだかり、その行く手を阻む!


 セブン、両手の指先を額(ひたい)のビームランプに当て、エメリウム光線を発射!
 『ウルトラセブン』ではエメリウム光線の色は白と緑が確認されているが、今回は青である! これは登場時にセブンの全身を覆っていた怒りのオーラの色と共通しており、イメージの統一が素晴らしい!


 エイティこれを側転でかわすが、この場面も画面左手前に民家の屋根(その上には物干し台!)、その上にセブンの脇から下の背面を映し、エメリウム光線は画面中央よりやや左寄りの上部から斜め右下に流れていき、それをエイティがかわして画面左へと側転していく!
 エイティの背後はやはりビルが並ぶ! どこまでも立体感のある画面構成だ!


 エイティ、紫色の光の矢、ウルトラダブルアローを両手指先から放つが、セブンはこれを宙返りしてかわす! この場面も画面下に建造物が並び、その上空をセブンが華麗に舞うのである!


 体育館風の丸屋根の建造物を画面左手前にして、華麗にジャンプしてセブンに突撃をかけるエイティ!
 民家の屋根を画面中央手前にして、バック転の連続で画面奥へとかわすセブン! 両スーツアクターのまさに超人的なアクションもさることながら、常に比較対象物を配置することが一層迫力を増しているのである!


 エイティ、左足で足払いをかけ、セブンは宙でひっくり返り、大地にたたきつけられる!
 エイティ、今度は右足で回し蹴り!
 大地にたたきつけられたセブン、低い姿勢のまま、右腕を前方に突き出し、左肘(ひじ)を曲げて左手をこぶしにした挑戦的なポーズ!(セブンというよりタロウのファイティングポーズに近い・笑) これまた超ローアングルで手前にクレーン車の先端を配置してたりして……


エイティ「直人くん、君は君以外の、ウルトラセブンを慕う少年たちの心を傷つけるつもりか! ウルトラセブンは、平和の守り神ではないのか!?」


 セブンの後ろ姿を画面左手前に、体育館を右手前に、その奥に立つエイティの顔にカメラがズームアップ、続いて民家の屋根を画面右手前、その上にエイティの両足を背後から、左手奥に立つセブンの顔にズームアップと、なんとも変幻自在なカメラワークがセブン、いや直人を説得するエイティにそれこそ説得力を与えてくれる!


 セブン、直人の揺れる心を体現するかのように、うつ向き加減で両手のこぶしをじっと見つめる。これ以上ウルトラセブンの名誉を汚(けが)してもよいのかと……スーツアクター、芸細(こま)かすぎ!


 エイティ、胸のカラータイマーから白色の波状光線と、それを覆うように連続して青いリングを発射する(メチャメチャきれいやわコレ!)タイマーショットをセブンに放った!


 セブンの全身が青いオーラに包まれる!


直人「わぁ〜っ! わぁ〜っ!」


 病床で絶叫する直人!


 セブン、両腕を高々と掲げたまま、大地にひっくり返る! この場面でも手前には民家の屋根が(笑)。



 スカウターS7が現場に到着。降りてきたイトウチーフと涼子に、もう暴走族はやめると泣きつく敏彦らサターン党の一味。
 画面手前に駐車場、その奥に横たわるセブン、さらにその奥にエイティと、なんとも奥行きのある画面構成(左にはマンション、右には体育館!)の中、エイティはセブンを抱え、夜空の彼方に去っていく。


 病床でにっこりと微笑(ほほえ)む直人……



 すっかり回復した直人がキャプテンを務めるモンキーズと、実がキャプテンを務めるジャッキーズの、サッカー決勝戦が無事開催される。


実「田島くん、にいちゃんのこと……」
直人「多田くん、今日の決勝戦、力いっぱいがんばろう!」
実「ありがとう、田島くん!」


 固い握手を交わす直人と実。
 観戦に訪れている矢的と涼子。矢的は「一所懸命」を象徴するような熱血感あふれる赤いブルゾン、涼子は白のタートルネックのセーターに水色のブルゾンを着用と、まさにキャラクターのイメージにぴったりのコーディネイトであるのが見事だ!


矢的「よかったなぁ、元気になって」
亜矢「ありがとうございます。決勝戦にはどうしても出るんだって、気力でがんばったそうです」
涼子「まぁ、気力でケガを治しちゃうなんて、まるでウルトラマンみたいね」


 思わず涼子をにらんでしまう矢的に、いたずらっぽく笑う涼子の表情がカワイイ!


亜矢「直人ったら夢の中でウルトラセブンになって、悪い暴走族をやっつけたそうです」
矢的「そう、そうかもしれないなあ。(以降、心の声)いや、きっとそうだよ直人くん。君のテレパシーが、セブンの人形を魂あるもののように動かしたんだ」
涼子「猛」
矢的「また……ユリアン、テレパシーを使っちゃだめだよ」


 ラストのオチでこれを再度持ってくるとは実にウマい!


涼子「だって、亜矢さんととっても楽しそうなんだもの」


 またいたずらっぽく笑(え)みを浮かべる涼子。


矢的「そんな……」


 困惑する矢的だが、直人が見事にシュートを決めるや、亜矢と抱き合って喜ぶ矢的! 実に面白くなさそうにひとりむくれる涼子(笑)。



――第44話『激ファイト! 80VSウルトラセブン』では、神澤さんとはその後も縁が深いウルトラセブンが登場しました。このときは暴走族のバイクのミニチュアをセブンが追いかけたり、家を持ち上げてぶん投げるっていうのも、インパクトにあったのですが。
 「なんか面白いことないかなっていうので、家を持ち上げて投げたり、ということもやっているんですよ。子供の話だったし、一応テーマでサッカーっていうのがあったので、車のミニチュアを蹴ってみたりとか。もう暴れまくって、大変だったんですけど(笑)。2クール、3クールと進んで撮影も軌道にも乗ったし、変わったことやりたいねということで、いろいろ頭をひねって、そういうのが出てきたのが僕のやった2本なんじゃないんですかね」
 (特撮監督 神澤信一インタビュー・『タツミムック 検証・ウルトラシリーズ 君はウルトラマン80を愛しているか』辰巳出版・06年2月5日発行・05年12月22日実売・ISBN:4777802124



 とにかく今回のBパートはほぼ全編妄想ウルトラセブンの大破壊絵巻と、エイティとの「激ファイト!」で埋めつくされているのだ!
 今回のような派手な都市破壊が描かれたのは、第36話『がんばれ! クワガタ越冬隊』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110101/p1)以来のことである。約2ヶ月もの間、まともな都市破壊描写がなかったわけであり、特撮怪獣番組としてそりゃダメでしょと云いたくもなるのだが、テレビシリーズの製作というものは後期になるにつれ、次第に予算が切り詰められていくのが常であるのだ。


 だが今回のように、敵キャラクターが既存のコスチュームの再利用で済ませられるのなら、着ぐるみ製作の予算が浮いた分を特撮に回すことができるのである。人気も知名度も高いウルトラ兄弟ウルトラ怪獣の再登場であれば視聴者の注目も集めることもでき、一石二鳥、いや、それ以上の効果をあげることができるのである!
 実際第44話の視聴率は第43話『ウルトラの星から飛んで来た女戦士』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110219/p1)と比べ、関東地区で2.4%、中部地区で1.3%、関西地区に至っては4.4%もの上昇を遂げているのだ!(中部地区は第43話の視聴率も13.1%とほかの地区に比べて好調であり、普段から安定していたから極端な上昇とはならなかったのであろう)
 新ヒロイン・ユリアンの登場よりも、ウルトラセブンの客演の方が視聴者からの訴求力が高かったというのは、なんとも複雑な心境ではあるのだが。


 だが今回視聴者の反応がよかったのは、最大のウリである「エイティVSウルトラセブン」――『仮面ライダー龍騎』(02年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20021102/p1)のライダーバトルより20年も早かった!――というイベント性の高さだけではないのではないかと、今回の再視聴では強く感じられたものである。


 80年代当時はなにかと話題にのぼることが多かった暴走族を登場させるという通俗性の高さ(マニア的にはイヤなんだろうが、一般視聴者ウケはするのである)を漂(ただよ)わせながらも、児童ドラマもきっちりと描き、かつユリアン=涼子にも活躍の場を何度も与え、ラストに象徴されるように矢的に対するほのかな恋愛感情の芽生(めば)えと、極めて密度が高く、バランスがよいのである。
 正味20分強のドラマの中で、これだけの要素を盛りこんでいることは驚嘆(きょうたん)に値するが、特撮パートの比重を高くしようが、その気になればしっかりとしたドラマを描くこともできるということを証明しているのである!


 「学校編(教師編・学園編・桜ヶ岡中学編)」「UGM編」「児童編(子供編)」「ユリアン編」と、便宜上4つの章に分類されている『80』であるが、今回はその全てを結集した(「UGM編」は『ウルトラセブン』っぽい話が多かったから・笑)、まさに『80』の「総決算」といった趣(おもむき)の仕上がりになっている。
 個人的には4クール目の最高傑作として掲(かか)げたい。



<こだわりコーナー>


*今回登場するウルトラセブンは、現在の公式設定では「妄想ウルトラセブン」と呼称されているが、劇中では単に「ウルトラセブン」と呼ばれており、朝日ソノラマの特撮雑誌『宇宙船』Vol.6(81年4月30日発売)の『80』放映終了特集に掲載された作品リストでは「怨念セブン」と呼称されていたものであった。
 これが実に印象深い、古い世代のマニアとしては、今回の再視聴でも「妄想セブン」という呼称は若干ニュアンスが異なるように感じられ、「怨念セブン」の方がよほどふさわしいような気がするのだが……


*直人「多田くん、今日の決勝戦、力いっぱいがんばろう!」


 ラストシーンにおける直人のこのセリフ、実は直人を演じる坂本真吾がアフレコの際に「多田」を「ただ」ではなく、「おおた」と読んでしまい(笑)、それがそのままOKになってしまっているのである!
 子役のセリフにはシナリオにふりがなくらい印刷しとけや! つーか誰か気づけよ!(笑)


*重箱のスミつつきでもう一点。
 セブンが重機を蹴り上げるキックフォームを見て、エイティはそれが直人と同一であることに気づくが、冒頭の場面では矢的は既に直人が敏彦のバイクにひかれ、倒れたあとに現地に駆けつけており、直人のキックフォームは見ていないはずなのである(笑)。もし見ていたのなら、タイミング的に直人がひかれるのを防ぐことができたのであり、今回の事件も起きなかったはずなのである。
 それに亜矢の身の上話からも、矢的は直人と今回が初対面なわけで、周知の間柄で以前から直人の活躍する姿を知っていたわけではないのだ……


 まあ、以上二点の些細(ささい)なミス(ではないと思うが・笑)は、こんな「最高傑作」を観せてもらったのだから水に流そう!


ウルトラシリーズで暴走族が登場する作品としては、『A』第36話『この超獣10,000ホーン?』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070109/p1)も存在するが、ファミリー劇場の『ウルトラ情報局』06年11月号において、ゲストの脚本家・長坂秀佳(ながさか・しゅうけい)先生は、自身が執筆した第36話について、以下のようにコメントしていた。



 「あれはねえ、久しぶりに観たら腹立ったけどね。な〜んかベタベタ、あれこそベタベタだよね。もう(主人公の北斗星司が)いい子になっちゃってさぁ〜。ものすごく腹が立ったんだけど。


 だけどたぶんねえ、あれを書いた動機は暴走族が許せないくらいに、たぶんこのときに毎日新聞の記者が暴走族、どっかの湘南(しょうなん)のあたりかなあ、わぁ〜ってやってんのを「やめろ」って云いに行って撲殺(ぼくさつ)されちゃうんだよねえ。そんな事件があったの。


 (編註:これは長坂センセイの記憶違い。毎日新聞の記者が撲殺されてしまった事件(鉄パイプを片手に持って抗議に行ったのは迂闊(うかつ)だったとしても、もちろんそのことを理由に暴走族の撲殺行為を正当化はできない)は80年代中後盤のことであり、72年放映の『A』とは時期がずいぶんと異なる)


 で、ウチのまわりもものすごかったしねえ。だから許せなかったんだよ。
 許せないんだけど、書いてるとそいつらを悪者にしていくだけだとダメなんだよね。だからドラマとしてはいいのかなあと思うような小粒でさあ。
 (北斗が暴走族を説得する場面について)いや、あのときだけは殴りたかったんだけどね(笑)。


 子供を使って「おにいちゃんかっこいいね」って云わせてさあ、もうアレ観て気持ちわるかった。いやホントに。
 だから今観ると気持ち悪いけど、あの当時は怒りから始まったんだけど書き始めるとやさしくなっちゃうんだよね。やっぱりね」



 脚本家の個人的な想いで暴走族を単に悪者として扱い、地底怪獣バラゴンに食わせた映画『ゴジラモスラキングギドラ 大怪獣総攻撃』(01年・東宝)や、「二千年後に宇宙に災(わざわ)いをもたらす」存在として(どう考えても笑えるなコレ)ウルトラマンジャスティスが始末した映画『ウルトラマンコスモスVSウルトラマンジャスティス THE FINAL BATTLE(ファイナル・バトル)』(03年・松竹)とは違い――既に平成ライダーが人気を得ていた00年代初頭に、まだこんなネガティブなことをやっていたからこそ、ゴジラやウルトラの商品的価値は凋落(ちょうらく)してしまったのである!――、長坂先生は客観的にものごとを見つめる姿勢があったということである。クリエイターとは、まさにそうあるべきではないのか!
 それを象徴するのが以下の場面である。この際の北斗星司の心情吐露(とろ)は、長坂先生の本意とは全く正反対のものだったのである!


美川隊員「あたしああいう暴走族、超獣以上に許せない気がするわ」
北斗「さびしいんだよ、あいつら」
美川「暴走族の味方をするの?」
北斗「そうじゃない。そうじゃないが、なぜあいつらがあんなことをしたくなるのか……オレにもあんなふうになりかけた時期があったんだ……」


 おもわず遠い目になる北斗、ってこれに続けて北斗の「あんなふうになりかけた時期」の回想場面もやってほしかったよなあ。北斗を演じる高峰圭二(たかみね・けいじ)は傑作時代劇『必殺シリーズ』(72〜09年・松竹 朝日放送)などで傍若無人(ぼうじゃくぶじん)な旗本(はたもと・徳川将軍家直参の江戸在住のエリート武士)なんかをよく演じていたが、芸達者の氏であれば、見事な不良ぶりを演じきったであろうに!


*50〜60年代にかけ、富裕層を中心にまだ高価だったオートバイを集団で乗り回す若者たちが登場し、マフラーをはずして爆音を響かせながら走行していたことから「カミナリ族」と呼ばれていた。
 これが「暴走族」の前身であるとされている。当時は高度経済成長期でもあったことから、社会が大きく変容することのストレスを受けたモラトリアム(青年期の延長)の範疇(はんちゅう)であるとして、マスコミや文化人の間では「カミナリ族」をある程度容認する傾向も見られたらしい。


 しかしながら、72年に富山(とやま)県富山市で暴走族が起こした騒動が全国に広がったことで、関東ではこのころからグループ化が確認され、暴力事件や抗争事件が頻発(ひんぱつ)するようになったらしい(60年代後半に全国で吹き荒れた学園紛争が70年代初頭に終息したのと、まさに入れ替わる形でこうした動きが起きていたのだ。若者の社会に対する不満のはけ口の方向性が、時代とともに若者の学歴・社会的階層も含めて変化したのである)。
 『この超獣10,000ホーン?』が描かれたのは、先に長坂先生が語っていたように、まさにこうした時代背景が存在していたからこそである。


 『80』が放映されていた80年前後はまさに暴走族最盛期のころでもあり、警察庁の80年11月の調査では全国で754グループ、3万8千9百人ものメンバーの数が確認されていた。『3年B組金八先生(II)』(80年・TBS)で、暴走族のたまり場である「スナックZ」が舞台となったのも、やはりこの時代のことであった。
 またおでこの両上脇に剃(そ)りこみを入れた前髪を整髪料で固めてひさしのように突き出してから後ろに流したリーゼントの髪型に、刺繍(ししゅう)を入れた特攻服という彼ら独特のスタイルが、彼ら以外の少年少女にも「つっぱり」ファッションとして定着したのがこの時代である。
 この項を執筆中の2011年2月現在、「十六茶」のCMで若手女優の新垣結衣(あらがき・ゆい)ちゃんがポップにアレンジされた替え歌を披露しているが、その原曲である81年1月12日に発売されたシングル・レコード『ツッパリ High School Rock’n Roll(ハイ・スクール・ロックン・ロール) 登校編』を大ヒット(第44話が放映されたのはまさにこのころ!)させたロックバンド・横浜銀蝿
 ――よこはま・ぎんばえ 〜歌番組『ザ・ベストテン』(78〜89年・TBS)に初出演した際、ボーカルの翔(しょう・一時期やたらとこの字を生まれた子供の名前に使うのが流行したものだ)は「銀蝿」の由来について、「実在する虫じゃなくて、ウルトラマンみたいな架空の存在なんですよ」と語っていた(笑)――
 が人気となったり、つっぱりファッションを子猫にコスプレさせた「なめ猫」(近年リバイバル人気もあったので、最近の若い人もご存じかと)のグッズがバカ売れするなど、こうした不良文化がセルフパロディも含めて立派な若者文化となってしまうほど(今で云うチョイ悪やゴスロリにも通じる?)、やはり当時は80年代の「軽薄短小」突入の時代だったのである。


 だが90年代以降、いわゆる「シブヤ系」といったカジュアルなファッション性を重視する少年層の増加や、若者たちが集団への帰属意識を嫌う傾向が強まったこともあり、こうした文化は「時代遅れ」なものであるとして、都心部では次第に廃(すた)れていった。現在では若者離れのためにメンバーの高齢化が進み、40代や50代の暴走族OBが集団で走行して道路交通法違反容疑で逮捕される始末である。
 もっともメンバーの高齢化については、われわれ特撮評論同人界も「対岸の火事」ではないような気もするが(笑)。


 しかしながら、地方によってはいまだにこうした文化が根強く残っているところもある。
 筆者が2005年以来居住する静岡県静岡市では、通勤時に市の中心部を爆音を鳴らしてつっぱしる、暴走族ならぬ「暴走個人」(笑)をよく見かける。
 また筆者の出身地である三重県四日市市(みえけんよっかいちし)は若者たちの一部にいまだに「つっぱり」ファッションが根づいており、帰省時にこうしたスタイルの若者たちに出くわすたび、「田舎(いなか)はこれだから……」と頭をかかえてしまう(笑)。


(了)
(初出・当該ブログ記事〜特撮同人誌『仮面特攻隊2012号』(2011年12月発行予定)所収『ウルトラマン80』後半再評価・各話評より分載抜粋)


[関連記事]

ウルトラマンエース#36「この超獣10,000ホーン?」 〜長坂秀佳脚本・第3弾!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070109/p1

ファミリー劇場『ウルトラ情報局』ウルトラマンA編2 〜長坂秀佳先生出演!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070708/p1



(編註:『エース』#36で暴走族・俊平を演じた役者さん・小沢直平氏は、8年後の本作『ウルトラマン80』第44話『激ファイト! 80VSウルトラセブン』でもまたまた暴走族の青年役で出演されたという情報もある!?(名義は清家栄一) 真偽の程はいかに?)



『ウルトラマン80』全話評 〜全記事見出し一覧