假面特攻隊の一寸先は闇!読みにくいブログ(笑)

★★★特撮・アニメ・時代劇・サブカル思想をフォロー!(予定・汗)★★★ ~身辺雑記・小ネタ・ニュース速報の類いはありませんので、悪しからず!(笑)

ウルトラマン80 45話「バルタン星人の限りなきチャレンジ魂」

(「バルタン星人の限りないチャレンジ魂」という表記は間違い。「限りない」ではなく「限りなき」ですよ・笑)
ファミリー劇場ウルトラマンエイティ』放映記念「全話評」連動連載!)


ウルトラマンマックス#33、34「ようこそ地球へ!」 〜バルタン星人前後編
ウルトラマン80#37「怖れていたバルタン星人の動物園作戦」 〜&漫画『ウルトラマン80宇宙大戦争』!
『ウルトラマン80』全話評 〜全記事見出し一覧

第45話『バルタン星人の限りなきチャレンジ魂』

宇宙忍者バルタン星人(六代目)目登場

(作・石堂淑朗 監督・野長瀬三摩地 特撮監督・高野宏一 放映日・81年2月18日)
(視聴率:関東8.9% 中部11.5% 関西11.8%)


(文・久保達也)
(2011年3月執筆)
 昔懐かしい「缶蹴(け)り」遊びで鬼を務める山野正也少年。
 級友たちが彼の様子を見て「ベ〜だ!」だの、鼻で笑っているところを見る限り、どうやら彼はクラスでは浮いた存在になっているようである。


 新興住宅地で繰り広げられるそんな缶蹴り遊びの様子を、なんとあの宇宙忍者バルタン星人が見つめていた!
 ブロック屏の上で、画面左右から現れた分身状態の白い影が、中央で合体してバルタン星人の姿に実体化するという、現在の観点では古典的な手法ながらも、映像のマジックを感じさせる演出が秀逸である!


 鬼であるのをいいことに正也を徹底的にいたぶる級友たちに業(ごう)を煮やし、正也はそのうちのひとり・土井と路上でとっくみあいのケンカを始める。


バルタン星人「殴れ〜! いがみ合え〜! 人間みな仇(かたき)! 一日一悪!」(笑)


 これは当時頻繁に放送されていた曜日ごとに歌詞が変わる日本船舶振興会のテレビコマーシャルで、会長の故・笹川良一(ささがわ・りょういち。右翼の大物であり社会奉仕活動家でもある複雑な人物)が子供たちとともに、


・「世界は一家、人類はみな兄弟!」
・「地球をきれいにしよう!」
・「お父さんお母さんを大切にしよう!」
・「交通ルールを守ろう!」


 なんてウルトラ5つの誓いみたいな説教くさい標語を並べたあとに、「一日一善!」と叫んでいたのを、石堂大先生がその「偽善(ぎぜん)」ぶりに異議を唱(とな)え、皮肉(ひにく)をこめたブラック・パロディかと思われる
 (大先生お得意の口から出まかせ、その場で思いつきの単なる言葉遊びでもあるだろう・笑)。


 パトロール中のUGM専用車・スカウターS7(エスセブン)が通りかかるのを見て、あわてて姿を消すバルタン星人。
 登場時とは逆パターンで、やはりブロック屏の上で、画面中央の実体化した状態から左右に白い影が離れていき、姿を消してしまうという芸コマな演出!


 周囲の級友たちがはやしたてる中でとっくみあう正也と土井を、スカウターS7から降りてきた防衛組織UGMの矢的猛(やまと・たけし)隊員とフジモリ隊員が止めに入る。
 フジモリに取りおさえられた正也を残し、「暴力反対!」と叫びながら逃げていく級友たち。


正也「おぼえてろ! あした学校でおかえししてやるぞ!」


 さもくやしそうに、口をゆがめながら叫ぶ正也役の子役俳優の熱演がたまらん(笑)。


フジモリ「だめだめ! その日のケンカはその日に忘れるんだ!」
正也「離せよ!」


 フジモリにさえ食ってかかる正也だが、そこに正也の母・よし子がやってきた。


よし子「正也、お父さんがね、おまえの分も現像してやるって」


 このあとよし子が矢的とフジモリに語った話によれば、正也は父の大作と同様に写真を趣味にしているようなのだが(いかにもカメラ小僧といった感じの赤い帽子を全編通してかぶっているセンスもマル)、それを聞いた正也は……


正也「ほんと!? やったぁ〜! その日のことはその日に忘れるからね! 勉強だってなんだってね! ヒャハハハハ……」


 と喜んで自宅に走り去っていく。


 ついさっきまで口をゆがめて(笑)怒っていた正也のこの豹変ぶりには矢的やフジモリでなくても呆気(あっけ)にとられてしまうが、同じ石堂大先生が脚本を書いた第36話『がんばれ! クワガタ越冬隊』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110101/p1)においても、ペットのクワガタムシを上級生の山ちゃんの不注意で失ったことに対するアッちゃんのマイナスエネルギーが生み出した、昆虫怪獣グワガンダに苦戦するウルトラマンエイティを見て、


アッちゃん「うん、ぼくもう怒ってないよ!」


 と、アッチャンがさっきまでの怒りの感情を急速に静めてしまい、あまりにも元気に明るく答えていたものであったが、それと同様、子供という存在がそれほど移り気が早いものであるということを的確にとらえたリアルな描写ではないかと思える。
 だがその日のケンカをその日に忘れるのはいいが、その日に勉強したことまでその日に忘れるのは……このあたりはいかにも石堂大先生らしいセリフだ(笑)。


 自宅に設けられた暗室で、父の大作に自身が撮影した写真を現像してもらう正也。その中の1枚にUFOらしい姿が映っていた!


 ある日、JR(当時の国鉄!)品川(しながわ)駅付近でブルートレインの写真を撮っていた正也は(カメラおたくに鉄道おたくと、こんなマニアっ気のある子供はやっぱクラスで浮いてしまうんだよなあ・笑)その帰り道、あまりに美しかった夕日を残った1枚のフィルムでカメラにおさめようとしたが、その際河原にいた少年が空に投げたフリスビー(70年代後期に流行した、回転させて空に投げて遊ぶプラスチック製の円盤型玩具)が、正也がシャッターを押した瞬間に夕日にかぶってしまった。
 ガッカリする正也だったが、


正也「しかたないか、ぼくひとりの公園でもないし」


 と、意外にも機嫌よさそうに家路へと向かっていく。
 冒頭の場面からすると、正也はこの際も「ジャマしやがって!」などとフリスビーを投げた少年に食ってかかるかのように思えるのだが、一応の性格づけはなされているものの、決してそれをステレオタイプとしては描かず、こうした別の一面も持ち合わせていることをちゃんと描写している点はポイントが高いと思える。


 だが、フリスビーを投げた少年は実はとんでもない奴だったのだ!
 写真ではフリスビーではなく、本物のUFOに見えるように細工(さいく)をし、その真偽(しんぎ)をめぐって正也と級友たちを仲違い(なかたがい)させようと企むバルタン星人が変身した姿だったのだ!


 美しい夕焼けに染まる河原を背景に正也をあざ笑うバルタン星人!


バルタン星人「フハハハハ、これがケンカのもとになるとは、お釈迦(しゃか)さまでもご存じあるめえ!」(笑)


 まさに石堂大先生がシナリオを担当した『帰ってきたウルトラマン』――71年・本年2011年は「放映40周年」の記念すべき年であるが、『ウルトラマン』(66年)の放映に端を発した「ウルトラシリーズ45周年」の影に隠れてしまっているような気がする……――第43話『魔神月に咆(ほ)える』に登場した発砲怪人グロテス星人を彷彿(ほうふつ)とさせる「どチンピラ」ぶりがたまらん!(笑)


 年長の第1期ウルトラ至上主義者のマニアからは、長年断罪されてきた未知なる宇宙人としての神秘性のカケラもない描写だ(笑)。
 だが、実は初代バルタン星人の生みの親でもある当の飯島敏宏監督自身が、『80』の四半世紀もあとに脚本・演出した『ウルトラマンマックス』(05年)第35話『ようこそ地球へ! 後編 さらば! バルタン星人』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060503/p1)では、今まさに数千匹に分身しようとするバルタン星人にこんなに下品で宇宙人というより日本人の悪党クサいセリフを吐かせていたりする。


 「我々の科学ではクローンなんぞお茶のこさいさいなのだ!」


 『80』での石堂脚本回の影響がまわりまわって本家に!?(笑)


 ちなみに今回のバルタン星人の声を演じたのは西村知道という声優であるが、昭和のウルトラ作品としては珍しく、今回はちゃんとオープニングに名前がクレジットされている。


 夜、山野家の2階のベランダに侵入し、正也の部屋をのぞきながら叫ぶバルタン星人!


バルタン星人「フハハハハ、わしはこの少年の心を利用して、再びこの地球で大暴れしてやるぞ!」


 ナイトシーンだから逆に目立つのであるが、この場面に使用されたバルタン星人のスーツ頭部の口ばしの部分は金色に塗装されている。そのために、この部分にスータアクターのための「のぞき穴」が多数開けられているのが目立ってしまっている。
 第37話『怖(おそ)れていたバルタン星人の動物園作戦』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110108/p1)で使用されたスーツの口ばしの部分の中央が黒で塗装されていたのはこれを目立たせないためであったにもかかわらず、口の悪いマニアが「ブタっ鼻バルタン」などと揶揄(やゆ)したために今回改修されたのかと思われるのであるが、もしそうなら本当に余計な批判をしてくれたものである(笑)。
 なおナイトシーンであるにもかかわらず、この際のバルタン星人の目は電飾による点灯がされていないのだが、それについては後述する。


 UFO撮影時の様子を得意げに級友たちに話す正也。最初は半信半疑ながらも正也の話に結構真剣に耳を傾けていた一同であったのだが、正也がUFOとテレパシーで会話をしたと語り始め(UFOからの言葉を正也が語る際、それらしく声を加工し、通信時の効果音をバックに流す演出が芸コマ!)、UFOが会話する相手に正也を選んだ理由として、


正也「ヤ・マ・ノ・マ・サ・ヤ・クンノココロハ、キミタチノショウガッコウノナカデ、イチバンウツクシイカラデス……だってさ!」


 などと正也が自慢した途端、級友たちが一斉に


級友たち「ウソだ〜い!」


 と叫ぶのがなんともリアルだ(笑)。
 正也を次々に責めたてる級友たちに対し、ムキになってむくれる正也の表情の演技がまたいい!(笑)


 そのことと写真が1枚しかないことから、結局級友たちに信用してもらえなかった正也は、


正也「よし、1枚で信用しないなら、10枚、いや、20枚撮ってやる!」


 と、フリスビーを何枚も飛ばし、カメラにセルフタイマーをかけてUFO写真の撮影を試みるが、シャッターのタイミングが合わずに失敗を連続させてしまう。
 だがいくら何枚も撮影しようがトリック写真ではどうしようもないわけであり、それでも級友たちを屈服(くっぷく)させなければ気がすまないほどに、正也の心はマイナスエネルギーに満ちあふれていたのであり、バルタン星人が狙う相手としては十分な存在だったのである!


バルタン星人「フハハハハ、出番ですよか、ハハハハハ……」


 バルタン星人は正也の母・よし子に変身する!
 この場面、歩道橋の上でバルタン星人の全身カットが撮られていることから、今回のスーツが全体的に塗装が非常に細やかにされていることがよくわかるのである!


 バルタン星人といえば、初登場作品である『ウルトラマン』第2話『侵略者を撃て』での姿が一般的にはやはり根強く、夜に暗躍する宇宙人というイメージに支配されているかと思うのだが、今回のバルタン星人の登場場面はほとんどが白昼の野外ロケで撮影されているのである!
 『ウルトラマン』第16話『科特隊宇宙へ』、第33話『禁じられた言葉』、『帰ってきたウルトラマン』第41話『バルタン星人Jr(ジュニア)の復讐』、そして『80』第37話『怖れていたバルタン星人の動物園作戦』と再登場作品を振り返っても前例がなく――アトラクション用の怪獣の着ぐるみを野外で決闘させた『ウルトラファイト』(70年)がそれこそ唯一の例外!――、これはまさに画期的なことだったのである!


 バルタン星人といえば銀色のカラーの宇宙人というイメージがやはり根強いかと思う。
 が、近年の書籍にもよく掲載されている、66年4月に『ウルトラマン』製作発表を兼ねた、各マスコミ向けに行われた第1回撮影会時のスチール写真を見ると、実際には水色で塗装された部分が多く、腰まわりのスカート状の部分や両足の複雑なグラデーション模様、ブーツには濃いオレンジ色が多く使われているのである。
 今回はそうした細かなディテールが目立ちやすい白昼でのロケが多いことや、先述の「ブタっ鼻バルタン」などという手厳しいマニアの意見を尊重し(?)、あるいはそろそろ製作現場に入り始めていたマニア上がりの造形家の趣味で、初代バルタンに忠実なリアルな塗装が施(ほどこ)されたのではないかと思えるのである。


 「今回あらためてじっくりと取り組んでみて、バルタン星人は意外とディテールが少ないということに気づかされました。頭とか顔の粘土彫刻のディテールを除くと、あとはほとんどウレタンを削って布を貼ってラテックスを塗ったものに、ナリでできたシワやダメージなんです。実はバルタン星人において、あまりディテールの再現性は重要ではなかったりします。(中略)とにかくバルタン星人に関してはディテールよりも塗りでバルタン星人になる、という部分が多いんです」
 (「ブランド第1弾『怪獣標本:バルタン星人』を、原型・品田冬樹(しなだ・ふゆき)が語り尽くす!」・『ソフビ魂 怪獣標本5.0 バルタン星人』(ASIN:B002G01EPM)付録冊子より・バンダイ・09年11月発売)


 怪獣造形の第一人者である品田氏がこう発言しているのだから、造形に口うるさいマニアが『80』版バルタンをどう罵倒(ばとう)しようが、「塗りでバルタン星人になる」という意味では、今回登場したバルタンは確かに「バルタン星人になっている」のである。
 今手元にある『ソフビ魂 怪獣標本5.0 バルタン星人』のソフビフィギュア(当然安売りで買った・笑)と見比べてみて、今回登場したバルタンは足の複雑なグラデーション模様や、ハサミの根元部分にある血管模様までもが、それと遜色(そんしょく)ないほどに忠実に再現されているのだ! これもまぎれもない「バルタン星人」なのである。


よし子(バルタンの変身)「まさやちゃん」


 両手をグルグル回しながら、妙にカン高い声で正也に呼びかけるバルタンが変身したよし子。


正也「おかあさん」
よし子「いいのいいのよ、まさやちゃん。空飛ぶ円盤の写真をつくりましょうよ」
正也「知ってたのか」
よし子「そうよ〜。ママはなんだってお見通しなんだからねえ〜。立派なUFO写真をつくって、お友達を見返してやんの。ねっ!」


 妙にハイテンションな口調でしゃべりまくり、オーバーアクションで正也の周囲をグルグルと回り、やたらと正也の背を小突(こづ)いたりするあたり、「紳士的」ではない「どチンピラ」(笑)なバルタンがいかにも変身した姿であるかのようで、よし子を演じた石井富子の熱演が光っている!


正也「ママ」
よし子「そうよ〜。おまえはいつもあの4人組にいじめられているじゃない。ママとってもくやしいのよねえ」
正也「そりゃあぼくだってぇ……」
よし子「だからさあ……みんなをやっつけてやんのよ〜。ねっ!」


 このあたりでバルタンの本性がムキ出しになってくるが、それを象徴するかのように、よし子の両目が青紫色に不気味に光る演出が秀逸!


正也「よし、ぼくはいつもあいつらにひどい目にあっている。だからすばらしいUFO写真を撮って、あいつらをくやしがらしてやるんだ!」
よし子「そうよ〜。それでこそおまえはママの子供よ〜!」
正也「よし、撮影開始! 用意スタート!」


 よし子に変身したバルタン、まるで曲芸師のような軽い身のこなしで体を回転させ、次々とフリスビーを空に向かって投げるが、それが複数の銀色のUFOに変化し、特撮スタジオのホリゾントではないロケの青空を本物のUFOであるかのごとく飛行するさまは操演の妙が光る!


正也「すごい! ママすごいよ!」


 UFO写真の撮影は快調に進むが、スカウターS7が近づいてくるのに気づいたバルタンは、


よし子「正也、おかあさん急に用事思い出したみたい。バイバ〜イ!」


 と最後までハイテンションのまま(笑)、その場を逃げ去ってしまう。
 画面右からオーバーアクションで走ってきたよし子の姿が、画面中央の電柱を過ぎてバルタンの姿へと戻る場面は、その昔にどこぞの国のカメラマンが走行するバスを撮影中にカメラが故障し、修理して撮影を再開するものの、完成した映像にはバスが霊柩車(れいきゅうしゃ)へと変化するかのように撮られていた(このアクシデントこそが特殊撮影(特撮)の原点であるとされている)一件を思わせる古典的なものである!


バルタン「え〜い、くそ〜っ、いまいましいUGMめ! しかし今度は絶対に失敗せんぞ〜!」



 正也から矢的とフジモリに託されたUFO写真はUGMのコンピューターにかけられ、トリックではないと判断された。


 自慢げにそれらを級友に披露する正也だが、それでも信じてもらえない!
 通りかかった矢的に泣きつく正也。


矢的「こういう問題はさあ、最後までケリがつかないもんなんだ。UFOはさあ、神様や仏様と同じでね、いるという人にはいるし、いないと思ってる人にはいないんだ」


 なんかこれまでの矢的の発言の中で最も説得力がないような気が(笑)。そもそもこれまでの『80』世界の中で、数多くの侵略宇宙人が地球に来訪しているではないか!(爆)


阿部(級友のひとり)「そうかなあ」
矢的「そうさ。かりにだぞ、お寺参りをしているおばあさんをつかまえて、ご先祖様を信じているなら、どこにいるか霊を見せてくれって、君云えるか?」
級友A「そんなかわいそうな」
級友B「お年寄りをそんなことでいじめられないよ」


 正也のことはいじめても(笑)、彼らにもお年寄りに対するいたわりの心はちゃんとあるのである。先の正也の意外な一面と同様に、彼らのこうした別の面もちゃんと描かれることで、視聴者に不快な印象を与えないようにしているのである。


矢的「ん、そうだろ。UFOも同じだ。いると思ってる人にはいるし、いないと思っている人にはいないんだ。それだけさ。それ以上やり合うとケンカになる」
土井「そうだ、矢的さんのいうとおりだ。さあ、このへんでオレたちもう、UFO論争にはケリをつけようぜ」


 ようやく一件落着するとおもいきや……


正也「いやだ! 絶対にUFOを呼ぶ! 阿部、待ってろ! 絶対にUFOを見せてやるからな!」


 またムキになって口どころか顔までゆがめ(笑)、阿部に対して挑戦状をたたきつける正也。彼を演じた番場恵介、実にいい役者である!


阿部「よし、見せろ! いくらトリックがないってUGMが証明したって、写真だけじゃボクは絶対にUFOなんか信じない!」


 極めて現実的で、神様仏様や幽霊・妖怪などを一切信じず、なんでも科学的に説明しないと気がすまない性格設定、幾何学(きかがく)模様のセーターに半ズボンのスタイル、身長の低さなど、阿部のキャラはどことなく故・藤子・F・不二雄(ふじこ・エフ・ふじお)先生の名作漫画『ドラえもん』に登場する骨川スネ夫(ほねかわ・すねお)を彷彿とさせるものがある。
 第36話に登場した乱暴ものの上級生・山ちゃんもまた、同じく『ドラえもん』に登場するジャイアン――本名・剛田武(ごうだ・たけし)――を思わせるキャラだったことから、「児童ドラマ」を執筆するにあたり、石堂大先生がそのご子息たちも視聴されていたであろう『ドラえもん』を参考文献にしていた可能性が極めて高い!?


正也「絶対見せる!」
阿部「絶対見せろ!」(笑)
正也「見せたら子分になるか!」
阿部「見せなかったらボクの子分になれ!」


 まさに売り言葉に買い言葉。さすがの矢的=ウルトラマンエイティでさえ、もはや手の出せる状況ではない(笑)。


 再び夜の山野家のベランダでほくそ笑(え)むバルタン星人!


バルタン星人「ハハハハ、子供と子供がケンカする! 男と女がケンカする! 家と家とがケンカする! そしておしまいには国と国がケンカする! ミサイル発射! 手裏剣(しゅりけん)シュシュ! 日本は滅びる! 世界は滅びる!」


 冒頭での正也と土井が路上でとっくみあう場面から始まり、正也の父・大作と母・よし子がキッチンで口ゲンカする場面、よし子と隣の主婦が云い争う場面、そして大国の首脳会談が決裂する場面に続き、北京(ぺきん)・パリ・モスクワ・ニューヨーク・ロンドン・ローマといった世界各国主要都市が吹っ飛ぶ特撮場面
 ――『ウルトラセブン』(67年)第49話(最終回)『史上最大の侵略(後編)』において、幽霊怪人ゴース星人の地底ミサイルで世界各都市が破滅する場面にも流用された、映画『世界大戦争』(61年・東宝)のクライマックス場面からの再流用である――
 と、バルタン星人の脳裏(のうり)に浮かぶ壮大な地球破滅計画が映像で示される!


 いささか話が飛躍(ひやく)しすぎでは? と感じられる向きもあるかもしれないが、『セブン』第8話『狙われた街』においても、地球人の信頼関係に目をつけた幻覚宇宙人メトロン星人が、それを破壊すれば地球はやがて自滅すると考え、狂気と暴力性を誘発する赤い結晶を混ぜたタバコを駅前の自販機にしかけたのと同様の実験だと考えられる。


 「嫌煙権」が声高に叫ばれるようになった現在――タバコを嗜(たしな)む筆者からすれば、まさに「タバコを吸う奴は人間じゃない!」と云わんばかりの最近の風潮には、ナチスと同様の「ファシズム」を感じてならないものがある! と怒りながらまた火をつける(笑)――ではメトロン星人の実験は有効に機能しないのではないかと思えるのだが
 ――実際『ウルトラマンマックス』で『狙われた街』の続編として描かれた第24話『狙われない街』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060318/p1)でもそれは語られていた――、
 今回のように子供の世界に対立の種をまくという手法であれば、現在でも極めて有効に働くのではないかと思えるのである。


 また第19話『はぐれ星爆破命令』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100905/p1)、第20話『襲来!! 吸血ボール軍団』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100912/p1)以来、今回久々の登板となった東宝の故・野長瀬三摩地――のながせ・さまじ。小学生のころ、『マン』『セブン』の再放送を観て氏の名前がオープニングにクレジットされるたび、「これなんて読むんだ?」と真剣に悩んだものだ(笑)――監督は、『セブン』における氏の監督回で唯一宇宙人が登場しなかった第32話『散歩する惑星』以外、侵略宇宙人があらかじめひとりの人間にターゲットを定め、それを利用したりゆさぶりをかけたりして着々と侵略計画を進める作品ばかりを手がけていたのである!


*第2話『緑の恐怖』 → 生物X(エックス)ワイアール星人が宇宙ステーションV3(ブイスリー)の石黒隊員を宇宙金属チルソナイト808(ハチマルハチ)に封じこめ、彼の姿を自身に転送し、夜になると本来の姿になって人々を襲撃した。


*第3話『湖のひみつ』 → 変身怪人ピット星人が主人公・モロボシダンの変身アイテム・ウルトラアイを奪い、セブンへの変身を阻止した。


*第19話『プロジェクト・ブルー』 → 宇宙帝王バド星人が地球防御バリヤー計画の全容を把握するため、開発した宮部(みやべ)博士を監禁し、その妻を危険にさらすことで博士から秘密を聞き出そうとした。


*第20話『地震源X(エックス)を倒せ』 → 暗黒星人シャプレー星人が地球を形づくるウルトニウム奪取のため、国際核研究センターの岩村博士に助手・榊(さかき)となって近づいた。


*第23話『明日を捜せ』 → 宇宙ゲリラシャドー星人が地球防衛軍の超兵器秘密開発工場である0三(マルサン)倉庫を爆破するが、町の易者(えきしゃ)・安井与太郎(やすい・よたろう)にそれを予言されたため、彼をとらえてニセの予言をさせることでウルトラ警備隊を翻弄(ほんろう)し、地球防衛軍基地爆破までをも企(くわだ)てる。


*第36話『必殺の0.1秒』 → 催眠宇宙人ペガ星人が人工太陽計画を妨害するため、地球防衛軍の射撃大会で優勝を願ったヒロタ隊員を勝たせ、その代償として自身の侵略計画に協力させた。


 1996年に野長瀬監督が逝去された際、特撮雑誌『宇宙船』でたしか特撮評論家の池田憲章氏が追悼文を書かれて、「『80』のころに取材した折、最近の作品は脚本がよくないとこぼしていた(大意)」という憲章先生お得意の脚本至上主義に合致する観点から偲(しの)んでおり、池田憲章先生はじめ当時のマニアの主流である第1期ウルトラ至上主義に影響されたリップサービスでなければ『80』という作品自体を快く思っていなかった可能性もあるのだが(逆に『80』で脚本を務めた第27話『白い悪魔の恐怖』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101030/p1)はクールで乾いたハイブロウなSFホラーに仕上がっているが、子供番組としてはやりすぎで怖すぎるんじゃないかとも思う)、こうした侵略者の謀略テーマ作品を手がけてきた野長瀬監督には、今回のような石堂大先生のシナリオの映像化は、実はマッチしていたのではないかとも思うのだ。



 話は変わるが、野長瀬監督は『ウルトラセブン』の監督としては製作初登板としての参加であった。
 そして、先にあげた第2話と第3話(それぞれ製作順では第2話と第1話)でのダンのセブンへの変身カットは、ダンが胸ポケットからウルトラアイを右手で包みこむようにして見えないまま取り出し、そのまま両目にかぶせるという形になっている。
 両方とも変身シーンは屋外のロケで撮影されているが、ひょっとしたら、この形であれば本編撮影班の小道具さんがうっかりウルトラアイを忘れたとしても(何かのマニア向け書籍の記述によれば、確かどちらかの回では本当に忘れたんじゃなかったっけか?)ごまかしがきくという狙いがあったのかもしれない。


 第4話『マックス号応答せよ』(製作第3話)と第6話『ダーク・ゾーン』(製作第4話)では、ダンがウルトラアイの右端を右手で持ってポケットから取り出し、一旦それを前方に突き出してカメラのUP映像になるようにしてから着眼するという最もポピュラーな形だが、これを演出したのは満田(みつた)かずほ監督である。


 そして第1話(製作第5話)『姿なき挑戦者』ではダンがジャンプするや、ポケットからひとりでにウルトラアイが飛び出して両目にかぶさる形であり、第5話(製作第6話)『消された時間』では侵略者と疑われて独房に監禁されたダンが両腕をクロスしてそれを解くや、既にウルトラアイを着眼している状態であった。
 この2本でこうした変則的な変身シーンを演出した故・円谷一つぶらや・はじめ)監督は、第17話『地底GO! GO! GO!』では地底ロボット・ユートムに監禁され、ウルトラアイを取り上げられて台に縛(しば)りつけられたダンが、隊員服のベルトのバックルのボタンを押すや、ウルトラアイがダンの両目に誘導されて(どうやってそんなもんを制服にしかけたんや!・笑)、台の上で全身が変身する場面を見せたり、第18話『空間X(エックス)脱出』では音波怪人ベル星人の怪音波に苦しんだダンが倒れこんで腕をクロスさせるや、別の場所にテレポーテーション(瞬間移動)してセブンの姿で現れるなど、さらに変身のバリエーションを広げていたのである!


 初期製作話は試行錯誤の段階でもあり、いろいろと試してみて最もバッチリと決まったものを採用する、といった感じだったのかもしれないのだが、やはりそこにはそれぞれの監督の個性の主張が感じられ、実に興味深いものがあるのである。


 『ウルトラマンA(エース)』(72年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070430/p1)で主人公の北斗星司(ほくと・せいじ)と南夕子(みなみ・ゆうこ)が披露した変身パターン・ウルトラタッチも、両者が高くジャンプし、宙でトランポリンアクションで合体する
 ――アレってやっぱり吹き替えなのだろうな。もし北斗を演じた高峰圭二(たかみね・けいじ)と夕子を演じた星光子(ほし・みつこ)がやってたのならスゲえことなのだが(笑)――
 最もポピュラーな形以外、第2話『大超獣を越えてゆけ!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060515/p1)では早くも両者がバイクを駆って、「ライダータッチ!」なる変則変身を披露したりとか、戦闘機タックアローから脱出した北斗と地上からジャンプした夕子が宙で合体するとか(「ストレンジタッチ!」)、はたまた地上で互いに向かって走る両者が手を合わせて変身するとか、こういうバリエーションはマンネリの打破以前に視聴者・子供的にはおおいに嬉しいものなのである!
 (どう見ても衆目に正体がバレてしまいそうな無理があるものもあったのだが、そのへんは変身シチュエーションのバリエーション自体も目玉やドラマにすると企画書にも記したメインライター市川森一(いちかわ・しんいち)先生に文句を云ってくれ!・笑)


 『帰ってきた』ではTBS側のプロデューサー・橋本洋二(はしもと・ようじ)が「変身のバトンはいらない」なんて主張したために、主人公の郷秀樹(ごう・ひでき)には新ウルトラマン(現在はウルトラマンジャックと呼称)への変身アイテムが用意されなかったが、ホントにそんなこと云ってる場合ではなかったのである!
 (もっとも郷が人間として最後の最後までギリギリの努力を示す過程は、それこそ様々なバリエーションを生み出すこととなったのだが・笑)


 要するに、変身ヒーロー作品ではドラマの完成度や作品のテーマ以上に、変身シーンが最も大事な要素・華(はな)であるということなのである!
 読者諸氏も幼児期には、ヒーローの変身シーンを毎回楽しみにしていて、変身願望・超人化願望を擬似的に満たしてくれる映像に憧憬し、大いに興奮していたのではあるまいか?
 仮にも変身ヒーローマニアを標榜(ひょうぼう)するのであるならば、ドラマやテーマばかりでなく、まさにそうした部分にこそ着目し、そこにも「作家性」を見いだすべきなのではあるまいか!?


 近年の平成ライダー作品で描かれているドラマに対しては「オジサンには全然ついていけない世界だ」と敬遠しがちな筆者ではあるが、そこで描かれている変身場面にはやはり様式美を感じざるを得ないし、それこそが就学前の幼児や一般層をひきつけているかと思えるのである。


 まあ、そうした意味で云うならば、『80』の変身場面ももっと様々なバリエーションがあったらよかったのに、なんて結論に達してしまうのであるけれど。エイティとユリアンが合体して最強のウルトラマンになる! なんてやっていれば、「ユリアン編」ももっと盛り上がったのに、なんて妄想(もうそう)もしてしまうのであるが……



バルタン星人「こちらUFO、こちらUFO、明日は日曜日、昼12時ジャスト、嵐ヶ丘にUFOが出現する! いいか、明日12時だぞ!
 必ず君の4人の友達を証人に連れてくるんだ! わかったね。12時……12時……嵐ヶ丘……嵐ヶ丘……」


 再び夜の山野家に現れ、正也の寝室でUFOからのテレパシーを装(よそお)って呼びかけるバルタン星人。
 正也のベッドの上にバルタンの上半身がまるで幽霊であるかのように合成されたカットは、先にあげた『セブン』第2話、第19話、第23話など、いかにもホラー演出がお得意の野長瀬監督回ならではである!


 ちなみにこの場面でもやはりバルタンの目は点灯していないのだが、その代わり、両目が左右に動くという細かなギミックが仕組まれていることがよくわかるのである!
 初代バルタンの目にはグルグルと回転するギミックが仕組まれていたものであったが、それに匹敵するほどに凝(こ)った仕様であり、正也に対してテレパシーを送っているということが端的に表現され、最大の効果を発揮しているのである!
 このギミックを仕組むために、今回は目を点灯させる仕掛けを仕組むスペースがなかったとも考えられる。あるいは元々アトラクション用で目が点灯する仕様ではなかったものを改造したとも考えられる。いずれせよ、今回の等身大バルタンは頭部のずんぐりとした形状や体型などから、第37話で使用されたスーツとは別物かと思われる。
 今回は白昼での登場が圧倒的に多いことから、目の点灯よりもそちらを優先したことは正解だったと思えるのである。


 なお「嵐ヶ丘」はやはり作家エミリー・ブロンテの小説を映画化した名作洋画『嵐が丘』(39年・ユナイテッドアーティスツ)からの引用であろうか? おそらく石堂大先生の「マイ・フェイバリット・ムービー」なのであろう(笑)。


 UGM作戦室でコーヒーを飲みながら談笑する一同。


イトウ「そんなにケンカするんだったら、いっそインチキ写真以外のなにものでもないとかなんとか云った方がよかったかもしれないなあ」
矢的「ウソも方便(ほうべん)ですか」
ユリ子「あの、あたしこう思うんですけど、UFOを見たという人は、なにかこう心の底にたまっているものがあって、そのはけ口にUFOを利用するんじゃないでしょうか」


 なんとも鋭い指摘である(笑)。


オオヤマ「う〜ん、で、その少年は?」
矢的「ええ、友達とはあまり折り合いがよくないみたいですよ。なにかあるとことごとに対立するみたいですね」
イケダ「ああ、それでUFOを持ち出して、一挙に仲間のナンバーワンになりたいんですね」
オオヤマ「気持ちはわかるけどな。ん?」


 計器のメーターが異常なデータを示しているのに気づくオオヤマキャップ。そこに涼子が入ってくる。


涼子「キャップ、ポイント27(ツーセブン)に微弱ですが、宇宙バリア・アルファ光線の発生が見られるようです」
オオヤマ「なに?……バリア・アルファ光線の探知ができる計器はこれしかないんだが……どうしてわかった?」
涼子「はっ?……」


 ウルトラ星人ならではの超能力でUGMの計器よりも先に異常を感じてしまった涼子は、またしても先のことを考えず、すぐさまそれをオオヤマキャップに報告してしまったのである!
 すかさず涼子をフォローする矢的!


矢的「キャップ、星隊員といっしょにポイント27に行ってきます。山野少年の家がその近くにあるんです。さあ行こう!」
涼子「はい」


 怪訝(けげん)そうな顔をして再び計器の異常を見つめるオオヤマキャップ。これで完全にオオヤマキャップにはバレバレや(笑)。


 ちなみに『ウルトラマン』第16話『科特隊宇宙へ』において、バルタン星人二代目は初代ウルトラマンが放ったウルトラスラッシュを光波バリアーを張りめぐらしてこれを防いでいたが、バリア・アルファ光線とはその光波バリアーの元になるものなのであろうか?
 第37話で既に壊滅しているはずの「バルタン星」をセリフで登場させてしまった石堂大先生だが、今回はちゃんと過去の作品でバルタンの設定を参照したのかもしれない(笑)。


級友たち「なんだ、出ないじゃないかよ〜」


 日曜日の昼12時、嵐ヶ丘でUFOの出現を待っていた正也と級友たちであるが、待てど暮らせどUFOは現れない。


阿部「いよいよおれの子分か〜」
級友たち「あ〜あ、12時過ぎてるよ。ど〜すんの。ホラ、どうすんだい」
正也「UFO出てくれ! お願い! 出てくれ!」


 母のよし子に正也の行き先を聞き、現地に向かう矢的と涼子だが、階段の途中で涼子がへたりこんでしまう。


矢的「どうした!?」
涼子「異次元空間が出口を求めて、このあたりを走り回ってるわ!」


 ふと空を見上げる矢的。まるでぽっかりと穴が開いたかのように、空に異空間が出現したかのような作画合成が見事である!
 これまた『A』に登場した超獣たちが異次元空間から三次元の世界に投入される際、青い空をバリバリと突き破って出現していたさまを彷彿とさせる! どうせならバルタンも空を突き破って登場してほしかった!
 それにしても、これまで比較的自由奔放(ほんぽう)な世界観を描いてきた石堂大先生、今回は妙にSF的センスにこだわっているような感があるのだが、あまりに口うるさいマニアの評価に対し、さすがの石堂大先生も少々過敏(かびん)になっていたのかも?(まあ今回の作品全体を見渡せば、とてもそんなふうには思えなかったりもするが・笑)


阿部「これで山野も一生オレの子分か。あわれだの〜」(笑)
級友A「山野、今のうちにあやまれよ〜」
級友B「そうだよ〜」


 級友たちが正也を責める間に、バルタン星人が小型UFOに乗って彼らのもとに近づいてくる! 新興住宅街のミニチュアセット全景をなめながら、ホリゾントの青空をミニチュアバルタンを乗せた小型UFOが飛行するさまは、これまでの昭和ウルトラではお目にかかれなかった絵である!


正也「いやだ! いやだ! UFOのウソつき!」


 またムキになって(笑)UFO写真を破り捨てようとする正也。


バルタン星人「待った! 諸君、地球へのご招待ありがとう!」


 今度はワイヤーで吊(つる)された実物大の小型UFO(なんとバルタンの顔をモチーフにしたデザイン! マニアには極めて評判が悪いのだが、これほどのビジュアルインパクトはほかにない!)に乗ったバルタンのスーツをあおりでとらえ、続いておびえる子供たちを画面手前に配し、実景の土手の上にホリゾントの青空に浮かぶバルタンとUFOを合成した場面と、緊迫感あふれる編集が絶妙である!


 子供たちの危機に駆けつけようとする矢的と涼子だが、再び身体の不調を訴える涼子。


矢的「大丈夫か!?」
涼子「あたしは大丈夫。行って! 嵐ヶ丘に早く行って!」


 ひたすら涼子を気づかう矢的の姿も頼もしいが、異次元空間が放つエネルギーに弱いという意外な弱点を見せた涼子=ユリアンが、かよわさを漂(ただよ)わせながらも、ひたすら使命感を燃やす姿は、さすがにウルトラの星の王女だけのことはある! この場面ではおもわず彼女にホレてしまう!(笑)

 バルタン、自身の顔を模(も)した小型UFOから子供たちのもとに豪快に飛び降りる! 下にトランポリンを用意した(笑)スタジオでの撮影だが、スーツアクターのアクロバティックな演技が光る!
 ちなみに今回のオープニングでは「怪獣」――今回くらい「バルタン星人」と表記してほしかったものだが。ちなみに第44話『激ファイト! 80VS(たい)ウルトラセブン』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110226/p1)ではちゃんと「ウルトラセブン」と表記されていた――として、スーツアクターが佐藤友弘ともうひとり、第29話『怪獣帝王の怒り』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101113/p1)から最終回までエイティを演じていた奈良光一がクレジットされているのだ! 要するに今回の等身大バルタンを演じていたのは奈良光一なのである!


バルタン星人「さあ、今度こそは地球をたっぷりと痛めつけてやるぞ〜!」


 子供たちを画面右奥に配し、左手前で子供たちを襲おうとするバルタンの全身を背面から見せる場面は、これまでバルタンがなかなか本編で背面を見せることがなかったことを考えるときわめてポイントが高い
 (ディテールが判然とせず、三面写真もなかったことから玩具では誤った解釈で商品化されることが多かった)。
 バルタンの巨大なハサミをアップにしてその間に子供たちをとらえたカットは、子供たちに迫る危機を端的に表現した、なんとも芸コマな演出である!

正也「矢的さ〜ん!」
バルタン星人「なぬっ!? くそ〜、UGMのアイツか〜!」


 子供たちの危機にようやく駆けつける矢的! バルタンに光線銃・ライザーガンの銃口を向ける!


矢的「バルタン! 子供たちに近寄るな!」
バルタン星人「それはこっちのセリフだ! 近づいたら子供の命はないぞ!」


 バルタン、子供たちにハサミを向け、怪音波を発射する!
 頭をかかえ、苦しむ子供たち!


矢的「くそっ! バルタンめっ!」
バルタン星人「ヒャハハハハ!」


 バルタン、画面右手に向かって横向きになり、ハサミを開いて何やら白いものを放つ。
 このカットではバルタンの右腕が水色、スカート状のヒレが黄色、足のグラデーション模様がオレンジと、結構派手(はで)目の色を中心に塗装されていることがよくわかるのである!


 バルタンのハサミから発射された白い物体は子供たちを覆いつくし、それは白い袋となって子供たちを幽閉(ゆうへい)してしまった!
 まるでサンタクロースのようにそれを左肩にかかえ、ジャンプして小型UFOに飛び乗るバルタン星人! 実際には飛び降りるカットを逆回転させたのであろうが、なんともアクロバティックな演出が光る!


 矢的、小型UFOに向かってライザーガンを放つ!
 実景の土手の手前で狙撃する矢的と、ホリゾントの上に浮かぶ小型UFO上のバルタンを合成したカットに続き、小型UFOが破壊され、バルタンが落下するのがアップで映しだされる。


 この場面、当初筆者は実物大の小型UFOを爆破し、バルタンのスーツアクターが落下していくのをとらえたものかと思ってしまった。
 なぜそう思ったのかといえば、落下するバルタンが手足をバタバタさせているからなのであるが、何度も繰り返して観ているうち、実際にはUFOもバルタンもミニチュアであることが判明した!


 こうした爆発場面などのごく短いカットに用意されるミニチュアといえば、言葉は悪いが形だけ整えた適当なカポックが用意されるのが通例である(『マン』第16話『科特隊宇宙へ』でコンビナートを襲撃するバルタンの大群は、当時マルサン商店から発売されていたプラモデルを流用したものであった・笑)。
 が、この場面のバルタンは近年各メーカーから発売されている可動アクションフィギュアのような素体で作られていたかと思われるのである! こうしたところにまで一切手を抜かずに製作していたスタッフたちには、まさに敬服せずにはいられない!



バルタン星人「おのれおのれ〜!」


 地上に落下したバルタン、右手のハサミを高々と掲げるや巨大化!


 やや面長(おもなが)で比較的スリムな『科特隊宇宙へ』に登場した二代目バルタンを彷彿とさせるスタイルや、全体的にそれほど細やかに塗装されていないことから、ここからのバルタンは等身大とは別物で、第37話で使用されたスーツを流用したものかと思われる。


 宅地開発中の造成地に出現したバルタン!
 画面手前にはブロック屏と前回の第44話でもめだった街灯を両脇に道路が走り、その奥でバルタンが画面右に右手のハサミを向け、オレンジ色の光線を発射する!
 バルタンの光線を浴びて破壊されるビル! 窓枠がいくつも落ちていくのがなんとも芸コマ! 画面右下手前には樹木を配置!


 建築中の家を破壊するバルタンの巨大な足をとらえたカットでは、画面手前に角材を積んだ軽トラックのミニチュアが!
 そしてバルタンが右手のハサミを振り下ろしてビルを破壊するカットでは、ビルの手前に民家の赤い屋根、画面右手前に民家、左手前に枯木を配置と、奥行きと立体感を得られる画面構成が続く!


 バルタンに破壊されるビルをアップでとらえたカットでは、画面左手前に電柱を、そこから伸びる電線はビルの爆発とともにスパークまで!
 さらにそれに続くカットでは、破壊されたビルから何やら大きな破片がバルタンの手前で吹っ飛んでいる!(笑)


 思えば昭和バルタンがここまで徹底した都市破壊を披露したのは今回が初めてのことなのだ!
 『侵略者を撃て』では核ミサイル・はげたかを屋上からバルタンに発射したビルと石油タンク、
 『科特隊宇宙へ』ではコンビナート(それも『マン』第13話『オイルSOS』の油獣ペスターの破壊場面の流用だった)を破壊したのみであり、
 『禁じられた言葉』では悪質宇宙人メフィラス星人の配下として東京・丸の内の28番街に出現したのみ、
 『バルタン星人Jrの復讐』に登場したバルタン星人ジュニアは巨大化したと思ったら、あっけなく新ウルトラマンスペシウム光線に敗れてしまった。
 『怖れていたバルタン星人の動物園作戦』ではエイティとの派手な肉弾戦が演じられたが、舞台がUGM基地周辺だったことで、都市破壊場面が描かれることはなかったのである。


 これは第37評(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110108/p1)の中で紹介した、バルタン星人の生みの親・飯島敏宏(いいじま・としひろ)のコメントにもあるように、両手のハサミが結構重量があったことから、ウルトラマンとの格闘以前に破壊演出も困難だったためと考えられるのである。
 『80』版のバルタンのスーツを見ると、ハサミの合わせ目の部分が少しえぐれたような感じになっているのが見受けられ、まさに軽量化のための工夫であるかに思えるのである。これによってエイティとの迫力あるバトルや、都市破壊演出が可能になったのではなかろうか!


 また今回の特撮監督を担当した故・高野宏一(たかの・こういち)はバルタンを演出するのは『禁じられた言葉』以来のことであったが、先述したようにこの回ではバルタンはごく短い登場に終わっており、その前の『科特隊宇宙へ』でも思うようにバルタンを動かせなかったという経験から、今回のバルタンの破壊演出にはまさにリベンジというか、実に気合いというものが感じられるのである!


 ちなみに第37話の特撮監督は佐川和夫であったが、氏も『帰ってきた』第41話の特殊技術(特撮監督)を担当。この回の特撮場面の中心となったのもバルタン星人ジュニアよりロボット怪獣ビルガモであり、それもまた第37話のバトルを充実させる原動力になったのかと思えるのである!
 『80』のバルタン登場編は、どちらもウルトラシリーズを代表する特撮監督たちのリベンジマッチでもあったのだ! いやホントに「ブタっ鼻バルタン」などとバカにしている場合ではないのである。



 画面中央よりやや左手奥のバルタンに、右手前からUGM戦闘機スカイハイヤーとシルバーガルが攻撃に向かう! 続く攻撃場面に至るまで、画面手前にはビルや民家、建築中の建物や電柱などが配置され、やはり画面に奥行きと立体感を醸(かも)し出す!


 これらの合間にバルタンが左手に持つ白い袋に閉じこめられた子供たちが転げ回る描写を何度も挿入しているのも緊迫感にあふれて良い!


矢的「キャップ、バルタンが持ってる袋の中に、子供が5人入ってます!」
オオヤマ「子供? 袋に子供が入ってる! 撃つな!」
イトウ「えっ!?」
フジモリ「くそ〜っ!」


 子供たちの入った袋を盾にするかのごとく、攻撃するUGMに対して得意げに左手を突き出すバルタン!
 そして右手のハサミを振り回しながらさらに進撃を開始! 建設中のマンションにハサミを振りおろすや、中層階にスパークが走る!
 破壊されるマンションをアップでとらえたカットでは、バルタンのハサミの左手前に樹木が配置されることにより、その巨大感を一層感じさせる!



涼子「矢的!」
矢的「うむ!」


 バルタンに向かって駆け出す矢的! 正也の名を叫ぶ山野夫妻のそばを通り越し、変身アイテム・ブライトスティックを高々と掲げた!


矢的「エイティ!」


 ウルトラマンエイティ登場!


 画面右手にエイティの下半身を背面から、画面左手奥にバルタンをとらえ、エイティの足元に電柱を配置し、そこからバルタンの方に電線が伸びているという、なんとも遠近感が的確に表現された画面構成!


 エイティ、側転を連続させてバルタンに向かうが、住宅群やブロック屏、電柱などを画面手前にナメながらカメラが横移動!
 画面中央に樹木を配置し、その左奥にエイティ、右奥にバルタンと、にらみあう両雄をとらえたあと、エイティが左足でバルタンにキック、バルタンが右手のハサミでエイティをどつくや、エイティはそれをつかんでバルタンを投げ飛ばす!
 エイティ登場からここに至るまで、なんと1カットで長回しで撮られているのだ! 両スーツアクターのスピーディーなアクションを最大限に活(い)かした、なんとも臨場感あふれる演出である!


 投げられたバルタン、画面に背面を向けて着地! 今回はバルタンの背面がやたらと映しだされているような感があるが、ちゃんとつくってあるスーツなんだから見てくれよ! との主張が感じられる(笑)。
 バルタンの手前には民家の屋根、右手前には樹木と、常に比較対象物を配置することで巨大感やリアル感を醸し出しているのだ!
 (『てれびくんデラックス 愛蔵版ウルトラ兄弟大百科』(89年・小学館ISBN:4091014224)に掲載された、撮影中にバルタン星人の頭部がすっぽ抜けてしまった写真は、この一連のシーンのNGカットではないかと思われる)


 画面左手前に背面からとらえたバルタンの右手のハサミから、右手奥のエイティに向かってオレンジ色の光線が放たれる!
 エイティは高々とジャンプしてこれをよけ、画面手前に宙返りしてバルタンに向かうという、絶妙な立体感とアクロバティックな演出がたまらない!


 着地したエイティの下半身を画面右に背面から(手前には樹木を配置)、画面左にバルタンの全身(手前に民家)をとらえたあと、バルタンは子供たちが入った袋をエイティに突き出す!
 再び袋の中で転げ回る子供たちが映しだされ、画面左手前に背面からとらえられたバルタンから、エイティは画面中央奥をじりじりと後退(画面手前右にビルを配置することで、より遠近感を表現!)。バルタンの姿が消滅し、それを追ってエイティが画面左手に向かって走る!
 カットが変わり、画面中央よりやや左にエイティの全身を背面からとらえ、しばらくして画面右に再び姿を現すバルタンの全身が背面からとらえられるが、それぞれの手前に先ほどの民家と樹木が配置されていることにより、同じ場所に位置していることをさりげなく表現!


 バルタン右手のハサミでエイティの頭を、さらに胸をどつき回す!
 画面手前中央に配置された民家の屋根、さらにその上に見えている枯木の奥を、吹っ飛ばされたエイティが宙を転げながら大地に落下していくさまがとらえられる! 画面両脇手前には樹木を配置と、どこまでも奥行きが感じられる画面構成!


 エイティがサクシウム光線、バルタンが右手のハサミからオレンジ色の光線を同時に発射! 宙で両雄の光線が激突、炸裂(さくれつ)する!
 画面やや左寄り手前にサクシウム光線ポーズのエイティの全身を背面から、画面やや右寄り奥に右手のハサミをエイティに向けるバルタンの全身を、ホリゾントの下に連なる山並みを背景に、バルタンの手前に民家を配置してとらえた構図は、光線のぶつかり合いを表現した光学合成もさることながら、なんとも立体感を得られる美しい絵である!


 カットが変わり、今度はサクシウム光線ポーズのエイティを画面左奥に正面からとらえ、バルタンは背面から右手前にとらえられる。
 画面下手前には瓦屋根の民家が並び、両者の光線が宙で激突して炸裂している真下の位置にビルを配置と、常に比較対象物を置くことが遠近感や立体感を醸し出す!


 遂に両者の光線が大爆発!
 衝撃で吹っ飛び、ひっくり返るバルタンのスカート状のヒレがアップでとらえられるが、近年発売されている玩具では正確に表現されている、ヒレ後方中央部の昆虫のような羽根状の部分が、この時点でちゃんとモールドされていることが判明!
 当時ガシャポン自販機で発売されていたポピーの怪獣消しゴムのバルタンは、ヒレに多数モールドされた四角形の凹(へこ)み状の模様が、中央部でもそのままつながっているかのように表現されていたが(この当時までに発売された大半の玩具がそのように誤った解釈で造形されていた)、この点においても『80』版バルタンは初代を忠実に再現しようという試みがあの当時なりになされていたのである!


 立ち上がったエイティ、バルタンに向かってジャンプして奇襲をかける! バルタンもまたジャンプして宙に逃れる!
 画面左でジャンプしてバルタンに迫ろうとするエイティの全身を背面からとらえ、画面右手前の民家の奥をバルタンが宙に高々とジャンプ! スピーディーでアクロバティックなスーツアクターの熱演を、最も効果的に表現するカメラアングル!


 着地したバルタンの下半身を画面左手前にとらえ(またしてもスカート状のヒレの後部がアップに!)、画面下手前に民家の瓦屋根、中央奥にエイティの全身と絶妙な遠近感を表現したあと、バルタンはさらにエイティに向かって袋を突き出し、その中で転げ回る子供たちが映し出される!


 エイティ、胸のカラータイマーからオレンジ色の光の輪が連続して発射されるタイマーショットをバルタンに目がけて放つ! それを浴びたバルタン、赤く発光して崩れ去るように消滅する!
 この場面では戦う両者がロングでとらえられ(画面下手前にはブロック屏が並ぶ宅地造成地を配置!)、消滅したバルタンを追って画面左にエイティが駆け、向き直って構えるや、エイティが元々いたあたりの画面右の位置に再びバルタンが現れ、エイティ目がけてバルタンが右手のハサミから光弾を発射、苦しむエイティまでが長回しで1カットでとらえられている。
 両スーツアクターのアクションとともに、映像のマジックが最も効果的に表現された名演出である!


 「フォッフォッフォッ」の高笑いとともに、表情のアップから再び姿を消すバルタン! エイティのカラータイマーが点滅をはじめる!
 画面左にひざまづいたエイティ、その右奥に再び姿を見せるバルタン!
 続いて画面右手前にバルタンの下半身を背面からとらえ(それだけちゃんとつくってあることを見せたかったのか? 少々しつこいような・笑)、左奥に苦しむエイティと、今回は両者主観からのカットを交互に割るのを連続させることで、絶妙な臨場感を醸し出している!


ナレーション「ウルトラマンエイティは、初代ウルトラマンから習ったバルタン星人への必殺技・ウルトラスラッシュを思いだしたのだ!」


 ここで『科特隊宇宙へ』から、初代マンがウルトラスラッシュ(スペシウムエネルギーをリング状にして投げつける切断技。第3次怪獣ブーム以前の書籍では「八つ裂(ざ)き光輪」と呼称されることが多かった)で飛行するバルタン星人二代目を真っ二つにする場面が挿入されるのだが、そんな大事なもん今まで忘れとったんかいっ!(笑)
 画面左から側転し、画面右にいるバルタンに向かうエイティだが、またしてもバルタンは消滅! エイティ、両手をカラータイマーに合わせたタメのあと、右手からウルトラスラッシュを放った!


 この一連も宅地造成地を画面下手前に配置したロングでとらえられ、エイティの豪快なアクションが連続して楽しめるのはいいのだが、続くバルタンが頭部から切断される状態で姿を現す場面は、正直いかにもなカポックが使用されており、先述した小型UFOから落下するバルタン人形とは雲泥(うんでい)の差であり、かなり残念ではある。
 せめて『A』第8話『太陽の命 エースの命』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060624/p1)でウルトラマンエースが幻覚宇宙人メトロン星人Jr(ジュニア)を必殺技バーチカルギロチンで真っ二つにしたときのように、スーツそのものをぶった切るくらいのことはしてほしかったような気がする(そのあと各地のアトラクションショーへの貸し出しで稼ぐかもしれないのに、なんて無責任な・笑)。


 ここに至るまでにあまりに迫力のあるバトルが展開されてきたこともあり、唐突であっけない幕切れはかなり欲求不満が残るものとなってしまっている。
 せめて第37話評の中で紹介した、小学館『てれびくん』80年10月号に掲載された居村眞二(いむら・しんじ)先生のコミカライズ作品『あやしい流星』のように、バルタンに苦戦するエイティを初代マンのスペシウム光線が救う! なんて展開であればなあ。前回の第44話もいくらニセ者とはいえ、ウルトラセブンがゲストだったのだから!


矢的「いいかみんな、あんまり意地の張りっこしてると、こういうことになるんだぞ!」
子供たち「どうもすいませ〜ん」
涼子「悪い宇宙人たちは私たちの心をいつも狙ってるんだから、もうケンカしちゃダメよ」


 ラストの涼子のセリフは、まさに先述した『禁じられた言葉』において、サトル少年に地球を売り渡すように迫ったメフィラス星人のことを彷彿とさせるものがある。
 第2期どころか第1期ウルトラシリーズの時点で既にマイナスエネルギーの概念が芽生(めば)えていたことがこれで明らかにされているような感があるが、いずれにせよ今回も第37話同様、バルタン星人は少年の心に目をつけており、「怪獣も結局人間が呼び出したものである」という石堂大先生のスタンスはここでも見事に貫かれている。
 「学校編」の設定を捨てたことで一度は失われたかに見えたマイナスエネルギーの概念が、「児童編」や「ユリアン編」で再び描かれたことにより、『80』を「初志貫徹(しょしかんてつ)」させたことは、やはり石堂大先生によるところが大きいかと思えるのだ。



 「ユリアン編」の一編ではあるが、ユリアン=涼子の出番はごく少ない(ひょっとして脚本はユリアン編が製作決定される以前に脱稿されていて、ユリアン登場部分は円谷プロ文芸部の方で加筆した?)。
 今回は完全に石堂大先生お得意のセリフ漫才が炸裂する抱腹絶倒(ほうふくぜっとう)の「児童編」であり、それに登場するバルタン星人はシリアスであるわけがなく(笑)、「どチンピラ」なキャラクターではあったものの、巨大化以降の都市破壊場面やエイティとのバトルは実に迫力あふれる仕上がりとなった。
 第37話に比べると「出番ですよ」(笑)とばかりにバルタンの出番も多く、娯楽作品としては完全に合格点が与えられる出来であるかと思える。


 ただ当時は先述の『てれびくん』において、居村先生が連載していた『ウルトラマン80 宇宙大戦争』(81年2〜4月号・ISBN:4813020089)で、ウルトラ一族対バルタン星人大軍団の壮絶なスペースオペラが展開中だったこともあり、それに比べると「ご町内」の出来事として終わった今回の作品は、小学生たちの視点からするとあまりにスケールが小さく映ってしまったかと思えるのだ。
 いや、今回バルタンが思い描いた少年の心を手始めに猜疑心で地球を全面戦争に陥(おとしい)れる侵略構想自体は実は非常にスケールが大きいものであるのだが、小学生に対してはいささか抽象的・観念的に過ぎたのではないかという感がある。


 前回の第44話の視聴率が好調だったこともあり、今回は関東・中部・関西の全地区で前回と比べて低下。関東の0.4%低下に対し、むしろこれまで比較的好調だった中部と関西での落ちこみが激しく、それぞれ前回から2.9%、3.5%も低下した(関西では第37話が全話中最低の視聴率8.6%を記録したが、ひょっとして関西ではバルタンは人気がないのか!?・笑)。



 なお、日本とオーストラリアの合作である『ウルトラマンG(グレート)』(90年・バンダイビジュアル)は全13話が製作されたが、『新・ウルトラマン大全集』(94年・講談社ISBN:4061784188)によると、実はメインライターである脚本家の会川昇(あいかわ・のぼる。現・會川昇(あいかわ・しょう))によって続編の「ウルトラマンG 新シリーズ案」も準備されており、第14〜17話はなんと「バルタン星人編」と題されていたそうである!
 バルタン星人が地球の内部に眠っている怪獣を覚醒させたその眼前に、『G』第10話『異星人狂奏曲(エイリアンラプソディー)』に登場して地球でひっそり生活していた夫婦宇宙人、変身生命体リュグロー&ベロニカが合体した巨大エイリアンが現れるも敗北する。
 そこにウルトラマングレートが帰還するが、当初は主人公の軍事組織UMA(ユーマ)のジャック=シンドー隊員ではなく、若い刑事に乗り移っており――この設定はのちの『ウルトラマンネクサス』(04年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060308/p1)を彷彿とさせるものがあるなあ――、その刑事が瀕死(ひんし)の重傷を負いながらも、ジャックに変身アイテムであるデルタ・プラズマーを届けるというストーリーの企画書が紹介されているのだが、その中には「ウルトラ兄弟が駆けつける展開もアリではないか」との一節があったのだ!
 この企画書を紹介したライター氏も「たぎるものがあるのだが」との個人的感慨を入れて、紹介文を締めている(奥付にもある、のちに『ウルトラマンメビウス』(06年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070506/p1)のメインライターになる当時は一介の特撮ライターだった赤星政尚氏による筆かしら?・笑)。


 残念ながらこれは幻に終わってしまったが、バルタン星人をレギュラー悪に据(す)えた、ウルトラ兄弟も登場する連続ストーリーからは、やはり『ウルトラマン80 宇宙大戦争』からの影響(?)が見てとれなくもない。
 よほどのドラマ・テーマ至上主義者でない限り、ウルトラファンであれば誰もが夢見るウルトラ一族対バルタン星人大軍団……やはり今回は『ウルトラマン80 宇宙大戦争』ほどではなくても、バルタン軍団対ウルトラ兄弟ユリアンくらいのことはやるべきではなかったのか?



<こだわりコーナー>


*正也の父・大作を演じた大谷淳は、国際放映製作の名作児童ドラマ『ケンちゃん』シリーズ(69〜82年・TBS)後期の作品にレギュラー出演していた俳優であり、『80』と並行して放映されていた『カレー屋ケンちゃん』(80年・TBS)にも店員役で出演していた。
 なお、この当時に春と秋の番組改編期にTBSが新番組宣伝の一環として放送していた『4月だョ! 全員集合』(秋はもちろん『10月だョ! 全員集合』であった・笑)の80年4月放送分では、この『カレー屋ケンちゃん』と『80』の紹介が寸劇形式で同時に行われた。
 『カレー屋ケンちゃん』の店でUGMの隊員たちがカレーを食べているところに――確か矢的が『ケンちゃん』の主人公・二代目ケンイチを演じた岡浩也(おか・ひろや)にライザーガンを披露し、ケンイチが「うわぁ〜かっこいいなぁ〜」と感動していたような気が――「怪獣出現!」の通報が入り、隊員たちはカレー代を払わずに即座に出動してしまう(笑)。
 続いて『80』第3話『泣くな初恋怪獣』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100516/p1)の特撮セットにおいて、硫酸怪獣ホーに戦闘機スカイハイヤーとシルバーガルが攻撃をかけるばかりでなく、ケンイチと妹のチャコ・弟のケンジがホーに殴りかかる(笑)。
 そしてウルトラマンエイティが登場! ホーに勝利をおさめるが、そこにケンイチの母――『ケンちゃん』シリーズで最も多く母親役を演じていた岸久美子(きし・くみこ)――が登場し、UGMが払わなかったカレー代をなんとエイティに請求! エイティはなんのことかわからず、困り果てるというものであった(笑)。


*正也の母・よし子を演じた石井富子は『快獣ブースカ』(66年)第31話『飛んできた遊園地』の看護婦役、『マイティジャック』(68年)第10話『爆破指令』では『ウルトラマン』の科学特捜隊・イデ隊員役で知られる二瓶正也(にへい・まさなり)が演じる源田(げんだ)隊員にからむバーのママ、『ウルトラマンA』第18話『鳩を返せ!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060907/p1)では飼っていた伝書鳩を、異次元人ヤプールによって大鳩超獣ブラックピジョンに改造されてしまう悲劇の少年・坂上三郎の母を演じるなど、円谷作品に出演歴が多い女優である。
 なおこれはまったくの余談だが、彼女は筆者が中学3年生のときの担任教師にルックス・体型ばかりでなく、妙にハイテンションでオーバーアクションな点まで酷似(こくじ)している。あの担任もひょっとしてバルタン星人の変身だったのか?(笑)


*正也の級友・土井を演じた南沢一郎は、これまた『80』と同時期にスタートした『1年B組新八先生』(80年・TBS)に西沢始役でレギュラー出演していた。主役回もあり、確か夏休みの時期に放映された林間学校の回(?)で、この機会に想いを寄せる同級生の女子生徒と近づこうとするも失敗を重ねた末、最後は想いが伝わるという内容であったかと(本放送と再放送を一度観たきりの記憶なので、事実と異なっていたら申し訳ない)。これには筆者はおおいに共感した(笑)。
 なお同じく『新八』にレギュラー出演していた生徒役の俳優の中で、小田康平役の斉藤康彦と永井真役の岩永一陽は、先述の『80』第3話でそれぞれゲスト主役の中野真一と恋仇の柴田を演じていた。
 またこの回で真一が片想いをするミドリを演じた鈴木真代(70年代後半の東映ヒーロー作品に子役でよく出演していたようである)は、『3年B組金八先生II』(80年・TBS)に佐々木博子役でレギュラー出演。第22話『父の死と高校進学』は彼女の主役作品である。
 同様のパターンとしては『80』初期の学校編でスーパー(ススム)役でレギュラー出演していた清水浩智もまた、『金八II』に学級委員の羽沢康男役で出演することとなる。第11話『クソまみれの英雄達』は彼の主役作品でもある。
 以上、『80』と『B組』シリーズとの微妙な関係でした(笑)。


(了)
(初出・当該ブログ記事〜特撮同人誌『仮面特攻隊2012号』(2011年12月発行予定)所収『ウルトラマン80』後半再評価・各話評より分載抜粋)



(編:奇しくも当該記事のUP日付に放映された『3年B組金八先生ファイナル〜「最後の贈る言葉」4時間SP(スペシャル)』の最後の卒業式のシーンに、『80』でミドリを演じた鈴木真代と、スーパーを演じた清水浩智も出演!
 『80』#42「さすが! 観音さまは強かった!」に登場するハズだった、芸能界を引退して政治家に転身したはずの三原じゅんこも出てたなぁ。いや30年以上に渡る国民的な人気番組シリーズだったのだから、選挙民のみなさんも国民のみなさまも文句はつけないと思いますが。むしろ義理人情に篤(あつ)いとポイントが上がるくらいだろう(笑)。
 エンディングテロップでは過去の卒業生中の現役芸能人は2列ではなく1列扱いで表記されていたけど、彼女だけ元芸能人なのに2列表記だったのは(しかし『金八』第1シリーズ昭和54(1979)年度卒業生のラストのトリではある)、自身で1列表記を辞退・遠慮でもされたのか?
 なおジャンルファン的には、第4シリーズ平成7(1995)年度卒業生である、『鳥人戦隊ジェットマン』(91年)の子役敵幹部・トランを演じた久我未来(くが・みく)と、『五星(ごせい)戦隊ダイレンジャー』(93年)の6人目、小学生が変身する白い戦士・キバレンジャーを演じた酒井寿(さかい・ひさし)のふたりの少年子役上がりの健在が確認できたことがチョットうれしかった。第4シリーズからでももう16年、彼らも30歳前後ですか……)


[関連記事] 〜特撮ジャンル作品と『B組』シリーズの接点について多数言及!

ウルトラマン80(80年)再評価・全話評! 〜序文

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100501/p1

ウルトラマンメビウス(2006年)#41「思い出の先生」 〜エイティ客演!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070218/p1


[関連記事] 〜バルタン星人登場編!

ザ・ウルトラマン(79年)#8「ヒカリ隊員の秘密が盗まれた!?」 〜バルタン星人登場!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090621/p1

ウルトラマン80(80年)#37「怖れていたバルタン星人の動物園作戦」 〜&漫画『ウルトラマン80宇宙大戦争』!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110108/p1

ウルトラマン80(80年)#45「バルタン星人の限りなきチャレンジ魂」

  (当該記事)

ウルトラマンマックス(05年)#33、34「ようこそ地球へ!」 〜バルタン星人前後編

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060503/p1

大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE(09年) 〜岡部副社長電撃辞任賛否!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101224/p1



『ウルトラマン80』全話評 〜全記事見出し一覧