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ウルトラマン80 36話「がんばれ! クワガタ越冬隊」 〜スクールカーストを陰鬱にならずに明朗に描写!

ファミリー劇場ウルトラマンエイティ』放映記念「全話評」連動連載!)
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『ウルトラマン80』全話評 〜全記事見出し一覧


第36話『がんばれ! クワガタ越冬隊』 〜スクールカーストを陰鬱にならずに明朗に描写!

昆虫怪獣グワガンダ登場

(作・石堂淑朗 監督・合月勇 特撮監督・高野宏一 放映日・80年12月10日)
(視聴率:関東7.6% 中部9.7% 関西9.4%)


(文・久保達也)
(2010年6月執筆)


 ペットのクワガタ虫が上級生の不注意で死んでしまったことを恨む少年の怒りと悲しみがクワガタ虫の死骸に乗り移って、昆虫怪獣グワガンダが誕生するというストーリーである。


 第33話『少年がつくってしまった怪獣』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101211/p1)に続いて、当初の『ウルトラマン80(エイティ)』(80年)がウリにしていたマイナスエネルギーの概念をそれと謳(うた)わないまでも強調した話だともいえるのであるが、さすがに石堂先生の脚本作品だけあって、マイナスエネルギー・怨念ネタでも陰欝(いんうつ)に陥(おちい)るどころか、底抜けに明るいC調の作品に仕上がっている。



 なんといってもゲスト主役のアッちゃんの上級生で、5年生の山(やま)ちゃんを演じた子役・大森直人の存在感というか、ほとんど国民的マンガ『ドラえもん』(69年)に登場するガキ大将・ジャイアン(本名・剛田武(ごうだ・たけし))の実写版のような妙な威圧感が光っている(笑)。
 一見ヌボ〜っとした表情ながら、角刈りの頭に巨体はもちろんのこと、デニムのオーバーオールを終始着用しているのが、いかにもお山の大将といった雰囲気を醸し出しており、しかも彼が登場時には必ず往年の大人気バラエティ番組『8時だョ! 全員集合』(69〜85年・TBS)に出演していたザ・ドリフターズのリーダー、故・いかりや長介(ちょうすけ)のごとく、


「オ〜スっ!」


 と挨拶しているというのも実にいいセンスである(笑)。


 昆虫の標本が壁一面に飾られたアッちゃんの自室で、彼の友人たちであるモッちゃんと山ちゃんは初冬になっても生き続けているクワガタ虫を見せてもらう。
 アッちゃんはクワガタを越冬させるのに良い方法がないか、TBSラジオで平日夕方に放映していた長寿番組『全国こども電話相談室』(64~08年)に電話をかける。今ならインターネットに頼るところであろうから、さすがにこのあたりは時代の違いを感じざるを得ない。


 この場面、電話をかけるアッちゃんを奥に立たせ、手前右に当時出始めたステレオラジカセ(ラジオ&カセットテープ)、手前左にクワガタの入ったケースを配置し、


・ラジカセの後ろに『電話相談室』の丸井先生の声にじっと耳を傾ける学究的なモッちゃん
・ケースの後ろにはそんなものには全然耳を貸さず(笑)、ひたすらクワガタと戯れる多動的な山ちゃん


 という構図は、両者のキャラの違いも如実に浮かび上がらせており、この回の隠れた名場面である。


 山ちゃんは、浅草からいとこが遊びに来るからと、一晩クワガタ虫を貸してくれと頼む。しぶるアッちゃんだが……


モッちゃん「山ちゃんは乱暴だからな」


山ちゃん「なにっ、それが下級生が上級生に向かって云う言葉か!」(モッちゃんの両耳を強く引っ張る!・笑)


 見事にクワガタ虫を強奪(笑)した山ちゃんはその夜、自室の机にクワガタ虫のケースを置いたまま、読んでいたマンガ雑誌を放り出して眠りについてしまう。様子を見に来た母親が


「あら虫、なぁにこんなもの、気持ち悪い!」


 と、初冬の寒い晩なのにクワガタの入ったケースを外に放り出してしまう!


 翌朝、クワガタの死骸をアッちゃんに返す山ちゃんだが、


「いや、オレは悪くないのさ。悪いのはおふくろさ」


 だの、


「まぁ仕方ないよ。生きるものは必ず死ぬ。なんまいだ、なんまいだ」


 とまったく悪びれることもない!


モッちゃん「アッちゃん、学校行こう。遅れるよ。じゃあ僕、先行くからね」


 思わず近辺の小高い丘に駆け上がり、泣きながら土を掘り返し、クワガタを埋め、石のお墓を立てて供養(くよう)するアッちゃん……


 だがその一方、山ちゃんはクワガタのことなんかとうに忘れてしまい、「やだぁ〜、やめて〜」と嫌がる女子児童を追いかけ回し、


「や〜い、えっちゃんの母さん、出ベソッ!」


 とまったく懲りた様子がない!(笑)


アッちゃん(心の声)「山公(やまこう)なんか、死ねばいい!」


 と、ここでは親愛ではなく蔑称の意味を持つ「公」を名前の末尾に付けて怨念をあらわにする(80年代くらいまでは、「ワン(犬)公」や「アメ(リカ)公」みたいに名前の末尾に「公」をつけて子供間での友だちのアダ名にしたものだけど、今でも同様だろうか? 廃れてしまっただろうか?)。


 しかし、なんと山ちゃんは他人の気持ちに鈍感なようでいながら、そういう気配に関しては敏感なのである(笑)。悪ガキというのは鈍感ではなく、相手がイヤがることを充分に察知していて、それに対して共感・同情するのでなく嗜虐心にかられてイジメるというのが正解なのだろう(爆)、山ちゃんはその視線を見逃さなかったのだ!


「おまえまだクワガタのこと、恨んでんのか!? しつこいぞおまえ、この野郎!」(アッちゃんの耳を強く引っ張る!・笑)


 そしてイヤがっているモッちゃんの方にも


「だまってオレについてこい!」(故・植木等か!・笑)


 と強引に連れ出し、アッちゃんが泣きながらクワガタを埋めた丘へと繰り出した山ちゃんは、


「おじいちゃんは山に芝刈りに、この山ちゃんは山へ山芋掘りに出かけました」


 と、どこまでも脳天気である。


 本話の導入部で、同じ丘にポリバケツを持参してアッちゃんとモッちゃんの前に山ちゃんが現れた際に、


アッちゃん「なんなの? 山芋でも掘りに行くの?」


山ちゃん「バカ云え! 誰が山芋なんか掘るものか!」


 なんて会話があったのにもかかわらずである(笑)。


 なんでも晩メシで麦トロを作るためだそうだが、このあたりも山ちゃんの身勝手ぶりが的確に表現されていて見事である。


 この一連はコミカルに演出されてはいるものの、アッちゃんと山ちゃんのキャラ・性格の違いを絶妙に対比させながら、逆恨みではなく正当性があるものだがアッちゃんの心の中で山ちゃんに対する怨念・マイナスエネルギーが生み出されるまでの過程が丹念に描写されているのが見事である。そして、その頂点となるのが先の「山公なんか、死ねばいい!」なるアッちゃんの心の中でのセリフである。


 誰もが子供の時分に、いや大人になってからでも一度や二度くらいは誰かのことを「死ねばいい!」、死なないまでも「目の前から消えていなくなればいいのに……」なんて思ったことはあるだろう(なんて一般化してはいけないのかもしれないが。ちなみに筆者は数十回は思ったことがあります・爆)。こういう身も蓋もない人間一般にやどる負の感情は、子供番組ではさすがにタブーとされるのか、多くのつくり手たちは大人だけが汚れていて子供はキレイだとでも思っているのか、なかなか描かれないものである。


 しかし、さすが石堂先生、第34話『ヘンテコリンな魚を釣ったぞ!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101218/p1)もそうであったが、子供たちがギャアギャア騒ぐような軽妙なドラマの中でも、大人だけでなく子供であっても生まれつき内面に抱えている人間一般の負の感情や人間関係・力関係の軋轢(あつれき)を白日(はくじつ)のもとにさらけ出しているのだ。これこそが真の意味での「子供」の本質を描いた「児童ドラマ」ではなかろうか?



 そしてこの回の特異性はそれだけにとどまらない。導入部で防衛組織・UGM気象班であるレギュラーキャラ・小坂ユリ子隊員により、シベリアの寒気団が日本上空を覆い、地表と上空の温度差が10度近くにおよぶことから「逆転現象」が発生する可能性が示唆(しさ)される。ユリ子の声をバックに、寒気団を表現した黒雲が日本列島や上空の太陽を覆い尽くす様子を画面で描いているのも、科学的なセリフだけではなく子供や一般層でも目で見てわかる映像演出になっていてよい。


イトウチーフ「なるほど、『逆転現象』ね。……ところでその、『逆転現象』っていったいなんだ?」


 天下の地球防衛軍・極東ゾーンの精鋭組織・UGMのチーフ(副隊長)で戦闘機のパイロットたるものがそんな「天候現象」のことを知らずに、一同に「え〜っ!?」とアキレられるというギャグ描写がいかにも石堂先生の脚本らしいが(笑)。イトウチーフの無知無学もミリタリズム的に真にリアルかはともかく、科学的な知識よりも無骨で経験値に満ちた彼の体育会系な性格を漫画・劇画的な意味では強調できており、子供向けヒーロー番組における登場人物のキャラ付けとしては順当なところだろう。


 「逆転現象」とは温度の異なる空気が接触し、その境界で光線が屈折することで、ないものが見えてあるものが見えなくなる現象のことであり、「蜃気楼(しんきろう)」がその一種とされている。それをNHKの教育番組のようなノリでナレーションと画面で解説するあたりも実に親切である。


 冒頭でシベリアの寒気団に覆われるような寒い季節であることを強調したり、山ちゃんも初登場場面で「なんだか風が冷たくなってきたなぁ」なるセリフを吐いて「ヘックション!」とくしゃみをしたあとに、冷たい北風を表現するような効果音が使用されるなど、12月に放映されることを見越した季節感は的確に表現されている。
 通常は真夏に活動して秋口には死んでしまうクワガタ虫を延命させるには部屋を暖かくする必要があるが、それがいかに困難なことであるかを天気予報での冬の寒気団襲来で、「逆転現象」や「蜃気楼」についての親切な説明も、本話の後半でこのクワガタ虫の非科学的な巨大化を遂げたときに劇中キャラたちに「逆転現象」「蜃気楼」の一種として誤解させることの「伏線」とする作劇意図も成功している。


 ただし、こうした題材のストーリーの場合、普通は「SF」的なテイストが濃くなるものだが、今回はその「逆転現象」やそれに付随する後述する事象をむしろギャグ描写としても機能させている(笑)。


オオヤマキャップ「なにっ! 多摩の丘陵地帯にドームが!?」


 寒い夜、突如出現したクリスタル状のドーム型の建物を警戒し、周囲を旋回するUGM戦闘機・シルバーガル。


オオヤマキャップ「おい、何をグルグル回っているんだ! 突っこめ!」


 と、このドームが先の「逆転現象」による「蜃気楼」であることを周辺の住民に示して安心させようとする、防衛組織・UGMのオオヤマキャップ(隊長)のキビしい命令! 「蜃気楼」だと云われても、あまりにリアルで本物だとしか思えない「蜃気楼」に躊躇していた主人公・矢的隊員だが、遂に観念する。


「石から生まれた石の子が、ハチに刺されて名誉の戦死……」


 「石から生まれた孫悟空」の出だしではじまる童謡『そんごくう(孫悟空)』と、後年の大女優・高峰三枝子(たかみね・みえこ)が歌唱した戦時中(1940・昭和15年)のヒット曲なるも軍部に睨まれて発売禁止になった『湖畔』の替え歌で、兵隊さんたちの間で流行って戦後にヒットもした『昨日生まれた豚の子』の出だし「昨日生まれた豚の子が 蜂に刺されて名誉の戦死」のフレーズを合体させた、子供たちにはわからない、矢的たち青年の世代にもわからないし口にしないであろう、当時のオジサン世代向けの駄洒落である(笑)。


 それを唱(とな)えて、矢的はシルバーガルでドームを突っ切る!(蜃気楼のクリスタルドームをシルバーガルが通り抜ける様子を表現した合成場面も絶妙!)


 ところがオオヤマキャップは……


「……びっくりさせるな……」


広報班・セラ隊員「突っこめって云ったのはキャップですよ!!」


「……そうか、ひどいキャップだ……」


 この場面はさすがのオオヤマでも単なる無謀な鬼隊長ではなく、蜃気楼だと理性ではわかっていても感情面では「おびえ」や「ひるみ」などの人間的な感情も当たり前に持っている人物である二面性や、万一の失敗を想像したり自身の隊長としての強権ぶりをも実は客観視もできている理性的な人物としても描写されており、単なるギャグ描写だけに終わっていない二重・三重の意味を持たせているあたりも実に好感が持てる。


 そしてこれが先にもふれた伏線となり、再度「逆転現象」を使ったギャグ演出がなされていく(笑)。


住民たち「あっ、蜃気楼だ! 今度は怪獣の蜃気楼だ!」


 もちろん怪獣番組である以上は、この怪獣が「蜃気楼」「虚像」であっては作品が看板倒れになってしまう! そんな事情(笑)でアッちゃんのマイナスエネルギーが乗り移ったクワガタ虫の死骸が毎度、質量保存の法則を無視(笑)した巨大化を果たして怪獣グワガンダとなって出現! だがUGMはグワガンダをも先の「逆転現象」による「蜃気楼」だと誤認してしまう!


イケダ「シルバーガル、突入します!」


 イトウチーフの専用戦闘機・エースフライヤー、矢的が搭乗するスカイハイヤー、フジモリとイケダの両隊員が搭乗するシルバーガルが3機編隊で出撃! シルバーガルはドーム出現時と同様、グワガンダに果敢に突っこもうとする!


エミ「でもキャップ、いったいどこのクワガタが蜃気楼に?」


オオヤマ「そりゃキミ〜、インドネシアとかボルネオとか……」


 だがその可能性はゼロであると、ユリ子隊員から聞かされたオオヤマキャップは大あわて!


オオヤマ「突っこむのは待った!!」


イトウ「フジモリ、イケダ、引き返せ!!」


イケダ「ダメです!!」


フジモリ「もう引き返せません!!」(悲鳴!)


 間一髪で脱出するフジモリとイケダ!(キャノピーが開いて隊員の人形が飛び出す特撮演出は珍しいが、第2期ウルトラシリーズでも時折り見られたものである)


 シルバーガルはグワガンダに衝突! その寸前、操縦席からの主観でグワガンダに急接近していく様子をとらえた特撮カットも迫力満点!


 墜落! 炎上するシルバーガル!!


フジモリ「なにが蜃気楼なもんか!」


イケダ「キャップはクビですよ!」


 「山公なんか、死ねばいい!」同様、云ってはいけない「ツッコミ」の一言を云ってしまうイケダ隊員(笑)。


 この回ではオオヤマキャップとイトウチーフを「ボケ」役にしてしまっている(そういや同じく石堂先生が執筆した第34話もそうだった・笑)。悪意はないし無理もないものの、キャップの命令でエラい目に遭ってしまう、トボケたUGM隊員たちの描写もさらに輪をかけた「ボケ」役の上塗りともいえるのだが、山ちゃんの身勝手ぶりに翻弄(ほんろう)されるアッちゃんやモッちゃんの境遇とも一応は符合させつつ、しかし大切に飼育していたクワガタ虫を喪ってしまったアッちゃんの深刻さよりはコミカルさの方が強調されている。


アッちゃん「UGMのお兄さん!」


イケダ「おっ、キミたちいい子だなぁ。オジサンって云ったら返事しなかったぞ」


 こんな場面でもギャグ描写を入れていて笑ってしまうが、ギャグ的な応答をしてくる隊員たちを描くあたりがまた石堂脚本的といえるかもしれないし、そうではなくて60~70年代の第1期・第2期ウルトラシリーズにはありえなかった関西・大阪人的な「言葉遊び」による隊員たちの応答は、当時の大MANZAI(漫才)ブームに象徴されるような80年前後に端を発し、以降の80年代いっぱいを覆うことになる「時代の空気・気分」の反映なのかもしれない。あるいはそれらもまた評論マニアにありがちな単なる深読みに過ぎなくて、単にイケダ隊員役の岡本達哉による撮影現場かアフレコ現場でのアドリブなのかもしれないが(笑)。


 石堂先生といえば、『ウルトラマンA』第46話『タイムマシンを乗り越えろ!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070319/p1)という怪作がある。石堂先生の発案ではなく、防衛組織・TAC(タック)の竜隊長が名作長寿テレビ時代劇『大江戸捜査網』(70~84年)で副主人公である素浪人姿の隠密同心(秘密捜査官)・井坂十蔵(いさか・じゅうぞう)役でレギュラー出演していたことから、TBSまたは円谷プロのプロデューサーからタイムスリップでチャンバラをやってくれというオーダーに応えただけかもしれないが、TAC隊員たちを江戸時代ではなく奈良の大仏の開眼(かいげん)のタイミングである奈良時代(笑)へとタイムスリップさせて、「小枝1本折るだけでも現代の世界が変わってしまう!」などと時間SFの基本を劇中でセリフにしつつも、その設定は段々と無視されていき、最後はウルトラマンエース自身がそのへんの樹木を引っこ抜いて敵の怪獣(超獣ダイダラホーシ)とチャンバラを繰り広げてしまうという話である(爆)。まぁ特撮チャンバラの方はシナリオでは「激しい戦い」と1行だけで済ませてあったのを、特撮監督が撮影現場で即興で殺陣(たて・アクション)を付けた可能性も高いので、石堂先生は無罪なのかもしれないが(笑)。


 このように昭和ヒト桁~昭和10年代生まれの戦中世代がつくっていた70~80年代の特撮ヒーロー番組のつくり手たちはSFセンスには大幅に欠けていて、その面では当時の子供たちの方がまだ科学・SFリテラシー(読解能力)があったりして、幼児のころはともかく小学校中学年以上になると、この手のテキトーなSF話には子供心に不信感を抱いたものだけど、今回の『がんばれ! クワガタ越冬隊』にはそのような致命的なSF的欠陥もないので、安心して楽しめることができるだろう(笑)。


 まぁ70~80年代の特撮ジャンル作品とは「そんなもんだ」と割り切れるオジサンの年齢になってくると、『A』の主人公の北斗星司(ほくと・せいじ)隊員が馬を駆ってチャンバラを演じ、


「峰打ち(みねうち)じゃぁ〜!」


 などとチャンバラしているあたり、実に楽しめたりもするのだが……(「刃(やいば)」ではなく「峰」の方で打ち込まないと、子供番組に似つかわしくない殺人行為になってしまう・笑)。



 ところで、今回の『がんばれ! クワガタ越冬隊』でお題のひとつとなった「逆転現象」は、本話後半の急展開に対する「伏線」だけにとどまってはいない。


フジモリ「そうそう、全国各地でUFOの出現騒ぎがありました」


イケダ「そうそう、あのときはおかしかったなぁ。エイティがですね、怪獣が潜んでいるビルを持ち上げようとしたら、これが「逆転現象」の「蜃気楼」。さすがのエイティも驚いてたなぁ〜」


 本話の導入部でのUGM隊員たちの会話では、「逆転現象」をネタにテレビ本編では描かれてこなかった事件や戦いの存在が語られることで(欲を云うなら回想場面として新撮してほしかったところだが)、作品世界の幅の広さと奥行きを示すことにも貢献しているのである。しかも「去年」の出来事として!


 『ウルトラマン80』第15話『悪魔博士の実験室』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100808/p1)では、UGMの大型宇宙母艦・スペースマミーが6カ月の宇宙巡航から帰ってきたという設定になっていた。第13話『必殺! フォーメーション・ヤマト』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100725/p1)でもスペースマミーは登場しているから、第13話と第15話の間には半年が過ぎていたということになるのだ!? 第25話『美しきチャレンジャー』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101016/p1)でも、ゲスト主役の女性新人隊員・ジュンの兄が怪獣に殺されたのが1年前と設定されていた。すると、『ウルトラマン80』の物語は足掛け2年間にわたる物語だということになるのだ!?


(まぁ、第13話から半年が経った第15話の直後の第16話『謎の宇宙物体スノーアート』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100815/p1)では、武道館の隣に実在している「宇宙展」が開催された科学技術館に「1980年7月開催」の垂れ幕がかかっているので、第1話『ウルトラマン先生』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100502/p1)が1980年4月の桜ケ丘中学校の入学式を描いていたことを思えば、いかに好意的に深読みをしてあげようとも、シリーズ構成などもないラフなつくりのこの時代のジャンル作品なので、やはりおもいっきり矛盾は生じているのだが・笑)



白坂紀子さんも当時TBSの『夕やけロンちゃん』(78〜82年・TBS)に出演していた関係から局側の要請でした」

タツミムック『検証・ウルトラシリーズ 君はウルトラマン80を愛しているか』(辰巳出版 06年2月5日発行・05年12月22日実売・ISBN:4777802124)「監督・湯浅憲明が語った『ウルトラマン80』」)



 そしてもう一点。『80』第1クールの「学校編」のレギュラー俳優たちがリストラされる中で唯一、桜ケ丘中学の事務員・ノンちゃんを演じていた白坂紀子のみ、TBS(テレビ局側のプロデューサー)の意向でUGMの気象班・小坂ユリ子隊員としてスピンオフしたものの、出撃していく矢的と通路でスレ違いざまに会話させるくらいしか使い道がなかったのだが(実はシナリオ上にも該当シーンはなくて撮影現場で強引にネジこんでいたとか?・笑)、今回は気象班の面目躍如とばかりに全編に渡って彼女の活躍ぶりが描かれている点にも注目したい。
 彼女は目立っていないということは決してなかったのだが、専業の女優さんではないので取って付けたようなサービス的な点描にとどまっており、基本的には各話のストーリーには絡んでこなかった。しかし石堂先生が深く意図して執筆したかは別として(笑)、彼女もカメラ前での演技に慣れたであろうころのユリ子活躍の貴重な回ともなっている。余談だが、白坂紀子は本作の数年後に俳優・志垣太郎(しがき・たろう)の夫人となった。



 さて今回登場する怪獣グワガンダ。ルックス的には


「うん、たしかにカブト虫でもコガネ虫でも弁慶でもない! たしかにクワガタだ!」


 とイケダが語った通りなのだが(弁慶なんて虫は知らんけど・笑)、目がなんと4つもある! これはアッちゃんの怒りがクワガタに乗り移ったということで、余分に2つある目はアッちゃんの怒りの目であると筆者的には深読みしたいところだが。
 それはともかく、目が2つだけだと「昆虫」がそのまま巨大化しただけの弱そうな存在にとどまるけど、目が4つとなることで昆虫でありながらも昆虫を超えた非実在の異形(いぎょう)の「ウルトラ怪獣」といったイメージになるので(年長者向けのSFホラー的でゲロゲロなクリーチャーや、往年の「怪獣恐怖論」的な「恐怖の象徴」としての怪獣像ではなく、子供や幼児にも好かれるような少々の愛敬もあるマイルドなモンスターという程度の意味)、その点ではさりげなく秀逸なデザインである。その一方でカラーリングは全体的にツヤ消しの黒で塗装されており、良くも悪くも『80』に登場する色彩的にはやや地味な怪獣でありながら、素体が黒系統の体色である甲虫なのでややリアル志向の趣(おもむき)も感じられる。


 鳴き声は初代『ウルトラマン』(66年)第38話『宇宙船救助命令』に登場した、同じ昆虫型の宇宙怪獣である光熱怪獣キーラの声を若干低くしたような感じである。
 なんと出現時には『80』初期編での怪獣出現場面で多用された「ピュルルル〜~~ン」という電子音的な効果音も使用されている。これは脚本家や監督の裁量ではなく効果音を付けているスタッフの独断かと思われるのだが、グワガンダが実は『80』初期編のマイナスエネルギー出自の怪獣たちと同系統の怪獣であると、子供たちや第2期・第3期ウルトラ擁護派の特撮マニアたちや筆者が長年深読みしたがってきたのも、今思えばひとえにこの効果音のせいだったのかもしれない(笑)。


 山芋掘りに来た山ちゃんがクワガタの墓である石をどけてスコップで掘り返すや、巨大な実物大のグワガンダのツノが現れる!


 この描写も迫真性に富んでいるが、猛烈な土煙を吹き上げて丘の頂上を突き破り、オープン撮影であおりでとらえたグワガンダ出現場面は迫力満点!


 ドシン! ドシン! と派手な足音を立てながら、丘の上から降り、マンション風の建物を破壊するグワガンダ!


山ちゃん「あっ、あいつはボクに殺されたんで、ボクを恨んでるのかもしれない。こわいよ〜。アッちゃん、許して」


 山ちゃんもクワガタの件に関して良心の呵責がまったくないワケではなく、少しは心当たりがあるものとして描写もするのだ(だからと云って、免罪しきれるものではないけれど・汗)。


アッちゃん「いまさらボクにそんなこと云われたって、ボク知らないよ!」


モッちゃん「こっちへ来るな怪獣! むこうへ行け!」


 石堂先生が手掛けた第34話『ヘンテコリンな魚を釣ったぞ!』でも、怪獣から逃げようとするゲスト子役たちが、我が身が大切で友人たちにこういう責任のなすりあいをしていた。子供たちも清らかな存在では決してないのである(笑)。


 超低位置に構えたカメラで車のミニチュアを踏み潰しながら進撃するグワガンダの足元をとらえ、子供たちに迫りつつある危機を描写した特撮場面は臨場感あふれんばかり。本編場面においても終始パトカーや消防車のサイレン音が流されているというのも緊迫感にあふれており、絶妙な相乗効果を発揮している。


 グワガンダを丘に誘導しようと周囲を旋回飛行するエースフライヤーとスカイハイヤー! だが矢的の乗るスカイハイヤーがグワガンダの巨大なハサミに挟まれ、グルグルと振り回されたあげく、地上に放り投げられた!


 燃え盛る炎の中からウルトラマンエイティ登場!
 豪快な一本背負い
 飛び蹴り!
 バック転を連続で決めて華麗にキック!
 グワガンダの猛攻を交わして側転!
 さらには背後のグワガンダに向けてキックをかます妙技も!


 実にテンポよく繰り出されるエイティの荒技。それらによってひっくりかえったグワガンダがフィルムの逆回転を利用し、即座に起き上がる描写が何度も挿入されるのは原始的な手法で安っぽい映像だが、すぐにはやられないグワガンダの強敵感をもアピールしている。またカットが変わるごとに手前に配置される民家や車、電柱などのミニチュアを巧みに置き換え、同じ景色を二度と見せないようにしている工夫もされている。


 エイティはグワガンダに背負い投げをかけようとするが、そのままグワガンダの重量で押し潰され、辛くもかわしたものの、ここからやや劣勢に……
 グワガンダの猛攻に押されるエイティを、手前の民家の群れをナメながら「長回し」にとらえた場面は、『帰ってきたウルトラマン』(71年)第33話『怪獣使いと少年』の巨大魚怪獣ムルチVSウルトラマンの場面をも彷彿とさせる。

 
 グワガンダのハサミにブン投げられたエイティが落下した場所にあったビルが崩壊!
 エイティは「待った!」という手のひらでのジェスチャーをかけ、グワガンダに握手を求めるが、拒絶されて大地に放り投げられる!(笑)
 街路樹を引っこ抜いて、くやしがるエイティ(笑)――街路樹・植物とはいえ生物であり公共物でもあるから、それを一時の私的憤慨で引っこ抜いてしまうのは、今から観るとやや問題がある表現かもしれないが(汗)――。


 両者の戦いを作戦室で見守っているオオヤマキャップ・エミ・セラ・ユリ子隊員。作戦室のモニターに合成された特撮場面というのはシンプルな手法ながらも、ウルトラマンVS怪獣の戦闘中に防衛組織の隊員たちは何をしているのか!? といった疑問を視聴者に生じさせないため、要は本編部分と特撮部分を遊離させないための王道の処置も手堅くほどこされている。


 エイティはグワガンダの背中の甲羅で転がされ、さらには巨大なハサミで足をとらえられて転倒! そのままグワガンダにのしかかられる!


ナレーション「怪獣の正体はアッちゃんの怒りなのである。どんな怪獣にも負けないエイティ。しかしそのエイティも子供であるとはいえ、人間の気持ちには勝てないのだ!」


 今回のグワガンダが人間のマイナスエネルギーの産物であると深読みしたい特撮マニアたちのさらなる理論武装の根拠になるかもしれないナレーションである(笑)。


山ちゃん「エイティがボクを見たぞ!」


モッちゃん「違うよ、アッちゃんを見たんだい!」


山ちゃん「ホントだ。アッちゃん、エイティがおまえを見てるじゃんか」


 アッちゃんの目線でとらえたかのような、エイティがグワガンダの下敷きになって苦しんでいる特撮場面では、右側には車が2台にアパート風の建物と電柱が配置されているが、なんと左側にはご町内の掲示板まで造形されている! 今回のミニチュアセットはグワガンダが出現した小高い丘の麓に広がる新興住宅街といった趣なのだが、緑豊かな田園都市の風景も見事に再現されており、実に贅沢(ぜいたく)なつくりである。


 エイティがその視線で訴えているのを感じとったアッちゃんは……


「もう怒らない! ボクのクワガタが死んだからといって、山ちゃんも死ねばいいと思ったボクが悪かったよ!」


 たしかに山ちゃんは乱暴でワガママで勝手な奴である。しかしだからといって、彼の罪状が万死(ばんし)に値する! というほどのことではないのだ(笑)。


 先に山ちゃんが『ドラえもん』のジャイアンの実写版のようだと書いたが、山ちゃんはジャイアンのようにのび太をゲンコツで殴ったりはしていない。アニメや漫画だから殴っても記号的で生々しくはならないが、実写ドラマで殴ったフリをするだけとはいえ擬闘としてゲンコツで殴ってしまう描写だと、いかにフィクションとはいえ殴られる方の「痛み」も少々感じられてきて「お気の毒」の度合いも高くなって作風も重たくなりすぎてしまう(笑)。本話の暴力描写は先述したようにアッちゃんやモッちゃんの耳を強くひっぱるという程度に抑えられており、「乱暴」ではあっても「凶暴」とまでは感じられないのである。これは山ちゃんが一見今回の悪役ではあるものの、真の「悪」は実はアッちゃんの「心」であるとされていたことから、シナリオ上ではひょっとしたら殴っていたかもしれないが(笑)、必要以上に山ちゃんの行為が視聴者に不快感を与えないために本編監督側で工夫・調整された演出なのだろう。


 これと似た例が『ウルトラマンタロウ』(73年)第46話『日本の童謡から 白い兎は悪い奴!』(この話も石堂先生の脚本)にもある。登場するゲスト主役の少年・太一が住んでいるアパートの大家(おおや)さんの演出である。この回ではペットの飼育が禁止されているアパートで太一が飼っていたウサギを大家が毒入りの餌(えさ)で殺してしまう場面があり(!)、大家が悪役として描かれているが、社会通念上は太一の方も悪いのである。したがって必要以上に大家を悪人と感じさせて単純な善悪二元論にしても作劇や演出的に失敗なのである。
 そしてこの話で巧妙だと思えるのが、大家を演じた俳優がいかにも無理解で非人情で冷酷な頑固オヤジといった趣の俳優ではなく、『ウルトラQ』(66年)第6話『育てよ! カメ』の教師役や、『帰ってきたウルトラマン』第30話『呪いの骨神(ほねがみ)オクスター』の学者役、『ウルトラマンA』第30話『きみにも見えるウルトラの星』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061125/p1)や『ウルトラマンタロウ』第8話『人喰い沼の人魂』の警官役など、昭和のウルトラシリーズの常連ゲスト俳優だった故・大泉滉(おおいずみ・あきら)だったことである。これは脚本家の裁量ではなく、本編監督やプロデューサー側でのそれを目論んだキャスティングなのだろうが、氏の個性も手伝って悪役的な要素は残るものの実にトボケた味わいのユーモラスな憎めない存在として描かれることで、作品に過剰な不快感をもたらすことがない存在となっていた。


 だから今回の山ちゃんを一線を超えてしまうほどの大悪人として描かないためにも、非常に困った存在ではあるものの、どことなく憎めないユーモラスな人物としても描く必要があったのだろう。その意味でも山ちゃんを演じたのがいかにも悪ガキといった趣の子役俳優ではなく、今回演じた大森直人みたいな一見ポ〜ッとした感じの子役だったことは実に的確なキャスティングだったのではなかろうか?


山ちゃん「あっ、おまえやっぱ……」


 とはいえ、すんなりキレイごとのハッピーエンドに行くのも、いかにも教育テレビの道徳番組のようにウソくさくなるので、この期(ご)におよんで一瞬、また逆恨みしそうになる山ちゃんの品性下劣さを改めて入れてみせるワンクッションも、この手のガキ大将の性格の「リアルさ」とちょっとしたストーリー展開上の「意外性」も醸してくれている(笑)。
 

モッちゃん「もとはといえば、山ちゃんが悪いんだぞ!」


 ついにモッチャンも彼に臆(おく)せずに道理の通った正論での反撃を開始した! フジモリやイケダにも諭(さと)され、山ちゃんは遂に……


「ごめんよ、オレが悪かったよ」


 と謝罪する。


アッちゃん「うん、ボクもう怒ってないよ!」


 あまりにも元気に明るく答えるアッちゃん!


 この急激な心境の変化にはおもわずテレビの前でコケてしまうが、ここは30分番組としては仕方がないだろう。ここでアッちゃんが山ちゃんを許す・許さないという葛藤が延々と生じてしまうと、その方がリアルであってもお話が重たくなりすぎてしまうし、何よりも30分の尺では終わらなくなってしまう(笑)。


 これでグワガンダの体内に蓄積されたマイナスエネルギーが急速に減少したのか、エイティは形勢逆転!
 高々とジャンプしてグワガンダの巨大なハサミの間に飛び蹴りをかまし、バック転を連続でキメて再度グワガンダに向き合った!


 恐れをなしたか、グワガンダは丘へと逃げ、地底に潜っていく……


 グワガンダが潜る丘の手前にも、瓦ぶきの屋根の民家の群れや多数の電柱のミニチュアが…… 贅沢なミニチュアワークばかりではなく、画面に奥行きが感じられるカメラワークの効果も絶大であった。


 今回はその子供が飼育していたクワガタ虫という出自からも、ゲスト怪獣グワガンダはウルトラマンエイティの必殺光線で盛大に爆発四散することなく(笑)、地の底へ帰っていくことで延命を果たした。悪い心から生まれた怪獣とはいえ、悪い怪獣ではないのだし、元はゲスト少年が心血をそそいできたクワガタ虫なのだし、もちろんそのままの図体でも人間と共存することはできないのだから、倒されないけど共存もしないで人間社会からは去っていく……というオチが妥当でもあるだろう。


 しかしマイナスエネルギーの強大さを示すためか、グワガンダがかなりの強敵として描かれ、久々にバトルシーンの尺が長く、戦闘の高揚の充実度は満点であった。もっとも石堂先生のシナリオには単に一行、「激しい戦い」としか書かれていなかった可能性が高いとは思うが(笑)。このへんは円谷プロの高野宏一特撮監督による特撮演出と擬闘の車邦秀によるアクション演出のセンスの勝利だろう。それにしても、バトルシーンが通常より長い回にかぎってウルトラマンたちの胸中央にあるカラータイマーが点滅しないのはウルトラシリーズ最大の謎である(笑)。


 グワガンダが潜った丘には、アッちゃんが飼っていたクワガタが眠っていた。


アッちゃん「じゃあ、このクワガタ、標本にして山ちゃんにあげる」


山ちゃん「どうもありがとう」


 ふたりが和解したとき、死んだはずのクワガタが動き出した!!


 アッちゃん、モッちゃん、山ちゃんは、今度こそクワガタを無事に越冬させることを誓い合う!


子供たち「がんばれクワガタ越冬隊! がんばれクワガタ越冬隊!……」


 丘の上で子供たちの掛け声が元気にこだまする……



――石堂さんは雑誌『ドラマ』(映人社・93年9月号)の中で「悪人はあまり書いたことがない」とおっしゃっています。この感覚は石堂さんの怪獣像にも反映されているのでは?


「それはね、僕が大学でドイツ文学をやっていた時(引用者註・氏は東京大学文学部独文学科の出身)、ヨハン・ヴォルフガング・ゲーテの悲劇『ファウスト』(1808年)を読んでね。あれにメフィストフェレスという悪魔が出てくるでしょう。このメフィストという「悪」とは何かということを、僕は論文のテーマに選んだんです。そこで導き出した結論は、メフィストファウスト自身が呼び出したものであると。悪とは人間の外に客観的に存在するものじゃなくて、人間の内から呼び出されたものであるという。いわゆる世の中に「絶対悪」というのが最初からあって、それをやっつければOKという話じゃない。そういう感覚が、ウルトラマンを書いていた時にも確かにあったと思いますよ。怪獣も結局、人間が呼び出したものであると」


(引用者註・悪魔メフィストフェレスは、初代『ウルトラマン』第33話『禁じられた言葉』に登場した悪質宇宙人メフィラス星人のネーミングの語源。『ウルトラマンネクサス』(04年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041108/p1)に登場する最初のウルトラマン型の悪の超人・ダークファウストやふたり目の悪の超人・ダークメフィストの語源でもある)



――『80』という番組には、怪獣は人間のマイナスの心の化身だというテーマがあるんですが、その方向と符合します。


「ただしそれはある面、僕は「怪獣」としてはダメなヤツしか書けなかったという言い方もできるわけです。例えば、僕は東映の路線なんかとは全然合わないんです。見るからに「悪」みたいなヤツを出して、それと主人公を3分に1回ぐらいの割合でケンカさせてくれみたいなことを言ってくる(笑)。「そんなのばかばかしくて書けるか」って言うと、「あいつは所詮(しょせん)メロドラマの人間だから、悪は書けない」なんて言うんだよ。そうじゃない。こっちは「悪」というものは、実在するものじゃないというスタンスをもってやっているわけだから。ケンカはそれに至るまでの怨念や葛藤といったものを描いた後、最後の最後に一度だけやればいいんであってね。そんな感じだから怪獣を書いてもいわゆる迫力がない。ケンカしないんだから。みんながまんじゅう食ってるのに、ひとりだけせんべいをかじっているヤツがいるみたいなもんだよ(笑)」


(『君はウルトラマン80を愛しているか』脚本・石堂淑朗インタビュー)



 70年代の猛烈な「変身ブーム」時代の脚本家や俳優たちは、自分の仕事を自身の息子たちに認めてもらうために、テレビ局や製作会社に自分にも特撮変身ヒーローものを書かせてほしい、出演させてほしいと売り込んでいたという逸話(いつわ)が残っている(ウルトラシリーズだと『ウルトラマンA』に参加した脚本家・石森史郎(いしもり・ふみお)や、『仮面ライダー』(71年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20140407/p1)に出演させてほしいと頼み込んだ時代劇俳優の大スター・萬屋錦之介よろずや・きんのすけ)など)。
 そうすると、この証言はそれと明言しないまでも、石堂先生ご自身も東映に自分を売り込んで、平山亨(ひらやま・とおる)プロデューサーあたりに「3分に1回ぐらいの割合で(ヒーローと怪人を)ケンカさせてくれ」というオーダーをもらって反発を覚えて降りたようなことがあったことの傍証にはならないだろうか? 奇しくも平山プロデューサーは助監督時代に師匠にあたる東映京都撮影所松田定次(まつだ・さだつぐ)監督から、ダレないように観客を飽きさせないように1本の映画の前半・中盤・終盤に必ずチャンバラを入れろという薫陶(くんとう)を受けたという話をどこかの書籍で語っていたことを記憶している。
 もちろん石堂先生の発言を100パーセント真に受けて東映ヒーローものを全否定しようとも思わないし、筆者個人は子供向けヒーロー番組のつくり方としては平山プロデューサーの非常に俗物的な発想(笑)の方を支持する者でもあるのだが、今回のグワガンダしかり、先述した『タロウ』第46話に登場したわんぱく宇宙人ピッコロしかり、氏が担当した脚本回に登場する怪獣像に氏の主義・主張は反映されているのかもしれない。


ピッコロ「ウルトラマンタロウ! こんなくだらぬ星、腐った心の地球人、よく守っているな!」


 童話に登場する木製人形・ピノキオのような可愛らしいポップな出で立ちをしたピッコロだが、「腐った心の地球人をよく守っているな!」などという、まるで『機動戦士ガンダム』(79年)を手掛けた富野由悠季(とみの・よしゆき)監督によるリアルロボットアニメの元祖『無敵超人ザンボット3(スリー)』(77年)や、松本零士(まつもと・れいじ)原作漫画のテレビアニメ『宇宙海賊キャプテンハーロック』(78年)の作品テーマを想起させるような、守るべき人間自体がそもそも善良なのか? 守るべき価値がある存在なのか? という根源的な問い掛けもある捨てゼリフをタロウに叫んでいた。


 しかもペットのウサギを殺され、悲しみと怒りの心に支配された太一も、タロウに向かってこう叫んでいた。


太一「ウルトラマンタロウなんか負けろ!! 負けろ!!」(……爆)


 一見、近年流行りのユルキャラみたいなイロモノ風のピッコロだが、夜の大都会を徹底的に破壊する特撮場面は圧巻であり、タロウとの勝負も互角という実力を示していた。それもこれも、ピッコロは太一から義憤(ぎふん=正義の怒り)とはいえマイナスエネルギーも受けていたためだと解釈したいところだ。ピッコロは太一の心の叫びの代弁者でもあったのである。


 すでに『タロウ』で石堂先生がこんな怪獣観を披露していたことからもわかるように、マイナスエネルギーという概念は『80』が初出なのではなく、そのネーミングこそないものの、第2期ウルトラシリーズですでに萌芽(ほうが)していたのである。だが、ともすれば陰欝な作風に陥る危険性がありそうなネタを扱っているにもかかわらず、氏は「内面悪」「心理悪」といった概念をそれとひけらかすことなく、子供がギャアギャアと騒ぎまくるような作品の中でさりげなく、あくまでエンターテイメントとしてまとめあげてしまう石堂先生の職人芸には敬服するよりほかにない。


 幼い子供に苦い薬を与える際はオブラートに包んであげなければならない。決してそのまま与えてはいけないのである。この回や『タロウ』第46話は、一見甘い菓子のように見えながらも、実は「良薬口に苦し」といった味わいの作品なのである。


 グレードの高い児童ドラマ、迫力満点の特撮、共に極めて充実度の高い、第3クールの『80』「児童編」を代表する娯楽編だと私見する。



<こだわりコーナー>


*冒頭で現実音楽として流れている歌謡曲は、77年に『硝子坂(がらすざか)』で歌手デビューし、85年に力士の若嶋津(わかしまづ)と結婚して芸能界を引退、現在は松ヶ根(まつがね)部屋のおかみさんとなっている高田みづえのヒット曲『私はピアノ』である(作詞・作曲は2010年6月現在、活動休止中のサザンオールスターズのリーダー・桑田佳祐(くわた・けいすけ))。『80』放映中の80年7月に発売されたシングル盤は50万枚近くを売り上げ、オリコンチャートで最高5位を記録、『ザ・ベストテン』(78〜89年・TBS)でも秋頃に至るまで長期に渡ってランクインするなど、高田みづえの最大のヒット曲となった。しかし今回みたいな子供がギャアギャア騒ぎまくるような話に、こんな大人の失恋ソングを流す意図はどこにあったのだろうか?


 「それはおそらく監督さんが「こういう音楽がほしい」ということで探してきたんじゃないでしょうか。もちろん選曲の方だってなんでもいいと思って選曲しているわけではなくて、監督さんが表現の必要上、どうしてもそういう音楽を欲(ほっ)したわけですよ」

(『君はウルトラマン80を愛しているか』音楽・冬木透インタビューから流用音楽に関する発言を抜粋)


 ちなみに『私はピアノ』の歌いだしはこんな歌詞である。


「人もうらやむような仲が いつも自慢の二人だった あなたとならどこまでも ゆけるつもりでいたのに 突然の嵐みたいに 音をたてて崩れてく……」


 遊び仲間だったアッちゃんと山ちゃんの関係が、クワガタの死をキッカケに崩壊してしまうことを冒頭で暗示しているかのようであり、この曲の使用はなかなか意味深ではなかろうか!?


*アッちゃんがクワガタの越冬について相談した『全国こども電話相談室』は64年7月13日から08年9月28日までの44年(!)もの間、TBSラジオで実際に放送されていた番組である。番組で「先生」と呼ばれた歴代の回答者としては、放送作家永六輔(えい・ろくすけ)、往年のTBSの『月曜ロードショー』(69~87年)の映画解説でも有名だった映画評論家の故・荻昌弘(おぎ・まさひろ)、あまたのバラエティ番組の司会者として著名だったタレントの大橋巨泉(おおはし・きょせん)、ドラえもんの声優(79~05年)で有名な大山のぶ代(おおやま・のぶよ)、『空想科学読本』シリーズ(96年~・最新刊が10年3月にメディアファクトリーから発売)で知られる柳田理科雄(やなぎた・りかお)、映画監督の井筒和幸(いづつ・かずゆき)、アイドルグループ・モーニング娘。石黒彩(いしぐろ・あや)、NHK教育テレビの子供向けお遊戯番組『おかあさんといっしょ』(1959年~)の10代目・たいそうのおにいさん(体操のお兄さん・93~05年)として知られる佐藤弘道などがいる。
 『全国』と謳(うた)っていたはいたものの、放送末期は北海道や中京地区、関西地区や福岡エリアではネットされず、わずか9局の放送にとどまっていた。筆者の出身地である中京地区ではTBS系列の中部日本放送が『もしもし! 子ども電話相談室』を独自に放送していたことから、本家の『全国』の方はネット放送されていなかった。放送開始当初は集英社がスポンサーだったが、のちに小学館に代わり、同社からは番組に寄せられた質問と回答をまとめた学習漫画が多数出版されていた。97年にそれまでの平日夕方から日曜朝に時間移動した際、朝日新聞社も新たにスポンサーに加わったそうである。


 なお『タロウ』第8話『人喰い沼の人魂』では、沼の異変を通報してきたゲスト主役の次郎に対し、防衛組織・ZAT(ザット)の南原(なんばら)隊員が『こども電話相談室』の電話番号を教えているばかりではなく(個人の電話番号だったら個人情報保護がうるさい現在では考えられない場面である)、第39話『ウルトラ父子(おやこ)餅つき大作戦!』の冒頭では、やはり南原隊員がパトロール中に聞いていたラジオから『こども電話相談室』のオープニングテーマが流れていた。
 ちなみにこの『こども電話相談室』のオープニングテーマを歌唱したのは『怪獣王子』(67年・ピープロ フジテレビ)や『チビラくん』(70年・円谷プロ 日本テレビ)などの主題歌も担当していた天地総子(あまち・ふさこ)である。テレビ草創期に「CMソングの女王」の異名を誇り、66年には筆者のかつての勤務先(01年に廃業・汗)のCMソング『ぴっきいちゃんのうた』も歌っていた。
 その歌詞カードを見ると、作詞はABCテレビ=朝日放送と記載。60年代に小学館の『めばえ』『よいこ』に連載されていた猿の子供を主役にした絵物語『ぴっきいちゃん』の商品化権をその会社が取得、それをあしらった商品を販売し、一時は企業キャラにも採用されていた。大阪のテレビ局・朝日放送が制作し、関東ではTBSが放送したと思われる平日朝の帯番組(おび・ばんぐみ)の人形劇『ぴっきいちゃん』(59年・絵物語よりもこちらの人形劇の方が元祖かも?)のスポンサーにもなっていたようだが、『ぴっきいちゃん』はサブカルチャー・ジャンクカルチャー情報まで網羅する、あらゆるジャンルのオタクたちによる無駄な知識(笑)の結晶でもあるネット上のフリー百科事典・ウィキペディアにも記事がないため、詳細が不明である。(後日編註:10年後の2020年現在でもウィキペディアに記事がない!)
 そういえば『タロウ』第39話の脚本も石堂先生である。南原隊員ばかりではなく、ひょっとして石堂先生も『こども電話相談室』の熱心なファンだった?(笑)


*その『全国こども電話相談室』の丸井先生を演じたのは、往年の世界名作アニメ枠の第1号アニメともいえる人気テレビアニメ『ムーミン』(1期69年・2期72年・瑞鷹エンタープライズ フジテレビ)のムーミンパパや、やはり大人気だったテレビアニメ『銀河鉄道999(スリーナイン)』(78〜81年・東映動画→現・東映アニメーション フジテレビ)のナレーション、スタジオジブリのアニメ映画『となりのトトロ』(88年4月16日東宝系公開)のトトロの声などを、耳に残る独特のやさしい父性あふれる声で演じたことで知られる故・高木均(たかぎ・ひとし 25年2月26日~04年2月11日)。49年に文学座に入団するも、63年の分裂騒動で退団し、64年に劇団雲に入団。75年には演劇集団・円(まどか)の創立に参加し、00年に退団したあとは声優事務所の81(エイティワン)プロデュースに所属していた。
 声優としての活動では穏やかな声の持ち主という印象が強いが、テレビ時代劇『必殺』シリーズ第3作『助け人走る(たすけにん・はしる)』(73年・松竹 朝日放送)第3話『裏表大泥棒』の大倉屋藤右衛門、『必殺仕置屋稼業(しおきやかぎょう)』(75年・松竹 朝日放送)第1話『一筆啓上地獄が見えた』の近江屋利兵衛、『新・必殺仕置人』(77年・松竹 朝日放送)第17話『代役無用』の甲州屋宗兵衛、『必殺仕事人』(79年・松竹 朝日放送)第83話『沈め技 花嫁偽装返し突き』の大江戸屋儀平、『新・必殺仕事人』(81年・松竹 朝日放送)第38話『主水(もんど) 友達を気にする』の安川藤兵衛(やすかわ・とうべえ)など、時代劇では悪徳商人を演じる常連俳優であり、そのギャップの激しさには面喰らったものである。
 なお特撮ヒーロー作品では『忍者部隊月光』(64年・国際放映 フジテレビ)第3&4話『疾風山岳作戦』のアグマング、第90&91話『ブラック・ファイヤー作戦』のウェッズ石岡、東映メタルヒーロー特救指令ソルブレイン』(91年・東映 テレビ朝日)第46話『天才瞬間製造機』の片山博士役のほか、『好き! すき!! 魔女先生』(71年・東映 朝日放送)第15話『ムシ歯になった宇宙人』にも出演。また『ウルトラセブン』(67年)第11話『魔の山へ飛べ』の若者たちが乗るジープのラジオから流れる曲や第22話『人間牧場』でウルトラ警備隊のアンヌ隊員の友人・ルリ子の誕生パーティで流れていた曲など、『セブン』と同じく冬木透(ふゆき・とおる)が作曲を担当していたことから音楽の流用元となったことで音盤マニア・特撮マニアには有名な一般層向けのテレビドラマ『レモンのような女』(67年・国際放映 TBS)第1話『離婚 結婚』にも出演している(『レモンのような女』は、故・円谷一つぶらや・はじめ)や故・実相寺昭雄(じっそうじ・あきお)、飯島敏宏といった、初代『ウルトラマン』や『ウルトラセブン』を演出していた、当時はTBSに在籍していた監督たちが参加していたことでも有名)。


*アッちゃんの母「本当に冷たい夏といい、異常気象つづきねぇ」


 『80』が放映された1980年の夏は平年と比べて実際にかなり気温が低く日照時間も短い「冷夏」であった。「エルニーニョ現象」などという言葉を初めて耳にしたのはこのころだったと記憶している。石堂先生はさりげなく当時の世相を取り入れていたのであり、これがまた物語に説得力を与えることに貢献していた。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2010年初夏号』(2010年6月27日発行)〜『仮面特攻隊2011年号』(2010年12月30日発行)所収『ウルトラマン80』後半再評価・各話評より分載抜粋)


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