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ウルトラマン80 36話「がんばれ! クワガタ越冬隊」

ファミリー劇場ウルトラマンエイティ』放映記念「全話評」連動連載!)


『ウルトラマン80』全話評 〜全記事見出し一覧

第36話『がんばれ! クワガタ越冬隊』 〜児童間カーストを陰鬱にならずに明朗に描写!

昆虫怪獣グワガンダ登場

(作・石堂淑朗 監督・合月勇 特撮監督・高野宏一 放映日・80年12月10日)
(視聴率:関東7.6% 中部9.7% 関西9.4%)


(文・久保達也)
(2010年6月執筆)
 ぶっちゃけ今回の話は、ペットのクワガタ虫が上級生の不注意で死んでしまったことを恨む少年の怒りと悲しみがクワガタ虫の死骸に乗り移り、昆虫怪獣グワガンダが誕生するという物語である。


 第33話『少年がつくってしまった怪獣』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101211/p1)に続き、当初の『80』がウリにしていたマイナスエネルギーの概念をそれと謳(うた)わないまでも強調した久々の話であるが、さすがに石堂先生の作だけあって、陰欝(いんうつ)に陥(おちい)るどころか、底抜けに明るいC調の作品に仕上がっている。



 なんといってもゲスト主役のアッちゃんの上級生で、5年生の山ちゃんを演じた大森直人の存在感というか、ほとんど国民的マンガ『ドラえもん』(69年)に登場するガキ大将・ジャイアン〜本名・剛田武(ごうだ・たけし)〜の実写版のような、妙な威圧感が光っている(笑)。
 一見ヌボ〜っとした表情ながら、角刈りの頭に巨体はもちろんのこと、デニムのオーバーオールを終始着用しているのがいかにもお山の大将という雰囲気を醸し出しており、しかも奴が登場時には必ず『8時だョ! 全員集合』(69〜85年・TBS)に出演していたザ・ドリフターズのリーダー、故・いかりや長介のごとく、


山ちゃん「オ〜スっ!」


 と挨拶しているというのも実にいいセンスだ(笑)。


 虫の標本が壁一面に飾られたアッちゃんの自室で、モッちゃんと山ちゃんは初冬になっても生き続けるクワガタ虫を見せてもらう。
 アッちゃんはクワガタを越冬させるのにいい方法がないか、TBSラジオの『全国こども電話相談室』に電話をかける。今ならインターネットに頼るところであろうから、さすがにこのあたりは時代の違いを感じざるを得ない。


 この場面、電話をかけるアッちゃんを奥に立たせ、手前右にステレオラジカセ、手前左にクワガタの入ったケースを配置し、


・ラジカセの後ろに『電話相談室』の丸井先生の声にじっと耳を傾けるモッちゃん、


・ケースの後ろにはそんなものには全然耳を貸さず(笑)、ひたすらクワガタと戯れる山ちゃん


 という構図は、各キャラの違いを如実に浮き上がらせており、この回の隠れた名場面である!


 山ちゃんは、浅草からいとこが遊びに来るからと、一晩クワガタ虫を貸してくれと頼む。しぶるアッちゃんだが……


モッちゃん「山ちゃんは乱暴だからな」


山ちゃん「なにっ、それが下級生が上級生に向かって云う言葉か!」
 (モッちゃんの両耳を強く引っ張る!・笑)


 見事にクワガタ虫を強奪した(笑)山ちゃんは自室の机に虫のケースを置いたまま、読んでいたマンガ雑誌を放り出して眠りについてしまうが、様子を見に来た母親が


山ちゃんの母「あら虫、なぁにこんなもの、気持ち悪い!」


 と、初冬の寒い晩なのにクワガタの入ったケースを外に放り出してしまう!


 翌朝、クワガタの死骸をアッちゃんに返す山ちゃんだが、


山ちゃん「いや、オレは悪くないのさ。悪いのはおふくろさ」


 だの、


山ちゃん「まあ仕方ないよ。生きるものは必ず死ぬ。なんまいだ、なんまいだ」


 とまったく悪びれることもない!


モッちゃん「アッちゃん、学校行こう。遅れるよ。じゃあ僕、先行くからね」


 思わず近辺の小高い丘に駆け上がり、泣きながら土を掘り返し、クワガタを埋め、石のお墓を立てて供養(くよう)するアッちゃん……


 だがその一方、山ちゃんはクワガタのことなんかとうに忘れてしまい、「やだぁ〜やめて〜」と嫌がる女子児童を追いかけ回し、


山ちゃん「や〜い、えっちゃんの母さんデ〜ベソ〜!」


 とまったく懲りた様子がない!(笑)


アッちゃん(心の声)「やまこうなんか、死ねばいい!」


 と怨念をあらわにするが、山ちゃんはそれを見逃さなかった!


山ちゃん「おまえまだクワガタのこと恨んでんのか? しつこいぞおまえ、この野郎!」(アッちゃんの耳を強く引っ張る!・笑)


 そして嫌がるモッちゃんを


山ちゃん「だまってオレについてこい!」(故・植木等か!・笑)


 と強引に連れ出し、アッちゃんが泣きながらクワガタを埋めた丘へと繰り出した山ちゃんは、


山ちゃん「おじいちゃんは山に芝刈りに、この山ちゃんは山へ山芋掘りに出かけました」


 と、どこまでも脳天気である(笑)。


 導入部で同じ丘でポリバケツを持参してアッちゃんとモッちゃんの前に現れた際、


アッちゃん「なんなの? 山芋でも掘りに行くの?」


山ちゃん「バカ云え! 誰が山芋なんか掘るものか!」


 なんて会話があったにもかかわらずである(笑)。


 なんでも晩メシで麦トロを作るためだそうだが、このあたりも山ちゃんの勝手ぶりが的確に表現されていて見事である(笑)。



 この一連、コミカルに演出されてはいるものの、アッちゃんと山ちゃんのキャラの違いを絶妙に対比させながら、アッちゃんの心の中で、マイナスエネルギーが生み出されるまでの過程が丹念に演出されているのが見事であるが、その頂点となるのが「やまこうなんか、死ねばいい!」なるアッちゃんのセリフである。



 誰もが小学生の時分でも一度くらいは誰かのことを「死ねばいい!」、死なないまでも「いなくなればいいのに」なんて思ったことがあるだろうが(なんて一般化してはいけないのかもしれないが。ちなみに筆者は数十回は思ったことがありますが・爆)、子供番組ではさすがにタブーとされるのか、なかなか描かれないものである。


 しかし、さすが石堂先生、第34話『ヘンテコリンな魚を釣ったぞ!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101218/p1)もそうであったが、子供がギャアギャア騒ぐようなドラマの中でも、子供が内面に抱えた負の一面を白日(はくじつ)のもとにさらけ出しているのだ! これこそ真の「児童ドラマ」なのだ!



 そしてこの回の特異性はそれだけにとどまらない。
 導入部で気象班の小坂ユリ子隊員により、シベリアの寒気団が日本上空を覆い、地表と上空の温度差が10度近くにおよぶことから、「逆転現象」が発生する可能性が示唆(しさ)される。
 ユリ子の声をバックに、寒気団を表現した黒雲が日本列島や上空の太陽を覆い尽くす様子を画面で描いているのが実に芸コマ!


イトウ「なるほど、逆転現象ね。……ところでその、逆転現象って一体なんだ?」


 UGMのチーフ(副隊長)たるものがそんなことを知らず、一同に「え〜っ!?」とあきれられるというのがいかにも石堂先生のホン(脚本)らしいが(笑)。
 逆転現象とは温度の異なる空気が衝突し、その境界で太陽光線が屈折することで、ないものが見え、あるものが見えなくなる現象であり、蜃気楼(しんきろう)がその一種とされている。
 それをNHKの教育番組のようなノリでナレーションと画面で解説するあたりも実に親切だねえ。筆者も逆転現象なんて全然知らんかったから(笑)。


 冒頭でシベリアの寒気団に覆われるような寒い季節であることを強調することで――もっとも山ちゃんが初登場場面で「なんだか風が冷たくなってきたなあ」なるセリフを吐き、「ヘックション!」とくしゃみをしたあとに、冷たい北風を表現するような効果音が使用されるなど、季節感は的確に描写されてはいるのだが――、その中でも生き続けるようなクワガタ虫の生命力に一層説得力を持たせる狙いもあるだろうが、マイナスエネルギーという抽象的な存在が怪獣になるという科学的根拠もなにもない(笑)話に対し、少しでも疑似科学性を持たせたいという意向も働いたかと思われる。


 こうした場合、普通はSF的な味付けが濃くなるはずなのだが、この回はそれどころか、その逆転現象がむしろギャグ描写として機能してしまっているのである(笑)。


オオヤマ「なにっ! 多摩の丘陵地帯にドームが!?」


 寒い夜、突如出現したクリスタル状のドーム型の建物を警戒し、周囲を旋回する戦闘機シルバーガルだが、


オオヤマ「おい、何をグルグル回っているんだ! 突っこめ!」


 と、ドームが逆転現象による蜃気楼であることを周辺の住民に示して安心させようとする、オオヤマキャップのキビしい命令……


 観念したわれらの矢的隊員は、


矢的「石から生まれた石の子が、ハチに刺されて名誉の戦死……」


 と、どこから引用したのかワケのわからん念仏を唱え(笑)、シルバーガルでドームを突っ切る!(クリスタルドームをシルバーガルが通り抜ける様子を表現した合成場面も絶妙!)


 ところがオオヤマキャップは……


オオヤマ「……びっくりさせるな……」


広報班・セラ「突っこめって云ったのはキャップですよ!!」


オオヤマ「……そうか、ひどいキャップだ」


 この場面、オオヤマが単なる鬼隊長ではない、人間味にあふれた人物であることが強調され、単なるギャグ描写に終わっていない点も実に好感が持てる!


 そしてこれが伏線となり、再度逆転現象を使ったギャグ演出がなされる(笑)。


住民たち「あっ、蜃気楼だ! 今度は怪獣の蜃気楼だ!」


 アッちゃんのマイナスエネルギーが乗り移ったクワガタ虫の死骸がグワガンダとなって出現! だがUGMはこれを逆転現象による蜃気楼だと判断してしまう。


イケダ「シルバーガル、突入します!」


 イトウチーフの専用機・エースフライヤー、矢的が搭乗するスカイハイヤー、フジモリとイケダが搭乗するシルバーガルが三機編隊で出撃! シルバーガルはドーム出現時と同様、グワガンダに果敢に突っこもうとする!


エミ「でもキャップ、一体どこのクワガタが蜃気楼に?」


オオヤマ「そりゃキミ〜、インドネシアとかボルネオとか」


 だがその可能性はゼロであるとユリ子から聞かされたオオヤマキャップは大あわて!


オオヤマ「突っこむのは待った!」


イトウ「フジモリ、イケダ、引き返せ!」


イケダ「ダメです!」


フジモリ「もう引き返せません!」(悲鳴!)


 間一髪脱出するフジモリとイケダだが(キャノピーが開き、隊員の人形が飛び出す手法は第2期ウルトラでよく見られたもの)、シルバーガルはグワガンダに衝突!


 その寸前、操縦席からの主観でグワガンダに接近する様子をとらえたカットは迫力満点!


 墜落、炎上するシルバーガル!


フジモリ「なにが蜃気楼なもんか!」


イケダ「キャップはクビですよ!」


 「やまこうなんか、死ねばいい!」同様、云ってはいけない一言を云ってしまうイケダ(笑)。


 この回ではオオヤマキャップとイトウチーフを「ボケ」役にしてしまっているが(そういや同じ石堂先生の第34話もそうだった・笑)、山ちゃんの勝手ぶりに翻弄(ほんろう)されるアッちゃんやモッちゃんを描いたこの回だからこそ、キャップの命令でエラい目に遭わされる隊員たちの描写が、ゲスト主役たちの境遇と見事に符合しており、視聴者をおおいに感情移入させてしまうのである!


アッちゃん「UGMのお兄さん!」


イケダ「おっ、キミたちいい子だなあ。オジサンって云ったら返事しなかったぞ」


 筆者的にはこれにもおおいに感情移入してしまうが(爆)。


 思えば石堂先生は『ウルトラマンA(エース)』(72年)の第46話『タイムマシンを乗り越えろ!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070319/p1)でも、当時としては珍しく、TAC(タック・『A』で活躍した防衛組織)の隊員たちを奈良時代へタイムスリップさせていたが、ガチガチのSF作品になるどころか、過去の世界で超獣やTACが大活躍する破天荒(はてんこう)な面白さの方を主眼に置いた作品に仕上がり(それでも「小枝1本折るだけでも現代の世界が変わってしまう!」など、基本的な約束ごとはキチンとおさえられていた! ……かな?・笑)、主人公の北斗星司(ほくと・せいじ)隊員が馬を駆ってチャンバラを演じ、


北斗「みねうちじゃぁ〜!」


 と道化たりする(やっぱ北斗を演じた高峰圭二はええ役者や!)、実に娯楽色豊かなものとなっていたのである!


 タイムスリップ然り、今回の逆転現象然り、一見SF的小道具と思いきや、実は作品をバラエティ色豊かなものにするための隠し味・スパイスとして用いられたものであり、石堂先生の巧妙さがうかがえるというものである!(ま、世代的にSF的なセンスがないといえばないのだけれど・笑)


 しかも、逆転現象の効果はそれだけにとどまっていない!


フジモリ「そうそう、全国各地でUFOの出現騒ぎがありました」


イケダ「そうそう、あのときはおかしかったなあ。エイティがですね、怪獣が潜んでいるビルを持ち上げようとしたら、これが逆転現象の蜃気楼。さすがのエイティも驚いてたなぁ〜」


 導入部のUGMの会話では、逆転現象をネタに、本編では描かれなかった事件や戦いの存在が語られており(しかも去年の出来事として! ということは今回の話は1981年の出来事なのか?・笑)、作品世界の奥行きの広さを示すことに貢献しているのである! 欲を云うなら回想場面として新撮してほしかったところだが。


 そしてもう一点。初期の学校編のレギュラー俳優がリストラされる中で、


 「白坂紀子さんも当時TBSの『夕やけロンちゃん』(78〜82年・TBS)に出演していた関係から局側の要請でした」
 (「監督・湯浅憲明が語った『ウルトラマン80』」タツミムック『検証・ウルトラシリーズ 君はウルトラマン80を愛しているか』(辰巳出版 06年2月5日発行・05年12月22日実売・ISBN:4777802124))


 唯一事務員のノンちゃんを演じていた白坂紀子(余談だが俳優の志垣太郎の夫人である)のみ、TBSの意向でUGMの気象班・小坂ユリ子隊員としてスピンオフしたものの、出撃していく矢的と通路ですれ違いざまに会話させるくらいしか使い道がなかったのだが(笑)、今回は気象班の面目躍如とばかりに全編に渡って彼女の活躍ぶりが描かれているのである!(オオヤマキャップやイトウチーフよりも有能に見えてしまっているが・笑)
 ほとんど埋もれかけていたキャラまでをもここまでの存在に昇華してしまうとは!


 以上のことから、石堂先生の脚本が単に子供たちがギャアギャアと騒ぎ回るだけの騒々しい作品ではなく、実に緻密(ちみつ)に計算された、密度の高い構成となっていることが少しはご理解頂けたであろうか?



 さて今回登場するグワガンダ、ルックス的には


イケダ「うん、確かにカブト虫でもコガネ虫でも弁慶でもない! 確かにクワガタだ!」


 とイケダが語った通りなのだが(弁慶なんて虫知らんぞ!・笑)、なんと目が4つもある!
 これはアッちゃんの怒りがクワガタに乗り移ったということで、余分に2つある目はアッちゃんの怒りの目であると筆者的には解釈したいのだが、だとすれば実に秀逸なデザインである!
 その一方でカラーリングは全体的にツヤ消しの黒で塗装されており、当時ならではのリアル志向の趣(おもむき)も感じられる。


 また鳴き声は『ウルトラマン』(66年)第38話『宇宙船救助命令』に登場した、同じ昆虫型の怪獣である光熱怪獣キーラの声を若干低くしたといった趣の声であるのだが、なんと出現時には初期の『80』の怪獣出現場面で多用された「ピュルルル〜ン」という電子音的な効果音が使用され、初期の怪獣と同様に、グワガンダがマイナスエネルギーを受けた怪獣であるかもしれないことを音響演出的に強調している点は、極めてポイントが高い!



 山芋掘りに来た山ちゃんがクワガタの墓である石をどけてスコップで掘り返すや、巨大な実物大のグワガンダの角が現れる描写も迫真性に富むが、猛烈な土煙を吹き上げて丘の頂上を突き破り、オープン撮影であおりでとらえたグワガンダ出現場面は迫力満点!


 ドシン! ドシン! と派手な足音をたてながら、丘の上から降り、マンション風の建物を破壊するグワガンダ!


山ちゃん「あっ、あいつはぼくに殺されたんで、ぼくを恨んでるのかもしれない。こわいよ〜。アッちゃん、許して」


アッちゃん「いまさらぼくにそんなこと云われたって、ぼく知らないよ!」


モッちゃん「こっちへ来るな怪獣! むこうへ行け!」


 超低位置に構えたカメラで車のミニチュアを踏み潰しながら進撃するグワガンダの足元をとらえ、子供たちに迫りつつある危機を描写した特撮場面は臨場感あふれんばかりだが、本編場面においても終始パトカーや消防車のサイレン音が流されているというのも緊迫感にあふれ、絶妙な相乗効果を発揮している!


 グワガンダを丘に誘導しようと周囲を旋回飛行するエースフライヤーとスカイハイヤー
 だが矢的の乗るスカイハイヤーがグワガンダの巨大なハサミに挟まれ、グルグルと振り回されたあげく、地上に放り投げられた!


 燃え盛る炎の中からウルトラマンエイティ登場!
 豪快な一本背負い
 飛び蹴り!
 バック転を連続で決めて華麗にキック!
 グワガンダの猛攻を交わして側転!
 さらには背後のグワガンダに向けてキックをかます妙技も!

 
 実にテンポよく繰り出されるエイティの荒技!
 それらによってひっくりかえったグワガンダがフィルムの逆回転を利用し、即座に起き上がる描写が何度も挿入されるのも絶妙!
 またカットが変わるごとに手前に配置される民家や車、電柱などのミニチュアを巧みに置き換え、同じ景色を二度と見せないようにしている工夫もさすがである!


 エイティ、グワガンダに背負い投げをかけようとするがそのまま押し潰され、辛くもかわしたものの、ここからやや劣勢に!
 グワガンダの猛攻に押されるエイティを、手前の民家の群れをナメながら長回しにとらえた場面は、『帰ってきたウルトラマン』(71年)第33話『怪獣使いと少年』の巨大魚怪獣ムルチ対新ウルトラマンの場面を彷彿とさせる!

 
 グワガンダのハサミにブン投げられたエイティが落下した場所にあったビルが崩壊!
 エイティ、「待った!」とジェスチャーをかけ、グワガンダに握手を求めるが(笑)、拒絶されて大地に放り投げられる!
 街路樹をひっこ抜き、くやしがるエイティ(笑)。


 両者の戦いを作戦室で見守るオオヤマ、エミ、セラ、ユリ子。作戦室のモニターに合成された特撮場面というのも、シンプルな手法ながらも臨場感にあふれている!


 エイティ、グワガンダの背中の甲羅で転がされ、さらには巨大なハサミで足をとらえられて転倒!
 そのままグワガンダにのしかかられる!


ナレーション「怪獣の正体はアッちゃんの怒りなのである。どんな怪獣にも負けないエイティ。しかしそのエイティも子供であるとはいえ、人間の気持ちには勝てないのだ!」


 グワガンダがマイナスエネルギーの産物であることを端的に示す秀逸なナレーション!(『80』では珍しい・笑)


山ちゃん「エイティがぼくを見たぞ!」


モッちゃん「違うよ、アッちゃんを見たんだい!」


山ちゃん「ホントだ、アッちゃん、エイティがおまえを見てるじゃんか」


 アッちゃんの目線でとらえたかのような、エイティがグワガンダの下敷きになって苦しんでいる場面は、右側には車が2台にアパート風の建物と電柱が配置されているのだが、なんと左側には町内の掲示板なんていう細かなものまで作りこまれている!
 今回のミニチュアセットはグワガンダが出現した小高い丘の麓に広がる新興住宅街といった趣なのだが、緑豊かな田園都市の風景が見事に再現されており、実に贅沢(ぜいたく)な作りである!


 エイティが視線で訴えているのを感じとったアッちゃんは……


アッちゃん「もう怒らない! ぼくのクワガタが死んだからといって、山ちゃんも死ねばいいと思ったぼくが悪かったよ!」


 確かに山ちゃんは乱暴でわがままで勝手な奴である。しかしだからといって、彼が罪が死に値するとか、彼の死ぬことを願うのは許されないのである!


 先に山ちゃんが『ドラえもん』のジャイアンの実写版のようだと書いたが、山ちゃんはジャイアンのようにのび太をゲンコツで殴ったりはしない。暴力描写としては先述したようにアッちゃんやモッちゃんの耳を強くひっぱるという程度に抑えられており、「乱暴」ではあっても「凶暴」とまでは感じられないのである。
 これは山ちゃんが一見今回の悪役ではあるものの、真の悪は実はアッちゃんの心であるということから、必要以上に山ちゃんが視聴者に不快感を与えないために工夫された演出なのだろう。


 これと似た例が『ウルトラマンタロウ』(73年)第46話『日本の童謡から 白い兎は悪い奴!』(この話も石堂先生の脚本である!)に登場するゲスト主役の少年・太一が住んでいるアパートの大家(おおや)の演出である。
 この回ではペットの飼育が禁止されているアパートで太一が飼っていたウサギを大家が毒入りの餌で殺してしまう場面があり、一見大家が悪役として描かれていて(確かに悪役でもあるのだが)、社会通念上は本来は太一の方が悪いのである。
 したがって必要以上に大家を悪人と感じさせては作劇や演出的に失敗なのであるが、この回で巧妙だと思えるのが、大家を演じたのがいかにも頑固オヤジといった趣の俳優ではなく、『ウルトラQ』(66年)第6話『育てよ! カメ』の教師役や、『帰ってきたウルトラマン』第30話『呪いの骨神(ほねがみ)オクスター』の学者役、『ウルトラマンA』第30話『きみにも見えるウルトラの星』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061125/p1)や『タロウ』第8話『人喰い沼の人魂』の警官役など、昭和のウルトラシリーズの常連ゲスト俳優だった故・大泉滉(おおいずみ・あきら)だったことである。氏の個性も手伝い、実にとぼけた味わいの、ユーモラスな憎めない存在として描かれていたのである。


 だから今回の山ちゃんを一線を超えてしまうほどの大悪人として描かないためにも、非常に困った存在ではあるものの、どことなく憎めないユーモラスな人物として描く必要があったのだろう。
 その意味でも山ちゃんを演じたのがいかにも悪ガキといった趣の子役俳優ではなく、今回演じた大森直人みたいな一見ポ〜ッとした感じの子役だったことは実に的確なキャスティングではないか。
 そういやジャイアンも一見ポ〜ッとした感じではある。よく見りゃカワイイし(笑)。


山ちゃん「あっ、おまえやっぱ……」


モッちゃん「もとはといえば、山ちゃんが悪いんだぞ!」


 フジモリやイケダにも諭(さと)され、山ちゃんは遂に……


山ちゃん「ごめんよ、オレが悪かったよ」


アッちゃん「うん、ぼくもう怒ってないよ!」


 あまりにも元気に明るく答えるアッちゃん!


 この急激な心境の変化にはおもわずテレビの前でコケてしまうが、子供という存在がそれだけ移り気が早いものであるということを的確に描写していると思えるのだ。
 リアルすぎて逆に滑稽(こっけい)に見えるという典型例ではなかろうか? 泣いたカラスがもうわろた(笑)。ここでアッちゃんが山ちゃんを許す許さないという葛藤が生じてしまうと、話が暗くなってしまうし何より30分では終わらない!(笑)


 グワガンダの体内に蓄積されたマイナスエネルギーが急速に消滅したのか、エイティは形勢逆転!
 高々とジャンプしてグワガンダの巨大なハサミの間に飛び蹴りをかまし、バック転を連続でキメて再度グワガンダに向き合った!


 恐れをなしたか、グワガンダは丘へと逃げ、地底に潜っていく。グワガンダが潜る丘の手前には瓦ぶきの屋根の民家の群れや多数の電柱……贅沢なミニチュアワークばかりではなく、画面に奥行きが感じられるカメラワークの効果も絶大であった!


 マイナスエネルギーの強大さを示すためか、グワガンダがかなりの強敵として描かれ、久々にバトルシーンの尺が長く、充実度は満点であった!
 もっとも石堂先生のシナリオには単にひとこと、「激しい戦い」としか書かれていなかったと思うが(笑)。このへんは円谷プロの高野宏一特撮監督による特撮演出と擬闘の車邦秀によるアクション演出のセンスの勝利だろう!
 それにしても、バトルシーンが通常より長い回に限ってカラータイマーが点滅しないのはウルトラシリーズ最大の謎である(笑)。


 グワガンダが潜った丘には、アッちゃんが飼っていたクワガタが眠っていた。


アッちゃん「じゃあ、このクワガタ、標本にして山ちゃんにあげる」


山ちゃん「どうもありがとう」


 二人の間に友情が芽生(めば)えたとき、死んだはずのクワガタが動き出した! アッちゃん、モッちゃん、山ちゃんは、今度こそクワガタを無事に越冬させることを誓い合う!


子供たち「がんばれクワガタ越冬隊! がんばれクワガタ越冬隊!……」


 丘の上で、子供たちのかけ声が元気にこだまする……



――石堂さんは雑誌『ドラマ』(映人社・93年9月号)の中で「悪人はあまり書いたことがない」とおっしゃっています。この感覚は石堂さんの怪獣像にも反映されているのでは?


 「それはね、僕が大学でドイツ文学をやっていたとき(筆者注・氏は東京大学文学部独文学科の出身である!)、ヨハン・ヴォルフガング・ゲーテの悲劇『ファウスト』を読んでね。あれにメフィストフェレスという悪魔(執筆者注・『ウルトラマン』第33話『禁じられた言葉』に登場した悪質宇宙人メフィラス星人のネーミングの語源でもある)が出てくるでしょう。このメフィストという「悪」とは何かということを、僕は論文のテーマに選んだんです。そこで導き出した結論は、メフィストファウスト自身が呼び出したものであると。悪とは人間の外に客観的に存在するものじゃなくて、人間の内から呼び出されたものであるという。いわゆる世の中に「絶対悪」というのが最初からあって、それをやっつければOKという話じゃない。そういう感覚が、ウルトラマンを書いていたときにも確かにあったと思いますよ。怪獣も結局、人間が呼び出したものであると」


――『80』という番組には、怪獣は人間のマイナスの心の化身だというテーマがあるんですが、その方向と符合します。


 「ただしそれはある面、僕は「怪獣」としてはダメなヤツしか書けなかったという言い方もできるわけです。例えば、僕は東映の路線なんかとは全然合わないんです。見るからに「悪」みたいなヤツを出して、それと主人公を3分に1回ぐらいの割合でケンカさせてくれみたいなことを言ってくる(笑)。「そんなのばかばかしくて書けるか」って言うと、「あいつは所詮(しょせん)メロドラマの人間だから、悪は書けない」なんて言うんだよ。そうじゃない。こっちは「悪」というものは、実存するものじゃないというスタンスをもってやっているわけだから。ケンカはそれに至るまでの怨念や葛藤といったものを描いた後、最後の最後に一度だけやればいいんであってね。そんな感じだから怪獣を書いてもいわゆる迫力がない。ケンカしないんだから。みんながまんじゅう食ってるのに、ひとりだけせんべいをかじっているヤツがいるみたいなもんだよ(笑)」


 (脚本・石堂淑朗インタビュー・『君はウルトラマン80を愛しているか』)



 氏の発言を100パーセント真に受けて東映ヒーローものを全否定しようとはもちろん思わないが、今回のグワガンダ然り、先述した『タロウ』第46話に登場したわんぱく宇宙人ピッコロ然り、登場する怪獣像に氏の主義・主張は見事に反映されているのである!


ピッコロ「ウルトラマンタロウ! こんなくだらぬ星、腐った心の地球人、よく守っているな!」


 タロウにこう叫んでいたピッコロであったが、ペットのウサギを殺され、悲しみと怒りの心に支配された太一も、タロウに向かってこう叫んでいた!


太一「ウルトラマンタロウなんか負けろ! 負けろ!」


 一見近年はやりのユルキャラみたいな外見のピッコロだが、夜の都会を徹底的に破壊する場面は圧巻であり、タロウとの勝負も互角という実力を示していたが、それも太一からマイナスエネルギーを受けたためかと思われるのである。
 ピッコロは、太一の心の叫びの代弁者だったのである!


 既に『タロウ』で石堂先生がこんな作品を披露していたことからもわかるように、マイナスエネルギーという概念は『80』が初出なのではなく、第2期ウルトラシリーズで既に萌芽(ほうが)していたのである。
 だが、ともすれば陰欝な作風に陥る危険性がありそうなネタを扱っているにもかかわらず、氏の実に高尚(こうしょう)な思想をひけらかすことなく、子供がギャアギャアと騒ぎまくるような作品の中でさりげなく、あくまでエンターテイメントとしてまとめあげてしまう石堂先生の職人芸には、敬服するよりほかにないのだ!


 幼い子供に苦い薬を与える際はオブラートに包んであげなければならない。決してそのまま与えてはいけないのである。
 この回や『タロウ』第46話は、一見甘い菓子のように見えながらも、実は「良薬口に苦し」といった味わいの作品なのである。


 グレードの高い児童ドラマ、迫力満点の特撮、共に極めて充実度の高い、第3クールを代表する超一級の傑作娯楽作品である。



<こだわりコーナー>


*冒頭で現実音楽として流れている歌謡曲は、77年に『硝子坂(がらすざか)』で歌手デビューし、85年に力士の若嶋津(わかしまづ)と結婚して芸能界を引退、現在は松ヶ根(まつがね)部屋のおかみさんとなっている高田みづえのヒット曲『私はピアノ』――作詞・作曲は2010年6月現在、活動休止中のサザンオールスターズのリーダー・桑田佳祐(くわた・けいすけ)――である。
 『80』放映中の80年7月に発売されたシングル盤は50万枚近くを売り上げ、オリコンチャートで最高5位を記録、『ザ・ベストテン』(78〜89年・TBS)でも秋頃に至るまで長期に渡ってランクインするなど、高田みづえの最大のヒット曲となった。
 しかし今回みたいな子供がギャアギャア騒ぎまくるような話に、こんな大人の失恋ソングを流す意図はどこにあったのだろうか?


 「それはおそらく監督さんが「こういう音楽がほしい」ということで探してきたんじゃないでしょうか。もちろん選曲の方だってなんでもいいと思って選曲しているわけではなくて、監督さんが表現の必要上、どうしてもそういう音楽を欲(ほっ)したわけですよ」
 (音楽・冬木透インタビューから流用音楽に関する発言を抜粋・『君はウルトラマン80を愛しているか』)


 ちなみに『私はピアノ』の歌いだしはこんな歌詞である。


「人もうらやむような仲が いつも自慢の二人だった
 あなたとならどこまでも ゆけるつもりでいたのに
 突然の嵐みたいに 音をたてて崩れてく……」


 遊び仲間だったアッちゃんと山ちゃんの関係が、クワガタの死をキッカケに崩壊してしまうことを冒頭で暗示しているかのようであり、この曲の使用はなかなか意味深ではなかろうか!?


*アッちゃんがクワガタの越冬について相談した『全国こども電話相談室』は64年7月13日から08年9月28日までの44年(!)もの間、TBSラジオで実際に放送されていた番組である。
 番組で「先生」と呼ばれた歴代の回答者としては、放送作家永六輔(えい・ろくすけ)、映画評論家として有名だった故・荻昌弘(おぎ・まさひろ)、タレントの大橋巨泉(おおはし・きょせん)、元ドラえもんの声で有名な大山のぶ代(おおやま・のぶよ)、『空想科学読本』(最新刊が10年3月にメディアファクトリーから発売)シリーズで知られる柳田理科雄、映画監督の井筒和幸元モーニング娘。石黒彩体操のおにいさんとして知られる佐藤弘道などが存在した。
 『全国』と謳(うた)っていたはいたものの、放送末期は北海道や中京地区、関西地区や福岡エリアではネットされず、わずか9局の放送にとどまっていた。筆者の出身地である中京地区ではTBS系列の中部日本放送が『もしもし! 子ども電話相談室』を独自に放送していたことから、『全国』はネットされていなかった。
 放送開始当初は集英社がスポンサーだったが、のちに小学館に代わり、同社からは番組に寄せられた質問と回答をまとめた学習漫画が多数出版されていた。97年にそれまでの平日夕方から日曜朝に時間移動した際、朝日新聞社も新たにスポンサーに加わった。


 なお『タロウ』第8話『人喰い沼の人魂』では、沼の異変を通報してきたゲスト主役の次郎に対し、ZAT(ザット・『タロウ』で活躍した防衛組織)の南原隊員が『こども電話相談室』の電話番号を教えている(個人の電話番号だったら個人情報保護がうるさい現在では考えられない場面である)ばかりではなく、第39話『ウルトラ父子(おやこ)餅つき大作戦!』の冒頭では、やはり南原隊員がパトロール中に聞いていたラジオから『こども電話相談室』のオープニングテーマが流れていた。


 ちなみにテーマを歌唱したのは『怪獣王子』(67年・ピープロ フジテレビ)や『チビラくん』(70年・円谷プロ 日本テレビ)などの主題歌も担当した天地総子(あまち・ふさこ)である。
 テレビ草創期に「CMソングの女王」の異名を誇り、66年には筆者のかつての勤務先(01年に廃業)のCMソング『ぴっきいちゃんの唄』
 ――歌詞カードでは作詞がABCテレビ=朝日放送と記載されていた! 60年代に小学館の『めばえ』『よいこ』に連載されていた、猿の子供を主役にした絵物語『ぴっきいちゃん』の商品化権をかつての勤務先が取得、それをあしらった商品を販売し、一時は企業キャラにも採用していた。朝日放送が制作し、関東ではTBSが放送したと思われる人形劇のスポンサーにもなっていたようだが、『ぴっきいちゃん』はサブカルチャー・ジャンクカルチャー情報まで網羅する、あらゆるジャンルのおたくたちによる無駄な知識(笑)の結晶でもあるネット上のフリー百科事典・ウィキペディアにも記事がないため、詳細が不明である。閑話休題――
 をも歌っていた!


 そういや『タロウ』第39話の脚本も石堂先生である。南原隊員ばかりではなく、ひょっとして先生も『こども電話相談室』の熱心なファンだった?(笑)


*その『全国こども電話相談室』の丸井先生を演じたのは、『ムーミン』(69&72年・瑞鷹エンタープライズ フジテレビ)のムーミンパパや、『銀河鉄道999(スリーナイン)』(78〜81年・東映動画→現・東映アニメーション フジテレビ)のナレーション、スタジオジブリのアニメ映画『となりのトトロ』(88年4月16日東宝系公開)のトトロの声などを演じたことで知られる、故・高木均(25年2月26日−04年2月11日)である。
 49年に文学座に入団するも、63年の分裂騒動で退団し、64年に劇団雲に入団。75年には演劇集団・円(まどか)の創立に参加し、00年に退団した後は声優事務所の81プロデュースに所属していた。


 声優としての活動では穏やかな声の持ち主という印象が強いが、テレビ時代劇『必殺』シリーズ第3作『助け人走る(たすけにん・はしる)』(73年・松竹 朝日放送)第3話『裏表大泥棒』の大倉屋藤右衛門、『必殺仕置屋稼業(しおきやかぎょう)』(75年・松竹 朝日放送)第1話『一筆啓上地獄が見えた』の近江屋利兵衛、『新・必殺仕置人』(77年・松竹 朝日放送)第17話『代役無用』の甲州屋宗兵衛、『必殺仕事人』(79年・松竹 朝日放送)第83話『沈め技 花嫁偽装返し突き』の大江戸屋儀平、『新・必殺仕事人』(82年・松竹 朝日放送)第38話『主水(もんど) 友達を気にする』の安川藤兵衛(やすかわ・とうべえ)など、時代劇では悪徳商人を演じる常連俳優であり、そのギャップの激しさには面喰らったものである。


 なお特撮ヒーロー作品では『忍者部隊月光』(64年・国際放映 フジテレビ)第3&4話『疾風山岳作戦』のアグマング、第90&91話『ブラック・ファイヤー作戦』のウェッズ石岡、東映メタルヒーロー特救指令ソルブレイン』(91年・東映 テレビ朝日)第46話『天才瞬間製造機』の片山博士役のほか、『好き! すき!! 魔女先生』(71年・東映 朝日放送)第15話『ムシ歯になった宇宙人』にも出演していたようである。
 また『ウルトラセブン』(67年)第11話『魔の山へ飛べ』の若者たちが乗るジープのラジオから流れる曲や、第22話『人間牧場』でウルトラ警備隊のアンヌ隊員の友人・ルリ子の誕生パーティで流れていた曲など、同じ冬木透が作曲を担当していたことから、音楽の流用元となったことで音盤マニアには有名なテレビドラマ『レモンのような女』(67年・国際放映 TBS)――故・円谷一つぶらや・はじめ)や故・実相寺昭雄(じっそうじ・あきお)、飯島敏宏といった、当時『ウルトラマン』や『ウルトラセブン』を演出していた人々が監督を担当した――第1話『離婚、結婚』にも出演していた。


*アッちゃんの母「本当に冷たい夏といい、異常気象つづきねえ」


 『80』が放映された80年の夏は、平年と比べて実際にかなり気温が低く、日照時間も短い「冷夏」であった。エルニーニョ現象なんて言葉を初めて耳にしたのはこの頃だったと記憶している。
 石堂先生はさりげなく当時の世相を入れたのであるが、これまた物語に説得力を与えることに貢献していたのである。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2010年初夏号』(2010年6月27日発行)〜『仮面特攻隊2011年号』(2010年12月30日発行)所収『ウルトラマン80』後半再評価・各話評より分載抜粋)



(後日編註:「石から生まれた石の子が、ハチに刺されて名誉の戦死……」の元ネタをGoogle(グーグル・汗)で調べました。太平洋戦争開戦の前年、昭和15年のヒット曲『湖畔の宿』のメロディに乗せた替え歌で、戦中から戦後にかけて戦地の軍人や子供たちが歌っていたそうです。


 「昨日生まれたブタの子が 蜂に刺されて名誉の戦死 ブタの遺骨はいつ帰る 昨日の夜の朝帰る ブタの母さん悲しかろ」


 ……ウ〜ムム。こりゃまた大文字の年表歴史だと残りにくい、白黒付けたがる左右双方のイデオロギー史観でもその多面性を一面でもって切り捨てられてしまう、庶民の声高ではない心情的ホンネと厭戦と諦観、しかして反戦運動までには行かずに世界情勢を鑑みて徴兵の義務は果たす当時の国民像、そしてその両面の心情をも良い意味での上から目線で自己客観視して笑いに転嫁するような庶民のタフさに起源を持つ替え歌だったとは! さすが昭和一桁後半生まれの石堂大先生!)



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