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ウルトラマン80 38話「大空にひびけウルトラの父の声」

ファミリー劇場ウルトラマンエイティ』放映記念「全話評」連動連載!)


『ウルトラマン80』全話評 〜全記事見出し一覧

第38話『大空にひびけウルトラの父の声』 〜イジメられっ子をかばってくれる少女はいるか?(笑)

心霊怪獣ゴースドン ウルトラの父登場

(作・若槻文三 監督・外山徹 特撮監督・佐川和夫 放映日・80年12月24日)
(視聴率:関東8.4% 中部11.4% 関西11.9%)


(文・久保達也)
(2010年10月執筆)


太「やめろよ! なにすんだよ!」


いじめっこたち「やれやれ〜、やっちまえ〜、ざまあみろ〜」


 下校途中、4人の悪ガキ風の小学生たちに囲まれ、背にしたランドセルの中身を路上に散らかされる太。


 女子小学生の二人連れが、見て見ぬふりをして通り過ぎる描写がなんともリアルである。


いじめっこA「あっ、うそつき太の作文だ。三重丸(さんじゅうまる)」
いじめっこB「きっとうそばっかり書いてるぜ」


太「うそなんか書いてないよ!」


いじめっこA「よ〜し、それなら読んでみろ〜」


 丸めた作文用紙を突きだし、太に迫るいじめっこA。


いじめっこA「読めないだろう。うそばっかり書いてあるからさ〜」


太「読めるよ!」


 いじめっこAから取り上げた作文用紙を広げ、朗読する太。



太「『ぼくの父』    5年6組 長島太


 僕の父は長距離トラックに乗ってました。運転の名人で長い間無事故でした」



いじめっこたち「うそだうそだ」「崖から落ちたんじゃないのか〜」「そうだそうだ」


太「名古屋へ荷物を運び、父のトラックは中津台まで帰ってきました。そのときのことです」



 回想場面。太の父・長島茂太が運転するトラック。助手席には同僚の川村治が乗っている。


茂太「もう少しだな」
川村「ええ」


 そのとき、前方にそびえる中津山の頂上付近から不気味な黒い雲が立ちこめ、閃光とともに雷鳴が鳴り響いた!


川村「あ? 中津山に変な雲が!」
茂太「ん? いつものことだよ」
川村「雷だ!」
茂太「なんだあれは!」



太「父のトラックは崖から落ちました。助手席の人は死にました。父も胸を打ちました。トラックの前に突然怪獣が立ちはだかったのです」


いじめっこA「うそだうそだ〜い!」
いじめっこB「怪獣なんか出るもんか! そのときちゃんと新聞にも出ていたよ!」
いじめっこA「うちのパパも言ってたよ。ねぼけて事故を起こしてそんなうそをついたんだって」


太「父は本当に怪獣を見ました。中津台付近のどこかに怪獣が潜んでいて、怪獣はまたいつか現れ、犠牲者が出る。父はそう言って死んでしまいました。父はうそはつきません」


いじめっこA「うそだ〜い!」
いじめっこB「太の父さんうそつき父さん!」
いじめっこたち「息子の太もうそつき太!」


 太の周囲ではやしたてるいじめっこたち。


悦子「こら! あんたたちやめなさいよ!」


 通りかかったクラスメートの悦子(えつこ)がいじめっこたちを一喝する。だがいじめっこたちはそれを余計に面白がった!


いじめっこたち「ひゃはははは! うそつき太! 泣き虫太! や〜い!」


 はしゃぎながらその場を去っていくいじめっこたち。


 路上に散乱した教科書やノートを拾う太を手伝う悦子。


悦子「太くん、やっつけてあげなさいよ! あたし信じてるわ。太くんの父さんは、本当に怪獣を見たんだわ!」


 思わず悦子を見つめる太。


 個人的には三十数年前の悪夢の日々を思い出させてしまうほど、いじめっこたちを演じた子役俳優の熱演が光っている。
 特にいじめっこAとBのようなセリフがほとんどないにもかかわらず、中心となる不敵な面(つら)構えで終始太を威嚇(いかく)する奴の、異様なまでの存在感がたまらない(笑)。



 「基本的に子供たちは天使だっていうけれどそれはウソでね。天使と悪魔、両方を持っているものなんですよ。親の見ていないところで子供は何をやっているかわからない、という感覚を表現したかったんです」
 (脚本家 上原正三インタビュー・スーパー戦隊シリーズ『バトルフィーバーJ』(79年・東映 テレビ朝日)第49話『2年5組の反乱軍』(子供たちが自爆テロを企てる話。現在では絶対製作不可能!)に関する発言より・DVD『バトルフィーバーJ』VOL.4・07年5月21日発売 東映ビデオ・ASIN:B000M5KBGQ



 死者をも鞭(むち)打って笑いの種にしてしまうほど、過半の子供の本質というものは実に残酷なものなのである。
 親の見ていないところで子供は何をやっているかわからない。先の上原氏の発言をまさに的確に表現した、実にリアルな描写なのである。


 ただこの手の作品にはつきものなのだが、ゲスト主役のいじめられっこに、必ず理解者である同級生の女子が存在するというのは、筆者の経験からして絶対にうそっぽい(笑)。
 あと太を演じる木村英幸がいじめられっこを演じるにはちょっと美形すぎ、これまたうそっぽい(笑)。いや本当に『80』にゲストで出てくる子役俳優は、同期の東映ヒーロー作品と比べても妙にイケメンが多いので、そうした趣向の持ち主は要チェックである。閑話休題


 さてこの冒頭の場面によって、太が「うそつき太」などとさげすまれるようになった経緯、太が現在置かれている苦しい立場が全て紹介されている。


 これを見てどうしても思い起こさずにはいられないのが『ウルトラマンA(エース)』(72年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070430/p1・10年12月22日よりバンダイビジュアルから『ウルトラ1800シリーズ』として低価格の再発DVD(ASIN:B0041858K4)がリリースされるので、昭和ウルトラをよく知らない若いマニアの皆さんはこの機会にぜひ!)第29話『ウルトラ6番目の弟』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061120/p1)からレギュラー入りした梅津ダン少年のことである。


 彼もまた交通事故で父親を亡くした少年であったが、事故現場で大量のアルコールが検出されたことから、同級生から「酔っぱらい運転」だとからかわれていたのである。
 だが実はダンの父は、地底超獣ギタギタンガから少女を守るために自らが犠牲となって事故を起こしたのである。現場から大量のアルコールが検出されたのは、ギタギタンガが頭部の赤い角の先端から発する酸欠ガスにアルコールが含まれていたためだったのだ!


 またダンはウルトラの星が見えるという超感覚の持ち主でもあったのだが、それすらも


いじめっこ「昼間っから星が見えるなんて、大うそつきもいいところだ!」


 などと、余計にダンの立場を悪くさせてしまっていたのである。


 主人公の北斗星司(ほくと・せいじ)と知り合ったダンは、北斗と絶妙なコンビを組み、第28話『さようなら夕子よ、月の妹よ』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061111/p1)でパートナーだった南夕子と別れ、いわば「半人前」となった北斗とダンの成長物語といった側面が以後は強くなるが、この『80』第38話もまた事件を経て、太がたくましく成長する姿が描かれているのである。


 また今回登場するゴースドンは中津山上空に浮かぶ黒い雲海に身を潜め、自分のテリトリーに侵入してしまった太の父が運転するトラックを攻撃したのだが、ダン少年編の2本目である『A』第30話『きみにも見えるウルトラの星』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061125/p1)に登場した黒雲超獣レッドジャックもまた黒い雲に隠れて飛行移動し、自分の縄張りに侵入した救急車や暴走族を叩き潰していた。
 これらの要素から、今回は『A』のダン少年編初期傑作2本との共通項が見いだされ、連想せずにはいられないのである。


 だが今回はダン少年編に限らず、同様の趣向を持つ他作品とは異なり、ゲスト主役の太と主人公の矢的猛がからむ場面がわずかにラストのみなのである。
 事件を乗り越えて成長を遂げるゲスト主役の子供を描く場合、通常なら主人公とのからみは欠かせないはずなのであるが、今回太を成長させたのは矢的からの叱咤激励ではなく、亡き父との強い絆だったのだ。
 そして矢的もまた……



 帰宅した太に微笑む父の遺影。その後ろに飾られた白い大きな凧(たこ)は、父が太にある願いをこめて作ってくれたものであった……



 回想場面。こたつでくつろぐ家族の姿には季節感を、家計簿でもつけているのか、そろばんをはじく母・秋子の姿からは生活感を得られ、短い場面でさえ行き届いた細かな演出には好感がもてる。


茂太「さあ、できたぞ太。これにおまえの好きな絵を描いてあげてみろ」


太「だめだよ父さん。こんなでっかい凧あげられないよ」


茂太「やってみるんだ」


太「だってえ……」


茂太「太、お父さんいつも云ってるだろ。人間は正直に生きろって。正直に生きるためには強くなくっちゃってな」


太「うん」


茂太「ビュービュー吹く風の中を、ぐんぐん上がっていく凧のように、強い子になってほしいな」



 遺影の後ろに飾られた凧を取り出し、じっと見つめる太。


 そこにパン工場の勤めを終えた秋子が帰ってきた。


秋子「ただいま」


太「お帰り、お母さん」


秋子「すぐ夕飯の支度(したく)するからね」


太「お母さん、お父さんは本当に怪獣を見たんだよね!」


 思わず言葉に詰まる秋子。たとえ亡き夫の言葉ではあっても、にわかには信じがたい妻の揺れる心情が絶妙に表現された、この回の隠れた名場面である!



 毎朝新聞社に読者から送られた不思議な写真を分析するUGMの一同の場面が続く。


オオヤマ「あの山、中津山だね」


イケダ「何が光ってるんでしょ?」


矢的「あれオーラじゃないですかねキャップ」


セラ「そうそうそう、これオーラっていうんですよ」


エミ「オーラって、人間の体からも出てるんでしょ?」


フジモリ「うん、そう云うねえ」


 「オーラバトラー」などと主題歌の歌詞にも歌われた人間のオーラの力で動くリアルロボットアニメ『聖戦士ダンバイン』(83年・サンライズ 名古屋テレビ)の放映よりも前の80年の時点で「オーラ」という言葉が一般化している(?)のを今回見て少々意外な気もしたのだが、次のエミのセリフ、


エミ「するとこれ、怪獣の心霊写真……?」


 は、当時『3時にあいましょう』(TBS)や『2時のワイドショー』(読売テレビ日本テレビ系)などで、視聴者から寄せられた不思議な写真を霊能力者が鑑定する「恐怖の心霊写真特集」が名物コーナーとして人気を集めていた背景があると思われる(夏休みや試験で午前中で帰宅した日はこれらを見るのが楽しみだったものである)。なんせゴースドンの別名は「心霊怪獣」なのである!



悦子「凧あげ大会、どうすれば勝ちなの?」


太「自分の凧で相手の凧の糸を切ったり、体当りして落とせばいいんだ」


悦子「じゃあ最後に残った凧が勝ちね」


太「うん」


悦子「あたしが男なら凧をあげるわ。ねえ太くん、凧あげ競技会に出ればいいのに」


太「お父さんの作ってくれた凧はあるんだけどね」


悦子「そうよ。その凧で出れば?」


太「うん……」


 二人で仲良く下校する太と悦子(だからありえねえって・笑)。「あたしが男なら凧をあげるわ」の一言が、気弱な太の胸にグサリと突き刺さる!(笑)


 その太の目に、いじめっこたちの先輩と思われる中学生のまさるが凧をあげる姿が飛びこんできた!


いじめっこA「わぁ、スゲエな」


いじめっこB「怪獣凧だ! まさるさん、絶対優勝だね!」


まさる「おお」


いじめっこA「あっ、うそつき太だ」


まさる「おい太どうだ、怪獣凧だぞ! おまえのうそつきおやじ、生きてたら腰抜かして崖から落っこちるぞ!」


太「お父さんはうそはつかないよ!」


まさる「ついたじゃないか! みんな知ってるぞ!」


太「つかないよ!」


まさる「なに云ってやがる! トラックが落ちて、人が死んだじゃないか! それで怪獣が出たなんてうそつきやがって! おまえの親父は人殺しだ!」


いじめっこA「そうだそうだ!」


いじめっこB「人殺しだ!」


太「父さんは人殺しじゃない! この野郎!」


 無謀にも中学生のまさるに飛びかかっていく太。


まさる「なにすんだよ!」


太「ちきしょう〜! バカヤロ〜! この野郎〜!」


 「うそつき」にとどまらず、遂に「人殺し」呼ばわりである。


 『ウルトラマンA』第3話『燃えろ! 超獣地獄』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060521/p1)におけるヤプールのセリフがあらためて心に響いてくる!


ヤプール「子供が純真だと思っているのは人間だけだ!」



 まさるにこてんぱんにのされる太だったが、そのことが太を発奮させることになる。
 太は凧あげ競技会に出ることを決意。父が作ってくれた凧に描くための下絵として、画用紙に絵の具を用いてウルトラマンエイティの絵を描く太。だが……


悦子「泣きべそをかいてるみたい」


太「違うよ!」


悦子「でも泣いてるじゃないの」


 力強くサクシウム光線発射のポーズをとるウルトラマンエイティの姿。だが悦子はそこに、太の心象風景を見ることとなったのだ。女の子ならではの、鋭い「超感覚」が発揮されている描写であり、これもなかなか味わい深い。


秋子「太、マーケット行ってくるね」


悦子「あ、おばさん。私もう帰ります」


秋子「そう、じゃあそこまで一緒に」


悦子「じゃあ太くん、がんばってね」


 納得がいかず、何枚ものエイティの絵を描いては捨てる太……



 帰宅する悦子を連れ、買い物に出る秋子だが、よりによって事故で亡くなった川村の妻・秀美と近所の主婦に出くわしてしまう。


秋子「奥さん……」


秀美「主人のお墓に花を供えてくれたの、奥さんね」


秋子「はい……」


秀美「花なんか供えてくれても、主人は帰ってこないわ!」


主婦「そうよね。お宅の太ちゃんはもう大きいけど、川村さんの奥さんのところは4歳と7歳よ! 奥さん行きましょう!」


 私事で恐縮だが、先頃高校生の姪が自転車で通学途中に無免許運転の少年の車に衝突され、亡くなってしまうという悲劇が起きた。弟夫婦は数ヶ月に渡って仕事に行くことができないほどの精神的ダメージを受けてしまったが、遺族感情というものはそれほど根深いものなのだ。いざ身近でそんな事態に遭遇してみると、こんな短い場面からでさえ、「痛み」がいやというほど伝わってくるのである……



 エイティの絵を描き続ける太の耳に、亡き父の叫びが響く。


茂太「太、強い子になるんだぞ!」



 病室に横たわる父と太との回想場面。


茂太「太……雷が鳴って、黒い雲が……ああ……」


太「お父さん!」


茂太「突然トラックのすぐ前に、ボ〜ッと怪獣が現れた……あの怪獣はきっとまた現れて、誰かがまた……ああ……」


太「(茂太の手をとり)お父さん!」


茂太「太……強い子になるんだぞ……お母さんを助けて……」



太「できた! よ〜し!」


 中津山の上空に雷鳴とともにまたも黒い雲が立ちこめ、青白い奇妙な発光体が出現する! 茂太が云ったとおり、また怪獣が現れ、誰かが犠牲になるかもしれないのだ!


子供A「ウルトラマンエイティ凧だ!」
子供B「すごいぞすごいぞ!」


 凧あげ競技会当日、すれ違った子供たちの声にハッと振り返った秋子は、思わずあわてて自宅に戻り、太の部屋で完成したエイティの下絵を見つける。
 父の願いを受け、太は力強いエイティの絵を立派に完成させていたのである!
 すぐさま競技会会場に向かう秋子。空に舞う無数の凧の中に……


悦子「おばさん」


秋子「えっちゃん」


悦子「太くんの凧よ。ほら、あそこに一番高くあがっているのが!」


秋子「えっちゃん……太、あなたは……」


 ビュービュー吹く風の中を、ぐんぐんあがっていく凧のように、強い子になってほしい……最も高くあがっているウルトラマンエイティ凧に、秋子は夫の願いどおりに、太が力強く成長した証(あかし)を見たのである! 挿入歌『心を燃やすあいつ−矢的猛の歌−』のインストゥルメンタルASIN:B0001A7VC4)をこの場面で使用した演出は、実に光るものがある!


 そのすぐ横に迫る、まさるがあげる怪獣凧!


悦子「太く〜ん、がんばって〜!」


実況「あっ、また落とされました! これで怪獣凧にやられたのは21個になりました!」


 ハンドスピーカーの実況まで入る本格的な凧あげ競技会(笑)。なんと、競技会運営本部のテントには


 「桜ヶ岡小中学生凧あげ大会」


 なる看板が!


 かつて矢的が教師を務めていた桜ヶ岡中学校の校区内で行われているのである!
 学校編が自然消滅して半年を経た時点でこうした演出がなされていることから、学校編に強くこだわりを持っていた一部のスタッフ(本編美術班や大道具班か?)の存在が如実に表れているかと思うのだが(個人的には実に嬉しい!)、そうなるとまさるは桜ヶ岡中学校の生徒ということになる。矢的の教えを受けていたら、太の父を「人殺し」呼ばわりすることもなかっただろうに(笑)。



 中津山の再調査を終え、UGM専用車スカウターS7(エスセブン)で帰還途中の矢的とイケダ。空を華麗に舞う凧を車窓から見つけたイケダは、道草はダメだとしぶる矢的を


イケダ「いいじゃないですか。5分だけですよ5分」


 と強引に説得し、凧あげ競技会に寄り道することとなる。そのために、基地に戻ってからイトウチーフに道草の時間だけ逆立ちさせられるというキツ〜い罰をくらうのだが(笑)。


矢的「あっ、怪獣凧だよ!」


イケダ「あっ、その横、ウルトラマンエイティ凧ですよ!」


実況「これで怪獣凧とウルトラマンエイティ凧の一騎打ちとなりました! 皆さん応援して下さい! 二人に拍手をお願いします! がんばって下さい!」


矢的「切れ切れ、怪獣凧の糸を切れ!」


イケダ「がんばれ〜、がんばれ〜、ウルトラマンエイティ凧〜!」


 応援団風のオーバーアクションで声援を送るイケダの姿が笑いを誘うが、太を応援していたのは悦子や矢的、イケダばかりではなかった!


いじめっこB「がんばれ!」
いじめっこA「負けるな太!」
いじめっこB「怪獣凧なんかやっつけちゃえ!」


 「まさるさん、絶対優勝だね!」なんて云っていたいじめっこBが、「怪獣凧なんかやっつけちゃえ!」などと太の声援に回るというのは少々うそっぽい感が強いものの(この程度のことでは人間に対する評価というものはなかなか変わらないものである)、30分のドラマでそれなりの決着をつけるにはこれでもよいかとは思えるし、第36話『がんばれ! クワガタ越冬隊』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110101/p1)のゲスト主役・アッちゃんが、乱暴者の山ちゃんをいとも簡単に許してしまった件にも見られたように、子供という存在の移り気の早さ、変わり身の早さといったものが、実に的確に表現されているとは思える。


茂太「がんばれ! 負けるなよ! 太!」


 病床に横たわった亡き父の叫びが太の脳裏にこだまする!


太「(心の声)お父さん、もうお父さんのこと、誰もうそつきだなんて云わないよ。ぼくのこと、泣き虫太とも云わないよ!」



 この時点で、太の成長物語はほぼ完結してしまっている。児童ドラマとしては、第3クールのラストを飾るにふさわしい出色の出来ではあるものの、これこそが同時にこの回の最大の弱点なのでもある。


 先にも書いたが、ここに至るまで太は矢的と直接的にはまったくからむことがない。そして、続くゴースドン出現以降は太の物語はまったく描かれなくなってしまうのである。
 あまり用いたくない表現だが、これはまさに往年の『ファンタスティクコレクションNo.10 ウルトラマンPARTII 空想特撮映像のすばらしき世界』(朝日ソノラマ・78年12月1日発行)で『ウルトラマンタロウ』(73年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071202/p1)第40話『ウルトラ兄弟を超えてゆけ!』を『タロウ』全編を象徴するエピソードとして、「怪獣と人間のドラマが分離したまま進む奇妙な現象」と評して、それが『タロウ』全体を形容するのに本当に正しかったのかは別として、その論法をまさに絵にしたようなエピソードが今回の第38話なのである。


 この回との共通項を感じる作品として挙げた『A』第29話ではダンは北斗から父の事故死の現場写真を見せられ、飲酒運転の容疑は晴れることとなる。
 しかしながら、少女を救うという勇敢な行為に走ったのに、どうしてエースは来てくれず、父は死んでしまったのかと詰め寄るダンに、北斗はダンの父が「もうだめだ」と思い、超獣に立ち向かうという強い気持ちを捨ててしまったためではないかと配慮に欠けるその場しのぎを語ってしまう。


 強い人だと信じていた「偶像」を破壊され、泣きながら父の墓に向かったダンは、そこでギタギタンガに命令を下す地底人アングラモン(アンダーグラウンドからのネーミングですね! いいセンスだ!)の姿を発見! 手にしたパチンコでアングラモンの胸を攻撃し、その程度で大げさに苦しんだことから地底人の急所が胸であることを知るが、反撃を受けて断崖絶壁から転落しそうになってしまう!
 ギタギタンガの攻撃に向かう途中でダンを発見する北斗だが、「自分は大丈夫だから早く超獣を!」と請(こ)うダンの言葉に、北斗はエースに変身! アングラモンとギタギタンガのダブル攻撃に苦戦しながらも立ち向かうエースの姿に、ダンは崖から生えた一本の細い枝につかまりながら、


ダン「おれだって、負けるもんか!」


 と自身を奮い立たせる!


 「負けるもんか! 負けるもんか!」とのダンの叫びが、エースの形勢を逆転させた! エースはギタギタンガを抱えあげ、エースリフターで地上に叩きつけ、木っ端微塵に粉砕する!
 アングラモンが放った地震光線で割れた大地の中に落下してしまうエースだが、


ダン「地底人の急所は、胸だよう!」


 とのダンの叫びに、エースは空中高くジャンプ、ハンドビームでアングラモンの胸を狙い撃ち、炎上させたのである!


 『A』第29話では本編ドラマのクライマックスと特撮バトルのクライマックスが華麗にリンクし、おおいに盛り上がることとなったのである!


 『80』第36話『がんばれ! クワガタ越冬隊』でも昆虫怪獣グワガンダに組み伏せられ、ピンチに陥ったエイティを、グワガンダ出現の元凶となった山ちゃんに対する怒りをアッちゃんが断ち切ることでエイティが形勢逆転する様子が描かれることで、ラストのバトルにドラマがリンクしていたことから考えても、今回のラスト部分の作劇はどうかと思うのだが……


 早い話、たとえゴースドンが登場しなくても、エイティとのバトルを描かなくても、その気になればこの人間ドラマ部分のクライマックスでエピソードを完結させることができてしまうのだ。ウルトラマンが主役の、怪獣とのバトルをウリにした作品だから、そんなわけにはいかないというだけのことなのである。
 だからゴースドンも、今回の最大の目玉であるはずのウルトラの父の登場も、いわば「つけ足し」のような、実に薄い印象を感じてしまう構成となってしまっているのだ。そういやこれだけ長々と書いてきても、まだウルトラの父が登場していないのだ。う〜む……



 太に声援を送るいじめっこAとBの後方で太を暖かく見守る秋子だが、幼い子を連れ、見物に来た秀美と視線が合う。すぐさま目をそらし、上空に浮かぶ凧を子とともに見上げる秀美。シビアな描写である。


 そのとき、中津山の上空に例の黒い雲が立ちこめ、雷鳴が鳴り響いた!


悦子「おばさん、雷よ」
秋子「変ねえ、こんな季節に雷だなんて」


 稲妻が怪獣凧に向かって走り、青白い魂のような発光体が怪獣凧に乗り移り、心霊怪獣ゴースドンとして実体化した!


 『ウルトラマン』(66年)第15話『恐怖の宇宙線』では、宇宙線に含まれる新元素が太陽光線と融合し、ゲスト主役のムシ歯少年が土管に描いた絵が実体化して二次元怪獣ガヴァドンとなっていたが、今回怪獣のオーラが実体化する対象として怪獣凧に目をつけたのは、決してそれに都合のいい絵が描かれていたばかりではない
 (オタ風ではない悪ガキ風の中学生であるまさるが凧に怪獣の絵を描くというのもどうかと思うが・笑)。


 今回は本編において、あまりにも醜い人間たちの姿がまざまざと描かれてきた。太の父を「人殺し」呼ばわりしたまさるが描いた怪獣凧は、いじめっこたちや秀美のマイナスエネルギーをたっぷりと吸収していたのである!


 また、凧に乗り移る謎の発光体は、第33話『少年が作ってしまった怪獣』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101211/p1)で健一少年が作った怪獣人形に乗り移り、工作怪獣ガゼラを誕生させた「怪獣の魂」(エミが命名)に酷似している。
 怪獣の魂は手術を拒絶する健一からマイナスエネルギーを吸収して実体化したのだが、あのときエイティに退治されたと見られた怪獣の魂が実は生きており、再び乗り移る対象を求めて中津山上空をさまよっていたのではないか? なんて想像するのも面白い。


 マイナスエネルギーが実体化する際の効果音「ピュルルル〜ン」とともに出現したゴースドンは、『ウルトラマン』第36話『射つな! アラシ』に登場し、『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE(ザ・ムービー)』(09年・ワーナー・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101224/p1)で実に四十数年ぶりに復活を果たした変身怪獣ザラガスを思わせる、頭部から前方に突き出た巨大な角が印象的な怪獣である(目の作りもザラガスに酷似している)。
 黒雲に潜んでいるという設定からか、全身漆黒という体色はいささか地味ではあるものの、右腕は二股のムチ(先端は多数のトゲが付いた砲丸状になっている)、左腕は稲妻を模したギザギザ状の剣と、『A』第13話『死刑! ウルトラ5兄弟』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060803/p1)&第14話『銀河に散った5つの星』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060805/p1)に登場した殺し屋超獣バラバを彷彿とさせる、重武装型の怪獣である。巨大な背ビレは開閉して突風を巻き起こすが、なぜか今回のネタである凧のような形状であり、ここだけが妙に軽い感じである(笑)。


太「きっとあの怪獣だ! お父さんが云ってたのは!」


 車やテントを踏み潰しながら太とまさるに迫るゴースドンを、超ローアングルでとらえているのがいつもながらの臨場感だが、今回は人物や実景との合成場面が皆無であるのがチト残念。



 太の危機に駆け寄ろうとする秋子だが、避難する大群集の勢いに押されて転倒。そのとき秋子を抱き起こしたのは……


秀美「奥さん、本当だったんですね、怪獣!」


 これも良いシーンなのだが、本来なら太とまさる、いじめっこたちに演じてもらいたかった場面である。
 『A』第29話や『80』第36話を例にあげるまでもなく、怪事件を経(へ)ることで成長する姿を描くことこそ、変身ヒーロー作品の中で児童ドラマを描く意味があるのではないのか?
 だから怪獣事件の解決までは児童ドラマを完結させてはならないのである!



 黒雲から稲妻が起こり、再び青白い怪獣の魂がゴースドンに吸収されるや、前部の角と頭部後方に生えた一対の角から黄色い稲妻状の心霊光線が発せられ、地球防衛軍の戦闘機群を次々に撃墜! 稲妻と心霊光線のイメージの統一は実に素晴らしいものがある!


 UGMのスカイハイヤー、シルバーガル、イトウ専用のエースフライヤーがゴースドンを攻撃!
 だが矢的が搭乗するスカイハイヤーは心霊光線の直撃を受けて撃墜!


 パラシュートで脱出する矢的だが、ゴースドンは矢的に心霊光線をまともに浴びせかけた!
 着地した矢的は変身アイテム・ブライトスティックを掲げようとするが、大地に倒れ伏してしまう!


矢的「体が動かない。俺は、俺は死ぬのか!?」



 そのとき、天空から矢的に呼びかける声が! その声の主こそ、宇宙警備隊大隊長ウルトラの父だったのである!


ウルトラの父ウルトラマンエイティよ」


矢的「ウルトラの父!」


ウルトラの父ウルトラマンエイティよ、立て! 立て!」


矢的「ウルトラの父……ウルトラの父……」


ウルトラの父ウルトラマンエイティ、おまえの勇気は死んだのか! 肉体よりも早く、おまえの精神は死に果てたのか! ウルトラマンエイティよ、立て! 立って戦え! おまえの勇気を正義の矢として、悪を倒すのだ!」



 ウルトラの父は幻影のような形で描写され、例えて云うなら『A』第39話『セブンの命! エースの命!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070129/p1)で火炎超獣ファイヤーモンスに炎の剣で心臓を貫かれたエースを蘇生させるために、激励の言葉をかけたウルトラセブンのようなイメージで描かれている。


 『A』第38話『復活! ウルトラの父』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070121/p1)で当初サンタクロースに扮して現れ、雪超獣スノーギランに苦戦するエースを援護、マントを翻(ひるがえ)してその正体を現すや、伝説怪人ナマハゲを両腕をL字型に組んで発する光線技・ファザーショットで撃退、南夕子とともにソリに乗って帰っていくとか、『タロウ』第39話『ウルトラ父子餅つき大作戦!』でうす怪獣モチロンをこらしめるため、タロウと夕子にモチロンをうすにして餅つきをさせるとか、ともにリアルタイムで最高のクリスマスプレゼント、最高のお年玉
 ――どちらも南夕子をサプライズ出演させているのがスゴい! 脚本はどちらも石堂淑朗(いしどう・としろう)大先生だが、思えば『A』第28話『さようなら夕子よ、月の妹よ』も石堂大先生の作品なのである! これらはまさに「夢とロマン」の具現化であり、氏は決して子供がギャーギャー騒ぎまくる作品ばかり書いているわけではないのである!――
 として受け取らせてもらった筆者からすると、今回はあまりに物足りない……


 年末のイベント編であることに加えて、本編で父と子の強い絆を描いているからこそ、今回ウルトラの父を登板させることとなったのであろうが、やはりここでは太をからませるべきではなかったのか?
 もっとも矢的とウルトラの父の会話を太に見せるわけにはいかないので(笑)、変身後に苦戦するエイティにウルトラの父が呼びかける形にして、ウルトラの父の姿を太だけが見ることができた! なんてすれば、唯一ウルトラの星を見ることができた梅津ダンの再現にもなっただろうし、「強い子」になれたというテーマもグッと活かすことができただろうに!



 ウルトラの父の励ましを受け、遂に矢的は立ち上がった!


矢的「エイティ!」


 メインタイトルから計測してぴったり20分後、矢的がエイティに変身する!
 ドラマ主導の回であり、ウルトラの父の出演もあったことから、エイティとゴースドンのバトルは簡略化され、約1分50秒にとどまっている。


 右腕の二股ムチを振り回して襲いかかるゴースドンの頭部に、エイティは高々とジャンプしてそのままキック!
 ゴースドンの頭部からバチバチと派手に火花が散る演出がたまらない!
 ゴースドン、三本の角から心霊光線を発射!


 苦しむエイティをゴースドンはムチと稲妻状の剣でどつき回し、頭部の巨大な角で突進をかける!
 たまらず吹っ飛ぶエイティ!
 さらにゴースドンはエイティに背を向け、巨大な背ビレをバタつかせて突風を巻き起こす!
 猛々と巻き上がる砂塵とともに、猛烈な風の勢いがエイティを襲う!
 ゴースドン、今度は宙へ舞い上がり、三回連続でエイティに飛び蹴りをかます


 『ウルトラギャラクシー 大怪獣バトル』(07年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080427/p1)では古代怪獣ゴモラや宇宙恐竜ゼットンが華麗にジャンピングキックをかましていたが、これは動きやすさを重視した着ぐるみ技術の進歩の賜物であり、昭和ウルトラでは(いや平成ウルトラでも)怪獣のこんな技はお目にかかれなかったものである。
 今回はスーツアクターが入った着ぐるみ(ムチ状の右腕を派手に振り回している)をそのままワイヤーで吊り上げることで実現させている。『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』より30年も前に、ウルトラではワイヤーアクションに挑戦していたのである!
 (厳密には『80』より8年も前の『ウルトラマンA』第18話『鳩を返せ!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060907/p1)の大鳩超獣ブラックピジョンや第24話『見よ! 真夜中の大変身』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061015/p1)のマグマ超人マザロン人とのバトルなどでも怪獣のワイヤーアクションは結構試みられている)


 終始劣勢だったエイティ、右腕から青白い針状の光線技・ウルトラストレートフラッシュを発射! ゴースドンの頭部に命中!
 するとエイティの右手から突如ロープが出現!(笑・タロウみたいにキングブレスレットの変形とかなら違和感もないのだが) ゴースドンをからめ取ると、エイティは左手のアクションでゴースドン目がけて猛烈な風を巻き起こした!
 凧のように宙に舞い上がるゴースドン! エイティがカラータイマーから渦巻き状の光線・タイマースパイラルを放つと、ゴースドンはグルグル回りながら地上に叩きつけられた!


 エイティ、両腕を回転させて黄色い輪を作り出し、全身からゴースドン目がけてウルトラオーラを放った!
 黄色い稲妻状の光線がゴースドンの全身を覆い尽くし、ゴースドンは虹色の炎のような形と化し、そのまま消滅していった。


 尺は短いながら、色々と工夫を凝らしたバトルが展開されていたものの、第36・37話がドラマが充実しながらも、グワガンダや宇宙忍者バルタン星人とエイティとのバトルもかなり派手に描かれていたことを考えると、どうしてもインパクトが薄く感じられてならないものがある。
 ゴースドンはデザイン・造形的には久々に怪獣らしいスタイルの怪獣だったので、もっと派手に暴れてほしかったような気がする。今回は出現からバトルに至るまで、凧あげ競技会の会場であった河原が舞台として描かれたため、ミニチュアセットも寂しく、派手な都市破壊も皆無であった。う〜ん、もったいないなあ……



 先ごろ『スパイダーマン』(78年・東映 東京12チャンネル→現テレビ東京)第12話『華麗なる殺人マシーンへの変身』と、『バトルフィーバーJ』(79年)第27話『初恋泥棒にご用心』をたまたま同日に鑑賞することとなったのだが、ともにレオパルドンバトルフィーバーロボによる、定番であるはずの巨大ロボ戦がミニチュア特撮で描かれてはいなかったのである。
 どちらもゲスト主役である女性の淡い恋心が鉄十字団やエゴスといった悪の組織に利用されてしまう話なのであるが、そんな湿っぽい話だからこそ、むしろバトルは通常の回以上に派手に描かれなければ子供の視聴者を引き付けるためにもバランスがとれないのではないのか? ドラマの比重が大きいために特撮の尺を削るとは、本末転倒もいいところなのである。



 なんだかほめているんだかケナしているんだか、よくわからない文章になってしまった。
 ラストはボロボロになったエイティの凧を矢的に手渡された太と、秋子がともに駆け寄る場面となっている。


 トータルでは好印象の作品である。しかしながら、太の成長物語に心霊怪獣ゴースドン、ウルトラの父のサプライズ出演と、魅力的な要素が揃っているのにどれも今ひとつ何かが足りない。あと一歩で傑作となり得るのに。実に惜しい印象の作品である。



<こだわりコーナー>


*太の父・長島茂太を演じたのは、特撮マニアには『仮面ライダーストロンガー』(75年)に登場した悪の組織・ブラックサタンの大幹部タイタン役で知られる浜田晃(はまだ・あきら)である。
 刑事ドラマや時代劇で数多く演じている悪役としての姿が印象深いことから、少々意外な配役とも思えるのだが……



 「タイタンをやるまでは“ワル”をやったことはなかったんです。NHKのドラマで幻の名作といわれる『タイムトラベラー』(72年・――『NHK少年ドラマシリーズ』の中の1本。主演の島田淳子はのちに浅野真弓と改名し、『80』学校編で相原京子先生を演じている。ちなみに『帰ってきたウルトラマン』(71年)第1話『怪獣総進撃』でも、凶暴怪獣アーストロンに焼き払われた山村で祖父を必死で助けようとする少女を演じている――)で先生役をやったりしてまして、このタイタン役がよかったんだか悪かったんだか……その後、悪い仇役をたくさんやるようになりまして。まあ、ひとつの節目みたいな、今考えると自分にとってよい意味で役者としての幅が拡がったと思っています」


 「まさか自分が仮面被ってやるとは思わなかったけど。そこは“話が違ったな”って感じでした(笑)。怪人になっちゃったら、そのシーンはヌイグルミの方がやってくれるのかなぁ、と思ってたら、「スーツ姿で顔だけ変わるってことなんで、体型とか色々あるんでやってくれませんか?」って、ビックリでした。
 キツかったですよ。普通の役者がああいうの被ってやるのって、それまでなかったでしょ? 僕だけだと思います。だから大変でしたよ。(撮影の)全部に付き合わないといけないから。立ち回りも結構やりましたね。あれって被ると殆ど前が見えないんですよ。ということは、相手をいかに信用するかっていうことなんです。信頼関係、それは勉強になりましたね」


 「でも、ちょうど娘が3歳くらいだった頃、ある日友達が遊びに来たら僕の顔を見て泣くんですよ。「これはヤバイ! ワルをやめないと」なんて思っていたら、(一つ目タイタンは)死んだんだけど阿部さん(東映のプロデューサー・阿部征司)が「“百目”になってパワーアップしますから」って。「また出るの?」って感じでした。そんなの最初はなかった話なんだから(笑)」


 (浜田晃インタビュー抜粋・DVD『仮面ライダーストロンガー』第2巻・03年11月21日発売 東映ビデオ・ASIN:B0000C4GNO



 氏は09年に最高裁判所が「裁判員制度広報用映画」として制作した『裁判員〜選ばれ、そして見えてきたもの〜』に被告側の弁護人・兼松大典の役で出演しているが、この映画の主役で裁判員に選ばれる会社員・村瀬智昭を演じるのは、『(新)仮面ライダー』(79年)で主人公の筑波洋(つくば・ひろし)=スカイライダー役だった村上弘明である!
 そして同じく裁判員に選ばれる面々を見ると、主婦・佐々木郁恵を演じた小林綾子はNHK連続テレビ小説おしん』(83年)の主演女優として有名だが、『(新)仮面ライダー』第22話『コゴエンスキー 東京冷凍5秒前』にサムスギール帝国(笑)の神・ヒエール(笑)にいけにえとして捧げられ、冷凍ミサイルに閉じこめられる少女の役で、既に30年も前に村上弘明と共演していた!
 さらに車椅子生活を送っている、NPO団体職員・青井拓也の役は、『仮面ライダー555(ファイズ)』(03年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20031102/p1)で主人公と対比関係にあるレギュラーの木場勇治を演じていた泉政行である!
 ちなみに村瀬の娘・美樹を演じている黒川芽衣も、『劇場版 仮面ライダー555 パラダイス・ロスト』(03年・東映http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20031105/p1)でゲストヒロイン・ミナを演じていたりするわけで……
 なお本作は「制作協力」として東映株式会社、東映シーエム株式会社がクレジットされている。
 (後日付記:浜田晃は、平成ライダーシリーズ最新作『仮面ライダー000(オーズ)』(10年)第13話『シャム猫とストレスと天才外科医』に病院院長役でゲスト出演!)


*悦子を演じたのは多田愛という子役女優だが、出番が多い重要な役回りであるにもかかわらず、オープニングにはなぜかクレジットされておらず、完成台本のみにその名前が残されている。
 本文で挙げた『A』第30話も、ダンと知り合いになるゲスト主役の少女・陽子や、少女の姉に救急隊員、暴走族のメンバー、ダンの近所の子供たちなど、かなりゲストが多いにもかかわらず、オープニングにクレジットされているのは、レッドジャック出現時に避難する群集を整理する警官の役で、その回ではごく短い出演に終わったウルトラシリーズ常連ゲスト俳優・大泉滉(おおいずみ・あきら)ただひとりなのである。
 当時はスタッフ・キャストを多数クレジットすることは非常に稀(まれ)であり、差別化のためか主要ゲスト以外は役名を表記しないようなこともしていたし、子役は一段下の存在として扱われてオミットされたのだろうが、今回のケースでは実に不可解なことではあり、今後のクレジットされなかった出演者たちの研究が待たれるところである。


*『ウルトラマンメビウス』(06年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070506/p1)第37話『父の背中』では「ウルトラの父降臨祭」が描かれたが、これはウルトラの父がそれまで地球に降臨したのが12月下旬であることが多かった(『A』第38話の放映が72年12月22日、『タロウ』第39話の放映が73年12月28日)ことから、06年12月23日放映の回で祝うこととなったのである。
 『80』第38話の放映も80年12月24日だったから、当然これもカウントされているのかと思いきや、ウルトラの父の姿は矢的にしか見えなかったわけで、人々の前に「降臨」してはいないんだよなあ……せっかくのクリスマス・イブだったのに。ここはひとつ、人々にも父の姿は見えていたのだが、矢的への助言は聞こえなかったことに後付け設定しても誰もケチはつけなかったのでは?(笑)


 「当初は完全にクリスマスの話で、クリスマスだったら父を出したいね、と云ってたんですが、地域によって放送の時期が違ったり、特別編成になったりすると年を越してしまうかもしれない。じゃあもう少し長いスパンのイベントに落としこむのはどうか、ということで降臨祭に落ち着いたんです」
 (円谷プロプロデューサー 渋谷浩康・DVD『ウルトラマンメビウス』Volume10・07年4月25日発売 バンダイビジュアルASIN:B000MTF2MU


 同時ネットの系列局がわずかに過ぎなかった『メビウス』ならではの苦肉の策である。同時ネットではない地方の子供たちの夢を多少壊してもクリスマスにしてほしかったような気もするが、今後の円谷プロの動向によっては、第2期ウルトラシリーズで好んで描かれた「季節ネタ」を扱うことは、一層難しくなるかもしれない……


*今回クローズアップされた凧あげについてだが、『80』が放映された80年の時点で既に古典的な遊びと化してしまっていた。
 「ゲイラ・カイト」なるビニール製の洋凧が流行したのも70年代半ばから後期にかけてのことであり、既に人気は下火になっていたように記憶している。現在20代の世代にとっては凧あげの経験自体が皆無という人々も多いのではなかろうか。
 このころはツクダ・オリジナルのルービック・キューブ、タカラのチョロQ、任天堂ゲーム&ウォッチをはじめとするLSIゲーム機が各社から発売されるなど、新種の玩具が次々に登場、子供たちの遊びの世界は携帯型・室内型に移行しつつあったのである。
 そんな時代に凧あげを描くこと自体、感覚的にやや古かったのではないか……『80』が時代に取り残され、次第に支持を失っていった理由がこんな面からも見てとれるのである。


(了)
(初出・『仮面特攻隊2011年号』(2010年12月30日発行)所収『ウルトラマン80』後半再評価・各話評より分載抜粋)


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