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天気の子・薄暮・青ブタ ~「天気の子」は凡作なのでは!? 2019年初夏アニメ映画評!

『映画 プリキュアミラクルリープ みんなとの不思議な1日』 ~テーマ&風刺ではなく、戦闘&お話の組立て方に注目せよ!
『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』 ~意外に豊かでモダンな戦前!? 終戦の日の慟哭・太極旗・反戦映画ではない説をドー見る!?
『映画 聲の形』 ~希死念慮・感動ポルノ・レイプファンタジー寸前!? 大意欲作だが不満もあり
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 大ヒットアニメ映画『天気の子』(19年)が地上波初放映記念! とカコつけて……。2019年初夏のアニメ映画3本、『天気の子』・『薄暮(はくぼ)』・『青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない』評をアップ!


『天気の子』・『薄暮』・『青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない』 ~「天気の子」は凡作なのでは!? 2019年初夏アニメ映画評!

(文・T.SATO)
(2019年8月3日脱稿)

『天気の子』


 離島から東京へ家出してきたオボコい高校1年生の男子クン。彼は新宿は歌舞伎町近辺のファーストフード店やネットカフェで寝泊りしつつ街をさまよっている。
 万事窮すとなって先にフェリーで知り合ったフリーライターが経営する零細編集プロダクションに彼はついに転がり込む。住み込み&食事付きでの雨露をしのぐ場所を確保して、彼はそこで下働きに追われる日々を送るようになる。
 そんなある日、チンピラにカラまれていた同年代の涼しげな黒髪二つ結び姿の少女を彼は助ける。彼女は先のファーストフード店で店員としても遭遇していた少女であった。
 時折しも東京は夏になったハズなのに、連日の長雨がつづいている。そんな中、局所的に雨雲を引き裂いて晴天を実現させる「100パーセントの晴れ女」の都市伝説も流布していた。そして実はこの助けた当の少女こそが「100パーセントの晴れ女」であったのだ。
 小学生の弟とのふたりだけでの下宿で暮らす少女の貧困を見かねて、彼はネットで宣伝することで「晴れ女」のサービスで生活を成り立たせようとする。彼と少女とその弟クンの幸福な日々が訪れる……。


 しかし、チンピラとの悶着時に先に偶然ひろっていた拳銃をホンモノと知らずに発砲していたところから足が付く。身辺に警察が迫って編プロをクビになり児童相談所も介入してきて!


 と、ここまでは万全とは思わないけれども、まぁ物語的な結構を満たしてはいた。しかし、その後は雲行きが怪しくなってくる。


 ついには雪が降ってくる。冬のようになる。積雪してしまう。身体が半透明になってしまう。ついには消えてしまう……。


 ウ~ム。このような天変地異なり超常現象が発生してしまうようなSF的なり伝奇的なりの世界観が、そこまでのストーリー展開で事前に構築できていたかなぁ? イヤ、こういう展開になってもイイのだけれども、なにかもうワンクッション、歴史上あるいは伝承上でもすでに同様なことがあったのだ! そんなのは大ウソだと思っていたけれど……などというような緩衝材を、例の神社の絵馬や絵巻物などで一度や二度といわず幾度も物語の序盤から、夏にも降雪だの水没だのナンだだの……といったことを点描のかたちのビジュアルとして、ワザとらしくてもバーン! と提示するなりしてくれれば、まだ唐突感はヤワらいだようには思うけど。


 そして、ゼイタクにも尺と作画枚数とアクションを費やした少女の救出作戦。ここはまぁまぁ映像的にも盛り上がる。
 しかして、少女の救出と引き換えに訪れた事態とは……。


 またまた、ウ~ム。……このラストも映像的なスペクタクル面での広い意味でのサブ・クライマックスなり、ストーリー展開の意外性の表出のためともいえるけど、接ぎ木のような取って付けた感は否めないのであって、必要だったのかなぁ。最後の最後で作品の品位が暴落して台無しになってしまったような……(汗)。



 本作を評価する方々にはホントウに申し訳がないけれども、「大金をかけた壮大なる凡作」というのが筆者個人の評価である。
 新海誠(しんかい・まこと)カントクの直前作である傑作アニメ映画『君の名は。』(16年)の作劇は単なるマグレ当たりだったにすぎず、このカントクには2時間程度のアニメ映画を作れるだけの複数のタテ糸やヨコ糸を編み込めるだけの見識や技量はなかったということなのか?


 美麗な映像や背景美術を描いて、そのヌケの良さや爽快感を制御したいのはわかるし、点描として見ればそれは成功している。しかし、それだけでしかナイ。10代の思春期の文化系少年がパッションだけでストーリー構成もナシに、狭い世界&少ない登場人物だけが登場する私小説を行き当たりバッタリの一筆書きでつづったような、習作的な単調展開だとしか筆者には思えなかった。


 メインのAという集団には主人公とその仲間や先輩と後輩に気になるヒロインなどがいて、Bというサブ集団にもライバルやその仲間がいて、A集団の中でも人物同士の水平方向での引力や斥力、垂直方向での憧憬や面倒見、命令や服従、相性などから来る親交・競り合い・敵対・反発・疎遠があったり、B集団でも同様で、AとBをまたがった個人同士でも織りなされる引力や斥力に鏡像関係などもあって……。
 などというかたちで作品世界を構築していけば、細部にプリプリとした密度感も漂いはじめて物語も自動的に動き出し、フラグも各所で立ってきて伏線になったり、ムチャな展開もギリギリで作品内に最初からある別要素で回収ができるような自走性を発揮するんじゃないの? なぞとムダに馬齢を重ねて浴びるようにジャンル作品を観てきた才無きオッサンオタクの筆者でも、たいていの劇作家の脳内における作劇術はそのようになっていて、それで大河性のあるドラマを構築できているのだと考えているけど、失礼ながら新海カントクの脳内は多分そーではないと私見


 テーマ面でも最後の最後に「この世界は狂っている」といったセリフが出てくるけど、その帰結に持っていくのであれば、相応に前段にも日常に潜む狂気をピストル一発ではなく散りばめておくべきであろう。シンプルに直接「狂っている」ではなく、もう少々遠回しに「狂っているのかもしれない」「少々狂っているようだ」程度であったなら、多少の愚行や小さな悪事程度であれば未成年なり人間たちのそれは包摂もされるのだとする人間賛歌にもまだなったろうとは思うけど、コレも取って付けた感は否めない。


 筆者も早くも17年も前の2002年に下北沢の小劇場に新海のデビュー作である自主アニメ映画『ほしのこえ』を観に行ったクチだけど、本作のこの感覚は2004年の彼の初の長編アニメ映画『雲のむこう、約束の場所』とも個人的には酷似する。抑揚に欠ける展開、同じような場面転換の仕方の連発、清純で愛らしいけど男性にとっての客体に過ぎず、その主体性はナイかのような少女の描き方。少女の正体不明な難病とその去就が世界の存亡とも直結する悪いイミでの「セカイ系」なノリ。


 ここまでブランド化すると寄らば大樹の陰で、本作をサカナにナイものをあるかのように深読みする小賢しい作品論や思想談義がアニメ論壇界隈では活況を呈しそうである。もちろん工業製品ならぬ嗜好品である以上は、作品批評に絶対的な正解などナイので、本作を心の底から面白いと思った御仁はブレずに貫き通してほしい。しかし、内心では「アレ?」と思いつつも世間の空気・同調圧力に屈して「この作品は秀作なのだ!」と思いこもうとしている御仁であれば、「王様は裸だ!」と指摘する気概を持ってほしいものである。
小説 天気の子

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薄暮(はくぼ)』


 東北の田園地帯を舞台に、部員数名に過ぎない音楽部の女子たちと、その中のひとりである冷めた少女を視点人物として描く中編アニメ映画。


 その内面をファッション&スイーツではなく、内省的で適度に豊富な語彙で満たしているのを象徴するかのごとく、主人公少女のモノローグ・内心の声を多用する。


 こう書くと、『涼宮ハルヒの憂鬱』(03年・06年に深夜アニメ化)の高校生男子主人公に始まり、『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』(11年・13年に深夜アニメ化・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20150403/p1)などの(ひとり)ボッチものの男子高校生主人公クンたちにも通じる面があるクールな少女ではある。しかし、一連の男子高校生たちのようにアソコまでコジらせて諦観や怨念にひたっていたり、他人に対して過剰なATフィールド=バリアを張っているワケではない。もっとナチュラルではあり、人間不信や絶望のようなモノは感じられない。


 それはこのノンビリとした田園地帯では、都心部のような軽佻浮薄なチャラさをモノサシとした「スクールカースト」がゼロとはいわずともウスかったり、かといって因習的な八つ墓村のような強固なシガラミ・地域共同体もイイ意味で適度に崩壊して、過度な「個人主義」でも過度な「ムラ世間」でもないその中間、ゆるやかに人々が連帯しつつも、集団不適応で単独行動する個人に対して特にムラ八分にするでもなくまったりと包摂はされている、「君子の交わりは水のごとし」の『論語』で孔子が理想としたような人間関係が結果的に実現しているからでもある。


 実際、音楽部でバイオリンを弾いたあとの彼女は、部活仲間といっしょに帰宅しない――部活仲間もそのことを悪く云わずに、懲りずに時折いっしょの帰宅を誘いつづける――。彼女はひとりで遠回りをして少々の坂道と、周辺が小山で囲まれた小河川の周囲の狭い田園風景を満喫し、落日の空に浮かぶ昼と夕方と夜を同時に体現したような七色のグラデーションを観てから帰途に就くことをもっぱらの日課としている。
 個人的には実に趣味がイイとは思うのだけれども、若者文化一般の中では残念ながらダサい奴として認定されてしまうのだろうけど(汗)。


 そんな彼女は帰途のバスでいつも同じ男子高校生クンが前方に着席していることに気付く。ある日、いつものように田園風景を満喫していると、その彼が田園風景をスケッチしている光景に遭遇。彼は近隣の別の高校の美術部員であることが判明し、この近隣にもっとイイ風景はないかと訪ねられたことから彼とのギコちない、言葉少なな会話がはじまり、それ以降は示し合わせたワケでもないけれども放課後に毎日会うのが日課となっていく。


 特に恋愛体質でもないマジメで落ち着いた彼女と彼氏は瞬間湯沸かし器的に燃え上がることもないけれど、互いに会えない日は相手への関心が高まっていることを自覚していく。スケッチブックに彼が中学生時代に恋をした女子学生の肖像画を発見してショックを受けるなどの紆余曲折も経るものの、秋の文化祭での音楽部の発表に彼も来場し……。響き渡るバイオリンを第1のクライマックスに、夕暮れの校舎の屋上を第2のクラマックスとして、この小粒で叙情的な物語は幕を閉じていく。


 往年の名作深夜アニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』第1期(03年・06年に深夜アニメ化)では「シリーズ演出」なるナゾ役職でも実質的には主導的な役回りを務めていたのだろうと憶測する山本寛(やまもと・ゆたか)ことヤマカンが本作の脚本&監督を務める。
 氏はフリーに転身後は美少女アニメかんなぎ』(08年)で当時のアニメ界の覇権を握るも、フジテレビの深夜アニメ・ノイタミナ枠で放った『フラクタル』(11年)で不評、および当時普及をはじめたツイッターで攻撃的な言辞を連発することでマニアの反発を買い、そのブランド力を失墜させていく。
 マニアもマニアで長いモノには巻かれろで、ヤマカンとその作品はスガ眼・色眼鏡で見て、叩いてもイイような風潮まで生じているようだ――筆者も本作『薄暮』が神懸かった大傑作だとは思わないけど、具体的な作品名こそ上げないけれども本作よりもツマラないアニメ映画や深夜アニメは今年2019年も山ほどあったのになぁ(汗)――。


 筆者もヤマカンのSNS上でのムダに攻撃的な発言には眉をひそめているし、攻撃的な言辞と叙情的な本作をつなぐ彼の思考回路も見えないけれども(笑)、アニメ業界内での大資本とは組めずに予算面では恵まれなかった氏が手掛けたアイドルアニメ『WakeUp,Girls』(14年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20150615/p1)や本作も含めて、マニア間での世評とは異なり、その作劇力や演出力、作品世界への求心力&持続力もある密な空気の作り方については相応に評価はしており、爪を隠して世渡りしていれば今ごろ大予算の大作長編アニメ映画を幾本か任せられる身分であったろうことを思えば、今の状況が残念ではある――氏にとってはよけいなお世話だろうし、他人の意見を聞きそうにはない御仁ではあるけれど(笑)――。
 商業資本と組めない立場になってしまったのであれば、本作のようにクラウドファンディングで資金を調達して小粒良品を作りつづけてほしく、筆者も今後とも氏の作品を追いかけたいとは思っている。
薄暮

薄暮(はくぼ)

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青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない』


 ラノベ原作作品で、昨2018年秋の深夜アニメの人気作『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』(18年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190706/p1)の続編にあたる映画作品である。


 『涼宮ハルヒの憂鬱』(03年・06年に深夜アニメ化)や『僕は友達が少ない』(09年・11年に深夜アニメ化・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20201011/p1)に『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』(11年・13年に深夜アニメ化)や『ようこそ実力至上主義の教室へ』(15年・17年に深夜アニメ化・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220925/p1)などのように、やや(ひとり)ボッチ気味の冷めた高校生男子クンが主人公として配されている。


 黒髪ロングのやはりクールな美少女の女子高生をメインヒロイン、キャピキャピしたゆるふわな可愛い女子高生をサブヒロインとして、サードやフォースのヒロインをハーレム的に配置していくので、カテゴライズとしてはボッチ作品かつハーレム・ラブコメでもある。


 とはいえ、ベタで自堕落なハーレム・ラブコメ萌えアニメでは飽き足りず、もう少しだけ作劇が技巧的で、噛み応えもある内容を求めたり、世間に対してハスに構えつつも、ヒネている自分を絶対視はせずに人間的にはむしろ自分はダメかもしれないなどと自省もできる、オタの中でも良く云えばやや知的で内省的なかつての文学青年タイプ、頭の中がモノローグやエア友達(笑)との問答で渦巻いているような人種たちが特に好みそうな作品ではある。


 作劇ギミックには「SF」要素を入れつつも、「SF」それ自体は「目的」ではなくて「手段」に過ぎない。作品を単調さや甘ったるさやご都合主義の方向へと堕さしめずに、適度にクールで乾いた感じにするためのテレ隠しであって、作品自体のキモはヒロインたちとの校内や校外でのオズオズとしたやりとりや、彼女らの少年主人公に対する秘めたる恋情や好意の表明がもたらす「胸キュン感情」でもある。


 本映画の前日談でもある深夜アニメ版においては、序盤は有名子役上がりの黒髪ロングのメインヒロインが、特別扱いされない無名の個人として高校生活を送りたいと県内一の進学校に入学する。
 しかし、周囲による特別扱いしない配慮が転じて行き過ぎた「同調圧力」となって、彼女は誰からも話し掛けられることがない「透明な空気」と化してしまう。
 そして、ミクロ化できるアメコミヒーローを描いた洋画『アントマン』(15年)の続編『アントマン&ワスプ』(18年)に登場した、半透明の分身する敵のゲスト怪人でもその原理とされていた、超ミクロの量子レベルで起きる事象。
 密閉箱の中を開けて観測できた時点で、存在が「確率」から「実在」へと確定する「シュレディンガーの猫の原理」で(?)、少年主人公などの一部の人間を除いては他人にその姿が視認ができなくなってしまう怪事件を発端としていたのだ――それで、他人に視認されていないことを自身で再確認するために、バニーガールの扮装をして市立図書館の中を徘徊している(汗)――。


 オタク系ジャンル作品の今や様式美と化している「時間ループ」要素も導入する。同じ1日が何度も繰り返すという、年長オタク的には既視感にあふれる展開。それは実はゆるふわな後輩サブヒロインが男よけのカモフラージュとして、期間限定の仮面カップルを少年主人公と演じているうちに恋情が発生、その終焉を避けたいという想いが起因だったとするのだ。
 より正確には「時間ループ」ですらない。物理学でいうところの新・運命論、新・決定論ともいえる「ラプラスの悪魔」である。全宇宙の事象は人間の自由意志も含めて、すべては原子や分子に脳内電気信号や脳内化学物質のビリヤードの玉突きのような純・物理的な運動で説明できるモノに過ぎないのであれば、原理的には人間の自由意志などは錯覚に過ぎなくて、宇宙の歴史も人間の歴史もすべては物理的必然の運命として確定・決定しており、全宇宙の原子や素粒子レベルでの全物質の四方八方への移動方向を計算できる超高速計算機が実在すれば、大宇宙や人間の行動の未来予知も可能であって、彼女は無意識に万人を超越している当の「ラプラスの悪魔」と化して未来を何度もシミュレートしていたとするのだ。
――主人公のみソレを知覚できたのは、離れている量子同士が不可思議な相関性を持つ「量子もつれ」であったとした――


 コレらの現象をあくまでも知的遊戯として、上記のように解釈してみせたサードヒロインのクールな科学部のメガネ女子もまた、自身が2人に分離したことで状況を理解して、自身の現状も「量子テレポーテーション」に類似する事象だと解釈。


 他にも、省察的な人格類型の少年少女たちの思春期メンタルで、メインヒロインが父親違いの妹との人格交代を起こしたり、主人公の妹が過去にSNS上でイジメにあった際には肌にキリ傷やアザが浮かんで記憶喪失・幼児退行を惹起してしまった過去なども語られてきた。



 そういった事件が描かれてきた深夜アニメ版の続編でもあるこの映画版では、主人公がかつてあこがれて救われてもきた上級生少女が、なぜか初対面の下級生として出現していた作品内での最大のナゾが明かされることになる。
 映画の神さまのイタズラか同時期公開のアメコミヒーロー大集合映画『アベンジャーズ/エンドゲーム』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190617/p1)同様に、人命救助のために幾度もの歴史改変を展開するけど、ジャンルや作品が異なればテイストはまるで異なって別モノとなってしまう好例だともいえるだろう。


 劇場は我々キモオタどもがススり泣き、嗚咽をもらす場ともなっていく――アニメ映画『君の名は。』と『聲の形(こえのかたち)』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190901/p1)の2大作品の狭間の公開で埋もれてしまった感涙必至の大傑作アニメ映画『planetarian~星の人~』(16年)ほどの嗚咽では満たされなかったけれども(笑)――。


 他者に認知されるまでは「実在が確定」せず、それまでは「可能性・確率論的な遍在」であって、そのあいまいで多数に分裂したような状態を、超ミクロ世界における複数の「並行世界」の出現だと解釈すれば、量子レベルでは世界はあまたの「並行世界」とも通底している。
 そして、人間の脳や意識も実は脳神経のみならず「量子の波動」で駆動するという最新トンデモ学説に基づけば、女児向けアニメ『HUG(はぐ)っと! プリキュア』(18年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20201227/p1)最終回における「量子コンピューター」型アンドロイドであろうプリキュア途中追加戦士とも同様に、分岐もしくは上書きされた平行世界での出来事となってしまったハズの記憶が歴史改変後の世界でも微量には蘇ってくる感動にもSF的な補強ができている。


 良作だとは思う。しかし上述してきたように、SFギミック面でのリテラシー(読解能力)も必要だし、我々が住まっているオタクジャンルの国境を越境して、その外側に届くだけの浸透力を持った作品ではないであろう(汗)。
青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.75(19年8月10日発行))


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  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060325/p1

『劇場版ターンエーガンダムⅠ地球光/Ⅱ月光蝶』(02年)

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19990810/p1

劇場版『エスカフローネ』(00年) ~いまさら「まったり」生きられない君へ……

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19990912/p1

マクロスプラス MOVIE EDITION』(95年) ~歌の暗黒面&洗脳性! 夢破れた表現者の業を三角関係を通じて描いた逸品!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19990904/p1

超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』(84年) ~シリーズ概観&アニメ趣味が急速にダサいとされる80年代中盤の端境期

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19990901/p1

機動戦士ガンダム』(81年) ~初作劇場版3部作・来なかったアニメ新世紀・80年安保

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19990801/p1



『天気の子』が地上波初放映記念! とカコつけて
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量子もつれ」と「量子テレポーテーション」が話題とカコつけて、『青春ブタ野郎』評ほか2019初夏アニメ映画評!
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「天気の子」「薄暮」「青ブタ」 ~「天気の子」は凡作なのでは!? 2019年初夏アニメ映画評!
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