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映画プリキュアミラクルリープ みんなとの不思議な1日 ~テーマ&風刺ではなく、戦闘&お話の組立て方に注目せよ!

『映画 スター☆トゥインクルプリキュア 星のうたに想いをこめて』 ~言葉が通じない相手との相互理解・華麗なバトル・歌と音楽とダンスの感動の一編!
『スター☆トゥインクルプリキュア』 ~日本人・ハーフ・宇宙人の混成プリキュアvs妖怪型異星人軍団! 敵も味方も亡国遺民の相互理解のカギは宇宙編ではなく日常編!?
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『映画 プリキュアラクルリープ みんなとの不思議な1日』 ~テーマ&風刺ではなく、戦闘&お話の組立て方に注目せよ!

(文・T.SATO)
(2020年11月15日脱稿)


 女子中学生数名が魔法少女に変身! 見た目はファンシーな悪の巨大怪獣に対して、軽快にジャンプして猛烈なパンチやキックの連発を見舞って、魔法の杖から放つ必殺光線でトドメを刺してみせる、齢15年以上を数える女児向けアニメシリーズの映画版。
 毎年秋に現役プリキュアの単独映画が、2009年からは毎春に先輩プリキュアとの共演映画が公開されている。本作はその春の先輩プリキュアとの共演映画。……であるハズが、新型コロナウイルス禍で公開延期を重ねて、半年以上を経てついに本来であれば現役単独映画が公開されている秋の公開へとズレこんだ。


 そして待望の劇場公開。キモオタの筆者が女児向けファミリー映画を劇場で鑑賞してみた(汗)。……面白い!


 季節は春。現役プリキュア『ヒーリングっど♡プリキュア』(20年)たちが住まうのは、周囲を山々に囲まれた細長い平野が続いているワリとローカルな土地。ある土曜日、自宅で宿題を終わらせた主人公少女・のどかがお花見に行こうと緑多い坂道を駆け下った先の交差点で、お忍び(?)で旅行に来ていた先輩プリキュア集団1組とゴッツンコ!
 約30年前に竹熊健太郎センセイ原作のマンガ『サルでも描けるまんが教室』(89年)でも70年代的な「少女マンガの法則」とされていた、食パンを咥えた主人公少女が「遅刻、遅刻~!」と云いながら走っているとゴッツンコ! ムカつくけど気になるイケメン男性との出会いを描く、『サルまん』でもネタにされたあとなのに『美少女戦士セーラームーン』(92年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041105/p1)や韓流ドラマ『冬のソナタ』(02年・日本放映03年)の第1話冒頭でも平気でやっていた鉄板・王道のアリガチな展開を見せてくれる(バカにしているワケではナイですよ~)。
 いやまぁ今回ブツかったお相手は同性の先輩たちだけど(笑)。もちろん本作冒頭では現役プリキュアのオープニング主題歌が流れる中、先代と先々代のプリキュア2組がそれぞれ電車に乗って、現役プリキュアが住まうこの田舎町へと遠足に行く光景が描かれているので唐突感はナイ。


 で、本作は戦闘ヒロインものでもあるので、当然ながらバトルへとなだれこまなくてはならない。毎度おなじみ幼児の集中力的に尺が70分しかない映画なので、ワリと早々にプリキュア映画恒例の女児たちが映画に向かって応援するためのペンライトことミラクルライトを擬人化・小人化・妖精化したミラクルン(笑)が、いかにも悪人そうなリフレインなる悪の精霊に追われている展開となる。
 小競り合いの末に街の中心部の大通りの交差点に現役プリキュア3人組が登場! ……もちろんココで現役組が悪党を瞬殺してしまっては先輩プリキュアの出番が不要になってしまう(汗)。よって、映画版の恒例でパワーバランス的にゲスト悪役は猛烈に強い!


 そこに駆けつけてきたのは、変身前の少女の姿である先輩プリキュア2組、先代の『スター☆トゥインクル プリキュア』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191107/p1)と先々代の『HUG(はぐ)っと! プリキュア』(18年)である。もちろん過去作でこの2組は共演しているので明るくカンタンに偶然の再会のあいさつもする!――ココを初対面として描いてしまったならば、複雑なことは理解ができなくても、過去作を鑑賞していれば面識の有無程度であれば幼児でも記憶していることなのでプチ不審感が募ってしまう(汗)。そんなに手間もかからずに点描だけでもクリアができることなのだから、一部の東映特撮のヒーロー大集合映画も見習ってくれ!(笑)――


 そして先輩プリキュア2組の合計10人が、早くも懐かしいけどおなじみの何度でも観返したくなる美麗なバンク映像と勇ましいBGMが長々と流れる中で次々と変身! 単独名乗りやグループ名乗りもあげていく! お約束でも陳腐凡庸でも頼もしくてカッコいい~~! ジ~~ンと感動してきて早くも筆者の涙腺は決壊してくる。そして始まる壮絶なアクションとバトル!
 10人が数分もかけて連続変身していると、さすがにその間に敵は攻撃を仕掛けてこないのか? という古典的なツッコミも脳裏に浮かんでくるけど、時間ループ後の再戦や再々戦時には瞬時に変身していることで、現在放映中の『ウルトラマンZ(ゼット)』(20年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200723/p1)や往年の『宇宙刑事ギャバン』(82年)たちのように実際には0.01秒くらいで変身が完了しているのだろうと好意的に脳内補完もできるのだ(笑)。


 本映画のお題はメインタイトルからもわかる通り、主要人物たちだけは時間ループしたという記憶を保持しているけど周囲はそれと気付かず、同じ1日(土曜日)を何度も繰り返しているというモノ。
 もちろんトオの経ったオッサンオタクであれば古典ジュブナイルSF『時をかける少女』(65年)に端を発する多数の同工異曲の作品群があることも知っているだろう。20年夏季にはこの題材を扱った深夜アニメ『Re:ゼロから始める異世界生活』(16年)の第2期が、本映画が公開中の秋季にも深夜アニメ『ひぐらしのなく頃に』(06年)のリメイクかと思ったら第5期(笑)が放映されている。


 しかし、本映画では時間ループに伴う不可思議感・不条理感はあまり強調されていない。そもそも劇中でのループはたったの2回だけであり3回目には脱出ができてしまう(……3回目だったっけ?・汗)――セリフで実はすでに何十回ものループを繰り返していたと説明はされるけど――。
 たしかに小学校低学年ならばともかく3~4歳児に時間ループは理解できないだろうことを思えば、そのへんの不条理感を過度に強調しないのも正解だ。土曜のお昼前に敗退したら土曜の朝のベッドに戻っていてソコから朝食の家族の団欒を経てリベンジに挑んでいく描写は、幼児にも理解がしやすい優勢劣勢を繰り返すシーソーバトルとしては認識ができるハズ。


 それで本映画にかぎった話ではナイけれど、「プリキュア」作品の基本骨格であり主眼としているのはやはりヒーローバトルである。現役プリキュア3人は何度かのループを繰り返すうちに学習して敵に対する攻略方法を編み出していく。そして最後は主人公少女・のどかことキュアグレースを主役キャラらしく立てるためにその原理はまったく不明なれども(笑)強化変身! その姿は実に神々しい。そして大空高く飛び上がって1対1の戦いでラスボスをついに圧倒!――前々作の元気少女・前作の脳天気少女と比すれば、長らく病弱であったおしとやかな善良少女という設定でもある現役主人公には、コレくらいのパワーインフレがあった方が作品内でのキャラクターバランス的にもちょうどイイだろう――


 ……ここで終わってもイイのだけれども、それだと女児向けアニメとしては勇ましすぎると思ってか、もちろん主人公の母親が同日に母校で開催される同窓会に出席するという話題などで伏線も張られてはいたけど、悪い意味ではなくエクスキューズ的にラスボスの悲劇臭がする正体明かしもなされて、それに対する救済も与えている――コレもコレで20世紀の『セーラームーン』のむかしからよくあるパターンでもある。加えてネタバレするけど、往年の『ウルトラマンメビウス』(06年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070506/p1)における先輩・ウルトラマンエイティ客演回(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070218/p1)に登場したゲスト怪獣のように、取り壊しになる明治・大正期に建造されたような白亜の洋風木造校舎(の精霊)の思念がラスボスの正体――。


 ただしこーいうエンタメ作品を、古き良きものが打ち捨てられていく事態を惜しんで……といったテーマ主義や風刺ありきで解題するのはあまりよろしくないと思う。まずは近作の3大ヒーローチームが共演。先輩も強者として立てなければならない。しかして主人公も埋没させずに最後には立ててみせる。その次に本映画独自の個性として時間ループによる不可思議感と敵に勝てない絶望感。けれどもそれを打ち破るネバーギブアップの精神と学習能力から来た知恵と作戦。そして一番最後にトッピングの香辛料として古き良きものが打ち捨てられていくことの寂寥感――ただしイヤ~ンな感じのニガ味の域にまでは達せさせない安全な範疇でコントロールされたソレ――。といった優先順位で作品が組み立てられているハズである。
 ここをカン違いして逆立ちして考えてしまう輩が多いからこそ、スカッとした明瞭な娯楽活劇作品が作れずにモヤッとした曖昧な作品や、テーマは正しくても頭デッカチで鼻につく作品に陥ってしまったり、明後日な方向の批評・感想が跋扈することにもなるのだろう。


 逆に云うなら、娯楽活劇作品としての骨格、そのへんの作品構造がシッカリできてさえいれば、元作品を未見の観客にもスンナリと理解も感情移入もできる作品を構築できるとも思うのだ。事実、筆者は『HUGプリ』は気に入って全話を鑑賞したけど、『スタプリ』と『ヒープリ』は頭の数本だけを観てあまりノれなかったので積ん録になっている――あくまでも私的な感慨であって世間一般やマニア間での公約数的な評価ではナイですよ~――。
 しかし、「プリキュア」自体が東映お得意の低予算・少作画枚数体制ゆえに、特撮変身ヒーローもの以上にシンプルで様式美的な長尺の変身・名乗り・必殺ワザのバンク映像を長々と流す基本は攻防劇の作品群であるし、本作を鑑賞するにあたってほぼ未見の過去作品があることでの支障はなかったとも考える。


 まぁもちろんスレたマニア目線で観れば、「プリキュア」映画恒例の劇中キャラが観客の子供たちに向かってアトラクショーの司会のお姉さんのように「みんな~~! ミラクルライトを振って応援して~~!!」と呼びかけていたのであろう幾つかのシーンはカットがなされた形跡がわかってしまうし、映画冒頭でも現役プリキュアたちが「声は出さずに(飛沫は飛ばさすに・笑)応援してネ~」と呼びかけていることにはスタッフの苦労も忍ばれてしまう。中堅アイドル声優三森すずこが演じる途中加入プリキュアは、この映画の本来の公開時期である3月には登場していなかったので、同じく冒頭で「今日はワタシは助けに行けないけど~」と断りも入れている(汗)。
 よって、「大きなお友だち」向けに本映画の本来版の円盤を発売すればきっと爆売れするとも思うゾ(笑)。


 映画終了後には来春公開の『映画ヒーリングっど♡プリキュア ゆめのまちでキュン!っとGoGo大変身!!』の予告編も流される。本来は秋に公開予定であった現役プリキュアをメインタイトルに冠した映画である――もちろん後付けで来年の新プリキュアも商売的にはちょっぴりネジこむだろうとは推測――。そこには歴代プリキュア3代目チームである『Yes! プリキュア5(ファイブ)』(07年)とその2年目のシリーズである直結続編『Yes! プリキュア5 GoGo』(08年)の6人の先輩プリキュアがメインゲストとして大活躍している映像が!
 もちろん事前情報で知ってはいたけど、ワクワクしてきて『プリキュア5』の大ファンでもある筆者は「絶対に観に行く!」と心に誓うのであった(笑)――本映画でも一瞬、プリキュア5の金髪ツインテのロリ少女である黄色いプリキュアの娘が、変身前は子役女優という設定を活かして劇中内TV番組にも顔写真が写っていた――。


 しかし、来春2021年から数えたらもう13年も前のプリキュアだから、我々オッサン世代のモノサシで換言すれば初代『ウルトラマン』(66年)から『ザ☆ウルトラマン』(79年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971117/p1)までの時間が過ぎたワケであり(汗)、幼児たちには馴染みがないであろう。
 次作の新プリキュアのキャラも確立しきっていない3月放映の序盤である第7話あたりでもう先輩プリキュアをゲスト出演させるのもいかがか!? と思いつつも、一昨年の夏には初代プリキュアをゲスト出演させ、その秋の『映画HUGっとプリキュアふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ』(18年)の公開時期には現役TV本編でも歴代プリキュア55人全員が登場する前後編で周知を図った『オールスターズメモリーズ』がプリキュア映画史上ダントツの興収を上げたことから、そのパターンを採るのがやはり安全パイではあるだろう(笑)。


(了)
(初出・オールジャンル同人誌『DEATH-VOLT』VOL.86(2020年12月20日発行)所収)


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