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マジンガーZ/INFINITY ・Infini-T Force/ガッチャマン さらば友よ・ガッチャマン クラウズ インサイト ~2大古典の復活に見る、活劇の快楽を成立させる基盤とは何ぞや!?

『ガンダム Gのレコンギスタ』 ~富野監督降臨。持続可能な中世的停滞を選択した遠未来。しかしその作劇的な出来栄えは?(富野信者は目を覚ませ・汗)
『翠星のガルガンティア』『革命機ヴァルヴレイヴ』『銀河機攻隊マジェスティックプリンス』 ~2013年3大ロボットアニメ評!
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 2020年1月2日(木)と1月19日(日)に、往年の人間搭乗型巨大ロボットアニメの始祖にして金字塔『マジンガーZ(ゼット)』(72年)の10年後を舞台とした続編アニメ映画『劇場版マジンガーZ/INFINITY(インフィニティ)』(18年)が、CSアニマックスにて放映記念! とカコつけて……。


●アニメ映画『劇場版 マジンガーZ/INFINITY』(18年)
●奇しくもその翌月に公開された、やはり同時期に同局フジテレビの1時間前のワク(日曜夜6時)にて放映されていた日本TVアニメ史におけるエポックメイキングな大ヒット作『科学忍者隊ガッチャマン』(72年)を材のひとつとした3D-CG深夜アニメ『Infini-T Force(インフィニティ フォース)』(17年)の後日談映画『劇場版Infini-T Force/ガッチャマン さらば友よ』(18年)
●ついでに、さらにコジつけて(汗)、深夜アニメ『ガッチャマン クラウズ』(13年)の第2期『ガッチャマン クラウズ インサイト』(15年)


 上記3作品のレビューをアップ!


『劇場版 マジンガーZ/INFINITY』・『劇場版Infini-T Force/ガッチャマン さらば友よ』・『ガッチャマン クラウズ インサイト』 ~2大古典の復活に見る、活劇の快楽を成立させる基盤とは何ぞや!?

(文・T.SATO)

『劇場版 マジンガーZ/INFINITY』

(2018年1月13日公開)
(2018年4月27日脱稿)


 開幕は夜陰の北米研究都市に突如出現した機械獣軍団を迎え撃つために出撃した、マジンガーZの後番組・グレートマジンガー(74年)の大活躍でスタート!


 スクランブルダッシュ! サンダーブレーク! グレートタイフーン! ニーインパルス・キック! マジンガーブレード!


 相手は生物ではなくメカである。どんなに斬り裂いても痛みはナイから、悪人にも一分の魂を思いやる必要はなく(笑)、破壊の「全能感」、状況をリードする「万能感」に耽ることができる! 実のところ『マジンガー』、いや「娯楽活劇」全般の「本質」とはソレではなかろうか? 近代的な人道・平和主義・左翼リベラルとは程遠い、プリミティブ(原始的)な「暴力衝動」の発散! ――人間とはしょーもナイですな(汗)――


 70年代前半に大ヒットした近代的巨大ロボットアニメの祖『マジンガーZ』(72年)がその10年後を描く続編として登場。往年のヒーロー活劇のリメイクは、一昔前だと「リアリティ」や「ドラマ性」の強化、「内省的自我」を人物に付与して、かえって空回りしていたモノだが、近年では一周回ったのか、雲霞のごとく湧き出る敵をバッタバッタとチギっては投げる「身体性(の拡張)の快楽」こそが本質だったと再発見。そこが最大限に盛り上がるかたちで作劇されるようになった感がある。


 本作でも回想で、グレートマジンガーを駆る剣鉄也(つるぎ・てつや)は70年代的な下町での情の濃い生活を愛したとし、行方不明の鉄也を案じる出産間近の相棒・炎ジュンといったヒューマンな描写も点描されはする。


 しかし、観客は『マジンガーZ』と聞いて何を観たいのであろうか? それは『マジンガーZ』らしさの再現であろう!


 巨大怪獣の変種としての「機械獣」の大挙登場! 悪の首領・Drヘルが率いるブロッケン伯爵・あしゅら男爵・戦闘員たる鉄十字軍の団員! 白亜の光子力研究所に、そのプールから出撃するマジンガーZ


 敵はなぜか街よりも光子力研究所を攻めてきて(笑)、両陣営が武器・弾薬・必殺ワザを目一杯くりだし、一進一退の攻防の果てに悪を叩きふせる爽快感! そして、映画版ならではのTVとは異なるスペシャル感!


 そこで出した作り手のアンサーは、新たなる強敵の登場ではなく、『グレートマジンガー』最終回でスタッフが倒し忘れたミケーネ帝国の「闇の帝王」のリベンジでもない(笑)、おなじみDrヘルと「機械獣」軍団の復活であった!


 とはいえ、「端正な正義」と「醜悪な悪」とでは、後者の方が分は悪い。そこで本作では『マジンガーZ』以降のジャンル作品の成果でもある、「メカゴジラ」や「悪いウルトラマン」や「悪の仮面ライダー」に「敵のガンダム」がごとき、「正義のヒーロー」と拮抗するかに一瞬錯覚させる「ダークヒーロー」の延長か、マジンガーZとなぜか同じデザインラインで、しかし天下のマジンガーZの巨体さえ頭頂部に操縦ホバー機みたく収めてしまう超巨大な敵ロボ・マジンガーインフィニティなる存在を登場させる!


 コレまた原典に準拠して富士の裾野(笑)にある、まずは正義チーム側の新ヒミツ基地の真下の地底の奥底に、超古代遺跡として突如出現させることで舞台も集約化!


 もちろん、最後は正義が勝つに決まってはいる。あとは難敵といかに攻防して、先鋒や中堅によるトーナメント形式での段取りを踏んで、真打ちが最後にラスボスをいかに倒すかだ。


 本作ではその先鋒や中堅を、原典ではあまり見なかった国際規模での大艦隊や大航空戦力、主人公・兜甲児(かぶと・こうじ)の弟・シローが率いる量産型マジンガー軍団として、敵の超巨大マジンガーを倒すためにマジンガーZも最後に超巨大化を果たす!


――そのSF的な言い訳として、超巨大マジンガーの人型回路で本来は人類存続を審判する役目でもあった、光子力研究所の面々と親しくすることで「人間性」の何たるかを知った美少女型アンドロイドに、多元並行宇宙を一瞥できる高次元空間へと出張させて、局所的に物理法則自体を改変させることで、マジンガーZの超巨大化を可能とする!――


 量産型マジンガーは『機動戦士ガンダム』(79年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/19990801/p1)シリーズ、人造美少女は『新世紀エヴァンゲリオン』(95年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20110827/p1)も想起させるために、一部マニアによる「コレじゃない感」もわかる。


 しかし、原典のTVアニメと同様のマジンガーZvs機械獣の1vs1のバトルだけではいかにもスケールが小さい。映画版ならではの世界規模での危機を描きつつも、庶民・大衆もマジンガーに守られる頼りないだけの人質存在ではなく、彼らも相応に戦ったのだ! として描くためにも、国連軍や量産型マジンガーの活躍は妥当ではあり、最後はもちろん作品の看板であるマジンガーZ主体で強敵を倒すにしても、美少女・グレートマジンガー・量産型マジンガーの助力もまた「勝機」を与えたとする作劇も、非常に適切な帰結に思える。


 往年の『宇宙戦艦ヤマト』初作(74年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20101207/p1)終盤での「僕たちがやるべきことは殺し合うことじゃない、 愛し合うことだったんだ!」なる発言は、往時は革命的でも今ではお花畑ではある。


 地獄大元帥ロボに搭乗するDrヘルに「戦闘中の高揚感の有無」を問われて、お上品な理系の研究者ともなっていたハズである主人公・兜甲児もナンとそれを包み隠さずに「そうだ!」とハッキリ認める!!


 「平和」がいかに貴重なモノだとは判ってはいても、やはり「捕食」「被捕食」といった本能を持った「動物」「生物」の一種でもある「人類」には、全員とはいわずとも「戦争」や「バトル」に「格闘技」や「活劇」に「ゲーム」での勝ち負けを楽しんで、そこに「高揚」や「快楽」に「カタルシス」を感じてしまうような不謹慎な性向があることは否めないので、原理的にも絶対平和主義者ではアリエないのだ!――むろん、絶対戦争主義者でもナイ。そーであれば、人類は互いに殺し合ってとっくに絶滅している。我々はそれらの両極の間を常に揺れ動いている存在でもあるのだ――。


 Drヘルも安倍ちゃん・トランプさえ排除すれば、世界は即座に平和になるとするような安直二元論。戦後であっても争いが絶えない世界情勢。自身をめぐって今また国際世論が割れたサマも見て、「独裁のみならず、自由・多様性もまた悪をもたらす!」と鼻で笑う!


 個人的には我が意を得たりである(笑)。易(やす)きに流れる愚劣な大衆をそこまで描いた上で、電力-光子力-高次元変換でマジンガーZを超巨大化させるために、TV中継での最終決戦を観ていた全世界の人々がせめて節電して声援する姿。既視感あふれる「少年ジャンプ」漫画の文法だともいえるが、泣かせるではないか!


 本作の翌月に公開された『劇場版Infini-T Force/ガッチャマン さらば友よ』(18年)同様に、超常的なエネルギー発電による量子レベルでの「時空ゆらぎ」が悪を招来、と同時に勝機もそこにあった! と描くけど、怪獣映画『シン・ゴジラ』(16年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20160824/p1)のラストとも同じで、新技術の全否定ではなく、危険も承知で「光子力」との共存を選択してしまうオチは、新たな論争のタネにもなりそうだけど(笑)。



後日付記1


 世代人は誰でも思ったことであろうけど、『マジンガー』シリーズは、『マジンガーZ』(72年)・『グレートマジンガー』(74年)・『UFO(ユーフォー)ロボ グレンダイザー』(75年)の3作品を含めて同一世界観の作品なのであった。しかし、煩雑にはなるし、マジンガーZ活躍の必然性が減るので、宇宙人のオーバーテクノロジー・ロボットたるグレンダイザーは登場させない処置もまぁ妥当であろう。
 しかし、母星の再建のために帰国した宇門大介(うもん・だいすけ)ことデューク・フリードにもグレンダイザーの応援要請の通信を送ろうか!? いや、彼の母星再建を邪魔したくないし、そも地球に来てもらっても間に合いません! などといったヤリとりなどで、彼のことにも言及することで、『グレンダイザー』の存在をも間接的に肯定してほしかった! セリフだけなら、10秒程度の尺で済んだであろうし(笑)。
 まぁ、仮にシナリオ段階や構想段階では存在していても、尺やテンポの都合で、無くてもストーリーの理解には支障が生じないような一連なので、真っ先にカットの対象になりそうなシーンだけど(汗)。



後日付記2


 本作の助監督(実質、副監督)は、なかの☆陽。1990年代の特撮雑誌『宇宙船』の読者投稿欄やイラスト投稿で名をなし、その後は特撮ヒーロー番組やアニメの絵コンテ担当――たまに各話演出――でその名前を見るようになっていたけど、ついには一応の大作アニメ映画の主要スタッフに名前を連ねるようになってしまうとは……。隔世の感。馬齢を重ねるだけの泡沫でしかない筆者とのこの彼我の差(笑)。
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『劇場版 Infini-T Force/ガッチャマン さらば友よ』

(2018年2月24日公開)
(2018年4月27日脱稿)


 70年代タツノコプロダクション製作のヒーローアニメである、


・『科学忍者隊ガッチャマン』(72年)
・『新造人間キャシャーン』(73年)
・『破裏拳ポリマー』(74年)
・『宇宙の騎士テッカマン』(75年)


 彼らが、各々が属する並行宇宙の垣根を超えて、スーパーヒーローが存在しない現代東京に召喚されて共闘したのが、本作に先立つ2017年秋に放映された深夜アニメ『Infini-T Force(インフィニティ フォース)』で、世代人ならば胸が沸き立つ作品でもある。しかも、2Dセル画ルックのCGではない、高品質3D-CGによる最先端技術の映像作品と来たモンだ!


 とはいえ、残念ながらタツノコ作品は、ウルトラマン仮面ライダー機動戦士ガンダム・少年ジャンプ系マンガと比すれば、シリーズ作品や長期連載作品ではなかったことからか世代人限定の感が強い。


 タツノコ作品の中で最も知名度があって、ジャニーズのアイドルグループ・SMAP(スマップ)がNTT東日本のパロディCM(00年)で演じたり、実写大作映画(13年)でリメイクもされたり、日本のアニメ史における技術面&ドラマ面においてもエポックメイキングで、それまでの前代との画期ともなった作品は『科学忍者隊ガッチャマン』であろう。


 今は昔の1980年前後においては、アニメマニア間でもそのように語られたモノだけど、現今の若い評論同人などと会話すると往年のタツノコ名作や、他社だけど70年代後半の東京ムービー新社(現トムス・エンタテインメント)系の名作アニメなどは、アニオタの基礎教養にはなってはいないようである(汗)。


 それを過剰に嘆く気はナイ――それだと老害になってしまう――。


 現行作品を批評する折りに、その個別単独の作品評のみならず、ジャンル史や各種絵柄・作画・描写・演出技法の歴史や系譜をさりげに織り込んで、その都度で語り直していくことで、上から目線でのイヤミなしに自然に啓蒙していくような芸当ができなかった我々年長世代にも落ち度はあったと思うのだ。それに筆者も、自身が生まれる前の60年代モノクロアニメや『月光仮面』(58年)などのモノクロ特撮など、日本のTV草創期のジャンル作品群には疎(うと)いのだし、CSで放映されてもチェックはしていなかったりするのだから(汗)、そのへんでも大グチは叩けない。


 仮に小姑的に声はデカい熟年マニアが本作に文句を付けようとも、彼らの母数が商売的には極少である! と判っていたのであろう。活躍しているのがカッコいいヒーローたちである以上は、変身前の人間体のキャラクターデザインも1970年代風のそれではなく、今風の髪型・ファッション・眼鏡・青年・少年のイケメンたちに変更して、イケボ(イケメンボイス)声優たちも採用することで、当今のオタク女子にもアピールせんとする!――萌えアニメ専門(汗)の若年オタ男子へのアピールは最初から放棄していた?(笑)――


 この処置に不快な年配オタもいるのだろうけど、筆者のようにウス汚れてしまって割り切ってしまえるオタクとしては、この処置こそが現実的なのだとは思うのだ。まぁ、筆者は『劇場版マジンガーZ』でもメインヒロイン・弓さやかに続けて、今では中堅声優の茅野愛衣(かやの・あい)ちゃんが演じている本作の黒髪ロングの女子高生メインヒロインの見目麗しい姿さえ愛でられれば、それでイイけれど(爆)。


 とはいえ、どんな声でも器用に出せるセキトモこと関智一(せき・ともかず)が演じる短髪・若白髪(!)と化したガッチャマンG1号は、並行宇宙の別人だという解釈も可能だけれども熱血に過ぎて、原典では熱いヤツでも沈着冷静ではあったから、ピカレスク(悪漢)ロマンでもある『コードギアス 反逆のルルーシュ』(06年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20081005/p1)における真っ直ぐなライバル若造役のころとは異なり、今では何をやってもウラがありそうなイケメンボイスで黒幕・ラスボスキャラにも見えてしまう(汗)櫻井孝宏あたりが適任だったのでは? ……とも思ったけれども、彼は本作ではテッカマンなのであった(笑)。


 本作は昨2017年秋に放映された深夜アニメ版の後日談映画でもある。そうなると、世界観に対する説明不足で、同じく昨秋のアニメ映画『Fate/stay night[Heaven’s Feel](フェイト/ステイナイト ヘブンズ・フィール)第一章)』のように、大衆に向かずにマニアにだけ向いている、1980年代のリアルロボットアニメ路線的な「一見さんお断り」の敷居が高くて独り善がりな作品におちいってしまうのかと思いきや……。


 少しでも集客に有利なようするためにか、副題には「ガッチャマン」の文言を入れて、TVシリーズの後日談映画『劇場版ウルトラマンX(エックス) きたぞ!われらのウルトラマン』(16年)のように冒頭10分ほどの長尺を費やして、前日談の深夜アニメ版もおさらいしていて、そのへんでの懸念はクリア。


 加えてこの冒頭で、「並行宇宙」の概念を説明できたことで、『仮面ライダーエグゼイド』(17年)世界&『仮面ライダービルド』(18年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20181030/p1)世界の双方に存在していた大槻ケンヂのように(笑 ~映画『仮面ライダー平成ジェネレーションズFINAL ビルド&エグゼイドwithレジェンドライダー』(17年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20171229/p1))、今回の「劇場アニメ版」とは「TVアニメ原典」とも「深夜アニメ版」とも異なる歴史をたどった「第3の世界」であり、さらに「第4の世界」から召喚されてきたガッチャマンG2号ことコンドルのジョーに至っては、この「第3の世界」の自分(!)とも出逢ったけどある事件で死別して、ガッチャマン設立の発端となった敵組織・ギャラクターもこの世界では名のみ同じの別存在であったと述懐させることで、SF感あふれる作品世界も構築ができている。


 ガッチャマンの産みの親で、「並行宇宙」の原理を元に無限のエネルギーを調達せんとする、劇中でも危険視されている超常発電を実現できた南部博士による、将来においてはともかく今の国連の在り方は信じてはいない、日本の国益の優先にも見える諸外国との駆け引きや、悪人(?)と化した南部博士が繰り出してくる量産型ガッチャマンとの戦闘などでワクワクさせつつ、「作劇」としてはシンプルでもメリハリのある「攻防劇」に徹していて、個人的にはイマイチに思えた「深夜アニメ版」よりもエンタメ的には楽しめたのであった。


 ただ、作品の内容はともかく、映画『GODZILLAゴジラ) 怪獣惑星』(17年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20171122/p1)などもそうだったのだけど、3D-CGによる作品をアニメだと分類してしまうことには、個人的には非常に抵抗感があったりもする(笑)。


――『gdgd妖精s(ぐだぐだフェアリーズ)』(11年)や『けものフレンズ』(17年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190909/p1)のように、2~3頭身にデフォルメされたCGキャラであれば、既成のアニメ枠にくくられても違和感がナイけれども(笑)――

劇場版Infini-T Force ガッチャマン さらば友よ [Blu-ray]
(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.71(18年5月4日発行))


オマケ:『ガッチャマン クラウズ インサイト』 ~評論オタ間では高評価だが、「ヒーロー」「民主主義」「空気」の問題が乖離したままで終わってはいないか!?

(2016年4月29日脱稿)


 本作終盤、一応の宿敵・ゲルサドラを8人のガッチャマンが、白昼の広大な公園で必殺ワザ名を連呼してボッコボコにしていく。尺取り虫のようにノタウチ回って息も絶え絶えで苦しんでいるゲルサドラ!


 ヒ、ヒドい……。


 この場合、痛快の念は覚えない。ヒーローによるヤリすぎな力の行使である! と視聴者に思わせることが、このシーンの演出のねらいなのである。劇中でもワイドショー中継されたこの映像に、一時はスマホの直接選挙で日本国首相にまで登り詰めて、善政まで行なった宇宙人・ゲルサドラの撲滅を求めた庶民・大衆・愚民のみなさんの「空気」の潮目も、


ガッチャマン、やりすぎ! ゲルちゃん、かわいそう!」


と再逆転!


 いやぁ「民主主義」ってホントに素晴らしいモノですネ(棒読み)。


 個人的には、他の政体よりも良質だから疑うべからず! 庶民・人民は善良だから疑うべからず! と楽観的かつ恩着せがましい輩による「民主主義」は信じない。脊髄反射で直情的で世論調査的な「直接投票・直接民主主義」よりも、シニカル(冷笑的)に「民主主義」でも誤てることがままあると冷めた人々による熟議の果ての「議会制・間接民主主義」であるのならば、まだ信じられるのだけれども……。


――むろん、「議会制・間接民主主義」でも誤まてる可能性は残るけど、「直接投票・直接民主主義」と比すればその発生頻度はより下がるであろう――


 本作は往年の大人気TVアニメ『科学忍者隊ガッチャマン』(72年)の名を継ぐも、内容に関連も相似もさしてなく、それでも好評を獲得してしまった深夜アニメの第2期作品でもある。……というか、原典のTVアニメ版を観たことがあるアニメマニアが今では極少だろうけど(汗)。だから、ベルクカッツェ・総裁X(エックス)・ゲルサドラなどの原典における敵キャラ引用ネームなぞは、同作を名乗るためのエクスキューズかオヤジ転がしにすぎなくて、そこで喜ぶのはドーなのか? とも思ってしまうのだ。


 主人公少女は黒髪セミロングの一見フェミニンな娘でも、白黒・モノトーンの服装をしていて、アイドル声優内田真礼(うちだ・まあや)嬢による艶(あで)やかなるボイスであるも、テンションは高くて「○○っス!」「○○っスよね~」口調はまだしも、「ボク」を一人称とする「ボクっ娘(こ)」でもあった。


 その「口調」や「自称」を字面だけで憶測されてしまうと、自意識過剰・自己演出が透けてきて「イタい少女」といった感じがするかもしれない。けれども、実際の彼女自身はシミったれた「内面」や「苦悩」に「セルフ演出」などの片鱗(へんりん)は微塵も見せずにカラッともしている。善意の宇宙人によって正義の味方のガッチャマンのメンバーとして選抜されても、取り乱すといった感じではなく芝居がかったオーバーアクションで喜んでいるので、ケーハク一歩手前にも見えてしまう。


 しかし、ストーリー展開都合であるのか主人公補正であるのか、老賢者のように物事の真相・実相をも見抜いてはいる。ご都合主義といえばご都合主義なのだけど、「元気少女」の素の上にムリのない「オトナの態度」のイイ意味での「演技」も積み重ねられる「人格者」でもあったのだ。本作が実写作品であったとして、主人公少女をガチで未熟な10代の少女が演じたのならば、その老賢者ぶりにもムリが生じてきてハナにつきそうだけれども、そこはアニメという媒体の良さ。生々しいリアリズムよりもテーマ的な抽象度・観念度の方が浮上しやすい世界観作りの方へと貢献ができている。


 本作のキャラクターデザインも、「萌え」というよりかは「オシャレ・サブカル系」に寄っている。しかし、「スカした域」にまでは行かない「崩れた感じ」も残すことで、リアリティの階梯も微調整。


 宇宙人由来の技術で超進歩したモバイル端末の超アプリによる「電子モンスター」がなぜだか実体化して、現実世界にも干渉ができてしまったり、人々の頭上には常にカメラの正面を向いている(笑)、各色の「漫画的なセリフの吹き出し」が実体化していても、登場人物たちの絵柄が写実的・肉体的リアリズムには寄ってはいないので、違和感はあまりないし、よってその少々インチキな「漫画的なセリフの吹き出し」の実体化も、視聴者側での許容が可能となっているのだ。


 「電子モンスター」遊びによって、同時に「強制」ではなく「内発」的な「人助け」を背中をカルく押すように助長してあげて、「前近代的なヒーロー崇拝」ではなく「万人を等しくヒーローへと進化」させん! としていた天才女装男子の挫折&回復ほかを描いていたのが、本作の前作にあたる深夜アニメ版『ガッチャマン クラウズ』の第1期(13年)でもあった。


 しかし、今回の第2期『~クラウズ インサイト』(15年)では、この「電子モンスター」を悪用してくる輩の登場を皮切りにして、「ネット選挙」と「民主主義」に、日本的「ムラ世間」の「同調圧力」=「空気」の問題までをも描いていく!


●1970年代の偽ユダヤ人イザヤ・ペンダサンこと在野の知の巨人・山本七平(やまもと・しちへい)大センセイによる『「空気」の研究』(77年・ISBN:4167306034ISBN:416791199X
●西洋中世史の泰斗(たいと)である阿部謹也(あべ・きんや)大センセイによる『西洋中世の愛と人格 -「世間」論序説』(92年・ISBN:4022565675ISBN:4022597321ISBN:4065182069
●ずっと後年には、オタク第1世代の評論家・浅羽通明(あさば・みちあき)センセイが『野望としての教養』(00年・ISBN:4788700638


 それらの論考が、アリがちな「日本ダメ/欧米至上」などではなくって、


キリスト教会による「懺悔」「告白」の強要から誕生した「内面」「近代的自我」が「砂粒の個人」へとおちいって、「孤独感」や「神経症」や「ノイローゼ」などをもたらしてしまう短所
●「世間」にも、「個人」と「国家」の間にある、自治的・互助的な「中間共同体」として、人々を「包摂」して「安心」をもたらしてくれる長所


 是々非々で一長一短があることを公平に指摘しつつも、「世間」=「空気」の悪い面、その場の「空気」には逆らえずに「長いモノには巻かれろ」という、直観的な自己保身で同調してしまうような日本的な「弱い自我」の問題をも提唱してからでも、もう40年近く!


 往時は「世間」などという語句は、西欧の学問には存在しない概念だからと学界からはガン無視されるも(汗)、じょじょにシンパが増えていき、ついにはとうとう我々オタクが愛好するジャンル作品でも扱われてしまう日が来ましたヨ!


 なので、この作品のテーマそれ自体には大いに賛同してしまうのだ。


 しかし……。出来上がった作品は、やはり「ヒーロー」と「正義」の問題を扱って、国産の特撮&アニメヒーローのアレンジ存在が同一世界&同一歴史軸上でメタ的に活躍していた深夜アニメ『コンクリート・レボルティオ~超人幻想~』(15年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190302/p1)ほどではなかったけれども、いかにも頭デッカチで生硬であって、図式的にすぎて段取り的でもあって、「空気」と「民主主義」と「ヒーロー」の問題は乖離したままで空中分解しているように見えてしまって、物語としても馴染んでいるようにも見えなかったし、個人的には心を打たれなかったなぁ(汗)。


 本作の第1期同様に、ネット上での「クラウズ論壇」も隆盛だったけど、プチインテリオタクの通弊で、「テーマが物語としてうまく定着したか」を論じるよりも、社会問題やウンチクの方を先に語っていて、「作品批評」としては逆立ちしていた感も否めない――まぁ、筆者も結局は彼らと同類なので、大声でガナっての批判はしないけど――。

「GATCHAMAN CROWDS insight」Vol.1 Blu-ray
(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.67(16年8月13日発行))


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『鉄(くろがね)のラインバレル』 ~正義が大好きキャラ総登場ロボアニメ・最終回! 2008年秋アニメ評!

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鉄人28号 白昼の残月』 ~2007年アニメ映画評! 『河童のクゥと夏休み』『ミヨリの森

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20071014/p1

『GR ジャイアントロボ』 ~2007年秋アニメ評!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20080323/p1

創聖のアクエリオン』序盤寸評 ~2005年春アニメ評!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20051021/p1

鉄人28号』 ~2004年春アニメ評! 『花右京メイド隊』『美鳥の日々(みどりのひび)』『恋風(こいかぜ)』『天上天下

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20040407/p1

超重神グラヴィオン ツヴァイ』 ~2004年冬アニメ評! 『超変身コス∞プレイヤー』『ヒットをねらえ!』『LOVE♡LOVE?』『バーンアップ・スクランブル』『みさきクロニクル~ダイバージェンス・イヴ~』『光と水のダフネ』『MEZZO~メゾ~』『マリア様がみてる』『ふたりはプリキュア

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20040406/p1

宇宙のステルヴィア』『ASTRO BOY 鉄腕アトム』 ~2003年春アニメ評! 『妄想科学シリーズ ワンダバスタイル』『成恵(なるえ)の世界』

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20040403/p1