『ブレイブウィッチーズ』『ガーリー・エアフォース』『荒野のコトブキ飛行隊』『終末のイゼッタ』 ~美少女×戦闘機×銃器のアニメ四者四様!
『ストライクウィッチーズ Operation Victory Arrow』第3話「アルンヘムの橋」
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TVシリーズ『ストライクウィッチーズ2』(10年)と映画『ストライクウィッチーズ 劇場版』(12年)の合間に起きていた出来事を描くOVA『ストライクウィッチーズ Operation Victory Arrow』(14〜15年)3部作の先行劇場公開・完結記念! とカコつけて……。『ストライクウィッチーズ』1期・2期・劇場版をUP!
『ストライクウィッチーズ』1期・2期・劇場版 ~魔法少女・ネコ耳・MS少女・パンチラ・仮想戦記。B級ジャンクなのに傑作成立!
(文・T.SATO)
(2012年4月執筆)
「魔法少女」で「ネコ耳」で、「MS少女」で「パンツ見せ見せ」で、「スチームパンク」な第2次世界大戦の「仮想戦記モノ」である。まさにごった煮、寄せ集めのB級ジャンクカルチャー作品の到達点でもある(笑)。
もう少していねいに説明をすると、美少女アニメではおなじみの頭身が低めで線も少ない、一見は幼女向け、実はオタ向けな絵柄の11人という大所帯の魔法少女戦隊モノである。
魔法を発動すると、頭にはかわいいネコ耳が、お尻にはネコのシッポもポン! と出現――モチーフはネコだけではナイ?――。彼女らの周囲にはCG合成による魔法陣も浮上する!
オタク男子たちが好んできたアニメ絵の美少女たちの、既視感あふれるパーツやアイテム群を、メタ的・歴史的に列挙しているパロディであることも明白である。なので、よほどの年少マニアやベタ層にはともかく、このジャンルを真っ正面なりヨコ眼で観てきたオタたちであれば、もうそれだけでプチ・笑いを喚起してくる。
――00年前後にも、美少女アニメ『デ・ジ・キャラット』(99年)などで同じことをねらっていて、オタクの側でもそのアザトさはわかっていて、あえてそれに乗っかって戯れるようなノリなどはすでにあることはあった――
80年代中庸の時点でもすでにあった「MS少女」――素ハダの二の腕や太モモを除いて『機動戦士ガンダム』(79年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19990801/p1)の敵味方の巨大ロボ・MS(モビルスーツ)の装甲を身にまとったアニメ絵の美少女――の系譜も引き継いで、突端にプロペラのある円筒状のメカユニット――現代版の空飛ぶホウキだとのことだ!(笑)――を片足ずつヒザ上まで履くことで、蒼天の大空を超高速で飛翔する!
軍隊モノでもあるのだけど、水兵さんのセーラー服にはズボンもスカートもなく、ブルマ――スクール水着?――やパンティを見せまくり!
ウラ設定によれば、あの世界でのアレはパンティではナイそうだ。番組キャッチコピーも、「パンツじゃないから、恥ずかしくないもん!」となっている(爆)
――アレがパンツじゃないなら、どれがパンツなんだよ!? とツッコミしたくもなるけれど(笑)――。
時は1940年代前半。巨大ロボットアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』(95年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220306/p1)のナゾの敵・使徒のような、CGにて描かれた浅黒くて無機物チックな敵性巨大飛行物体――生物?――群こと「ネウロイ」なる存在が突如として出現して、西欧諸国に対して電撃侵攻を開始する!
それに対抗して、第2次大戦中の世界各国の軍艦・戦車・戦闘機が団結して応戦!!
アニメ絵の美少女だけでなく、メカやミリタリーも往々にして大好物なオタクどもをゲットせんと、ココでも露骨にエサをバラまく。
各国から集合した魔法少女も出身地のお国柄から想起されるステレオタイプな性格となっており、このテのジャンル作品のお約束で全員が通訳なしに日本語(多分)だけで会話する――まだ20世紀の前半ではあっても人種差別なども一切ナイ(笑)――。
そして、コレまたジャンル作品のお約束で、通常兵器の類である軍艦・戦車・戦闘機の火力ではネウロイを倒せずに、これらの兵器群は前座に留まってしまうのだ。
そこに颯爽と大空から現れる、切り札・真打ちたる魔法少女たち!
アクロバティックに高速飛行をしながら、魔法力でその能力をパワーアップさせたとおぼしき古式なライフル銃やマシンガンを連射!
しかして、飛行中の少女のバックにカメラが寄るや、90年代~00年代を通じてエロ漫画やエロ同人誌で発達してきたとおぼしき描画技法で、少女の股間のミゾやふくらみ(汗)を執拗に点描する!
あげくの果てに、魔法少女によっては銃器ならぬ日本刀(笑)まで持ち出して、敵の弱点であるコアの一点を突くことで、敵性巨大飛行体を粉砕!!
……この作品を消費する若いオタクたちは、ベタに「動物化」して楽しんでいるのか? わかっていてあえてシャレとして「メタ(形而上)視点」で「半笑い」しつつ楽しんでいるのか? オッサンの筆者にとってはナゾである。なーんて。『デジキャラット』のむかしからベタ層とメタ層は両方いたのであった。
本作が実にツマラないタイクツな凡作にとどまっていれば、筆者なぞも「作り手も受け手も堕落している!」などと憤慨して、斬り捨てていたかもしれない(汗)。
しかし、爽快なエンタメ活劇としても実に面白くできているのだ!(笑)
コテコテな記号的・お約束的な美少女キャラクターではあっても、温かい血肉が通った感情移入も可能なキャラクターが樹立されていたりもするのだ。
そして、そんな彼女たち同士の交流・交歓ドラマにも、それなりの実感・情感・説得力がやどっている域には達しているどころか、むしろ高度な人間ドラマまでをも構築ができていたりもするのだ。
●ベタベタなただの記号、ウスっぺらで内実をさして持たない書き割り背景のようなキャラクターたちが、段取りや手順を踏んでいるだけにしか見えないような作品
●片やその逆に、虚構作品ながらにキャラクターたちが血肉と必然性を兼ね備えていると感じさせてくれるような作品
両者の違いはどこに由来するのであろうか?
この違いを、作り手の「愛」やら「センス」だのといった「非・合理的」な言葉に安易に還元したくない。加えて、その対極である「マーケティング」の話だけにも安直に還元したくない。
この両者の違いへと至る「作劇」や「人物描写」の巧拙には、何らかの「法則性」があるハズだ。その機微を言語化して、作品の「面白さ」の「本質」に到達できずとも接近し、「この作品はたしかにそうなっている!」と読者の腑に落としてみせる行為が、「批評」というモノの本来の役目ではあるのだろう。
ただし、自分にとっては面白くても、他人にとってはツマラないということもまた、往々にしてあるモノだ(笑)。しかし、だからといって、「批評」というモノはしょせんは「相対」的で「主観」的なモノにすぎないのだ! などとは開き直りたくもないのだ。
せめて、「作品」というモノには、
●クオリティ・質に関わる「垂直」次元での「巧拙」の要素
●各個人の好みに左右される相対的な「水平」次元での「嗜好」の要素
その両方の要素があるのだとは思いたい。
しかし、そうなると今、自分がある作品について「面白い」と思っている要素は、「垂直」部分の「質」や「巧拙」としての要素であるのだろうか? 「水平」部分の「好み」としての要素であるのだろうか?
げに「客観評価」ということもまたムズカしいのだ。
けれども、「主観」であることに100パーセント開き直ってしまうと、それでは例えに出すのは失礼だけど、単なるミーハーな女子の好悪だけの発言と何ら変わることはなくなってしまうどころか、彼女らの好悪の表明とも「等価」とさえなってしまう(汗)。
なるべく「客観」的たらんと努めて、対象物をよりよく見ようとその周囲を一周してきた、その上で紡いでみせた見解を、それでも広義での「主観」にすぎないという意味での「主観」だと称するのであれば、それは同じ「主観」でもよりマシな「客観」に近づいている「主観」だともいえようけど。
そんなオオゲサな話はともかく、ここからはもっと卑近でミーハーな形而下(けいじか)の手ざわり・肌ざわりの話題へと変えよう(笑)。
本作においては、敵性生物ことネウロイは、「人間」や「異星人」などの「知性」や「人格」を持った存在ではなく、天災がごとき「非人格的」な存在になっている。
よって、敵側の事情や内情、敵側にも同情・斟酌すべき事項などのドラマを描く必要は発生してこない。敵を一応の記号的な「絶対悪」として位置づけることができて、「罪悪感」などもナシに敵をやっつける「カタルシス」を物語に与えることができている。つまり、『宇宙戦艦ヤマト』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101207/p1)や『機動戦士ガンダム』(79年)などのSFアニメやリアルロボットアニメのような「国家vs国家の戦争状況」を描いた作品とは異なり、ドラマ面では主人公チームの魔法少女側の「人間ドラマ」だけに特化することができているのだ。
ただし、少女集団もコテコテのパターン化・記号化されたお約束のキャラクターばかりだから、毎度おなじみ少々キツめなツンツンしたキャラでも、ストリートで遊んでいるようなチャラチャラとした私的快楽至上主義者のギャルのような域には達しない。精神的・経済的にも自立した仕事デキるプライド系のイイ女のようなキャラも上司側には登場しても現場の戦闘員メンバーたちには登場しない。
つまり、気弱なオタク男子にとっての苦手な域に達したキツめの女性キャラは登場しないという意味では、絶妙にそのへんはセーブされたかたちでコントロールされているのだ(笑)。
そして、我々のような気弱なオタク男子でも精神的に上位に立てて、歪んだ庇護欲をも安心して発揮できそうな(笑)、オトナしげで儚(はかな)げな外国人魔法少女ちゃんと、ナチュラルな黒髪ショートの日本人主人公魔法少女が久方ぶりに再会するや、
「よしかちゃん!!」
「リーネちゃん!!」
などと手を取りあってピョンピョンと跳びはねて、抱き合ってキャッキャウフフとするのだ。
……冷静に振り返って分析してみれば、コレが野郎キャラや成人女性キャラであれば、キモくなってしまって許されないところだろう!(笑) しかし、10代中盤の頼りなさそうなアニメ絵の美少女キャラたちだと、
「ま、いっか!」
として許せてしまって、胸の中もポワポワとしてきて「萌え」感情を惹起されてしまうのだ(笑)。
……まぁ、こういった感情自体も、そのウラ側には無意識に「女性は庇護されて当然だ!」というような、ステレオタイプの男女観に基づく「性差別」が潜在しているのだ! などといった批判も成り立たなくはナイけれど(汗)。
本作第1期(08年)・第2期(10年)につつく続編として公開された本作『劇場版』(12年)もまた、そのあたりの「女性観」(爆)というのか「美少女キャラ観」の基本ライン(?)は良くも悪くも忠実に押さえている。
TVシリーズとも同様に、湿度が低くて見晴らしもよい欧州の「風景」や「名所旧跡」――水の都ベネチアなど――を美麗で精細な背景美術で描くことで、目を楽しませてくれている。我らが旧海軍の空母・天城(あまぎ)の艦内を舞台に、魔法少女たちの何気ない日常をも描いていく。
しかし、そこで事件を起こして、旧敵・ネウロイをも出現させる!
それらの描写や、事件事故に対する各魔法少女キャラたちのいかにもなソレらしいリアクションに、世界各国に散らばっていたレギュラー魔法少女たちの再会集結劇などで、初見の観客たちにも簡にして要な「キャラ見せ」「キャラ紹介」をも行なっていき、最終的には主人公の日本人魔法少女を立てるかたちで、バトルと勝利の大カタルシスにも持っていく!
演出や作劇面ではヘボいところは特にない――TVシリーズに比べればパッション面ではイマ半という気もしたけど多分、筆者個人の思い入れ、無意識的な期待過多から来てしまった「主観」的な「イマ半」であった可能性が高いだろう(笑)――。
本作『劇場版』で初登場した、主人公の後輩格となるキマジメで背も高い黒髪ポニーテールの新・魔法少女の日本人少女は、当初は主人公少女に憧れるも、次第にそのおマヌケで善人すぎて時に頼りない姿に幻滅もしていく。
しかして、このテのジャンル作品のやはり「お約束」で、それらのストーリー展開が真の意味で現実的であるかはともかくとして、「軍命」よりも「博愛」を優先しつつ、ネバー・ギブアップの精神によって事態も好転させて結果も確実に出していくといった彼女の人格&力量に、最終的には自身のその見解を改めていく役回りで、作劇的には常套・アリがちなパターンであっても、映画ゲストの新・魔法少女と主人公少女を同時に立てていくことには成功していたのだ。
他の美少女アメニ同様に絵柄自体に罪はなくても、そのウラ側にあるオタクの女性観・性的嗜好・弱者女性に対する偏愛を無意識に直観で見透かされてキモがられて(笑)、それゆえに本作の絵柄のような作品は一般層への「越境」もないのだろうけど、それはそれとしてそのワク内においては、活劇面においてもドラマ面においても高い達成を果たしていたとは思うのだ。
……などとホメ倒して締めとしたかったのだけど、「入場者全員プレゼント」(週代わりらしい)が「エロ同人誌」のフルカラーイラスト集のような少々H(エッチ)な冊子であったりして、それをシネコンの年若い学生アルバイト女性に手渡しされてしまったりすると……。このアルバイト女性は表面的には実にクールに、見下した表情をすることもなく冷徹に仕事をしてくれているけど、内心では果たしてドー思ってしまっているのであろうか? などと考えてしまうと……(笑)。
コレは決して本作をケナして云っているワケではない。批評・感想オタクであれば、「ベタな没入」と「サメた視点」の双方の永遠の「綱引き感覚」を常に持って、それを言語化していくことこそが、作品自体の本質にも接近していける行為なのだとも思うからだ!?(……少々、オオゲサです・汗)
後日付記
のちに、本作と同じく高村和宏カントクが手懸けた、本作とも同工異曲の美少女戦闘モノであったTVアニメ『ビビッドレッド・オペレーション』(13年)がさしたる出来ではなかったことを思うと(あくまでも私見です)、本作『ストライクウィッチーズ』の出来の良さはカントクの意識的で計算づくな作劇術や手腕ゆえでは必ずしもなかったのかもしれない。
カントク自身の計算よりも、もろもろの偶然のウマい組み合わせの結果として、本作が傑作に仕上がっていたのやも!? ……と思わないでもない今日このごろであった(汗)。
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