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天才バカヴォン 〜蘇るフランダースの犬〜

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『天才バカヴォン 〜蘇るフランダースの犬〜』

(文・T.SATO)


 60年代後半スタートの原作マンガは大ヒット、70年代には2度もTVアニメ化されて、往時のこととて再放送も頻繁にあり、世代人にはキョレーツな印象を残している『天才バカボン』。
 コレまた当時の高視聴率番組ワク、世界名作劇場で放映された70年代中盤の大人気TVアニメ『フランダースの犬』。
 この両者が奇跡、もしくはデタラメ(笑)なコラボ!
 しかも、予告編でも明かされていた通り、後者のネロ少年が最終回での死後の昇天途中で鬼の面になって、人間世界に復讐を遂げんとする!
 もうタイトルだけでそのナンセンスさに笑えて、かつオッと思えて、(筆者のようなロートルの世代人的にとっては)キョーミを引かれる。


 ただまぁ「一発芸」的な「出オチ」だけで笑えるワンアイデアにすぎなくて、それを1時間半なり2時間の長編映画にしていくだけの、作劇的な体力・持久力については疑問に思っていたトコロだ。
 そのへんで無惨にも失敗するトコロを見定めてやろう! とイジワルに構えて観ていたのだが……。


 結論から云うと、個人的には面白かった!
 序盤の方はコチラが構えていたせいか、ノれないトコロもあったけど、ナンセンスな言葉遊びの応酬に徐々にノせられてスイッチが入ってしまったのか、そのあとはスナオに笑える。
 しかもギャグの主体・種類は、90年代後半以降に普及した、ウケなかったこと・ハズしてしまってサムくなってしまったことをも、半歩遅れて客観視して笑うような、良く云えばメタ的な脱力系のギャグではなく、60〜80年代にかけての今で云うガチンコの破裂系のギャグである。


 とは云うものの、ホントにホントの60〜70年代的な『天才バカボン』の破裂系のギャグでもナイ。それはキチンと指摘しておきたい。しかし、それは欠点ではナイ。
 往年の『バカボン』的なギャグだけでも、2010年代の今日においては古びていたり、長時間もそのまま聞かされていたらアキてきたり、間がモタなかったり、長距離走はできなかったようにも思うのだ。
 筆者の見るところ、そこで本作では接着剤として、90年代後半以降の脱力系ギャグもけっこう投入。


 かてて加えて、本映画を製作する映像作家・FROGMAN(フロッグマン)氏。数年前には劇場に行くと、どんな映画でもなぜか必ず彼が作ったナンセンスなギャグアニメの短編『秘密結社 鷹の爪』という、頭身の低いデフォルメされた憎めない悪の組織が毎回、世界征服をたくらむもお約束にも失敗するという作品が予告編ワクにて流されていたと記憶するのだが――第何作目だかの劇場版公開が近かったためだとも思われる――、あの作品の奇妙な空気感である(笑)。
 要はギャグについては、破裂系から脱力系から『鷹の爪』系まで優先順位はあるのだが、それらをすべてブチ込んだ、お笑いの歴史をメタ的にも列挙して鳥瞰もしているガチの総力戦でもあるのだ!
 だいたい、「Woindows95のパソコンがやっと起動できた」とか、「取説なしでWiFi(ワイ・ファイ=無線LAN)が設定できる」とかのプッと笑える言葉ギャグは、時世のことをヌキにしてもビミョーに『バカボン』的なギャグではなくて『鷹の爪』的なギャグでしょう。


 つーか、バカボン家族とネロ少年と愛犬パトラッシュ以外の脇役は全員、『鷹の爪』系のキャラクターデザインだよね?――なぜか馴染んでいるけれど(笑)――。


 なので、本作のことを――実は本作にかぎらないけど――、
「『天才バカボン』や原作・原典への愛がある、リスペクトがある」
などといった、分析ヌキの没論理な情緒的な物言いで持ち上げるような「論法」については疑問に思う。
 「作品への愛」の有無などは「作品の出来」には直接の関係がナイとすら思う。ましてや、「愛」があっても「技巧」や「センス」がなければ面白い作品などできないことは、マニア上がりの作り手たちが作ってきた空回りの死屍累々の作品群を見れば自明のことだ! とも思うからだ。
 でもまぁ、庶民・大衆・愚民のみなさんの全人類の8割9割は(オイ・汗)、「赤勝て白勝て、巨人か阪神か」レベルの二元論でしか物事を思考できなくって、3つ以上の要素になると「1、2、3、いっぱい!」になってオーバーフロー・認識不能になってしまうとゆーことは、筆者もとっくに判ってはいるのだが(笑)。


 もちろん「作品への愛」なぞ不要なのだ! などとゆー、コレ見よがしの偽悪的な極論・暴論を云いたいワケでもナイ。
 フツーに冷静に考えてみても、近代的な合理人(笑)であれば、
・「愛」と「技巧」の両方があって、面白い作品。
・「愛」はナイけど「技巧」はあって、面白い作品。
・「愛」はあるけど「技巧」はナイから、ツマラない作品。
・「愛」と「技巧」の両方ともにナイ、ツマラない作品。
という4分法が浮かぶと思う(……浮かぶよネ! などと脅迫的な物言いをして、近世の啓蒙専制君主としてふるまう!・笑)。


 本作はこの中でも、「愛」と「技巧」の両方を兼ね備えた、最も幸福なパターンの成功作だったように思う。
 まぁ細かく批評的に解剖台の上に乗せて云えば、本作のドラマ性というか一応の長編映画のベクトル・流れ感覚の方は、やはり『バカボン』側ではなく『フランダースの犬』の地獄から蘇ったネロ少年の方にあり、バカボン家族と関わって改心してベタベタにも――ホメてます!――再昇天していくドラマの方が担っている。
 そう考えると、FROGMAN氏個人の作家性だけではなく(笑)、ネロ少年の方で暗黙のうちにすでに持っている、彼の生前の人生とか良心的な人格の担保があって、そこにフリーライドすることで、必然的にあの物語が導出されてきているようにも思うのだ。
 なので、長編ドラマ性の部分の成功の原因は、『フランダースの犬』の力強い原典の伏流水のような物語的パワーの功績でもあるようにも思える。


 となると、この映画はやはりFROGMAN氏個人の作家性だけではなく、『バカボン』『フランダース』という下駄を履くことで、底上げされた可能性も否めないのであって、氏の次作の長編映画――あるのか?(笑)――でもって、彼の一応の真価を見極めたいとも考える。


 ただ、あとでパンフをめくって驚いたのが、いかに低予算作品であるとはいえ、バカボンのパパの声を演じていたのが、FROGMAN氏ご本人であったとゆーこと! 加えて、バカボンのパパを警護して、終始パパと掛け合いをしていたユカイな内閣情報局職員――というか背広服姿の公務員(笑)――こと神田の声をも同氏が担当していたとゆーこと! つーか、総理大臣から何から何まで一人八役だったのかよ!?
 あまりに芸達者なので、映像作家を廃業してもお笑い芸人・役者としても喰っていけるレベルに達していると思ってしまう(笑)。


 ただ、作品の外のことを云えば、封切2日目の新宿バルト9では小さなハコでの上映で、しかも満席には程遠かったので、宣伝がなければ『バカボン』と『フランダース』の神通力も世代人のしかもマニア限定、もしくはお文化的なものにも多少は関心を持つサブカル女子にしか通じないのだとも客層からも痛感する。
 最後の一節は、やはり二元論で捉えていただきたくはなく、作品のクオリティの優劣のお話ではさらさらなく、興行・マーケティングの次元でのお話なのであって、それゆえに本作をケナそうと思っているワケではナイので、そこは選り分けてお読みいただくように、くれぐれも念のため。良い作品・面白い作品さえ作ればそれだけで自動的にヒットする! というモノではナイとゆーことで。


(了)
(初出・オールジャンル同人誌『DEATH−VOLT』VOL.70(15年6月21日発行))



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