(ファミリー劇場『ウルトラマンエイティ』放映記念「全話評」連動連載!)
『ウルトラマン80』#27「白い悪魔の恐怖」 ~怪奇編の佳作! フジモリ&イケダ隊員参入! 南川竜(野長瀬三摩地)脚本!
『ウルトラマン80』#28「渡り鳥怪獣の子守歌」 ~生存競争に敗れて地球に落ちて孵化した怪獣の恩返し! 刷り込みによる本能? 意志的な行動?
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『ウルトラマン80』第29話「怪獣帝王の怒り」 〜村落の怪獣捕獲コミカル編! 往年の喜劇人が大挙出演!
『ウルトラマン80』第29話「怪獣帝王の怒り」 〜合評1
(文・内山和正)
(1999年執筆)
鬼矢谷(きやだに)に伝わる、三百年に一度、目をさますという怪獣の伝説。それを利用して観光に役立てようとする村長たちの欲ボケを描くコミカル編。
本話以降のエピソードとは違い、本話では防衛組織・UGM側はあくまでまじめに描かれており、彼らによる怪獣の能力分析で村人や観光客の危機が示される。
しかし、この怪獣が『帰ってきたウルトラマン』(71年)8話「怪獣時限爆弾」に登場した爆弾怪獣ゴーストロンに似ているとか、ゴーストロンが強力だという防衛組織UGMのオオヤマキャップ(隊長)の言葉(脚本家の誤解と思われる)はどうして生じたのだろうか? どくろ怪獣レッドキングとの類似の間違いなのではないかと思うのだが。
肉食で強力という設定とは裏腹に、キャッシーは「面白怪獣」に分類すべき描き方をされていて、それが魅力でもある(空腹で本来の能力が発揮できない。謝ってウルトラマン80(エイティ)に助けてももらうし)。それゆえに、おとなしい怪獣であるという誤解が、記憶に残りがちなのが個人的には困る(笑)。
村長たちのバカ騒ぎがドラマとして発展しないのが物足りず、見終わって「もう終わったの?」というあっけない印象が残る。
『ウルトラマン80』後半再評価・各話評 〜連載開始!
『ウルトラマン80』第29話「怪獣帝王の怒り」 〜合評2
(文・久保達也)
(2009年9月執筆)
300年に一度怪獣が現れるという伝説のある秘境・鬼矢谷(きやだに)。
今年が300年目にあたるということで、村長が実在するかどうかもわからない怪獣を村起こしに利用しようと計画。成功すれば、観光ホテルや道路も誘致できるということで、旅行会社の協力で「怪獣ツアー」が催された。そして社員の山川良一が、平和女子大学の講師・友江、小説家志望のサラリーマン・月村とその弟・秀男を引き連れてやってきた。
怪獣が実在することを装うため、村長は村の自警団に命じて怪獣の声をスピーカーで鳴らし、村民を買収して避難する演技をさせ、一同を信用させる。だが逆に、山川の方も怪獣を生け捕りにして鬼矢谷から連れ去り、怪獣ショーで儲けることをたくらんでいた。欲に目がくらんだ村長と山川の前に、渓谷怪獣キャッシーが本当に現れる! と、ざっとこんなストーリーである。
怪獣を金儲けの手段に利用しようと企む人物を主軸にしたコミカルな作劇は、キングコングを広告塔にしようとしたパシフィック製薬宣伝部・多湖(たこ)部長が八面六臂(はちめんろっぴ)の大活躍を見せる怪獣映画『キングコング対ゴジラ』(62年・東宝)を彷彿(ほうふつ)とさせる。
この多湖部長を演じたのは、戦前から軽演劇で活躍、戦後は三木鶏郎(みき・とりろう)グループの一員として人気を博し、加山雄三主演の東宝映画『若大将』シリーズ(61〜81年)の父親役でも有名な故・有島一郎(ありしま・いちろう)であった。
本話では、村長役を元・脱線トリオの南利明(みなみ・としあき)、山川を玉川良一(たまがわ・りょういち)、自警団の団長を浅草フランス座出身の関敬六(せき・けいろく)と、実に豪華なコメディアンたちが演じており、彼らの絶妙な掛け合いも楽しみのひとつとなっている。
『ウルトラマン80(エイティ)』が放映された1980年(昭和55年)といえば、フジテレビが放送した90分特番『THE MANZAI(ザ・マンザイ)』をきっかけに空前の漫才ブームが巻き起こった年である。それ以降の80年代の風潮は、1970年代の心優しいフォークソング的ダウナーな空気が急転して、空騒ぎで「軽佻浮薄(けいちょうふはく)」にふるまう風潮が主流となった。いわば、我々のようなオタク・マニア気質の人間が「ツマらない人間」「ノリの悪い人間」「個性のない人間」扱いとされて、非常に肩身の狭い思いをする元凶となった現象なのであった(汗)。
しかし、本作のメインスタッフはもう当時は30~40代で、そういった若者間での風潮の大変化などはもうあまり気にしない年齢に達していただろうが、まさに結果的にそういった風潮に対抗するかのごとく往年の喜劇人たちをキャスティングし、本物の「芸」を披露させていた。本放映当時はともかく、そのへんの知識がついてきた年代になって本話を観返してみると、実に小気味よいものがあるのだ。
南が演じる村長は、チョビ髭に蝶ネクタイ、ストライプがやたらと目立つスーツの下には、派手な赤いチェックのベストと、もう胡散(うさん)臭さプンプンである(笑)。
「村のヤツも、ゼニ払うとイイ芝居こくでねえな」
とのたまうわ、玉川演じる山川もツアーの添乗のはずなのに、なぜかハンター姿でライフル持参と、もう最初から怪獣を生け捕りに来たのがミエミエであるあたり、観ていて素朴に笑える。
キャッシーなるネーミングは、自警団の団長いわく「鬼矢谷(きやだに)だから、キャッシー」(笑)。1970年代には民放のスペシャル番組でもよく特集が組まれていたネス湖の首長怪獣ネッシー、屈斜路湖(くっしゃろこ)の首長怪獣クッシー、池田湖のイッシーのようなノリでつけたものだ。ただ劇中では、
「怪獣キャッシイ対策本部」
「この奥キャッシイ生息地」
などといった看板が用意されており、村民たちの認識の表記としては
「キャッシー」ではなく
「キャッシイ」になっている。
シナリオの準備稿に準じたものではなく、本編美術班の側であえてこのように表記したのだとすれば、田舎の人々の言語感覚として、なかなかにリアルであるかもしれない(笑。~この意見を田舎の人への差別表現だと解釈されると困るのですが……汗)。
山川から「怪獣出現!」の報告を受けた旅行会社の社長は、なんと自らヘリコプターからロープを吊り下げ、怪獣の捕獲に向かう。この際、いったんキャッシーの腕を絡めとったロープが切断されてしまう様子がアップで描かれている。この描写は、『ウルトラマンタロウ』第1話『ウルトラの母は太陽のように』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071202/p1)において、オイル超獣オイルドリンカーからタンカーを守ろうとした光太郎が操る巨大クレーンの鎖が切断されるさまを、特撮班がアップ映像で再現したシーンを彷彿とさせる。どこまで行ってもミニチュアではあるし、モノがどうしても現物には似ていないなど、そこには賛否があるだろう。しかし、こうした説明的なカットがあるからこそ、そのストーリーの細部にも納得して視聴ができることにつながっていくのだ。
先の『キングコング対ゴジラ』も劇中で3回も描かれたキングコングとゴジラのガチンコバトル! が実に迫力あふれる観応えのあるものであった。同作と同じように、半信半疑だった怪獣が本当に出現したことによって、一同に危機が迫ってくるまでの過程の描写は、『ウルトラQ』(66年)第10話『地底超特急西へ』や『ウルトラマンダイナ』(97年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971215/p1)第21話『発熱怪獣3000度』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971208/p1)などと同様に、たとえコミカルな作風でもクライマックスの描き方次第で、本来の特撮活劇らしい味わいも決して失われないことを証明している。
オープンセットにつくられた崖を切り崩して出現するキャッシーの手前に、山川と自警団員を!
公民館らしき建物の前で呑気(のんき)に怪獣太鼓を打ち鳴らす自警団の団長と団員を捉えた実景の背景に、キャッシーを!
胆な特撮合成カットの連続は、実に臨場感と緊迫感にあふれている!
そして防衛組織・UGMの分析で、怪獣キャッシーが一日に1000kgの肉を必要としていることがわかる。UGMのオオヤマキャップ(隊長)が出動したイトウチーフ(副隊長)たちに、
「間違っても人間の味を覚えさせるな! 一度、人間の味を覚えると取り返しのつかないことになるぞ!」
と忠告するあたりも、『ウルトラマンタロウ』(73年)を除いて人間を食する怪獣が登場しないことで、牧歌的な雰囲気を保っていたウルトラシリーズでは生々しくて珍しい趣向である――まぁ、『ウルトラマンタロウ』での怪獣による人間捕食描写も、バリボリと噛み砕くのではなくコミカルな効果音とともにパクッと丸飲み! という感じだったので、そんなに生々しくはなかったけど(笑)――。
イトウチーフから送られたキャッシーの映像を見たオオヤマキャップは即座に
「ゴーストロンに似ているな」
とつぶやいている。しかし、『帰ってきたウルトラマン』(71年)第8話『怪獣時限爆弾』に登場した、爆弾怪獣ゴーストロンとは全然似てねぇと思うんですけど(笑)。しかも、エミから「全長60メートル」であることを聞くや、
「ゴーストロンの4倍だな」
と云う始末。オイオイ、ゴーストロンってそんなに小さい怪獣だったか?(笑)
実はこの場面、近年刊行された書籍『タツミムック 検証・ウルトラシリーズ 君はウルトラマン80を愛しているか』(辰巳出版 06年2月5日発行・05年12月22日実売・ISBN:4777802124)ではじめて明かされたことだが、シナリオではオオヤマのセリフは
「ティラノサウルスに似ているな」
であり(それにも似ていません!・爆)、それを受けた広報班・セラのセリフが
「ティラノサウルスって、いちばん凶暴な、肉食の?」
となっていたそうだ。これならば、「4倍」という大きさにも納得がいく。しかし、本編ではなぜか「ティラノサウルス」が「ゴーストロン」に差し替えられているのだ。
この改変は一種のファンサービスであったとも解釈できる。しかし、第3次怪獣ブームだった当時は、おびただしく刊行された関連書籍で視聴者の中心であった男子小学生たちはウルトラ怪獣の知識を豊富に蓄積していた。
だから、どちらかといえば、むしろ『帰ってきた』第7話『怪獣レインボー作戦』に登場した透明怪獣ゴルバゴスに近い、茶褐色で岩のようなゴツゴツとした表皮をしたキャッシーが、ゴーストロンに全然似てないことは一目瞭然であっただろう。
「40m」と設定されたゴーストロンの身長までは暗記していなくても、ウルトラ怪獣の身長は40~60メートルだったことは知っていただろうから、かえってよけいなツッコミを招いてしまい、完全に裏目に出てしまっている(笑)。
それを考えると、やはり後年の『ウルトラマンメビウス』は、怪獣博士タイプの子供たちにも理想の作品だったのだ。ゴーストロンが出現したら、コノミ隊員が、
「ドキュメントMAT(エム・エー・ティー)に同種族確認! レジストコード……」
と云い終わらないうちに、怪獣博士のテッペイ隊員が
「爆弾怪獣ゴーストロン! 先日、(宇宙凶険怪獣)ケルビムに操られ、対怪獣研究所を破壊しようとした(凶暴怪獣)アーストロン(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061022/p1)の弟です!」
などと頼まれもしないのに、我々のような昭和の怪獣博士タイプの子供たちの基礎教養であった、雑誌展開のみでのウラ設定まで披露してくれただろうに(笑)。
その後、キャッシーが口から火炎を吐く特撮カットが! 続いて、本編場面で村長と山川の周囲に火の手が上がる!
「ダメだ! 怪獣は腹を空かしきってる! 人間を食べるぞ!」
と戦闘機・シルバーガルα(アルファ)のコクピットで矢的が叫ぶ! これに続いて、
●キャッシーに高速で迫っていくコクピットからの主観カット!
●さらには、村長と山川に迫るキャッシーの足をローアングルで捉えたカット!
●おびえる二人を交互につないで、
●キャッシーの上げる地響きで、高い木の上に上げられてしまったふたりとキャッシーを合成!
●そして、このふたりの目線で捉えたかのようなキャッシーの顔のアップ!
この畳み掛けるような本編と特撮のカットの連続は、いやがうえでも強欲者(ごうよくもの)たちに迫り来たった危機を最大限に煽りたてており、見事である!
そこで、われらが主人公・矢的猛(やまと・たけし)隊員が変身!
遂にウルトラマンエイティが登場!
腹を空かしきったキャッシーは、それこそエイティを食らわんとばかりに右肩に強力な牙で喰らいつく!
それをかわしたエイティは、連続してバック転!
さらに、側転!
……したかと思えば、キャッシーの頭上を空中回転して背後に回りこむ!
すると、目にもとまらぬ早技でキャッシーの猛攻を次々にかわす!
この第29話~最終回の第50話までのエイティのスーツアクターを担当したのは、『プロレスの星アステカイザー』(76年・円谷プロ)のヒーロー・アステカイザーのスーツアクターも務めており、NHK大河ドラマなどの時代劇にも出演歴のあった奈良光一(なら・こういち)であった。
人間の味さえ覚えなければ害はないということで、誰も知らない場所にエイティによって運ばれるキャッシー。でも、何も食わずにこれから生きていけるのだろうか?(笑)
ここで流された楽曲が、『ザ★ウルトラマン』(79年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100430/p1)の挿入歌『怪獣レクイエム』のインストゥルメンタル(歌唱抜きのバージョン)。本作『80』の第15話『悪魔博士の実験室』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100808/p1)においては、城野エミ隊員が今は亡き母から聴いた曲という設定の劇中歌として、演じる石田えり自らが歌唱していた。以降の本作では、不幸な境遇の怪獣を描写する際の定番曲としてこのインストが頻繁に多用されている。
なお、この『怪獣レクイエム』は、テレビ東京が1980年代中盤の平日20時に放映していた1時間番組『5夜連続シリーズ スーパーTV』(83~84年)にて、84年3月26日(月)~30日(金)の春休みに放送された『春休みスペシャル 人気怪獣大パレード』のエンディング映像曲としても長尺で使用されていた。この番組は『ミラーマン』(71年)・『ファイヤーマン』(73年)・『ジャンボーグA(エース)』(73年)、そして『ウルトラマンタロウ』の怪獣登場場面やヒーローとの決戦場面を再編集したものであった。メジャーな『タロウ』以外は再放送に恵まれていなかった往年の怪獣ブーム期の円谷ヒーロー特撮作品群が久々に観られるということで、当時はかなりありがたい特番であった。
私事で恐縮だが、筆者も当時、急速に普及しだした家庭用ビデオデッキを購入して間もないころでもあり、録画して飽きることなく何度も観返したものだった。もう当時のビデオテープは現存しないが、DVD化してもらえないものでしょうか?
――ちなみにこの『人気怪獣大パレード』は、同枠で放映予定だった歴史上の人物・聖徳太子(しょうとく・たいし)を主人公とした山岸凉子による少女漫画の名作『日出処の天子(ひいづるところのてんし)』(80年)のテレビアニメ化が、原作漫画家の意向で急遽製作中止に追い込まれたことによる代替番組でもあった――
<こだわりコーナー>
*鬼矢谷の群発地震を調査するため、キャッシー出現前に矢的が一度、シルバーガルで現地に向かっている。この際、珍しく気象班の小坂ユリ子隊員が同乗している。このとき小坂が着用していた赤い隊員服は、第25話『美しきチャレンジャー』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101016/p1)で地球防衛軍・極東エリア基地の新人女性隊員たちが着ていた隊員服を流用したものかと思われる。
*そして、帰還した矢的が小坂を「ユリちゃん」と呼んだのを
「矢的、勤務中にユリちゃんはよせ」
と、往年のスポ根(スポーツ根性)ドラマ『サインはV』(69年・TBS)の青春路線を引きずった中山仁(なかやま・じん)演じるオオヤマキャップではなく、ちょっと硬そうなイトウチーフがたしなめるあたりも、なかなかリアルでよい(笑)。そして先述の第25話でも、「矢的隊員って、ずいぶんユリちゃんと親しいのね」とジェラシー(嫉妬)の炎を燃やしていた城野エミ(じょうの・えみ)隊員が、
「まったくその通りだわ。ちょっと親しすぎるのよ!」
と今回、遂に爆発して矢的にヒジてつを喰らわす!(笑)
こうしたラブコメ的な三角関係は、『ウルトラマンタロウ』(73年)第38話『ウルトラのクリスマスツリー』で主人公・東光太郎(ひがし・こうたろう)と恋愛関係に近かった寄宿先の白鳥さおりが、ロウソクの火を灯して見た夢の中で自身が光太郎とウェディングロードを歩いているかと思いきや、光太郎のもう片方の腕に防衛組織・ZAT(ザット)の女性隊員・森山いずみの腕が組まれているのに気づいて夢から醒めて、
「光太郎さんったらヒドい!」
と怒り出したり、『ウルトラマンメビウス』(06年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070506/p1)第25話『毒蛾のプログラム』でゲストキャラのフジサワアサミ博士に熱をあげる防衛組織・クルーGUYS(ガイズ)のジョージ隊員を怒鳴り散らす、同じくGUYSのマリナ隊員といった具合に描かれてきた。しかし、近年の変身ヒーロー作品では結婚や不倫(!)までもが堂々と描かれているので、それらに比べると実にほのぼのとしたものですな(笑)。
(関連記事:『仮面ライダーキバ』(08年)最終回・総括 〜その達成度は? 王を消して一緒になろうと言い寄る弱い女の狡猾さ http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090215/p1)
*自警団員役の辻シゲルは、古くは『快獣ブースカ』(66年)へのゲスト出演、『トリプルファイター』(72年)の敵怪人の声、『ウルトラマンA(エース)』(72年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070430/p1)第31話『セブンからエースの手に』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061204/p1)のバク処刑現場のテレビレポーター、などなど円谷作品に数多く出演している。しかし、もともとは落語家の故・柳家金語楼(やなぎや・きんごろう)劇団出身の喜劇俳優であり、現在の芸名は辻三太郎である。ほかにも声優として『とんでも戦士ムテキング』(80年・タツノコプロ フジテレビ)ではクロダコブラザースの次男・タマコロの声を演じていた。
*本話にゲスト出演しているベテラン・コメディアンたちについては、最近の若い人はほとんど馴染(なじ)みがないだろうから(全員他界してるからなぁ……)、以下に簡単に紹介。
南利明(みなみ・としあき)は、由利徹(ゆり・とおる)・八波むと志(はっぱ・むとし)と結成していた「脱線トリオ」出身。トリオ解散後、人気テレビ時代劇『必殺』シリーズ(72年~・朝日放送・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19960321/p1)で主人公・中村主水(なかむら・もんど)を演じた名優・藤田まことの出世作となる『てなもんや三度笠』(62〜68年・朝日放送)に鼠小僧次郎吉(ねずみこぞう・じろきち)役でレギュラー出演し、軽妙な名古屋弁で人気を得た。69年には名古屋に本社のあるオリエンタル食品の『スナックカレー』のCMに出演、「ハヤシ(ライス)もあるでよ〜」というフレーズが流行語となった。その後は、東映の映画『トラック野郎』シリーズ(75〜79年)全10作のうち8作品にゲスト出演するなどで活躍。『はぐれ刑事純情派』(89年・朝日放送)第6話『老いらくの恋 殺人事件』では、主人公・安浦(やすうら)刑事を演じる藤田まことと久々の共演を果たしている。
他にも、ハンナ・バーベラ社のアニメ『宇宙忍者ゴームズ』(66年)で演じた悪魔博士の声でも名古屋弁を披露していた(『宇宙忍者ゴームズ』の原題は、近年も実写映画化された、マーベル社のアメリカンコミックのヒーロー集団『ファンタスティック・フォー』! 61年初出のアメコミヒーローのテレビアニメ化であった。日本では69年にNET→現・テレビ朝日系で放映後、70年代までは民放各局で何度も再放送されていた)。
名古屋弁を多用していた氏は、実は出身は神奈川県横須賀市だそうであり、かなり幼いころに名古屋に転居したらしく「名古屋出身」で通していたようだ。
関敬六(せき・けいろく)は、松竹の映画『男はつらいよ』(69〜96年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200614/p1)の主人公・車寅次郎(くるま・とらじろう)役で有名な故・渥美清(あつみ・きよし)や谷幹一(たに・かんいち)と結成した「スリーポケッツ」出身。スリーポケッツ解散後も、『男はつらいよ』シリーズにさまざまなチョイ役で連続出演。
往年の海外アニメの吹き替えも多い。ハンナ・バーベラのヒーローアニメ『スーパースリー』(66年)の主人公ヒーローであるバネ人間「ボヨヨンのコイル」。同作は日本では67年にNET系で初放映。その後『おはようこどもショー』(65〜78年・日本テレビ)の枠内で70年代前半に放映。筆者が観たのはそちらであった。先の南利明も悪役声優として出演していた『宇宙忍者ゴームズ』の4大ヒーローのひとり・ガンロック役も印象深い。ともに「ムッシュムラムラ!」と叫んでいる(笑)。
のちに、お笑いグループ・ダチョウ倶楽部(クラブ)がギャグにしていた「ムッシュムラムラ」なる語句は、もともとは関の持ちネタなのだ。なお、東映メタルヒーロー『宇宙刑事シャリバン』(83年)第9話『ビックリハウスは幻夢町0番地』では、魔怪獣キャッシュビーストの人間体である怪老人も演じていた。
玉川良一(たまがわ・りょういち)は、東けんじ(あずま・けんじ)と結成した「Wコント(ダブルコント)」出身。さらに、三波伸介を加えた「おとぼけガイズ」を結成。東の酒癖の悪さが原因ですぐに解散になったそうだが、その後はソロで多方面で活躍。
特撮マニア的には『月光仮面』や『レインボーマン』の川内康範原作による特撮ヒーロー『ダイヤモンド・アイ』(73年・東宝 NET)のレギュラー・海藤警部役がやはり印象に残る。声優としても東映動画のテレビアニメ『アンデルセン物語』(68年)の町長役のほか、『ワンサくん』(73年・関西テレビ)では氏をモデルにしたキャラ・玉川ネコ丸の声を演じていた。
(『ワンサくん』は故・手塚治虫(てづか・おさむ)が設立した「虫プロ」最後のアニメ作品であり、手塚が三和銀行(現・三菱東京UFJ銀行)のマスコットキャラとして考案した白い犬が主人公。プロデューサーは『宇宙戦艦ヤマト』(74年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20101207/p1)で有名な西崎義展(にしざき・よしのぶ)。ちなみに、「ワンサ」は「三和」の逆さ読みだそうだ・笑)
*友江を演じた児島美ゆき(こじま・みゆき)は、永井豪原作の大人気漫画『ハレンチ学園』の実写映画版3作品(70年・日活 ダイニチ)と、続けて実写テレビシリーズ(70年・東京12チャンネル→現・テレビ東京。http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070527/p1)双方に、十兵衛(じゅうべえ)こと柳生みつ子(やぎゅう・みつこ)役で主演(最高視聴率32%! この記録は現時点においても、テレビ東京のテレビドラマ作品の最高記録だそうだ!)。同作終了後は、日曜お昼の長寿バラエティ番組『TVジョッキー』(71〜82年・日本テレビ)の初代アシスタントに抜擢されるなど大人気となる。しかし、実は彼女のデビュー作は『ハレンチ学園』ではなく、先述の東映動画『アンデルセン物語』に端役で声の出演をしたのが最初であったそうである。
その後も数多くの映画やドラマに出演している。特に刑事ドラマ『Gメン’75』(75〜82年・東映 TBS)には、第8話『裸の町』(オイオイ)を皮切りに毎年のようにゲスト出演を果たしていた。
今から10年前の『仮面特攻隊2000年号』(99年12月発行)『ウルトラマン80』大特集において、本誌ライター・内山和正氏氏が「ウルトラマン80全話評」を執筆されておりました。しかし、途中までで未完になっており、『80』放映30周年の2010年5月~2011年4月までCS放送ファミリー劇場にて『ウルトラマン80』が放映されるのに合わせて、筆者が最終回まで順次論評させていただく予定です!
〈参考文献〉
『タツミムック 検証・ウルトラシリーズ 君はウルトラマン80を愛しているか』(辰巳出版 06年2月5日発行・05年12月22日実売・ISBN:4777802124)
『ウルトラマン画報 上巻 光の戦士三十五年の歩み』(竹書房 02年10月4日発行・ISBN:4812408881)
『ウルトラマン画報 下巻 光の戦士三十五年の歩み』(竹書房 03年5月9日発行・ISBN:4812409993)
後日付記:
2020年現在放映中の『魔進(マシン)戦隊キラメイジャー』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200712/p1)では、レッドの車両型の相棒マシンであるレッドキラメイストーン=魔進ファイヤが、
「テンションマックス! めっちゃメラメラだ!!」
と叫んでいる。この「めっちゃメラメラ」も、『スーパースリー』や『宇宙忍者ゴームズ』で関敬六が劇中で散々に口走っていた「ムッシュムラムラ」が語源だろう。まぁ「昭和」ネタが大好きな同作メインライター・荒川稔久(あらかわ・なるひさ)センセイのことですから……(笑)