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ウルトラマンエース20話「青春の星 ふたりの星」


ファミリー劇場『ウルトラマンタロウのすべて』 〜篠田三郎!
「ウルトラマンA 再評価・全話評!」 〜全記事見出し一覧


(脚本・田口成光 監督・筧正典 特殊技術・佐川和夫)
ファミリー劇場ウルトラマンA』放映・連動連載!)
(文・久保達也)


 北斗は駿河湾上空を戦闘機タックアローで夜間の定期パトロール中、北極星から抜け出てきたかのように豪華客船が空を飛んでくるのを目撃した。



 子供がゲストに登場する話を書くという印象が強い田口成光(たぐち・しげみつ)の作品であるが、意外にも同時期の青春ドラマ『飛び出せ! 青春』(72年)的色合いが強く、絶叫調のセリフや乱闘の場面が頻繁に描かれている。
 現役を終え、観光・ホテル施設となっている豪華客船・スカンジナビア号を動かして航海することを夢見て、2年も機関室で働き白シャツが機械油で汚れている青年・篠田一郎を演じているのは、次作『ウルトラマンタロウ』(73年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071202/p1)で主役・東光太郎(ひがし・こうたろう)を演じることになる篠田三郎(今回は短髪)。
 だが、どちらかと云えば『シルバー仮面』(71年)にレギュラー出演していた春日三兄弟のひとり、ちょっと小生意気な春日光三(かすが・こうぞう)に近いイメージである。



 「何をするんだ!(略) 俺の旗を無断で降ろすやつがあるか! この旗はな、俺の命なんだ」


 「(希望に満ちた表情で)この船が動くとき、俺の旗を掲げて出発するんだ。
 (一変して北斗をにらみつけて)おまえなんかに旗を降ろされてたまるか」


 「俺が大学を飛び出してきた気持ちが……あんたなんかにはわかるもんか(慨嘆)。
 『自由だ』『開放だ』、みんな勝手なことばかりやりやがって……真実なんてどこにもありはしない。
 (憮然とした表情になって)いったい何を信じたらいいんだ俺たちは……。馬鹿やろおぉぉ!!!」。」


 満たされない気持ち、何らかの真実を求める気持ち。そして爆発する感情。


 普通の凡庸な作劇では、当時の若者の煩悶の原因が学生運動の敗退への挫折感とされがちだが、『自由だ』『開放だ』とのたまっている同時代の学生運動の連中に対してさえも篠田が違和感を抱いているさまは本話の独自色ともいえるだろう。
 あるいは当時の学生たちのほとんどが実は学生運動に関わっていたわけではないことを思えば、彼の苦悩のあり方こそ当時の若者の典型に近いのかもしれない。
 「馬鹿やろう!」と当時の若者が度々絶叫したかは別として(笑)、このような描写の若者像・青春ものがさほど違和感なくTVを観ているお茶の間で大多数に受容されていたのが70年代という時代だったのだ。



 「俺はこの船が動く瞬間に賭けたんだ。その瞬間だけは絶対に真実だ。その日を信じて、俺はここにいるんだ!」


 北斗「……その気持ちは俺にもわかるような気がする」


 「(北斗の定時通信の報告内容を聞いて、冷めた口調で)無事平穏か。
 あんたにはやっぱり俺の気持ちはわからないよ……」


 今流行りのディスコミュニケーション。このへんは奇しくも怒れる若者像が、「シラケ」が流行語となり冷めておとなしくなっていく70年代中後盤の若者像の先取りにも見える(半面、「やさしさ世代」とも云われた。青春ドラマ『俺たち』シリーズなどがその典型)。
 さらには本作放映10年後の80年代前半、空前のお笑い(漫才)ブームが起き、この手の熱血描写や若者描写がクサイとされてお笑い・茶化し冷やかしの対象となる。
 90年前後のバブル期に向けて小奇麗かつノリのよさを過剰に演じる空騒ぎ躁状態のアクセル・ターボもかかって、90年代前半にバブル経済が崩壊するやダボダボズボンまったり脱力系ラップノリへと、若者像も時代とともに様々な変遷を遂げていくこととなるが……。
 近過去だと世相や風俗が妙に恥ずかしかったりもするものだが、それを過ぎてしまえば、作品が描く若者の普遍の苦悩こそが浮かび上がってきて、抵抗感なく観れるものなのかもしれない。


 がんじがらめだと彼の眼には写っている青春を送り、自由を求める篠田にとって鎖でつながれているスカンジナビア号は彼と等しい存在である。そのスカンジナビア号を自由に空に飛行させたのは大蝉(おおぜみ)超獣ゼミストラーであった。
 本来解放者とでも呼ぶべき存在が自身を危機に陥らせ、静岡県沼津市の住民にも大迷惑をかけることになるとはなんたる皮肉。「俺にとっては船の方が大事だ!」とあくまで自由を追求しようとする篠田であったが、北斗に殴られたことにより、自由とは責任が伴うものであることを思い知らされる。人生は甘いものではないのだ。
 本話もまた大人になってから視聴した方が楽しめる作品だ。「大人の鑑賞に堪える作品」。それが良いか悪いかは別として、第2期ウルトラシリーズにもそんな作品は幾つも存在した。そのサンプルとでも呼ぶべき作品である。



<こだわりコーナー>
*またまた『A』の定番。豪華客船の浮遊現象の通信を、またまた山中隊員が
 「北斗、おまえ正気か!?」「そんなことはありえん!」
 となじるが、超獣ではなく船だし(笑)レーダーにも映ってないんじゃ仕方がない。
 梶研究員「そういえば今日は一日中かなり暑かったし、このへんには珍しいことですが、美川隊員の云った蜃気楼説が当っているような気がしますね」
 誤解やすれ違いがあったとしても、それなりの科学的解釈で、TAC隊員たちなりの北斗へのやさしいフォローに話の展開が行くのかと思いきや……
 「北斗! おまえ昼間の暑さでボケてたんじゃないのか!?」。フォローをしない山中隊員(笑)。
 ある意味、ムリに蜃気楼説を持ち出さずとも一番合理的な解釈かも。いやあ山中隊員は本当に目立ちまくるオイシイ役回りだ(笑)。


*そこですかさず、
 「北斗隊員、たしか君は、まだ夏休みを取ってなかったな」
 と休暇を勧める竜隊長。要は休暇も兼ねて客船事件のことを調査してもよいという含意があるのだが、ここらあたりにも本話のヒューマンな描写は光っている。で、赤いチェックのシャツや黒シャツに白いスーツをはおった北斗の私服姿も見られると(笑)。


*北斗は今回モーターボートを操縦して気晴らし。もちろんついでに豪華客船の調査も忘れない。
*前話の水中合体変身は吹き替え・スタントを使っていたが、同時撮影とおぼしき本話の水中合体変身では南夕子も含めて本人が演じているんだよね!?


*豪華客船スカンジナビア号の正式名称は、ステラ・ポラリス(STELLA POLARIS)。北極星の意味だそうだ。篠田が北斗につけたあだ名も「北斗星」。


*北斗がスカンジナビア号の船内で発見した航海日誌は1969年のものであったが、それを見て北斗は「俺がTACに入隊した年だ」と語っている。
 なんと第1話『輝け! ウルトラ五兄弟』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060514/p1)は1969年の物語だったのだ!?
 だが第9話『超獣10万匹! 奇襲計画』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060708/p1)と第11話『超獣は10人の女?』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060731/p1)に放映72年当時のヒット曲が流れていたことを考えると第1話から第9話の間に3年もの月日が流れたのか?(笑)


 むしろこの第20話の方が69年らしい作品に思える。
 69年といえば東大安田講堂において学生たちと機動隊との一大攻防戦が繰り広げられたほど全国的に学生運動の嵐が吹き荒れた年であり、篠田はそのあおりを受けて大学が閉鎖、休学中の身の上のように見えるからである
 (逆に72年は2月に起きた「浅間山荘事件」によって急速に学生運動や左翼過激派活動が下火になったころであり、篠田は単にサボっているだけなのか?)。


 ただ第10話『決戦! エース対郷秀樹』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060709/p1)に前作『帰ってきたウルトラマン』(71年)の坂田次郎少年と村野ルミ子が再登場し、しかも前作の防衛組織・MAT(マット)のファイルで「郷秀樹はゼットンとの戦いで戦死した」とまで語られていることを考えると『帰ってきたウルトラマン』は一体いつの話になるんだ?(笑)
 だから前掲のセリフは「俺が広島のパン屋に入社した年だ」ではいけなかったのか?(爆) ちなみに第10話も田口成光の脚本なんだけど……
 (多分シナリオには「3年前」のセリフだけで、年号の指定はなかったのだろうけど、本編美術・小道具班が気を廻して航海日誌の表紙に1969を入れたのだろう。とはいえスカンジナビア号の最後の航海は本当に1969年だから……)


 もちろん当時のジャリ番は本話に限らず、各話単位のドラマツルギー的には非常に高度なものがあっても、シリーズ構成やらSF科学や時系列の厳密な考証がなされていないのはご愛嬌。
 そして3年前だからこそ、
 「最後の航海が今から3年前か。ちょうど俺がTACへ入隊したころだ。あいつが云うように、俺もこの船もその日から鎖につながれて……自由を失ってしまったんだろうか?」
 なる北斗らしからぬ自己懐疑のセリフが生きてくるのも事実だ。


*冒頭の高空から眼下に見下ろす夜間の駿河湾岸の特撮美術は、航空写真のようによくできている。『ウルトラマン80(エイティ)』(80年)第14話『テレポーテーション! パリから来た男』(脚本・阿井文瓶 監督・湯浅憲明 特撮監督・川北紘一 
http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100801/p1)での1万メートル急降下シーンにおける高空から見下ろしたUGM基地(米軍厚木基地の飛行場・滑走路を模したもの)の美術の出来に匹敵する。


*大蝉超獣ゼミストラーは蝉(せみ)がモチーフだが、かなり大きな両耳と大きな醜い顔をしたシリーズ随一のやけくそなデザインと造形ともいえるのでフォローがむずかしいぞ(笑)。体表の各所によく見ると樹木の枝が生えているあたりは面白いのだが。
 本話の怪獣はかなり極端な例だが、精巧な特撮美術(ミニチュア群)の中に、造形が甘い怪獣がシリーズ中後盤になると結構いるという、シュールともいえるミスマッチ。第2期ウルトラの特撮全般がダメだということは全然ないのだが、そこ(怪獣造形)に欠点があることも第2期ウルトラ派としては残念ながら認めざるをえない事実でもある。


 とはいえ同時期の他社作品(東映ピープロピー・プロダクション)など)の怪人たちと比べて、『A』の超獣や第2期ウルトラの怪獣造形が劣っていたかといえば決してそうはいえない(その点では特撮ライター小林晋一郎の怪獣デザイン論の超獣低評価、ライダー怪人高評価は恣意的な論理展開・価値判断に見えて異論がある)。
 むしろやはり当時においては特撮ジャンル中で最大級に金をかけた実験的なデザインと造形ではあったのだ。『A』初期の超獣を担当した村瀬継蔵率いるツエニーが継続して怪獣造形を担当していればとの声もあるだろうが、当時ツエニーは結局あの『超人バロム・1(ワン)』(72年)のやけくそなデザインと造形のドルゲ魔人を造っていたわけだし(でもドルゲ魔人も大好きさ!・笑)。
 決して芸術ジャンルではない特撮というジャンクカルチャーの本質でもあるB級キワモノの良さにも目を向けたいものだ。
 火炎を吐きまくるゼミストラーはエースの必殺技・メタリウム光線を浴びて着ぐるみごと炎上(!)という豪快な最期を遂げた。大人になるとガソリン代だけで今回いくらかかったのだろうと考えてしまうが(笑)。


*篠田一郎なる役名だが、篠田三郎が演じることに決まったからそう名付けられたのか? あるいは元々シナリオで彼をイメージして名付けられていたから篠田三郎のキャスティングが決定したのか。ウ〜ン、卵が先か、ニワトリが先か……
*われらが北斗星児こと高峰圭二氏と東光太郎こと篠田三郎氏は、翌年の『ウルトラマンタロウ』第33・34話でも共演を果たすが、さらにはるかな後年、TV時代劇『必殺スペシャル・新春 決定版! 大奥、春日野局(かすがののつぼね)の秘密 主水(もんど)、露天風呂で初仕事』(89年)で、ゲスト仕事人(殺し屋)チームとしても共演を果たした! 篠田三郎は仕事人・人螢の五郎、高峰圭二も仕事人・鉄トンボの弥助。仮面ライダー8号ことスカイライダーを演じた村上弘明のレギュラー仕事人・鍛冶屋の政とあわせて、必殺シリーズFC(ファンクラブ)「とらの会」の世代人集う投稿欄ではプチ話題になったものだ。


*視聴率15.3%


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2006年号』(05年12月30日発行)『ウルトラマンA』再評価・全話評大特集より抜粋)



『假面特攻隊2007年号』「ウルトラマンA全話評」#20関係記事の縮小コピー収録一覧
静岡新聞 2006年1月30日(月) 客船「スカンジナビア号」 保存へ買い取り運動 GW三島など出資募る 1億5000万目標 〜客船スカンジナビア号保存へ買い取り運動開始



(編)後日付記:あのスカンジナビア号が故郷でもあるスウェーデンの会社に売却され、改修場所の上海に向けて曳航中の本年2006年9月2日午前2時ごろ、和歌山県串本沖にて深さ72メートルの海底に沈没! ウルトラシリーズファンには感慨深いものがある。こうして万物と我々が生きてきた時代は歴史と化していく。合掌。


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