(ファミリー劇場『ウルトラマンエイティ』放映開始記念「全話評」連動連載開始!)
『ウルトラマン80』 再評価・全話評! ~序文
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第11話『恐怖のガスパニック』 ~合評1
毒ガス怪獣メダン登場
(作・平野靖司 監督・深沢清澄 特撮監督・高野宏一 放映日・80年6月11日)
(視聴率:関東9.7% 中部12.1% 関西13.6%)
(文・内山和正)
(1999年執筆)
教師でもある矢的猛(やまと・たけし)のUGM隊員としての活動を描いた回で、学校および学校関係者は一切登場しない。
それでも13話「必殺! フォーメーション・ヤマト」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100725/p1)以降のUGM編とはちがい、明日学校があることを矢的が口にしている。
日本人がはたらいている東シナ海の石油と天然ガスの採集工場と、その近くの海に限定することで、実写作品では予算や撮影時間等で難しい海外(という設定)を舞台にする作品が成立した。とはいってもドラマの大半は帰国後の事件なのだが。
UGMの大型宇宙母艦スペースマミーが初登場する。
前作『ザ・ウルトラマン』(79年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100430/p1)の防衛組織・科学警備隊のメカが魅力的だったのに比べ、本作の戦闘機スカイハイヤーとシルバーガルは良くも悪くも地味な印象だ。
(などと云いつつ『80』放送時、『ウルトラマンタロウ』(73年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071202/p1)や『ウルトラマンレオ』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090405/p1)の派手すぎるメカは個人的にはあまり好きではなかったが。それらに比べるとスカイハイヤーとシルバーガルは無難に感じていた)
が、このスペースマミーは夕陽をあびて横たわっている姿の美しさや、当時横行していたSF洋画『スター・ウォーズ』(77年・日本公開78年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200105/p1)パクりパターンとはいえ前方(奥)へ航行していく姿を艦底から撮る映像の巨大感と迫力とで、圧倒的に我が胸にアピールしてきた。
幼少期に第1期ウルトラをリアルタイムで観たせいで、初代『ウルトラマン』(66年)の科学特捜隊の戦闘機ビートルや『ウルトラセブン』(67年)の戦闘機ウルトラホークの印象が強いのだが(とはいえそれらには特別の執着はない)、ひさしぶりに記憶に残るウルトラ特撮メカとなった。
プラモデルなんてほとんど作ったことがなかったのに、購入して光輝シルバー(塗料の色名)を塗り、組みたてはじめたほどだった。結局は誤って部品を接着してしまい完成しなかったのだが……
とにかく第1期ウルトラのメカ群とはちがい、いまだに好きなスーパーメカだ。
人間サイズの怪獣メダンを倒したあと、海ではしゃぎ短い休暇をとるUGM隊員たち。
このあたりは『ザ・ウルトラマン』22話「南海の怪しい空間」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20091016/p1)、42話「ウルトラマン生けどり作戦」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100217/p1)での隊員たちの南海でのバカンスを想起させつつ、実写の味を加えている。
(本話の脚本家・平野靖司氏は『ザ・』にも参加している。上記2本の担当ではないがそれらの影響か?)
不思議な貝を見つけたハラダ隊員はメダンの破片とは知らず城野エミ(じょうの・えみ)隊員にプレゼントし、帰国後に毒ガス中毒事件が起こる。
メダンは小さな破片からでも再生する『ザ・ウルトラマン』3話「草笛が夕日に流れる時…」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090516/p1)の分裂怪獣ワニゴドンと同様のタチの悪い怪獣だが(それでいて鼻先へ尖った小顔に小さな眼が結構かわいい)、さらに体内に吸収したガスのためにガス爆発の危険もあるという設定。
爆発すれば当然細胞が飛び散るので、落雷をふせがねばとの展開になり結局は宇宙へ運ぶことになる。
この宇宙へ捨てる/あるいは宇宙で処理するという設定は、あまりにも便利なのでジャンル作品における定番中の定番となっている(最近の『救急戦隊ゴーゴーファイブ』(99年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/19991103/p1)某話での使用はむしろ意表をついて新鮮だったが)。
筆者もジャンル作品の脚本家ならば安易に多用しそうだが、廃棄物で汚れた海やSF作家・星新一作品のゴミ捨て穴を題材にした古典的な名作「おーい でてこーい」(ISBN:4101098018・ISBN:4062747146)のように、いつかしっぺ返しが来るかもしれないということを、これからの作品は考えるべきかもしれない(「じゃあどうすればいい?」と云われても困るけれど)。
あまり明確な個性を与えられてこなかったUGMのハラダとタジマ隊員だが、今回は事件に責任を感じ行動するハラダに多少のキャラクター的味つけがなされている。
ドラマのラスト、オオヤマキャップ(隊長)は事件の罰としてハラダを休暇返上の処分とするが、現在の作品ならばかえって仕事の支障になりかねないので、こうはしないのではないかと思われ、時代性を感じる。
笑いの場面であるラストシーンにどうこう言うのはヤボであろうが。
第11話『恐怖のガスパニック』 ~合評2
(文・黒鮫建武隊)
(1999年執筆)
10話「宇宙からの訪問者」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100704/p1)ではトラベリングマット合成(移動マスク合成)が数カット見られたが、『80』では「怪獣と人間との合成」というようなカットではスクリーンプロセス合成が主流である。
第一期ウルトラの頃に用いられたリア・プロジェクション(スクリーンの後から映像を投影する)と異なり『80』では、より鮮明な映像が得られるフロント・プロジェクション(スクリーン前方から映像を投影)が採用され、おおいに威力を発揮した。
今回と12話「美しい転校生」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100718/p1)はそのフロント・プロジェクションの独壇場で、各五つの該当カットが楽しめる。
ただ、スクリーンプロセスというものは「手前と背後」というように画面構成が制限されているので、今回のように多用されると、やや単調な印象に陥る点も否めない。難しいところである。
実質的に教師編ならぬUGM編・第一回目に当たる本作だが、ノッケから力作の登場だ。
大爆発の危険を伴う怪獣、というアイディア自体には『帰ってきたウルトラマン』(71年)第8話「怪獣時限爆弾」という先例が認められるが、二段階、三段階の危機描写が功を奏し、手に汗握る(死語)好編となった。
餌でもある天然ガスによって大爆発の危険性を増す怪獣メダン。
爆発しても細胞から再生することが判明し、攻撃できないUGM。
落雷による爆発の危機。
さほど強くない怪獣メダンに対して、UGMが次第に追い詰められていく緊迫感が、たまらない。
怪獣のアイディアを核とした上で、これまで「隊員A」でしかなかったハラダ隊員のキャラクターを生き生きと描き出した点も、大きく評価したい。
UGM編に入れば、隊員たちにこれまで以上の比重がかかってくるのは当然。
美しい浜辺で、隊員服姿のまま一時の休暇を楽しむ若者たちの姿や、自動ドアが左右から閉じて「UGM」と大書された扉のアップで終わるラストシーン等、これまで脇の存在だったUGMを今後の柱としていこうとするスタッフの意図が、(教師編終了を知った後に見ると)よくわかる作品となっている。
ただし13話「必殺! フォーメーション・ヤマト」から本格的に始まるUGM編前半では、UGM自体がオオヤマを教師に、隊員たちを生徒に見立てた「学校」になっている点にも注目したい。
つまり、事件や失敗などを通して成長していく隊員たち、それを厳しく見守り導くオオヤマ、という図式になっているのだ。
この特徴は今回や14話「テレポーテーション! パリから来た男」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100801/p1)などに顕著なのだが、猛が生徒側にまわってしまっていることで、彼のキャラクター性に若干の違和感を残すことになった。
しかし、セラ・小坂ユリ子・イケダ・星涼子といった、より下位の隊員たちの参入等によって、猛は再び教師側へ戻っていくことになる。
(重箱のスミ)
・スペースマミー初出動。ただし実戦参加は13話「必殺! フォーメーション・ヤマト」から。
・「明日、学校がありますので」という猛の一言で、辛うじて学校の設定が維持された。が、その後の展開からして、猛は翌日、学校を欠勤したようだ。
・本話の巻末に付く次回12話「美しい転校生」予告編の冒頭に、UGMパドックの扉が左右に開くというカットがある。これは、11話本編のラストカット(扉が閉まる)を受けたもので、12話本編には使用されていない。この両カットは当然、同時に撮影されたものなので、12話予告編の方でもハラダ隊員は顔に絆創膏を貼ったままだ。
(編:今観返すと本話冒頭、東シナ海の天然ガスを産出する諸島は、昨今その資源をめぐって日本・中国・台湾が互いに領有権を主張する実在の尖閣諸島(せんかくしょとう。いずれの島も無人島)であることに驚かされる。ただしヒルマ島は架空の島名)