2023-02-05

東京リベンジャーズ・ぼくたちのリメイク・Ｖｉｖｙ　～2021年３大タイムリープアニメでも、各作の主眼が知的快感・身体的快楽・人生の滋味とするかで相違！

『エロマンガ先生』『妹さえいればいい。』『俺が好きなのは妹だけど妹じゃない』『干物妹！うまるちゃん』『最近、妹のようすがちょっとおかしいんだが。』『ささみさん＠がんばらない』『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』　～2010年代７大・妹アニメ評！
『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。続』『ようこそ実力至上主義の教室へ』『青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない』『月がきれい』『俺を好きなのはお前だけかよ』『弱キャラ友崎くん』　～コミュ力弱者の男子を禁欲・老獪なヒーローとして美化した６作！
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　「タイムリープ（時間跳躍）」モノの深夜アニメ『東京リベンジャーズ』（２１年）の２期（２３年）が放映中記念！　ＡＩアンドロイド美少女が主役である深夜アニメ『ＮｉｅＲ：Ａｕｔｏｍａｔａ（ニーア・オートマタ）』（２３年）が放映中記念！　とカコつけて……。２０２１年の３大タイムリープ深夜アニメ『東京リベンジャーズ』・『ぼくたちのリメイク』・『Ｖｉｖｙ　－Ｆｌｕｏｒｉｔｅ　Ｅｙｅ’ｓ　Ｓｏｎｇ－（ヴィヴィ　－フローライト・アイズ・ソング－）』評をアップ！　――『Ｖｉｖｙ』もまたアンドロイド美少女もので、主演も『ニア・オートマタ』と同じく涼し気なボイスの石川由衣だともカコつけて！（笑）――

『東京リベンジャーズ』『ぼくたちのリメイク』『Ｖｉｖｙ　－Ｆｌｕｏｒｉｔｅ　Ｅｙｅ’ｓ　Ｓｏｎｇ－』　～2021年３大タイムリープアニメでも、各作の主眼が知的快感・身体的快楽・人生の滋味とするかで相違！

（文・Ｔ．ＳＡＴＯ）
（２０２１年８月９日脱稿）

『東京リベンジャーズ』

（２０２１年春アニメ）

　２６歳の自信なさげで生活不安定そうな冴えないフリーター青年の日常をまずは描写。

　ＴＶのニュースで見た殺人事件の被害者女性。茫洋とした遠い記憶が甦る。それは中学時代の知己の姉弟だった。暴力団の抗争に巻き込まれたらしい。

　翌日、彼は電車が迫ってくる駅のホームで背中を押されて転落してしまう！　すると……。

　メッチャ面白い！　「中高生ヤンキー漫画」＆「時間ＳＦ」という、なかなかアリエない水と油の組合せ作品。

　劇中内での現代で跋扈する暴力団の横暴。それは主人公青年も中高生時代に関わったチーマーや暴走族の成れの果て。

　中学生時代の自分の肉体に憑依した主役青年クンは、そこで過去を追体験。自身が当時は金髪に染めたけっこうなヤンキー少年であって、その後は抗争に負けてヤンキー間での奴隷の身分に落ちたことで当時の記憶を封印してきたものの、知己の姉が自身とは恋仲だったことをも思い出す。

　彼は一縷の望みで、知己の弟クンに「お前は１２年後に死ぬ運命にある」ことを伝える。意識が戻るやそこは現代。そして、歴史は微改変されており、弟クンは刑事になっていた！

　しかし、彼の姉は歴史改変前と同日に抗争に巻き込まれて死亡していたことが発覚！

　弟クンと手を合わせることで、精神だけが中高生時代の自分にタイムリープできることを知った彼は、知己の姉こと元・恋人が死亡する歴史を改変するために再度、過去へと跳んだ！

　なんとその場は、公園でヤンキー数十人が衆人環視の中で地元のガタイのいい小リーダー不良が、小者（中学時代につるんでいた友人）を相手に喧嘩賭博（爆）の真っ最中！
　そして、少しでも歴史を変えるため、仲間を救うために、自身の中学時代末期の奴隷身分から脱却するためにも、彼は小リーダー不良にタイマン勝負を挑んでみせる！

　……いやぁ、人間も（肉食）動物である以上は、現実世界では肉体弱者な我が身であっても「暴力」シーンには高揚するよネ（汗）。

　もちろん、タダの「暴力」では不快なだけだけど。理不尽への「対抗暴力」には正当性・ヒロイズム・感情移入が宿ってしまうことを、善し悪しは別にして人間の動物的な本能としては認めざるをえないのだ！

　彼は勝てないまでも地元の小リーダーよりも上位でモラルもあった正義の不良少年（笑）２名の出現で命拾い。その気概を認められて親交も結ぶのだ。

　しかし現代の時代では、この正義の不良１名が暴力団のトップであることが発覚！　とてもそうだとは思えなかった主役青年は真相を確かめるため、そしてあわよくば歴史改変するために、またまた１２年前にタイムリープして、他グループとの抗争に巻き込まれてしまう。

　死者まで出た（！）ことの対処をめぐって、正義の不良２名間でも内部抗争が勃発直前！　コレこそが歴史（正義の不良少年の人生）の分岐点か！？　と、彼は事態の収拾に走り回るのだ！

　本作は歴史的にも「ヤンキー漫画」の巣窟（笑）であった『週刊少年マガジン』連載作品。本質は「ＳＦ」よりも「ヤンキー漫画」だとは思うけど、こんな料理法もあったとは！　「ヤンキー殴り合い」＆「歴史改変ＳＦ」のミックスはその後の展開でも続いていく。

　原稿化・文章化すると、客観化されて見えてくるものもある。

　「制限ルール付きの時間リープ」で子供時代に遭遇した事件の「ミステリ的ナゾ解き」＆「アクション」＆「歴史改変」を主題としていた漫画原作の深夜アニメ『僕だけがいない街』（１６年）や、大人気深夜アニメ『Ｒｅ：ゼロから始める異世界生活』（１６年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210912/p1）、本作と同季の２０２１年春の深夜アニメ『Ｖｉｖｙ』とも「構造」の次元では同じだとも気付くのだ。

　しかし、やはり「作劇」よりも「テイスト」の方こそが作品の「本質」なのかもしれない！？　『Ｖｉｖｙ』は「知的快感」の方を、『東京～』は「肉体的快感」の方をより強く刺激する作品といった相違はあるのだ。

　とはいえ、起点としての現代がほぼシリーズ終盤でしか描かれなかった前者『Ｖｉｖｙ』よりも、歴史改変後の現代では主役青年と弟の刑事クンのふたりだけが改変前の記憶も有しているという、同じく歴史改変を材としていた『仮面ライダー電王』（０７年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080217/p1）において主役たちを歴史改変の例外とするためのＳＦ的な言い訳であった「特異点」のように扱ったあたりで、『東京』の方が上回っている箇所もあるのだけど……。

　とにかく傑作の誕生である！

東京リベンジャーズ

新祐樹

Amazon

（了）

後日付記：

　「ヤンキー漫画」＆「時間ＳＦ」とのミックス作品……。スミマセン！　同じく『週刊ヤングマガジン』連載の人気マンガ『代紋ＴＡＫＥ２（エンブレム　テイクツー）』（９０～０４年）のことを忘れていました！　３０数年も前の平成初頭に同趣向の金字塔作品がございました！――オタにはアリがちだけど、実はヤンキー漫画は少年時代から敬遠してきて、あまり読んだことがなくって……（今となっては弱点です・汗）――

『ぼくたちのリメイク』

（２０２１年夏アニメ）

　３０歳目前の青年が失意の表情で深夜の高速バスに乗っている。

　彼は一度はカタギの仕事に就くも、夢は捨てがたく弱小ゲームメーカーへと転職。ブラック企業で多忙を極めるも会社が倒産（爆）。家賃が払えなくなった彼は仕方なく実家に舞い戻る最中なのであった。

　しかし、喰っていかねばならない。求職活動の果てに、前職よりはもう少し大手らしいゲーム会社への転職が成功！　業務全般に通じている彼は次第に社員たちの信望も厚くなっていく。同世代の有名ゲームクリエイターたちにも会えるかも！　といった段になって、プロジェクトが凍結（爆）。彼はまたも失職して、実家へと舞い戻る……。

　一般大学ではなく、合格も果たしていた芸大（芸術大学）に進学していれば今ごろ、その道の一流となって同世代クリエイターともコラボができたかも……。でも、もう手遅れなのだと泣き崩れてしまう彼。

　しかし一晩が明けると、高校卒業直前・大学合格直後の春へと時間リープ！　彼は芸大へ進学して人生をやり直すのであった……。

　といったところで、助走台では主人公クンへの感情移入をコレでもか！？　コレでもか！？　と高めていく周到さ！

　いやぁ、もうココまでやってくれれば安心・ナットク・同情して物語世界へと没入ができるのだ。そして、芸大では未来のクリエイターたちとも早々に遭遇。彼らと親交を深めて人生をやり直し、向上心にも満ちあふれた学生生活を謳歌する。

　といったところで、本稿執筆のためにＷｉｋｉｐｅｄｉａを参照して、シリーズ中盤以降に待ち受けているトラブル、想定通りの未来ではなく主人公青年が過去に介入したがばかりに未来のクリエイターたちがそうはなれなくなってしまった歴史を辿ってしまい、それでさらにうんぬんかんぬんといった、今後の展開がイヤでも目に入ってきてしまったけど（爆）。

　本作はストーリー展開の妙だけでなく、それに伴う演技や心情描写、演出でも惹きつけていくことができている作品なので、仮に今後の展開が先にわかってしまったとしても、感情移入をさせられて楽しませてくれる作品であろうと勝手に予想している（笑）。

（了）

『Ｖｉｖｙ　－Ｆｌｕｏｒｉｔｅ　Ｅｙｅ’ｓ　Ｓｏｎｇ－（ヴィヴィ　フローライト　アイズ　ソング）』

（２０２１年春アニメ）

　ムチャクチャに面白い！

　いわゆる「ＳＦ」の「古典」も「古典」、「ロボット（人工知能）の反乱」を描いた作品なのだが、そこに「歴史改変ＳＦ」も混ぜている作品でもある――もちろん、それだけでも今日びはウケないので、８頭身のロボット歌姫を主役として「美少女」＆「歌」でも売っていくといった商法だ――。

　近未来の遊園地で歌を披露しているヒト型ＡＩ第１号でもあった、感情には乏しいロボット歌姫の体内に向けて、１００年後の未来から筐体（きょうたい）のないデータのみのかたちとしてＡＩデータが転送されてきた！

　マツモトと名乗ったＡＩデータは手近にあった小さなクマの縫いぐるみのＡＩに移動・ハッキングするやいなや冗舌に語りだして、１００年後の未来で起こるＡＩロボット大反乱を阻止する「歴史改変」のために自身に協力するように命令する。

　手始めに近々に起きるでああろう爆破事件を予告してみせ、歌姫もシブシブと彼に協力して、スリルとアクションとＳＦを、大金と人員を投じたハイソな作画・映像で魅せていくといった作品でもある。

　しかも、舞台となる時代は飛び飛びである。１００年前を発端に、その１５年後、さらに５年後と、各エピソードが前後編形式にてストーリーを構築。それはその時代が人間とＡＩとの関係の歴史において、いくつかあった変節点・シンギュラポイントだったから！　といった理由も付けている。

　ＡＩの過度な進化・自我の芽生えを避けるためにも、ヒト型ＡＩの個々ごときには「人名」などは付けないように……など、一見はアタマよさげなエクスキューズで物語が展開していくようでも、各話はイイ意味でのエンタメ的な「アクション」へと収斂もしていく（笑）。

　そして、「歴史改変」に成功したようでも、同等の事態が生じて、一歩前進・二歩後退で「ＳＦ性」と「活劇性」も両立させてもいる。

　いっそのこと、ヒト型ＡＩの連中全員を根絶させてしまえば？　といったイジワルな視聴者の疑問にも先回りをするかのように、１００年前こと劇中での「現代」（笑）の時点にも「反ＡＩ・過激派」がすでに存在していたと設定。しかし、過激派による歴史上での暴挙もまた、皮肉にも「ＡＩ大反乱」の誘因になっていたとして、「ＡＩによる暴走」だと「見せかけ」ていた過激派による「宇宙ホテル」の落下の阻止などにも邁進。「反ＡＩ」かつ「反・反ＡＩ」でもある、右派・左派のいずれにも寄らない、実にか細き道を歌姫＆マツモトには歩ませてもいるのだ。

　次第に感情豊かにもなっていくＡＩ歌姫、関西人のように冗舌なマツモト。ともにＡＩでもある魅力的な２大主役が、ＡＩ暴走阻止のために行動する逆説もまた実に面白い。

　本作を鑑賞していると、「ロボット反乱ＳＦ」は「普遍の王道」だともいえるけど、やはりそういった「型」や「ジャンル」そのものよりも、表層的な「意匠」「パッケージ」の方が大事であるどころか、実は作品の「本質」であったりするのかもしれないとも思い直したりもする（汗）。

　本作の場合は、「時間ＳＦ」や「美少女」に「歌」も混ぜてみせたことで、それなりに「独自」な作品にも見えてくるのだ（笑）。

　同じく「ＡＩ反乱テーマ」の作品でもあった『仮面ライダーゼロワン』（１９年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200921/p1）などもそうであったけど、ここ１０年ほどは故・ホーキング博士までもが「数十年後にはＡＩが人間を陵駕する！」などと喧伝してきたので、時勢との一応のマッチ感もあるのだ。
――実はこのテの俗説ならぬ学者センセイによる学説は、マイナーな舞台では８０年代から定期的に湧いてきている。しかし個人的には、数百年スパンでならばともかく、数十年以内にＡＩが人間を陵駕する！　などといった説はマユツバだとも思っているけれど（笑）――

　でもまぁ、作品の善し悪しといったモノは、「題材」そのものにはなく、導入部の「ヒキの強さ」や「風情」や「語り口」といった方に起因することが多いのだろう。

　ヒト型ＡＩの反乱で「戦場」と化しているのに、遊園地の閑散としたステージ上で機械的に無表情で歌唱しているＡＩ歌姫の異様な姿で開幕して、１００年前の過去に戻って「ヒトには危害を加えてはいけない」といった古典ＳＦ作家・アシモフの「ロボット３原則」もどきを、皮肉の意味でか引用してみせる。

　感情には乏しくても善良そうな歌姫ロボットと、年端もいかない幼女との交流が描かれて、幼女が歌姫ロボに対して縫いぐるみをプレゼントする。このようにして視聴者にも登場人物たちを馴染ませたところで、非日常的な要素を「ドーン！」と投入してみせることでの作品世界への「ツカミ」の発生！

　やはり「設定」それ自体よりも、「叙述」にこそ「作品の本質」「面白さのキモ」といったものは宿るのだろう。

　原案・脚本には、小説投稿サイト上がりで『Ｒｅ：ゼロから始める異世界生活』（１６年に深夜アニメ化）が大ヒットした長月達平ほかが登板している。実績ある若手ラノベ作家や漫画家を招聘して新作オリジナルアニメを作る流れがあるけど、本作もそんな１本なのだろう。

　同じく氏がメイン脚本を担当した、「低頭身の萌え美少女」＆「戦闘機」ネタかつ「マンガ・アニメ的な演出」＆「お話運び」でもあった、昨２０２０年秋のメカミリタリ系の美少女深夜アニメ『戦翼のシグルドリーヴァ』（https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220821/p1）とは打って変わって、歌姫ロボの８頭身に象徴されるナンちゃって感は皆無の「自然な演出」＆「お話運び」もすばらしい――むろん、「漫画演出」「自然演出」の双方に優劣などはない。それぞれの中での巧拙はあっても――。