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それが声優!・ガーリッシュナンバー ~新人女性声優たちを描くも、地味女子・ワガママ女子を主役に据えた2大美少女アニメ評!

『アイドリープライド』『ゲキドル』『22/7』『推しが武道館いってくれたら死ぬ』『おちこぼれフルーツタルト』 2020~21年5大アイドルアニメ評!
『ラブライブ!』・『Wake Up,Girls!』・『アイドルマスター』 2013~14年3大アイドルアニメ評
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 新人女性声優たちを描いた2クールの深夜アニメ『CUE!(キュー!)』(22年)が完結記念! とカコつけて……。新人女性声優を描いた深夜アニメ『それが声優!』(15年)・『ガーリッシュ・ナンバー』(16年)評をアップ!


それが声優!』『ガーリッシュ ナンバー』 ~新人女性声優たちを描くも、地味女子・ワガママ女子を主役に据えた2大美少女アニメ評!

(文・T.SATO)

それが声優!

(2015年夏アニメ)
(火曜23時 TOKYO MXほか)
(2015年10月3日脱稿)


 ようやっとデビューができたばかりで、まだ先行きも盤石ではないであろう(汗)、新人女性声優3人組のドタバタ悲喜劇を、シリアスにではなくマッタリとオブラートに包んで描くという深夜アニメ。


●ライトグレーのロングスカートである学校制服で身を包んだ、子役上がりで小柄かつ可愛らしい、黄緑色のボリュームもあるロングヘアで、オットリとしているけどシッカリしている、いかにも性格よさげな現役中学生声優がサードヒロイン!


●コリン星ならぬイチゴ星からやってきた! という「設定」を作って、テンション高めでその「設定」をブリブリと演じている、膝上まである長い白タイツ&苺イメージのミニスカのあいまにある狭~い絶対領域(笑)に素ハダの太モモも見せつけてくれる、ピンクのツインテール髪でいわゆる萌え萌えの可愛い子ブリっコしているサブヒロイン!


●そして、薄パープル髪のショートカットにメガネ。丈がとても長~いカーデガン、スネまである細みのロングスカート、短い上げ底ブーツの3点セットで、貧乳・痩身・胴長短足気味の貧相なボディラインをゴマカしているとおぼしき(失礼・汗)、少し地味めなメインヒロイン!


 ……オマエがメインヒロン・主人公かよ!? 見た目だけで云えば、3人グループの中ではサードヒロイン・ポジションのルックスじゃねーのか!?(汗)


 いや、別にイイんですけれどもネ。実にフツーに実際の日常生活においては最も常識人でもあろうし、仮に会話を交わしたとしても、対話相手を安心させてくれるイイ娘だろうとは思います。


 往年の美少女アニメの金字塔『涼宮ハルヒの憂鬱』(06年)における文芸部の部室の窓際で文庫本を読んでいる銀縁メガネのサブヒロイン・長門有希(ながと・ゆき)をも想起させるビジュアルだと云ってあげてもイイかもしれない!? ……いや、神秘性とか吸い込まれてしまいそうな魅力には大幅に欠如しているけど(爆)。


 しかしまぁ、性格は少し弱気だし、健気でイヤミなところもないけれども、男に対しての媚び媚びとした女子力や「華」には実に乏しい。繰り返しになるけど、フツーの美少女アニメだったならば、よくて3番手か4番手のヒロインじゃネ? 的なルックスなのだ。
 作り手たちも確信犯なのであろう。彼女ら3人が作品内で結成する新人女性声優3人組の歌唱ユニットの中でも、このコはセンターを務めてすらいないし!(笑)


 セカンドヒロインことイチゴ姫の方も、自身で作りこんだ「キャラ設定」でのふるまいは、ヘタをするとアザトくてハナに付いてしまうところだ。だけど、イマ半でソレがキマりきっていなかったり、元ネタの一部にしたとおぼしき00年代の某女性アイドルとも同様に、ドーしても「設定」の徹底にはムリが生じて破綻・失敗しているところも含めて、それが「笑い」としても機能しているのだ。


 しかし、実はイチゴ姫はビンボーな身の上であり、狭くてボロいアパートで実に質素な暮らしをしている。パートのオバサンたちばかりの工場の製造ラインで健気にアルバイトもしている苦労人(汗)な描写も挿入されているあたりで、リア充(リアルで充実)なイケてる系の御仁たちが大キライな我々オタク的には、そのギャップが実にポイントが高くなるのだ(笑)。


 サードヒロインである現役中学生声優はイイ子ではあっても、オトナしめでキャラ薄である。だが、シリーズ後半では彼女に主役編を設けさせて、メタ的ながらもキャラ薄それ自体を自覚させて、幼少時から子役だったがために皮肉にもフツーの女子中学生の演じ方がわからなくなっているのだという「困惑」をさせることで、その人物像を逆説的に肉付けしていく。
 加えて、裕福とはいわずとも生活には特に困っていない実家住まいのフツーの身で、声優とは名ばかりのバイト三昧の前2者とは対比の妙も出せているのだ。


 コレで彼女が大金持ちであり巨大な洋館に住まっていて、公的な天下国家のことや他人へのいたわりなどには毛頭関心がなくって、ファッション&スイーツなだけの嗜好で、同性の女性たちとも差別化することで上位に立って男どもの注目を浴びたがってもいたり、イイ男にイロ目を使うなどの私的快楽だけがアイデンティティーとなっているビッチ娘であったならば、我々オタの敵として認定されるけど(笑)、実家は実に素朴な和菓子屋である。


 ドコかで既視感がただよう設定なのだ。そう、アイドルアニメ『ラブライブ!』(13年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160330/p1)の元気系メインヒロインや、同じくアイドルアニメ『Wake Up,Girls!』(14年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20150615/p1)のサブヒロインなどの実家も、ダサいとは云わないけどイケてる系とも云いがたい和菓子屋であったのだ。
 出自がリア充女性ご用達のファッション&洋風スイーツではないあたりで、この処置は元気なコミュニケーション強者でイケてる系キャラクターに行き過ぎかねないところを少々寸止め・中和してみせたり、作品のウラ側からも癒し系のキャラクター性を加味してもいるのだ。
 そう、性的弱者でもある我々オタク男子を安心させて、やさしくスポイル(笑)もしてくれる実に自堕落な、もとい高度なキャラクター設定でもあったのだ!?


 キャラクターデザインは、各話ごとの下請けアニメーターの技量が多少なりとも乏しかったとしても、それが露わに現われて過剰に見劣りすることもなさそうなシンプルな「描線」ともなっている。
 線が少なくても何気に高度なセンスを要するような「萌え曲線」「萌え描線」を最初から達成する気もないようなお手軽さだ(笑)――コレはコレで過剰に媚びずにサッパリとしていてイイけれど――。


 主題歌もメインキャラ3人の名前や性格&境遇設定を冒頭でベタでも歌詞化して「茨の道」だの「ドンと来い!」だの、後半で音階が転調してからはさらにイモっぽくなるB級・C級志向である!(笑)
 トドメには主演声優3人組のユニット名が「イヤホンズ」だと来たもんだ! 「ヘッドホンズ」とかではなく「イヤホンズ」! 耳穴に挿すイヤホンですよ! ナンというミミっちいユニット名。だけど、本作には実にふさわしく思えるのだ。
 「♪ アナタのお耳にプラグイン!」。まぁ、出オチ的なねらったネーミングであることもわかるけど(笑)。


 ……声優さんたちの苦労談というと、つい最近でも円盤売上も大ヒットを記録したアニメ業界モノの大人気深夜アニメにして大傑作『SHIROBAKO(シロバコ)』(14年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160103/p1)にて、メインキャラのひとりである声優志望の「しずか」こと「ズカちゃん」で散々っぱらに描いていたばかりじゃねーのか!? と多くのアニオタが想起したであろうとは思われる。
 で、本作のテロップのシリーズ構成(メインライター)担当者を見てみれば、コレまた『SHIROBAKO』と同じく大ベテランの横手美智子センセイ! ……オイオイ。
 コレは損なタイミングで放映されてしまって、近過去の大傑作と過剰に比較にサラされてしまうであろう不運な巡り合わせの作品になってしまったよなぁ……などと思いきや。


 あにはからんや、意外と面白い! ユルくてヌルい作品だけれども面白い! グイグイと引き込まれるということもないのだけれども、それでも視聴がサクサクと進む! 『SHIROBAKO』とチョットだけカブりつつも全然テイストのちがう作品に仕上がってもいる!


 『SHIROBAKO』ほどの密度感、胃がイタくなるような切迫感はまるでない。ないのだけど、『SHIROBAKO』もかなりキワどいところ、アンハッピーエンド・絶望一歩手前のイヤ~ンな感じを散々に経由してからのハッピーエンドのシークエンスの連発(笑)で成立している作品であったので、ヒトによっては重たすぎたであろうし、ヤリすぎといえばヤリすぎな作品ではあったのだ。
 漫画・アニメの本義が、娯楽・気休めであるならば、本作のユルい在り方・作り方もまたまちがっているとは思われない!


 どころか、本作の初出は深夜アニメ放映の4年も前となる2011年末の冬コミ同人誌(!)なのだそうである。そーなると、『SHIROBAKO』の方こそが実質的な後追いだったのではなかろうか!?


 『SHIROBAKO』においては、主人公女性キャラには仕事上にて多々見舞われる艱難辛苦(かんなんしんく)に対する不平不満を、極力そのクチビル上ではナマでは語らせなかった。
 その代わりに主人公が所有する可愛らしいヌイグルミ2体に、トロトロと甘ったるい幼児言葉の対話調にて不平不満を代弁させていた。コレにより、論理的には云っていることは同一であったとしても、感覚的にはしごくやわらかく感じられてきて、彼女の怒りとやや強気な性格から来るキツさなどは遠景へと退いていって、彼女の悲痛や心身の疲労に対する同情・感情移入の方が強まってもくるのだ。
 製作スタッフたちもバカではないのだから、作品の看板となる萌えキャラたちの性格が過度にキツめだとは受け取られないように、声援もしたくなるアイドル性は残したかたちでの「萌えキャラ」として踏みとどまれるように、主人公女子の描写をヌイグルミとも込みで、さりげに印象コントロールもしていたのだとも私見をするのだ。


 本作にもヌイグルミを使った同様のシチュエーションが存在している。これは原作マンガにもある設定なのであろうか? アニメ版のオリジナル設定なのであろうか? 企画や脚本執筆のタイミングでは、このヌイグルミを用いた自問自答的な会話劇で登場人物たちの心情を仮託させる手法は、『SHIROBAKO』と本作とでドッチが先だったのであろうか? 横手美智子センセイ、教えてください!(笑)


 「相対的にはユルい」と書いてきたものの、それはひょっとすると実は失礼な物云いなのやもしれない。本作の原作者でもあられる、個人的にはパワフルなボイスの持ち主といった印象がある中堅女性声優・浅野真澄(あさの・まさみ)センセイ的には、声優業界内部の悲喜劇をしごくマジメに訴えているつもりなのかもしれないからだ!?


 だが、別に声優さんであろうが役者さんであろうが音楽家であろうが、日常生活に恒常的に最低限は必要なカタギの「実業」ではなく、世の中全体にプチ・ブルジョワ的な余剰があってはじめて成立する水モノ・人気商売でもある「虚業」の世界が不安定な雇用状況にあることは、大方の人間であれば人生途上のドコかで見聞きしてきたことでもあり、そのイミでは想定内の内容だったともいえるのだ。


 とはいえ、だから陳腐(ちんぷ)な内容にとどまっていて作品としてもダメなのだ! ということでもない。そういった「虚業」の世界で夢を追ってしまわざるをえない人間たちの心情を、外側から見た客観的な「ドキュメンタリー」形式などではなく、登場人物たちの内面を想像&フィクションも込みにて「物語」というフォーマットを採ったかたちで提示することで、単なる「知識」「情報」にはとどまらない「感情移入」をさせること。
 それによって、多少の「血肉」も感じさせられる「疑似体験」にまで昇華させたり、逆に疑似体験にまでは至らなかったとしても、この世の中にはそういった世界もあることを周知させて、そんな彼女らに対して観客も少々の「共感」「同情」をさせてはくれる装置ともなりうることもまた事実なのであった。
 「ジャーナリズム」ならぬ「フィクション」の効用のひとつとはまさにソレなのであろう。



 ただし、作品外のことになるけど、本作の原作者にしてアラフォー中堅女性声優・浅野真澄の人格イメージと、本作のイヤホンズの面々の弱々しいイメージがまったく重ならない。……いや、重ならなくってホントによかったとも思うけど(笑)。


 だってホラ、筆者のようなロートルにとって、浅野真澄といったら、『三国志』の登場人物たちの名前(汗)でなぜか生まれついてしまった肉感的な爆乳女子高生たちが格闘バトルを繰り広げる、今だに新作が継続している『一騎当千』シリーズ(03年~・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20040405/p1)の陽性ノーテンキなミニスカ女子高生主人公・孫策(そんさく)だったモノで。


 演技力や声量を要求されそうな、大向こうを敵にまわしてのキップのいい啖呵(たんか)も切れる堂々としたお芝居もコナせる彼女には、コッチが応援せずとも放っておいても踏んづけても踏んづけても、自力で世に出てきてしまいそうな実にタフでしぶとい生命力に満ちあふれた力強い自立した女性のイメージしかないのだ(笑)。


 今年2015年は女児向けアニメ『Go! プリンセスプリキュア』(15年)で、クールでお上品なお姉さまの生徒会長ことセカンドヒロイン・キュアマーメイドを演じている浅野だが、コチラもやはり実に頼りなさそうで可憐な一輪の野花のようなイヤホンズの3人のイメージとはまったく重ならない。
 あの浅野にイヤホンズの3人のような、か弱いド新人時代があっただなんて、筆者は毛頭信じない(オイ・笑)。


後日付記


 本作の終章では、ダンスでの「足の故障」といった『Wake Up,Girls!』終盤でも観たような展開ともなり、最終回は声優事務所・青二プロならぬ青空プロにおける若手声優に対する定期的な選抜にて事務所に残留ができるか否かが眼目となって、シビアな中での希望を謳う『SHIROBAKO』化したかたちで終了となった! といったところが筆者個人の印象である。
 いやまぁ、他の作品のタイトルを列挙して「似ている」などといった類いの文章で、その作品を語った気になってしまうのもドーかとは思うものの(汗)。もちろん、似ているからダメだというワケではなく、似ていても非なる展開ではあったワケである。


 ダンスでの足の故障に、『Wake Up,Girls!』をつい想起してしまうことも、筆者個人が腐っているからであって(汗)、冷静に考えてみればギョーカイ的には「あるある」ネタなのであろう。
 オッサンの繰り言で申し訳がないけど、70~80年代までのアイドルというものは、今思うと右手をマイクに左手でちょっとだけ手をヨコに伸ばしたり振ったりもしているだけの単なる「振り付け」であった。それに引き換え、90年代以降のアイドルは激しいキレッキレの「ダンス」を踊るかたちとなっていく。だから、今のアイドルの方が高度なテクニックを要求されて大変だろうとも思うのだ。


 本作のメインヒロインを演じている高橋李依(たかはし・りえ)の名前は本作のテロップで初めて認識したけど、2015年夏アニメでは『がっこうぐらし!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20151006/p1)の追加メンバーのあの娘と、『乱歩奇譚 Game of Laplace(らんぽきたん ゲーム・オブ・ラプラス)』ではコバヤシくんと、主役級キャラのレギュラーを一挙に3本もゲットしている!
 エンディングのテロップを見なければ同一声優を演じているとは気付けないほどなので、つまりはキチンと演じ分けもできていることになるのだ。本作中でもメインヒロインが少年の声をマネてみせるシーンなどは、素人クサいボキャ貧の賛美で恐縮だけれど、実に達者だよなぁ~と感心しきりである。


さらなる後日付記:


 高橋李依は、翌年2016年には『魔法つかいプリキュア!』主演(!)や、『Re:ゼロから始める異世界生活』と『この素晴らしい世界に祝福を!』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210912/p1)といった2大人気深夜アニメのヒロインやサブヒロイン役でさらなるブレイク! その後も途切れなく活躍をつづける実力派声優となった。
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(了)
(初出・オールジャンル同人誌『DEATH-VOLT』VOL.72(15年10月4日発行))


『ガーリッシュ ナンバー』

(2016年秋アニメ)
(木曜26時28分 TBSテレビほか)
(2016年12月25日脱稿)


 個人的には2016年の秋アニメの中では2番目に面白い!


 やっぱり美少女アニメは美麗でかわいい絵が命! とまでは云わないものの、最先端の絵柄自体もココまで多様化・細分化が進んでしまうと、筆者個人が気に入っている絵柄自体が若い衆のうちでも多数派なのか少数派なのかもわからなくなって久しい――いやまぁ、少数派だったからといって、手のひらを返して「長いモノには巻かれろ」とばかりに見捨てたりもしないけど――。


 本作はアニメ業界モノの深夜アニメ『SHIROBAKO』(14年)PART3にして、『それが声優!』(15年)PART2! ……なぞといった表層的・外形的な類似によるカテゴライズをしただけでは、その作品の内実・本質・深層をとらえたことにもならないであろう。


 先の2作品とも異なり、本作ではこの「夢の業界」でも大変なことが色々とあって健気に主要人物の苦労人たちががんばっています! といったノリにはストレートにはなっていかない。


 やはり先行作との差別化もあってか、本作ではメインヒロイン自体が多少なりともルックスには恵まれていて小器用さもあったからか、ナンとなく芸能事務所に所属してナンとはなしに声優業界の片隅に来てしまったぁ! といった程度の意識で、テキトーでチャランポランで図太くて自分に対して思いっきり甘くて、他人や仕事に対してもドコとなくナメ腐ってもいるかのような態度が描かれている(汗)。
――もちろん、ソレを「過剰」な域には達せさせないことで「萌えキャラ」としての節度は絶妙に保たれて、笑えるモノにもなっている……とは思われる。多分。……いや、少々苦しいかも?(笑)――


 そんな意識低い系の彼女がキビしい現実に遭遇することで、次第にプロの声優として目覚めていくといったストーリー展開なのかと思いきや……。


 終盤だけに限定すれば、たしかに一応はそうだともいえるかもしれない。しかし、物語はそんなベタな「王道」を歩んではいかないのだ。


 ムダに天然で度胸だけはあって、物怖じもせずに本番には強いがために、端役にすぎなかったのにタマタマ出演できたアニメイベントではブリッ子しつつも、見事なアドリブ力で観客席の笑いを取れてしまったりもするのだ!
――我々オタク系のアマチュア同人ライターのようにガチンコ対面の素の人格力・人間力には自信がナイからこそ、文章や絵などの二次表現でアイデンティティーを満たそうとしている人種とは真逆の性格類型でもある(汗)――


 そんなところが制作プロデューサーや声優事務所社長には見込まれたことで推薦を勝ち取って、本作のシリーズ序盤においては早くもライトノベル原作の深夜アニメの主役もゲットができてしまうのであった!(爆)


 ……たしかに現実の世の中はそんなモノなのかもしれない。つまり、ルックス・度胸・生まれつきの声質などの要素がモノを云って、たとえマジメに努力をしていたとしても、それらには恵まれていない連中たちがバカを見るという展開などは存分にあることなのであろう(汗)。


 原案&メインライターは、(ひとり)ボッチものやラブコメものをウラからエグり直したかのような深夜アニメの大傑作『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』(13年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20150403/p1)のラノベ原作者・渡航(わたり・わたる)センセイ。
 昨今流行りのラノベ作家やゲーム作家を深夜アニメの脚本家として投入するパターンでもある。まさにそーいったウラ事情も知っている作家センセイが投入されたことによって発動される、新人アイドル声優たちにとどまらないウラ方のアニメ業界人たちのブッチャケた人物描写の面でも、まさに『裏・SHIROBAKO』や『真・それが声優!』といった感もあるのだ。


 もちろんアニメ声優のイヤなイヤなイヤなところだけを露悪的に描こうとしたならば、イヤなものやキタナいものは観たくはないらしい、繊細ナイーブな今時のアニメファンからは途端にそっぽを向かれてしまう。
 よって、見た眼はかわいいメインヒロインの性格がいかに実際には悪かろうとも(爆)、彼女がイバりちらしたり後輩の新人声優をイジメはじめたり……などといった域には達することはない(笑)。
 そのへんは絶妙なサジ加減で、かわいさを逸脱しないように印象がコントロールされてもおり、そのことは本作を未見の読者のためにもくれぐれも強調しておこう。


 当たり前だけど、メインヒロインの彼女ひとりだけでは、本作は華やかさ&姦(かしま)しさには欠けてしまう。それで、本作でも複数名の美少女ヒロインを投入して、ほぼ同期(?)の新人声優としては年増の姉御とチビチビ天然新人を、加えて中堅人気声優の長身黒髪ロングと小柄金髪ツインテール娘を取りそろえた5人体制とすることで、一応のキャッキャウフフ感をも確保する。


 この4番手・5番手の黒髪ロングと金髪ツインテがまた、筆者にはどう見ても別作家によるラノベ原作の深夜アニメのヒット作『冴えない彼女(ヒロイン)の育てかた』(15年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191122/p1)の黒髪ロングと金髪ツインテの両者の関係性からのインスパイアーにも見えてしまうのだけれども……。絶対にねらっているだろう!?
 特に前者はルックス・口調・声質もクリソツ。テロップを見てみると、その『冴えカノ』のメインキャストも登板しているのだ!
 同作では金髪ツインテ役でキンキン声を出していた大西沙織が、本作では黒髪ロングのクールボイスを器用に出している。絶対に同作の黒髪ロングの演技プランをトレースしているよネ?(爆) いや、上手かったので満足しているけど――ちなみに、『冴えカノ』で黒髪ロングの方のクールボイスを披露していたのは、コレまた芸達者な七色ボイスの茅野愛衣(かやの・あい)であった――



 もちろん、新人女性声優だけではなく、アニメ業界における諸々の職種の人間たちも描写されている。


 概して社長やプロデューサー職の連中はコミュ力が高いお調子もので、「勝ったナ、ガーハッハッハッハッハッ。ブイ!(Vサイン)」をキメ台詞として記号的・漫画的・様式美的にも描かれてオブラートには包まれることで、我々のようにコミュ力がないために地道に生きていくしか選択肢がアリエないオタク視聴者の反発を避けてもいるのだ(笑)。


 対するにラノベ原作者の青年クンたちは病的に痩せていたり太っていたりして、小声で滑舌も悪くてコミュ力が極端に低い人種として描かれてもいた(汗)。


 金髪ツインテの声優嬢いわく、


ラノベ作家って……。あのヒトたち、絵も描けない、曲も作れない、演技だってできない、それでもこの業界にしがみつきたいだけのヒトなんだから……」


 ……とのことだそうだ(爆)。


 ヒエエエェェェ~~~~。


 彼女の言い分が100パー(セント)正しいとも云わないけれども、半分もとい半分以上は正しいかもですネ。


 我々アマチュア評論同人ライターたちもまたまったく同じであって、プロの作り手にはなれなかった恒星に対する惑星か衛星、いやそれ以下の存在である人工衛星のような二流・三流の存在であるダメ人間たちの集まりなのだ(汗)。


 だから、作り手たちよりも我々評論オタクたちの方がはるかに「上」なのだと思い上がったり、評論オタクの世界の中でもそこに一種のカーストを作りたがったり、批判の舌鋒に節度・礼節がなくなって、その論法自体が市民運動・社会運動・消費者運動チックに無礼・失礼・政策論ヌキでの念仏スローガン・罵詈雑言の域に達してしまったならば、人間としてはオシマイなのである(汗)。



 オズオズとメアド交換だかLINE(ライン)交換だかを申し出るラノベ作家を、


「ワタシ、LINEやってませんのでェ~」


などとニコニコ笑顔で平気でウソをつけてしまう金髪ツインテ声優嬢の如才のなさにも爆笑!


 まぁ要は、最低限のルックスなり、一方的な知識自慢などではなくたとえムダ話でも会話のキャッチボールもできる人格的な魅力、対外交渉スキル的な頼り甲斐、異性を楽しませることができる話術などがある男性としか、恋人以前の友人関係としての交際対象にもなりえません! ってことですネ(爆)。


 しかし筆者は、こーいう我々オタク自身をも批判的に相対化して自虐的な笑いを取りに走る「メタ芸風」などは大スキなのだけど、今時のナイーブな若いオタク男子的にはドーなのであろうか? ウケるどころか、自身のことを全否定されてしまった! などとムダに反発を覚えさせてしまうのではなかろうか?(汗)



 本作では、主人公女子がその主役をゲットできたせっかくの深夜アニメが、放映前に原作とアニメとでの内容乖離が問題となったことから来るイザコザ・作り直しによってスケジュールも逼迫したことで、#1からし作画崩壊したアニメとなってしまう!
 そして、新人声優たちや原作者たるラノベ作家センセイの激しい落胆もが描かれているのだ――痩身メガネの原作者センセイは深夜に自室で泣き崩れてもいた(爆)――。


●下宿には演劇理論のブ厚い書籍を置いており、ホントは美少女アニメ的なテンプレ記号演技なぞはヤリたくはなかったという黒髪ロング女子
●演劇一家に生まれて自由にヤラせてもらっているのに、あまりに干渉してこないが故にこそ両親に対して鬱屈をいだいてしまってもいる金髪ツインテ
●ここで芽が出なければ、そろそろ引退を考えていたという姉御女子
●小心者で本番アフレコには弱いものの、良く云えば女子力が高くて、悪く云えば天然で無自覚に男たちにアザトく媚びてしまえる小柄なサブヒロン


 そこに新たに登場してきた、才能&ヤル気もあって、しかして心底から邪心もナイらしき新人女子高生声優!


 そんな彼女たちの友情や交流の進展。


 それらを一巡した末に、主役女子が所属する声優事務所がその新人女子高生声優にチカラを入れはじめて、メインヒロインがさすがに焦りを感じる日もやってくる!


 そして、ドロップアウトしそうになってしまった彼女を最終的に支えたモノとは……。


 他人やスタッフへのいたわり・感謝の気持ち・博愛精神などではさらさらない!(汗)
 一発屋では終わりたくない! 忘れ去られたくない! 負けたくない! 一番になりたい! 注目されたい! 周囲からチヤホヤされたい! というミーイズム・エゴイズム的な自己愛感情なのであった!(笑)


 ……このオチも万全なものだとは思われないし、100パーの肯定もできないであろう。


 しかし、究極的・根源的には我々アマチュア同人ライターのみならず、人間一般が持っている人間社会の中における表現欲求・承認欲求といったモノもコレそのモノだとまでは云わないけれども、そーいう虚栄心・見苦しい心情が微量になのだか膨大なのだかは意見がわかれるとしても、それ相応には存在していることについては認めざるをえないのだ。文章なんぞを世間に発表してしまうという行為もまた、そーいうことなのであった……。


 そう、人間とは実に見苦しい生きものなのである。あるいは、アマチュア同人ライターなぞという存在は実に見苦しい存在なのだ(汗)。そしてもちろん、そーいう心情をゼロにできるというのもまた、偽善であり欺瞞であり不可能でもあるのだ。


 よって、世の権力者なぞではなく、庶民である自身にもまた見苦しき虚栄心などがあることを重々自覚して、それをセーブする。もしくは、ゼロにはできないまでも減らそうとは努力する。あるいは、ベタには表出などせず、オブラートに包んだり、スマートに整形することによって、せめてリビドー(衝動・欲望)なり自意識丸出しスッポンポンといったところをキレイに制御して、よりマシで建設的な方向へと推敲・善導することで、少しでもの人格陶冶的な方向へと持っていくことも必要ではあるのだ。
Girlish Number Blu-Ray(ガーリッシュ ナンバー 全12話)

ガーリッシュ ナンバー:烏丸千歳(cv.千本木彩花)、久我山八重(cv.本渡 楓)、片倉 京(cv.石川由依)、苑生百花(cv.鈴木絵理)、柴崎万葉(cv.大西沙織)/今は短し夢見よ乙女
(了)
(初出・オールジャンル同人誌『DEATH-VOLT』VOL.76(16年12月29日発行))


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マクロスF(フロンティア)』(08年)#1「クロース・エンカウンター」 ~先行放映版とも比較!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080930/p1

マクロスF(フロンティア)』(08年)最終回評! ~キワどい最終回を擁護!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20091122/p1

マクロスΔ(デルタ)』&『劇場版マクロスΔ 激情のワルキューレ』(18年) ~昨今のアイドルアニメを真正面から内破すべきだった!?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190504/p1

『劇場短編マクロスF~時の迷宮~』『劇場版マクロスΔ 絶対LIVE!!!!!!』(21年) ~元祖アイドルアニメの後日談・長命SFシリーズとしては通過点!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220417/p1


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『SHIROBAKO』(前半第1クール) ~アニメ制作の舞台裏を描く大傑作爆誕

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20151202/p1

『SHIROBAKO』(後半第2クール) ~アニメ制作をめぐる大群像劇が感涙の着地!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160103/p1


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2015年夏アニメ評! 『がっこうぐらし!』『それが声優!』『アクエリオンロゴス

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20151006/p1(『それが声優!』は当該記事と同一内容)

2015年夏アニメ中間評! 『GATE 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』『六花の勇者』『おくさまが生徒会長!』『干物妹!うまるちゃん』『実は私は』『下ネタという概念が存在しない退屈な世界

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20150901/p1

2015~16年アニメ評! 『GATE 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』1期&2期  ~ネトウヨ作品か!? 左右双方に喧嘩か!? 異世界・異文化との外交・民政!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20211010/p1