『ラブライブ!』・『Wake Up,Girls!』・『アイドルマスター』 2013~14年3大アイドルアニメ評
『22/7』『推しが武道館いってくれたら死ぬ』『音楽少女』『Re:ステージ!ドリームデイズ♪』 ~アイドルアニメの変化球・テーマ的多様化!
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アイドルアニメ『ラブライブ! 虹ヶ咲(にじがさき)学園 スクールアイドル同好会』2期(22年)が放映開始記念! 『IDOLY PRIDE(アイドリープライド)』もBS日テレにて再放送開始記念! とカコつけて……。アイドルアニメ『IDOLY PRIDE』(21年)・『ゲキドル』(21年)・『22/7(ナナブンノニジュウニ)』(20年)・『推(お)しが武道館いってくれたら死ぬ』(20年)・『おちこぼれフルーツタルト』(20年)評をアップ!
『IDOLY PRIDE』『ゲキドル』・『22/7』『推しが武道館いってくれたら死ぬ』・『おちこぼれフルーツタルト』 2020~21年5大アイドルアニメ評!
『22/7(ナナブンノニジュウニ)』
(2020年冬アニメ)
(文・T.SATO)
(2020年8月11日脱稿)
召集令状(笑)が届いて遊園地の地下にあるヒミツ基地に集合するや、無骨な背広姿のオッサンを司祭(?)にナゾの壁から指令がくだり、集っていた8人の少女たちがアイドルユニットに任命されてしまう。
ドラマチックだともバカバカしいともいえる設定なのだけど、劇中キャラにもその趣旨のツッコミを入れさせることで違和感を緩和。
「コレはチャンスよ」と上昇志向に燃える娘もいれば、目立つことや浮ついたことが大キライで極度に内気で気弱でもある黒髪ショートの主人公少女は一度は去っていく。
そう、アニメの神様のイタズラか、同期の2020年冬季に放映された深夜アニメ『推しが武道館いってくれたら死ぬ』同様に、この娘は極度のコミュ力弱者で(ひとり)ボッチ気味のキャラとして描かれる。アイドルアニメも爛熟の極みである(汗)。
しかして、70~80年代までの1億総中流社会はとうに過ぎ去って、貧困母子家庭でコンビニのバイトをすることで家族を助けている彼女の日常が切ない。
自意識過剰の視線恐怖症なのだろう。黒髪を目元まで降ろして他人と視線を交わさずバックヤードでも誰とも喋らない。そのへんの機微に無頓着な同僚が「前髪上げた方が可愛いのに」とカラんでくるのも彼女には拷問である。
性格類型の違いによる価値観の違いココに極まれり。彼女の挙動をシャイさの現れとは取らずに気味が悪いと受け取った顧客のクレームにカコ付けて彼女はクビにされてしまう!――気味が悪いと受け取るヒトの方が多数派なんだろうナ。性格弱者の心がわからない外道どもめ!(爆)――
絶望に打ちひしがれて涙をこぼす彼女……。
なにか生活の足しになるものを。背に腹は変えられぬ! とばかりに先のヒミツ基地に飛び込み、この世の理不尽を訴えて「バカバカしいけど何にでもなってやる!」と自暴自棄にアイドルを志願する!
というワケでここまでの段取りを踏めれば、人前に出るのが苦手な少女がアイドルをやる説得力も出るというモノだ。
とはいうものの、本作には強烈なタテ糸がナイ。その後は8人のアイドルたち個々を各話の主人公扱いとして、技巧的なストーリーで魅せるというより、お仕事の過程で魅せる人間性を情緒豊かな演出で魅せたり、各個人の回想や過去話などで人物像を掘り下げていく……。なのだけど、コレがまたハズレがない良作ばかり。
本作はかの秋元康がプロデュースしたアイドルユニットを基に彼が作った簡単なプロットを膨らませた作品だそうだ。おそらく肉付けした側のスタッフたちの力量やセンスの方がデカいとは思うけど、コレまた傑作の誕生である。
『推しが武道館いってくれたら死ぬ』
(2020年冬アニメ)
(文・T.SATO)
(2020年8月11日脱稿)
『アイドルマスター』(11年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20150615/p1)・『ライライブ!』(13年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160330/p1)に始まるアイドルアニメの系譜に一応は入ると思う。多分(笑)。
しかして、主人公はアイドルではない。ローカルアイドルグループの一員を推すようになったヤンキーチックな金髪女子である。彼女はOL稼業もやめて地元のパン工場で仕事をしながら、節約して服装もジャージ一本槍となり、全稼ぎを「推し(おし)」に貢ぎ続けていくのであった!
推されているアイドル美少女がまたヤンキー女子とは対極的。極度に内気なコミュ力弱者で人前トークもロクにできない最下位人気というキャラ付け。そして始まる両者のディスコミュニケーションやスレ違い。
……ムチャクチャ面白い! 彼女とつるんでいるデブ眼鏡男子や痩せヤサ男子のサポーターも出てきて、そこでアイドルサポーターのオタクにアリがちなルックスや性格類型のリアリティーの担保も取ってはいるけど、良くも悪くも彼らが主人公であったならば絵的には華がナイし、性格劇的にも明朗には弾けなかったことであろう(汗)。
しかし本作では、カラッとしたオトコらしい胆力もあるヤンキー女子が夕陽に向かって
「大スキだぁーーー!!」
などと叫んでいてもナゼだか許せてしまう――少々イタいけど(笑)――。
夏の暑い日に行列したから汗かいてクサくなったという展開でもシャレとして寸止めとなるのである――コレが野郎キャラであった日にゃ(笑)――。
異性と交友するのではなく、ひたすらにアイドルを追いかけて推していく彼らオタの日々。たしかに愚昧かもしれない。社会問題に関心を持て! ボランティア活動でもして貢献しろ! たしかにその批判は正論である。彼らは人間の在り方としては二流三流かもしれない。
でも、殺人・強盗ほどの罪や悪でもナイだろう。別に安倍ちゃんやトランプが悪いワケではなく、3次元・この世というモノがもともと四苦八苦に満ち満ちた生きづらい世界、あるいは究極的には無意味で虚無の世界かもしれないのだ(爆)。だったら、死ぬまでのヒマつぶし・現実逃避として、何かに邁進したり熱中したりして心の空白を擬似的に埋めていくのも悪くはない!? むしろそれしかナイのだともいえるのだ!?(笑)
それだけでは「搾取(さくしゅ)」されているだけダと云うなかれ。本作のアイドルたちも潤沢なブルジョワでは決してナイ。この世界の片隅で束の間の「居場所」や「充足感」を得るための活動。そしてそのための歌やダンスのレッスン。ローカルアイドルたちも――そして我々も――アイドルオタとメタレベルでは同じ存在にすぎないのだ。
物語は次第にローカルアイドルたちにも焦点を当てていく。「虚栄心」・「成り行き」・「強烈な上昇志向」・「芸事の一種」。彼女らの動機も千差万別。メンバーたちの面倒見もよいセンター女子だけは完璧超人かと思いきや、彼女もまた別のアイドルグループではセンターの器でなかったことに対する劣等感があることも明かされて……。
主演のヤンキー女子を演じるのは、昨19年の『ダンベル何キロ持てる?』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210418/p1)がデビュー作で色黒のギャル少女で主演も果たしたハーフのファイルーズあい。テンション高くてブチ切れた演技も実にウマい――地に近い? この作品がナチュラルだから演じやすい?――。
原作はベタなオタク系というよりかはややハイブロウなマニア系とおぼしき『月刊COMICリュウ』連載のマンガだそうである。アイドルを推すオタをヤンキー女子に置換することで明朗さや喜劇性をゲットしつつも、オタとアイドルたちの心的リアルにも迫っている。日本のマンガの裾野は実に広いネ。
『IDOLY PRIDE(アイドリープライド)』
(2021年冬アニメ)
(文・T.SATO)
(2021年4月27日脱稿)
タイトルからして「また出た!」のアイドルアニメ。
だが、高度で抑揚もある作劇と繊細デリケートな心理描写で実に面白い。のみならず、変化球の設定も投入されており、かといってミーハー的にブヒブヒと萌えることもできる、一粒で二度オイシい作品に仕上がっている。
元祖『アイドルマスター』にはじまる女性アイドルグループをマネジメントする若手男性プロデューサー1名という体裁。
しかし#1は、かの神田沙也加(かんだ・さやか)が声をアテている弱小芸能プロの看板女性アイドルと彼女のプロデューサーを務めることになるマジメな男子クンが、同じ高校の同級生同士であった事実&日常を淡々とつづっていく。
男子クンの地味でクールだけれども誠実な人柄。そんな彼にほのかな好意を抱いて、少女は彼を将来のプロデューサーに任命する。のちにアイドルとなった彼女をプロデュースする立場になった男子クン。
だが、#1のラストで当の彼女は事故死を遂げてしまう! ヒエーーーッッッ! ――ネタバレなのだが、#2以降も作劇的なテンションは落ちないので大丈夫!――
そして、物語は#2からリスタート。数年後、先の少女の妹ではあるも性格はマジメで張り詰めてドコか陰もある印象な黒髪ロングの美少女がこの芸能事務所に自らを売り込んでくる。
そこに別用で金髪ロリ系の美少女も紛れ込む。そこでついでに披露した金髪ロリ少女の歌声。それは先に夭折した黒髪ロングの姉とそっくりの朗々たる本格的な歌声なのだった!
驚嘆する黒髪ロングに若手プロデューサー。止まっていた時間がいま動き出す。このふたりを中核に据えれば物事がウマくいくかもしれない! と視聴者にも予感させてくれる見事な導入部でもある。
とはいえ、美少女アイドルアニメは美麗な作画・楽曲・ライブシーンがキモである。本作は一応ガチで当てに来ており、大金をかけて先に大所帯のアイドルグループを作って、しかもそれを「太陽」と「月」のモチーフで途中で2つに割ったり、なおかつライバルとなるアイドルグループを2つも作っている。
ヘタをすると設定の消化試合におちいりかねないような作品なのだけど、今は亡きアイドル少女への想い&因縁を有する男性プロデューサー・黒髪ロング・金髪ロリを中核・背骨として、そこに新メンバーが徐々に加入していくかたちを採ることで、最初からキャラが大量に出てきて誰が誰だか判らない! といった作品にはおちいってはいない。
途中加入組のキャラ設定も最初から作り込まれており、中堅アイドル声優・雨宮天(あまみや・そら)や、戸松遥(&スフィア)を配したライバルグループのリーダーたちにも亡きアイドル少女との因縁回想劇も織り込んで、単なる悪役やイヤミな役柄を超えていくどころか泣かせにかかってもくるのだ。
原案の三方のひとりはアイドルアニメ『ラブライブ!』の花田十輝(はなだ・じゅっき)。メイン脚本に90年代美少女ゲーム作家上がりで今やあまたの深夜アニメを手掛ける高橋龍也(たかはし・たつや)。キャラデザ原案も『えむえむっ!』(10年)・『天体(そら)のメソッド』(14年)・『レガリア』(16年)・『音楽少女』(18年)・『ガーリッシュ ナンバー』(16年)など丸くて柔らかくて可愛らしい描線が印象的なQP:flapper(キューピーフラッパー)。
終盤に至るや、ライバルグループも含めて新曲が各話で数曲も流されて、作画&モーションキャプチャーによるセル画ライクなCGによるカメラも周囲から360度グルグル回っていくライブシーンも連発。作画崩壊などもなく美麗さも保てているのを観てしまうと、予算が潤沢なのもよくわかる――回収できるのだろうか?(汗)――
本作最大の目印は、男性プロデューサーにだけ視認ができて会話もできるユカイな幽霊(!)として残留している先の今は亡きアイドル少女の存在である。
随分と奇抜でヘタをするとアイドルたちの日常やライブシーンと乖離してしまう要素ではある。しかし、彼女自身にもツカみかねている何らかの未練をナゾに、実は彼女の事故死と同時に心臓移植を受けていた金髪ロリ少女との接点なども作ることで関係性を増やしていくあたりはウマい。
とはいえ、彼女の遺志の尊重だけでは、現世に生きる少女たちの主体性はドコにある!? といったツッコミの余地があるものにはなってしまう。終盤はそこにも焦点を当てていき、亡きアイドルの存在に過剰に呪縛されずに自分たちのアイデンティティーを構築することが目的されていく。
しかして、善悪はあざなえる縄のごとし。そのことに喜びつつも、それは同時に亡きアイドル少女の衰弱・消滅・別離も予感させていき……。アイドルグループ勝ち抜き戦の末に感動&涙のクライマックスも訪れる。
東日本大震災後の地を舞台にしていたアイドルアニメ『Wake Up, Girls!』(14年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20150615/p1)などよりもある意味ではクラくて陰がある作品だともいえるのだが、その後に隆盛を極めて美少女ゾンビたちが佐賀県のローカルアイドルまで務めるアイドルアニメ(笑・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20230326/p1)なども通過した今となっては、それが弱点には見えずにコレもアリであり、むしろ個性やウリにも見えてくるのだ。ストーリーやドラマ面でも骨太の良作だったと私見する。
『ゲキドル』
(2021年冬アニメ)
(文・T.SATO)
(2021年4月27日脱稿)
2021年冬季には本作&『IDOLY PRIDE』とアイドルアニメが2作も登場! しかも、両作ともに変化球だけど、中身は濃ゆい良作でもある。
本作の主眼は「演劇」。演劇活動メインで歌唱もする美少女アイドルたちが、オタの聖地のひとつである池袋の東口や西口を舞台に活躍する深夜アニメである――昨2020年秋の深夜アニメ『池袋ウエストゲートパーク』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220910/p1)のような不良性感度は、当然のことながら皆無だけど――。
両眼がやや離れた垂れ目ロリ系で、頭身も低めでも端正なキャラデザの娘たちが可愛い。記号寄りでも最低限のデッサン骨格表現はあって、胸板がウスいツルペタ貧乳体型は平均的な日本人(黄色人種)女性のそれに近いのだという理論武装の肯定はできるやも(笑)。
銀髪ショートの無口な少女型演劇ロボットも登場。さらには世界各地の都市で同時多発で発生した超常災害後の世界でもあるらしい!? 『IDOLY~』における幽霊登場どころではない! コレでは近未来SFになってしまって、その料理法には危惧を抱いたけど……。
ギャル系女子がスクールカーストでは最上位で、アイドル系女子が劣位に置かれるのは90年代以降のことだけど、本作も清純派の整った黒髪ショートの自信なさげでオドオドとした小柄童顔少女が主人公。ややお文化的なモノには興味があったかお芝居や歌や踊りには関心を示してもいる。
そんな彼女が池袋の小劇場で演劇の練習光景を観劇して、即席で1シーンのセリフを暗記して堂々とお芝居を披露するや、その場の空気が一変するのは、フィクションのお約束だけれども名シーンには仕上がっている!
もちろん、ご都合主義的な展開なのだけど、物語としてはその方が劇的でツカミも強いし、彼女が主人公で初心者でも才能があって、この娘であればイケる! 今後の困難も切り抜けられそうだ! と思わせることこそが肝要なのである。
彼女の入団後は、同様に一見はロリっぽくても演技指導では実にキビしい副主役少女を活躍させて、この少女のことも魅力的に描いていく。ところが、彼女は着(衣)エロのジュニアアイドル出身(爆)で、悪気はなく撮影に罪悪感すら抱いていたかつての真面目なファンが観劇に訪れたことから、やや病んだかたちでのフラッシュバックで彼女の人物像も肉付け。
プチ男装の麗人やツインテのメガネっ娘に黒髪ロングのメイドちゃんなどの脇役団員たちに、主人公少女の級友でもあるドリルツインテールの娘などは、記号的なルックスの助けで性格を表現してはいるけど、相応に魅力的である。
そして、アイドルアニメ『Wake Up, Girls!』における弱小ローカルアイドルvs大手AKBもどきパターンで、本作でも小劇場vs大劇場の構図を導入! 大劇場の花形娘は主役たちが所属する小劇場出身でもあり、副主役少女vs花形娘との因縁、花澤香菜演じる松葉杖をついた小劇場の座長vs大劇場の男性プロデューサーとの浅からぬ付き合いと確執劇も明かされて……。
演劇アニメといえば、SKD松竹歌劇団ならぬ帝国華撃団に身をやつした美少女たちが、架空の大正時代を舞台にスチームパンクSFな蒸気機関で動く中型ロボットに搭乗して悪と戦う90年代のゲーム&TVアニメ『サクラ大戦』をロートル世代は思い出す。
大局としてはリアリズムの方向で進化してきた日本アニメだけど、その真逆で異物ともいえる「歌」や「演劇」もヤリ方次第で、非常に訴求力が強いことは、この『サクラ大戦』や『マクロス』シリーズに昨今のアイドルアニメ人気、ペンライトを振って応援したくなるキャラクター性、脳内でリフレインする中毒性がある劇中内歌曲の効用などで証明されている。
索漠とした味気のない日常の街中の風景からイザ一転、中古ビル内の小舞台上や小ギレイで近代的な建築物内の大舞台上で、観客たちに向かってその全身を使って大声で張り上げてみせる、ナチュラルではなくワザとらしさと紙一重の大演技や大歌唱! それによって、たしかに非日常的で劇的な異空間が出現することも事実なのだ。
筆者も『美少女戦士セーラームーン』ミュージカルや2.5次元舞台を幾つか観劇した程度の浅学にすぎないけど、2~3時間程度の舞台劇にドラマ性やテーマ性をも織り込みつつ、心情・内面はエモーショナルな歌曲に託して、舞踏的なアクションでヤマ場を作る舞台を実地に観劇してしまうとハマってしまう理由もよくわかるのだ。2.5次元舞台が隆盛を極めているのもムベなるかな。
中盤からは主役少女が大災害で両親&双子の妹を亡くしていたトラウマも発覚。その傷を埋めるためか彼女は銀髪演劇ロボに妹の名を付ける。そして自我が目覚めたようになる演劇ロボの挙動。
このあたりまでの展開はイイと思う。しかし、終盤は演劇にカラめようとしつつもSFスペクタクルに寄りすぎてしまってウ~ム。もっとミニマムに演劇公演の成功などで終わっても良かったのでは? 終盤以外は評価するし、好悪の次元ではスキな作品なのだけど。
『おちこぼれフルーツタルト』
(2020年秋アニメ)
(文・T.SATO)
(2021年1月22日脱稿)
また出た、美少女アイドルアニメ! 今度は売れないB級アイドルだけど、最後には華々しいステージへのブレイクが待っているという感じでもない(笑)。C級芸能プロダクションの木造下宿で5人の美少女たちが暇を持てあまし、グダグダしているといった印象。
・ピンク髪の主人公
・元有名子役で背が伸びないまま没落したロリチビ劣等感少女
・女子高生なのに元ミュージシャンの金髪小柄少女
・アイドルなのにモデル並に長身巨乳のおっとり女子
・ピンク髪の主人公に懸想する途中加入の黒髪ロリツインテ
イイ意味で記号的なコテコテの性格付けをされたキャラたちによる、イイ意味でお約束の様式美的なやりとりを楽しむといった作品だ。
原作は萌え4コマ漫画誌『まんがタイムきらら』系。同誌の信者の皆さまには非常に申し訳がないけど、その平和な世界観の作品群が下世話な筆者にとってはタイクツで、眠気をもよおすことも多々あるのだけど(汗)、この作品は随所にキレ味のよいギャグも入るので、個人的には楽しく観られる。
もちろん、アイドルといってもガツガツと練習したりしない。そも練習する場所がない。下宿での共同生活での節約した炊事・家事・洗濯が主題だったりもする(笑)。
彼女たちは美少女アイドルアニメの常識に反して男女共学の学校に通う。しかし、級友たちは誰も騒がない。野郎にナンパもされない。彼女たちも好ましい男子に対してイロ目も使わない。どころか全員、友達が少なくて(ひとり)ボッチだともいう……。
それだけで我々オタク男子は感情移入する(笑)。リアルに考えれば、可愛い女の子たちに野郎が声をかけないということはアリエないとは思うものの、美少女アニメとしては実に正しい(爆)。
てなワケで、栄光の勝利は来ないし志も低いけれども、ギャグあり劇中歌もアリで、まぁまぁ楽しめる。
『おちこぼれフルーツタルト』
(月曜22時30分 TOKYO‐MX他)
(文・久保達也)
芸能プロダクション・ラットプロダクションの寮・ネズミ荘に住む売れない元子役・売れないミュージシャン・売れないモデル、そして岡山県の田舎からアイドルになることを夢見て上京してきたばかりの主人公少女が、会社の業績不振による寮の取り壊しを阻止するためにアイドルユニットを結成し、女性マネージャーが急遽立ち上げた起死回生企画の5分バラエティ番組『おちこぼれフルーツタルト』に1年間出演することで莫大な借金の返済をめざす。
原作が芳文社(ほうぶんしゃ)の4コママンガ専門誌『まんがタイムきららキャラット』で連載開始となったのが2015年であることから、この設定は学園の廃校を阻止するために主人公が結成したアイドルグループの奮闘と成長を描いた『ラブライブ!』(第1期・13年 第2期・14年)のモロパクリであり、そのパロディとして描かれた感が強い。ただし、
・ピンクのロングヘアの主人公・桜衣乃(さくら・いの)
・パープルのロングヘアを頭頂部でツインのお団子状にまとめた身長140センチの高校2年生(汗)の元子役で女優をめざす関野ロコ
・金髪ポニーテールにヘアピンを多数付けたミュージシャン・貫井はゆ(ぬくい・はゆ)
・ベージュのショートボブヘアで超巨乳な身長170センチのモデルだが、グラビアの仕事が苦手な前原仁菜(まえはら・にな)
の4名で結成されたアイドルユニット・フルーツタルトのキャラクターデザインは、同時期にスタートした本家のシリーズ『ラブライブ! 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』(20年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220403/p1)のメンバーよりも個人的にはカワイイと思えるほどに正統派のアイドルとしての印象が強く感じられる。
また、岡山の実家周辺と同じく野菜の自販機があったために、衣乃が「ここってホントに東京ですか?」(汗)とマネージャーにたずねたほどに、東京っぽくない実在する東京都小金井市を舞台としていることから、ギャグ作品のワリには背景描写が実にリアルな点にも目を惹(ひ)きつけられる――衣乃が乗る新幹線が橋を渡って画面手前に疾走する短いカットの臨場感にも驚いた――。
みんなが売れないために、
・もう何ヶ月も朝昼晩とカレーを食べているとか(笑)
・「パンツ3枚で野口(英世)――のぐち・ひでよ=千円札の肖像画(しょうぞうが)――さん」もするとの理由ではゆがずっと穴の開いたパンツを履きつづけているとか(爆)
・衣乃が高校入学時の自己紹介で「がんばって借金、返します!」とやらかしたりとか(大汗)
・同級生たちを見て「みんなおシャレでキレイで芸能人みたい」と感激するなど(大爆)
ガケっぷちアイドルたちの本来ならば笑えないハズの日常が爆笑演出で描かれていく。
だが、JR東小金井駅前で自分たちのライブの宣伝ではなくスーパーの特売チラシを配るハメとなって、アイドル活動自体にやる気がなかったロコ・はゆ・仁菜が、「先輩たちと違って自分には何もないから」と主張する衣乃が通行人にひたすら笑顔をふりまいてチラシをすべて配り終えたことで、「アイドルの魅力がわかった気がする」と心の変遷(へんせん)をとげたり、先述したように高校デビューで失敗した衣乃に同じクラスとなったはゆが「高校で初めての友達、はゆじゃダメかな?」と声をかける描写などには、それこそ実はドラマ性も高かった先の『ラブライブ!』並みの高いドラマ性が感じられたものだ。
また、女子ばかりの共同生活が描かれていることから、ロコがいつも仁菜の巨乳を枕にして寝ている(爆)といった、ほかのアイドルアニメでは意外に描かれることが少ない百合(ゆり)的な要素もあったりする。
ロコは低身長に対するコンプレックスのみならず、幼少のころからCMキャラクターとして
などというイメージソングを7年間も歌わされてきたことがトラウマとなっている。しかし、そのCMを見てロコにあこがれたことで芸能界に進む契機となった衣乃が、たとえまともな仕事に恵まれなくとも「ロコ先輩のお世話ができるだけで幸せ」と語るほどのいいコぶりを見せていることも好印象だ。
萌え4コマ漫画が原作だとはいえ、決してあなどれない作品かと思える。
『IDOLY PRIDE』にて影の主人公ともいえ早逝アイドル・長瀬麻奈(ながせ・まな)を演じられた、神田沙也加さんのご冥福をお祈りいたします。
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