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文豪ストレイドッグス ・文豪とアルケミスト ・啄木鳥探偵處 ~文豪イケメン化作品でも侮れない3大文豪アニメ評!

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 天下の坂本浩一カントクによる実写映画版『文豪ストレイドッグス BEAST』(22年)の公開は終わったけど、同作にカコつけて……。深夜アニメ『文豪ストレイドッグス』(16年)・『文豪とアルケミスト ~審判ノ歯車~』(20年)・『啄木鳥探偵處』(20年)の3大文豪アニメ評をアップ!


文豪ストレイドッグス』・『文豪とアルケミスト ~審判ノ歯車~』・『啄木鳥探偵處』 ~文豪イケメン化作品でも侮れない3大文豪アニメ評!



文豪ストレイドッグス

(2016年春アニメ)


(文・T.SATO)
(2016年4月28日脱稿)


 明治・大正・昭和の文豪たちがオタク女子受けするイケメンキャラになって、その文学作品にまつわるナンチャッテ的な超能力「人間失格」だの「細雪(ささめゆき)」などを駆使して(笑)、武装探偵社を名乗って戦う……というものらしい。


 主人公の青年は、髪の毛の色がウスい灰色であるという毎度おなじみの記号的表現で、気の弱さ・押しの弱さを現している、その名も中島敦(なかじま・あつし)!
 我々オッサン世代だと高校2年の現代国語の教科書に載っていた『山月記』(1942年・昭和17年・ISBN:4101077010ISBN:4003114515ISBN:4041103029)の作者として、個人的にはとても印象に残る――今でも載ってるのかしら?――。
 健全であるべき教科書の題材にあるまじき、歴史時代の中国を舞台に挫折・憤懣・焦燥・自己嫌悪にかられた青年が山野で「虎」に変化して人外の世界へと去ってしまう……という、往年のSF作家・平井和正http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160521/p1)の初期の作品群のような非現実的・伝奇SF的なアレだ。
 ハズかしい若気の至りを書くと、往時その憤懣・焦燥の心情に非常に共感・同情して、「ここにオレがいる!」と我が事のように感じたものだった(汗)。


 このほとんど無職・ホームレスだった主人公青年がスカウトされて新入りの見習いとなるところから、物語ははじまる。彼の超能力は土壇場になると巨大な白虎になることで……。って、そのまんまやないけ!(笑)


 で、携帯電話が出てきたり、近代的なアパートが出てくることから、舞台は文豪たちが活躍した昭和の前期~中期ということでもないらしい? 彼らの生業(なりわい)はあくまでも作家であり、そのウラにおいて武装探偵をやっている……というワケでもないようだ? 少なくとも完成フィルムだけで見れば、そのように見える。
 ウ~ム、それでは、「文豪」というタイトリングから連想される、レトロモダンな情緒・風情が出てこなくて、名前倒れでもったいないなぁ。


 本読みオタクの好事家ならばご存じ、書籍『文豪たちの大喧嘩』(03年・新潮社・ISBN:410384504X 12年にちくま文庫化・ISBN:448042976X)などにも詳しい、文壇・サロン・作家集団における、人間関係の好悪・相性・理念の相違などから来る派閥やムダな闘争、前近代的な師弟(舎弟?・笑)関係から来るモラハラパワハラなどのゴシップの数々。
 クラスの中であろうが、ママ友の集団であろうが、我々オタが住まう趣味の世界であろうが、オモテの会社の世界ですらもが、漫画『課長島耕作』シリーズ(83年~)に90年代後半の漫画『重役秘書リナ』(96年)などのように、人間が集団になると人間関係の澱や濁り、ドロドロが生じてくるのはドコでも同じだナ、とつくづく思う。
 その愚行も含めて達観して愛すべき人間賛歌と捉えるか、シリア内戦・難民問題などと比すれば生命の危険もない万分の一の取るに足らない「コップの中の嵐」と捉えるべきかは悩ましいところではあるけれど(笑)。


 当時重鎮の作家・佐藤春夫に対する若輩の太宰治の女々しくてキモい執着など、往年の「文壇」それ自体が物語にしやすいネタの宝庫に見えるので――現在も総合雑誌では日本でダントツの発行部数を誇る月刊誌『文藝春秋』も創刊当初は今は亡き雑誌『噂の眞相』のような文壇ゴシップ雑誌だったそうである――、そのへんをBL(ボーイズ・ラブ)的にアレンジして(笑)、「好いた・惚れた・イヤよイヤよも好きのうち」を描いているのに違いない!? と勝手に妄想を膨らませてしまっていた筆者が悪かったのだろう(汗)。


 序盤の展開だけに限定すれば、スカしたイケメン青年たちによる単なる異能バトルものに見える。
角川文庫文豪ストレイドッグスコラボカバー6冊セット

文豪ストレイドッグス 第1巻 限定版 [DVD]
(了)
(初出・オールジャンル同人誌『DEATH-VOLT』VOL.74(16年5月1日発行))


『文豪とアルケミスト ~審判ノ歯車~』

(金曜25時23分 テレビ東京他)
(2020年春アニメ)


(文・久保達也)
(2020年5月24日脱稿)


 「本の中の世界」を破壊する「侵蝕者(しんしょくしゃ)」なる、目的も正体も不明なナゾの存在によって名作文学が次々と改変され、人々の記憶からも消滅してしまう!
 これを阻止せんと国定図書館に派遣された「アルケミスト」なる特殊能力者が、実在した「文豪」を現世に転生させて、「侵蝕者」と戦う実に壮大なバトルファンジーであり、DMM GAMES(ディーエムエム・ゲームス)で2016年11月から配信中のゲームを原作とするアニメだ。


 ナゾの組織・タイムジャッカーが仮面ライダーの歴史を改変することで、元の変身者が仮面ライダーとしての記憶や能力を失ってしまう『仮面ライダージオウ』(18年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191020/p1)は、ひょっとしたら本作を参考に考案されたのか?(笑)


 第1話は筆者個人も若いころに読みあさり、その自己破滅型の作品群や作家像をいまだに敬愛している太宰治(だざい・おさむ)の代表作『走れメロス』(1940・昭和15年)が題材となっている。
 『走れメロス』の「本の中の世界」が改変されようとしている事態が進行する中で、青髪のロン毛を束ねて一見は黒と金の燕尾服(えんびふく)に見えるが実は和服だというオシャレな格好をしてゲタを履いている芥川龍之介(あくたがわ・りゅうのすけ)と太宰の出会いが描かれた。ちなみに、芥川は太宰が実際に尊敬していた文豪でもあるのだ。


 太宰といえば左手で頬杖(ほおづえ)をついて物憂(ものう)げな表情でどこか遠くを見つめている写真が有名だ。しかし本作の太宰はかわいい赤髪のお坊ちゃん少年風で、頭頂部にはアホ毛がそびえ、不敵さと気弱さが混じったような目つきをしている。
 これでは太宰にまったく似てないだろ! と思ったが、もちろん本作の「文豪」たちは女性オタク向けに全員がイケメンキャラクターへと改変されていることは承知している(笑)。
 『走れメロス』の世界の中では、太宰は少年の面影を残した主人公の若者・メロスに転生して、古代ギリシャ&ローマ風の白い衣装を着用することになるので、その点でも違和感はなかった。


 『走れメロス』という作品は、人間不信から多くの民を処刑しているディオニス王を暗殺しようとして捕らわれたメロスが処刑を宣告されるも、妹の結婚式を挙げるために3日間の猶予を求めて、その間は親友のセリヌンティウスを人質として王に預けていたメロスが、数々の災難に巻きこまれるも約束どおりに戻ってきたことで、ディオニス王がその行為に感心して改心し、メロスとセリヌンティウスを釈放する物語だった。


 この「信頼の物語」を「裏切りの物語」へと改変するために(爆)、太宰も師事していた「文豪」の佐藤春夫芥川賞の選考委員だったものの、候補作となった太宰の『道化の華(どうけのはな)』(1935・昭和10年)が選ばれなかったことを「裏切り」だと感じたという太宰の実話を「侵蝕者」が悪用する。
 佐藤を親友・セリヌンティウスに転生させて、太宰=メロス自身の「裏切り」で、太宰にとっての憎っくき佐藤をディオニス王による処刑に追い込もうとするのだ!
 この実に巧妙なやり口は、本作の文芸陣が文壇ゴシップやスキャンダルの史実を知っているがゆえの知的遊戯の最たるものだろう。


 だが、佐藤の「(太宰は)もっとやれるハズ」だとの想いを知った太宰によって、ディオニス王に化けていた「侵蝕者」の野望は打ち破られる。太宰もメロスの姿から赤いマントを翻(ひるがえ)すカッコいい騎士へとナゼだか変身! 猛牛型の巨大怪獣と化した「侵蝕者」を宙高くからカマを振りおろしてブッた斬る! このヒロイックなさまは、太宰と佐藤の「信頼の物語」のクライマックスとしても最高のカタルシスにあふれていた。


 太宰の『走れメロス』の「本の中の世界」に潜入した芥川も、自身の代表作『蜘蛛の糸(くものいと)』(1918・大正7年)における「蜘蛛の糸」(笑)をまさに特殊能力で駆使して、太宰ことメロスの帰還を阻(はば)んでいた激流を渡ったものの、メロスを蜘蛛の糸で縛って激流へと突き落とす一方で(爆)、メロスが佐藤ことセリヌンティウスを処刑しようとしたその瞬間に、颯爽(さっそう)と登場する姿も実にカッコいい!


 また、ラストで正体を知って驚く太宰に、「アレ? 云ってなかったっけ?」などと終始スットボケた感じの芥川と太宰によるボケとツッコミのやりとりも楽しい。図書館の館長代理が実に知的な顔をした「猫」の姿をしているのも、猫好きにはたまらない。



 なお、館長代理は「侵蝕者」と戦う動機を、「本や文学は人の人生を豊かにするために欠かせないものであり、それがなくなれば文化が廃(すた)れて人類史自体が途絶えてしまう」からと語っていた。


 周知のとおり、2020年現在の世界は新型コロナウィルスに侵蝕されているが、同年2月26日に安倍晋三(あべ・しんぞう)首相が大規模イベントの自粛(じしゅく)を要請して以降、映画・音楽・演劇といった文化・芸術分野の業界は大損害を被(こうむ)った――なお、『文豪とアルケミスト』もコロナの影響で放映が2週休止となり、第2話と第3話が再放送された――。


 これらの惨状に多くの作家やミュージシャン、俳優や演出家などがネット上で支援を求めているが、それらに対して批判をする者もまた多い。


 数々の暴言や失言で有名な作家・百田尚樹(ひゃくた・なおき)は、


「作家みたいな職業は、生きるか死ぬかの時代には必要ない」


などと、支援を訴える劇作家や演劇人を批判するツイッターリツイートするかたちで発言している。


 これとは対照的に、全国の小規模映画館を守るために立ち上げられたミニシアターエイド基金の賛同者のひとりで若手女優の橋本愛は、


「かつて体こそ生きていたが、心の息の根は止まっていた私は映画館しか居場所がなかった」
「文化や芸術は死んだ心を蘇生(そせい)させることができる」


ともコメントしている。


 もっとも、むかしのマルクス主義に基づく正統派の左翼は、


・「下部構造」(生産・労働・経済)こそが本質で、それこそがプロレタリアート(労働者)的なものである
・「上部構造」(文化・芸術・文学)ごときは、プルジョワ(富裕者)的な虚飾・虚栄にすぎない
・「下部構造」(物質・経済)が「上部構造」(精神・文化)を規定する
・「下部構造」の歴史的な変化が主体となって、「上部構造」は変化していくのだから、「上部構造」は相対的なものなのだ
・よって、「上部構造」ではなく「下部構造」を、「消費」や「虚業」ではなく「実業」としての「生産」「労働(者)」こそを重視・尊重せよ!


などといった主張をしていたものであった。しかし、2000年前のむかしにイエス・キリストは、


「人はパン(つまり、下部構想や生産・労働)のみにて生きるにあらず」


とも語っている。


 どちらにも「理」がある見解ではある。もちろん、「文化」とは人間にとって大切な存在ではある。そのうちの最良のものは時に人の心をも潤(うるお)すものだろう。


 しかし、「人命」との天秤にかけたときにはどうなのか? 「アリ」と「キリギリス」はどちらがエラいのか? やはり、軽々には決められない。


 理想は双方を同時に肯定してみせることである。しかし、二者択一を迫られるような極限状況にはおいてはどうするべきなのか?


 1960年代のフランスの実存主義の哲学者にして作家でもあったサルトルは1964年に、


「飢えた子供たちを前にして、文学は何ができるのか?」


といった提言までして、自己批判のかたちでこの問題に真剣に懊悩した。餓死寸前にあるアジア・アフリカの民や子供たちに対しては道義的に申し訳がない。我々は先進国に住んでいるだけで強い「通貨」の力で途上国や最貧国から安く買いたたくことでの搾取(さくしゅ)に加担して、世界的なスケールで見れば豊かな生活を送っているのであり、相対的にはブルジョワ・悪ですらある。青年の実存的な悩みなども実はゼイタクで小(プチ)ブルジョワ的なものでしかなかったのかもしれなかった……などといった趣旨である。同名の書籍も発行されているが、


「作家たるものは、今日飢えている二十億の人間の側に立たねばならず、そのためには、文学を一時放棄することも止むを得ない」


とまでの発言をしたのだ。にわかには論破しがたいロジックである。そして、それは当時の世界中の学生運動世代の若者たちやインテリに文学青年たちを足元から揺さぶりにかけたのであった。


 とりあえず、我々アマチュア同人活動なども含まれる「文化」の側も、エラそうにしてエリート的な態度などを取って、野蛮な大衆や労働者・経済人は我々にひざまづけ! とか撲滅されてしかるべきだ! などといった高慢な態度までは取らない方がよいだろう。


 「文化」の一端には携わっているという自負を内心では持ちつつも、「文化」の限界をも見極める。「文化」とは人間社会における「太陽」ではなく「月」のような「陰の存在」であることも自覚する。そして、「必須」と「不要」のあわいにあって矛盾にも満ちている「文化」の必要性を、深く静かにおごらずに訴えていく……
 食べるものにも事欠くような原始的な社会では「文化」すら誕生することはない。ある程度は社会が豊かになって少々でも余暇や可処分所得が生じてはじめて「文化」や「文化」産業も誕生するのだ。つまり、その成り立ちからして「文化」には必然的に虚業性・小ブルジョワ性・不純性がハラまれてもしまうのだ。そんな「原罪性」をも自覚して、自分たちこそ文化的エリートだ! なぞというような暴走をしないようにブレーキもかけて「文化」活動を継続していく。そして、常に我が身も低くして、自身よりも不幸で貧困な境遇にある世界中の弱者にも目配せしをしていく……


 このコロナ禍での「人命」と「文化」との関係性はそのような整理ができるのかもしれない。

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『DEATH-VOLT』VOL.86(2020年12月20日発行)所収)


『啄木鳥探偵處(きつつき・たんていどころ)』

(月曜23時 TOKYO‐MX他)
(2020年春アニメ)


(文・久保達也)
(2020年11月11日脱稿)


 東京創元社の創元クライム・クラブの1冊として1999年5月に刊行された故・井伊圭(いい・けい)氏によるミステリー小説が原作である(ISBN:4488012817)――のちに創元推理文庫として2008年11月21日に再販されている(ISBN:4488483011)――。
 現在進行形で連載中の作品ではなく、しかも原作者がすでに他界しているかなり以前の作品が、なぜ今ごろになってアニメ化されたのだろうか?


 本作は歌人として有名な石川啄木(いしかわ・たくぼく)と、その実在の親友で言語学者であまたの国語辞書の編者としても有名な金田一京助(きんだいち・きょうすけ)が副業ではじめた探偵業としてのウラの顔を描いたフィクションである。


 『文豪ストレイドッグス』(第1期&第2期・16年 第3期・19年)とか『文豪とアルケミスト ~審判ノ歯車~』(20年)とか、はたまた「文豪にして剣豪!!」をキャッチコピーにした『仮面ライダーセイバー』(20年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220116/p1)など、このところの「文豪ブーム」で啄木が主人公である本作が引っぱり出されたこともあるのだろう。


 実際に、啄木や金田一以外にも、


・時代劇『銭形平次 捕物控(ぜにがた・へいじ とりものひかえ)』(1931・昭和6年)の原作者として知られる野村胡堂(のむら・こどう)
・本作のエンディングテーマ曲にもなっている『ゴンドラの唄』(1915・大正7年)を作詞した歌人で脚本家の吉井勇(よしい・いさむ)
・詩人として有名な萩原朔太郎(はぎわら・さくたろう)
・先述した『文豪ストレイドッグス』や『文豪とアルケミスト』にも登場する小説家の芥川龍之介(あくたがわ・りゅうのすけ)


 彼らが明治~昭和初頭に各地で隆盛を極めていた、牛乳や軽食を提供する飲食店ことミルクホール・菊乳舎の常連客として登場して、啄木や金田一との交流が描かれる。


 だが、主役級の啄木と金田一以外の彼ら文豪たちは、実は井伊氏の原作にはいっさい登場せず、彼らはすべてアニメ版のオリジナルキャラクターなのだそうだ(爆)。


 そして原作小説では、啄木は故郷の岩手県から上京してきた妻の節子と母を養うために、副業として探偵をはじめることになるのだそうだが、アニメ版では第1話の冒頭で殺人事件に遭遇(そうぐう)した啄木が満点の星空を見上げながら


「探偵と歌人は似ている」


などとつぶやいて――「ホシ」(犯人)(星)を追うことが共通しているといった意味だろう――たまたまの成り行きで捜査に踏み入ったあとに、1話のラストで「啄木鳥探偵處(きつつき・たんていどころ)」なる看板を下宿の部屋の前にクギで打ちつけるといったオチとなっている。


 つまり、原作小説では探偵業をはじめる動機だったハズの重要人物である妻や母すらもが登場しないのだ。アニメ版自体は実に面白かったものの、原作ありきの作品でここまで改変してしまってもよいのだろうか?――まぁ、そもそもの原作小説自体が史実をゆがめたものだけど(笑)――


 しかも、本作でレギュラーとして登場する女性キャラは、啄木の下宿で女中として勤めて家賃を滞納してばかりの啄木をガミガミと怒鳴りつけてばかりいる低身長でツリ目の少女・加世(かよ)のみなのだ。そのほかに登場する女性キャラは事件の当事者かモブキャラくらいなのだ。


 これでは、かのアイドルアニメ『ラブライブ!』シリーズ(13年~・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160330/p1)やあまたの萌え4コマ漫画原作の美少女アニメなどに男性キャラがひとりも登場せず、男が出るとしてもモブキャラとしてであることを彷彿(ほうふつ)とさせる、その性別反転版である(笑)。


 原作小説では主要な男性キャラが啄木と金田一のみしか登場しないのに、先述した文豪たちや小説家をめざす文学少年といったキャラを大幅に水増しする一方で、原作小説の女性キャラを排除したこのアニメ版。
 本作は文明開化から40年を経た明治時代の末期に生きる、モダンでハイカラなイケメン王子さまたちの「生態」を楽しむための、れっきとした腐女子(ふじょし)向けの企画だと断言してよいのだろう。


・日本で初めて電動式エレベーターを設置した12階建ての塔として1890年(明治23年)に建造された浅草凌雲閣(あさくさ・りょううんかく)――1923年(大正12年)の関東大震災で崩壊した――を背景に広がる「出会い茶屋」が連なる街並みが、パステルカラーで淡く描かれている
・啄木のキャラクターデザインも、ベージュでウェーブがかかった髪型で紫の羽織に黄緑の袴(はかま)を着用しているイケメン青年キャラと化している


 こういったあたりも、女性オタクをターゲットとして明確に定めていることの象徴だ。実際の啄木は髪をキッチリと七三に分けていたというのに(笑)。


 ただ、個人的に注目してしまったのは、第1話のラスト近くで三日月が水面に浮かぶ川に沿って、紅葉が舞い散る道を常夜灯を頼りに歩いている、実に情緒(じょうちょ)にあふれる啄木と金田一の場面だ。
 啄木がその情緒をブチこわすかのごとく(笑)、歩きながらタバコを吸いはじめて、その白い煙が近くを走行している路面電車を覆い尽くすほどに描写されているのだ。
 しかも、すれ違った行商人風の男性はモロにその煙を浴びているのだが(汗)、金田一は啄木の迷惑行為を決してとがめはしない。


 実際の啄木は常に生活が困窮していたことから、「たかり魔」と呼ばれたほどに、友人知人からひんぱんに借金を重ねていたという。しかも、その大半は先述した浅草の出会い茶屋に通うことで、娼婦の手に渡っていたようだ(爆)。
 また、自身が強い影響を受けたり世話になった作家や友人をウラでは罵倒するなどしていたことから、啄木を「社会的に無能な男」(汗)と評価した声もあるほどだ。
 だが、そんなどうしようもない一面を持つ啄木を決して否定することなく、あくまで啄木の文学的才覚にホレれこんでいた金田一は、家賃の滞納で下宿を追い出されそうになった啄木を自身の蔵書をすべて売り払ってまで(!)支援をつづけたという。


 先述した歩きタバコの描写は26年というあまりに短い生涯にわたって周囲に迷惑をかけ通しだった啄木、そして良くも悪くも金田一との間に築かれた良好な関係性を端的に描き尽くした名演出だったといえるだろう。


 有名人や政治家がちょっとした不祥事を起こしただけで、その人間性や業績までをも完全否定するかのごとくネット上で徹底的に叩かれている現状からすれば、啄木の詩集『一握の砂(いちあくのすな)』(1910・明治43年)や『悲しき玩具』(1912・明治45年)すらも、現在では否定されかねないご時世であるかと思える。


 だが、我々も啄木を見る金田一のように、たとえダメ人間相手でも女性や子供にDV(家庭内暴力)を振るうような男などではないかぎりは、人物評価の際には寛容の心を忘れずに、多面的な視点でとらえるべきではあるまいか?


「ふるさとの 訛(なまり)なつかし 停車場(ていしゃば)の 人ごみの中に そを聴きにゆく」


 この歌を「君との友情がそれを詠(よ)ませた」などと金田一に感謝した啄木は、「僕は死んだらあなたを守りますよ」とまで口にするに至っている。……いや、それは死ぬ前から、いま生きているうちに守ってやれよ(笑)。
啄木鳥探偵處 トラベルステッカー (1)石川啄木

啄木鳥探偵處 トラベルステッカー (2)金田一京助
(了)
(初出・オールジャンル同人誌『DEATH-VOLT』VOL.86(20年12月20日発行)所収))


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『文スト』『文アル』『啄木鳥』3大文豪アニメ評!
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