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はたらく魔王さま!・魔王学院の不適合者・まおゆう魔王勇者・異世界魔王・百錬の覇王 ~変化球の「魔王」が主役の作品群まで定着&多様化!

『せいぜいがんばれ!魔法少女くるみ』『魔法少女 俺』『魔法少女特殊戦あすか』『魔法少女サイト』『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語』 ~爛熟・多様化・変化球、看板だけ「魔法少女」でも良作の数々!
『魔法使いの嫁』『色づく世界の明日から』 ~魔法使い少女にコミュ力弱者のボッチ風味を加味した良作!
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[アニメ] ~全記事見出し一覧


 2020年10月から大傑作深夜アニメ『はたらく魔王さま!』(13年)が再放送記念! とカコつけて……。


 「魔王」が主人公である作品群、『はたらく魔王さま!』(13年)・『魔王学院の不適合者~史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う~』(20年)・『まおゆう魔王勇者』(13年)・『異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術』(18年)・『百錬の覇王と聖約の戦乙女(ヴァルキュリア)』(18年)評をアップ!


はたらく魔王さま!』・『魔王学院の不適合者~史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う~』・『まおゆう魔王勇者』・『異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術』・『百錬の覇王と聖約の戦乙女(ヴァルキュリア)』 ~変化球の「魔王」が主役の作品群まで定着&多様化!

(文・T.SATO)

はたらく魔王さま!

(2013年春アニメ)
(2013年6月16日脱稿)


 西欧中世ファンタジー異世界を一度は征服した「魔王」を逆に追いつめた「女勇者」! 「魔王」は別世界へと逃亡し、「女勇者」もそれを追う!


 「魔王」と「女勇者」は魔力を失い、現代日本の新宿から京王線で3駅の笹塚駅近辺で、「魔王サタン」は青年「まおう・さだお」(笑)と名乗って六畳一間のアパート住まいのファーストフードのバイト店員、「女勇者エミリア」は「ゆさ・えみ」(笑)を名乗ってコールセンターのクレーム係に身をやつす。


 ウン、コレは面白い。多分、非オタがまちがって観てしまっても面白い。ツマラナイと云うヒトは極少では? 皆がホメるならいっしょにホメたくない当方でもイジワルな気持ちにならない。再視聴してみてもアキないし、引き込まれるし笑えるし楽しい。悔しいなぁ(汗)。


 まずは、残虐非道なハズの「魔王」とその「智将」1名が、その「世界征服」という野望・大言壮語とはウラハラに、現代日本では非力な凡人で、意外と善良で遵法精神にも満ちているというギャップ笑いをねらうアイデアの勝利。


 次に、それにウラ打ちを与える、畳みかけるような生活臭あふれるディテール描写の数々。区役所で戸籍と住民票を手に入れ、口座とカードを作って、不動産屋に紹介してもらい古びた安アパートの201号室、六畳一間に野郎ふたりで住まうことになる一連だけでももう笑える。


 日々の糧を得るため、履歴書を書いて求職活動し、冷蔵庫や洗濯機を買いそろえ。でも冷蔵庫にはキュウリとコンニャクしかなくて。


 #1冒頭の「魔王」率いる「魔族軍」VS「勇者」率いる「人間軍」の壮絶な大戦争との猛烈なギャップ・落差とも相まって、イチイチの細々とした生活ディテールが「お笑い」と化す。リアリズム的にはオカシいけど、「臥薪嘗胆」「泣きっ面に蜂」などの不遇にまつわる四字熟語やことわざを早々に使いこなすあたりもツボをつく――ドコで覚えた?(笑)――。


 加えて、働きだしたファーストフード店での仕事風景の数々。制服を身にまとい、愛想よくニコヤカさわやか笑顔で、


「いらっしゃいませ~」
「ご注文はお決まりでしょ~か?」
「○○、ワン・プリ~ズ」


 フライドポテトを手際よく調理し、ブラックペッパーの売上目標に邁進し。仕事に対しての見事なまでの真摯ぶりがそのままでギャグとなる。


 あまりの楽しさに、この#1のお仕事描写ノリで全話保つんじゃネ? とも思ったけれども。


 #1のラストで「女勇者」の成れの果てが登場! すわ対決バトル路線に変転か!? と思いきや。#2以降も笑かしにかかってくれる。


 「女勇者」が手にするのは聖剣ならぬ100円ショップで買った○○。以降も「女勇者」の憎めない短気なヒステリーぶりが炸裂。果ては痴話喧嘩とまちがえられて警察のご厄介になるわ、財布は落とすは、元「魔王」への日々のストーカー的監視のイチイチの空転ぶりも笑えて、「魔王」の方がなだめている「女勇者」とのやりとりは漫才の域に達する(笑)。


 「魔王」に恋慕する本作のメインヒロインでもある女子高生を身分不相応・不遜だ! となじりつつも、彼女からの相談の場に全身ユニクロで行ってはダメだ! とヘソクリを出す「智将」、彼女のおめかしの意図を見抜いている「女勇者」の俗っぷりにも吹く(笑)。
――でも国道沿いの「ファッションセンターしまむら」でママに買ってきてもらうなら、ユニクロで断然イイと思うぞ、若いオタ諸君。結婚適齢期をすぎた加齢臭漂う本誌ライター陣はもう気にする必要もナイけどナ(汗)――


 中盤では異世界から新たな刺客が出現して、笹塚駅近辺で宙を舞い魔法を駆使する超絶バトルを繰り広げてスペクタクル感を味あわせてくれもする。


 だが、そんな彼らの戦いの舞台となる現代東京を綿密に描いた背景美術は、ビルの壁や屋上や町並に「あるある感」満載な企業やアパート・マンション経営(笑)などの広告群で満たされて、壮絶バトル&シリアスな会話の応酬を常にナンチャッテ的におちょくりにかかってくる。


 ナニこの多幸感あふれる作品世界&物語は。


 評論・感想オタクが作品世界を批評的に解題して、そこに社会や人間の時代性や縮図を読みとるような行為(笑)などは、この作品に関しては一切不要!(多分) ストーリーを物語ること、キャラクターたちが自走することそれ自体の楽しさに満ちあふれてもいる。


 異世界ではあまたの生命を奪ってきた「魔王」が、現代日本で善人だからといって許されてイイのか!? というツッコミをなぜだか想起しにくいあたりが、壮絶なようで寸止めに留めた#1冒頭の大戦争描写の意識的な演出の結果なのか、偶然による天の配剤なのか、両者の混合ならばその比率などから作劇の巧拙の法則性が垣間見えないものなのか? と個人的には気になってくるけど、それが判れば創作する側も批評をする側もとっくに苦労はなくなってるわナ。


 「魔王」の過去の残虐な所行ゆえに本作を倫理的にウケつけない、という潔癖な意見もあってイイし、そーいう御仁も個人的にはキライじゃないけど――とはいえ劇中でもそーいう倫理的なツッコミやそれに対する言い訳がナイわけでもない――、そんな彼らへの反駁・擁護の言葉まではさすがに持ち合わせてはいないけど、そこをヌキにすれば爽快作だと思うのだ。
はたらく魔王さま!

ZERO!!

ZERO!!

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.57(13年6月23日発行))


異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術

(2018年夏アニメ)
(2018年8月2日脱稿)


 異世界で「勇者」が冒険して「魔王」を倒します! という正統派のファンタジーは絶滅したのか!?


 国産ファンタジーというジャンルも爛熟の果てに、


・本来は打倒されるべき「魔王」が、名のみ「魔王」のインテリ爆乳女魔王で「勇者」と協力して異世界に善政を敷こうとしたり(『まおゆう魔王勇者』(09年・13年に深夜アニメ化))
異世界から逃げた先の現代日本では四畳半住まいでファストフード店員をやってて結構イイ奴だったり(『はたらく魔王さま!』(11年・13年に深夜アニメ化))
・ゲームの世界に閉じ込められたオタクのゲーマーが寛大で公正な君主としての「魔王」として振る舞ったり(『オーバーロード』(10年・15年に深夜アニメ化))


 本作もそーいう一連で、3次元ではヒトとしゃべるのが苦手なニートでひきこもりの青年が、ゲームの世界の中(?)に「魔王」として召喚されるも――その顔面も体型もただの人間の青年――、両手に美少女で内心ウハウハしつつ、しかして「魔王」の立場上、キョドったり浮き足だったりを悟られるワケにもいかずに、「魔王」の威厳を込めた低音ボイスでトークし続けるというモノ(笑)。


 「魔王」と最初にトリオになるのは、「魔王」を召喚して魔法で奴隷にしたハズなのに、「魔王」のチート属性で奴隷化魔法がハネ返されて(爆)、自分たちの方がニコニコ笑顔で服従する「奴隷」(汗)になってしまったという美少女キャラふたり。両人とも顔がヨコに広い系で両眼の位置も顔面中央より下部にあるようなオボコいロリ系のキャラデザだ。


 ひとりはメンタルも体型もユルい金髪ロングの爆乳エルフちゃん。もうひとりは黒髪ロングの貧乳ちゃん。西欧中世風の城壁都市内の宿屋で、何事もなく健全な一夜を明かした末に朝、目覚めると左手には隣で眠る爆乳ちゃんのオッパイが、右手には貧乳ちゃんのオッパイがおさまっている。ジャンル作品お約束のいわゆるラッキースケベ描写で、この作品の志の高さが奈辺にあるかが忍ばれる。
 「魔王」の左手が意思に反して、眠りこける爆乳ちゃんの右乳から離れられず、何度も何度も五指だけをやわらかく埋没させる柔らかさ&弾力感を両立させた名作画は、原画マンの才能のムダ使いだともいえるけど(笑)。


 金髪爆乳は今年2018年はよく見る新進のアイドル声優芹澤優(せりざわ・ゆう)で、前期春季は『LOST SONG』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200705/p1)や『魔法少女サイト』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20201122/p1)でレギュラー。後者では劇中内ロリ系ブリっ子アイドルの魔法少女を模したか、顔出しでキャラソンの中CMにも出演。片や、少女漫画のアニメ化作品『3D彼女 リアルガール』(18年)ではクールなギャル役で主演もゲット。そして本作でもエンディング主題歌を熱唱してみせる。


 黒髪貧乳も今年2018年春季の『ウマ娘』主演や『刀使ノ巫女(とじのみこ)』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200705/p1)サードヒロインなどのさわやかボイスで、急速に頭角を現している和氣あず未(わき・あずみ)――一昨年2016年の『教えて! ギャル子ちゃん』主演の経歴は見なかったことにする・笑)。


 出だしはチョット面白いなと思ったけど、いわゆる出オチ作品だったとでもいうべきか、序盤以降はヌルい感じの展開がつづくようにも思えて……。おそらくそれは作品の罪ではない。視聴ターゲットの年齢でもないのに、イイ歳こいてこのテの作品を鑑賞している中年筆者とのミスマッチゆえであろう(汗)。
異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.72(18年8月11日発行))


百錬の覇王と聖約の戦乙女(ヴァルキュリア)』

(2018年夏アニメ)
(2018年8月2日脱稿)


 小国が乱立する荒涼とした紀元前の古代メソポタミアっぽい大地で、日本人少年がスマホ仕入れた歴史知識で、古代ギリシャの重装歩兵の密集隊形&長槍や、青銅器ならぬ鉄器で勝利したりするといったお話。
 今流行りの「魔王」ではなく、単なる軍事的・覇権的に成功した王さまを意味する「覇王」だけど、広い意味ではその文脈や流行に乗ったモノでもあるだろう!?


 筆者としては、近代的軍隊vs古代中世レベルの軍隊を描いた『GATE(ゲート) 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』(15年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20150901/p1)のマイルド版にまず見えた。


 シンプルでオボコい――悪口ではなく云うけれど――四角く終始開いたおクチにコレまた四角いお目めの、笑顔が顔面に貼り付いたような(笑)描線&キャラデザで、ローティーン向け作品といったところか?
 描線どころか登場する美少女キャラたちのしゃべりやメンタリティーも、00年代の泣きゲー(ム)によく出てきたような、10代なのに幼稚園児のメンタルの持ち主にも見えてきてしまう、弱者男子にとっての都合がイイ天真爛漫ハクチ少女といった印象だ――それがダメだというワケではない。念のため――。


 広義ではファンタジーだけど、召喚されたこの世界の星座が地球のそれと同じなので、劇中で主人公は自身がタイムリープしたのだとも推測する。しかし、タイムパラドックスによる歴史修正主義が議題にならずに、軍事的勝利のカタルシスが主眼となるあたりで、SFではなくファンタジー寄りの作品だとはいえるだろう。


 ちょっとは面白いかな? と思って、観続けてはいたのだけど……。序盤で想像した歴史知識の反則ワザ使用での戦術・戦略的勝利! という方向に作品が向かずに、神秘の力・ルーンがどうこうというあたりで、俺的「コレじゃない」感が膨らんでしまって、視聴を継続するか否かで悩んでもいる(笑)。
百錬の覇王と聖約の戦乙女

TVアニメ「百錬の覇王と聖約の戦乙女」第1巻 [Blu-ray]
(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.72(18年8月11日発行))


『魔王学院の不適合者~史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う~』

(2020年夏アニメ)
(2020年8月11日脱稿)


 タイトルそのままの内容である。深夜アニメも本数が多すぎるのでタイトルもウロ覚え、視聴しているのにタイトルと内容が結び付かないという意見も多々聞くけど(汗)、その点、この作品は大丈夫である(笑)。


 日本の異世界ファンタジーも爛熟の果てに、「勇者」ならぬ「魔王」を主人公とした作品がここ10年ほどは掃いて捨てるほど登場。が、要は名前だけの「魔王」であり、属性・本性としての「悪魔」ではなく、同じ「人間」であり異民族・外国人程度の意味しかない魔族であったり(笑)、役職としては「魔王」であっても内実は小粒な「善人」だったり、開発独裁・啓蒙専制君主として仕方なくポーズとして威圧的にふるまっている「賢帝」でしかなかったりもする。


 イヤもちろんガチで暴虐のかぎりを尽くす暴君としての「魔王」が主人公だったら我々も感情移入ができないので(笑)、チョイ悪だけれども巨悪を懲らしめて善政を行なうダークヒーローの一種としての名前だけが「魔王」さま……といった塩梅で筆者もイイとは思うけど。


 この作品も「魔王」を養成するというワリには清潔感ある白い制服(笑)に身を包んだ男女たちが集う魔王学院(魔法学校)が舞台である。
 ここに入学した不敵な長身イケメン青年クン。その正体は2000年前にこの異世界を救った、のちの王家の始祖たる「魔王」であり、その記憶を持ったままで転生してきた(爆)。そして、この世界における始祖の名前が転生前の自分ではなく別人の名前に歴史修正されていた! ひいては王家も簒奪されている!? といったあたりでナゾ解き的なヒキも作っていく。


 新入生だけど最初から同級生や教師よりも強い、いわゆる「俺、TUEEE(強ェェェ)」系のテンプレ展開ともいえるけど、それが発揮されるのは意地が悪い下劣な相手に対してだけであり、いかに偽悪ぶろうが要は正義(笑)の発動なので観ていて不快感はナイ。


 加えて転生した先の庶民の父ちゃん母ちゃんは凡人の善人であり、#1冒頭での入学時に魔法学校の校門前で「魔王」もとい青年主人公クンに親バカまるだしの声援を送っているあたりも笑ってしまう。と同時にその場で落とし物をひろって手渡してあげた幸ウスそうな銀髪ショートの美少女キャラを登場させ、彼女に対しても執事らしき初老キャラが声援を送るギャグ描写を挟みつつも、視聴者に主要キャラだと認知させるあたりもウマい。


 加えて下僕学生どもを引き連れた高飛車なツンデレ風の金髪ツインテールの美少女キャラも登場して主人公と魔法対決。彼女は先の銀髪少女とは胎児の時分の分身魔法で分離した双子でもあり、性格も邸宅での位置付けも「陽」と「陰」で、15歳になると銀髪は金髪に吸収されて消失するという中2チックな設定も付与。
 金髪は銀髪を憎んでいるのか愛しているのかドッチなのかで引っ張る愛憎劇や、アットホームなお宅訪問に青年主人公が関わっていくことで第1のクライマックスも作っていく。


 ググってみると小説投稿サイト出自であり、アニメ化されるほどだから相応の質もある……とまでは一概に断言できないけど(笑)、今後の展開も期待できそうに予想。
魔王学院の不適合者 ~史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う~

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.77(20年8月15日発行))

後日付記


 「魔族」の国内部での抗争、前世で「魔王」と和解した「勇者」も現世に転生、その彼の現世での生い立ちと「いいヒト」過ぎるゆえのアクロバティックな振る舞い、「人間」の国と「魔族」の国との戦争勃発など、この作品も最終回まで息切れせずにテンションが高いままの巧妙なストーリー展開で完走! 大傑作に仕上がった作品だとも私見する。


まおゆう魔王勇者』 ~異世界を近代化する爆乳魔王に、近代自体も相対化してほしい(笑)

(2013年5月29日脱稿)


 インターネット上の超巨大掲示板2ちゃんねるへの投稿小説(09年)出自作品(!)の深夜アニメ化。
 ライトノベル原作の深夜アニメ『狼と香辛料』(08・09年)のように西欧中世ファンタジー異世界を舞台に、政治&経済ネタを織り交ぜてみました。ベタな作品には飽き足らないプチ・インテリオタクのみなさん、コッチへいらっしゃい……といったアニメでもある――1/3くらいはイヤミ(笑)――。


 少年勇者が魔界の魔王を単身討たんとしたら、実は魔王はキモが座ってはいるけど、愛嬌もハニカミも残した平和主義者で紅いロングドレスに赤髪ロングで長身の爆乳美少女お姉さんであった!
 少年勇者と爆乳魔王は互いに互いを所有する契約を結んで、人間と魔族との百年戦争が続く世界に、英知を尽くして平和をもたらさんとする……といった内容。


 女児向けアニメ『美少女戦士セーラームーン』(92年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041105/p1)シリーズや『プリキュア』(04年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20040406/p1)シリーズみたく、「愛」だの「平和」だの「仲間」だのと唱えれば万事解決するという、大ウソ作品群(文句じゃないよ・笑)を頭ひとつ抜きん出た作品ではある。


・地の果ての反英アイルランドを飢饉から救ったジャガイモ
・グーテンベルグ活版印刷
・印刷版聖書の普及で教会を介さず個人が神さまを直接信仰
カトリックからプロテスタントイギリス国教会が分離独立
農奴解放
天然痘撲滅


などなど、中世~近代500年のオイしいトコ取りの反則ワザ(笑)を次々とくりだす、人間界の片田舎の農村にお忍びで学士として身をやつした爆乳魔王さま。


 中央の教会国家から南部三国を教会分裂込みで独立させ、魔族との天下三分の計にも持ち込み、通商を契機に平和共存をもたらさんとする。
 戦争を問答無用で絶対悪視するのではなく、戦争で動くカネ・ヒト・物資・援助で雇用も保証され、単純に戦争が即時解消されても経済的には大カタストロフ! といった如何ともしがたさも描いていて、よくぞココまでの世界観を……といった感もある。けれども、と同時に「よくお勉強しましたネ」的な、やや理に勝ちすぎて物語としてはうまく定着していない感も残る。
 物語前半の時点でもう、魔王の意を受けた少年勇者クンが事を万事うまく運んでいくような描写はドーなのか? 彼、愚鈍でもナイけど年齢相応の少年に見えるので、そんなにアタマが良さそうにも見えないけれども……。


 爆乳魔王さまはルックスからして魔族とはとても思えず、両ツノが生えただけの人間のお姉ちゃんにしか見えない――そのツノも飾りであったと判明する(笑)――。
 少年勇者クンのメンタルに至っては、ラブコメ深夜アニメ『中二病でも恋がしたい!』(12年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190904/p1)や同じくラブコメ深夜アニメ『俺の彼女と幼なじみが修羅場すぎる』(13年)などの、前世で勇者(笑)であった元・中2病の現代日本の少年主人公クンたちとも大差がない。
 そーいう見てくれや異性に奥手なメンタリティを保持していないと、本作が思春期オタ層にも受けるジラしたラブコメの一面を保持できないのも事実なので、ケチを付ける気はナイけれども、この世界の広大な「世界情勢」と「ラブコメ」が分裂気味には見える。


 などと云ったそばから、我ながら矛盾したことに、ミーハーな次元で云うならば、こんなに頭がイイのにそれを鼻にかけずに天然気味で、少々モーションをかけてきて、少年勇者クンの顔をのぞきこむように、


「こんにちはったら、こんにちは」


とか、二の腕がプニプニつまめるのを気にしているのは、


「ソコだけ西欧中世ではなく、90年代以降の日本で女性誌が煽って定着させたメンタルだろう!」


とツッコミしつつも、その袖や下着からハミ出た、つまめるお肉がイイんじゃねェか! 辛抱たまらん! 最強のヒロインだゼ!! と大いに力説……(以下、自粛)。


 凡百の作品ならば、商売人はカネに汚い悪人と描写されるところを、「利を極めるゆえに利だけでは捉えられないモノに早く気付ける可能性がある逆説」――ま、商人全員が常にそれに到達できているとはとても思えないけれども――、早くも遅くもなく適度なスピード&分量でモノ・カネが動きつづけることの大切さの主張などなど、真理へと到達する際の物事の逆説や経済のことをよく判っているナ……とは思う。
 本作終盤での二大通貨制による変動為替レートの導入は、筆者も結局バカなので正否の判断が付かなかったけれども(笑)。


 西欧中世風都市での街中での異端審問で、メイドのお姉ちゃんが「ムラ世間的な同調圧力・空気に屈した妥協」ではなく「近代的な主体的個人として判断」することの尊さ(大意)について人々に演説を一席ぶつのはたしかに感動的ではあった――爆乳魔王さまのお弟子さんになって薫陶を受けてきたからとはいえ、元々は農奴上がりのお姉ちゃんが大衆の面前で臆せずによくぞココまで……とも思うけど(笑)――。


 しかし現代社会を生きる筆者個人は、「近代」や「自由」をそこまで称揚する気にはなれない。「抑圧」よりも「自由」の方がマシに決まってはいるけれども、ヒトはそもそも持て余すほどに過剰な「自由」や膨大な「選択肢」、高度に細分化して専門的な知識も要するようになった「自己選択」や「自己責任」にも耐えることができるのか? 身分制度がなくなってもなお残る、「社会」や「制度」のせいにはもうできない個人の性格・腕力・運動神経・ルックスの格差! そこから来るスクールカースト
 マジメにコツコツ農作業(第1次産業)や工場労働(第2次産業)さえできれば報われた時代も遠くに去って、チャラ男的な調子のよさも含めて対人折衝・コミュニケーション能力が過剰に求められるようになってしまった第3次産業が中心のこのポストモダン(後期近代)社会。
 ココからアブれたのが筆者も含むオタクというコミュニケーション弱者の人種であって、その慰撫としてオタ趣味ジャンルを勃興させているのは否めない。


 「職業選択」「異性交際の自由」。「前近代」にはなかった残酷なイス取りゲームの「自由」で、新たな苦悩にまみれている現代社会を見るにつけ、過剰な「自由」は廃して部分的には「前近代」に戻した方がイイんじゃないかとさえ思う。
 しかし、そんな規制ができる古典的な警察国家にも通ずるような国家権力なんぞは、国内の労働者は解雇しやすくしろ! 国境を越えて工場を展開させろ! 関税撤廃! 自由貿易! 国家による規制を極力緩和しろ! 「小さな政府」こそが正義だ! と主張するグローバルな「新自由主義経済」にここ20年ほど大負けして久しい。
 この状況を緩和させるためには「毒には毒を」で、「新自由主義者」や税金を払わないグローバルな大企業に拮抗させるために、「大きな政府」を便宜的に復活させてコレをグローバル企業にブツけて、関税や法人税をむしりとり、富の再分配にまわすことだとも思う。


 しかし、「大きな政府」や「国家」の必要悪としての復権による再分配が必要だ! などと唱えると、物事を三元論や四分法などでは考えられない安直二元論な単細胞の旧態依然なバカ左翼たちが、右翼だ! ファシストだ! 排外主義者だ! とレッテリングを貼ってくる――そもそも「大きな政府」とは抑圧的な警察国家ではなく、相応の税金を徴収して富の再分配を旨とする福祉国家を意味する一般用語だというところから説明をしないとイケナイ(笑)――。
 仮に近代国民国家を廃絶できたとしても、その後に生じた貧富の格差を、国家ヌキで商売人や大企業が自主的に再分配することはありうるのであろうか? 宗教団体には寄付~再分配の機能がありそうだけれども、仮に再分配してくれるとしても、それで庶民が一介の私企業にすぎない大企業なり、教会・宗教団体なりの云いなりにされてもヤバいであろう。
 であれば、「神聖なる共同体との一体化」(笑)という意味ではなく、プラクティカル・実用主義的な「互助組織」「保険組合」としてのニュートラルな「近代国民国家」は残しておき、それをワンクッションの仲介にしてから富を再分配した方がイイのではなかろうか?
――究極的には国家や国境を解体・廃絶さえすれば万事がOKで庶民は自由で平和になれると浅知恵で考えているとおぼしき旧態左翼ではなく、そのあたりの必要悪である分配主体としての国家の必要性にも目配せしているオルタナ左翼の将来における勃興にも期待をしたいところだ――


 現今の惨状に対する妙策も思いつかないけど、次代の物語のテーマのホットな鉱脈はココらにあるとも思うのだ。
まおゆう魔王勇者完全設定資料集

まおゆう魔王勇者 (1) (初回生産限定特典:朗読劇「昼の部」優先購入応募券) [DVD]
(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.57(13年6月24日発行))


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  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20040406/p1



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