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映画 刀剣乱舞 ~ニトロプラス原作×小林靖子脚本! 信長・秀吉論でもある意表外な傑作!

『がっこうぐらし!』(実写版) ~ニトロプラス原作×秋元康系アイドル! 低予算でも良作誕生!
『仮面ライダー電王』 ~後半評 複数時間線・連結切替え!
『美少女戦士セーラームーン』実写版 ~中後盤評 脚本家・小林靖子は文化系女子か?
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『映画 刀剣乱舞』 ~ニトロプラス原作×小林靖子脚本! 信長・秀吉論でもある意表外な傑作!

(2019年1月18日(金)・封切)
(文・T.SATO)
(2019年3月10日脱稿)


 長年月を経た「日本刀」などの万物に自然とやどってくるアニミズム的な魂・意識・精霊・付喪神(つくもがみ)が、ヒト型に実体化してイケメン美青年・美少年剣士として活躍する、ネット上でプレイするオンラインゲーム『刀剣乱舞―ONLINE(オンライン)―』。
 2015年にスタートした本ゲームは、女子オタの圧倒的な支持を得て、舞台化やミュージカル化に2種の深夜アニメ化を経た末に、昨2018年大晦日のNHK『紅白歌合戦』にミュージカル版のキャストが出場するまでの大人気を獲得している。


 ゲームの原作&製作は、大ヒット・オンラインゲーム『艦隊これくしょん―艦これ―』も手懸けた大手ネット通販サイトのDMM.com(ディーエムエム・ドットコム)に、我々特撮&アニメマニア的には深夜アニメ『魔法少女まどか☆マギカ』(11年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20120527/p1)やTV特撮『仮面ライダー鎧武(ガイム)』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20140303/p1)にCGアニメ映画『GODZILLAゴジラ) 怪獣惑星』(17年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20171122/p1)シリーズのメインライターなども務めたことで知られる虚淵玄(うろぶち・げん)が所属するゲーム会社・ニトロプラス
 おそらくゲームの実製作は下請け会社に丸投げして、ニトロプラスは企画・ゲームシナリオ・キャラデザのコンペのみを担当し、版権収入はDMMと山分けというビジネスモデルかと思われる(憶測です)。
 ニトロプラスは自社周辺で活躍するライターとも組んで、深夜アニメ化もされた萌え4コマ誌『まんがタイムきらら』系連載で漫画『がっこうぐらし!』の原作なども担当。かのウルトラ怪獣を萌え美少女化した『ウルトラ怪獣擬人化計画』にもキャラデザ方面で関与しているが、おそらくコレも円谷プロにそんな機転・才覚がある人材がいるとも思えないので(失礼)、ニトロプラスが自社に恒常的な版権収入をもたらすために、同社主導でKADOKAWAや秋田書店などを巻き込んだ円谷プロへの持ち込み企画であったかと推測するのだが(笑)。


 そんな作品が、ついに実写作品としても映画化。なのだが、筆者はけっこうジャンル系のアニメ映画や特撮映画を意識的に観る人種でもあるけれど、本映画の予告編を映画館では観たことがナイぞ。当今はマーケティングも事細かく完成されているから、腐女子向けのアニメ映画だけに絞って予告編を上映していたのであろうか?(汗) てなワケで、本映画は封切りが開始されてから、その存在を知った次第。
 ……本映画のことが観たくて観たくて堪らない! というようなことはなかったのだけど、ジャンル関連の作品としてお勉強的に観ておこうと思ったところで、ブラウザのGoogle先生が「あなたにオススメです」的に、「本映画の脚本家は小林靖子先生だから」うんぬんみたいな記事を提示してくる(笑)。
 近年の筆者は極力、先入観や予備知識ゼロで作品を鑑賞したいクチなので――コレで脚本家が90年代中盤からあまたのTV特撮やTVアニメを手懸けてきた実力派のベテラン脚本家・小林靖子であることを先に知ってしまったけれども――、オススメ記事は開かずに平日のレイトショーに出向いたのであった。


霊力で時間跳躍する「刀剣男子」vs記号的な人外の戦闘員である「歴史修正主義者」!


 ……フ、フツーに面白いやないけー! ムダに無意味な一見さんお断り的な難解さはカケラもなく、かといって適度に入り組んでもおり、意外性を幾度か感じさせていくストーリー展開。起承転結や最後に大バトル&大勝利といった物語的な結構を満たした構成。
 先の2種ある深夜アニメ版――『刀剣乱舞―花丸―』(16・18年)・『活撃 刀剣乱舞』(17年)――の序盤と比しても、本映画に軍配を挙げたいところだが、そのような比較論ヌキでも純粋に本映画はスンナリと観られる。


 映画の骨子はカンタン。深夜アニメ2種とは異なり、基本設定はキチンと冒頭でナレーションにて説明してくれる(笑)。
 西暦2205年。「歴史修正主義者」たちが過去の歴史時代に「時間遡行軍」を送って、歴史改変を企みだした。
 時の政府の命で、歴史守護の役職を務める由緒と格式ある「審神者(さにわ)」の家の頭領は、歴史上のあまたの名刀にやどるアニミズム的な魂・精霊を、「刀剣男子」と呼ばれる和風の衣装と刀剣をまとったヒト型たちに実体化させた。
 「刀剣男子」たちもまた過去の歴史時代へと飛び、歴史改変を阻止するために、その時代で「時間遡行軍」と戦うのだ……。


 要約してしまえば、むかしからよくあるタイム・パトロールものである。しかし、SF的なメカメカしいタイムマシンなどは出てこない。過去の歴史時代への跳躍も、SF科学的な原理に基づくものではなく、「刀剣男子」たちが白昼下の社や庭に集って円陣となり、その「霊力」でタイムリープするというモノであり、和風テイストと相反してしまうであろうSF的なメカや原理は出てこない。
 それらの機械類や近代的なメカニズムを登場させてしまうと、そもそも実態は刀剣の精霊であるファジーな存在が人間化できるのは何ゆえの原理で? という疑問が生じてしまって、作品世界の足場に不整合も生じて定まらなくなってしまうので、「精霊」に対するに物理的な科学には依拠しない超自然的な「霊力」でタイムリープするという設定で統一したのは、虚構の原理なりに全編でスジを通したモノとはいえるだろう。


 加えて、「時間遡行軍」自体も、「歴史修正主義者」というモノモノしい風刺チックなネーミングの手先という設定が付与されていて一見は少々高尚だが、「歴史修正主義者」の幹部たちが登場したり、彼らの生グサい主義主張が語られるようなことは一切ナイ。
 映画『スーパーヒーロー大戦GP(グランプリ) 仮面ライダー3号』(15年)終盤に登場した悪の巨大ライダーロボが放つ攻撃光線に「歴史改変ビーム」というネーミングがなされていて、それを浴びた者はそもそも最初から歴史上、存在しなかったことになるという説明があったけど、イイ意味で映像・ビジュアル的にはただの破壊光線でしかなかったようなノリなのだ(爆)。
 すなわち、「時間遡行軍」の連中は、戦国時代の雑兵に足軽、近代的軍隊の歩兵の迷彩服をアレンジしたような、人語は発さず、ボディーもややボリューミーかつ衣服はアーミーでややダブついてもおり、顔面も黒い無表情な仮面に覆われて両瞳の部分は赤く点灯している、和装の記号的な「悪」であり、着ぐるみ的な「怪人」や「戦闘員」たちなのである(笑)。


 小バカにしたような書き方をしてしまったが、筆者個人は本作がこの構図を採用したことを、唯一絶対の良質なモノという意味ではなく、あまたある作劇バリエーションのひとつとして、そして通俗娯楽活劇作品の作劇としては、積極的に肯定したい。
 なぜならば、良くも悪くも成熟して、フィクション上の悪党とはいえナマ身の人間を倒してしまうことに躊躇を覚えてしまうほどに、人権意識が進んだ先進各国で、罪悪感なく敵を倒すカタルシスを与える作品を作るには、敵を人外の化け物などの記号的な存在にするしかないとも思うからだ。
――敵もまた人間であり、そこから来る葛藤や躊躇といった作品も根絶されたワケではなく、むしろ戦争状況や対立状況を描いたロボットアニメやスポーツアニメなども連綿と途切れることなく続いているのだから、そのへんは役割分担として棲み分けして、作劇の多様性を確保すればイイだろう――


戦う男子たちが存分に活躍できる和風ファンタジーの舞台設定&劇中内必然性の作り方!


 明るい森林の中にたたずむ壮麗な和風建築の日差しも通った広大な奥の一室の暖簾の向こうから、歴史時代のお公家さんやミカド(天皇)のごとき堀内正美演じる「審神者」が、「刀剣男子」のお上品な隊長でもありナゼだか武士ではなく平安時代の公家のような「おじゃる」言葉でしゃべる主人公「三日月宗光(みかづき・むねちか)」に、ある時代に潜入した「時間遡行軍」の討伐を命じる。
 と同時に、セリフのみだけど(笑)、「時間遡行軍」は今現在もあまたの時代に介入し、それに応じて「刀剣男子」たちも各時代に派遣されており、劇中の現在である西暦2205年も天空の見えない円蓋バリア=結界に守られた晴天下のドローンから空撮された「審神者」の屋敷の周辺が攻撃にさらされているらしいことで、ウラ設定的なスケール感も出していく。


 あまたいる「刀剣男子」たちの中から「三日月宗近」は6~7人を選抜――その他の数名は「審神者」の屋敷を守るために西暦2205年の現在に待機する――。
 平安貴族もどきの紛争をした「三日月宗近」以外は、和装テイストとはいっても、頭頂部の月代(さかやき)を剃ったチョンマゲではなく現代人風の長髪で、しかもカラフルな色彩のウィッグ(カツラ)であったりもする(笑)。
 加えて着物ではなく、黒系のオシャレでシックにまとめた学校の制服や軍服のアレンジで、細部の襟のカタチやラインに複雑な意匠を凝らして白いラインでフチ取ったり、下半身も動きやすい胡服もといズボンであったり、ショタ受けもねらったかのような半ズボンに細いナマ足の「刀剣男子」もいたり、現代人のクダけた軽クチ口調でしゃべっていたりもするのだが、そこにツッコミを入れるのはヤボである(笑)。
 この選抜の神7(かみセブン)のメンツの山姥切国広だの骨喰藤四郎だのの古式ゆかしいモノモノしい姓名(=実在する刀剣名)は正直、一見さんの筆者には覚えられないけど(汗)、ルックス・ビジュアル的には、そして性格的にもナンとはなしに区別が付くので、そのへんでのストレスは生じない。
 我々ジャンルファン的には、『トミカヒーロー レスキューフォース』(08年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20090404/p1)の石黒隊長にして中盤からは自身も追加戦士・R5(アールファイブ)に変身し、『仮面ライダーオーズ』(10年)では2号ライダー・仮面ライダーバースこと伊達(だて)さんや、近年でも2代目・宇宙刑事シャイダー(12年~)こと烏丸舟(からすま・しゅう)として活躍する岩永洋昭が、ココでもワイルドなキャラを演じているのが眼につく。


三日月宗光「さぁ、はじめよう」


 時間跳躍する直前に発するこのセリフ。NHKで三箇日深夜に放映された歌番組に出演していた「刀剣乱舞」ミュージカル版のメンツも、このセリフを発していた記憶があるので、おそらく原典のゲームの開幕時のセリフでもあり、ダブル・ミーニングで掛けているのであろうけど、それをヌキでも印象的であり、「コレからこの物語がはじまる!」的な高揚感を与えるアバン・タイトルとしても盛り上がる。


 隊長=主人公でもある「三日月宗近」だけは、大時代的なセリフまわし、歌舞伎や能や狂言調の、ドコか節(ふし)のある作った言い回しでしゃべることで、本作の主要人物や作品世界のモチーフが歴史を材としたこととの整合性や、和風のテイストを補強してくれている。
 そして、「三日月宗近」のこの口調は、おそらく原典ゲームの彼を演じた声優さんの演技の踏襲でもあろうけど、ともに直接的には狂言師野村萬斎の口調をマネしたものだと思われる――ジャンルマニア的には映画『陰陽師』(01年)シリーズの主人公・安倍晴明(あべのせいめい)であり、『シン・ゴジラ』(16年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20160824/p1)のモーション・キャプチャーも担当だが、筆者にとっては「応仁の乱」を描いたNHK大河ドラマ花の乱』(94年)の東軍の総大将・細川勝元――。


本能寺の変中国大返し山崎の戦い安土城炎上。信長延命&秀吉の野望をガチで描く。


 時間跳躍をした先は、日本史にくわしくないヌルい層でもさすがに大勢がご存じであろう映画『本能寺ホテル』(17年)!(笑) ……もとい、戦国武将・織田信長が配下の武将・明智光秀の夜討ちの謀反で討ち死にする「本能寺の変」のまさにその時! 「時間遡行軍」はここに介入して、織田信長を延命させることで、日本の歴史を大きく変えようとしていたのであった。
 織田・明智・時間遡行軍・刀剣男子の四つ巴の乱戦が繰り広げられる中、「刀剣男子」は「時間遡行軍」を退け、信長も史実通りに切腹して灰燼に帰す……。未来へと帰還する「刀剣男子」たち。信長は灰燼に帰したハズであったのだが……。というところが、本作のツカミはOKとなる冒頭部。


 そう。この作品には、日本史の大スター・織田信長明智光秀豊臣秀吉――他には本能寺でともに討ち死にする信長の側近の美少年・森蘭丸――などが登場するのだ。
 つまり、本能寺の変を知った秀吉が、大急ぎで信長の死を隠して山陰山陽の覇者・毛利との和議を結んで中国大返し、ここは勝利の天王山で、明智軍を撃退する山崎の戦いを描き、明智光秀の残党が占拠した信長の居城にして初の本格的な天守閣がある近世城郭ともいえる、実物のごとき空撮の豪華絢爛たる安土城が焼失にいたるまでの攻防をもガチで描くのだ。


 そして、やっぱり脚本の小林靖子センセイは自身が公言する通りTV時代劇マニアでもあるから、近代的な小市民感覚には留まらない歴史上の偉人・英雄・豪傑たちの、そのへんのヤンキー・DQN(ドキュン)とも通じつつも、天下を広大なキャンバスに見立てて、自身で絵筆をふるって自己の力量を試してみたい、デザインしてみたい、事物なり生き様なりの何事かを後世に残してみたい、しかしてイザとなったら地位に連綿とすることなく、たとえ自分に言い分があったとしても見苦しく弁明することなく、カラカラと笑いながらアキラめて潔(いさぎよ)く死んで散ってみせよう! といった男性心理に女性ながらも通暁しており――差別的な発言でスイマセンが(汗)――、それらをも描くことで、本映画は歴史上の偉人たちの人物論、信長論や秀吉論に戦国武将論のような様相をも呈していくのである。
――ただまぁスケールは万分の一の規模になるけど、現代人や我々オタク趣味人であっても、こーいう俗っぽい(俗なだけでもなく、何かしらの聖なる大義や名分や五分の魂なりの)「野望」や「意地」が人間一般からなくなることはナイとも思う。むろん野放図な自意識スッポンポンではなく、節度や自己抑制にブラッシュアップ、欲望をキレイな方向に整えて公益にも適うように昇華していくことは必要ではあるけれど――


 それまでカリスマ・神格視をしてきた信長の討ち死にを知り大ショックを受けて、地面を転がりまくって号泣する、八嶋智人(やしま・のりと)演じる秀吉。しかして、河原で仰向けになって見上げたドコまでも天高い大空にハタと悟る一瞬の映像演出&演技がすばらしい。それまでに想像もしたことがなかったであろう、頭上に信長がいない世界で自身が頂上に登り詰めるビジョン、未来の見取り図、自分が天下をグランドデザイン・制度設計してみせる可能性の道スジが見えた瞬間を示す名シーンでもある。


 しかして信長の方も、一部の能力者による局所的な時間遡行でも発生したのか、たしかに自刃したハズなのに、延命を果たして「時間遡行軍」の助勢も得て、自身の死後(?)の情勢も静観しつつ雌伏する。信長の目的、それは自身の死後にも信用に足る人物・裏切る人物がだれであるかを見定めることにあったのだ! それを見極めて、秀吉は信用に足ると見た信長は、秀吉に密書を送るのだが……。


信長vs秀吉。双方につく「刀剣男子」。歴史改変は悪か? 正しい歴史なぞあるのか?


 といった話ばかりになってしまうと、「刀剣男子」たちは不要になってしまう(笑)。そこで、「刀剣男子」たちの人間関係にも波紋を生じさせていく。
 そもそも、「審神者」の頭領を独占して密会のようなかたちを取っている「三日月宗近」のナゾと、それに対する配下の「刀剣男子」たちのプチ不信感。
 歴史を守るため、信長が本能寺で死んだことにするために採用する「刀剣男子」たちの方策の相違。秀吉方に着いた「刀剣男子」2名と秀吉との問答。延命がバレる前に暗殺せんとする策に対して、なぜか仲間を裏切ったかのごとく信長方に着いてしまった「三日月宗近」のナゾの言動。
 「刀剣男子」たちは信長や秀吉にゆかりのあった刀剣でもあった者たちもいる。信長や秀吉との因縁や付き合いの濃淡、その末期にも邂逅した記憶が、彼らの言動・リアクションにも相違をもたらしていく。


 そもそも、「歴史改変」を絶対悪と見做してイイのか? 何が正しい「歴史」だといえるのか? すでに「歴史」は幾度も改変されているのでは? 改変された「歴史」でも善処を尽くす人々や英雄豪傑を余人が裁くことはできるのか?
――本映画の冒頭でも、歴史を大スジで守るためではあっても、時間跳躍した先の土地で踏み潰してしまった草花を手に取って憂いているシーンを入れることで、「刀剣男子」たちがこの時代に闖入しただけでも、微少な歴史改変は免れないことは示唆していた――


 この疑問に対して、信長に「三日月宗近」は自身が千年の齢を超えた爺であり、世の様々なモノを見聞きしてそれらに愛着が湧くうちに、捨てられないモノ、守りたいモノが増えてしまった旨を語る。いわく、「歴史を守りたい」「人を守りたい」「人の生き様を守りたい」。「あなたはもっと颯爽として死んでいった……」(大意)。
 この三段論法で(笑)、安土城の信長に合流するフリをして、配下にはそれと知らせず、信長を討とうとする秀吉の複雑な機微も察して、「三日月宗近」との紆余曲折&問答の末に、信長は落城の炎の中で自刃する。
 そして、本映画においては、安土城での信長の自刃が、秀吉の宝刀でもあった時期もある「三日月宗近」のみが知っていた歴史の真相であり、「時間遡行軍」を欺くにはまずは味方から……。余命いくばくもなくその霊力も弱っている「審神者」の頭領とのBL(ボーイズ・ラブ)的な(?)密会も、弱点ともなりうる頭領の余命を敵に悟られることなく、ひとりで背負うためにしていたことだと明かされて、「刀剣男子」たちもナットクし、仲間をもう少しだけ信じてヒミツや苦しみも分かちあえよとのいたわりの言葉ももたらす。


 心理学者・フロイト的な「父殺し」も果たして、信長の遺品を前に泣き崩れる秀吉のアンビバレンツ・二律背反した心理描写もすばらしい。全員とはいわずとも人間の過半とはそーいう矛盾をハラんだ存在でもあるだろう。


しかして、最後には「刀剣男子」たちにシッカリ見せ場・華・見識を与える脚本&主演!


 見た目は壮年期に入りかけた青年でも、口調や中身は老成した落ち着きのあるジジイといった感じの主人公「三日月宗近」を演じた役者さんは、古典芸能の世界から連れてきた若手であろうかと思いきや、エンディングテロップを見ると見覚えのある名前である(汗)。早くも10年も前となる『仮面ライダーディケイド』(09年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20090308/p1)でパラレル存在の「仮面ライダー剣ブレイド)」である剣崎一真(けんざき・かずま)ならぬ剣立カズマを演じて、同作最終回(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20090829/p1)や映画での同作完結編(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20101220/p1)にも出演していた御仁、鈴木拡樹(すずき・ひろき)ではないか!?
 吹けば飛ぶような若造であった彼が、信長を演じる山本耕史(やまもと・こうじ)にカスむことなく臆することなく、戦国時代をはるかにさかのぼる平安時代出自の年長者の設定で、堂々と渡り合った余裕と貫禄のある芝居をしている。感服である――すでに『刀剣乱舞』舞台版でここ数年、この役を延々と演じ続けてきたようではあるけれど――。
 氏は本映画と同時期の2019年冬季も、小林靖子が脚本を務める手塚治虫(てづか・おさむ)原作の名作漫画(67年)の深夜アニメ化『どろろ』(19年)でも主人公の百鬼丸の声を演じている。


 2019年1~2月に公開されたジャンル系アニメ映画やアメコミ洋画と比しても、個人的には本映画が一番楽しめた。
 なお、深夜アニメ版ほかに登場するマスコットキャラの白狐「こんのすけ」は本映画には登場しなかった(笑)。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2019年早春号』(19年3月10日発行)~『仮面特攻隊2020年号』(19年12月28日発行)所収『映画 刀剣乱舞』評より抜粋)


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