『ラブライブ!』・『Wake Up,Girls!』・『アイドルマスター』 2013~14年3大アイドルアニメ評
『ラブライブ! The School Idol Movie』 ~世紀の傑作!? それとも駄作!?
『ラブライブ!サンシャイン!!』 & 劇場版『Over the Rainbow』 ~沼津活況報告 & 元祖に負けじの良作と私見!
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『22/7』『推しが武道館いってくれたら死ぬ』『音楽少女』『Re:ステージ! ドリームデイズ♪』 ~アイドルアニメの変化球・テーマ的多様化!
(文・久保達也)
2020年・冬アニメ
(2020年2月20日脱稿)
『22/7(ナナブンノニジュウニ)』
(土曜23時 TOKYO‐MX他)
現実世界のアイドルグループ・AKB48(エーケービー・フォーティエイト)や乃木坂46(のぎざか・フォーティシックス)などのプロデューサーとして広く知られる作詞家の秋元康(あきもと・やすし)のプロデュースにより、2016年12月24日に誕生したのが、11人のキャラクターと声を担当する声優=リアルメンバーで構成されたデジタルアイドルグループ・22/7(ななぶんのにじゅうに)である。
彼女らを主人公として、現実世界と同じく2016年12月24日を起点とする物語を描いたアニメ化作品が本作だ。
もちろん生身でのアイドル活動の方が主軸なのだろう。22/7のPV(プロモーション・ビデオ)の中には乃木坂46がよく着ているような、胸にリボンが付いた薄いパープルのワンピース姿でメンバーが歌唱するものも見られる。
ちなみにユニット名の22/7とは円周率=3.14……の近似値(きんじち)であり、「無限につづく可能性」「想像の象徴」としての意味を示している。
芸能プロダクションから届いた黒い招待状によって全国各地から集結した8人の美少女が、ゴリラみたいな風貌(ふうぼう)の大男のマネージャーによって動物園の地下深くにある事務所へと案内される。
途中の階ではそこで生活するのに必要なさまざまな商業施設や娯楽施設が完備されており、いざたどり着いた事務所は室内すべてがゴールドで彩(いろど)られたゴージャスな雰囲気。
マネージャーは自分たちはその事務所の「壁」の指令で動いており、今回の美少女たちが選ばれた理由やアイドルユニットを組む真の目的は何も聞かされていないという……
これでは「昭和」の東映変身ヒーロー作品に登場した、正体不明の首領の指令で暗躍した悪の秘密組織と同じなのだが(笑)、
「相手が誰かなんてどうでもいい。これはチャンスよ」
と金髪ショートボブに水色リボンをした帰国子女風の華(はな)やかな少女がアイドル活動に乗り気を示す一方、
「まるで別世界。私のいる世界じゃない」
とマネージャーに告げ、ただひとりその場を去っていく少女がいた。
第1話では紺髪ショートヘアで外の世界では周囲からその表情や視線が見えないように、常に前髪を長く垂らしている女子高生・滝川みうのモノローグを中心に描かれる。
病弱な母の代わりにコンビニでバイトすることで幼い妹を含めた家族の生計を立てていたみうだが、
「前髪あげた方がカワイイのに」
と無神経にもみうの前髪を上げようとしたり、それを
「やめてやれよ」
と嘲笑(ちょうしょう)する同僚たちみたく、日々あたりまえのように仲間とじゃれ合って笑うことがどうしてもできないほどに、みうは極度の人見知りで人と話すのが大の苦手である。
冒頭で
「世界平和なんか興味ない」
と語るみうにとっては、優しい母と無邪気(むじゃき)な妹との生活だけが「全世界」だった。
しかし、同僚たちが怖(こわ)がっていてやりにくい、無愛想(ぶあいそう)だと客からクレームが来るなどとして、みうはクリスマスイブを前にバイトをクビになる。
そう。彼女の「全世界」は破滅の危機を迎えるのだ。
かつて趣味として曲づくりをしていたみうに
「おねえちゃんのコンサートに行くのが夢」
と語った妹に
「その話は二度としないで!」
と風呂場でヒステリックに云い放ってしまったみうを心配した母に
「ううん、なんでも」
とみうが見せる笑顔は、これ以上「いい子」でいることの限界が端的に示された名カットだろう。
少しでも生活の足(た)しにとみうが売り払ったキーボードの鍵盤(けんばん)とみうが渡る橋をダブらせた演出がまた秀逸(しゅういつ)。
夕焼け空の中、母と妹の写真が表示されたスマホの画面にみうの涙が落ちるカットは、その絶望感を最大に表したカットとなり得ている。
その夜(=2016年のクリスマスイブ)に、一度は立ち去った地下のひみつ基地みたいな芸能事務所に、背に腹は代えられない、一家の生活のためにと再度姿を見せたみうは、人を無慈悲(むじひ)に選別する社会をつくった勝手な大人たちに対する不信とアイドル活動を
「バカみたい!」
と罵倒(ばとう)した上で、
「いちばんやりたくないことをしなきゃ大事な人を守れないのなら、なんだってやってやる!!」
とタンカをきった!
その途端、事務所の黄金の壁がまばゆい光と轟音(ごうおん)をあげて発動し、8人のアイドルに対する指令を記した金のプレートが放たれた!
実にドラマチックでカタルシスにあふれる演出だが、徹底的に追いつめられ、それしか選択肢(せんたくし)がなかったゆえの捨て身の行動に出たみうの悲壮感は決して拭(ぬぐ)い去れるものではないだろう。
本作はプロデューサーの秋元氏による簡単なプロットを元にオリジナルのストーリーを組み立てたものである。だが、みうの声を演じるリアルメンバーは実際、人と関わるのが嫌いだった自身に対する危機感から最も苦手なことで自分を変えようとオーディションに応募したそうである。
滑らかな早口トークや会話に強引に割って入ることがいかにも苦手そうな気弱さが如実(にょじつ)に感じられるぐぐもって少々低音の彼女の声は、男性の庇護欲を誘うような、もっと云うなら弱者男性でもこの娘なら自尊感情が低そうだから値踏みをしてこないであろうと妄想させる安心感を抱かせるものともいえるのだが(笑)、それはともかく自身と完全にリンクしているであろうみうの演技には弱そうなのに妙な決意や力強さが感じられるのだ。
だが、みうが「これは決定事項」として「壁」に勝手に選ばれたことに対し、
「わたしの代わりに選ばれなかったコがいるだけ」
と舞い上がって自惚(うぬぼ)れることなく実に冷めて語ってみせている。それはそうなのだろうが、これで家族全員がようやく喰いつなげてようやっと一安心という状況下でも、見ず知らずの選ばれなかった不運な他人のことまで気遣ってしまうような「いい子」にすぎる子だから、この弱肉強食の現実世界で苦労するのだが……
現実世界で黒い招待状が来るハズもなく、
「ずっと選ばれずに終わる人」
に対するケアもまた、今後の本作で示してほしいように思えてならないものがある。
みうをクビにしたコンビニの店長が、「仕事」を「雪かき」にたとえて語る、「自分の家の前」を雪かきするのは当然で、「人の家の前」もしなければならない=やりたくないこともやるのが「仕事」だとする主張はたしかに正論である。個人的には座布団(ざぶとん)3枚あげてもいいと思えるほどだ(笑)。
ただその「やりたくないこと」ばかりでも、それなりに真面目に(?)数十年もやってきて、その間に選別されない苦悩も散々味わってきた筆者からすれば(大汗)、みうのように店頭やバックヤードでの雑談や愛想笑いでさえも拒絶したくなる人々にも理解を示さざるを得ないというのが正直なところだ。
アイドルアニメに大胆にも(ひとり)ボッチアニメの文脈を採用した本作の今後におおいに期待したい。
『推しが武道館いってくれたら死ぬ』
(木曜25時28分 TBS他)
桜の木の下で「ライブやるから来てください!」と通行人にビラを配る少女たちの姿に、何十匹目のドジョウか? と思いきや……
たしかにこれはアイドルアニメの変化球だ。主人公はアイドルの一員ではない。それぞれの推(お)しのアイドルメンバーに熱をあげるアイドルオタの主観で物語が進行するのだ。
ただ主人公とともに7人組の地下アイドルグループを追いかける、30代らしきデブメガネこそは典型的なオタの趣(おもむき)だが、主人公は金髪ポニーテールのモデル体型なのに、常にサーモンピンクのジャージ(笑)を着てガニマタで歩き、パン工場でバイトしてる20歳のフリーター女子・えりなのだ。
導入部でライブのビラをもらう際のえりはどこぞの大企業のOLかと思えるほどにカッチリとしたファッションだったが、そのライブで歌う茶髪セミロングの内気で人見知りな少女・市井舞奈(いちい・まいな)に手を振られ、
「あの日、君に殺されかかった」(笑)
ことから、以来えりは収入のすべてを舞奈につぎこむ日々を送っている。
えりが常にジャージ姿なのは――ちなみにサーモンピンクは舞奈のメンバーカラーだ――、それこそ特撮ヒーロー作品の円盤やフィギュアを買いたいがために、毎日弁当を持参したり会社の飲み会を拒否したりで節約の日々を送る特撮オタのOLが主人公のマンガ『トクサツガガガ』(実写ドラマが2019年にNHKで放映・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190530/p1)を彷彿(ほうふつ)とさせる。
しかし、その主人公が職場の同僚に特撮好きを知られるのを恐れる隠れオタなのとは180度異なり、えりは舞奈好きを全開にさせているのだ。
それがとにかくアツ苦しい。夕陽に向かって舞奈のことを
「愛してる~~~!!」
と絶叫したり(笑)、どちらの推しがカワイイかをめぐってデブメガネとムキになってケンカしたり、ライブで興奮しすぎて失神ではなく鼻血を出してブッ倒れたり(爆)という調子である。
そのえりのアツ苦しさが内気で人見知りな舞奈から敬遠され、いわゆる「塩対応(しお・たいおう)」をされているどころか、えりのいささか度のすぎた熱狂ぶりはアイドルオタたちから舞奈をも敬遠させてしまい、メンバーの人気投票で舞奈が最下位となる悪影響を及ぼしているほどなのだ(笑)。
だが、えりはいざ舞奈を前にするとそのアツ苦しさとは真逆のなんともいじらしい姿を見せる。右手が鼻血で染まったために舞奈との握手を遠慮するのはまぁ当然だろうが(爆)、推しといっしょにチェキが撮れる撮影会のために真夏の炎天下に早朝から並んでいたものの、汗まみれで身体がクサくなったことを気にしたえりは、せっかくのツーショット撮影で舞奈に自分とは離れて撮ってくれるよう頼みこむのだ。
自身の大切な存在を不快にさせたくないというえりの感情は、たとえアイドルオタではなくとも多くの視聴者を共感させたことだろう。
「好かれてなくても嫌われてなければいい」
というえりのセリフが実に象徴的だが、握手会にしろ撮影会にしろ常に真っ先に権利をゲットしているハズのえりが、実際の舞奈に対してはその独占欲をいっさい見せないどころか
「舞奈はみんなのものになってほしい」(笑)
とさえ語るほどに多面的に描かれることで、視聴者の感情移入を誘う効果をより高めているのかと思える。
えりが決してただのアツ苦しい女オタではないことが舞奈にも充分伝わっている証(あかし)として、えりの腕だけが写ったツーショット(笑)のチェキに、楽屋で舞奈が
「明日こそ素直に想いを伝えたい」
と語るのには感動すらおぼえたほどで、あまりに痛いアイドルオタたちの生態描写の数々には、実は高いドラマ性とキャラクターの魂(たましい)が秘められていたのだ。
もっともエンディングテーマとして2000年代前半に人気のあったモーニング娘。を擁する「ハロー! プロジェクト」の一員でもあった大人気アイドル・松浦亜弥(まつうら・あや)――今の若い層では知らない人の方が多いのでは?(大汗)――の名曲『桃色片想い』(02年)が使われているのは、本作がアイドルアニメの変化球だけではなく、女性同士の恋愛を描く「百合(ゆり)」モノ(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191208/p1)の変化球でもあることを露呈(ろてい)させている。
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2018年・夏アニメ
(2018年9月6日脱稿)
『音楽少女』
(土曜25時 TOKYO‐MX他)
『THE IDOLM@STER(アイドルマスター)』(11年~・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20150615/p1)、『ラブライブ!』(13年~・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160330/p1)、はたまた『Wake Up,Girls!(ウェイク アップ ガールズ!)』(14年~)など、すっかり手垢(あか)がついた感のあるアイドルアニメに、いまごろになって手を出すとは、キングレコードもすっかりヤキがまわったのか?
80年代に中高生だったオッサンである筆者の世代にとっては、あのウルトラマンシリーズの劇中音楽をはじめて商品化し、特撮やアニメの音楽集の先駆け的存在となった『ウルトラオリジナルBGMシリーズ』(79年)や、『SF特撮映画音楽全集』(83年)をはじめとする東宝特撮映画音楽の音盤化で、特に故・伊福部昭(いふくべ・あきら)の作品を積極的に世間に啓蒙(けいもう)したり、テレビ時代劇『必殺』シリーズ(72年~・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19960321/p1)の劇中音楽までをも商品化するなど、キングレコードはマニア御用達(ごようたし)のメーカーという印象がいまだ強いものがある。
もちろん我々の世代にとっては、なんと云っても元祖『機動戦士ガンダム』(79年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19990801/p1)の主題歌や劇中音楽を発売したメーカーであることが最も印象強いところだろう。最初の音楽集のLPレコードが、モロに「テレビまんが」という趣(おもむき)の、絵本のようなジャケットだったことには、中学生としてはレジでおもいっきりハズい想いをさせられたものだが(笑)、のちに発売された『アムロよ……』と題したドラマ傑作集の2枚組LPに、最初のLPには未収録だったものの、劇中で使用された頻度(ひんど)は高かった曲が、ボーナストラック的にいくつか収録されたのは実にうれしかったものだった。
90年前後から00年前後はキングレコードの大月俊倫(おおつき・としみち)プロデューサーが中核となって角川書店のオタク系アニメと組んであまたの作品を輩出し、業界のトップランナーであったことはご承知の通り――その最大のヒット作が巨大ロボットアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』(95年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220306/p1)――
そんなキングレコードも、先述した『ラブライブ!』や『ガールズ&パンツァー』(12年~・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190622/p1)など、近年の人気作品の権利を有するバンダイ系のランティスをはじめ、新興メーカーに押され気味ではあるのだが、さすがに何の勝算もなしに無難な路線に追随(ついずい)したのではあるまい。
先述した『ガールズ&パンツァー』のお上品キャラ・ダージリンから『宇宙戦隊キュウレンジャー』(17年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180310/p1)のチンピラ幹部怪人マーダッコに至るまで、七色の声を駆使する人気アイドル声優の喜多村英梨(きたむら・えり)は、近年は『夜ノヤッターマン』(15年)のドロンジョや『タイムボカン24』(16年)のビマージョ、『はじめてのギャル』(17年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200202/p1)のヤンキー女子高生・本城蘭子(ほんじょう・らんこ)など、妙にチンピラキャラが多いが(爆)、ポニーキャニオン→ランティス→スターチャイルド(キングレコード)→トムス・ミュージックと、レコード会社の移籍を繰り返している。
しかし、喜多村の全シングルの中では、スターチャイルド時代に発売した『Happy Girl(ハッピー ガール)』(12年)がオリコン第5位と最高位であり、スターチャイルド以外のレーベル在籍時には、ベストテンにランクインしたことは実は一度もなかったのだ。
かのアイドルグループ・AKB48(エーケービー・フォーティエイト)もその活動の初期数年のCD売上不振を理由にかのソニーミュージック系の子会社レーベルに契約を解除されたものの、キングレコードに移籍した途端、イベントの抽選券をオマケにした詐欺(さぎ)的商法(笑)でバケモノ的に売上が爆発したのは周知のとおりである。
近年では05年にデビューし、鳴かず飛ばずだった演歌歌手・丘みどりが、やはり16年にキングレコードに移籍するや、翌年末にはNHKの『紅白歌合戦』に出場するまでに至ったのだ!
こうした事例を見ると、やはりキングレコードの企画力・営業力の強さはいまだ健在であり、この『音楽少女』がバケる可能性もあるのかも!?
本作の第1話では、音楽家の両親のツアーに同行するかたちで日本に帰国することになった、元気ハツラツ・オロナミンC(笑)的な天真爛漫(てんしんらんまん)な美少女ぶりとは相反する名前の主人公・山田木はなこ(爆)が、成田空港のロビーにて、数十人のアイドルオタくらいしか客が集まらないほどのC級アイドルグループ・音楽少女のライブに偶然遭遇し、実に軽薄な感じのマネージャーに目をつけられ、公開オーディションに出場するハメになるという運命の、いや、ご都合主義的な出会いが描かれる(笑)。
音楽少女は11人ものメンバーで構成されている。彼女たちのキャラを毎回ひとりづつ掘り下げていたら、それだけで最終回になってしまう(爆)。
なので、マネージャーがはなこを音楽少女に加入させることに強く反発したパープル髪のショートヘアのキツ目の少女が、はなこから
「声がステキ」
と云われた途端に
「ありがとう……」
と赤面したり、はなこに最も興味津々(しんしん)なピンク髪のメガネっ娘(こ)の好奇心旺盛ぶりなど、各メンバーがどんな娘なのか、はなこに対する反応ややりとりの違いによって、視聴者が第1話の時点で半数くらいは把握できるようにされているのは好感が持てるところだ。
個人的にはライブの成功を願って会場に塩を盛ったり、まじないとしてメンバーのおでこに梅干しをはりつけたりする、低身長の茶髪ポニーテールのスピリチュアルな少女が、はなこにごほうびとして2回も
「飴(あめ)ちゃんをあげましょう」
とやらかすのには注目してしまう。
同時期に放映が開始された『ウルトラマンR/B(ルーブ)』(18年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180826/p1)の主人公兄弟の妹である女子高生・湊アサヒ(みなと・あさひ)も、序盤では
「ハイ、飴ちゃん」
と、兄弟ゲンカで熱くなった湊イサミに飴を与える描写があったが、これはアサヒがじゃんけんすらもイヤがるほど、争いが嫌いな平和主義者であることを象徴していたのだ。
アサヒのキャラ最大のアイデンティティとして、「飴ちゃんをあげましょう」は定番描写にしてほしいものである(笑)。
初対面のアイドル少女たちにダンスや歌唱指導をするほどのサラブレッドぶりを披露したはなこが、実は歌が「どヘタ」(笑)なことを露呈させる第1話のラストは、はなこと音楽少女の今後に期待を持たせるヒキとしては、あまりにも絶妙であった。
2019年・夏アニメ
(2019年10月13日脱稿)
『Re:ステージ! ドリームデイズ♪』
(日曜22時 TOKYO‐MX他)
いったい何匹目のドジョウとなるのだろうか? またまたアイドルアニメの登場である。
もっとも原作となる小説はKADOKAWA(カドカワ)の『月刊コンプティーク』2015年8月号から連載が開始され、翌2016年には声優が歌唱するキャラクターソングCDが発売、2017年にはそのライブやスマホゲームの配信もされていたほどに、すでにプロジェクト自体はかなり以前から動いてはいたようだ。
女子高生のスクールアイドルたちの全国大会を描いた『ラブライブ!』シリーズ(13年~)をまんまパクったかたちで、主人公たちが廃校ではなく部活の廃止を阻止するために、中学生アイドルの全国大会・プリズムステージの優勝をめざしている。
主人公の少女はアイドル集団の中でもビジュアル的にやや浮き上がって見えるオレンジ髪のショートボブヘアで、これがそもそも『ラブライブ!』(第1期・13年 第2期・14年)の主人公・高坂穂乃果(こうさか・ほのか)や、『ラブライブ! サンシャイン!!』(第1期・16年 第2期・17年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200628/p1)の主人公・高海千歌(たかみ・ちか)の髪型&髪色の色彩設計とも共通する鉄板(てっぱん)パターンのパクリである(笑)。
そんな主人公・式宮舞菜(しきみや・まな)が一度アイドルの夢を断念しているのは、『Wake Up,Girls!(ウェイクアップ・ガールズ!)』シリーズ(14年~)の主人公・島田真由(しまだ・まゆ)の出自を彷彿(ほうふつ)とさせるものだ。
こんな調子ではよほどの差別化をはからないことには見向きもされないかと思えるのだが、その点では本作はかろうじてギリギリセーフではないのかと。
まず導入部で描かれた、駅の改札から舞菜の転校先の中学校に至るまでの実在する高尾山周辺の背景美術の美しさに目を奪われる。
その背景とは相反するかのような、巨大モニターに映しだされる3人組のアイドルのステージからそそくさと逃げてしまうことで、舞菜に秘められた過去があるのを端的に示した演出には「おっ!」と思わせてくれるものがあった。
金髪ショートヘアでメガネ少女の生徒会副会長に各部活を案内された末に、薄暗い廊下の先にある怪しい部室にたどり着いた舞菜は、濃い紫のロングヘアにピンクの和服姿の部長におっとりとした関西弁で大歓迎される。
その茶室のような茶道(さどう)部としか思えない部室には実際、障子(しょうじ)に毛筆で「○」(まる)の中に「茶」と書いてある(爆)。しかし、この部室こそが、謡(うた)って踊ることを楽しむ
「謡舞踊部(ようぶようぶ・爆)」、
つまりアイドル部であるという想定外の描写には舌を巻いた(笑)。
謡舞踊部の部員が部長とあとひとりのみで廃部寸前であることを知った舞菜は、情にほだされてつい入部を承諾(しょうだく)しそうになる。
しかし、
「そんな理由で入部してほしくない」
と、1年生の新入部員で薄い紫のポニーテールの少女・月坂紗由(つきさか・さゆ)が現れ、実際の活動を見てほしいとして音楽にあわせてダンスを披露する。
そこについ加わった舞菜が紗由と呼吸がピッタリと合ったことで、部長と紗由は舞菜がタダ者ではないと察知し、昨年のプリズムステージで優勝した3人組アイドルグループのリーダーの名字が舞菜と同じ式宮であることを指摘した。すると舞菜はそそくさと帰ってしまう。
追いついた紗由が
「いっしょにアイドルめざそう!」
と誘うも、
「もう人前で歌ったり踊ったりしないと決めてるの……」
と、舞菜は寂し気に素っ気(そっけ)なくスクールバスに乗りこんでしまう。
そよ風で桜の花びらが舞い散る中、舞菜に強いインスピレーションを感じた紗由はあきらめきれず、スクールバスを、舞菜を追いかける!
紗由、そして車窓から紗由を見つめる舞菜が胸の高まりをおさえられず、両者に心臓の鼓動が鳴り響く演出が「運命の出会い」を絶妙に印象づけている!
「夢なんか忘れたはずなのに」とつぶやいた舞菜が翌日部室に姿を見せ、紗由と手を合わせるに至るまで、第1話がこんなキャッチーな演出でつなげられたら、散々使い古されたネタでもつい見入ってしまうというものだろう。
個人的には今後も暖かく見守りたいと思えたものだ。
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