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純潔のマリア・リヴィジョンズ・ID-O・コードギアス 復活のルルーシュ ~谷口悟朗監督作品アニメ4本評!

『薔薇王の葬列』『純潔のマリア』『アルテ』『平家物語』『アンゴルモア 元寇合戦記』『戦国BASARA』 ~薔薇戦争・百年戦争・ルネサンスなど、人間集団・戦争・宗教・芸術・栄枯盛衰・戦いでの潮目の変化(引き際)!
『コードギアス 反逆のルルーシュR2』 ~総括 大英帝国占領下の日本独立!? 親米保守vs反米保守!?
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 実力派・谷口悟朗監督による2021年冬の深夜アニメ『バック・アロウ』が2クール放映中! 同じく21年冬の深夜アニメ『スケートリーディング☆スターズ』の方は完結記念! とカコつけて……
 谷口悟朗監督によるアニメ4本、『純潔のマリア』(15年)・『revisions リヴィジョンズ』(19年)・『ID-O(アイディー・ゼロ)』(17年)・『コードギアス 復活のルルーシュ』(19年)評をアップ!


純潔のマリア』『リヴィジョンズ』『ID-O』『コードギアス 復活のルルーシュ』 ~谷口悟朗監督作品アニメ4本評!

(文・T.SATO)

純潔のマリア

(2015年冬アニメ評)
(2015年4月27日脱稿)


 純潔(じゅんけつ=処女)であり、聖母マリアと同じ名前であるのに、その正体は魔女! といった、その「存在」自体が不謹慎(?)な少女が主人公でもある作品。


 戦争のことが大キライな彼女が、中世末期の英仏百年戦争のフランスを舞台に――アルプスより南ではもうルネサンスの時代だけど(汗)――各地の戦場で異教(=キリスト教以外の宗教のこと)の巨大怪物たちをその魔法にて召喚! その都度、英仏両軍を驚愕させて退かせていた。


 まずは胸の谷間・両肩・背中のハダを露出させた現代風の黒革ボンテージを身にまとったSMの女王さまみたいな魔女像が西欧中世にあったのかヨ!? と一応はツッコミを入れてみる(笑)。だが、そこはあくまでも虚構作品。マンガ的な「絵」から入る「キャラ立て」であって、問題ナシだと私見したい。


 問題ナシではあるけれど(?)、ボリュームのある金髪ショートの主役魔女の少女は、お眼めがデカくても若干吊り目でややクセのあるキャラクターデザインではある。
 本作はオタク系というよりかはマニア系だともいえる月刊「アフタヌーン」誌の連載マンガが原作であった。それゆえに、当世風の「萌え媚び絵柄」の文脈を考慮していないのかもしれない。けれど、それはマーケティングやライト層の客引き的には吉と出るのか? 凶と出るのか?


 しかし、領主さまの伝令を務めている青少年クンに対しては、ちょっとテレたりしてみせるような性格的な「弱さ」や「ハニカミ」もこの魔女少女にはある。よって、我々のような弱いオタク男子にとってはそこが少々の取っつきやすさの救いにもなるのだけれども(笑)。


 その逆に、


●主人公少女の「使い魔」の分際であるのに、ナゼか彼女よりも年上で(笑)、主人公が処女であることをからかってもくる、極小の包帯水着(?)をまとった露出度大のナイスバディーで銀髪ロングの「淫魔」であるお姉ちゃん
●金髪巻き巻きドリルツインテールの「イギリス魔女」の美女
●そして、「フランス魔女組合」(笑)の年若い魔女たち数名……


 彼女らについては、キャラデザ的にもアクやクセは少なくて、吊り目でもなく端正ではあった。よって、我々萌えオタ的にも抵抗感はナイですよね?(笑)――結果的に、彼女らの中に混ざっていると、クセのある絵面の主役魔女少女がビジュアル的にも立ってくるのだ!?――


 以上は、いわゆるマンガ・アニメ的な虚構パートでのキャラデザ面でのお話である。



 だが、それ以外は、本格歴史モノの大作映画もかくや! といわんばかりの緻密な絵作りともなっている!


●貧しいけど慎(つつ)ましい、中世農民の衣服・住居・農耕・村落
●馬上のヨロイ騎士に率いられて、ヤリとタテを持った徴発歩兵と傭兵たちの行進


●従軍神父さんによる開戦直前のお説教や祈祷(きとう)
●弓矢の雨アラレ!
●刀剣での歩兵同士の乱戦!


●西欧中世社会の「典型」を象徴もしている、魔女マリアとは私的に関わってもいる貧しく慎ましい農家の家族たち
●善人ではあるものの、その時代相応の身分意識はあって、領地安堵のためには卑屈さや狡猾さといった政治的なふるまいもせざるをえない領主と、前述したその伝令をもっぱらとしている家臣の青少年クン
●傭兵たちと行動をともに随行していく、職業としての娼婦たち(汗)
●町の金髪青年である修道院長さまと少年修道士



 このテの作品の常としては、「よくお勉強しましたネ」的な内容で、「物語」としてはウマく昇華ができてはいない作品程度にとどまっているのに、扱っている「題材」や「ディテール面での歴史的な正確さ」だけで、作品のことをベタボメしてしまったり、『まおゆう魔王勇者』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200126/p1)や『狼と香辛料』(08年)などもそうだったけど、「エラいヒトの学説を当てハメま評!」(笑)といった、「作劇面での巧拙」を論じずに「作品外での歴史蘊蓄(うんちく)」トークを得意げに披瀝するだけの本末転倒なプチインテリオタクが跋扈(ばっこ)しそうでもある(イヤミ・汗)。


 だが本作は、設定倒れや役割人物像だけの作品にも陥(おちい)ってはいない。主要人物各々の人生を紡ぎつつも、それぞれが対角線の関係でも複雑に交わっており、因縁&人間ドラマを織り成してもいく。


 そして、あまたの「反戦平和」のお気楽な作品群とも異なっているのだ。


 たとえ魔女マリアの善意からの行動ではあっても、「知恵のない直情的な戦争仲裁」によって、稼ぎにありつけなくなった傭兵たちは村々の略奪を開始する!


 フランスの勝利で海の彼方へと放逐(ほうちく)できたかもしれなかったのに、ヘンに情をかけたばかりにイギリス兵が復活してきて、彼らの反撃を招くことにもなってしまう!


 実は彼女の行為こそが戦争を長引かせている側面もあって、領主による庶民たちへの新たな徴兵まで発生してしまうといった逆説・皮肉までをも描いていくといった八方ふさがり……。



 そんなマリアの行為を、それぞれ異なる理由で見咎めてもくる、「地の教会」――地上・現世でのキリスト教会!――と「天の教会」――天上世界にいる大天使ミカエルに、天の父ことユダヤキリスト教的な一応の唯一絶対神かキリストか!?――。


 あげくの果てに、今や落ちぶれて森の奥へと逼塞(ひっそく)している、キリスト教普及以前の時代からあるゲルマン民族や先住ケルト民族の土着の神々までもが登場してくる!


 それら太古の神々もまた、マリアと抗争や禅問答を繰り広げて、


●「魔女マリアの行為の是非」
●「『秩序』と『自由』という、実は相矛盾している2大原理の相克」
●「全知全能かつ天地創造の唯一絶対神がいるのならば、不幸はナゼにあるのか?」


といった議題までもが輻輳(ふくそう)されていく。



 最終的には、魔女マリアは大天使ミカエルとも対決!!


 あぁ、「天」や「神」を「国家権力悪」に見立てて、「反体制」や「反権力」でありさえずれば、その内実の正否は何も問われずに即「正義」扱いだとされてしまって、「オレ、カッケェェェーー!」みたいな、それはそれで今ではあまりに陳腐凡庸どころか、害毒すらあるであろう善悪逆転観のオチなのかよ……と思いきや。


 「天」や「神」を「汚れキャラ」にするのでもなく、魔女マリアこそが道徳的な最終勝利者でもナイ、第三のオチがそこには待っていた!


 それまでの本作に登場してきた大人数キャラクターの「証人喚問」(!)の末に、彼女を――キリスト教新約聖書のイエスの発言的な意味での――「善き隣人」だと認めつつ、互いに妥協させる「大岡裁き」は、狡猾な大天使ミカエルの条件闘争での作戦勝ちだったとも見えなくはない。


 「戦争廃絶」を目指してきた彼女が、大空を超高速で雄飛して武具をも飛ばしてみせる「魔法」という戦略的機動力を失って、好いた男と結ばれて、身の丈のできる範囲で今後は理想を目指していくといったオチも、それまでのストーリー展開や彼女の言動とはやや不整合があるようにも思えて、多少腑に落ちないところもあった。


 しかし、ミクロでのアット・ホームな幸福もドコかで求めていた彼女が、ココで報われたようでもあって感涙してしまう……。



 エッ、魔女マリアと農民少女を除いて、神父さま・傭兵・娼婦・領主さま他ほとんどのキャラクターは、原作マンガには存在しない、深夜アニメ版のオリジナルキャラクターだったの!? ナ、ナンだってェェェーー!


 魔女マリアの純潔(=処女=魔力)を、傭兵にけしかけて奪おうとまでしてしまう青年修道院長クン!(爆) そんな彼もまた彼女への異端審問における


「何もしない神ならば、存在しないのと同じだ!!」


という魔女マリアの見事な反駁(はんばく)に啓発されて、


●「神の存在証明」を唱えた神学者トーマス・アキナス
●「理性による神の存在証明の不可能性」を唱えたオッカム
●「実在論」――「普遍」それ自体が天上世界だかに実体的なモノとしても実在するという説――と、「唯名論」――「普遍」とは名指しのための単なる名称・概念・言葉にすぎないという説――


といった、西欧中世の神学論争も経由して、


●「『普遍』よりも『認識』こそが、存在・実在・本体であるのだ」
●「事実などない。あるのは解釈だけだ」


といった、もっと後世の哲学者・デカルトニーチェのような「神の否定」の一歩手前にまで至ってしまう。


 しかし即座に、「神を否定しない範疇での『自由意志』」を肯定していた古代末期の異端教父・ペラギウスに先祖帰りをしてみせる! ……といった自問自答を、高速早口の60秒間でまくしたてて(笑)、エビ反りして知的恍惚に浸ってしまった青年修道院長クン!



 最終回では、そんな主人公魔女の反駁の影響によって(汗)、「天は地上に不干渉!」といった自説・理論体系を固めていったその青年修道院長クンの眼前に、大天使ミカエルがいきなりに別用(爆)にて降臨してくる!


 自説とは大いに矛盾してしまった超常現象に遭遇して、ミカエルによる魔女マリアについての質問についてもアタマに入らず、「アリエない!」と狂乱させてしまうイジワルな作劇もまたサイコー!(笑)



「より長大で歴史的な時間尺度の中では、大天使ミカエルもまた、いずれは消滅はせずとも『過去の遺物』と化して連鎖していくだけなのだ……」


といった趣旨のことを、欧州先住のゲルマン神話ケルト神話の神々であろう存在をして語らしめて、神々や宗教の存在を相対化しつつも完全否定ではなく条件付きでは肯定もしてみせているようでもある、作り手の思想的な達観もダテではない。


 2015年冬季のベストアニメだったと私見するけれども……。残念、円盤売上は爆死なのであった(汗)。
純潔のマリア

Philosophy of Dear World(アニメ盤)
(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.64(15年5月2日発行))


『revisions リヴィジョンズ』

(2019年冬アニメ)
(2019年4月27日脱稿)


 フジテレビ「ノイタミナ」枠に続く第2の深夜アニメ枠「+Ultra(プラス・ウルトラ)」の第2弾は、『無限のリヴァイアス』(99年)・『スクライド』(01年)・『プラネテス』(03年)・『ガン×ソード』(05年)・『コードギアス 反逆のルルーシュ』(06年)などの今やベテラン実力派監督・谷口悟朗が登板した。


 一応は巨大ロボットアニメに分類されるのだろうけど、楳図かずおの名作マンガ『漂流教室』(72年)やら名作深夜アニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない』(11年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191103/p1)あたりの現代的な換骨奪胎版だともいえはする。しかし、筆者には「ヒーローになりたい正義感はあるけど、空気(文脈)が読めておらず虚栄心も満々(汗)なので独善的な行動を取るイタい熱血少年」を主人公に据えていたマンガ原作の巨大ロボットアニメ『鉄(くろがね)のラインバレル』(08年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20090322/p1)をキチンと上手に作ったバージョンに思えた(笑)。


 映像的には同季の2019年冬の深夜アニメ『バンドリ!(2期)』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190915/p1)や『荒野のコトブキ飛行隊』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20201101/p1)に、ちょい前の『シドニアの騎士』(14年)や『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190922/p1)と同様に、手書き作画ではなくセル画調のCGでキャラクターを動かしている。個々人の好みではあろうけど、筆者個人は本作も含むコレらの作品の人物芝居部分に過剰な違和感を抱いてはいない――アニメ業界を描いた深夜アニメ『SHIROBAKO』(14年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160103/p1)で若いアニメーターたちが心配したように、遂にアニメーター大失業時代も目前到来か!? と心配はするけれども(汗)――。


 小学生時代に仲良しグループで集団誘拐されて、未来人の戦闘美少女に救出されて、将来に待ち受ける災厄を警告されるも、高校生となって同世代の男女との身近な交友関係の中で「モテ」や「虚栄心」や「オイシい目」に会いたいなどという青春期特有の俗事にウツツを抜かしている友人たちは「アレは夢まぼろしであったのだ……」と、いつまでも子供時代の過去にこだわっている主人公青年をバカにしている。
 ここで通常の物語だと、「怪獣」や「幽霊」などの非現実的な存在をバカにする連中がイタい目を見て、信念を貫き通した方が劇中では正しかった! となるモノなのだけど、この作品は先にも述べた通り、そこにヒトひねりを加えている。
 「事実」面では彼の認識やこだわりが正しかったのだとしても、当の少年の「メンタル」面にはカナリ偏りや選民意識もあって問題アリ! と屋に屋を重ねる作劇でもあるあたりが実に面白いのだ――この少年の言動には、筆者なぞもオモテにこそ出さないけど内心では似たようなことを考えてもいるので(爆)、我が身を相対化されてしまって耳がイタいところもあるけれど(汗)――。


 かの未来人戦闘美少女とも再会を果たすも、その彼女は小学生時代に救出してくれた彼女よりも前の時点(!)での彼女らしくて(汗)、彼女は少年たちを知らないあたりで、ディスコミュニケーションなドラマも構築。


 渋谷駅周辺がまるまる荒野化した未来へ転移することで、渋谷区役所や警察署に自治会などのオッサンたちも大活躍! 彼らもスクランブル交差点に集っていた烏合の衆である庶民・大衆・愚民の皆さんや、ナゾの敵勢力に対して懸命に対処することで、物語の序盤では怪獣映画『シン・ゴジラ』(16年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160824/p1)的なリアル・シミュレーションの妙味も出せており、少年少女ばかりが活躍していて、往年の「大人は悪だ! (30歳以上は)信じるな!!」(笑)的な陳腐凡庸さはナイので、世界観や人間観も狭くない。
revisions リヴィジョンズ BD-BOX [Blu-ray]

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.74(19年5月4日発行))


『ID-0(アイ・ディー・ゼロ)』 ~谷口悟朗×黒田洋介×サンジゲン! 円盤売上爆死でも、宇宙SF・巨大ロボットアニメの良作だと私見

(2017年12月13日脱稿)


 遠未来の遠宇宙を舞台にした、原作なしの巨大ロボアニメ。といっても戦争状況を描く作品ではナイ。
 往年のOVA『おいら宇宙の炭鉱夫』(94年)みたいな、無骨なワケあり海賊まがいの家族的小集団が、陰謀で鉱石発掘中に宇宙に捨てられた学生少女を救ったことから、同業の大企業や惑星連合との抗争に巻き込まれて、マクロはこの世界の星間文明を成り立たせる超光速航法を可能とするオリハルコンもといオリハルト鉱石のヒミツ&危険性、ミクロは記憶喪失の主人公青年が自身の忌まわしき出自を探る物語をパラレルで進行させていく。


 かつては下請けCG屋で、今やセル画ライクでも手描きではない艦隊戦アニメ『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』(13年)や巨大ロボットアニメ『ブブキ・ブランキ』(16年)などを元請けで手掛けたサンジゲンが製作したフルCGアニメ。


 一応の本格SFモノだともいえるけど、それだけではマニアックにすぎて絵的にも色気がないし、今のオタにはウケないとでも思ったか、


・学生のメインヒロインは頭はイイけど慌て者で、茶髪のボリュームもウスくてショートでデコ出しのキューピーちゃん髪型(?)のロリ系童顔少女
・海賊船まがいの宇宙船のオペレーターも小柄なウス青グレー髪のメガネっ娘
・オリハルト鉱石が人間化した少女などはハッキリとピンク髪の幼女!


に設定していて手ヌカりがナイ!?


 巨大ロボットも人間搭乗型ではナイ。『攻殻機動隊』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20170510/p1)ライクに人間の精神活動も電気信号に還元できるのであれば、ロボットの電脳にコピーして人間は休眠状態とし、ロボでの活動が終わるやその間の記憶を人間に戻して、活動中にロボが破壊されても人間は死ぬことなく、死の瞬間のトラウマを継承することもナイ。
 とはいえ、人間を休眠させずに巨大ロボと並行稼働も可だろとか、同一個人の精神データを多数の巨大ロボに同時コピーも可だろとのツッコミの余地はあるけれど、そこまで描くと煩雑だし、この作品の主題とは乖離するから、そこに頬かむりしたことは正解には思うのだ。
 あと、巨大ロボの動きは人間そのもので巨大感はさしてナイけど、その世界観からいってもコレで正解ではあるだろう。


 無骨なメガネの学者風情のラスボスも登場して、この世界の高度文明を成り立たせる鉱石の「ヒミツ」と、記憶喪失かつ肉体も所在不明か消失してしまった主人公青年の「ヒミツ」も、イイ意味でのお約束かつご都合主義で実は「同一のヒミツ」であった! として収斂していくけど、物語作品一般のウェルメイドな符合感を醸すのにはこのテに尽きる!(笑)


 その過程で明らかになる、主人公青年の記憶喪失以前の非人間的で、自身の妻子さえをもモルモットにするような冷徹・酷薄極まりない人格。ラスボスこそが世界を守ろうとして、主人公青年の前世(?)こそが危険なマッド科学者の悪党じゃん! という逆立ちした展開となっていくのが、この作品の秀逸なところでもある。


 もちろんエンタメとしてのカタルシスも確保する都合上、ラスボスにもやはり改めて邪な面を持ってもらい、現在の主人公青年はかつてのマッド科学者とは連続しつつも、別人としての人格を育んだ独立した存在であるとも位置付けて、最後の対立構図を巨大ロボvs巨大ロボに持っていくことで、巨大ロボものとしての仁義も立ててみせている。


 監督はともに名作である『コードギアス 反逆のルルーシュ』(06年)や『無限のリヴァイアス』(99年)などを手懸けた谷口悟朗。脚本も『リヴァイアス』や『機動戦士ガンダム00(ダブルオー)』(07年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100920/p1)などの黒田洋介で、今ではともにベテランだけれど、その実力をいかんなく発揮したというのが筆者の認識。


 しかし、円盤第1巻の売上は600枚弱の爆死。500枚弱の同季2017年春の本格SFアニメ『正解するカド』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190929/p1)の不人気同様、日本のロボットアニメやSFアニメの未来は暗い……(笑)。
オリジナルアニメ『ID-0』OP主題歌「ID-0」(アニメ盤)

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.70(17年12月30日発行))


アニメ映画『コードギアス 復活のルルーシュ

(2019年4月27日脱稿)


 2006年と2008年の全2期で放映された当時の覇権アニメ『コードギアス 反逆のルルーシュ』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20081005/p1)。


 優勝劣敗の英米流「新自由主義」を戯画化した「大英帝国」モドキによる占領下で、「爆弾テロ」で抵抗を続ける「日本人」を描いて、当時の「イラク戦争」をも想起させた本作。良くも悪くも第2次大戦戦勝国では抵抗のシンボルにすらなる「ナショナリズム」が、敗戦国の日独などでは絶対悪とされたことで、本作でも大英帝国は敵役だけど、独立抵抗運動に「日の丸」を掲げることでキナ臭さも漂い、しかしてコレならタブーも正当化できるような背徳感もブレンド、作品の構図に安直な勧善懲悪ではない複雑性をも与えていた。


 極め付けは日本独立運動の首魁に収まる黒仮面の男の正体! それは母を殺され廃嫡されたことで父皇帝に復讐を誓う、東京の英国租界で正体を隠して暮らす、戦災で死んだハズの大英帝国第11皇子の少年主人公! 彼は天才的な戦略眼とナゾの少女に授与された制限ルール付きの超能力で大英帝国と対峙し、日本独立はダシにすぎない!


 まぁイラクやアフガンの地での反米レジスタンス、2~3世になってもチャイナタウンやコリアンタウンを維持できている中韓などの世界標準とは異なり、「ギブ・ミー・チョコレート!」と米兵に群がったり、空気を読んで過剰に同化したがる我が日本民族は、サヨクの分析とは真逆で世界で最も「ナショナリズム」が弱い卑屈な民だと私見する。大作映画『日本沈没』(73年)のラストで世界各地に散らばった亡国の日本人たちは、2~3世代で日本語&日本文化を消失、現地に同化するだろうから、爆弾テロで抵抗する日本人像はホントはリアルじゃないと思う(笑)。


 「ナショナリズム」の話かと思いきや、世界各国の亡命政権とも結んで――「グローバリズム」な「世界統一政府」ではない――「各国」の存在は残したままでの「インターナショナル」な「合集国」vs「大英帝国」、劇中内超能力の源泉たる心理学者・ユング的な全人類の「集合無意識世界」での「神」殺し(?)を経て、世界を平和目的で一致団結させるために自身は大悪党のフリ(!)をして、憎悪を一身に集めて殺されていく主人公! 真相は少数だけが知っている。まさに男子の本懐と云ったら今だと男女差別だが(汗)。



 個人的にも高く評価する大傑作の続編が、放映終了10年後に3本の総集編映画を経て登場。


 ちなみに、総集編1作目はTVアニメ版1期全25話の冒頭11話、成田山の攻防で弱小抗英組織が名を上げるまでのTV版通りの展開。
 2作目は1期中盤~2期全25話の中盤までを駆け足で展開。1期終盤~2期序盤はヤマ場とせずに、大英帝国皇族たちから見た辺境の事件として流していく。
 3作目は2期終盤をジックリ描くけど、尺の都合かオレンジ髪の長髪少女は延命。完成作品ではともかく脚本のト書きの公表で明かされた、死んだハズの少年主人公がラストで馬車の馭者として延命か? という描写は批判も多かったか馭者ナシに改変されている。


 その続編たる本作では、冒頭から精神が幼児退行した状態で少年主人公が早々に登場。先に超能力を授与した少女が未練で先の集合無意識世界から復活させたとした。


 あとは劇中世界のその後の平和な光景と、往時は敵味方に別れて戦った主要キャラが一同に介する結婚式の二次会(笑)を経て、主人公が目指した「弱者が虐げられない世界」の象徴でもあり、実は主人公少年の妹でもある車椅子で盲目の少女――だから廃嫡皇女でもあり、戦後は高官――が、超能力教団の残党に拉致されることで新たな紛争が勃発!
 かつては骨肉の争いを繰り広げた姉でもある元日本総督の皇女や、日本最後の総理の息子でありながら大英帝国内では名誉白人として体制内改革を目指した親友少年、日英混血少女らとも心ならずも共闘して、ベテラン・戸田恵子が演じる敵の女首領と中東チックな土地で大攻防戦を繰り広げる。


 ジャンルの歌舞伎的様式美と化した「時間ループ」要素も導入して、その能力を幾度も駆使する女首領とそれを見抜いてウラをかく知謀合戦をも描いていく。しかして策謀が成功するや狂的に高笑いする描写で、主人公少年を劇中内での絶対正義ではなく中2病としても描いている二重目線は、この続編映画でも健在だ(笑)。


 もちろん10年後のファンムービー、石原莞爾『世界最終戦論』(1940(昭和15)年)の域に達した原典終盤と比すれば実にミニマムな話に過ぎないけど、劇中内での世間では「世界制服を一時は達成して世間を震撼させた最悪の独裁者でもあるあの悪逆皇子」の復活ではない活躍としている。キレイに完結した大名作でもある原典を毀損(きそん)させずに、ファンサービス的なボーナス続編を構築するのならば、見事に妥当な落としどころのストーリーだったとは思えるのだ。


 ベタつかないけど、主人公少年に超能力を授与したクールな少女の不老不死にまつわる裡(うち)に秘めた孤独に寄り添って、主人公&少女が歴史の闇へと消えていくボーイ・ミーツ・ガール・アゲインのミクロな帰結も、本作のキャラクタードラマを完結させる「小さな救い」で良としたい。
コードギアス 復活のルルーシュ [Blu-ray]

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.74(19年5月4日発行))


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katoku99.hatenablog.com
(『純潔のマリア』評は、当該記事と同一内容)


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谷口悟朗監督アニメ『バック・アロウ』放映中! 『スケートリーディング☆スターズ』完結記念!
#純潔のマリア #リヴィジョンズ #ID_0 #コードギアス #復活のルルーシュ #谷口悟朗



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