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ウルトラマンエース46話「タイムマシンを乗り越えろ!」

ファミリー劇場ウルトラマンA』放映・連動連載!)


「ウルトラマンA 再評価・全話評!」 〜全記事見出し一覧


(脚本・石堂淑朗 監督・古川卓巳 特殊技術・田渕吉男)
(文・久保達也)
 突如出現したタイム超獣ダイダラホーシは防衛組織・TAC(タック)の攻撃を受けると姿をくらまし、何百キロ先の街へ瞬間移動しては破壊を繰り返した。
 足窪村に逃げてきたダイダラホーシが姿をくらますや、吉村隊員と美川隊員が乗る戦闘機タックスペースまでもが一緒に姿を消してしまった!
 付近を捜索するTACだが二人の姿はなく、タックスペースが不時着した形跡すら見あたらない。


 そのとき竜隊長の通信機に吉村からの連絡が入った。だが自分たちがどこにいるか全くわからないと告げたあと、通信は途絶えてしまう。
 吉村と美川は謎の野武士集団に襲われていたのだ。二人は自在に時間移動ができるダイダラホーシによって奈良時代まで連れていかれたのだ!


 ダイダラホーシの語源は、日本各地に残る巨人伝説である「だいだら法師」「だいだらぼっち」。
 (東海地方で流れている海苔(のり)メーカー・浜乙女のCMで老人が語る話の中では「でえたらぼっち」と表現されている。ちなみに老人の声は滝口順平が担当している。かの宮崎駿の大ヒットアニメ映画『もののけ姫』(97年)のラストにもダイダラボッチが登場)。
 伝承ネタから怪獣を発想することが多い石堂淑朗らしい超獣だが、今回はそれだけにとどまらず、タイムトラベルを扱ったSFの領域に踏みこみ、新味を加えることに成功している。



 まあタイムトラベルなんて現代では目新しくもなんともないのだが、SF性もあるギャグ漫画であるタイムマシンで未来から来た猫型ロボット『ドラえもん』(69年〜)はともかくとして、「SF作品」として製作されてはいなかった(世間もそうは扱ってはいなかった)70年代前半の変身ヒーロー作品においては、『キカイダー01(ゼロワン)』(73年)を除けば意外なくらいにこうしたネタを扱ってはいない。


 もっとも72年1月にNHKでスタートした『少年ドラマシリーズ』の第一作は、時間SFをあつかった筒井康隆原作の『タイムトラベラー』である
 (日本ジュブナイルSFの古典『時をかける少女』(65年に連載開始、67年に初単行本化)の改題。好評につき同年11月にはオリジナル展開で『続タイムトラベラー』が放映されている。主演はのちに『ウルトラマン80(エイティ)』(80年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100502/p1)でマドンナ教師・京子先生を演じることになる浅野真弓!(島田淳子名義))。
 そうしたSF指向の強い作品は同枠が扱うことにより、当時は両者が上手に住み分けができていたのだ。
 まあ住み分け以前に日本SFの歴史自体が、本作『ウルトラマンA(エース)』放映の10年強前の1960年前後に始まったばかりであり、この70年代初頭の『少年ドラマシリーズ』自体が、怪獣などが出ない本邦初の純SFドラマシリーズみたいなものだが(笑)。


 そんな時代に幼少のころを過ごしたので、まだ幼なすぎて当時は『少年ドラマシリーズ』を筆者個人は観てはいなかった
 (もう少し長じてからは、76年5月に放映されていた『明日への追跡』が妙に印象に残っている。確か『帰ってきたウルトラマン』(71年)第15話『怪獣少年の復讐』の史郎少年や『超人バロム・1(ワン)』(72年)に合体変身する白鳥健太郎役の子役・高野浩幸も出てたような……)。


 同シリーズに対して世代的にはほとんど想い入れのない人間ではあるが、そんなごくごく個人的な経験は差し引いても、「特撮」というジャンルの特殊性を考えてみるに、センスオブワンダーなりスペクタクルな「映像」や、怪事件やヒーローと怪獣怪人との「アクション」のカタルシスに、見せ場や山場が来るような「特撮」ジャンルと、そのような頭の悪い(笑)ドンパチよりも、SF的なギミックによる知的興奮に見せ場や山場が来るような「SF」ジャンルとでは、隣り合ってはいても異なっており、「怪獣映画」と「SF作品」はやはり「別物」であると考えている。
 (参考:『特撮意見④ 〜特撮ジャンルの独自性・アイデンティティとは何か!? 』http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060411/p1
 よって、近年の特撮ヒーロー作品にやたらと「SF性」を持ち出そうとしたり、特撮評論において「SF性」の有無や多寡で評価しようとする動きには反対なわけである。


 ただ当時の円谷プロにとっては、かつて『ウルトラQ』(66年)や『ウルトラセブン』(67年)で自分たちが描いていたような「SF作品」のお株をNHKに持っていかれてしまったことはやはり面白くなかったのであろうか。
 『ミラーマン』(71年)や『ファイヤーマン』(73年)にはそうした反骨の気概が垣間見えるような気もしないでもない
 (決して成功したとは言い難いが……まあ基本的にはSFではあってもやはりジャリ番にすぎないNHK『少年ドラマシリーズ』の存在自体を、70年代当時の戦中世代の30代のオジサンたち製作スタッフ陣は知らなかった可能性の方が高いが・笑)。



 吉村と美川を救うために、TACはタイムマシンの研究をしている科学者を訪れるが、まだウサギを5年前の時代に送り込む実験をしている段階であり、


 「過去に行って小枝を一本折るだけで、今のこの時代が存在しなくなるかもしれない」


 とタイムマシンの使用をその科学者が断固反対したり、竜隊長のセリフ


 「(過去で)ひとりを殺したら今の時代の何千人何万人という人間が存在しなくなる危険がある」


 など、当時の時点ですでに基本的事項が押さえられ、タイムマシンが決して「夢の乗り物」ではないとして描かれていることに思わずうならされてしまう。



 ただ筆者的にはそうしたSF的色合いよりも、


・タイムマシンを借りるのをあきらめたTACがダイダラホーシにチェーンをブチ込んで一緒に奈良時代へタイムワープするとか
 (時間の壁を超えて飛行する際の特撮の光学ビジュアルがすばらしい)、


・竜隊長と北斗が奈良時代でチャンバラを繰り広げ、猛烈な弾着の中で馬を駆って磔(はりつけ)にされた吉村と美川を助けに行くとか
 (ふたりとも乗馬がうまい! こうしたあたりは関東では裏番組だった特撮時代劇ヒーロー『変身忍者 嵐』(72年)への対抗か?)、


・吉村と美川が人柱(ひとばしら)にされているのはその日が奈良の大仏開眼の日だからとか(開眼供養の日には僧だけでも1万人以上が集まったハズなのは置いとけ!・笑)、


 ……なんていう破天荒さにやはり目がいってしまう。


 ガチガチとしたSF性ではなく、変身ヒーロー作品の面白さはやはりそこにあるのだ! と主張するような絵作りには大満足である。



 今回エースとダイダラホーシが大木を使ってチャンバラを繰り広げる。
 特殊技術(特撮監督)を担当した一部で猛反発を受けつつも他方でカルト的人気を誇る(笑)東宝の田渕吉男は、
・第9話『超獣10万匹! 奇襲計画』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060708/p1)では、忍者超獣ガマスに手槍やマキビシを使わせ、
・第10話『決戦! エース対郷秀樹』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060709/p1)では、犀(サイ)超獣ザイゴン相手にエースに闘牛士を演じさせたり、
・第15話『夏の怪奇シリーズ 黒い蟹(かに)の呪い』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060828/p1)や第48話『ベロクロンの復讐』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070402/p1)では、エースと超獣に相撲をやらせたり……
 と遊び心に富み、破天荒な絵づくりに大いに貢献している。


 エースの決め技が、第9話がパンチレーザースペシャル、第15話がアタックビーム、そして今回がエネルギー光球と、腕にエネルギーを一局集中させて繰り出すインパクトの強い技が目立つのがそれを象徴している。



<こだわりコーナー>
*タイムマシンのセットですが、ウサギを乗せた回転ドラムがアップになるだけ。
 円筒型のガラスのカプセル(内部を青い電流が上下に走っている)二つを画面手前に配し、背後で一同が話していたりして、全体像は不明。つーかまともなセットは作られていません。
 部屋は壁がスカイブルー。本棚があるかと思えば作戦室によくあるような、多くのランプが明滅する電子計算機がありますが、何かの流用かと。ロケではなくセットです。


*竜隊長と北斗が乗るタックスペースがダイダラホーシとともに奈良時代へとタイムワープする場面に流れる曲は、『ウルトラセブン』第39話『セブン暗殺計画(前編)』で分身宇宙人ガッツ星人によって、無人の乗用車が夜の街を動き出す場面に使用された曲である。
 もっともこの際は不気味さを強調するためか、テープの回転速度を1/2に落として使われており、本来のかたちで使用されたのは今回が初めてである。異次元場面を描写するにもふさわしいと思える旋律であり、『A』で定番の曲としてぜひ使用してほしかったと思うのだが。


*ダイダラホーシの着ぐるみは腹部のトゲから判断すると、第12話『サボテン地獄の赤い花』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060801/p1)に登場したさぼてん超獣サボテンダーの改造と思えるのだが、第24話『見よ! 真夜中の大変身』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061015/p1)に登場した地獄超獣マザリュースにもサボテンダーは改造されており、『ファイヤーマン』や『ジャンボーグA(エース)』(共に73年)も並行して製作していた当時の円谷プロの台所事情がうかがえます……


*本話の特撮シーンにおける奈良の大仏はなにかの既製品の大仏像の流用のようだが、あまりに安っぽくて巨大にも見えなくてフォーローのしようがない(笑・〜金箔であるのと、大仏を収める大仏殿がないのは造立当初の史実通り)。
 奈良の大仏は、『マグマ大使』(66年)の第21話から第24話(怪獣ストップゴン登場編)のうちのどれか(記憶が曖昧ですみません……)にも造形物が登場するが、こちらは精巧につくられた大仏殿をストップゴンが破壊して中から大仏が姿を見せ、ストップゴンは大仏様の手を踏み潰して破壊してしまう(なんとバチ当りな……)。


奈良時代にはまだ武士は出現していないハズだが、細かいことは気にするな(笑・その次の平安時代中期以降に台頭)。


*われらが主人公・北斗星児隊員こと高峰圭二氏は、DVD『ウルトラマンA』Vol.8(ASIN:B00024JJI8)の解説書の高峰圭二独占インタビューによると、子供のころからチャンバラが好きで、親にナイショでフジテレビの『竜巻小天狗』(60年)なるTV時代劇のオーディションに応募して主役に選ばれたと語っている。
 中学一年の終わりにオーディションの募集広告を見て履歴書を送ったのだとか。高校生のときには日本テレビの『真田三銃士』(62年〜“十勇士”のタイトルじゃないよ)で猿飛佐助を演じたらしく、だから『A』の裏番組の『変身忍者 嵐』の主人公ハヤテ役でも彼はいけたんじゃないかと個人的には思ったりする。
 高峰圭二氏は『A』のあと、時代劇スターの御大(おんたい)・萬屋錦之介よろずや・きんのすけ)主演のTV時代劇の名作、『必殺』シリーズの大ヒットで70年代前中盤に流行していた裏家業もののひとつであり、お奉行さま自身が表で裁けぬ悪を裏で成敗する(!)『長崎犯科帳』(75年)で長崎奉行所の同心(現代でいう警官)・猪俣安兵衛役でレギュラー出演を果たすことになる
 (同じような例に『ウルトラマンレオ』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090405/p1)の主役・おおとりゲンこと真夏竜氏が、やはり萬屋錦之介蘭学医の剣豪・刀舟(とうしゅう)先生役で主演する『破れ傘刀舟 悪人狩り』(74〜77年)の最終2クールで、刀舟の弟子としてレギュラー出演した例がある)。


 高峰圭二氏は以後も70〜80年代のあまたのTV時代劇作品に、名脇役としてゲスト出演にて活躍をしつづけた。
 高峰氏は次作『ウルトラマンタロウ』(73年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071202/p1)の主役・東光太郎(ひがし・こうたろう)を演じた篠田三郎氏とも、TV時代劇『必殺』シリーズで共演を果たしている。詳細は第20話『青春の星ふたりの星』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061008/p1)評にて。


*そして竜隊長こと瑳川哲朗氏といえば、やはりスパイアクションの名作TV時代劇『大江戸捜査網』(70〜84年)!
 杉良太郎里見浩太朗松方弘樹と主役が交代していく中、寺子屋の先生をしている浪人に身をやつす隠密同心のサブリーダー・井坂十蔵を演じ続け、並木史朗主演の『新・大江戸捜査網』(84年)では隠密支配・日向主水正(ひゅうが・もんどのしょう)を演じた。
 近年ではNHK大河ドラマ新選組!』(04年)で、あの有名な京都での新選組VS相撲の小野川部屋との騒動エピソードで、小野川親方を演じている(そもそもNHK大河『三姉妹』(67年)で瑳川は新選組局長・近藤勇(こんどう・いさみ)を演じたゆえの出演と思われる)。
 瑳川はSF好きとしても知られるが、ジャンル関連では『スペース1999』(74年・イギリスITC・77年日本放映)で主役コーニッグ指揮官、『スタートレック』でも映画版(アメリカ・79年〜)がTV放映された際にはバルカン人こと副長ミスター・スポックの吹き替えを担当している。


*「小枝を一本折るだけで、今のこの時代が存在しなくなるかもしれない」と云っておきながら、エースと超獣が大木を引き抜いてバトルしてしまったり……(大爆笑!)。
 ついには奈良近辺で火山も噴火!(奈良から遠い富士山ならばともかく、そんな史実がどこにある!・笑)。
 そのへんは『A』に限らずこの時代の作品一般のラフさでありご愛嬌。多分、このへんは石堂脚本ではなく、鬼才・田淵吉男特撮監督のアイデアではなかろうか? 鬼才と鬼才のコラボだ(笑)。


 とはいえより厳密に云えば、程度の差とはいえ過去の時代にありえない存在が出現し、呼吸して地面を踏んでいるだけでも歴史は変わるハズであり、ありとあらゆるタイムトラベル作品がこのタイムパラドックスを解決できていない。


*あの時代(70年代前半)のヒーロー作品にタイムスリップネタは意外なくらいに扱ってはいないと書いたが、『キカイダー01』第36話『四次元の怪 恐怖のタイム旅行』は、敵組織・シャドウが江戸時代の蘭学者にして天才発明家・平賀源内(実在の人物)を連れてきて協力させようという話。小枝一本どころか江戸の町の人々がバサバサと斬り殺されている。いかにも東映らしいアバウトさ(笑)。


*視聴率17.1%


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2007年号』(06年12月30日発行)『ウルトラマンA』再評価・全話評大特集より抜粋)


[関連記事] 〜タイムパラドックスネタ!

仮面ライダーディケイド』#7「超トリックの真犯人」 〜タイムパラドックス解析!

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仮面ライダー電王』 〜後半評 複数時間線・連結切替え!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080217/p1

ウルトラマンエース』#46「タイムマシンを乗り越えろ!」

〜小枝1本もダメなハズが樹木でチャンバラ!(笑)

  (当該記事)

ウルトラマン80』#26「タイムトンネルの影武者たち」

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101023/p1

西遊記』2006年版#8「時の国」