『慎重勇者~この勇者が俺TUEEEくせに慎重すぎる~』『超人高校生たちは異世界でも余裕で生き抜くようです!』『本好きの下剋上 司書になるためには手段を選んでいられません』『私、能力は平均値でって言ったよね!』『旗揚!けものみち』 ~2019秋アニメ・異世界転移モノの奇抜作が大漁!
『異世界かるてっと』 ~原典『幼女戦記』・『映画 この素晴らしい世界に祝福を!-紅伝説-』・『Re:ゼロから始める異世界生活 氷結の絆』・『盾の勇者の成り上がり』・『劇場版 幼女戦記』評 ~グローバリズムよりもインターナショナリズムであるべきだ!
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深夜アニメ『異世界食堂2』(21年)が放送中記念! とカコつけて…… 深夜アニメ『異世界食堂』(17年)・『かくりよの宿飯』(18年)・『異世界居酒屋~古都アイテーリアの居酒屋のぶ~』(18年)評をアップ!
『異世界食堂』
(2017年夏アニメ)
(2017年12月13日脱稿)
毎週土曜日にだけさまざまな異世界に接続されるという、日本の某・商店街の雑居ビルの地下1階にある洋食屋さん。そこに集ってくるいろいろな種族の異世界人たちにも、ダンディーなボイスの諏訪部順一が演じているコックのソリッドなヒゲ面の親父さんは分け隔てなくビーフシチューやメンチカツにエビフライなどの庶民的な定番ランチをふるまって、異世界人たちも舌鼓を打っている……といった深夜アニメである。
異世界人とのコミュニケーションには、設定では魔族でも見た目は金髪ミニツインテールでメイド服姿の人間にしか見えない美少女キャラ・アレッタ嬢が、空腹の果ての無銭飲食ゆえに雇われて給仕として働きだすというエピソードを序盤に配することで、作品に女っ気と華(はな)をも与えている。アレッタ嬢を演じるのはアイドル声優・上坂すみれ(うえさか・すみれ)。
そして、30分尺に前半Aパートと後半Bパートで2話を放映するというスタイル。
私事で恐縮だが、職場の同僚の雑談などに耳をそばだてていると、ネット配信の深夜ドラマ『孤独のグルメ』(12年)や『深夜食堂』(09年)や『ワカコ酒』(15年――5分アニメ版より実写版の方が面白いと私見――)にハマっているという声が聞こえてくることがある。
筆者もザッピング視聴をしていて、それらの作品に遭遇すると、明らかに低予算でゲストの数も少なく、ロケにもほとんど外出しないのに、それでも「食」や「客」の人生に焦点を当てていって味わい深く仕上げた作風に、ついつい見入ってしまったりすることがある。
本作も原作者のアイデアか編集者の要望かは知らねども、それらのオタク向け異世界ファンタジー版といったところだ。くれぐれも云っておくけど、先行作のマネだと罵倒したいのではナイ。先行作から着想を得たミックス・アレンジであろうとも、面白ければそれでイイし、ツマラなければそれまでのことである。
とはいえ、悪くはないけど、本作とよく似通っている『深夜食堂』あたりに本作が圧倒的に勝っているかというと……(以下略)。
『かくりよの宿飯(やどめし)』
(2018年春アニメ)
(2018年4月27日脱稿)
昨今プチ流行している、異世界で「食堂」やったり「居酒屋」やったりのオタク女子向け版であるらしい。
野郎オタク的には、(ひとり)ぼっちアニメ『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』(13年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20150403/p1)の女子高生サブヒロイン、「週刊少年ジャンプ」連載の人気ラブコメ漫画(11年)の深夜アニメ化『ニセコイ』(14年)や大ヒット・スマホゲーム『グランブルーファンタジー』(14年・17年に深夜アニメ化)のメインヒロインでもある人気声優・東山奈央(とうやま・なお)ちゃんが主演である。
そんな彼女が主題歌も歌っており、媚びてはいないけど可愛くて、澄んでいるのに適度にくぐもってもいる(?)高音に、近年では適量な艶(つや)っ気もある倍音響きも加わってきた感じであり、本作でのプレーンな主人公女子大生役も実にイイ感じではある。
おそらくはメインターゲットのオタク女子たちにも「男に過剰に媚びやがって!」とは反発されない範疇での、イヤミのない可愛らしさを体現したボイスに聞こえているのではなかろうか?
内容はふたり暮らしをしてきた祖父の死で、実は祖父には多額の借金があったことが判明して(!)、そのカタとして鬼・天狗・雪女・九尾の狐などの日本妖怪たちが集う異世界・隔り世(かくりよ)の和風旅館にて丁稚奉公(でっちぼうこう)……もとい、離れを借りて「小料理屋」を開くことで、次第にその名も知られていく……。もとい、和服姿の若旦那や仲居さんらのイケメン美男妖怪たちに囲まれてウットリ?……といったもの。
とはいえ、野郎オタクを置いてけぼりな作品でもなく、誰が見ても普遍的に楽しめる作りにはなっているとも私見する。
『異世界居酒屋~古都アイテーリアの居酒屋のぶ~』
(2018年秋アニメ)
(2018年12月26日脱稿)
西欧中世ファンタジー風の異世界の古都に、現代日本の居酒屋がある……。というのか、京都のシャッター商店街にある居酒屋の入り口が異世界の古都につながってしまったので、やはり異世界人のお客さんが来店してしまう……。ナンだか設定的には昨17年夏の深夜アニメ『異世界食堂』とさして変わらないような作品に見えてしまうのだけど(笑)。
ダンディーなボイスの杉田智和が演じている短髪オトコ前で元・板前の大将・のぶサンが、おでん・若鳥の唐揚げ・海鮮丼などをふるまって、西欧中世ファンタジー風異世界人たちが舌鼓を打っている。
給仕は異世界人ではなく現代日本人だが、アイドル声優・三森すずこ(みもり・すずこ)が明るく元気で機転も利いていてコミュ力・胆力もある看板娘・千家しのぶ嬢役を務めることで、作品に女っ気と華をも与えている。
そして、30分尺に前半Aパートと後半Bパートで2話を放映するというスタイル。……『異世界食堂』とあまりにもフォーマットが酷似しているのだけれども、イイのだろうか?(笑)
『異世界食堂』同様に、近年多い小説投稿サイト発祥の作品で、商業誌にスカウトされてマンガ化や深夜アニメ化にまでコギつけたというパターン。他にも同サイトには、『異世界駅舎の喫茶店』なども控えているので、深夜アニメバブルの昨今、同工異曲の作品が今後、数年間は跋扈するのだろうとも予想する。
こうなると、目利きかドーかもわからない、個人の好悪・相性での「当たり/ハズレ」もあるだろう商業誌の編集者に持ち込みするよりかは――目利きの編集者ほど、往々にして善人すぎてコミュ力もなくって、プレゼンで編集部内を説得できない御仁が多いとも仄聞するので(汗)――、小説投稿サイトなどで自力で人気を確保してから、商業媒体にスカウトされる戦略を取った方がクレバーかもしれない(笑)。
とはいえ、本作もシニカルに見れば、実写深夜ドラマ『孤独のグルメ』(12年)・『深夜食堂』(09年)・『ワカコ酒』(15年)などを異世界ファンタジーに翻案したものでもある。『幕末グルメ ブシメシ!(武士飯)』(14年・17年に実写ドラマ化)とか『極道めし』(06年・11年に実写映画化・18年にBSドラマ化)とか『かくりよの宿飯』(15年・18年に深夜アニメ化)など、時代劇や青年誌マンガに少女小説まで拡張していけば、ネタ自体はもうそんなに斬新でもないのだろう。
しかし、ネタの新旧と作品の質に比例関係があるワケでもない。よって、アリガチでも面白い作品ができるのであれば、それはそれでOKなのだけど……。
ヤボなツッコミだろうが、筆者個人の乏しい経験でも、孫請けで入った世界的大企業の社員食堂で、外人さんが大量にランチを残している光景を目撃したこともあった。アフリカ奥地の少女と日本の「制服が似合う女子高生」大賞受賞(笑)の少女の人生を1週間だけ交換! 等々のバラエティ番組などを観ていても思うに、民族の食習慣ごとに食材の見た目・食感・味覚には超えがたい壁があるものなのだ。
日本の洋食屋や居酒屋の料理に舌鼓を打つファンタジー風異世界の異人種たちの姿ごときに、日本の食文化を誇るナショナリズムの高揚や右傾化を見たりはしないけど――そもそも和食じゃないし(笑)――、そのへんも考慮して、お客さんに食材や食感を拒否られた料理長が発奮! 彼らの舌に合うような料理を調理するなどの、大工さんの巧(たく)みのワザを描いている家屋改築ドキュメンタリー長寿番組『大改造!! 劇的ビフォーアフター』(02年~)的な作劇(笑)がないあたりについては物足りなくは思うのだ――「的ハズレ」で「ナイものねだり」な要望だったならばゴメンなさい(汗)――。
https://r.gnavi.co.jp/nobu/episode/2/(番組公式ホームページで#2も無料配信中)