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魔法少女くるみ・魔法少女 俺・魔法少女特殊戦あすか・魔法少女サイト・魔法少女まどか☆マギカ[新編]・まちカドまぞく ~爛熟・多様化・変化球、看板だけ「魔法少女」でも良作の数々!

『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』 ~『まどマギ』が「特撮」から受けた影響&与えた影響!
『ブレイブウィッチーズ』『ガーリー・エアフォース』『荒野のコトブキ飛行隊』『終末のイゼッタ』 ~美少女×戦闘機×銃器のアニメ四者四様!
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[アニメ] ~全記事見出し一覧


 2020年10月から5分アニメ『せいぜいがんばれ! 魔法少女くるみ』の第3期が放映開始記念! とカコつけて……。『せいぜいがんばれ! 魔法少女くるみ』(17年)・『魔法少女 俺』(18年)・『魔法少女特殊戦あすか』(19年)・『魔法少女サイト』(18年)・『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆(はんぎゃく)の物語』(13年)……に加えて、広い意味での魔法少女モノ扱いで『まちカドまぞく』(19年)(笑)評をアップ!


『せいぜいがんばれ! 魔法少女くるみ』・『魔法少女 俺』・『魔法少女特殊戦あすか』・『魔法少女サイト』・『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語』・『まちカドまぞく』 ~爛熟・多様化・変化球、看板だけ「魔法少女」でも良作の数々!


『せいぜいがんばれ! 魔法少女くるみ』

(文・久保達也)
(2017年・プリマエンジェル製作委員会)
(2019年4月17日脱稿)


 かの女児向けアニメ『プリキュア』シリーズ(04年~・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20040406/p1)のみならず、往年の『恐竜戦隊ジュウレンジャー』(92年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20120220/p1)をもモチーフにしたかのような(笑)、


「美少女魔法少女恐竜天使戦士プリマエンジェル」


なる長ったらしい名前を自称する変身ヒロインたちが登場して、ゴミまき男・ティッシュ食べ男・怪力オカマといったユルキャラみたいな怪人たちと戦う作品だ。


 だが、実は主役はそのプリマエンジェルではなく、プリマエンジェルの行動をひたすら傍観(ぼうかん)してツッコミを入れまくる男子中学生3人組である。まるで悪役の名前を当初はメインタイトルにしながらも、実質的な主役は変身ヒーロー・スペクトルマンだった『宇宙猿人ゴリ』(71年 ピープロ・フジテレビ)みたいな作品だ(爆)。


 元々は2017年10月からAbema TV(アベマティーヴィー)にて隔週で配信されていた数分間のWebアニメであるものの、よほど好評だったのか2019年1月7日・1月14日・4月1日にBS11(ビーエスイレブン)にて15分枠で傑作選が放映された。


 そんな経緯を知らずに観ると、本来は主役であるハズの男子3人組が常にプリマエンジェルや怪人たちの背景に小さく置かれ、口をパクパクさせるだけでほとんど動きがない(笑)ことには驚かされるだろう。
 いや、そもそも本作自体、テレビアニメほどの予算や労力がかけられているほどでもないだろうから、やはり全体的に動きに欠け、まるで紙芝居でも観ているような感覚に陥(おちい)ったものだ(爆)。


 ただ、


「プリマオレンジのエセ関西弁には本当の関西人が怒る」


とか、


「プリマエンジェルのブサイクなマスコットキャラ“天使デビルン”の声が汚い」


とか、


「“天使”なのか“悪魔”なのかハッキリしろ」


とか(笑)、


「変身アイテムのスマホの充電が乾電池式かよ」


とか(爆)、


「変身場面でオールヌードに靴下だけになるのが妙にエロい」(大爆)


といった、トホホな展開にツッコミを入れまくる男子3人組こそ、普段テレビを観ながら心の中でブツクサとボヤいている我々の姿を投影したものである。


 ネットで配信されるライブ番組にリアルタイムで続々とコメントが寄せられるご時世からすれば、これほど視聴者の共感を得られるかたちのものはほかにないのではなかろうか!?


 2011年の地上波テレビ放送の完全デジタル化により、当初は送り手側と受け手側の双方向性が実現したかのように云われたものだが、あいかわらず送り手からの一方通行がつづいたことこそ、若者のテレビ離れを招いた一因であるように思える筆者からすれば、プリマエンジェルに対してではなく、むしろそちらの方に「せいぜいがんばれ」と云いたくなるのである(笑)。
せいぜいがんばれ!魔法少女くるみ(dアニメストア)

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『DEATH-VOLT』VOL.82(2019年6月16日発行))


魔法少女 俺』

(2018年春アニメ)
(月曜25時40分 TOKYO-MX他)

魔法少女 俺』 ~合評1

(文・T.SATO)
(2018年4月27日脱稿)


 「魔法少女」というジャンルも爛熟・飽和してますなぁ。ジャンルもお約束・歌舞伎的様式美にまで達してしまったならば、あとはそれを崩すしかないという。


 高校生男子が魔法少女(ちょっと違う・汗)に変身していた深夜アニメ『俺、ツインテールになります。』(14年)の反転か、売れないアイドル2人組の女のコが魔法少女に変身するや、魔法少女の衣装だけど中のヒトは奇形的にキン肉ムキムキな野郎の青年になってしまうという!


 たしかに笑えるけど、誰得(だれトク)の企画なんでしょう? 顔面はともかくムクつけきマッチョな肉体の変身後の姿を応援したい、円盤も買い支えたいと思うオタはいるのでしょうか?(笑)
 しかも、先のアイドル娘のみならず、男性アイドルグループも#1から登場して、絵柄もマイルドでシンプルな描線だけど、ドチラかと云わなくてもオタク女性向けの絵柄だよネ? ターゲットはそっちなの? それとも全方位ねらいなの? ちっとも判らないよ! 怪作の誕生です。


(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.71(18年5月4日発行))


魔法少女 俺』 ~合評2

(文・久保達也)
(2018年6月16日脱稿)


・『魔法使いサリー』(66年)にはじまる、60年代後半から70年代にかけての東映動画(現・東映アニメーション)製作の魔女っ子路
・葦(あし)プロ製作の『魔法のプリンセス ミンキーモモ』(82年)を継承して、スタジオぴえろが製作した80年代の魔法少女シリーズ


と、かつて世の少女たちに夢を与えてきた魔法少女アニメが、どうしてこんなものに……(笑)


 第1話はオレンジ色のショートボブヘアの低身長で、かなりキャピキャピとした主人公少女・さきが見た夢が冒頭で描かれる以外、Aパートだけを観ると魔法少女アニメではなく、近年人気のアイドルアニメであるかのような印象だ。


 寝坊して


「行ってきまーす!」


と元気に自宅を飛びだし、朝食のパンケーキを食いながら猛ダッシュする、赤いベストの制服姿のさきが向かったのが、高校ではなくライブ会場なのが一応の意外性を醸(かも)しだしているのだが、Bパートの展開に比べれば、そんなことは驚くほどのものではない(笑)。


 さきは青いベストの制服を着たグレー髪ショートカットの女子とアイドルユニットを組んでいるが、会場は客が誰もおらず、相方の兄が常にライブを満席にして大歓声を浴びているのをうらやましがっている。そもそもさきがアイドルになったのは彼に対するあこがれが動機だった。


 これもアイドルアニメ『ラブライブ!』(13年~・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160330/p1)のパクリかよ(笑)と思えるような世界観・キャラの出自や背景・人物相関図を、Aパートだけで描ききっているのは特筆に値する、と思いきや、それはCMが明けた途端に一変してしまう(笑)。


 Bパートに入るや、さきの自宅の玄関を蹴りつづける、サングラスに白スーツの「ヤ」のつく自由業(爆)の姿が。恐怖するさきの首ねっこを容赦(ようしゃ)なくつかんで自宅の中にひきずりこんだ893は、関西弁でさきの母・さよりに面会を要求する。
 まだ若そうで美しいが常にやつれた表情をした、ピンク髪のポニーテールでスレンダーなさよりは、中学生のころに893に魔法少女としてスカウトされ(笑)、つい最近まで現役で活躍していたとさきに告白。893は引退したさよりの代わりを探していたのだ……


 いや、先述した冒頭のさきの夢や、さきを玄関で見送るさおりが「さきのころに私は……」とつぶやく描写、さきがライブで歌うのが往年のテレビアニメ『キューティーハニー』(73年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041103/p1)の主題歌をモチーフにした「はちみつフラッシュ変わるわね」(笑)などからすれば、さよりの告白は決して唐突なものではなく、充分すぎるくらいに伏線が張られていたと云えよう(笑)。


 それにしても、夢の中で妖魔なる巨大怪獣と戦うさきはピンク髪のロングヘアなのだが、変身したら髪の色や髪型が変わるパターンは、まさに『魔法つかいプリキュア!』(16年)ではあるまいか?(笑)
 先端がハート型をした魔法のステッキも既視感バリバリだが、さきがそれを使って妖魔を倒す場面で流れる音楽は、『美少女戦士セーラームーン』シリーズ(92年~・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041105/p1)の変身BGMの露骨なパクリである(笑)。


 そして、さきの勝利をお姫さまだっこで祝福する、マントをひるがえしたイケメン青年は、どうせタキシード仮面のつもりなんだろう(爆)。
 そもそもさよりの声を演じるのは、その『セーラームーン』で最も人気があった水野亜美セーラーマーキュリーの声を演じた久川綾(ひさかわ・あや)なのだ!


 そうか、これは往年の人気アニメのパロディを散りばめることで、筆者みたいな中年マニアを狙った作品なのか? と思いきや、クライマックスでまたまた雲行きがあやしくなる(笑)。


 結局魔法少女になる契約書を893と交わしたさきだが、そこに早速妖魔が出現!
 当初は可愛い妖精のような姿をしていた妖魔たちは、往年の大人気テレビアニメ『キン肉マン』(83年)の主人公というよりは、1978年に森永製菓のCMで流れた「エンゼル体操」で話題となった、古代ローマの戦士をイメージしたタレント・ムキムキマンのような筋肉質の怪人に姿を変え、こともあろうにさきがあこがれるイケメンアイドルを異世界にひきずりこもうとする!


 893の指示どおり、好きな奴=まひろさんの名前を大声で叫んださきは魔法少女に変身! 巻きあがる砂塵(さじん)の中で登場したのは、胸に赤いリボンが付いたピンクのフリフリミニスカドレスから、白いパンツをチラリと見せる、筋肉質の巨大な野郎の姿だった!!


 いや、こういうのは個人的には最も観たくないのだが(爆)。


 エンディングのラストカットでは、さきの相方の少女までもがムキムキマンと化していることから、個人的には第2話以降を観るのをためらっている(笑)。


 ちなみに第2話の予告編では、「魔法少女大地に立つ! 俺は生き延びることができるか?」と、これまた露骨に『機動戦士ガンダム』(79年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19990801/p1)の次回予告ナレーションをパクっているのだが(笑)。


 オープニングやエンディングのイケメン大集合や、先述したイケメンアイドルのライブ場面にかなりの尺を使っていることからして、やはりこれは腐女子向けの企画ではあるのだろう。
 ただ、故・赤塚不二夫の傑作をリメイク(?)した深夜アニメ『おそ松さん』第1期(16年)の第1話が、登場キャラをイケメンに改変し、往年の名作アニメや近年の人気アニメのパロディを全編に散りばめたバカ演出で、腐女子のみならず世間の圧倒的な注目を集めたことを思えば、たとえ個人的には本作『魔法少女 俺』がこれまでの人生で観たアニメの中で史上最大のバカ(爆)だと思えても、こうした作風は正解であるような気もするのだ。


 ギャグのセンスは冴えまくりで、さきや相方の少女のキャラクターデザインもかわいいし、さよりを久川サンが演じているのも魅力だ。決してイケメン目当ての腐女子のみではなく、さまざまな層が楽しめる全方位型の作品として、案外器用に仕上げられているのかもしれない。


 まぁ、結局どの層も取りこめずにハデに爆死する可能性もあるのだが……本当に『魔法少女 俺』は生き延びることができるのか?(爆)
魔法少女 俺

魔法少女 俺 1 [Blu-ray]
(了)
(初出・オールジャンル同人誌『DEATH-VOLT』VOL.81(2018年12月29日発行))


魔法少女特殊戦あすか』

(2019年冬アニメ)
(文・T.SATO)
(2019年4月27日脱稿)


 昨2018年のアニメ製作会社ライデンフィルム製作の『キリングバイツ』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190908/p1)や『LOST SONG』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200705/p1)同様、今どきのアニメとしては作画的にはイマイチなのだけど、その点を除けば、個人的には面白い。


 ファンシーな魔法少女たちが異界の魔物たちから世界を守ったあとの世界が描かれる。異形の魔物はほぼ滅ぼして平和になったのも束の間、国際社会は今度は人間・国家・民族同士で争いテロなども頻発する元の木阿弥状態へと戻ってしまったとする背景設定がまずは秀逸。そして、その存在が公然のモノとなった魔法少女たちは、出身国の軍隊や諜報機関などに組み込まれて、善悪も定かではない任務に従事することとなっていく……(汗)。


 我が日本ではそこまで人権無視ではナイので、ヒラヒラフリフリの魔法少女というより、クールで不敵な戦闘美少女といった塩梅の主役女子高生・あすかは、陸上自衛隊の特殊部隊加入を勧誘されているものの肯(がえ)んじない。しかし、クラスメートのメガネ少女に危機が迫り、看護婦姿のお注射(笑)で悪と健気に戦い続ける旧友の魔法少女の姿なども目撃する段取りを経て、いたしかたなくメイド喫茶もどきのアジトを構える陸自の遊撃隊へと加入する。


 とはいっても、主要魔法少女たちが滅殺する相手がナマ身の人間だとイヤ~ンな感じになるので、それは脇役の海外の魔法少女たちに割り振って、あすかたちは結局は魔物と戦っているあたりは作劇のマジック――ご都合主義とも云う――。女児向けアニメ『プリキュア』シリーズ(04年~)同様、敵は怪人というよりも異形の巨大怪獣なので、殴ったり蹴ったりしても相手が痛そうだとかの忖度(そんたく)は発生しないから、安心してアクションのカタルシスにひたれる(笑)。


 厚意から誘ってくれる非・魔法少女である級友たちとの学校生活や休日のレジャーも描くことで、学園モノとしての要素も発生。甘ったるい声でしゃべる先の看護婦姿の魔法少女は主役魔法少女にゾッコンで学園に転入までしてきて、嫉妬から級友たちを良く思わない描写までもが登場。
 コイツはアブナい娘であり、世界平和はそっちのけで「公」よりも「私」なドロドロ愛憎劇や暗殺劇に級友見捨てる展開(爆)も勃発か!? と思いきや、そこまでイビツなことにはならずにプチ嫉妬程度で留まって、この看護婦魔法少女も級友たちを守って奮戦したり救出や延命に邁進する常識人なあたりで、筆者の萌え感情も毀損(きそん)せずに済んでいる(笑)。


 魔界と通じる邪悪で狡猾な人間の悪党どもが敵役となることで、せっかく友人となれた級友――父親が陸自とは対立関係にある警視庁の刑事でもある――が標的とされてエログロな目に遭うあたりで、罪悪感&責任感のヘビーな懊悩ドラマを構築していくあたりも、既視感あふれるベタといえばベタなモノだけど、鉄板・普遍・王道ともいえるので、筆者個人も感情移入して楽しんでいる。


 絵柄的には1987年にワンレンボディコン・メチャスリムが勃興する以前の、少々懐かしい80年代ロリチックなキャラデザで(?)、頭身がやや低めでもムチムチパンパンな巨乳や巨尻や太モモとなっており、筆者個人は大好物なのだけど(汗)、現今の主流ではない絵柄も流通するのがこのジャンルの豊穣さともいえるのでイイんじゃないですか!?(笑)
魔法少女特殊戦あすか クリアファイル B
魔法少女特殊戦あすか 1巻 (デジタル版ビッグガンガンコミックス)
魔法少女特殊戦あすか 2巻 (デジタル版ビッグガンガンコミックス)
魔法少女特殊戦あすか 1 [Blu-ray]

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.74(19年5月4日発行))


魔法少女サイト

(2018年春アニメ)
(月曜25時40分 TOKYO-MX他)

魔法少女サイト』 ~合評1

(文・T.SATO)
(2018年4月27日脱稿)


 ウワァ~、頭身の低いキャラデザだけれども、両眼のまなじりから凝固したような赤黒い血を、細長い一筋の涙のように垂らして戦っている魔法少女だよ~。
 もうひとりの魔法少女も、おクチの片隅から終始同じように赤黒い血を垂らして戦っているよ~。


 魔法少女に変身する前の日常描写もヒドいよ~。勉強のできる兄貴と常に比較されて両親には罵倒され、親の前ではイイ子にふるまう兄貴は隠れて妹をサンドバックのごときに拳で連日殴りつづけ、学校ではタチの悪い性悪な不良少女たちのカモにされ、机には「死ね!」だのナンだのの落書きだらけで、イスにはマヨネーズが塗られ、コミュニケーション弱者でもある主人公女子は教師に席に座れと云われると、ためらいつつもそのまま座ってしまい(爆)。


 トイレでも床に踏みつけにされ、洋式便器に顔面を突っ込まれ……。あげく、可愛がっていた橋の下の捨て猫の存在がバレてしまい、ひそかに持ち出されて踏切で……。


 まぁ大なり小なり、こーいう目にあっているコはたくさんいるのでしょうナ。そして、親の品性や教育とも無関係に、人類には一定の比率で生まれつき品性下劣・公共心皆無で、他人に対する共感性に乏しくサディスティックにふるまえて悦に入れてしまう人間がいるモノです――同じ親から生まれた兄弟姉妹でも、そのモラルに大差がある場合などがその証左!――。


 別に安倍ちゃんやトランプや天皇制が悪いワケではありません(笑)。政治上の悪なんてのはしょせんは立場の相違に過ぎない「相対悪」であって、真に憎むべきで害毒もまき散らしイジメられっ子の人生を台無しにして、パワハラ鬱病に追い込んだり学校中退や路頭に迷わせたりする「絶対悪」とは、個人に帰属する「人格悪」!(怒) 当然、安倍ちゃんが退陣したり天皇制がなくなれば、イジメもパワハラもなくなるだなんてナンセンス。イジメやパワハラをする連中は半径数メートルで優越感に浸れれば満足な輩だから、政治や世界情勢や公共性やそもそも今の日本やアメリカの首長が誰か? だなんてことにはハナから関心がナイ。左翼リベラルな連中はこーいうヤツらこそ、制度設計・社会設計の次元での処罰なり隔離なり善導するなりでドーにかする方策を出してくれ(汗)。


 筆者のように劣等感やルサンチマンにまみれた人間は、劇中で冷徹な金髪ショートのサブヒロインが性悪な人間どもに鉄槌をくだすシーンに喝采を送っております(爆)――なぞとベタな感情発露を記述してしまうあたり、評論オタにはあるまじきで、筆者はすっかり作り手たちの手のひらの上で踊らされていてカッコ悪いことこの上ナイですが――。
 しかし、この鉄槌に対する批判的な視点もなければイケナイわけであり――筆者個人の私的感情としては不要だけれども(笑)――、そこの役割はあまりにも優しすぎてイイ娘にすぎる、先にも記した家にも学校にも居場所がない主人公少女が担っている。


 魔法を使うことで生命・寿命も削り、いずれは死んでしまうという類いの設定は、『魔法少女まどか☆マギカ』(11年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20120527/p1)以来のマニア向けかつ鬱系の魔法少女モノのお約束・定番と化した感がある。能力全開により等価交換的に記憶を喪失したり、両脚が不自由となることで車イスになったり、声を失ったり両目が見えなくなったりする『結城友奈は勇者である』(14年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190926/p1)や『魔法少女育成計画』(12年・16年に深夜アニメ化)などのヒドい作品はすでに輩出さえしている。
 それはそれでヘビーな設定で充分イヤ~ンでも、やはり現実・日常生活でも起こりうるヤンキーDQN(ドキュン)の不良少年少女どもがくりだすイジメや、肉体に痛みをもたらす直接的・物理的な暴力の方が怖いよ~。


 情けは人のためならず。なんでイジメ相手の口の中にカッターナイフを突っ込んでくる不良少女ごときを殺さずに生かしてしまったのか?(爆) 案の定、『宇宙戦艦ヤマト2202(ニーニーゼロニー)』(17年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20181208/p1)における宿敵・白色彗星帝国のガトランティス人みたいに近代的人権観念どころか武士道・騎士道さえ通じない相手なのだから、その恩情に対して恩に着るどころか屈辱&逆恨みに燃えてるじゃん! 妹の変化に気付きつつある兄貴ともども、邪悪な強敵になりそうでますます怖いよ~。


 今どき制服スカートの丈を短く改造せず、その黒髪ロングもリンスでツヤツヤではなく少々ゴワついていそうで(?)、マンガ『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』(11年・13年に深夜アニメ化・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20190606/p1)やスマホ漫画『ネト充のススメ』(13年・17年に深夜アニメ化)の女性主人公たちみたいに眼の下にクマもある(汗)幸ウスそうなメインヒロインと、少々ヤサグレた感もある金髪ショートのサブヒロインは、筆者は個人的には大好物だけど(笑)。


 意図的に排除したのだろうけど、『まど☆マギ』『結城友奈』にはあった魔法少女たちのキャラクターデザインのビジュアル的な華・キラキラ感の欠如というその一点だけでもって、集客・商売的にはウラ目に出てしまい円盤売上も苦戦するのではなかろうか? 個人的には2018年春アニメのマイベストであり推していきたいのだけれども……。


(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.71(18年5月4日発行))


魔法少女サイト』 ~合評2

(文・久保達也)
(2018年6月16日脱稿)


 黒髪ロングヘアで目鼻立ちの整った美少女だが、常にうつ向き加減で小声でボソッと話す女子高生主人公・朝霧彩(あさぎり・あや)は、毎日死ぬことばかり考えている。


 第1話では彩の生き地獄が執拗(しつよう)なまでに描かれる。靴箱には画びょうが入れられ、教室のイスにはマヨネーズがまかれるものの、担任教師に「早く座れ」と云われて座らざるを得なくなり、あげくに洋式便器に顔を沈められ……と、彩がヤンキー女3人組にいじめられる描写が延々とつづく。


 学校ばかりではない。成績優秀な兄と比較されて父には疎(うと)まれ、父に過度な期待をかけられるストレスのはけ口として、彩は両親の前では「いいコ」を装う兄から、自宅でも連夜暴行を受けるのだ。


 「もう、死んでしまおうかな……」と、彩がつぶやいたそのとき、パソコンの画面に顔面蒼白(そうはく)の不気味な女子高生が現れ、


「不幸だね。そんな君に、魔法のステッキを!」


と彩に呼びかける。


 闇サイトの声を演じたのは、長寿幼児向けアニメ『それいけ! アンパンマン』(88年~)の敵役・バイキンマンや大人気テレビアニメ『ドラゴンボールZ(ゼット)』(89~96年)に長年にわたって登場した宇宙の帝王・フリーザの声で有名な中尾隆聖(なかお・りゅうせい)だが、いくら幼児向けアニメとはいえバイキンマンの悪事なんぞヤンキーどもに比べればカワイイものだし、フリーザの破壊描写も現実世界からはかけ離れた絵空事異世界でのそれである。


 居場所がないことから彩が自身と同一視してかわいがっていた橋の下の捨て猫を、ヤンキー女のひとりは踏切に放りこみ(!)、以前彩が猫に贈った鈴付きの首輪の残骸(ざんがい)を見せつけ、彩から「最後の希望」を奪ってしまう!!


 さらにヤンキー女どもは先輩の野郎を呼び出し、彩をレイプさせようとけしかける!!


「この地獄を終わらせて!」


 闇サイトに呼びかけられた翌朝、靴箱に入れられていたオモチャのようなハート型の白い銃を、彩がその場で発砲するや、猫殺しの女と彩をレイプしようとした野郎は一瞬で消滅、その直後、例の踏切で轢死体(れきしたい)となって発見される!


 この不良少女と不良少年が逆に死んでしまう一連のシーンには重たいカタルシスを正直おぼえてしまう。なぜなら、ヤツらは人間ではなく鬼畜(きちく)だからである(汗)。


 念のためにクギを刺しておくが、筆者はいじめの被害者たちに復讐(ふくしゅう)殺人を奨励(しょうれい)しているワケではない。
 私事で恐縮だが、もう30年以上も前の大むかし、彩ほどではなかったが、筆者も似たような日々を過ごしていた。非力だったから「殺してやる!」と思うこともなく、どうせこんな奴らはロクな死に方はしないだろうと、根拠もなく信じるしかなかったものだ。


 そうしたらリーダー格のヤツが同級生の女子を他校のヤンキーらとともに集団レイプ(大汗)して妊娠させたために退学となったのだ! 小躍りして喜んだのは当然だが、「やはりオレが信じたことは正しかったのだ、ほかの奴らもいずれそうなる、ヒヒヒ……」(笑)と思うことで、そんな鬼畜どもと同じ空気を吸わねばならない居心地の悪さにも、なんとか耐えられるようになったものである。


 だが、それが期待できないのならば、根本的な解決にはならないだろうが、殺されてもしかたがない鬼畜どもに主人公が鉄槌(てっつい)をくだす物語によって、心の安定をはかることは必要不可欠かとも思えるのだ。
 いじめられっ子・浦見魔太郎(うらみ・またろう)が「うらみ念法」を駆使して、いじめた奴らに残虐(ざんぎゃく)な手段で復讐を果たす、藤子不二雄A原作の漫画『魔太郎がくる!!』が秋田書店週刊少年チャンピオン』に連載されていたのは1972年から75年のことだった。
 筆者は小学校低学年当時、つまりその時点で同作を読むしかない状況にあったのだが(汗)、時代が変わっても生き地獄に苦しむ人々が存在しつづける以上は、こうした路線の作品は常に供給されるのだろう。ちなみに『魔法少女サイト』も『魔太郎がくる!!』と同じく『少年チャンピオン』に2018年現在連載中である。


 だが、彩は殺されても当然と思えるヤツらを死なせる結果となったことに対して、「ザマァ見ろ!」ではなく「わたしが殺した!!」などと罪悪感にさいなまれてしまうのであった……
 これにはいじめの被害者に対する「それでも一線を超えてはならない」とする製作側の主張がこめられているような感もある。血の色に染まった不気味な月が、彩の背景の夜空に浮かぶカットは、その最大の象徴であるかと思えるのだ。


「だってDQN(ドキュン)だろ? 死んでよかったんじゃねぇの?」


と、事件について語る劇中の生徒たちの意見に筆者は全面的に賛成だが、そんな危険な思想(汗)に対する批判的な視点もまた当然あって然(しか)るべきなのだ。


 そんな批判的な視点を自らが演じてしまうほどに、彩は自身を客観視して相対化ができるような頭のいい聡明なコであるという事実が強調される効果もあげている。しかしだからこそ、そんないいコをいじめるヤツらは死んで当然なのだ! と、むしろつくり手たちの意図とは逆に、復讐殺人の賛成派をよけいに増やしてしまっているような気がしないでもないのだが(笑)。


 彩とは正反対に、猫殺しの女と親友だったヤンキー娘は彼女の仇(かたき)として、彩の口にカッターの刃をつっこむが――彩の心臓の鼓動とセミの鳴き声を大音量で交錯させる音響効果が、彩最大の危機を絶妙に演出する!――、ここまでヤンキーどもを鬼畜として描くからこそ、


「こんな生ゴミ、サッサと殺せばいいのに……」


と語る、時間停止能力を持つ金髪ショートヘアのクールな魔法少女の主張にも、俄然(がぜん)説得力が増すというものである。


 鬼畜殺しに罪悪感を持つ魔法少女と、それを当然とする魔法少女に関係性が生まれたことで、果たしてふたりがどのように心の変遷(へんせん)を遂(と)げていくのか、要注目である。


 なお、金髪ショート娘の名字(みょうじ)は奴村(やつむら)。これは故・横溝正史(よこみぞ・せいし)の推理小説八つ墓村(やつはかむら)』(1949(昭和24)年)が元ネタなのか? だとするなら、この小説のモチーフとなった戦前の昭和13(1938)年に発生した、失恋や村八分に遭遇してしまった非モテ・弱者青年(汗)による自身が住まう集落の人々に復讐を果たさんと大量殺人におよんだ津山事件(津山三十人殺し)のように32人も殺すのか!?


 う~ん、世間一般の「魔法少女もの」のイメージとはまるでニュアンスが異なる作品になっているような(笑)。
魔法少女サイト 第6巻 <初回限定版> [Blu-ray]

魔法少女サイト 第1巻<初回限定版>(イベント優先販売申込み券[昼の部]) [DVD]
(了)
(初出・オールジャンル同人誌『DEATH-VOLT』VOL.81(2018年12月29日発行))


『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語』

(2013年10月26日(土)公開)
(文・T.SATO)
(2013年12月脱稿)


 白くて可愛らしい小動物ライクな存在・キュゥべえと契約を結んで変身する「魔法少女」となった女子中学生5人が、「魔女」と呼ばれる人外のバケモノと戦いつつ、「魔法少女」同士でバトルロイヤルも繰り広げるTVアニメの続編劇場版。


 TV終盤では、ピンク髪のオボコい主役少女を救いたいというツンデレな想いから来る、黒髪ロングのクールなコミュニケーション弱者少女の時間ループ魔法による何十回(?)もの歴史改変の果てに――しかもその都度、救えなかったという(汗)――、膨大な因果エネルギーがその身に積もり積もってしまった主役少女の超パワーが発動!
 主役少女は全並行世界の全過去・全未来に存在する膨大な全「魔法少女」たちが最期(さいご)を迎えたときに初めて知る、衝撃的な結末に対して「絶望」に直面する断末魔の瞬間にメタ・事後的に介入して、「歴史修正」(!)としてそれに「救い」と「癒し」と「お迎え」を与える役目を果たす、天地創造の神そのものではないけれど時空を超越した高次なる神近き存在へと昇華する!


 その際、凡百の作品であれば、「魔法少女」たちが絶望する瞬間に発する大量の精神エナジーを搾取した某存在を、「階級悪」・「権力悪」・「絶対悪」のような存在としたであろう。しかし、作り手たちが意図したかのは不明だが、この作品はそうはしなかった。


 「QB」(キュゥべえ)は人類の価値観とは相容れないとはいえ「階級悪」ではない。自身も生きるためのエナジーを欲する「食物連鎖」「生態系」のごとき一種の広い意味での「システム」の一部にすぎない。アチラを立てればコチラが立たず的に入り組んだ「システム」の救いがたい困難さの描写が、本作の優れて現代的なところでもある。現実の社会でもこの類の問題を根源的・抜本的な次元で全解決することはムリであろう。


 しかし、そこでニヒって悦に入るのではなく、完全なる解決や永遠平和や地上天国やマルクス主義的な共産主義社会(笑)を達成することは不可能だとしても、その都度都度で生じていく問題を永久に「改善」しつづけることを目標とすること自体には意義があるとは思うのだ――「改善」ですらなく、「問題」や「不幸」がひとりだけに、あるいは一方向だけに偏らないようにする「微調整」、単なる「不幸の再分配」、あるいは「不幸の永遠のたらいまわし」に過ぎないやもしれないけれども……。それでも「最悪」ではなく「次悪」に留められるのならばマシだとはいえるだろう――。


 主役少女の究極選択は「QB」自体の根絶ではなかった。「QB」自体の根絶ではなく、「魔法少女」が「魔女」化した瞬間に高エナジー(少女が悲嘆・絶望したときの高エネルギー)を発するという、劇中内での自然界の必然的な現象=「宇宙の法則」≒「システム」だけを「微改変」してみせようというアクロバティックな決着!
 「根本解決」は不可能でも「微調整」ならば可能ではあり現実的でもある……といったところがミソなのだ。そのへんが現今の人間たちが作った「現代社会」や、残念ながら人間も生物・動物である以上は離脱することが叶わない弱肉強食の食物連鎖・捕食と被捕食の関係でできている「生態系」といったものの「縮図」たりえてもいる。
 その上で、根源的な解決はできないまでも、「社会問題」や「環境問題」を少しでも改善していくための「現実的な方策」にも通じる「風刺」たりえていたとも思うのだ。


 もうひとつ本作が非凡だと思うのは、敵のバケモノである「魔女」の存在自体は否定したけど、その代わりに「魔法少女」の成れの果てではない「魔獣」という新たな存在に置換したことでもある。つまりは「魔法少女」の「存在」や「戦い」自体もなかった方がよかった……などという『仮面ライダークウガ』(00年)最終回(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20001111/p1)ライクなキレイごとの絶対平和主義的で偽善的なオチではなかったことなのだ。
 「魔法少女」たちの人々を守りたい、自身の願いを叶えたいという「想い」や、良かれと思って戦ったその「正義感」やその際に生じた「生」の「充実感」「高揚感」や「戦友との絆」など、「魔法少女」として各々が懸命に生きてきた「人生」それ自体をムダだったとして無下には否定はしなかった……、それを無かったことにはしなかったことなのである。


 「QB」の行為は彼ら自身も云う通り、彼らが少女たちの「絶望エネルギー」を食しているのは、彼らの「人格悪」「性格悪」的な悪意によるものではない。彼らも云う通り、人間が動物や植物を飼育・栽培して食したりする行為と同等・相似形の行為ではあり、彼らにとってはそれは自然な生態なのである。その行為をヌキにすれば、彼らも滅び去ってしまうのだ。
 よって、彼らはSF洋画『エイリアン』(79年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20171104/p1)や同じくSF洋画『プレデター』(87年)のように考えナシに人類を絶滅するまで捕食するような存在ではさらさらない。人類の絶滅とは程遠い次元で控え目に「摘まみ喰い」をしてきただけだともいえるのだ。
――もちろんたとえ少数とはいえ「摘まみ喰い」のターゲットに選ばれた方は堪ったものではないけれども、それは人類が家畜や穀物などに対して行なう所業(飼育して殺害した上で捕食する!)とも同罪ではあるので、我々人類自身の「原罪」性を免責しきることにもならないのだ(汗)――


 「QB」の「存在」や、彼らの数百万年にもわたる人類への「関与」それ自体を否定すれば、我々人類自体も動物から進化した果ての誕生もなかったのであるから、「QB」の「存在」自体は否定はしない。
 しかし、「魔法少女」の末路自体はミジメで絶望でしかなくても、その過程にはいくばくかの「充実」もあったハズなので、太古から遠未来の歴史上の膨大な全「魔法少女」たちのその人生、そして人類の歴史それ自体をも大局としては否定をせずに肯定してみせようとする行為。歴史それ自体も大局では改変しないけれども、大局には影響がナイ範囲では微改変をしてみせようとする「大海の中の一滴」であるクレバーな選択肢!
――「魔法少女」たち自身がその最期に実は自分たちが倒していた当の「魔女」自体に自我も失った上で必ず変貌もしてしまうという劇中内での法則的必然である宿命(!)だけをなかったことにして、その代わりに「魔女」という存在を「魔法少女」の成れの果てではない「魔獣」に代入して、「魔獣」と「魔法少女」が戦うかたちで太古から遠未来へと至る「歴史」全体を微改変することにより、歴史の大局や「魔法少女」各人の人生それ自体は否定をしないで済むという!――



 そんなかたちでキレイに完結したTVアニメ版の続編を作るとなると、たしかに天上界の宇宙の法則の一部――既存にあった法則の微改変の作用だけを担保する存在――となって、その代償として地上世界には最初から存在しなかったことになってしまい、その痕跡をも消失させてしまった主役少女を現世・地上に復活させるか、コミュ力弱者少女の断末魔に天上にいる主役少女がお迎えに来る展開しかないだろうとは予想はしていたけれども……。そー来たか!?


 お迎えに来た天上世界=高次元世界存在となった主役少女を地上に引きずり下ろさんとするコミュ力弱者の魔法少女。その試みは半ばは成功してしまう!


 この展開を、TVアニメ終盤での主役少女の究極選択は日本の戦前的な「滅私奉公」にも通ずるものだから、「半径数メートルの私的幸福」、「公」よりも「私」、「公」に対する「叛逆」でもあるから「反体制」的に即・快挙でもある! と賞揚する論陣も散見はする。
 その意見にも一理はあるとも思うけど、それは「二元論」のうちの「片方」だけを取るアタマの悪い論法であり、「公」に反逆して「私」に徹底することが即座に「絶対正義」になるのであれば、他人に配慮せずに身勝手に公共物の破壊や殺人強盗や暴言を繰り返すようなエゴイスティックな人間こそが一番エラくて大正義だということになってしまう(爆)。そんなバカげた論法もまた絶対的に成り立たないのだ。だから、フェア・公平に考えれば「私的幸福」&「公的幸福」の両立を目指すのが理性的・合理的にして理想的ではあるだろう。


 もちろん「私的幸福」&「公的幸福」の両者が相容れない極限下で、「私」――もしくは「私のスキなヒト」や「仲間」――さえ良ければ世界が滅びても構わないとするならば、それは「公共心」なき「エゴイズム」や「お仲間・身内主義」にすぎないであろう。「公」至上主義はもちろんのこと、「私」至上主義も道義的・論理的には成立しないのは明らかなのである。決して二者択一の問題ではないのだ。


 フツーの人間としての幸福を捨て去る主役少女の究極選択に対して、それに反対すべきであったと後悔するコミュ力弱者少女の想い。それ自体はイイ。
 しかし、世界を救うよりも、世界を敵に回してでも、世界が滅びてもイイから、主役少女といっしょにいたいとばかりに願うコミュ弱少女。それは「積極的な悪」ではないにせよ、やはり「消極的な悪」ではあるだろう――彼女が自身を「悪魔」と自称するのは偽悪にすぎるけど――。
 それが過剰に鼻につかないのは、彼女が寂しげでおとなしげで欲も少なさそうなローティーンの少女であり、健気さの方が先に立つからにすぎないとも思う――コレが成人女性であったり男のコであれば、往年の『鳥人戦隊ジェットマン』(91年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110905/p1)や近作の実写映画版『ガッチャマン』(13年)みたく、世界のことよりも自身らの色恋ばかりにカマけているとの非難が殺到したにちがいない!(笑)――。


 そのへんの観る側のバイアス・偏向、女のコに対する社会的通念――女のコに理解を示したフリをしてその実、未熟で弱くてもOKだと、やはり下に見くだして差別している(汗)――も込みでの物語作品というもののマジックともいうべきで、評論オタならばそのへんにも自覚的でありたいとも思う。


 そうも思うのだけど、ボクらのサブヒロイン・変態ほむほむこと暁美ほむら(あけみ・ほむら)ちゃんのすることだから、やっぱり許しちゃお!(……オイ)


 とはいえ、ほむほむに百合的に(?)想われている、天上世界での役割を忘却して地上に復活を果たした主役少女には、ほむほむに問われて


「私よりも公」


という趣旨の返答をさせているあたりで、やはり本作は一面的な作品には決してなってはいないのである。
劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語(通常版) [Blu-ray]

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.59(13年12月30日発行))


『まちカドまぞく』

(2019年 まちカドまぞく制作委員会・TBS 放送終了)
(文・久保達也)
(2019年10月13日脱稿)


魔法少女を倒せ!」


と呼びかける金髪ロングヘアの魔女の夢を見た、ウェーブがかかった茶髪ロングヘアで本人もコンプレックスであるほどに小柄な少女・吉田優子。
 翌朝、彼女は先端が三角形に尖(とが)った黒くて細い悪魔みたいなシッポが生(は)えており、頭部には級友曰(いわ)く「クロワッサンみたいなツノ」(笑)が伸びていた。


 娘の急変に、黒髪ロングを束(たば)ねた割烹着(かっぽうぎ)姿の母・清子(せいこ)は、実は吉田家が「闇の一族・まぞく」(魔族)の末裔(まつえい)であり、毎月生活費が4万円以上使えないほど貧しいのは、長きに渡ってつづいた「光の勢力」との戦いに敗れ、あらゆる運を封印する呪(のろ)いをかけられているためだと語る(笑)。


 一家にかけられた呪いを解くために、魔法少女を倒してその生き血をご先祖様に捧(ささ)げるという重大な使命を与えられた優子は、同じ高校に通う魔法少女・千代田桃に敢然(かんぜん)と立ち向かうのだ!


 原作は芳文社の『まんがタイムきららキャラット』に連載中の4コママンガであり、基本的には優子の家庭や高校でのトホホな日常を中心としたコメディ作品ではある。吉田家に代々伝わる埴輪(はにわ)みたいなご先祖様の像「ごせん像」(笑)が、サイズがちょうどいいからと玄関のドア・ストッパーに使われていたり(笑)、行方不明となっている吉田家の父が、貧乏な吉田家で机や踏み台として使われているミカン箱の中に、桃によって封印されているとか……(爆)


 ただ最も笑えるのは、優子と敵であるハズの桃との妙な関係性だ。よりによって「ごせん像」を高い階段から落としたことでダンプにひかれそうになった優子を、桃はそれこそ女児向けアニメ『プリキュア』シリーズ(04年~)みたいな白とピンクのフリフリコスチューム姿の魔法少女・フレッシュピーチ(笑)に変身し――その場面では変身に要する時間が画面右下にストップウォッチみたいに表示される(笑)――、片手でダンプを停止させて優子を救う「命の恩人」として、初登場場面でいきなり描かれてしまうのだ。


 その恩人が倒すべき魔法少女であることに、優子は信じられない想いで


「コスプレですか?」(爆)


と聞いてみる。ピンク髪のショートボブヘアの長身で一見可憐(かれん)な感じではあるものの、巨大ロボットアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』(95年~・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220306/p1)の綾波レイ(あやなみ・れい)や、深夜アニメの名作『涼宮ハルヒの憂鬱(ゆううつ)』(第1期・06年 第2期・09年)の長門有希(ながと・ゆき)といった、性格的にはアンニュイでクールなヒロインの系譜の方を継いでいる桃は、


「違う。魔法少女……」


と優子にボソっと宣言したあげく、腹を空(す)かしていそうだからと、優子に菓子パンを与えようとする(笑)。


 教室で級友からシッポやツノが生えていることを指摘された優子は、


魔法少女をブチ殺す(汗)使命を与えられて、覚醒(かくせい)した……」


などと語るが、


「その魔法少女ならA組にいる」(爆)


と、桃のところに連れていかれる。


 桃が優子をアタマ1個分「小さい子」とさげすんだことに、優子は頭のてっぺんの小さなアホ毛をプルプルと振るわせ(笑)、級友たちの声援を浴びながら


「おりゃおりゃおりゃぁ~~~!」


と桃の腹にパンチの連打を浴びせるが、


「よける必要性を感じない」


とか


「飛び道具、使った方がいい」


などと、全然桃に相手にされない。優子は


「これで勝ったと思うなよ!」


と捨てゼリフを吐(は)き、廊下をスタコラと逃げ去っていく(笑)。


 一家にかけられた呪いを解かねばならない使命感から常に必死な優子と、6年前には世界を救ったこともある(爆)ほどの強さから常に余裕な桃との、あまりの温度差の違いこそが本作のキモであり、夕焼けに染まる川の土手で往年のウルトラマンエース(72年)の掛け声みたいに


「テェ~~イ!」(笑)


なんて叫びをあげて魔法少女を倒す訓練に励(はげ)む優子の姿には、視聴者をつい感情移入させてしまう絶大な効果があるだろう。


 ただ原作は4コママンガでありながらも、優子と桃には先代からの因縁(いんねん)があり、劇中で描かれたことがすべてそれに起因するのが明らかになる連続ものとして、舞台となる多魔市(たまし・笑)の平和を守るために、優子と桃が共闘するに至る展開まで用意されていることから、れっきとした戦闘美少女ファンタジーの変化球的作品として、軽視してはならない存在かと思えるのだ(笑)。
The Demon Girl Next Door [Blu-ray]

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『DEATH-VOLT』VOL.83(19年11月3日発行))


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