假面特攻隊の一寸先は闇!読みにくいブログ(笑)

★★★特撮・アニメ・時代劇・サブカル思想をフォロー!(予定・汗)★★★ ~身辺雑記・小ネタ・ニュース速報の類いはありません

ウルトラマンエース9話「超獣10万匹! 奇襲計画」

ファミリー劇場ウルトラマンA』放映開始記念・連動連載!)


「ウルトラマンA 再評価・全話評!」 〜全記事見出し一覧


(脚本・市川森一 監督・山際永三 特殊技術・田渕吉男)
(文・久保達也)
 イベント編がしばらく続いたが、今回はTACのコメディリリーフ的なデブの今野隊員が主演する肩のこらないコミカルな一編。
 超獣出現。今野隊員は地上で待機し、超獣を写真撮影する任務を与えられるも、その場に現れた女カメラマンを注意するうち超獣は消失、シャッターチャンスも逃してしまう。
 その失敗をTAC隊員たちに正直に報告できずに逡巡する姿、女カメラマンに写真を焼き増ししてもらおうと何度も付きまとい四苦八苦する姿、あげくの果てに女カメラマンにホレてしまい(笑)振り回されて騙され続ける姿が愉快に描けている。


 もっともタイトルには偽りありで、ヤプールは当初写真から実体化する能力を持つ忍者超獣(二次元超獣)ガマスを今野のカメラに撮影させてTAC基地を襲撃する計画であったのだが、少年雑誌のカメラマン・鮫島純子のカメラにグラビア向けに撮影されたことにより、結果としてその部数だけのガマスが出現する恐れを招くことになったわけで、当初からヤプールが計画していたわけではない。
 ラストで山中隊員が「今野が撮影に失敗したから我々は助かったわけだ」などと笑っていたが、オイオイその代わりに街にエライ被害が出てるぞ(笑)。
 ちなみに内山まもる小学館の『小学二年生』に連載していたマンガに登場する女カメラマンは新聞社の所属であり、もし輪転機に回されていたら10万匹どころでは済まなかったわけだ。


 ガマスはある特殊な音波に触れることで実体化するという設定であり、劇中ではタクシーの無線や電気カミソリの音に反応して実体化している。
 今回は印刷にかけられる前の写真から現れた1匹で済んだが、もし現代にこれが雑誌や新聞に掲載されたならば、そこら中に溢れている携帯電話の電波に一斉に反応して日本全土がガマス大軍団の総攻撃を受けたことであろう。ホントに山中隊員笑っている場合じゃないぞ(笑)。


 女カメラマンの登場は「ウーマンリブ」なんてフレーズが台頭し、ようやく女性が社会に本格的に進出し始めた70年代初頭当時の世相を反映しているが、いくらウソの言い逃れに自分の名前を勝手に利用されたからといって執拗に純子にくってかかり、しまいに純子を殴ってしまう北斗の態度も、社会で活躍する女性たちに対する当時の男性諸氏の思いをそのまま表したものといえるだろう。
 純子を形容する「じゃじゃ馬娘」というフレーズは同時期のロボットアニメ『マジンガーZ』(72年)に登場するヒロイン・弓さやかに対しても使われたが、現在の観点からはある意味女性蔑視ともとられかねないこのフレーズは死語となって久しい。


 今野が「初恋の人に似ているから」と純子にデートを申し込み立ち去ったあとで、思わず純子が「オエーッ! デブ!」と発するのも現代のドラマ事情においては決して許されない表現であろう。
 ただこうした表現が今回描かれていなかったら全く無味乾燥な話になってしまっただろうし、その意味でも純子を演じた江夏夕子の好演が光っていた。05年の今なら磯野貴理子あたりが演じたら面白いかもしれんが(笑)。


 ガマスは忍者超獣の異名を持つだけあって、エースとの対戦では突然姿を消したり、吹き矢やマキビシや剣が武器であり、対するエースも吹き矢ニ本を真剣白刃取りし、決め技も両腕にエネルギーを集中させて発射する赤い光線(現在の円谷プロの公式設定では「パンチレーザースペシャル」という名称である)を初披露しており、今回初登板である田渕吉男の特殊技術には色々と工夫が見られ、本作に賭ける意気込みが感じられる。



<こだわりコーナー>
*分析のために、TAC隊員が超獣の写真撮影を行うという描写は、軍事的・合理的なリアリティがある。


*純子の自室やタクシーのカーラジオで流れていたのは当時『真夏の出来事』をヒットさせていた平山三紀(現・平山みき)の歌であるが曲名は不明である。筆者は60年代から70年代に流行した歌謡曲に関心が強いのだが、彼女の歌って『真夏の出来事』しか知らないので(汗)。
 ただこの歌は「じゃじゃ馬娘」の純子にあまりにピッタリのイメージであり、選曲の妙にうならされるばかりである。
 (後日付記:72年3月10日発売の『フレンズ』とそのB面曲『20才の恋』だそうです)
 なおこの回を書いた市川森一(いちかわ・しんいち)は当時様々な歌手と交流が深かったようで、『刑事くん』(71年・東映桜木健一が主演した30分の刑事ドラマ)ではヒット曲をモチーフにした話を多数執筆しており、それを歌唱した歌手がゲストに登場していたものだ。
 ちなみに前作『帰ってきたウルトラマン』(71年)第34話『許されざるいのち』(脚本・石堂淑朗 監督・山際永三)に『花・太陽・雨』が挿入されたのも、歌唱していたPYG(ピッグ。沢田研二萩原健一など、60年代後半に流行したグループ・サウンズのメンバーで構成されていた)と市川が親交が深かったのが縁だったとの説が『帰ってきた 帰ってきたウルトラマン』(99年・辰巳出版ISBN:4886413641)に掲載されている。
 ついでに書くと『A』と同年に放映が開始された名作刑事ドラマ『太陽にほえろ!』に市川が初めて書いた第20話『そして、愛は終わった』にゲスト出演したのは沢田研二であり、これとのちの市川の代表作である『傷だらけの天使』(74年)にレギュラーで主演していたのは萩原健一だったわけで、やはり親交が深かったのは事実のようである。


*女カメラマン・鮫島純子を演じた江夏夕子は、のちに俳優・目黒祐樹(めぐろ・ゆうき)夫人。こまっしゃくれた口八丁の早口マシンガントークで調子のイイその場逃れのウソを正論(?)とともに交えて、今野隊員や北斗隊員とイキな会話のキャッチボールをする様もまた愉快。
 北斗に殴られるや今野の胸を借りて泣き出し、女であることを利用し涙も武器にするのかと思いきや、ホンキで泣いていた(笑)。今野のフォローに感じたのか写真を焼き増し。暗室で現像中、純子と今野の頬がふれるシーンも好シーン。


*女カメラマンがゾッコン、シビレていた独身で金持ちで親切な編集長(笑・ナレーションより)を演じたのは、本作ナレーターこと名優・岸田森(きしだ・しん)が結成した「六月劇場」出身で、『恐竜戦隊コセイドン』(78年・円谷プロ)でもタイムGメンのバンノ・チカラ隊長を演じた痩身髭面の名優・草野大悟(くさの・だいご)。
 ナレーションとは異なり、そのいかがわしいトボけた演技は完全にギャグ。電気カミソリを髭ではなくおデコにあてている(笑)。91年没。


*冒頭、忍者超獣ガマスが手裏剣を放つや、大型戦闘機タックファルコンの長大な機体を貫通、本当に上面下面に寸断されて、下半分が落下してしまう特撮がサプライズ。
 中盤の第二ラウンドでも、北斗と吉村が駆る(吉村隊員けっこうヤルじゃん)タックアロー二機が何度もキリモミ旋回飛行や機体を上下反転したまま飛行を続けてガマスを翻弄するなど、従来のウルトラシリーズでも見たことがない曲芸飛行特撮を見せてくれる。
*終盤の第三ラウンドでは、本作『A』から次作『ウルトラマンタロウ』(73年)前半まで使用された本家・東宝の第9ステージの広大さとミニチュアの尋常ではないストックの面目躍如!
 とにかく広大なセットと精巧な造りのミニチュア(ビル・自動車・電柱・墓場)の無茶苦茶なまでの数の多さ(おそらく東宝特撮怪獣映画に使用されたもの)。


 自分の目と頭で考えず第2期ウルトラ低評価の先入観から、既成の俗説をオウム返しにするヌルいマニアが、この時期の『ウルトラ』から特撮のレベルが低下しはじめたなどとホザくが、愚劣というべきかな。撮影所の関係からも、基本的に『A』の特撮は、東宝の特撮陣が下請け・担当したものなのである。今回の特撮監督・田淵吉男ももちろん東宝の人間。


 第1話の特撮同様、ビルの隙間からエースVS超獣の格闘場所が広場になっているのがバレてしまうカットがあるのは惜しいのだが(でもマセたガキはともかく幼児なら気がつかないって・笑)。


*写真の中の超獣ガマスが動いたり飛び出したりする、難度の高そうな合成カットにも果敢に挑戦!


*超獣ガマスは、翌年の円谷プロ製作の巨大変身ヒーロー『ファイヤーマン』(73年)第9話『深海からの挑戦』にジュラ紀に生息していたという古代恐竜ロドグロスとして流用された。
 ちなみにこの回は、前作『帰ってきたウルトラマン』(71年)第5話『二大怪獣東京を襲撃』・第6話『決戦! 怪獣対マット』の前後編に登場した地底怪獣グドンが、名前もそのままに登場した回であることでも有名。


*今回、タックファルコンの機体の底部が下方にスライドして発射台から放たれるミサイルの名称は、RXミサイル。


*ラストのTAC本部での隊員たちの談笑シーン。ドサクサにまぎれて山中隊員が我らが南夕子隊員に肩をかけている。山中「恋は盲目!」。北斗「女は魔物!……あ痛て!」。北斗をつねる夕子。夕子も負けてはいない(笑)。


*視聴率16.8%


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2006年号』(05年12月30日発行)『ウルトラマンA』再評価・全話評大特集より抜粋)



「ウルトラマンA 再評価・全話評!」 〜全記事見出し一覧