『ウルトラマンダイナ』最終回「明日へ…」 〜最終章三部作・合評!
『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』 〜岡部副社長電撃辞任賛否!
『ウルトラ銀河伝説外伝 ウルトラマンゼロVSダークロプスゼロ』 ~映画の前菜ビデオ作品なのに大傑作が爆誕!
『ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国』 〜大傑作!(なのに不入りで暗澹たる想い・汗)
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『ウルトラマンダイナ』評 〜全記事見出し一覧
『新ウルトラマン列伝』(13年)放映枠で、映画『ウルトラマンサーガ』(12年)が2014年1月15日(水)から5週連続で、「沈黙の地球」「ゼロの苦難」「恐怖の繭」「復活の英雄」「本当の戦い」に5分割されて、カットされていたウルトラ兄弟活躍部分まで復活して放映記念! ……とカコつけて(汗)、映画『ウルトラマンサーガ』合評をUP!
『ウルトラマンサーガ』 〜合評1
(文・T.SATO)
(2012年7月脱稿)
往年のウルトラマンレオ(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090405/p1)以上に頭部にカンムリ状のツノが多数あって、全身に複雑なウズ巻く装飾に満ち満ちた、赤や青などの原色を一切使わないコワ〜いルックス。第1期ウルトラの特撮デザイナー・成田亨(なりた・とおる)センセイの怪獣デザイン3原則からはハズれまくった新ウルトラマンこと“ウルトラマンサーガ”!(歓迎!)
個人的には映画の中での強化バージョンキャラとしてならばアリだと思う。TVシリーズの主人公ヒーローのノーマルモードとして登場してたら、幼児層にソッポを向かれるデザインだとも思うけど(笑)。
しかし、『天装戦隊ゴセイジャー』(10年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20130121/p1)のラスボスにして、映画『ゴーカイジャー ゴセイジャー スーパー戦隊199(ひゃくきゅうじゅうきゅう)ヒーロー大決戦』(11年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20201108/p1)や映画『仮面ライダー×スーパー戦隊 スーパーヒーロー大戦』(12年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20201115/p1)で2度も復活しつづけている、ゴセイジャーたち護星天使の同族でもあったという堕天使(だてんし)・救星主のブラジラに、多くのマニアも指摘しているけれども、映画の神さまのイタズラかやっぱり似ているなぁ。
DAIGO(ダイゴ)・AKB48(エーケービー・フォーティエイト)という流行(はや)りもの、一種のイロモノスターたちの投入。それにより、一部の多くの(形容矛盾・笑)マニアたちによる「不純だ!」との事前、および事後の下馬評に満ち満ちた3月公開の本作『ウルトラマンサーガ」(12年)。
一方で今や若い特撮マニア世代の主流派であるアンチ・白倉(東映プロデューサー)&アンチ・米村(脚本)派からは、4月公開の『スーパーヒーロー大戦』のあまりのヒドさの口直しに、本作を鑑賞し直して心を癒しているとの感想などもよく散見する――筆者個人は『スーパーヒーロー大戦』肯定派だけど――。
作品批評が一方向に染まらず、マニア間での「空気」による悪い意味での日本的ムラ世間な同調圧力に屈せず、多様な意見が平気で併存する光景を見ると、筆者のようなオールドマニアからすれば隔世の感。特撮マニアもよくぞここまで「近代化」(笑)してくれたものだとも思う。
DAIGO(ダイゴ)の演技力には不安があったが、事前にネットやCMで何度も本作の予告編を観て慣れていたせいか、彼の素のキャラ――それも世渡り的にテレ隠しも含めて「作ったキャラ」だといえば「作ったキャラ」なのだろうが、板に付いて不可分になった第2のキャラ(笑)――に合わせた人物像でもあったせいか、個人的には悪くなかったと思う。
しかし、30歳オーバー! 「軽薄短小」と云われた80年代中盤でも、まだ「30歳以上は信じるな!」もとい「30過ぎたら演歌でしょ」なぞと云われていた時代であったワケだから、思えば遠くへ来たもんだ。90年代まではあんな30代はいなかった(笑)。
カッコいいヤツがソレだけでは許されず、スマしてるだけでは足を引っ張られてしまう世の中になってしまい、ジャニーズ・SMAP(スマップ)みたいに三枚目・面白トークもできなきゃとなるのは90年代後半以降の風潮だったかと記憶する。その到達点がカッコいい二枚目自身&カッコつけた発言自体をセルフパロディにして、80年代初頭の漫才ブームの破裂的な笑いや、80年代中盤のとんねるず的な躁病的で強迫的なイッキ飲み強制ノリの笑いではなく、いったん脱臼、ハズしてみせて脱力した半笑いを誘うネジクれた構造を持つGACKT(ガクト)でありDAIGOなのである!?
AKBについては、メインヒロインで地球防衛隊のレジスタンス、戦う女性キャラ・秋元才加(あきもと・さやか)演じるアンナの気の強い姐御肌の演技力に尽きるだろう。
ただ、カッコいいんだけれども、作品批評ではない次元で云わせてもらえば、強すぎて怖すぎて弱いオタク男子としては、アイドルとしては崇拝する気にはなれないなぁ。AKBだったら、看護婦の娘とかメガネっ娘とかの方が癒し系でイイよなぁ(笑・ギャル優勢の当今、女性の中でのカーストでは、アイドルとかメイド喫茶バイト系女子というのはちょっとイモっぽくてトロい娘がなるものなのだそうだけど……汗)。
ミーハー的な私情とは離れたところで云うならば、『サーガ』で秋元の卓越した演技力を知ってしまった身には、彼女には映画『極道の妻(おんな)たち』シリーズ(86年〜)みたいな作品で、啖呵(たんか)を切れる女性キャラとして末永く活躍してほしい気がしている。だが、こーいうヤクザもののジャンル映画も怪獣映画同様、存続はキビしいですかネ?
AKBの7人については、たしかに全員のキャラが描ききれていたとは云わないけれど、だからといって主要数名以外は不要だったとは思わない。尺の都合もあるのだから、キャラ描写に濃淡を付けるのは致(いた)し方がないだろう。それに7人くらいはいないと層の厚さというかバックアップというか最低限の組織としての力強さも出てこないし。
公開から数か月が経ったので書いてしまうが、地球防衛隊はまがいものの組織であった。
雲上人(うんじょうびと)であった70年代までとは異なり80年代中盤の秋元康プロデュースのおニャン子クラブ以降、アイドルも――プロデューサーも!――楽屋ウラを見せて、作り物でありナマ身の人間であることを見せつけてきた。だからと云って、観衆の側でもシラケてしまってアイドルジャンルが絶滅してしまったワケでもなく、それをも含めてアイドル&ファンとの共犯関係で、ウソでも演技でもポーズでも判っていて「あえて」祝祭空間を作って、束の間の高揚感を味わうようになって久しい現在。
そんな彼女らが「まがいもの」の地球防衛隊で、ヒトをだまして陥(おとしい)れるための「ウソ」ではなく、社交辞令・潤滑油や他人に安息を与えるためのやさしい「ウソ」の類いで、生き残りの子供たちを守り、「ウソ」は「ウソ」、「虚構」でもそこに少しでも「本物」をやどらせようとするというケナゲな構図が、現実の彼女らの芸能活動ともビミョーに重なって、メタフィクションの重層構造が奇しくもできあがり、それがまた――大きなお友だちやパパ・ママ層の――観客の感動を上乗せしたようにも思うのだ。
何より我々もまた、ママやパパや社会人としての役割をポーズとして演じて、「ウソ」でもそこに少しでも「本物」をやどらせようとしているとも云えなくもないのだし。まぁ、独身男性オタクのダメ社会人が云ってみせても説得力はナイかもしれないが(笑)。
話は変わるけど、手前ミソで恐縮だけれど、弊同人誌の過去10年の主要ライター陣の言説の影響により、現在の筆者は、「特撮」というジャンルは「SF」や「文学」のサブジャンルではないと考えている。いわんや「映画」というサブジャンルですらない。
「SF」とは、視点の転倒による知的快感・知的コーフンを主眼とするジャンルである。
「文学」――「大衆文学」とか「エンターテイメント」とは異なるものとしての「文学」――とは、ナイーブな心性・内面・自意識や、繊細な風情に対する感慨などを主眼とするジャンルである。
では「特撮」ジャンルとは何か?
「特殊撮影・特殊技術」によるアリエナイ珍奇な映像――天変地異などの風景スペクタクル、神々や異形の化け物、超現実的なメカニック、それらのアクロバティックな体技アクション――への驚き・サプライズを主目的とするジャンルであると思うのだ。
ドラマやテーマはあってもイイけど、特撮やアクションのクライマックスへの「驚き」という“主”が有効になるように配置され、それに奉仕すべき“従”であるべきだと考える。その伝で云うなら、『スーパーヒーロー大戦』や映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』(09年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101224/p1)は理想的な作品であると思う。
だから、「ヒーロー」と「怪獣」だけを看板にお客を呼べれば、「特撮」作品においてはそれがベストである。
しかし、そうは云ったものの、それが現在の「ウルトラ」においては不可能であり、子供たちに向けた現役の「ウルトラ」TVシリーズも今現在は存在しない以上は、現実主義やカネ勘定も必要であるだろう。
また一方で、珍奇な映像だけでも、お財布のひもや子供のチャンネル権をにぎるママ層はそんなには喜ばないモノでもあるだろう(笑)。子供の情操教育面も考えれば、ヒヨってしまうけど、適度なテーマやドラマを時に入れることも消極的には充分にアリだとも思う。
その観点から筆者個人は、DAIGO・AKB・つるの・太陽・昭和OBを投入し、そして人間ドラマ志向でもあった本作と、一般層といわずともライト層や周辺層、メインターゲットの子供たちのママ層、およびオールド特撮世代にも等しく目配せして、少しでも客層を広げて話題性も作って興行収入も上げようとした試みには大いに賛同したいと思うのだ。
『ウルトラマンサーガ』 〜合評2
(文・久保達也)
(2012年4月11日脱稿)
「「神秘的なのに熱い血がかようウルトラマン」と、「素敵な人間たち」が力を合わせて悪に挑む。
ウルトラマンサーガでぼくたちが目指したのはそういう世界です。
幼い頃に読んだ内山まもる先生のウルトラマンがまさにそうでした。
あの頃、日本中の子供が内山先生のコミックに熱狂しました。
ぼくもそのひとりです。やがて監督という立場になったとき、
「内山先生みたいな本当にカッコいいウルトラマンを作りたい!」
心からそう思いました。
映画『ウルトラマンサーガ』のふるさとは、内山先生がつくられた宇宙にあるのかもしれません。
映画とコミック両方で、さあ、冒険のはじまりです!」
筆者と同じ1966年生まれのおか監督は、自身が監督したオリジナルビデオ作品『ウルトラ銀河伝説外伝 ウルトラマンゼロVSダークロプスゼロ STAGEI(ステージ・ワン) 衝突する宇宙』(バンダイビジュアル・10年11月26日発売・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20111201/p1)の映像特典で、「砂にまみれ、汗にまみれた」ウルトラマンが描かれた1970年代前半の第2期ウルトラシリーズ――『帰ってきたウルトラマン』(71年)・『ウルトラマンA(エース)』(72年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20070430/p1)・『ウルトラマンタロウ』(73年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071202/p1)・『ウルトラマンレオ』(74年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20090405/p1)――に対する思い入れが深いと語っていた。
しかし、そればかりではない! 同時期に故・内山まもる大先生(11年12月1日永眠)が小学館の学年誌に連載していた、ウルトラシリーズのコミカライズ作品(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210117/p1)やオリジナル作品(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20160914/p1)にも夢中になっていたのだ!
「本当にカッコいいウルトラマン」
それが「ぼくらの世代」の原点なのである!
導入部の白昼のビル街でのウルトラマンダイナの登場場面。
『ウルトラマンタロウ』あたりでよく見られた、ビルの一室の主観からゆっくりと進撃するダイナの両足をとらえ、続いて壁面がミラーガラスになったビルにダイナの上半身が映しだされるという心憎い演出!
凶暴怪獣アーストロンが口から吐き出すマグマ熱線!――吐く直前、喉元が赤く明滅するという芸コマな描写を付加!――
それを、バリヤーもはらずに素手で払いのけ、アーストロンに向かって進撃するダイナ!
アーストロンの長い尾をつかみあげ、豪快にジャイアントスイングをかますダイナ!
原典のアーストロンが初登場した『帰ってきたウルトラマン』第1話『怪獣総進撃』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20230402/p1)のオマージュ的演出ではあるが、アーストロンの巨大感が絶妙に表現され、大スクリーンに映(は)える映える!
空のかなたに吹っ飛ばされたアーストロンに、両腕を十字に組んで必殺のソルジェント光線を放つダイナ!
そこで、場所は変わって、並行宇宙のひとつ・アナザースペースの宇宙空間!
隕石群の上に居並んだ帝国機兵レギオノイドの大軍団を相手に、激闘を展開するウルトラマンゼロ!
前作の映画『ウルトラマンゼロ THE MOVIE(ザ・ムービー) 超決戦! ベリアル銀河帝国』(10年・松竹・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20111204/p1)でも流れたカッコいいウルトラマンゼロのテーマ曲が流れる!
頭部の宇宙ブーメラン・ゼロスラッガーを胸に装着して放つ必殺光線・ゼロツインシュートで、レギオノイド大軍団を一掃するさまはまさに圧巻!
そこにウルトラマンダイナからの並行宇宙を超えた呼びかけが聞こえてくる。
ダイナの呼びかけに応えて、前作『ゼロ THE MOVIE』で登場した、並行宇宙を越境できる伝説の太古の超人・ウルトラマンノアの力をやどした銀色のウルティメイトイージスの鎧(よろい)を装着し、次元を超えて別の宇宙の地球へと急行するゼロ!
だが、人間の姿がまったく見あたらないことに愕然(がくぜん)とするゼロ。
大都会の実景をロングでとらえ、最も高いビルの屋上にゼロの姿を合成したカットが実に秀逸だ。
その上空に突然姿を見せる触角宇宙人バット星人の巨大な宇宙船!
次々に飛び出す無数の黒い小型戦闘機と華麗な空中戦を展開するゼロ!
「昔ながらの手法でしか醸(かも)し出せない良さがある」などと『ウルトラマンゼロVSダークロプスゼロ STAGEI 衝突する宇宙』の映像特典でおか監督は語っている。たしかに、東映のヒーロー作品にはじまり、東宝の平成ゴジラシリーズ、角川映画の平成ガメラシリーズ、そして平成ウルトラシリーズと、ひととおりを渡り歩いた、三池敏夫(みいけ・としお)特撮監督による演出は、「昔ながらの手法」と「最新のデジタル技術」を巧みに融合させ、冒頭から「本当にカッコいいウルトラマン」を描ききっている!
先の『ダークロプスゼロ』の『STAGEII(ステージ・ツー) ゼロの決死圏』(バンダイビジュアル・10年12月22日発売)における、ゼロが体を反転させ逆立ち状態でロボット超人・ニセウルトラマンの右肩に左足で蹴りを入れる、大人気漫画『ドラゴンボール』(84年)的な、ウルトラマンは飛行能力もあることを活かした実にカッコいいアクション描写なども、同作の特撮監督も兼任したおか監督のディレクションによるものだった。「本当にカッコいいウルトラマン」を追求する氏の要望が、今回も本作の特撮アクション演出に相応に反映されているのだ!
そればかりではない。本作は実に迫力のある特撮演出の中で、コミカル描写をも折り混ぜるといった快挙まで成し遂げているのである!
ゼロとバット星人の戦いに巻きこまれて、墜落してくる敵の小型戦闘機から少年・タケルを救うために、防衛組織スーパーGUTS(ガッツ)の新人隊員であるタイガ・ノゾムは自身が駆(か)るスーパーGUTSの戦闘機を突進させ、その機体を呈して地上の少年をかばうも、中空で敵の戦闘機の爆発に巻き込まれる!
しかし、ウルトラシリーズのお約束で(笑)、自己犠牲を厭(いと)わなかったタイガに感動したウルトラマンゼロは、彼と一心同体となることで彼の一命をも取り留める。
だが、テレパシーでその旨を伝えてきたゼロに、目覚めたタイガ隊員は笑顔で謝辞は述べるものの、軽妙なノリで「出ていけ!」とのたまう!(笑)
そこに、四足歩行の深海怪獣グビラが出現!
そこで、ゼロは眼鏡型の変身アイテム・ウルトラゼロアイをタイガの眼前に出現させるが、タイガはゼロへの変身を拒否(笑)、タケルを連れて逃げ回る!
グビラは合成で実景の川にジャンプして飛びこみ、タイガとタケルが逃げる橋を破壊する!
逃げるふたりを手前にして、その鼻先の回転ドリルで橋を下から突き破って瓦礫を撒き散らしながら現れ迫ってくるグビラを背後に合成したカットが圧巻!
ハズみで宙に吹っ飛ばされるふたりだが、ゼロの超常的な身体能力を身につけたタイガは、宙に舞った幾多の破片の上をぴょんぴょんと飛び回る!
しかし、やがてタイガはグビラの鼻の先端のドリル部分の上に落ちてしまう。
高速回転するドリルの上であわてふためいて、ドリルの回転と逆方向に走り出すタケルを抱いたままのタイガ!(笑)
『タロウ』の主人公・東光太郎(ひがし・こうたろう)が怪獣に飛び乗ったり噛みついたりした描写が、かつてはマジメなマニア連中からよくスケープゴートにされたものだ。むかしだったら「リアルじゃない」「フザケている」とマニア連中から大ブーイングが飛んだであろう描写だが、そういう声を寡聞にして知らないのは、フィクション作品の非リアルな描写の楽しさをも許容するようにマニアの側も成熟したといったところだろう。
新たに出現したウルトラマンコスモスの慈愛の光・フルムーンレクトでグビラはおとなしくなり、コスモスは春野(はるの)ムサシ青年の姿となる。
タケルを捜しに来た、女性だけの防衛組織・チームU(ユー)のリーダー・アンナと、副リーダー・ミサトに、地球防衛隊本部に案内されるタイガとムサシ。
そこにバット星人の声が響き渡り、再度グビラと古代怪獣ゴメスが出現!
変身アイテム・コスモプラックを宙に掲げ、「コスモ~~ス!!」の掛け声とともにウルトラマンコスモスに変身するムサシ!
高々とジャンプしてグビラを踏み台にし、ゴメスに飛びかかるというアクロバティックなアクションが秀逸(しゅういつ)!
だが、2大怪獣の猛威に次第にピンチに陥るコスモス!
そこでウルトラマンゼロは、タイガの両目に変身アイテム・ウルトラゼロアイを勝手に着眼させる。
ゼロアイをハズせずにもがくタイガ、そのままゼロの意識が優先されたか、両腕を左右にガバッと広げて高速で回転しながら宙に舞い上がって強制的にウルトラマンゼロへと変身!!――それでイイのか!?(笑)――
ゼロ「待たせたな!」
だが、ゼロは身長49メートルの基本サイズではなく、なぜか10メートルそこそこの中途半端な大きさに。タイガが戦いを拒否しているのがその理由らしい(笑)。
ゼロ「じゃあ、このままやるしかねえな!」
ゼロは小さなサイズでグビラに立ち向かうも、回転するドリルに振り回されて吹っ飛び、続いてゴメスの尾にも同じように振り回され、吹っ飛ばされる!
アンナ「何度も同じことやってんじゃないわよ、バカ!」
タイガのせいでバカ呼ばわりされ、怒り心頭に発したゼロ(笑)、その小さな姿でゴメスを持ち上げ、グルグルと回転させて放り投げる!
これらの場面は観客の子供たちのみならず、その親たちをも爆笑の渦に巻きこんでいた。が、決してギャグ演出だけにとどまっておらず、その中型サイズのままでも巨大怪獣を放り投げることができることで逆説的にゼロのまさしく超人的な能力を描き出し、そのヒーロー性をも醸し出すことができており、これもまた「本当にカッコいいウルトラマン」を描いたことにほかならないのである!
そして、これら一連のシーンにおける、変身したくない! 分離して出てってくれ! という、ゼロとタイガとのまさに掛け合い漫才的なやりとりが絶妙である。変身後のウルトラマンと変身前の人間とが会話すること自体が前例はいくつかあるけどマレであり、しかもそれがギャグであること自体は21世紀の今のご時世ぽくって極めて斬新! まさによくある定型句で云えば、「本編」と「特撮」がここで華麗に融合し(笑)、一体感のある絵をつくりあげているのである!
本作でもゼロの声を演じた声優・宮野真守(みやの・まもる)のコミカル演技もさることながら、バラエティ番組などで「軽妙」ではあっても決して「軽佻浮薄」で他人を小バカにして笑いを取るような小さなイジメもオッケーな80年代的な優しくないお笑いではなく、他人さまを傷付けないかたちでの二枚目半的なお馬鹿キャラや優しい駄洒落ギャグをもっぱら発揮するDAIGO(ダイゴ)をタイガに起用したことは、個人的にはこれら一連を観ただけでも大正解であったと思えた。
もはや正義のヒーローが「品行方正」な人物ばかりでないことは、平成ライダーの諸作品が立派に証明しているが(笑)、「オレさま」主人公とは真逆な方向ではあるけど、これくらいブッ飛んだ主人公がウルトラマンに変身しても決しておかしくはないのである!
特にDAIGOは演技力がそうあるわけではないのだろうが、脚本・演出ともにバラエティ番組などで見せるDAIGOのカッコつけてるけどスットボケていて笑えてしまう個性や話し方をそのまま極力活かすかたちで、彼個人も演技がしやすいように人物設計されているように思える。
予告編で何度も流れて、一抹の不安(笑)も残した
「けっきょくオレは…… なにもできないのかよ〜〜!」
という声が裏返った芝居のシーンも、劇中ではけっこう感動的なシーンだったとは!
そして、チームUを演じたアイドルグループ・AKB48(エーケービー・フォーティエイト)から選抜された7人のメンバー、一部では演技が「大根(だいこん)」と評する向きもあるが、そうかなぁ? 実質的な本作のもうひとりの主人公であるアンナ。AKBのチームKのリーダーでもある秋元才加の演技力は絶品だったと思うが。元々が素人(しろうと)集団という設定なのだから、もっと素人っぽい演技でもいいように個人的には思っていたのだが。逆にウマすぎてカワいくねぇぞ! 頼もしすぎるぞ! と思ったくらいだ(笑)。
戦闘班・整備班・通信オペレーターに医療担当と、7人でちゃんと役割分担してキャラを立たせることもさることながら、射撃の名手・メカ開発・怪力の持ち主・名プランナー・爆弾の専門家などで構成された、歴代ウルトラ防衛チームの伝統をも彷彿(ほうふつ)とさせるこの設定。
また、アンナ・ミサト・サワが操縦する多目的ローダーマシン・U(ユー)ローダーが、飛行形態から中型ロボット形態に変形、冒頭からアーストロン相手に戦闘を繰り広げることもまた、かねてからウルトラ防衛チームにも巨大ロボットを配備しろ! と願ってきた筆者的には、本作で意外なかたちでそれが実現したことがたまらなく嬉しかったものである(https://katoku99.hatenablog.com/entry/19971115/p1)。
医療担当のリーサを演じる佐藤すみれがギターを奏(かな)でながら歌う『ウルトラマンダイナ』(97年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971215/p1)の挿入歌『君だけを守りたい』に乗せて、かつてウルトラマンダイナ=アスカ・シン隊員が、チームUや彼女たちが守っている子供たちとともに過ごしていたころの回想場面が流れて、その歌が終わるとともに場面が暗転! 宇宙恐竜ハイパーゼットンの誕生を阻止するために、アスカがアンナとタケルの前から姿を消すことになる決定的な場面の回想へとつなぐセンスは、実に光るものがある!
また、ウルトラマンゼロの危機にウルトラマンダイナが奇跡の復活を遂げる場面では、アスカを演じた、つるの剛士(たけし)自身のボーカルで新録した『君だけを守りたい』が絶妙なタイミングで流れるのである! 東映ヒーロー作品に比べてウルトラでは音楽演出の中で挿入歌を使用して盛り上げる場合が極端に少なかった感があるが、今回ばかりは見事であるとしか云いようがない。
本作でダイナがメインで扱われたのは、近年ではすっかりメジャーな存在となったつるのを出演させることで、大きな話題性を提供するという目論見(もくろみ)が多分にあったことは確かではある。
だが、『ウルトラマンダイナ』の1997年の放映からこの2012年で早くも15年が経過した。幼稚園児のころにリアルタイムで視聴し、現在でもファンを続けているという20代に達した人々による本作に対する評価が、ネットで散見されるような時代になったのである。おそらくは『ダイナ』も含め、前後の『ウルトラマンティガ』(96年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961201/p1)、『ウルトラマンガイア』(98年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19981206/p1)も、継続して視聴していたという人々がその中の大半を占めることであろう。
平成ウルトラ3部作に対する個人的な感慨はさておき、3年にも渡ってテレビシリーズが継続して放映されたということが、「平成ウルトラ世代」ともいうべきファンを、確実に育てあげたことは確かなのだ。AKBやDAIGO、つるのらの出演で一般層にアピールすることも大事ではあるが、本作ではそうしたかつて幼少期に「ウルトラ」に熱中した特定の世代をも取りこもうとする戦略もまた展開されているのであり、「15周年」というアニバーサリーとしてはやや中途半端ではあるものの(笑)、ファンサービスとしては実に特筆すべきことが実現しているのである!
『ダイナ』でスーパーGUTSの隊長を務めていたヒビキ・ゴウスケは今やその上位組織である地球平和連合の総監となり、副隊長だったコウダ・トシユキは宇宙開発局の参謀に、ユミムラ・リョウが隊長に、カリヤ・コウヘイが副隊長に、ナカジマ・ツトムが科学班主任へと、それぞれを演じた木之本亮(きのもと・りょう)・布川敏和(ふかわ・としかず)・斉藤りさ(さいとう・りさ)・加瀬信行(かせ・のぶゆき)・小野寺丈(おのでら・じょう)と、本作ではオリジナル・キャストをここまで結集させ、15年後の姿を描いているのは、実に喜ばしい! まぁ、ミドリカワ・マイを演じた山田まりやが本作に出演していないのはたしかに惜しいところではあるのだが。
『ウルトラマンダイナ』最終回(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971211/p1)でアスカが「光の世界」へ旅立ったとして幕となったことは、当時のマニアの間でも賛否両論を巻き起こし、一部では「アスカは死んだのでは?」と解釈する向きもあったほどだ。
しかし、結果論ではあるものの、そういう結末にしておいたことで、映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE(ザ・ムービー)』(09年・ワーナー)に、それこそ次元を超えてダイナを昭和ウルトラ直系のM78星雲「光の国」の世界の物語に無理なく登場させることができたわけであり、それまであり得なかった昭和・平成のウルトラマンが共演可能となったのだから、世のなか何が幸いするのだかわからないものである。
――映画『大決戦! 超ウルトラ8兄弟』(08年・松竹・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101223/p1)での昭和のウルトラ兄弟と平成ウルトラマンたちの共演はなぁ…… ちょっと違うだろ(笑)。――
スーパーGUTSの出演場面はたしかに短いのであるが、エンディングでは『ダイナ』最終回の結末に納得できなかった人々なら感涙必至! たとえて云うなら『ウルトラマン80(エイティ)』(80年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971121/p1)初期第1クールの学校編を見事に完結させた『ウルトラマンメビウス』(06年)第41話『思い出の先生』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070218/p1)的な演出が用意されているので、エンディングが流れ始めても絶対に席を立たないこと!
ダイナとともにウルトラマンコスモスが本作のメインキャラとなっているのも、もちろん春野ムサシを演じた杉浦太陽(すぎうら・たいよう)が、現在では数々のレギュラー番組を持つ、メジャーな存在に昇格していることから、話題性優先の措置ではあるものの、本作が製作された2011年は『ウルトラマンコスモス』(01年)の放映からちょうど10周年という、まさにメモリアル・イヤーの年でもあった。
当時「怪獣保護」という異色の路線がマニアの間でかなりの物議を醸し出したこともあり、平成ウルトラ3部作や近年の『メビウス』などの人気に比べ、半ば「黒歴史(くろれきし)」的な扱いをされていたこともあったため、この機会に『コスモス』をひっぱり出してアピールしておいたことは、個人的には正解だったように思えるのだが。
ムサシが子供たちに語りかける話の中で、彼が怪獣保護組織・TEAM EYES(チーム・アイズ)の同僚だったヒロイン・森本(もりもと)アヤノ隊員と結婚、ソラと名づけた息子とともに幾多の怪獣たちや、怪獣を凶暴化させていたラスボス怪獣だったものの『コスモス』最終回(第65話)『真の勇者』でコスモスに改心させられたカオスヘッダーまでもが、並行宇宙のひとつである『コスモス』の世界であるコスモスペースの遊星ジュランで平和に共存しているという、『コスモス』のその後までもがキッチリと描かれているあたり、単なる話題性だけでは終わっておらず、秀逸であると思える。
『コスモス』終了後もファミリー劇場の『ウルトラ情報局』(03〜11年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070701/p1・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070708/p1・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071125/p1・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090419/p1)で長年ナビゲーターを務めあげ、新作の空白期間にウルトラの人気を持続させることにおおいに貢献、先ごろ結婚したらしい鈴木繭菓(すずき・まゆか)が、本作でもアヤノ役で出演していることもポイントが高いであろう。
それらサプライズゲストの面々に比べると、タレントのビートたけしが率いていた「たけし軍団」の一員のコメディアンから政界に進出、第52代宮崎県知事を務めた東国原英夫(ひがしこくばる・ひでお(※)が演じたバット星人はもっとフザケたコミカルなオーバーアクションでもイイと思うのに、てっきり出ると思ったお約束の「どけんきゃせないかん!」のセリフも発しない(笑)。声があまりに加工が強すぎて、ほとんど誰が演じているのだかわからなかったのはあまりに残念でもったいないと思う。
『ウルトラ銀河伝説』で悪のウルトラマン・ベリアルの声を吉本興業所属の雨上がり決死隊・宮迫博之(みやさこ・ひろゆき)、究極生命体レイブラッド星人の声をプロレスラーの蝶野正洋(ちょうの・まさひろ)、ウルトラマンキングの声を元内閣総理大臣・小泉純一郎(こいずみ・じゅんいちろう)が演じたことはマスコミでも大きく扱われたが、演技の技量はさておき、ちゃんと本人が演じていることが作品でハッキリと識別できたからこそよかったのである。
それが本作ではなぁ…… こんなに加工をしてしまうならば、『ウルトラ銀河伝説』でウルトラの母の声を演じた、モデル&女優の長谷川理恵(はせがわ・りえ)の声のときにこそ加工をしてほしかった(爆)。
さて、ここからは本作に対し、個人的に残念に思う点を挙げてみる。
まず、前作『ゼロ THE MOVIE』ラストで結成された「新しい宇宙警備隊」こと「ウルティメイトフォースゼロ」のメンバーとなった、ゼロの頼もしき仲間である、
●ミラーナイト――往年の『ミラーマン』(71年)のオマージュヒーロー――
●グレンファイヤー――往年の『ファイヤーマン』(73年)のオマージュヒーロー――
●ジャンボット――往年の『ジャンボーグA(エース)』(73年)のオマージュヒーロー――
そして『サーガ』の前日談ビデオ作品『ウルトラマンゼロ外伝 キラー ザ ビートスター』(11年)で参入した、
●ジャンナイン――『ジャンボーグA』の2号ロボット・ジャンボーグ9のオマージュヒーロー――
彼ら魅力的な新ヒーローたちが本作にはまったく登場しなかったことである。
彼らの活躍を待っていた幼児たちも相応にいたであろうから、この処置はよくないのではないのか? 本作の本編の人間ドラマに彼ら着ぐるみの巨人ヒーローたちを絡められないのはわかるが、それならば冒頭のゼロvsレギオノイド軍団との戦いの特撮シーンに彼らも参戦させて、ラストでゼロが帰還した先の並行宇宙でも彼らが出迎えて暖かいねぎらいの言葉を掛けるなどの1カットくらいは、今後も彼らのキャラクターを認知させて売っていくためにも必要ではなかったか?
華々しさに欠けるという点では、なんと云っても本作での昭和のウルトラ兄弟のあまりの影の薄さである。ただでさえ出演場面が短いうえに、まったくバトルを演じることがないのである。バトルを演じるのはあくまでゼロ・ダイナ・コスモスのみなのである。
映画『ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟』(06年・松竹・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070128/p1)に登場した究極超獣U(ユー)キラーザウルス、『超ウルトラ8兄弟』に登場した究極合体怪獣ギガキマイラ、『ウルトラ銀河伝説』に登場した百体怪獣ベリュドラと、近年のウルトラ劇場版のラストに登場する怪獣は超巨大な奴が主であり、だからこそ、多人数のウルトラマン、昭和・平成のウルトラマンたちの共同戦線を描くことができたのである――これが普通サイズの怪獣だったならば、完全にただの「集団イジメ」である(笑)――。
しかしながら、本作に登場したハイパーゼットンの完全体であるハイパーゼットン・イマーゴは身長70メートル・体重4万トンと、怪獣としてはまぁ普通サイズである(笑)。要するに最初から多人数のウルトラマンと戦うことを想定・計算してつくられた怪獣ではないことは確かである。
ネット上の本作に対する評では、「今までの怪獣はデカすぎて、かえってバトルに迫力がなかったので、今回のハイパーゼットンはよかった」なんて意見がけっこうあったりするのだけれど…… マジかよ!?(笑) みんな昭和のウルトラ兄弟と平成のウルトラマンが共演するのを観たかったんのと違うのか? そんないつもの普通サイズのラスボス怪獣を倒すのだったら集団でイジメているように見えてしまうから、劇中で共闘させる必然性が担保しにくいやんけ〜!(笑)
ハイパーゼットンの設定に関しては、後述するように本作のテーマにカラむ部分でもあるからやむなしとしても、仮にラストバトルにからまなくとも、ウルトラ兄弟を魅力的に描くことはいくらでもできたハズである!
ハヤタ「怪獣墓場からも、複数の怪獣が奪われたという情報がある」
そういうのを、なんでセリフひとことだけで済ませてしまうかなぁ……
バット星人の巨大な宇宙船が、怪獣墓場から怪獣たちを奪おうとするのをウルトラ兄弟が阻止しようとするが、防ぎきれずに10数体は奪われてしまう! といった特撮バトルを導入部で描くだけで、ウルトラ兄弟の活躍はもちろん、昔ながらのミニチュア特撮だけではない、最新のデジタル技術も披露できるのだし、世界観・スケールの大きさ、空間的広がりを見せることにもつながり、いいことずくめではないのか!?
あと、本作の舞台となった並行宇宙の地球にはダイナ以外は、これまでにウルトラマンが出現しなかったという設定であるために、次元を超えることができるゼロしか来れなかったということになるのだろうが――コスモスがなぜ現れることができたのかは正直ナゾ!(笑)――、そこはそれ、昭和のウルトラ兄弟たちが「ウルトラ5重合体!」とかして超ウルトラマンに強化変身して、次元を超えてゼロの危機に駆けつけるとか!
テレビ東京で放映中の『ウルトラマン列伝』(11年)第39話『<特別総集編>超決戦! ウルトラヒーロー!!』では、『サーガ』公開と連動して以下のような内容のものが流された。
「バット星人のつくりだした怪獣はハイパーゼットンだけではなかった……!
「怪獣兵器」として甦った歴代の強敵怪獣たち!
アントラー・パンドン・ブラックキング・ベロクロン・タイラント! 映画では観られない怪獣兵器軍団とウルトラ兄弟との壮絶バトルを、TV『ウルトラマン列伝』で見届けよう!」
これを裏づけるように、『てれびくん』特別編集による本作のパンフには、
●初代マンvs磁力怪獣アントラー
●セブンvs双頭怪獣キングパンドン
●ジャックvs用心棒怪獣ブラックキング
●エースvsミサイル超獣ベロクロン
●レオ対暴君怪獣タイラント
彼らのバトルが、しかもとハイパーゼットンとの最終決戦場で撮影されたものが掲載されているのである!
そればかりではない! 同じページのすぐ真下には、
●初代マン=ハヤタを演じた黒部進(くろべ・すすむ)
●セブン=モロボシ・ダンを演じた森次晃嗣(もりつぐ・こうじ)
●ジャック=郷秀樹(ごう・ひでき)を演じた団時朗(だん・じろう)
●エース=北斗星司(ほくと・せいじ)を演じた高峰圭二(たかみね・けいじ http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070630/p1)
●レオ=おおとりゲンを演じた真夏竜(まなつ・りゅう http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090413/p1・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090426/p1)
彼らが、グリーンバックを背景に、それぞれの変身ポーズをバッチリと決めるカットまでもが掲載されているのだ!
さらにその左には、初代マンの変身パースのカットまでも! いったいどういうことなんやコレは???
バット星人の怪獣兵器はゴメス・グビラ・アーストロンばかりでなく、
●アントラー
●キングパンドン
●ブラックキング
●ベロクロン
●タイラント
も存在している! それらを倒すために、どういう経緯であるのか不明だけどウルトラ兄弟は昭和ウルトラとは違う異次元にある本作における地球に集結! そして変身場面までもが本来は「映画用」に撮影されていたようなのである! それらが尺の関係でか本編からはカットされてしまい、『列伝』に回されてしまったというのが真相のようである。
んなアホな! 「映画では観られない」ってどういうことや? ふつうは「テレビで観られない」ものを映画で観せるのと違うんか? 特撮撮影も済ませて相応に映像もできあがっているように見えるのにも関わらず、それでもカットされてしまった事態には製作スタッフたちも断腸の想いであっただろう。しかし、それでもやはりこれは見当違いもはなはだしいように思えてならないのだ(笑)。
地上波では放映されていない地域も多い『列伝』に登場させるより、映画に登場させる方が、バンダイのソフビ『ウルトラ怪獣シリーズ』もはるかによく売れるに違いないのである。
――実際、白黒モノトーンで鼻先に回転ドリルが付いて魚のように扁平な四足歩行の深海怪獣グビラは、その奇抜な形態がやはり今の子供たちにとっても魅力なのか、『列伝』の放映とリンクして毎月発売される平成ウルトラシリーズに登場した怪獣などが比べものにならないほどにソフビ人形が売れており、ハイパーゼットン並みの注目を集めているくらいなのである。これはやはり回転するドリルという、生物学的なリアルさとはおおよそかけ離れた『ウルトラマンA』の超獣チックな生体武器を持っていることが、子供に大きなインパクトを与えていると思われるのだ。怪獣デザインってそういう点が大事なのだ!――
キングパンドンだって、『超ウルトラ8兄弟』公開時に発売されたものを、本作における玩具の目玉のひとつとして再販することが可能だったはずである。新作のテレビシリーズ放映がないのだから、映画公開時に関連商品を徹底的に売っておかねばならないのだ。そうでなければ、新作の製作がますます困難になっていくばかりなのである。
本作のバンダイ発売の関連商品としては、変身アイテムの『DX(デラックス)ウルトラマンサーガブレス』(3675円・ASIN:B006G3R6NE)と『ドラマチックサウンド DXウルトラマンサーガ』(3990円・ASIN:B006G3R6Q6)など、高額商品は数えるほどしかなく、あとは食玩やカプセルトイなど、数百円単位の極めて単価が安いものばかりである。大型基地や合体巨大ロボ――その意味でもそろそろウルトラシリーズに地球人側の兵器として合体巨大ロボを出せ! と思うのだが……――といった、高価な合金製の玩具を発売できないのが近年の作品の難点であるのだが、ならば最大の主力商品である840円の『ウルトラヒーローシリーズ』『ウルトラ怪獣シリーズ』の数を売るしかないのである。
その意味でも多数のヒーロー・怪獣を劇中で最大限に活躍させることが必須条件となってくるのである! 80年代のバンダイは東映ヒーロー作品に登場する玩具メカの登場時間をストップウォッチで測って、その活躍シーンが劇的に盛り上がっているか否かよりも、ただ単にその登場時間を増やすように番組スタッフに要請していたという真偽定かならぬイヤ~ンな都市伝説があったけど、なんで近年のバンダイはこういうことにイイ意味でもっと口出ししないのかなぁ……
そうした面ばかりではなく、商業的な戦略として考えるなら、やはり近年のライダーやスーパー戦隊の劇場版の華やかさと比較すると、どうしても見劣りしてしまう印象を受けるのである。
作品自体の質的な優劣ではなく、映画『オーズ・電王・オールライダー レッツゴー仮面ライダー』(11年・東映)しかり、映画『ゴーカイジャー ゴセイジャー スーパー戦隊199(ひゃくきゅうじゅうきゅう)ヒーロー大決戦』(11年・東映)しかり、映画『仮面ライダー×仮面ライダー フォーゼ&オーズ MOVIE大戦MEGA MAX(ムービー・たいせん・メガマックス)』(11年・東映)しかり、映画『海賊戦隊ゴーカイジャーVS(たい)宇宙刑事ギャバン THE MOVIE』(12年・東映)しかり、女児向けアニメ『映画プリキュアオールスターズ』(09年・東映)シリーズしかり……
これらすべての作品が、『サーガ』のように近作のヒーローたちが活躍するのではなく、シリーズの元祖ヒーローから最新ヒーローまでをも総動員してラストバトルを繰り広げているのである!
『フォーゼ&オーズ』は最新ヒーロー『仮面ライダーフォーゼ』(11年)、前作『仮面ライダーオーズ』(10年)、前々作『仮面ライダーW(ダブル)』(09年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100809/p1)の最新の3人ライダーに加えて、昭和の7人ライダーが集結した作品であった。もしこの作品に、あるいは平成ライダー劇場版史上、最大最高の興行収入をあげた(!)『劇場版 仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカー』(09年・東映・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20091213/p1)に、新旧ヒーロー大集合! 的な要素がなかったらば、興行的には特大ヒットにはならなかったであろうとついつい考えてしまうのである。
近年の平成ライダー人気・勢いを思えば先輩ヒーロー客演がなくとも、ある程度の興行成績は残すことができたには違いない。実際これらの作品においては、昭和ライダーの登場はゲスト的な扱いにすぎないものではあった。しかしながら、昭和の「7人ライダー」登場のニュースは、昭和のライダーに放映当時熱狂した子供たち、現在の40歳前後から50代前半という社会の中核に位置する世代を「ビビッ」と来させるものなのである! これがあるのとないのとでは、今や世代人たちが主要記者やそのデスク(上司・管理職)となっている各マスコミの扱いは格段に違ってくるわけであり、ひいては興行成績を左右することになると考えるのだ!
『ウルトラマンサーガ』もそうであったが、ウルトラの劇場版では父親と息子という組み合わせで観に来ているパターンが多く、母親や娘の姿はあまり見かけないのが実情である――筆者は『サーガ』を4回観たが、やはり本作でもそういう印象を受けた――。仮に母親がいたとしても、平成ライダー劇場版で見かけるようないわゆるイケてる感じの女性は、大変失礼ながらほとんど見かけないようにも思える(汗)。
「ディズニーとか『長靴をはいた猫』(11年・日本公開12年。ドリームワークス製作のフル3DCGアニメ映画)だったらカワいくてオシャレだからいいけどぉ〜、ウルトラマンはオタクみたいだからダサくてイヤ! アンタ連れてってあげてよぉ〜」(笑)
DAIGO・つるの・杉浦の出演は、そういう人々に対する方策かと考えて差し支えないかと思うが、そんなわけで一般層の父親は息子をしぶしぶ劇場に連れていくことになる。われわれ特撮マニアでもないかぎりは、一般層の父親が子供向けのヒーロー映画なんぞを鑑賞するのはツラいことであろう。この際、日ごろのたまった疲れを癒(いや)すために、ゆっくりと寝させてもらうとするか……
だが、『ゴーカイジャーVSギャバン』では、『海賊戦隊ゴーカイジャー』(11年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20111107/p1)の現役視聴者である就学前の幼児の父親層に多い、30代半ばから後半くらいの世代に思い入れが強いと思われる、『宇宙刑事ギャバン』(82年)の主人公ヒーロー・一条寺烈(いちじょうじ・れつ)=ギャバンを、当時と同じく大葉健二(おおば・けんじ)が演じ、大活躍を繰り広げていたのである!
現在の特撮技術で再現されたギャバンへの変身、「蒸着!」のシーンに、懐かしのナレーションまで加えられたことにより、思わずスクリーンを食い入るように見つめてしまった一般層の父親も、きっと多かったことと思うのである。オレもガキのころはそうだったのだ! と気づかされ、今後は息子の付き添いとしてばかりではなく、積極的にヒーロー作品の新作にアンテナを向けてくれるキッカケになったとしたら大成功なのである!
近年の興行成績の低迷から、話題性を優先して人気タレントを総出演させ、それらを中心とした作劇としたこと自体は決して誤りではない。むしろそれはおおいに正しいことである、と個人的には考える。
しかしながら、そればかりでは新たな客層を獲得することができたとしても、1966〜68年の第1次怪獣ブーム、71〜73年の第2次怪獣ブーム――74年にはすでにブームは去っていたと解釈すべきであろう――、78〜79年の第3次怪獣ブームの熱狂を体感した、「ウルトラマン」が現在よりもはるかに人気のあって児童文化の頂点を占めていたころを知る世代、40〜50代の人々の心の琴線(きんせん)を揺り動かすことはできないのである。
事前情報を知った古い世代のマニアであれば、AKBだのDAIGOだのウザいのが出てるわ、昭和のウルトラ兄弟もロクに出てこないという理由で、あえて『サーガ』は観る必要なしと判断した人も多かったことと思える。特撮評論同人界においても、今の「ウルトラ」は観る気にも語る気にもならないとして、その存在価値は凋落(ちょうらく)の一途をたどっている。本誌とて決して例外ではない(爆)。いや、むしろ近年の「ウルトラ」は過去の遺産=ウルトラ兄弟だの「M78星雲・光の国」だのに頼りすぎているからダメなのだ! とする若い人々の意見は、たしかに一理はあることとは思える。
しかしながら、先述した近年の東映ヒーロー作品のオールスター映画の興行的な大成功の例を考えれば、やはり特定の世代にウケるだけではなく、老若男女(ろうにゃく・なんにょ)幅広い世代の人々に楽しめるようにしなければ、映画がヒットすることはおぼつかない、ということになるかと思えるのである。
だからこそ、ライダーやスーパー戦隊よりもやや長い、45年という歴史のあいだに蓄積された「過去の遺産」をおおいに活用する方が、「戦略」として極めて有効であるとオジサンは考えるのであるが、いかがだろうか? それぞれの世代に、それぞれのウルトラマンがいるのだから……
さて、長々と書いてはきたが、そうした見た目の「派手さ」「華やかさ」「アクション」よりも、本作『サーガ』はやはり「ドラマ」や「テーマ」寄りの作風ではあった。
その意味でも、「怪獣や怪事件への驚き」を作劇の中軸とした第1期ウルトラではなく、「人間ドラマ」や「社会派テーマ性」の方を重視した第2期ウルトラ的な作劇ではあり、第2期ウルトラ支持派である筆者としては嬉しくもあるのだが、同時に実はこれが筆者的には前々作『ウルトラ銀河伝説』や前作『ベリアル銀河帝国』に比べると本作の最大の「弱点」に尽きるとも考えてしまうのだ。
タイガがウルトラマンゼロへの変身を拒否し、怪獣との戦いから逃げ回っていたのは、決して彼が弱い人間であったためではない。タイガはウルトラマンダイナが活躍していた並行宇宙のひとつ・ネオフロンティアスペースにおいて、15年前に怪獣のために両親を亡くしていた孤児であったのだ。
たとえて云うなら、『ウルトラマンタロウ』第38話『ウルトラのクリスマスツリー』に登場した、第5話『親星子星一番星』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071230/p1)におけるタロウと大亀怪獣キングトータス&クイントータス&ミニトータスとの戦いで両親を失った少女・ひとみと同じ境遇なのである!
――ちなみに、この回の回想場面で第5話のバンクフィルムが使用されたのは、たまたまそれにふさわしかったからと、適当に選ばれたものにすぎなかったのかもしれない。しかしながら、この回は基本的には悪事をしていない、悪人の所業による犠牲者でもある「大亀怪獣の保護」を防衛組織ZAT(ザット)が主張、攻撃を指令する上層部と対立する図式などが描かれており、タロウもまたウルトラセブンの協力を得て、怪獣の親子をウルトラの星に連れていくという、一見「美談」で終わっている。しかしそんな美談の裏でも、実は怪獣災害で両親を失った悲しい少女が存在していた、という皮肉な事実を強烈にあぶり出すことで、怪獣に罪はなかったとはいえこれを即座に排除しなかったZAT、そしてウルトラ兄弟の選択が本当に正しかったのか? と、話数を超えて激しく揺さぶりをかけているようにも、長じてからの再視聴では深読みができるのであり、いまだ特撮マニア向け商業誌やその読者投稿欄が第1期ウルトラシリーズ至上主義で染まるなか、第2期ウルトラシリーズの再評価の論法があまたの論客たちにより着々と進歩を遂げつつあった1980年代後半~90年代の特撮評論同人界(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20031217/p1)では、この結果的な姉妹編がそのように論じられてもきたものだ――
ウルトラマンダイナが出現する前に、残念ながらタイガの両親は怪獣災害により命を失っていた。
――これについても『タロウ』第38話のように、『ダイナ』のいずれかの回、たとえば第13話『怪獣工場』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971202/p1)と第30話『侵略の脚本(シナリオ)』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971207/p1)などの姉妹編とか第28話『猿人の森』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971208/p1)など、コミカルだったり怪獣を退治しない一見「美談」の回において発生した出来事だったとして設定されていたならば、ひとみ並みの多面的なテーマを背負ったキャラクターが造形されたこととは思うけど、現在では権利関係の諸事情から過去作品の場面を流用するのにも手間や金銭がかかるようなので、やむを得ないところではあるのだろう。なお、『ダイナ』第7話『箱の中のともだち』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971203/p1)では「怪獣災害孤児施設」が登場しており、まだ初期編である第7話の時点で彼が入所していた可能性は低いにしても、タイガはそこの出身であるという後付け設定があってもよかったようには思える――
子供時代のタイガが廃墟の中を泣きじゃくり叫びながら両親を探すシーンは、子役の迫真の演技力もあって、観ているこちらもつい涙ぐんできてしまう。
ダイナのことは決して恨んではいないと云うタイガもまた、個人的には「私はガメラを許さない」と長年遺恨を抱き続けるような逆恨み少女の描写よりも道理がわかっているナチュラルな人間描写ではありリアルにも思えるけど、以来ずっとひとりで生きてきたために今さらウルトラマンの力を借りる気にはなれないと、タイガは中盤で真相をゼロに気張らず静かに告白する。
『ウルトラマン80』最終回(第50話)『あっ! キリンも象も氷になった!!』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210315/p1)で、防衛組織・UGMは冷凍怪獣マーゴドンを自分たちの力だけで倒して、遂にウルトラマンに対する依存心を断ち切って自立したのだと描かれた。
昭和ウルトラの最終作である『80』の25年後の世界を舞台とする『ウルトラマンメビウス』では、防衛組織・GUYS(ガイズ)はウルトラマンであるメビウスを「仲間」として扱い、怪獣との戦いではメビウスを実に的確にアシストし、倒すキッカケをおおいに与えていた。ここにおいて人類はウルトラマンと対等に渡り合える存在として昇華を遂げたのだ――もちろん作劇や設定のマジックというものもあって、ここでのウルトラマンは「ウルトラ一族の未熟な青年ウルトラマン」と設定されたからこそ、人類とウルトラマンとの共闘テーマを描くことができたのでもあるけれど――
これらを踏まえて考えれば、ウルトラマンに依存したくない主人公が設定されても決しておかしくはないのだ。むしろ自然な流れでもある。ゼロへの変身を拒否するくらいだから、ウルトラ兄弟の力なんぞをなおさら借りるはずもないのである。尺の都合や製作ウラ事情のことは置いておいて、歴代ウルトラシリーズの変遷も考慮すれば、こうした『サーガ』の主人公・タイガの人物設定ゆえに、ウルトラ兄弟のラストバトルへの参戦は見送られた、とテーマ面では一応好意的に解釈することも可能ではあるのだろう。
チームUが実は素人の女性たちの寄せ集めの集団であり、戦闘のプロフェッショナルではなかったにもかかわらず、子供たちを守るために必死で戦ってきた事実を知り、タイガは戦う決意を固めていく。DAIGOやAKBの意外な好演もあり、後半の展開はたしかに感動的ではある。
ただ、ヤフーの映画レビューを見ると、そうした部分ばかりを賛辞する声が圧倒的に多く、映像面の魅力についてはほとんど言及されていないことが多少気がかりではある。「ウルトラマン」を語ることとはそうしたテーマ・ドラマを語ることなのだ、などという認識が観客の方にまで浸透してしまっているのであろう。
肝心の興行成績については観客動員数で公開第1週は第4位、第2週は第7位であった。『サーガ』以外は順位にほとんど変動がなく、逆に『サーガ』の第1週の時点で第7位だった『長靴をはいた猫』が、第2週で『サーガ』と入れ替わる形で第4位に踊り出るという、極めて妙な現象が起きてしまっている。
『めざましテレビ』『笑っていいとも!』『めちゃ×2イケてるッ!』などの高視聴率番組――ナゼか妙にフジテレビが多い――において、DAIGOやAKB、つるのに杉浦が出演、派手に宣伝してくれてもやっとこれだけの成績である。逆に云うなら、それがなければもっと下位に甘んじていたということになるのである。
ただし、もはや『ドラえもん』も『プリキュア』も観ないような、小学校高学年の女子、それも全身ファッショナブルにキメた、結構美形の2人組が『サーガ』を観に来ていたのを見掛けた。これまでの「ウルトラ」の劇場版ではまったく見かけなかった客層である。そんな女の子たちが公開記念特典でもらえた『ウルトラコミックブック』を興味深げにパラパラめくっていた。彼女たちにとっては完全に初めて目にする世界であったことだろう。
やはりDAIGO・AKB・つるの・杉浦の効果は大きかったのだ。キッカケは何であれ、意外に面白かったと思ってもらえれば、親戚や隣近所の小さな子供がいる家庭や、同級生の男子に勧めてもらうことも可能であり、そのすべてではなくともたとえ一部でも動員することができればもうけもんなのである。
そして、彼女らが結婚して家庭を築いたときに――そのころも「ウルトラ」の劇場版が製作されていればの話だが・笑――、『サーガ』のことを思い出してもらい、家族で劇場に足を運んでもらえたならば…… そうした将来的な展望をも見据えた、戦略としては立派に機能した選択であったと、人気タレント総出演は評価されてしかるべきである。
だが、こういう手段はそうそう毎回通用するものではないだろう。エースだった前田敦子(まえだ・あつこ)の卒業もあり、AKB48の人気さえもまた、いつまで持続するかはわからないのである(笑)――どうやらAKBファン的には完全にそっちに話題を持っていかれたようで、なんとも間が悪かった。12年度のAKB総選挙はどうなることやら!? などと語る場ではないので遠慮しておく――。
まぁ、その時点での話題性の強いアイドルを毎回出演させるというのは戦略としては有効ではあろうが、それこそ『フォーゼ&オーズ』に出演した、ハロー・プロジェクト所属の真野恵里菜(まの・えりな)が変身した「仮面ライダーなでしこ」(笑)みたく、今度は彼女らをウルトラマンに変身でもさせないことには、本作を超えるインパクトを世間に与えることは極めて困難であるように思えるのである。
もっとも、本来ならばそういうことをしなくても、客を呼びこめるようになることがたしかに理想なのである。実際に先述した新旧ヒーロー大集合の東映ヒーロー作品の劇場版には、マニアには印象深い、過去作品のヒーロー&ヒロインを演じた俳優がサプライズ出演しているものの、世間一般でメジャーな大物の俳優・タレントはさほど出演してはいない――夏休み興行などの劇場版には、渡辺裕之、GACKT(ガクト)、吉川晃司(きっかわ・こうじ)、それこそおもいっきりメジャーでおもいっきり大物の時代劇俳優である松平健(まつだいら・けん)まで出たことは置いといて(笑)――。
そんな新旧ヒーロー大集合だけの映画が、初登場第1位! などという興行成績を上げていることから考えれば、そろそろ円谷もどうすればよいか、答えはもう見えていると思えるのであるが。
『ウルトラマンサーガ』は良作である。おかひでき監督は彼が手掛けた『ウルトラマンゼロVSダークロプスゼロ』と同様に、本作でも「照れることなく、気取ってオシャレにしてみせるのでもない、ブレずに真正面から堂々と暑苦しい演出(笑)」をしてみせていた。しかし、あまりに高いその演出力が、新旧ヒーロー共演よりも人間ドラマ優先寄りになった場合の、長所と短所を実にハッキリと露呈させる結果になったといったところか。
だが、ある点では前回の映画『ウルトラマンゼロ THE MOVIE』(脚本&監督 アベユーイチ)以上にファンの評価を集めたかもしれない、映画連動企画『ゼロ THE MOVIE』前日譚のビデオ作品の大傑作、あの『ウルトラマンゼロVSダークロプスゼロ』をつくったおか監督である。今回ははじめての映画だということで、多少気合いの入れ方の比重を誤っただけなのかもしれないと考えたい(笑)。おか監督ならば、戦闘的でアグレッシブな「もっとカッコいいウルトラマン」がつくれるハズだ!
(※)
本作でのバット星人の声を演じた東国原氏は、実は以前、怪獣のスーツアクターを務めたこともある。
往年の大橋巨泉・関口宏・石坂浩二・ビートたけしの4巨頭が司会を務めた週1の2時間枠バラエティ番組『ギミア・ぶれいく』(89〜92年・TBS)の企画で行われた「動物さんチームVS怪獣さんチーム対抗ラグビー戦!」において、「そのまんま東」名義の氏はかつて東宝映画のスター的存在だった、水爆大怪獣ゴジラの着ぐるみ姿で試合に出場していたのだ!(笑)
これはプロのラグビー選手が動物の、たけし軍団が怪獣の着ぐるみを着用してラグビーの試合をするという、まさに殺人的な無謀な企画であり、たけし軍団はともかくラグビー選手の方もかなり参っていたように記憶している。ちなみに、怪獣さんチームのメンバーとしては、これまたかつては大映(現・角川大映)のスターだった大怪獣ガメラ・異次元宇宙人イカルス星人・地底怪獣グドン・L85星人ザッカルなどがいたように記憶している。
また、日曜昼に放送されていた、東国原氏の師匠であるタレントのビートたけしが司会を務めていた『スーパーJOCKEY(ジョッキー)』(83〜99年・日本テレビ)において、たけし軍団が体をはってさまざまなものに挑戦する『THE(ザ)ガンバルマン』なる名物コーナーがあった。
この中で、放送開始当初の1983年ごろ、たけし軍団を半分にわけてそれぞれウルトラマンと怪獣のコスチュームを着せてふつうに格闘をさせたほか、着ぐるみ姿でメロドラマや学園ドラマを演じさせたりしたのだが(笑)、この際に東国原氏がどちらを演じていたのかは、残念ながら記憶していない。
――怪獣は当時地方の「ウルトラマンショー」によく出てきたようなアトラク専用のオリジナル怪獣だった。ちなみに、94年春に東京・日本橋の百貨店・高島屋の屋上で行われた初代ウルトラマンのショーでさえ、まだそんなアトラク専用の着ぐるみが使用されていたものだ(笑)。しかも、怪獣たちを率いていたのは『仮面ライダーBLACK(ブラック)』(87年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20001015/p2)に登場した大ワシ怪人であり(羽根がなかった・笑)、初代マンがピンチになる場面では『仮面ライダーV3(ブイ・スリー)』(73年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20140901/p1)の劇中音楽が使われていた(爆)――
なお、この番組で90年ごろ、たけしの相方・ビートきよしが、懐かしのヒーローをお笑いネタとして紹介するコーナーがあった。その中で、『電人ザボーガー』(74年・ピープロ フジテレビ)は二度もネタにされていたものだった。主人公・大門豊(だいもん・ゆたか)のあまりにオーバーな演技とか、ザボーガーが人型ロボットからバイクに変形する場面が、スタジオを爆笑の渦に巻きこんだからである。
思えば当時は、80年代末期に起きた連続幼女誘拐殺人事件の容疑者で、アニメ・特撮マニアだった故・宮崎勤(みやざき・つとむ)が逮捕された直後であり、オタクに対して史上最も逆風が吹いていたころであった。そうしたジャンル作品は、世間ではそのように受容されるしかなかったのだが、現在と比べるとまさに隔世の感がある。ちなみに当時、この番組のアシスタントを務めていたのは、2012年現在では民主党の国会議員となっている蓮舫(れんほう)であった。若い人々はそんな過去を知る由(よし)もなかろうが、実際に彼女は当時のことをすべて封印してしまっている(笑)。
『假面特攻隊2013年号』「ウルトラマンサーガ」関係記事の縮小コピー収録一覧
スポーツ報知 2012年3月24日(土) レッツゴー!!特撮HOCHI なんでAKB!? ウルトラファンの考え方覆したい 女性防衛隊「チームU」リーダー秋元才加 ウルトラマンサーガきょうから劇場公開
スポーツ報知 2011年11月11日(金) DAIGO変身!! ウルトラマン新作映画初主演 来年3月公開「―サーガ」
スポーツ報知 2012年1月20日(金) DiVAが主題歌 ウルトラマンサーガ 共に戦う「チームU」役で出演
東京新聞 2012年1月10日(火) 放送&芸能 ウルトラマン45年3ヒーロー集結 3月、劇場版公開
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