假面特攻隊の一寸先は闇!読みにくいブログ(笑)

★★★特撮・アニメ・時代劇・サブカル思想をフォロー!(予定・汗)★★★ ~身辺雑記・小ネタ・ニュース速報の類いはありません

ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟 〜大傑作映画!

『ウルトラマンメビウス』#24「復活のヤプール」 〜第2期の映像派鬼才・真船禎演出リスペクトが満載!
『ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟2』 〜東光太郎! 幻の流産企画!
拙ブログ・トップページ(最新10記事)
拙ブログ・全記事見出し一覧


『ウルトラマンメビウス』評 〜全記事見出し一覧
[ウルトラ] 〜全記事見出し一覧
[ウルトラ映画] ~全記事見出し一覧


ウルトラマンメビウスウルトラ兄弟

(2006年9月16日封切)
(脚本・長谷川圭一 監督&特技監督小中和哉
(2007年1月8日までの興行収入・6億8104万5800円)
(2007年1月26日・DVD発売記念UP!)

ウルトラマンシリーズ誕生40周年記念作品〜 ウルトラマンメビウスウルトラ兄弟

(文・久保達也)
(2006年9月27日脱稿)


 今から20年前の1986年。月世界で、初代ウルトラマンウルトラセブン帰ってきたウルトラマン、そしてウルトラマンエースが、超巨大な体躯(たいく)や複数の手足を持った究極超獣U(ユー)キラーザウルスと大激闘を繰り広げる場面から本作は幕を開ける!


 月面クレーターの淵の上から初代マンと新マンが両腕を十字型を組んで放つスペシウム光線


 セブンが両腕をL字型に組んで放つ光線技・ワイドショット!


 エースが両腕をL字型に組んで放つメタリウム光線!


 そして、それらが宙で融合してパワーアップした合体光線!(嬉しい!・笑)


 その合体光線を避けて、上空にジャンプする巨体に似合わず身軽なUキラーザウルスも! 敵の強さも同時に描写してみせるているのだ!


 映画『ウルトラマン物語(ストーリー)』(84年・松竹・asin:B000H4W1CE)において、5万年前に宇宙の帝王・ジュダに滅ぼされて死の星となった惑星フェラントで展開された超合体怪獣グランドキング対ウルトラ6兄弟を彷彿とさせる、本来ならばクライマックス的な一大バトルをいきなり冒頭に配置するとは! ツカミは完全にオッケーだ!


 余談だが、グランドキングもかつてウルトラ兄弟を苦しめた怪獣たちの魂が集まって誕生した設定だった。しかし、頭部が古代怪獣ゴモラ、尾が古代怪獣ツインテールである以外は特に出典は明らかにされていなかった。ちなみに、その誕生シーンでは『ウルトラマンレオ』で多用された怪獣出現曲が流用されて、敵キャラながらもそのカッコよさを増強していた!


――劇中では『帰ってきたウルトラマン』(71年)という名称は呼称されず、映画のパンフレットでは1984年の映画『ウルトラマンZOFFY(ゾフィー) ウルトラの戦士VS大怪獣軍団』以降、定着している「ウルトラマンジャック」と紹介されていた(当然、こちらの名前で認識している現役の子供たちを意識してのことだろう)。しかし、劇中では「ウルトラマンジャック」の名称は使用されず、エンディング・ロールでは「帰ってきたウルトラマン」とクレジットされていた。
 かつて(今でも?・笑)、「帰ってきたウルトラマン」が「ウルトラマンジャック」の名称に改名された際、マニアたちは反発を覚えたものだ(筆者もそのひとりだ)。マニアではないお父さん世代でも「ジャック」の呼称を聞いたら違和感を抱くだろうことを思えば、このエンディング・ロールでの処置も妥当だろう。
 けれど、「ジャック」の呼称の方に愛着がある世代も今となっては20年以上の長きにもわたるので、これを弾圧する気は毛頭ない。それでは第1期ウルトラシリーズ至上主義者たちが行ってきた第2期・3期ウルトラシリーズ弾圧の歴史と同じことになってしまうからだ! とはいえ、ウルトラ兄弟の長男・ゾフィー兄さんも「ウルトラマン」ヌキでの「ゾフィー」が元々の名前であるハズなのに、本作のエンディング・ロールでは逆に、『ウルトラマンZOFFY』の方に準じて、「ウルトラマンゾフィー」名義になっていて不整合となっている。なぜ?(笑)
 『帰ってきた~』(71年)放映2年後の『ウルトラマンタロウ』(73年)の時期から、「帰ってきたウルトラマン」は「新ウルトラマン」、略して「新マン」とも呼称されるようになった。80年代中盤からはマニア間で、キャラ名と作品名を区別するためにか「帰りマン」や「帰マン」といった略称も登場するようになる。本稿では執筆しやすさの便宜(笑)で「新マン」と記述させていただく――



 Uキラーザウルスの瞳の奥で、『ウルトラマンA(エース)』(72年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070429/p1)のレギュラー敵であった異次元人ヤプール全員が合体して誕生した異次元超人・巨大ヤプールの絶叫がこだました! 地球征服とウルトラ兄弟打倒の執念は30数年経ってもまだ脈々と生き続けていたのだ!


 かつて、異次元人ヤプールウルトラマンエース抹殺のために生み出した異次元超人エースキラーの名をもじったのだろう、Uキラーザウルスと名付けられた究極超獣(!)は、まさにウルトラ兄弟を全滅させるためにヤプールの怨念によって生み出された、今度こそ必ずやウルトラ兄弟を始末せんとする史上最強の生物兵器なのだ!


――エースキラーもまた、『ウルトラマンA』第14話『銀河に散った5つの星』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060805/p1)に登場した、エース抹殺のためにヤプールに作られたウルトラ4兄弟のエネルギーや光線字・武器などを貸与されたダークヒーロー型の最強兵器であった。黄金の鎧に包まれたボディ、緑色に光る冷酷な目がカッコよさを醸し出す! 同話では十字架に磔になるウルトラ4兄弟(ゾフィー・初代マン・セブン・新マン)もさることながら、彼らのエネルギーを与えられたエースが超必殺技・スペースQでエースキラーを葬り去るなど、細部に少々の欠点はあるかもしれないが、本映画の元ネタのひとつとなっているほどの難敵攻略のイベント活劇編であった!――


 戦いの最中、そんなヤプールの執念深さについて会話する兄弟の中で、


「それが、ヤプールです!」


ヤプールに散々苦しめられたエースが叫ぶのが、ウルトラシリーズの設定を実に的確に活かしていて、いかにもエースが発しそうな実感の込もったセリフであるのがまた良い!


 エースキラーの顔面にも似ている金色に輝く冠状の小さな頭部を有したUキラーザウルスには、ウルトラ4兄弟が束になってかかっても歯が立たない!


 両腕の鋭い爪や自在に延びて動き回る無数の触手に苦しめられるウルトラ4兄弟たちだが、光線攻撃をかわす際の連続バック転!


 さらに、ウルトラ4兄弟たちをからめ取ろうと素早く動き回る触手をかわして、宇宙空間を超高速で華麗に逃げ回るウルトラ4兄弟!


 スーツアクターの生身のアクションも、飛行シーンにおけるCGアクションも冴えに冴え渡っている!


 地球上空の宇宙空間でUキラーザウルスを中心に、画面が四分割されてウルトラ4兄弟の姿がアップとなる。


 そこで、ウルトラ4兄弟が敵を叩き込むように合体光線を発射!


 光線の圧力を浴びて地球の重力圏に叩き落とされて大気摩擦で燃えながら高速落下していくUキラーザウルス!


 それを素早く追いかけた4兄弟は日本の神戸沖で、大技・ファイナル・クロスシールドの金色の光エネルギーでUキラーザウルスを海中に封じ込めようとする……


 しかし、Uキラーザウルスを沈めた海の底から巨大ヤプールの幻影が浮かび上がってきた! 実体のない怨念の固まりであることを象徴するかのような、歪んだネガ像による映像表現が原典を踏襲していて心憎い! しかし、ついにヤプールも姿を消して、海の底へと封印されていく……


 だが、エネルギーを莫大に消費したその代償として4兄弟たちはウルトラマンへの変身能力を失ってしまい、人間の姿になって神戸で暮らしながらUキラーザウルスの封印が邪悪な侵略者によって解かれることのないように監視することとなったことが語られるのが、本映画の導入部なのである。


 以上がウルトラ戦士のルーキー(新人)であるウルトラマンメビウスが、M78星雲のウルトラの星で聞かされていた伝説の「ウルトラ兄弟・最後の戦い!」の一部始終なのであった!


 いきなり冒頭から親子で釘付けとされるような、テンポもよい見事な導入部だ。しかし、ウルトラ兄弟たちをよく知っているパパたちはともかくとして、映像でウルトラ兄弟をはじめて目にする子供たちも大勢いるかもしれない。だから、『ウルトラマンタロウ』(73年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071202/p1)第40話『ウルトラ兄弟を超えてゆけ!』のように、Uキラーザウルスとの戦いの合間なり、本編のどこかでほんの少しでもウルトラ兄弟の紹介を入れてもよかったかもしれない。


――ちなみに、『ウルトラ兄弟を超えてゆけ!』は、海王星ゾフィー天王星で初代マン、土星でセブン、木星で新マン、火星でエースに打ち勝った暴君怪獣タイラントが、地球に襲来してタロウと激突するというイベント編であった。各惑星でウルトラ5兄弟が負けてしまうこと。ラストで、ウルトラマンタロウのピンチにウルトラ5兄弟が駆けつけての大バトルにはならなかったことなどの、子供たちの期待を裏切るような問題点もあったのだが(笑)。余談だが、この2006年に世界の科学者連中が「質量が小さすぎる!」として「惑星」から「準惑星」に格下げにされてしまった「冥王星」ではなく、タイラントの出身地を「海王星」と設定したあたり、『タロウ』スタッフの先見の明が光っていたかもしれない!(笑)――


 本作の初代ウルトラマンのマスクの造形が、原典である初代『ウルトラマン』(66年)の第1話~第13話で使用されたシワシワの通称「Aタイプ」の再現であることは当初は心配していたが、事前に告知されていて心の準備ができていたせいか、個人的にはあまり違和感はなかった。初代マンとまったく同じ顔をしたゾフィーや新マンとの差別化という意味もあったのだろう。もちろん、事前情報ヌキでこの映画を観た一般層にとっては違和感を抱いていた可能性は大きいだろうけど(笑)。
 もっとも、筆者は小学5年生で幼少時から何度も見てきた初代『ウルトラマン』の再放送を改めて観た際に、初めてAタイプのマスクの存在に気づいたくらいだから(汗)、案外と気づかない子供も多いのではないのかとも思う。……と思ったが、某巨大掲示板2ちゃんねるでは「なぜシワシワなの?」と母親に聞いている子供がいて、母親が「〇〇クンと同じだよ」――その子はアトピー性皮膚炎であったから!――と心温まる機転を効かせた回答を述べていた母君についての美談・書き込みもあったけど!



 かつての人間としての姿で暮らすウルトラ4兄弟たちの職業が皆それぞれ、旧作での設定を踏まえていることも嬉しいばかりだ。


・初代『ウルトラマン』の怪獣と戦う防衛組織である科学特捜隊の戦闘機・ジェットビートルの名パイロットだったハヤタ(初代ウルトラマン)は、神戸空港の空港長
・『ウルトラセブン』(67年)の防衛組織であるウルトラ警備隊の面々に、初登場時は「風来坊」と名付けられていたモロボシ・ダンウルトラセブン)は、風来坊風な羊飼いの牧場主
・坂田自動車整備工場を手伝いながらオートレーサーを夢見ていた郷秀樹(新ウルトラマン)は、未来のグランプリレーサーを育てているコーチ
・パン屋の運転手だった北斗星児(ウルトラマンエース)は、なんとホテルのシェフ!


 なんといってもホテルのレストランで少女が誤ってすべり落としたグラスを、「A」のアルファベットのシンボルの意匠が入った変身アイテム・ウルトラリング(!)がアップになり、それを中指にはめていた北斗がサッと拾い上げて、


「危なかったねえ」


と優しく微笑みかける初登場シーンもカッコいい!(北斗を演じる高峰圭二自身のアイデアだったそうだが、これだけのカットを撮るために2時間を要したそうだ)



 続けて郷、ダン、ハヤタと紹介されていく。それぞれのウルトラヒーローのテーマをアレンジした曲がメドレーで流れて、締めとして上空に謎の文字が浮かび上がった。


北斗「あれは……、ウルトラサイン!」
郷「ゾフィー兄さんからのメッセージだ!」


 ウルトラサイン! それは、ウルトラマンの一族が空間を超えて通信する際に、超能力で大空や宇宙空間に表示させるウルトラ文字のことである!


 『ウルトラマンA』第5話『大蟻超獣対ウルトラ兄弟』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060604/p1)で、大ピンチに陥(おちい)ったウルトラマンエースが「SOS」の意味の救援要請信号を故郷・ウルトラの星へと発したのが初出で、それから同作や次作『ウルトラマンタロウ』や次々作『ウルトラマンレオ』などでも幾度も使用されてきた、当時の子供たちや後年の再放送世代の子供たちを神秘的な想いでワクワクとさせてきた、とても印象深い趣向でもあったのだ! 第2期ウルトラシリーズも愛する世代人たちにとっては、懐かしさとともに昭和ウルトラシリーズの基本設定を的確・適所で活かしていて、まさに嬉しくなったことだろう!


 そして、このウルトラサインは、Uキラーザウルスの封印を解こうとしている宇宙からの侵略者の一団が地球に迫りつつあることを、ウルトラ兄弟の長男・ゾフィーが察知して、地球の4兄弟たちに知らせてきたのだった!


 Uキラーザウルスの封印を解こうとしていたのは、極悪宇宙人テンペラー星人・凶悪宇宙人ザラブ星人・分身宇宙人ガッツ星人・暗殺宇宙人ナックル星人で結成された「侵略宇宙人連合軍」であった! かつてウルトラ兄弟たちを絶体絶命の窮地に追いやった、ザラブ星人を除けば前後編で登場した強豪宇宙人たちが、地球侵略とその邪魔になるウルトラマンメビウス抹殺をはかろうとしていたのだ!



 小学館『小学四年生』73年12月号に掲載された『失敗! タロウ必殺作戦』なる記事には「恐怖の怪獣軍団ひみつ会議」の模様とともに「怪獣軍団組織図」が描かれていた。


・最高本部には、巨大ヤプール・地獄宇宙人ヒッポリト星人・悪質宇宙人メフィラス星人
・作戦本部には、頭脳宇宙人チブル星人
・スパイ部隊には、宇宙忍者バルタン星人・幻覚宇宙人メトロン星人
・特別幹部に、火山怪鳥バードン
特別攻撃隊として宇宙怪獣エレキング


 さらにその下には、


・ミサイル軍団(ミサイル超獣ベロクロンほか)
・空軍団(宇宙大怪獣ベムスターほか)
・海底軍団(竜巻怪獣シーゴラスほか)
・地底軍団(凶暴怪獣アーストロンほか)
・植物軍団(蔦(つた)怪獣バサラほか)
・ロボット軍団(ロボット怪獣ビルガモほか)
・冷凍軍団(雪男星人バルダック星人ほか)


などがズラッと勢揃いしていたのだっ! ちなみに会計本部はコイン怪獣カネゴンであった(爆)。


 (あまりにも素晴らしいので、全部採録させてもらおう!


ヤプール「我々怪獣軍団は、全宇宙征服の夢を、何回もウルトラマンタロウのために邪魔されてきた!」
バードン「今こそ、力の強い怪獣たちが力を合わせて、タロウをたたきつぶすときなのだ!」
チブル星人「連続して攻撃しよう。タロウの力を弱めておいて、最後のものがとどめを刺すのだ!」
ヒッポリト星人「さすが作戦本部長らしい意見だ。その作戦を早速開始しよう!」
メフィラス星人「初めはオレが行く。初代マンとはひきわけてしまったが、タロウ相手に今度こそ勝負をつけてやる!」
ヤプール「よし、頼むぞ!」
メフィラス星人「まかせろ。とっておきの秘密作戦があるのさ。タロウめ、見ておれ。フフフ……」
エレキング「次はオレだ。特別攻撃隊長としてやらねばならぬ!」
ヒッポリト星人「セブンにやられた角はもう治ったのか?」
エレキング「平気だ。強力火炎放射の武器も新しく身につけた!」
ヤプール「セブンを苦しめたエレキングの力に期待しよう! それでは最後はオレが行く!」
ベムスター「オレも行かせろ!」
ヤプール「おお、ベムスター。よし、おまえの力を借りて二人で攻撃だ!」
メフィラス星人「決まった。みんな、今までの恨みを晴らすんだ!」


 要するに、『タロウ』第27話『出た! メフィラス星人だ!』~第30話『逆襲! 怪獣軍団』に至るまでの「再生怪獣・宇宙人登場編」のウラ設定となっている、絶好の作品ガイドとなっているのだ! 現在の各幼児誌に欠けているのがまさにこのような要素である。各編集部にはこういう大胆な独断企画(笑)を望みたいものである!


 かつて小学館学年誌に掲載されていた漫画家・内山まもるらによって描かれたコミカライズ作品――近年コンビニ漫画で再刊。『帰ってきたウルトラマン 完全復刻版』(04年・ISBN:4091081959)・『ウルトラマンA 完全復刻版』(04年)・『ウルトラマンタロウ 完全復刻版』(05年・ISBN:4091083757)・『ウルトラマンレオ 完全復刻版』(06年・asin:409108575X)――では、当初はテレビシリーズの内容に準じていたものであった。
 しかし、当時の子供たちの要望に応じてか、次第にオリジナル要素や複数怪獣登場編、先輩ウルトラ兄弟客演編を増やしていき、こうしたウラ設定的な要素も導入して、ウルトラ兄弟VS怪獣軍団や、ウルトラマンの同族たちが所属する宇宙警備隊の隊員たちが数十名も登場して超巨大怪獣と対決するというオリジナルストーリーまで登場するようになっていく!


 その集大成が第2期ウルトラシリーズが終了した翌年度である1975年度に『小学三年生』に連載された『さよならウルトラ兄弟』こと、78年に解題されて『コロコロコミック』に再連載されたことで大ヒットした『ザ・ウルトラマン 死闘!ジャッカル対ウルトラマン』(07年・ISBN:4091087183http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160914/p1))なのである。


 それらを楽しみながらも当時の子供たちは「これをテレビでやってくれたら……」というはかない想いに胸が張り裂けんばかりであった。そして、それがついに映像で実現してしまったのだ! これが感涙にむせばずにはいられるか!?



 侵略宇宙人たちはデザインこそ現代風に洗練したアレンジが施されながらも、それぞれのキャラ・立ち位置などは過去のイメージに忠実であるのがまた嬉しい!


「オレがメビウスを倒して宇宙人連合のリーダーになる!」


 と豪語し、『ウルトラマンタロウ』第33話『ウルトラの国大爆発5秒前!』で


「出てこい! ウルトラ兄弟!!」


などとワメき散らしながら東京を火の海に包んだように、今回は


メビウス、出てこい! 貴様がこの近くにいることはわかっているぞ!!」


とワメいて神戸の工業地帯を両手のハサミからの光線で焼き尽くし、そのチンピラぶりを再現しているのだ! 


 こういったヤクザの三下(さんした=下っ端)的なチンビラぶりは、70年代後半に青少年向けマニア向けムックが登場してから、宇宙人のSF的な神秘性を棄損するものだとして批判されるようになってしまった。もちろん、そういった意見も半分は正しいのだが、勧善懲悪の娯楽活劇としては倒してもよい悪党キャラとして実に正しい造形だったのだ(笑)。そう、それでこそ第2期ウルトラの「星人」なのだ!(爆)


 そればかりではない。本映画では背中のハネを華麗に広げて、神戸上空を猛スピードで自在に飛行する新しい姿も見せている! 体型はじゃっかんスマートになっており、目が6個(!)になった外見上の変化とも併せて、『タロウ』登場時と比べて一段とカッコよさが増しているのである!


 しかし、ここまでカッコよすぎると「少しはボケろや!」とか「シンバルを叩く猿のオモチャはどうしたんや!」などと贅沢なツッコミも入れたくなったりして(笑)。筆者としてはテンペラー星人には、前作『仮面ライダー』(71年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20140407/p1)に登場した悪の組織・ショッカーの歴代幹部たちが復活した『仮面ライダーV3(ブイスリー)』(73年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20140901/p1)第28話『五大幹部の総攻撃!』における、うっかり牢を開けてしまったためにV3を脱出させてしまうことになってしまった大幹部・地獄大使みたいなボケを演じてほしかったので(笑)。



 「ウルトラ兄弟!! ……ドコだよおぅ〜〜!」、「見つけた!! 見つけたぞ〜。見つけた、見つけた(喜)」などの初代テンペラー星人の名セリフの再現も、さすがになかったけど(笑)。


 とはいえ、観客の子供たちの間ではこのテンペラー星人が一番人気だとも聞くのだ。長年にわたるマニア評論や怪獣デザイン論に目を曇らされていない子供たちの反応は興味深い! 他の宇宙人に比べてデザインがゴテゴテしていて威圧的で戦闘的で強そうだからだろうか!?(後日付記:やはりソフビ人形も4大宇宙人([asin:B000FTBLIQ][asin:B000FTBL90][asin:B000FTBL8G])中でテンペラー星人asin:B000FTBL8Q)が一番売れているらしい)


(関連記事:特撮意見2 怪獣デザイン〜今こそ成田3原則の絶対化を止め相対視を!・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060409/p1



 メビウスは両腕を十字型に組んだ必殺光線・メビュームシュートでテンペラー星人に勝利する!



 本作における防衛組織・GUYS(ガイズ)のミライ隊員の姿に戻ったメビウスは、


「君の活躍はずっと見ていた」


と初老の紳士に声をかけられる。


「もしかしてあなたは!?」
ウルトラマン。地球での名は、ハヤタだ!」


 テレビでの予告スポットで何回も見た場面ではあるが、最古のヒーローと最新のヒーローとの出会いであるこの場面にはやはり胸が熱くなる!


 ハヤタに案内されて、ミライはダン・郷・北斗とも対面を果たした! そして、ミライは神戸沖の客船上でルーキーであるがゆえの悩みを打ち明けたりもする……


ハヤタ「人間の心は複雑だ。宇宙警備隊で学ばなかったかね?」
ハヤタ「我々ウルトラマンは決して神ではない。どんなに頑張ろうと救えない命もあれば、届かない思いもある」


ハヤタ「だが、我々は(ウルトラマンに変身できず地球人として生活していることを)後悔などしていない」
ダン「愛する人間たちと穏やかに過ごす日々。我々が望んでいたことかもしれない」
郷「そして、我々は今も学んでいる」
北斗「人間として、人間について


 テレビシリーズ『ウルトラマンメビウス』第1話冒頭(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060625/p1)における、宇宙警備隊のルーキー・メビウスに宇宙警備隊の大隊長こと「ウルトラの父」が放った「人間について学べ」というセリフにも直結している、滋味あふれる名セリフの数々!


 各テレビシリーズの最終回で、地球人=人間としての生を捨て去ったかに見えた彼らが、奇しくもまた地球に滞在することになり、20年間も暮らしていたというのである。10年前の神戸大震災でも彼らはきっと復興に尽力したに違いないのだろう!(感涙にむせぶ……)


 みんな齢相応に丸くなってしまって優しいのだが、それがまた初老の域に達した各人には実にハマっている。しかし、郷は元から優しいキャラだったけど、北斗などはミライ隊員に対して少々乱暴に対処しても良かったのでは?(笑)
 ダンなども牧場主の設定なのだから、『ウルトラマンレオ』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090405/p1)で、おおとりゲンに課した特訓のようにミライ隊員が荒馬を乗りこなせるようになるまでシゴいてやるとか。……「おまえの涙で地球が救えるか!?」(笑)


 この場面では『タロウ』の勇ましい名挿入歌『ウルトラ六兄弟』の静かなアレンジ曲(涙……)がゆったりと流れているし、もちろん本作は主人公の成長ドラマよりも先輩たちのドラマの方も語っていく性質上、そういう特訓展開に持っていくワケにもいかない(笑)。



 だが、なごやかな場面は復活を高々と宣言するヤプールの声(テレパシー)によって暗転する! ウルトラ4兄弟がメビウスに警告を与える。次の挑戦者はいったい誰だ!?


 神戸沖でミライと出会った天才海洋学者のジングウジ・アヤ――演じたのは『爆竜戦隊アバレンジャー』(03年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20031111/p1)でアバレイエロー=樹(いつき)らんるを演じた、いとうあいこ!――を研究室の暗闇でザラブ星人が襲う!
 彼女になりすましたザラブ星人は毒入りコーヒーでミライ隊員を罠にかけるが、初代『ウルトラマン』第18話『遊星から来た兄弟』でもザラブ星人科学特捜隊のフジ・アキコ隊員に変身して、アラシ隊員に睡眠薬入りのコーヒーを飲ませていた(笑)。巨大化すると、両耳が変化している点も踏襲!(笑)


 そして、声を演じたのが当時と同じく40年前はザラブ星人の着ぐるみのスーツアクターも兼任していた青野武(あおの・たけし)! もちろん同一種族の別個体ではあるのだが、往時と同様に「ニセウルトラマン」ならぬ「ニセウルトラマンメビウス」となって神戸の街を破壊する!


――1988年4月1日~89年3月31日までテレビ東京系で放送された平日夕方の帯番組(おび・ばんぐみ)枠で放映された5分番組『ウルトラ怪獣大百科』は、昭和ウルトラ作品の怪獣登場場面を再編集して怪獣図鑑風のナレーションを加えた5分枠の帯番組であった。そして、このナレーションを担当していたのも青野武!(SFアニメ『宇宙戦艦ヤマト』シリーズ(74年〜・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101207/p1)の技師長・真田志郎(さなが・しろう)役でも有名。近年では長寿テレビアニメ『ちびまる子ちゃん』(90年~)のおじいちゃん役の2代目声優!)
 しかも、ザラブ星人の回ではいつもの客観的なナレーションとは趣向を変えて、ザラブ星人がまるで自己紹介をするかのように熱演していた! 台本を担当していた80年代中後盤の特撮評論同人界で一世を風靡したサークル「ETC大江戸支部」出身の田島義信(現・田島淑樹)氏のお遊びだったのだろう(笑)――


 実景のモノレールこと神戸ポートライナーのレールにまたがって、仁王立ちになって進行方向の前方奥に立ちふさがっているニセメビウスがまた超怖い!(汗)


――ポートライナーに乗車していた神戸市長を演じている、ご当地出身で震災復興事業にも尽力してきたという、平成ウルトラシリーズ各作での出演でもおなじみの俳優・堀内正美の役名が、『ウルトラマンネクサス』(04年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041108/p1)で演じた防衛組織・TLT(ティルト)管理官・松永と同じで、携帯の着信音も『ネクサス』のBGMであるのがマニア的には笑える(笑)。他には『ウルトラマンダイナ』(97年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971215/p1)の防衛組織・スーパーGUTS(ガッツ)から、山田まりやと布川敏和が市長秘書と助役で同席客演!――


 誰もが本物のメビウスが暴れていると思いこむ中で唯一、GUYSのサコミズ隊長だけが


「よぉく見ろ。目つきが悪い」


とニセものであることに気づく。往年のニセウルトラマンも、ニセメビウス同様に両目が吊り上がっており、つま先もとがっていた(笑)。


 番組を鑑賞している子供たちは誰でも気づくのに、劇中人物たちの誰もが気づないので本物と偽物の区別が付かないことで、劇中人物たちがマヌケに見えてしまって少々イヤな気持ちになってきて冷めてくる、子供だからこそツッコミしたくなる欠点(笑)に対する、自己言及的なエクスキューズではある。これならば子供たちが作品に対して不満を持って「しょせんはフィクションだ!」などと幻滅して卒業を早めてしまうことともないだろう! 実にクレーバーな作劇だ!?(笑)


 ただこの描写は、『仮面ライダー』(71年)第93話『8人の仮面ライダー』もそうだったように、本物の赤いマフラーと違って黄色いマフラーをしていたショッカーライダー1号のことを、「本郷、いつからそのマフラーを?」と偽物であることに気づいたのが仮面ライダー2号=一文字隼人(いちもんじ・はやと)ただひとりだけだったように、やはりサコミズが別格で慧眼(けいがん)を持った存在であることを印象づけるための演出でもあるのだろう。サコミズ隊長、あなたの正体はやっぱりゾフィー兄さんでしょ!?(笑)


 再度、ミライ隊員はウルトラマンメビウスに変身!


 アヤを奪われて、「ヘイ、カモン」(笑)みたいな仕草で徴発してくるニセメビウスと激闘!


 ついに正体をさらしたザラブ星人と足を高々とかかげてキックの交差!


 メビウスは怒りに燃えて力まかせで、必殺光線・メビュームシュートで撃ち倒す!!



 それを危うげに見守るハヤタ・ダン・郷に対し、ただひとり北斗だけがメビウスの勝利に対して、「よしっ!」とばかりにガッツポーズを決めている。この場にいるウルトラ4兄弟の性格の描き分けと、この中では一番の末弟である北斗の未熟さを表現していて実によい! 北斗が実にオイシい役回りでもあるのだ!(笑)


北斗「よしっ、いいぞ!」
ハヤタ・ダン・郷「メビウスは冷静さを失っている」
北斗「!?」(……笑)



 これに続いて、すかさずガッツ星人が出現!


 『ウルトラセブン』(67年)第39話『セブン暗殺計画(前編)』での出演時と同様に、分身術(4体に分離!)と目から発射する波状光線でメビウスを攻撃する!


 すっかりエネルギーを消耗していたメビウスは、『セブン暗殺計画』同様に空に浮かんだガラス状の十字架に磔にされてしまうのだ!


 ガッツ星人とナックル星人の勝利の雄たけびが不気味にこだまする! そして、周辺の空は黒煙で包まれる……


ハヤタ「待て、エース! どこへ行く気だ!!」
北斗「助けに行くんです!」


 先述の『タロウ』第33話においても、テンペラー星人に徹底的に痛めつけられるウルトラマンタロウを見るに見かねて、真っ先に助けに行こうとしたのは、猪突猛進型の北斗であり、それを制止したのはハヤタとダンであったことの踏襲でもある!


 しかも今回は、変身したらエネルギー不足であるウルトラの4兄弟たちは死んでしまうかもしれないのにだ!


北斗「でも……、だまって見ているなんてできない!」


郷「勝てばいいんです! 必ず勝って、メビウスを助け出せばいい!」


 北斗のひとつ上の兄にあたる郷が、北斗に同意する! 合理的な戦略や勝算はないという意味では旧日本軍的な精神主義だとのツッコミの余地はあるけれど、熱いではないか!? 燃えるではないか!? 『タロウ』第33話とは逆のストーリー展開となっていくのだ! 弟たちがついに兄たちを説得し、戦う決意を固めさせたのだ!


ダン「これは、本当の最後の戦いだ!」
ハヤタ「わかった。行こう!」


 再度、流れる『タロウ』の名挿入歌『ウルトラ六兄弟』を今度は短調でアレンジされた新録音の楽曲が荘厳さを演出していく……


「大切なのは、最後まであきらめないことだ!」


 兄弟たちはルーキーであるミライ隊員(メビウス)に語ったメッセージを実践するために、いま再び立ち上がった!


 神戸の湾岸をバックに、往年の名作刑事ドラマ『Gメン’75』(75年)のオープニングばりにウルトラ4兄弟ことハヤタ・ダン・郷・北斗が横並びで行進していく!


 いつの間にか北斗は襟元から原典での防衛組織・TAC(タック)在籍時の隊員時代のように白いマフラーをなびかせていた!(涙)



 ハヤタは変身アイテム・ベータカプセルを宙に掲げる!


 ダンも変身アイテム・はウルトラ・アイを着眼!


 郷は変身アイテムをそもそも持たないが、原典同様に右腕を高く掲げる!


 北斗は左中指にハメたかつての相方・南夕子のリングを一瞬見つめてから(!)、ウルトラリングをハメた両手のこぶしに力をこめた!


 タメのアクションが長い分、ここでもまたまた北斗が目立つ!


 そして、ウルトラの4兄弟はおなじみの変身巨大化バンクフィルムを現在のCG技術で再現した映像で、変身巨大化していく!


 ここでの変身巨大化映像はオリジナルとはやや異なるために少々の違和感がぬぐえないため、オリジナル映像を再使用してほしかったという声が、ネット上ではけっこう目立った。しかし、セブンの変身パターンだけはダンの若かりし当時の顔面が映るしウルトラ警備隊の隊員服を着用していることからどうしても新撮にせざるを得ない(笑)。そうなるとセブンだけ不整合なので4人全員を新撮にしたといったところだろう。しかしそれでも、セブン以外はオリジナル映像の流用でもよかったのでは? といった意見もまぁわかるのだ。個人的にはエースが光の中からグルグルと回転しながら巨大化していくパターンは、CGの本領発揮で良かったとは思ったけど。


 初代『ウルトラマン』の主題歌である『ウルトラマンの歌』のメロディがファンファーレとして高々と鳴り渡り、遂にウルトラ4兄弟が揃いぶみした!


 初代マン&セブン VS ガッツ星人
 新マン&エース VS ナックル星人!


・『ウルトラマンA』第5話『大蟻超獣対ウルトラ兄弟』でのエース&ゾフィー VS 大蟻超獣アリブンタ&地底エージェント・ギロン人 との羽交い絞めやスレ違いざまの頭突き!
・『ウルトラマンレオ』第34話『ウルトラ兄弟永遠(とわ)の誓い』でのレオ&新マン VS 二面凶悪怪獣アシュラン戦 での左右交差ダブルキック攻撃!


 それらへのオマージュとおぼしきアクション演出も見せてくれるのだ!


 そして、新マンのキック名は、書籍によればやはり『帰ってきたウルトラマン』(71年)第3話で放たれた「流星キック」だとのことだ!


 対するガッツ星人とナックル星人も、なぜかウルトラマンレオとその弟・アストラの兄弟合体光線・ウルトラダブルフラッシャーのようなコンビ光線攻撃も披露した!(笑)


 ついにメビウスを助け出すことに成功するウルトラ4兄弟たち。


 だが、そのためにエネルギーを使い果たして、今度は4兄弟たちが空中の十字架にかけられてしまった!


 宇宙人連合の真の狙いは兄弟たちを再び変身させて、彼らの「光エネルギー」を「マイナスエネルギー」に変換利用して、神戸沖に水没しているUキラーザウルスの封印を解くためだったのだ!


 そして、「マイナスエネルギー」なる用語! これは第3期ウルトラシリーズの1本でもある、昭和ウルトラシリーズの世界観ともつながっていた『ウルトラマン80(エイティ)』(80年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971121/p1)における用語ではないか!? さりげに『ウルトラマン80』の存在も肯定してくれているのだ!(涙)


 ナックル星人の卑怯な作戦! それは、ナックル星人の同族別個体が初登場した『帰ってきたウルトラマン』第37話『ウルトラマン夕陽(ゆうひ)に死す』において、郷秀樹を動揺させるためにレギュラー・坂田健(さかた・けん)とヒロイン・坂田アキを虫けらのように殺害(乗用車でひき逃げ!)したやり方に通じるものでもあったのだ!


 十字架にかけられたウルトラ4兄弟は、地球での悲痛だった過去の出来事を走馬灯のように回想する。


・友好珍獣ピグモンの死
・アンヌ隊員との別離
・恩師である坂田健と恋人だった坂田アキの臨終シーン(涙)
・共に戦った南夕子の重症シーン……


 初代『ウルトラマン』第39話(最終回)『さらばウルトラマン』において宇宙恐竜ゼットンに敗れた初代ウルトラマンが、ウラン怪獣ガボラやエリ巻恐竜ジラースの戦いを回想した際に流れた葬送曲を筆頭に、ウルトラ兄弟のテーマ曲がメドレーで流れるこの演出。ライブフィルムの流用法としては最高のセンスだろう!


 しかし、メビウスの奮戦でウルトラ4兄弟は再度、復活することができた!


 けれど、Uキラーザウルスはついに封印を解かれて出現! さらにUキラーザウルス・ネオとして進化! 300メートルもの超巨大な姿へと成長を遂げた!


 Uキラーザウルスの上半身はそのままに、下半身はクワガタのような巨大な上アゴを生やしたもうひとつの頭を持つ、クモのような多足類の化けものとなったのだ!


 と、宇宙人連合で最後まで生き残って、Uキラーザウルスを駆使して地球のみならず「銀河連邦」をも支配せんと勝ち誇るナックル星人!


 しかし、そのナックル星人をUキラーザウルス・ネオが光線で一瞬のうちに粉砕してしまった!


 あまりに情けない結末ゆえに、ナックル星人は逆説的に目立てているオイシイ役回りだったのだ!(笑)


 そして、「銀河連邦」とは、『ウルトラマンA』や『トリプルファイター』(72年・円谷プロ)といった、円谷プロ創立10周年の時期に設定された、『ウルトラマン』シリーズや『ミラーマン』(71年)や『トリプルファイター』などの円谷プロダクション製作作品は、すべてが同一世界での出来事だとしたウラ設定の名称でもあり――後年の作品群には継承されなかったウラ設定だが――、これを「銀河」の複数の宇宙人国家の連合(=連邦)の意味で使用することで、我々特撮マニアに対するマニアくすぐりでもあったのだろう!(笑)


 つまり、侵略宇宙人連合もまた、Uキラーザウルスを復活させるためにヤプールに利用されていたに過ぎなかったとすることで、本作のラスボスであるヤプールの大物感を強調する作劇だったのだ!


ヤプール「仲間? しょせん奴らは捨て駒だ!」
エース「……ヤプール、おまえは本物の悪魔だ!!」


 本作冒頭と係り結びになるかたちで、かつてヤプールと激闘したエースにここでもセリフを与えてみせる脚本で、エースの宿敵の復活を目玉に据えた本作における「さもありなん」なエースのセリフにリアリティーや説得力も与えているのだ!


 余談だが、本作で変身後のウルトラマンエースが会話する際の声は、もちろん北斗こと高峰圭二氏の声であって問題はなかった。しかし、エース自身の掛け声はオリジナルに忠実に『ルパン三世』(71年~)の「銭形のとっつぁん」こと納谷悟朗氏の「テェェーーィ!」「トゥワァァァ!」「アッッ!」「フゥンッッ!」「イヤアァァ!」「フォエェェーーン!!」といったライブラリー音声を使用してほしかった。しかし、権利関係に厳密になった今どきのことだから違法使用を問われてしまうことを恐れての処置なのだろうか?(ちなみに納谷氏の掛け声は、『A』の翌年に東宝で製作されたテレビ特撮の巨大変身ヒーロー『流星人間ゾーン』(73年)の掛け声にも流用されている!)。
 アトラクショーなどでは少なくともマニア上がりのスタッフが台頭してきた90年代から、エースも含めた各ウルトラマンの正しい掛け声がSEに使用されるようになって久しい。『ウルトラマンメビウス』第1話冒頭でもウルトラマンレオの掛け声がおおとりゲンこと真夏竜氏の掛け声のライブラリー音声であったり、ネット配信『ヒカリサーガ1』(ASIN:B000SAXNVU)の予告編でもウルトラマンエイティの掛け声が長谷川初範氏の声のライブラリー音声であったというのに……。
 本作でのエースの声は他のウルトラマンの掛け声を若干低くして使用している。次回作での改善を期待したい!


(後日付記:『ウルトラマンメビウス』第44話『エースの願い』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070408/p1)では、キチンと納谷悟朗氏の事務所と改めて契約したのか(?)、ついにエースの掛け声のライブラリー音声が映像作品でも使用された!・感涙)



 そして、なんとか十字架から脱出したウルトラ4兄弟とメビウスだが、Uキラーザウルス・ネオに大苦戦する!


 そのとき、天空から突き刺してくる二条の光が!


 『タロウ』主題歌のイントロをアレンジしたファンファーレとともに、ウルトラ兄弟の長男ゾフィー、そして「タロウがここにいる!」とばかりにウルトラマンタロウも駆けつけてきたのだ! このシーンも音楽演出とともにホントウにシビれた!


 個人的な欲を云えば、ここだけはオリジナルの主題歌をワンコーラスだけでも流してほしかった(笑)。一般にウルトラシリーズの主題歌の中ではかなりの知名度を誇るこの歌が流れれば、場内の子供たちも合唱しそうだし、それによって観客の一体感は一層増して、もっと盛り上がったとも思うのだ。
 『タロウ』主題歌を歌唱した武村太郎氏も、本映画合わせのイベントで元気な姿を見せてくれているから新録も可能だったろうし、それも無理ならせめてば楽曲イントロ部分の「タロウーー! ウルトラマン・ナンバーシックス!!」の掛け声がかかるフレーズだけは聴きたかったものだ。


 むろん、各地の劇場でタロウ登場シーンが子供たちは一番盛り上がったり歓声が沸き上がっていたとも聞くから、充分成功ではあったのだ!


「兄さんたち、エネルギーを分け与えます!」


 タロウの声は映画『ウルトラマン物語(ストーリー)』とも同じ石丸博也(いしまる・ひろや)であった!


 ちなみに、『ウルトラマン物語(ストーリー)』よりも以前に、『マジンガーZ』(72年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200119/p1)の主役・兜甲児(かぶと・こうじ)役やジャッキー・チェンの吹き替えで有名な石丸博也は、『ウルトラマンレオ』第40話『恐怖の円盤生物シリーズ! MAC(マック)全滅! 円盤は生物だった!』に顔出しでゲスト出演している! ただし、円盤生物シルバーブルーメに溶かされてしまう小学校の先生役である(笑)。


 タロウこと東光太郎(ひがし・こうたろう)役の篠田三郎が出演してくれない以上、タロウを演じられるのは彼だけだ! 相変わらず若々しい声がタロウのイメージにピッタリとマッチしているし、『物語』と含めて東光太郎と分離後の本来のタロウ本人の声は石丸博也の声なのだ! とも解釈ができるではないか!?(笑)


 そして、ミライ隊員ことメビウスの証言では、メビウスゾフィーとタロウの教え子でもあるのだ! タロウも長男のゾフィーとともに、教官として新たなウルトラ戦士に戦闘訓練を施しているらしいのだ! 1970年代の小学館学年誌や『コロコロコミック』や『てれびくん』などでの毎号の特集記事で語られてきたウラ設定のような新設定! 実に嬉しいではないか!?


 むろん、我々のような年長世代はともかく、80年代以降の世代であれば、リアルタイムやレンタルビデオでの鑑賞で『ウルトラマン物語(ストーリー)』に大きな思い入れを持っていると告白する世代も多いのだ! それを考えても本作でのタロウの声は石丸氏がふさわしいのであった!


 そして、ヤプールが物語の核となっているからには、奴とも最も因縁があるエースが必然的に真っ先にリアクションを取ることがナチュラルなのだしリアルですらあったのだ! そのためにも北斗が目立っていたことで本作にも一本スジを通らせることもできていたことを思えば、タロウに変身する東光太郎こと篠田三郎が出演しなかったことは、あくまでも好意的に解釈するならばケガの功名になったのかもしれない。むろん、それもコジツケではあって、東光太郎こと篠田三郎には次こそ出演してほしいよなぁ(笑)。



 勢揃いしたウルトラ7兄弟が、上空から飛行しながらUキラーザウルス・ネオに超高速の猛攻撃を仕掛け始めた!


 神戸空港の上空を華麗に舞いながら、ウルトラ兄弟たちはそれぞれの必殺技をUキラーザウルス・ネオに連続で浴びせ掛けていく!


 セブンはトサカ部分をハズした武器・アイスラッガー!(飛ばさすに右手に持ったまま次々斬り裂く!)


 新マンも手持ち武器・ウルトラブレスレット!(ウルトラスパークに変型発光させて飛ばす!)


 エースは光の輪を放つウルトラギロチン!(オリジナルに忠実に光輪が3つに分身!)


 初代マンも光の輪を放つ八つ裂き光輪!


 切断技が炸裂!


 テレビシリーズとは異なり、切断対象が胴体ではなく触手であるせいか、自主規制されずに切断技が盛大に使用される!(笑) 諸事情があるのはわかるし、子供たちの中にもバカで残酷に生まれついた危険な子供がいる危険性があるのもわかるのだけど(汗)、そこは折衷して胴体や手足が不可ならば本作のように触手相手などで切断技も披露してほしいなぁ(笑)。


 しかし、ウルトラ7兄弟はUキラーザウルス・ネオの無数に生えている触手が次々に吹っ飛ばされてしまう!


 そこで、タロウは宙を横滑りしてスライディングで着地! お決まりのポーズを取って


「ストリウム光線!」


なる規定の掛け声を叫んで全身を油で反射したように発光! 大気中からもエネルギーを吸収して、七色に輝く鮮やかな必殺光線を上方に放った!(なんとタロウの油色の発光やストリウム光線の合成素材は「デン・フィルムエフェクト」の後継会社のライブラリーにまだ残っていて、それをデジタル化して使用しているのだとのことだ!)


 ストリウム光線のインパクトがあまりに絶大なものだったから、長男のゾフィーがワリを食ってしまった感もある。ウルトラ兄弟最強の必殺技であるハズの伝説のM87光線はただの白色のまっすぐな光線として描かれて、切断技のオンパレードと「ストリウム光線!」を見せられたあとではあまりに地味な印象だ。
 某巨大掲示板ではこれを「ウルトラ水流」だと揶揄してる奴がいたぞ! ミライ隊員の「ウルトラ兄弟で一番強いのは誰だと思う?」との質問に、タカトくんも「ゾフィー?」と答えていたというのに(笑)。


 トドメはこれまた、『ウルトラマン物語(ストーリー)』のラストのごとく、ウルトラ6兄弟がそのエネルギーをメビウスに注入して、兄弟たちは半透明の姿となってメビウス自身に合体してしまった!


 もっとも、『ウルトラマン物語(ストーリー)』以前にも、『タロウ』第25話『燃えろ! ウルトラ6兄弟』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061126/p1#20061126f2)における「ウルトラ6重合体」にて、ウルトラ兄弟の合体はすでに実現しているのだ! 取って付けたようなご都合主義の新設定ではないのだ!?(笑~いや、この手のヒーロー活劇はこ都合主義の固まりで出来ているのですけどネ・笑)


 上空に出現したメビウスは、新たな戦士・ウルトラマンメビウスインフィニティーへと華麗なる進化を遂げたのだ!


 「超(スーパー)ウルトラマン」となったウルトラマンタロウがコスモミラクル光線でグランドキングを撃破したように、7重合体でインフィニティーとなったメビウスは、7兄弟のエネルギーを結集した必殺攻撃・コスモミラクル光線ならぬコスモミラクルアタック(!)なる突撃攻撃を仕掛ける!


 インフィニティーは超巨体のUキラーザウルス・ネオの背骨部分を貫通していく!


 Uキラーザウルス・ネオはついに崩れ落ちていく!(……トドメの爆砕映像がややあっけなかった気もするけど、まぁ許そうではないか!?・笑)
 

 遂にヤプールの野望は打ち砕かれたのであった!



 終わってみれば、本編部分では北斗に、特撮場面ではタロウにオイシいところを持っていかれたような感はある(後者は特に子供たちの反応では)。そして、まさに第2期ウルトラシリーズ的なエッセンスや方法論の大逆襲! といった趣の内容でもあった(もちろん悪い意味ではないのだが、厳密には第2期ウルトラシリーズとは異なるところもかなりある)。


 本作の公開直前にも、正編のテレビシリーズである『ウルトラマンメビウス』の方にも、異次元人ヤプールウルトラマンタロウが今後に連続で客演することも発表されていた。それに応じて、『A』や『タロウ』のプチ・ブームが起こりそうな気配すらある! 事実、昭和ウルトラのレンタルビデオの回転率とソフビ人形の売上がすでに上がっているともウワサに聞くのだ。


 さらには、『メビウス』第34話(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061224/p1)ではウルトラマンレオ=おおとりゲンの登場予定があり、2006年9月22日から順次リリースされる『ウルトラマンレオ』DVD(asin:B000GTLFHW)とともに『レオ』の再評価や『レオ』ブームも巻き起こってほしいものである。順次、歴代ウルトラシリーズを週1で放送していて、2006年現在は『ウルトラマンA』を放映中であるCS放送の「ファミリー劇場」の契約者数も増えてほしいものだ!(笑)


 しかし、第1期ウルトラシリーズ至上主義者たちは、ウルトラマンの神秘性を棄損するものだとして否定してきたウルトラ兄弟の設定をここまで肯定してみせたこの作品を、それまでのウルトラ評論の存在を覆(くつがえ)す堕落・後退として捉えている可能性は高いだろう(汗)。
 第2期ウルトラ的なるもの、厳密には第2期ウルトラの本編そのものではなく、1970年代の小学館学年誌などの特集記事的な、ウルトラ一族の宇宙規模でのウラ設定にワクワクしてしまうような心性の方の普遍性やアドバンテージ(優位)の言説化や理論化が、今こそ切実に必要でもあるのだ。



 北斗がラストでキッチリとTAC隊員時代の右二本指での敬礼までやらかしたのにも、長年のマニア的には涙。


 ……するのも束の間、エンディング・ロールでは昭和ウルトラ作品(アニメの『ザ★ウルトラマン』(79年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971117/p1)含む!)のみならず、『メビウス』の直前作『ウルトラマンマックス』(05年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060311/p1)に至る、海外合作やビデオ作品を含めた全ウルトラヒーローまで、名場面のバンク映像で登場したことにウルウル来てしまう。


 加えて、MAT(マット)の南隊員を演じていた池田駿介氏や、南夕子役の星光子氏までもが列席した「ウルトラマン生誕40周年記念パーティ」の模様を見せられた日にゃ……(ハヤタ&アキコ、ダン&アンヌ、郷&なぜか池田駿介の南隊員(笑)、北斗&南夕子で乾杯。観客席からも特に北斗&南でどよめきが〜号泣)


 いや、星氏には合体変身は無理でも、せめて4兄弟が磔になった際に、『ウルトラマンA』第38話『復活! ウルトラの父』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070121/p1)のように天空から現れて、奇跡の力で4兄弟を十字架から解き放つ……なんてことをやってほしかった。もちろん、どうせならばエースが大苦戦して変身が解けた北斗の目前に、白いロングドレス姿でナゼか右中指にウルトラリングをはめて現れて再度の合体変身!(笑)


 基本的にはウルトラ兄弟の魅力を前面に押し出した作品である。そして、催事イベント『ウルトラマンフェスティバル』のライブステージや各所でのアトラクションショーでもむかしからよくあった、ヒーローVS怪獣怪人の幾度かのシーソーババトルを映像作品でも照れずにキチンとやってみせた! ドラマはバトルの渦中におけるセリフで処理されているといった印象の作品でもあるのだ。
 しかしだからこそ、普遍的にいつの時代でも面白くて、敵を倒してみせる爽快感もあるのではないのか? 筆者にはここ10年ほどのウルトラシリーズの映画版の中では本作が一番面白くて、下手な人間ドラマやムリやりなテーマもどきでダレたり幻滅させられることもなくスンナリとナメらかにも観られたものだ。


 もちろん、以前はウルトラマンや防衛組織・GUYSの大ファンだったゲスト少年・タカトが、宇宙凶剣怪獣ケルビムの襲撃に遭った際に愛犬アルトの危機を救えなかったことがトラウマとなって心を閉ざしてしまうという展開も、第2期ウルトラシリーズにゲストで登場した子供たちの児童ドラマの再生のようではあった。ウルトラ兄弟の戦いを見ているうちにミライの「信じる心が勇気になる」という言葉を実感して、本来の自分を取り戻すといった素朴(笑)な展開は、子供たちにも伝わりやすいものであったようには思うのだ。


 現役『メビウス』のGUYSの隊員たちの出番が極端に少なかったことに関しては想いは半々。良くも悪くも漫画アニメ的なキャラ付け・演技付けをされた強烈な個性の面々が画面を牛耳ったら、ウルトラ兄弟でさえ影が薄くなりそうだから(笑)。ただ、子供たちにとっては、テレビでお馴染みの面々の活躍も見せた方がより親しめたことかと思うがいかがであろうか?――後日付記:本映画はテレビシリーズ『メビウス』の基本設定が固まらないうちに脚本を脱稿して、GUYS隊員たちのキャスティングも決まっていない段階でクランクインしていたために、GUYSの出番が極端に少なくなっているというオトナの事情が、本作公開しばらくあとに明かされていた(笑)――


 とは云うものの、ラストでインフィニティーから分離して、元のウルトラ7兄弟に戻った彼らの揃い踏みを見て、


「マジかよ……」


とつぶやいたリュウ隊員。


「なんか感動……」


とポ〜(ハートマーク) としているマリナ隊員。


「グラッシャス!」


歓喜したジョージ隊員。


 彼らがワンシーンだけでも登場すると、途端に作品世界の空気感は『メビウス』そのものとなってしまうのであった。おまえらやっぱりオイシイわ(笑)。


 彼らのリアクションはそのまま我々観客の感慨とも同じものなのだ!



 筆者は公開2日目の06年9月17日の9時10分からの初回上映を静岡市の有楽座で鑑賞した。しかし、上映が終わって外に出た途端、2回目の上映を待つ親子を中心とした行列がズラッと並んでいるのに仰天した! 同じく公開2日目の初回上映を観た『劇場版 仮面ライダーカブト GOD SPEED LOVE』(06年8月5日公開 東映)(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060820/p1)などは、2回目を待っていたのはたった数組の親子だけだったものだが…… 遂に平成ライダーに勝ったのか!?


 興行通信社調べの全国ランキングによれば、公開1週目の興行成績はなんと第3位! 競合相手となる大作映画がなかったことも幸いして、邦画では第1位を記録した! 連休中の封切3日間で18万人動員! 2億強の興行収入!(ちなみに、前作の映画『ULTRAMAN』(04年・松竹)(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060305/p1)は最終的な興収自体が1億弱だったとか・汗)
 2週目でもなんとか第5位! 邦画では初登場の『フラガール』(個人的には大いに興味あり!・笑)に抜かれたものの、第2位に踏みとどまった!(後日付記:3週目でも8位。4週目でも10位を保持していた!)


 ずっと低迷にあえいできた平成ウルトラの劇場版を振り返れば考えられない事態だ! 上映館(たったの約150館)や上映回数の少なさ、地域的な事情で観たくても観にいけない人々も多いことを思えば――筆者の実家がある三重県では鈴鹿市シネコンでしか上映がなく、県南部に住む人々はとうてい鑑賞することが困難だ!――、それらの悪条件されクリアすれば、第1位も夢ではないのではないか!? ともヒイキの引き倒しで思ってしまうのだ(笑)。



 毎夏の恒例イベント『ウルトラマンフェスティバル』をはじめ、世田谷文学館の『不滅のヒーロー・ウルトラマン展』(06年7月15日〜9月10日)、川崎市岡本太郎美術館の『ウルトラマン誕生40年の軌跡 ウルトラマン伝説展』(06年7月11日〜9月24日)(以上、以下で紹介・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070325/p1)など、各地で盛大に行われた「ウルトラマンシリーズ40周年」記念イベントなども開催されている。
 しかし、パプリシティー面で功績が大きかったのは、「KIYOSHI(きよし)」名義でこの映画の主題歌『未来』(asin:B000GFM9H6・超絶名曲のテレビ版主題歌(asin:B000F6YQ72)に負けないほどの名曲だ!)を歌った氷川きよしが出演番組で、たとえば自らがホストを務めるNHK『きよしとこの夜』をはじめ、『NHK歌謡コンサート』、『POPJAMポップジャム)』、テレビ朝日ミュージックステーション』、『徹子の部屋』、TBS『みのもんたの朝ズバッ!』、『はなまるマーケット』、『きょう発プラス』、『2時ピタッ!』、封切翌日の横浜―巨人戦(横浜)での始球式、フジテレビ『笑っていいとも!』、テレビ東京『月刊MelodiX』他に至るまで!、封切前後に現役ヒーローであるメビウスとウルトラ6兄弟の着ぐるみとともに宣伝しまくってくれたことだろう!


 映画に主演したのならばともかく、主題歌を担当しただけではふつうここまではやってくれないだろう。『ウルトラ』映画の本来の低予算な宣伝費ではとうてい不可能だったはずの露出展開は、大スター起用だからこそ可能となったのだ。氷川きよしにも感謝したい!(笑)


 マニア仲間から調達した『笑っていいとも!』での出演回のビデオでは、世代人であるレギュラーのお笑いタレントたちが「ゾフィーだ! セブンだ! エースだ!」と懐かしげにも興奮しつつ大騒ぎ! ここでも、第1期ウルトラ世代がウルトラシリーズを堕落させたと忌み嫌ってきた(笑)「ウルトラ兄弟」ブランドのマニアならぬ一般層への絶大なる浸透力を見せつけてくれていた!


 そして、たまたま目にしたテレビ朝日ミュージックステーション』ではメビウスとウルトラ6兄弟を従えて氷川が熱唱、合間にファイティングポーズを決める兄弟たちを、ちゃんとひとりずつ映し出していく演出は効果抜群だった! 氷川ファンばかりではなく、幼いころに見たきりでずっと忘れていたはずのウルトラ兄弟たちを思い出して熱くなった一般層(の一部・笑)を劇場へと誘導する効果も充分にあったと思うのだ!
 我々が愛読しているジャンル雑誌やホビー誌などはたかだか数万〜10万部程度の存在なのだが、テレビの電波に乗れば2桁上の1000万人規模の宣伝効果なのだ。子供といっしょに、あるいはひとりでも観てみようと思った御仁が、100人にたとえ1人程度だったとしても、そもそもの分母が大きいので数万人レベルでの動員の増員ができているはずだ!?


 実際、某巨大掲示板を観る限りでは、明らかに氷川目当てのオバチャンの群れが来ていたとか、氷川のファンである母に「連れていってくれ」とせがまれて困っている(笑)といったコメントが寄せられているくらいだから、そんな熱心なファンのためにも、氷川にはもう少し出番を増やしてあげてもよかったかもしれない(まぁ大スターだから「全然休みがとれない」と嘆いているくらい忙しいだろうけど)。


氷川きよし「がんばれ! 僕も応援してるよ!」(劇中内でのセリフより・笑)



 YAHOO(ヤフー)ポータルサイトの「ユーザー映画レビュー」でも第1位!(平均点形式) それに寄せられたコメントでは「感動した!」「泣いた!」と絶賛の嵐であった。


 前回の映画『ULTRAMAN』が大コケしたことからか、今回も上映館は少なく、各シネコンでも収容人員の少ない部屋を当てがったところが多かったようだが、そのために満員御礼・立ち見が続出したらしい! あくまで子供にせがまれて来ただけで、ウルトラにはさして想い入れのない親までもが「スゴイ!」とつぶやき、あるいは感動で落涙し、上映終了後には各地で拍手喝采! 「面白かった!」と大喜びで帰っていく親子連れの一群……


 そら見たことか! 第1期ウルトラ至上主義者のウルトラ兄弟否定論やウルトラ兄弟共演否定論、兄弟設定はウルトラマンの神秘性を棄損する説など真に受けずに、もっと早くにウルトラ兄弟共演ものをやるべきだったのだ!


 ちなみに、封切翌週以降の各地のシネコンや映画館ではスクリーンの大きな箱への昇格、上映回数の増加、オジサン向けなのかマニアの要望なのか夜間上映・レイトショーも開始され始めた!(このへんはシネコンの時代ならではの融通無碍な営業ですナ) 週末の舞台挨拶も各地で次々に追加されている!(さすがに、ダンディー4(フォー)ことハヤタ・ダン・郷・北斗のメンツではなくなっているようだが) まだまだ興収の増大は見込めるぞ! ついに奇跡が起きたのだ!!(感涙にむせぶ……)

2006.9.27.


 封切直後の映画であるために、ビデオなどでの内容の再確認ができず、細部の記憶ミスやセリフ間違いはご容赦ください。(編:明らかなミスのみ、ネットUPに際して修正しました)


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2007年準備号2』(06年10月1日発行)〜『仮面特攻隊2007年号』(06年12月30日発行)『ウルトラマンメビウスウルトラ兄弟』合評2より抜粋)


『假面特攻隊2007年号』「ウルトラマンメビウス」関係記事の縮小コピー収録一覧
・読売新聞 2006年8月18日(金) 夕刊映画大判広告・帰ってきたウルトラ兄弟!!試写会大盛況!!公開まであと30日! 〜子供の頃、学年誌の記事をよく読んでいた・40歳2児母。私たちの年代は兄弟の共演に胸躍った、子供たちもメビウス視聴・38歳4児父。ウルトラファンでグッズ収集、兄弟との共演が楽しみ・38歳独身男。マン・セブンに影響受けた世代、普段映画を観ない私ももう一度劇場で観たい・29歳2児父。子供が生まれメビウス主演の五十嵐さんの爽やかな演技が楽しみ、子供はウルトラマン私は五十嵐さん・28歳2児母
・読売新聞 2006年9月12日(火) 文化欄・ウルトラマン40年「メビウス」 大人も注目する「友情」 〜主役インタビュー&映画紹介
・読売新聞 2006年5月16日(火) TV欄読者投稿「放送塔」「謙虚なメビウスに好感」 〜昭和ネタも楽しみ・42歳女性パート
・読売新聞 2006年12月1日(金) TV欄読者投稿「放送塔」「面白い「ウルトラマン―」」 〜未熟なヒーローの成長と友情・先輩戦士登場・4歳の息子がワクワク・43歳主婦
・読売新聞 2006年9月14日(木) 「広告の頁」(全面頁)・CinemaPLUS+シネマプラス PLUS1ウルトラマンメビウスウルトラ兄弟 40年の歴史と伝統はまさに“同窓会”の熱気 ファン感涙の趣向も満載――秋本鉄次(映画ライター) 〜9月封切の映画特集で先頭紹介。50代半ばのライター氏も『ウルトラQ』を夢中で見た記憶あり
・読売新聞 2006年9月X日(失念) 夕刊映画広告・大ヒット御礼!ロングラン決定!!50万人の親子が興奮した!



※:映画会社・松竹の発表による07年1月8日(月)現在の『ウルトラマンメビウスウルトラ兄弟』興行成績。(9月16日〜1月8日・115日間)=動員50万5214人・興収6億8104万5800円。(通例、最後の段階で含める前売り券の売上分が含まれているかは不明。もうこの時期だから含まれてる??)


※:平成ウルトラ映画の歴代収入(単位・万円)
・36,000。『ウルトラマンゼアス』(96年)
・詳細不明『ウルトラマンゼアス2』(97年)
・45,000。『ウルトラマンティガウルトラマンダイナ』(98年)
・35,500。『ウルトラマンティガ ウルトラマンダイナ&ウルトラマンガイア』(99年)
以上、「配給収入」基準での公表
(「興行収入」の50%〜60%の値。映画館の取り分を除いた配給会社の利益。1.66〜2.00倍換算で興行収入

以下、「興行収入」基準での公表
・60,000。『ウルトラマンティガ』(00年)
・50,000。『ウルトラマンコスモス』(01年)
・70,000。『ウルトラマンコスモス2』(02年)
・50,000。『ウルトラマンコスモスVSウルトラマンジャスティス』(03年)
 (00年〜03年作品は「映画プロデューサーの基礎知識」キネマ旬報映画総合研究所編より)
・詳細不明『ULTRAMAN』(04年)
・68,104。『ウルトラマンメビウスウルトラ兄弟』(06年)
 (以上、調査・森川由浩)
※:詳細不明については、あまりに低興行だったために公表されていない模様。
※:また01年よりはじまった平成ライダー&戦隊映画については、常に平成ウルトラ映画の興収を上回り、多くの作品で興収10億円を突破している(06年度作品の興収は7億に留まったらしいが)。


[関連記事]

ウルトラマンメビウスウルトラ兄弟2』 〜東光太郎! 幻の流産企画!

d.hatena.ne.jp

ウルトラマンメビウス』#24「復活のヤプール」 〜第2期の映像派鬼才・真船禎演出リスペクトが満載!

d.hatena.ne.jp

ウルトラマンメビウス』#44「エースの願い」 〜南夕子

d.hatena.ne.jp


[関連記事] ~ウルトラシリーズ劇場版

ウルトラマンUSA』(89年) ~日米合作80年代アニメ!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100821/p1

ウルトラマンティガウルトラマンダイナ 光の星の戦士たち』(98年) ~合評

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971206/p1

ウルトラマンティガウルトラマンダイナ&ウルトラマンガイア 超時空の大決戦』(99年) ~合評

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19981206/p1

ウルトラマンティガ THE FINAL ODYSSEY(ファイナル・オデッセイ)』(00年) ~賛否合評・万人が超人たりうる一般性を宿命性の物語に回帰させた是非!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961209/p1

『劇場版 新世紀ウルトラマン伝説』(02年) ~今こそ昭和のウルトラ兄弟が復活するべきだ!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20021115/p1

ウルトラマンメビウスウルトラ兄弟』(06年) ~大傑作映画!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070128/p1(当該記事)

ウルトラマンメビウスウルトラ兄弟2』 ~東光太郎! 幻の流産企画!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20130317/p1

『大決戦! 超ウルトラ8兄弟』(08年) ~ティガあっての新作だ!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101223/p1

『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』(09年) ~岡部副社長電撃辞任賛否!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101224/p1

ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国』(10年) ~大傑作!(なのに不入りで暗澹たる想い・汗)

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20111204/p1

ウルトラマンサーガ』(12年) ~DAIGO・つるの剛士杉浦太陽AKB48・昭和OB投入の是非!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20140113/p1

ウルトラマンギンガ 劇場スペシャル』(13年) ~ジュブナイルじゃない!? アイテム争奪コント劇! 「見せ場」重視!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200820/p1

『劇場版ウルトラマンギンガS 決戦!ウルトラ10勇士!!』(15年) ~第2期ウルトラの「特訓」「ドラマ性」「ヒーロー共演」「連続性」も再考せよ!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200404/p1

『劇場版ウルトラマンオーブ 絆の力、おかりします!』(17年) ~イイ意味でのバカ映画の域に達した快作!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200406/p1

『劇場版ウルトラマンジード つなくぜ!願い!!』(18年) ~新アイテムと新怪獣にも過去作との因縁付与で説得力!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180401/p1

『劇場版ウルトラマンR/B セレクト!絆のクリスタル』(19年) ~小粒良品で好きだが、新世代ウルトラマン総登場映画も観たい!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190407/p1

『劇場版ウルトラマンタイガ ニュージェネクライマックス』(20年) ~ヒーロー大集合映画だが、『タイガ』最終回でもあった!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210704/p1

『シン・ウルトラマン』(22年)徹底解析 ~賛否渦巻くワケも解題。映像・アクション・ミスリードな原点回帰・高次元・ゾーフィ・政治劇・構造主義・フェミ!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220618/p1


[関連記事] 〜ウルトラ兄弟設定・肯定記事!

★今こそ昭和ウルトラの全遺産を活かせ!★ 〜ドラマやテーマよりも、ウルトラ兄弟・歴代怪獣・世界や年表・児童の神話的年代記やジャンク知識収集癖へ訴求せよ! 武器や鎧・テーマパークな未来都市・2回変身や等身大バトルなど身体性の快楽も!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060415/p1

ウルトラマンネオス』95年版 〜Wヒーローならテーマへの多角的アプローチが可! 防衛隊も巨大ロボを持て!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971115/p1