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秘密戦隊ゴレンジャー総論 ~徹底詳解! 作品・変遷・怪人・殺陣・玩具・視聴率・書籍・時代・影響・再評価・50年!

『ジャッカー電撃隊』(77年)総論 ~徹底詳解! 作品・路線変更・怪人・殺陣・玩具・視聴率・書籍・時代・名作の最終回・恋愛描写の衝撃
『鳥人戦隊ジェットマン』(91年)総論 ~井上敏樹・初メイン脚本 ブラックコンドル結城凱!
『超獣戦隊ライブマン』(88年)総論 ~友よ、どうして? テーマ志向の傑作戦隊!
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スーパー戦隊シリーズ評 ~全記事見出し一覧
スーパー戦隊シリーズ映画評 ~全記事見出し一覧


 『秘密戦隊ゴレンジャー』(75年)が50周年記念! TOKYO MX(東京エムエックス)でも、2025年4月18日(金)から再放送記念! とカコつけて……。『秘密戦隊ゴレンジャー』総論をアップ!


『秘密戦隊ゴレンジャー』総論 ~徹底詳解! 作品・変遷・怪人・殺陣・玩具・視聴率・書籍・時代・影響・再評価・50年!

(文・森川由浩)
(2011年12月・脱稿)


 今となっては、日本が世界に誇るロングラン特撮シリーズの一大ブランドとして高名な「スーパー戦隊シリーズ」。


 その第1弾であり、輝かしい歴史のスタートを切った金字塔的として、日本特撮映像史の中に足跡を残した作品が、この『秘密戦隊ゴレンジャー』(75年)である。


 しかし、1980年代前半の特撮ファンダム勃興期における位置付けを思い起こせば、当時の特撮マニアの主流派であった「昭和30年代の東宝特撮怪獣映画世代」と「第1期ウルトラシリーズ世代」、そして『仮面ライダー』1作目(71年)に端を発する「変身ブーム世代」といった先輩特撮作品のマニア世代たちからは、「スーパー戦隊」というだけで「内容が幼稚」「ドラマ性が希薄」「玩具を売るだけの番組」などと酷評されていた時代であった。


 その後、1980年代も中盤に突入。年長マニアにとっても見応えがあって「大河ドラマ志向」を印象付けたスーパー戦隊シリーズの『超電子バイオマン』(84年)と『電撃戦隊チェンジマン』(85年)が登場した。この2大作品は、当時の特撮マニア間での「スーパー戦隊シリーズ」の地位向上にも大きく貢献した。
 しかし、「戦隊シリーズ」でも重厚なドラマが展開されてみると、今度は元祖の『ゴレンジャー』に対して、「むかしの戦隊は幼稚だった」とその当時のさらに若い世代の一部からの酷評を浴びることもあった。


 さらにその後、『鳥人戦隊ジェットマン』(91年)が登場。年長女性向けの人気漫画で同年夏にテレビドラマ化もされた大人気作『東京ラブストーリー』(91年)にインスパイアされたかのような、戦隊メンバー間での自由気ままな“男女の恋愛”をセールスポイントにした作品の登場は、「戦隊シリーズ」の視聴者年齢層の拡大をより促した。さらに、この作品に影響を与えた当時の“トレンディドラマ”の視聴者層であった若い女性ファンをも相応に獲得。“大人の鑑賞に耐える”作風のシリーズがより高い評価と多くの支持を集める現象を巻き起こした。


 その後も、視聴率の低下によるシリーズ打ち切りの危機も幾度かはあったとはいえ、放映時間帯や曜日を変えて今日まで生き延び、やがては『パワーレンジャー』シリーズ(93年~)としての海外進出も大成功を収めて、現在の「戦隊シリーズ」は日本特撮の代表選手格に位置するまでに至ったのだ。今やNHKの「大河ドラマ」と、朝枠の「テレビ小説」と並んで、日本が誇るロングラン・テレビドラマシリーズ(*1)として、その歴史を継続しているブランドが、この「スーパー戦隊シリーズ」なのである。


 今回は、スーパー戦隊シリーズ第35作目の『海賊戦隊ゴーカイジャー』(11年)が放映中でもあり(本稿執筆当時)、アニバーサリーイヤーを意識した諸展開の渦中でもある昨今、その原点の『秘密戦隊ゴレンジャー』の「総論」として、“元祖スーパー戦隊”作品の流れと。その歴史の第一歩でもある“大いなる力”を俯瞰(ふかん)してみたい。


*『秘密戦隊ゴレンジャー』誕生のきっかけ! “腸捻転” 『仮面ライダー』放映枠の移転!


 本作誕生の経緯として、1975年(昭和50年)の日本のテレビ界に大きな影響を与えた、放送局の系列改変として有名な“腸捻転(ちょうねんてん)”があげられる。
 1975年3月31日に執行されたネット改変。医学用語の“腸捻転”を引き合いに出して称された、系列変更の実施のことである。それまでの時代の放送局の系列編成では、NET(現・テレビ朝日)系(朝日新聞の資本)が大阪では毎日放送(毎日新聞の資本)、TBS系(毎日新聞の資本)が大阪では朝日放送(朝日新聞の資本)のネットワークになっていた。
 しかしこれでは、放送局の資本に関与する新聞社の系列が統一されてはいなかったのだ。この問題を解消するために行ったのが通称“腸捻転”なのだ。そのために、大阪の毎日放送が制作する多くの番組がNETからTBSに移行。逆に、大阪の朝日放送が制作するテレビ番組がTBSからNETに移行することになった。
 大阪の毎日放送の看板番組『仮面ライダー』シリーズも、『仮面ライダーアマゾン』(74年)でもって、翌年3月いっぱいで終了となっている。



 これまでNET系で放映されていた『仮面ライダー』シリーズは、4月よりTBS系に移動されるとともに、新シリーズに変更されて、いわば“TBS系・仮面ライダーシリーズ”としてのスタートを切ることになった。
 しかし、TBSの土曜夜7時半にオンエアされていた『お笑い頭の体操』(68~75年)は、大手製薬会社・ロート製薬の一社提供で、スポンサーにとっても社を代表する人気番組であり、TBSの土曜夜の看板番組でもあった。時に『仮面ライダー』登場までは、土曜7時半枠のトップクラス番組であったために、終了も枠移動も許されなかったようだ(*2)。
 そのためか、『頭の体操』の方は現状の放映枠を維持。『仮面ライダー』シリーズの方は、4月より土曜夜7時枠に繰り上がって、宿敵であった『頭の体操』の前座番組に位置することが決まった。


 なお、毎日放送が先にこの土曜7時枠にて制作して放映していたテレビ番組『ちびっこアベック歌合戦』(74年)は、これまで同局制作のアニメーション枠であった金曜夜7時枠に移動して、ミヒャエル・エンデ原作の児童文学をテレビアニメ化した『ジムボタン』(74年)の後番組として、放映が継続される。
 毎日放送側の処置はこのようになったが、『仮面ライダー』シリーズを持っていかれたNET側は、空いてしまった土曜夜7時半枠に新番組を編成しなければならなくなったのだ。



代替テキスト
(↑:上掲の名乗りは、最終1クール半分における、JACが担当した時代の名乗りで、大戦隊ゴーグルファイブとも同じ名乗りです・笑)


*カラーテレビも普及して久しかった1975年4月! “カラー”と“グループヒーロー”がテーマ!


 本作の東映側のプロデューサー・吉川進(よしかわ すすむ)は、こう当時を懐述する。



「NETは仮面ライダーに負けない新しい企画を要求してきました。で、当社のテレビ事業部部長であった渡部亮徳(現・東映副社長)が中心となって行ったことは、当時はカラーTV普及期だったので1つは“カラー”をテーマにした作品。そして、もう1つは『仮面ライダー』も『キカイダー』も単体ヒーローだったので“グループヒーロー”路線。この2つの要素をメインテーマとした作品を開発することで独自性が生まれてくるのではないかと考えたわけです」
(『マーチャンダイジングライツリポート』1994年9月号(商品化権利用センター刊)掲載記事『16年目を迎えた「スーパー戦隊シリーズ」 その“強さ”の秘密を探る』。カッコ内の渡邊の役職は当時の原文まま)



 その吉川は、放映開始前にこういったコメントを残している。



「ライダーは一人だが、こちらは五人のメンバーでスケールも大型」
(『週刊TVガイド』(東京ニュース通信社刊)1975年3月7日号掲載記事)



 明らかに、『仮面ライダー』との違いを明確化して、「こちらの方がスケールは大きい」といったセールスポイントで、前面に押し出していたのだ。


*その直前の1975年3月 変身ブームの終焉! ロボットアニメ&『がんばれ!! ロボコン』の勃興!


 1971年に『仮面ライダー』で巻き起こった「変身ブーム」も、すでに4年目になると沈静化の兆しを見せていた。同時期にしのぎを削っていたライバル番組も激減。しかも、最大の強敵であったTBS・円谷プロダクション制作の「ウルトラマン」シリーズも、当時放映中の『ウルトラマンレオ』(74年)の1975年3月をもって、いったん終了となった。東宝の怪獣映画「ゴジラ」シリーズも、『メカゴジラの逆襲』(75年)を最後に休眠期に入った。残るのは、「仮面ライダー」シリーズだけであるような状態であった(*3)。


 「特撮」作品を「ヒーロー」や「怪獣映画」に限定せずに視野を広げて、「コメディもの」を加えてみても、あとは『がんばれ!! ロボコン』(74年)と、ピー・プロダクション制作の新番組『冒険ロックバット』(75年)(*4)のみがあるといった状況になった。しかも、1974年秋当時の「実写特撮」作品の人気の中心格は、「ライダー」でも「ウルトラ」でもなく、ギャグロボットのニューウェーブ『がんばれ!! ロボコン』になっていたのだ。


 全盛期から比べて明らかに下降した視聴率でしかなかった「ライダー」「ウルトラ」以上に、『ロボコン』は高い数字を獲得。放送から半年ですでに25%超えの実績を見せつけていた。
 さらに、1972年暮れにスタートしたテレビアニメ『マジンガーZ』(72~74年)の大ヒットにより、巨大ロボットアニメブームが到来。追い風として、1974年4月よりスタートした合体ロボットアニメ『ゲッターロボ』(74年)も登場。そして、『マジンガーZ』の後番組として1974年9月よりスタートを切ったマジンガーシリーズ第2弾の続編『グレートマジンガー』(74年)も登場したことで、児童間での「変身ブーム」は凋落を加速し、玩具の売上や視聴率の面でも、ロボットアニメが優位に立つ状況を見せていた。


*同じく1975年4月スタートの『仮面ライダーストロンガー』の原型企画『5人ライダー』!


 そこで、1975年4月より東映は、次なる実写ヒーローのウェーブ(=「波」)を目指して、3大作品を放った。


●日本のTV特撮ヒーローの元祖『月光仮面』(58年)の原作者・川内康範(かわうち こうはん)を招いて、彼が先に東宝と組んで制作していた『愛の戦士 レインボーマン』(72年)と『光の戦士 ダイヤモンド・アイ』(73年)の系列に属する、現実世界に根ざした視線の社会派ヒーロー『正義のシンボル コンドールマン』(75年)
●東映特撮ヒーローの主軸「仮面ライダー」シリーズの新作『仮面ライダーストロンガー』(75年)
●そして、これまでの特撮ヒーロー番組の集大成でもある、複数人もの変身ヒーローがレギュラーで活躍するコンセプトが目印の『秘密戦隊ゴレンジャー』


 だが、先に言及した『仮面ライダーストロンガー』は、最初から『アマゾン』の後番組としてすんなりと誕生したわけでもなかった。その前に、「ひとつのシリーズ作品に、5人もの仮面ライダーがレギュラーで登場する」という『5人ライダー』が提案されていた。


 このアイデアは東映の渡邉亮徳(わたなべ よしのり)プロデューサーのものであったようだ。



「アメリカのテレビ映画『スパイ大作戦』を、見てみろ。主人公は一人ではなく、複数の主人公がそれぞれ専門分野をもって活躍するだろう。今度の『仮面ライダー』も、そうやってみろ。」
(『日本(ジャパニーズ)ヒーローは世界を制す』大下英治・著(角川書店刊)1995年)



 日本でも大ヒットした海外テレビドラマ『スパイ大作戦』(原題『ミッション・インポッシブル』 66~73年)の影響が大であったことを顕著に物語っている。そういえば、このドラマの名物となった作戦司令のテープレコーダーの音声も、『ゴレンジャー』のナレーターの大平透(おおひら とおる)によるものだった。


 東映のプロデューサーで、『仮面ライダー』シリーズ、そしてこの『ゴレンジャー』を担当していた平山亨(ひらやま とおる)の回想では、



「『五人ライダー』って企画はあったんだけど、それが毎日放送に却下されて、それで新企画をってことで急遽出したのが『ストロンガー』だから、多分に練り込みが足りなかったというのはあります」
(『キャラクター魂』Vol.3(辰巳出版刊)1999年)



 つまり、上記の平山の発言にもあったように、毎日放送にこのアイデアは却下されていたのだ。制作局の毎日放送編成局映画部長(当時)の庄野至は、



「「複数のヒーローなんて、ヒーローじゃない。ひとりしかいないからヒーローなんだ」と反対、「ヒーローは一人」の考え方に固執したのか、結果的には『仮面ライダーストロンガー』(仮題『仮面ライダースパーク』。登録商標の問題(*5)から改題)がシリーズ第五弾として放映される結果となった。
(『日本ヒーローは世界を制す』)



 だが、この『5人ライダー』にはならなかった『仮面ライダーストロンガー』もまた、新基軸は打ち出していた。それは正式な「仮面ライダー」としてはカウントされていないが、女性の「マスクドヒロイン」として、「電波人間タックル」なるキャラクターを加えていたことだ。その結果、「男女ペアのツイン変身」をセールスポイントにしたのだ。
 こういった、これまでの『仮面ライダー』シリーズになかった新時代のヒーロー像を確立したことが、その当時の新しい時代でもあった昭和50年代への船出を、当時の子どもたちにも象徴的に感じさせていたようには思うのだ。


 なお、このタックルのキャラクターは、平山亨が当時の女子層の視聴者による、「私たちも仮面ライダーごっこがしたい」といった希望に応えるかたちで発案したとのことである(『仮面ライダーオフィシャルマガジン 仮面ライダーストロンガー』(講談社刊)2004年)。これは「戦隊シリーズ」の「マスクドヒロイン」にも通ずる“変身する女性キャラ”の確立の具体例として認識できる。


 また、前年の『キカイダー01(ゼロワン)』(73年)のシリーズ後半では、「ビジンダー」という「マスクドヒロイン」も登場。この変身ヒロインが女児層にも受け入れられていたという下地もあっただろう。


 この項を締めくくるうえで言及しておきたいことがある。今になって気づいたマニア諸氏もいるかもしれないが、TBS→NETと放送局は違っても、土曜の7時台で「ライダー」と「戦隊」を続けて見ることができるこのタイムシフトは、まさに現在(21世紀以降)の日曜朝の「スーパーヒーロータイム」とも同じであったことだ。


*“腸捻転”でも、土曜夜7時半枠の『部長刑事』は不動! 大阪での『ゴレンジャー』の放映枠!


 さて、本作の誕生をうながしたこの“腸捻転”。しかし、関西では周知のとおり、大阪の朝日放送が誇るロングランテレビドラマ『部長刑事』(58~02年)が、系列改正後も土曜夜7時半の枠で不動であった。それがために結局、朝日放送では土曜夕方6時の枠にて、関東より1時間半も早いオンエアのシフトで『ゴレンジャー』が放送されることとなったのだ。


 なお、本書をご覧の方なら多くの方が周知のとおりだと思われるが、本来『仮面ライダー』シリーズは、大阪の毎日放送側での“(朝日放送の)『部長刑事』に勝てる人気番組を”といった要望から誕生した番組でもあった。
 なにゆえに、朝日放送は系列改正後も、土曜夜7時半枠を親キー局との同時ネットにしないで、これまでどおり『部長刑事』を継続放送したのかが気になるだろう。それはこの番組の誕生経緯が単なるテレビ番組としてのレベルではなく、朝日放送にとって相当な大きさを持った看板番組でもあったからだ。


 『部長刑事』のスポンサーは大阪ガス。見てのとおりで関西地区を代表する大手企業である。このスポンサーが『部長刑事』の放映開始にあたって、



「それも休日の前夜、サラリーマンがほっとくつろげる土曜日の夜を主張して譲らなかった。」
(『朝日放送の50年 Ⅱ 番組おもしろ史』(2001年刊行))



 といった逸話も存在していたくらいの大きなテレビ番組であったのだ。なお、当時は現在とは違って、サラリーマンも学生も週休2日制ではなかったご時世だ。日曜だけが唯一の休日で、土曜日の持つ「意義」や「開放感」は現在とはまったく違っていた。1990年前後風にいえば“花金(はなきん)”ならぬ“花土(はなど)”であったのだ。
 つまり、この時間帯はスポンサーが番組放映開始の条件として申し出た条件そのものでもあった。この時期でもすでに20年近いロングランを続けており、大阪ガスはもちろん、朝日放送にとっても看板番組になっていた『部長刑事』の時間枠を移動させることはできなかったのであろう。
 そのためにネット改変後も引き続いて、同枠では『部長刑事』が放映されて、『秘密戦隊ゴレンジャー』は土曜夕方6時枠での放映となったのだ。以降も、



「“鬼より怖い”スポンサーの大阪ガスが「やめさせません」というのだから、やめる理由がない」
(「大阪新聞」1983年9月10日)



 とばかりに、通算で半世紀に近いロングランを実現している。


 大阪の朝日放送では、『ゴレンジャー』は土曜7時半枠より1時間半も早い時間枠でのオンエアになった。そして、1年後の1976年4月にスタートした、初の5体合体のロボットアニメ『超電磁ロボ コン・バトラーV(ブイ)』(76年)以降の関東での土曜日夕方6時枠の長浜忠夫監督による日本サンライズ制作のロボットアニメシリーズ(通称「長浜ロマンロボアニメシリーズ」)についても、大阪の朝日放送では翌週金曜夕方5時にシフトされて、約1週間遅れでのオンエアーになっていた。


 また、その翌年の1977年10月からは、中部地方の名古屋テレビと日本サンライズの制作による合体ロボットアニメ『無敵超人ザンボット3(スリー)』(77年)がその金曜夕方5時枠にて放映が開始になったために、『コンV』の後番組であった同じく5体合体のロボットアニメ『超電磁マシーン ボルテスV(ファイブ)』(77年)の方はさらに30分うしろにズレて、金曜夕方5時半枠にて放映されることになった。


*『秘密戦隊ゴレンジャー』のデザイン! 「シンプル」&「5原色」がテーマ!


 もともとが“5人ライダー”の企画の流用であったことからか、「原作」は当然、石森章太郎(1986年より石ノ森章太郎)の名義のままで進行した。石森は「5人もいるヒーロー集団」という基本設定があったことから、彼らのデザインを複雑化することは避けておいて、あえて一目でわかるシンプルなヒーロー像を設定したそうだ。


 これについては、『秘密戦隊ゴレンジャー大全集』(講談社刊 1988年)でのインタビュー記事にて、



「ライダーがだんだん代を重ねるにしたがって装飾過多になってきたことに対する反省の意味合いもあり、キャラクター作りの原点に戻った一目でわかるヒーローを目指すつもりもあったんです」



 と作者自らが語ってもいる。また、石森は別所で、


「はっきりキャラクターの性格が出るようなデザイン、カラーリングは重要だよ。『ゴレンジャー』の五色だって、それから出てきた区別だからね。」
(『ウルトラマン対仮面ライダー メガヒーロー 光と影の神話』(文藝春秋刊 池田憲章 高橋信之 1993年初版 2000年文庫再販))



 とも語っていた。


 『仮面ライダー』では「球」をベースに、モチーフになった昆虫である「バッタ」の「触覚」と「複眼」をミックスし、「昆虫人間」とでもいうべき、前代未聞のユニークなスタイルに仕上げていた。しかし今度は、「球」の「額」の部分に「番号」を刻印して、仮面ヘルメットの中から外部の前方を見るための、ゴレンジャーたちの「眼」にも例えることができる「黒いシールド」が取り付けられていた。そして、その黒いシールド部分は主人公各人ごとの専用武器となる「鞭(むち)」「弓矢」「通信機」「ハート側の鏡」「Vの字側のブーメラン」といったアイテムの形状をシンボライズしたスタイルで表現してみせた。
 その結果、5人が五様のスタイルを持って、新時代に呼応もした「シンプル・イズ・ベスト」のビジュアルで、「ウルトラマン」にも「仮面ライダー」にもなかった、斬新かつソリッドなテイストを表現することにも成功。新時代のヒーローのデザインコンセプトの新境地を開拓したのであった。


 本作のメインライター・上原正三も、


「初代ウルトラマンに匹敵するシンプルさでね」
「本当にゴレンジャーは石ノ森さんの傑作デザインだと思いますよ」
(『東映ヒーローMAX(マックス)』Vol.13(辰巳出版刊)2005年)


 と絶賛している。


 また、顔面マスクの「シールド部」には「武器」も収納されているといったアイデアは過去に類例がなかった。しかも、各人ごとの「シールドの形状」と「武器の形状」がシンクロしているコンセプトもまた、子どもたちには斬新であった。この「シールド部」に手をかざすと各人ごとの専用武器が出現するシステムは、後年の『超力(ちょうりき)戦隊オーレンジャー』(95年)でも復活し、世代人の特撮マニアを中心にデジャヴ(既視感)を抱かせて、話題となっていた。


 つまり、「色」だけではなくマスクの「シールド部」の「形状」での識別も可能としたゆえの効果もあった。当時はもうカラーテレビの普及率が100%近くになっていたとはいえ、まれに白黒テレビで観ている子どもたちもいただろう。「色」はわからなくとも、その「シールド部の形状」だけでも、キャラクターの識別が可能になるといったメリットを有することとなる。
 もちろん、すでにカラーテレビが各家庭に普及した時代背景を反映させて、かつての東映の時代劇特撮『仮面の忍者 赤影』(67年)とも同様に、「色」の方で戦隊メンバー各人の個性を強調するかたちで、彼らのキャラクターを描き分けしようとしていたことは間違いない。


 吉川進の回想では、



「渡邉亮徳さんが言っていたのは、カラーテレビの時代になったから、色あでやかなヒーローを作ってそれを意識したいんだって言うことでした。」
(『東映ヒーローMAX』Vol.29『仮面の世界 吉川進(後編)』(辰巳出版刊)2009年)



 ともあった。


 同じく石森原作の先輩格の集団ヒーローもの『サイボーグ009(ゼロゼロナイン)』(64年)では、「国籍」でメンバーを識別化していた。しかし、彼らの「制服の色」は皆が「共通」であって、「赤い制服」と「黄色いマフラー」であった(*6)。
 前述の『仮面の忍者 赤影』でも、「黒い忍び装束」は「共通」であって、「マフラーの色」で識別する形式であった。


 しかし、この『ゴレンジャー』では、身にまとった共通性はあるコスチュームそれ自体もまた、各人のモチーフであるその「色」で、全身の体色としてみせた。
 「全身」の「体色」によっての識別といった、ストレートかつ最大限のわかりやすさ。これによって、以後の「戦隊シリーズ」の基本フォーマットの揺るぎない基盤を確立したのだ。


 その登場人物の「色」は、主題歌の歌詞にも反映されており、キャラクターの立て方を強く意識するスタンスがより強調されている。しかも、オシャレに「英語」の色名でなく、あえて適度な「B級感」や「語感」「音感」の強さもある「日本語」の色名を取り入れたこともまた、成功の要因であった。
 以後の「戦隊シリーズ」の多くでは、「色」は「英語」で命名されている。「日本語」の「色」によるネーミングは、2011年現在ではこの『ゴレンジャー』のみとなっている。
 当たりまえのことだが、日本の地域に生まれれば、子どもたちは「英語」よりも先に「日本語」で言葉を認識する。本作の放映時期にちょうど物心がついたような世代にとっては、日本語での「色名」を覚えたその第一歩が、この『ゴレンジャー』であった者もいたと思われるくらいで、その覚えやすさは今でもなお群を抜いている。


*石森漫画におけるプロト「戦隊」たち! 『少年同盟』『サイボーグ009』『アズガード7』!


 次は石森漫画としての観点で、本作の諸要素を検証してみよう。


 石森は本作の原点として自身の漫画『少年同盟』(62年 *7)をあげている。しかしこれ以外にも、石森の代表作『サイボーグ009』はもちろん、この時代に彼が手がけた集団ヒーロー漫画『未来救助隊アズガード7(セブン)』(74年)の存在についても言及しなければならない。


 この漫画は、学研(学習研究社)の刊行していた学年別の学習雑誌『〇年の科学』の、なんと全学年分に連載されていた作品なのだ。もちろん、そのすべてを石森が手がけたのではなかった。学年によっては、石森プロ所属の漫画家の手によるものもあった。
 同作はグループを構成するメンバーの皆が改造人間であるという設定になっていた。ヒーローとヒロインだけは人間だったが、その他のメンバーは動物の能力を有する改造人間であることが特徴的だった。明らかに『サイボーグ009』の影響下において誕生した漫画であることが明白でもある。そうした前年度に発表されたグループヒーローの存在も、どこかしら『ゴレンジャー』誕生の背中を押す一助になっていたことも感じ取れる。


 次にここで引き合いに出した、かの名作『サイボーグ009』だ。この『ゴレンジャー』放映の1975年には復活を遂げていたことも忘れてはならない。
 『009』は1964年の『週刊少年キング』(少年画報社刊)を皮切りに、各社の雑誌を渡り歩くように連載された。やがて、東映動画(現・東映アニメーション)によって、劇場アニメ映画『サイボーグ009』(66年)と『サイボーグ009 怪獣戦争』(67年)が、そしてモノクロのテレビアニメシリーズ1作目(68年)が制作。このアニメ化の放映終了以降も原作漫画の連載は継続されていた。
 しかし1970年、マニアックな漫画雑誌『COM(コム)』(虫プロ商事刊)にて、本来は「完結編」としてスタートした『神々との闘い編』が完結しないままに終了。以後は翌71年の『仮面ライダー』の放映・連載の開始とともに、作者の石森も他作品の執筆やテレビのアニメや特撮の企画に追われる日々が続いたからだろうが、『009』の明確な終章は遂に描かれることがなかった。


 だが、同作の根強いファンは実に多かった。映画やテレビアニメも再放送もあったことからか、切れ目なく原作漫画の単行本(サンデーコミックス・秋田書店刊)も重版されていた。しかし、全テレビ番組のカラー放送化がほぼ達成されたのに伴い、白黒テレビアニメ版の再放送も1973年くらいを境に消滅した。けれども、カラーでの制作であった劇場アニメ2作品は、夏休みや冬休みの午前中の定番作品としてテレビでの再放送を繰り返しており、『009』の知名度を後続世代にも高めていった。
 そんななか、「外伝」的な存在としての「続編」として、この75年度より『週刊少女コミック』(小学館刊)にて、『風の都編』『雪のカーニバル編』『エッダ(北欧神話)編』と順次掲載されることで、5年間もの空白を経(へ)ての復活を実現した。発表媒体が女子中高生向けの週刊漫画誌であったこともまた、同作には女性ファンが非常に多かったことの証左でもあるだろう(余談だが、この『風の都編』のサブタイトルは、はるか後年の『仮面ライダーW(ダブル)』(09年)の舞台・風都(ふうと)にも引用されている)。
 この予想を覆す復活に、多くの『009』ファンや石森ファンは喜んだ。以後は同作の単発の読み切り掲載が各誌で時折見られるようになった。



 さて、石森作品といった観点から、同時期の他作品への言及もしてきた。しかし、本来の石森に手による漫画版(本稿では「原作漫画版」と呼称させていただく)の『秘密戦隊ゴレンジャー』の検証に入ろう。


 まず、この原作漫画版こそが、石森ヒーローとしてのある意味での「究極像」に位置していたことを述べておきたい。


●『仮面ライダー』における、「変身するヒーロー」という要素
●『サイボーグ009』における、「素顔のままの集団ヒーロー」という要素


 その双方のミックスとして、「変身する集団ヒーロー」としての『ゴレンジャー』なる作品も誕生したのだ。言うなれば、生まれるべくして生まれた作品であったといえるだろう。


 本作での主人公たちの「変身」は、劇中で「転換(てんかん)」と称されている。「変身」では決してなかったことが、『仮面ライダー』の二番煎じではない、違ったヒーロー像を目指そうといった意思表示にも思える。


 そして、その原作漫画版は、小学館の『週刊少年サンデー』と『小学五年生』の「週刊誌」と「月刊誌」の2誌にまたがって連載されることとなった。だが、その両者の内容は当然別ものであった。なお、他の学年誌や児童誌では、石森プロに所属する他の漫画家たちの筆による『ゴレンジャー』のコミカライズが連載されていた。


*石森章太郎の漫画作品としての『秘密戦隊ゴレンジャー』の特色!


 物語の導入部はテレビシリーズとも同様であった。「イーグル」(原作では「EGL(イーグル)」の表記)の日本各地の各支部が「黒十字軍」の襲撃を受けてしまう。そして、その生き残ったメンバーが以後は「ゴレンジャー」として活躍するのだ。つまり、その基本設定には大差はないのだ。


 しかし、リーダーの海城剛(かいじょう つよし)・アカレンジャーの素性には大きな違いがあった。テレビ版では海城の兄もイーグル隊員だ。黒十字軍が使わした仮面怪人「黄金仮面」の襲撃を受けて負傷して、弟の胸の中で息絶えた。しかし、原作漫画版では海城の父親が少林寺拳法の道場を開いており、兄はいないといった違いがあった。


 突如、父親宛てに届いた小包。その中には「ゴレンジャースーツ」が入っていた。剛は父に言われるがままに、それを着用。門弟たちの猛功を見事にかわした。
 それはゴレンジャースーツのテストであったのだ。父はそれを元科学者の友人・江戸川権八(えどがわ ごんぱち)より依頼されていたのだ。そして、海城家に出入りしていた陽子は江戸川の部下でもあり、ゴレンジャーの隊員候補として彼を見守っていたのだ。


 その後、黒十字軍のドクロ仮面軍団長が、剛の父と門弟を殺害。剛は父の遺言にあったカレーハウスに出向いた。しかし、そこにはドクロ仮面軍団長と配下が待ち構えていた。だが突如、4人の仮面の戦士が登場! 剛は父の仇とばかりに素手でドクロ仮面の頂頭部に手刀を決めて、敵を倒した。
 そして、4人の若者とともに父の友人である江戸川権八に出会って、黒十字軍の存在を知る。そして、父の形見となったゴレンジャースーツを身にまとって、黒十字軍の暗躍から世界の平和を守るために戦うことを誓うのであった。


 なお、ここで記載した第1話の内容は、連載終了後の1977年に双葉社の「パワァコミックス」レーベルにて初単行本化された折、石森章太郎の筆による『週刊少年サンデー』版の第1話と『小学五年生』版の第1話を合体して再構成したもののあらすじである。


 同じく石森漫画の『サイボーグ009』の単行本での第1話が、


●『別冊少年キング』掲載分「サイボーグ戦士」のタイトルで描かれた001~008の誘拐編となる「プロローグ」
●『週刊少年キング』連載の第1話で描かれた、009の「誘拐編」


 その両者をミックスして、「誕生編」と題して編集し直したケースに似通ってもいる。また、原作漫画版の黒十字軍の素性は「死の商人」であったところからも、先輩格であった『サイボーグ009』における、同じく「死の商人」でもあった「黒い幽霊団」こと「ブラックゴースト」からのフィードバックであったことだろう。


*石森漫画版が『ひみつ戦隊ゴレンジャーごっこ』へ変貌! 単なるギャグ漫画!? メタフィクション!?


 そして、この原作漫画版『ゴレンジャー』の大きな特色は、シリーズの途中から突如として内容に大きな「路線変更」があったことだろう。前週までの黒十字軍との対決に終止符が打たれぬままに、登場人物が3頭身の今でいう「SD(エスディー スーパー・デフォルメ)体形」に代わってしまうのだ!
 そして、本物の「ゴレンジャー」にあこがれており、「ゴレンジャー」の「コスプレ」をした5人の少年少女を主人公とする、お色気ギャグ作品へと変貌を遂げたのであった。加えて、タイトルまでもが『ひみつ戦隊ゴレンジャーごっこ』と改題されてしまうのだ。ただし、初単行本化の際には、タイトルは『ごっこ』ではなく『秘密戦隊ゴレンジャー』のままであり、それまでの内容に続けて収録されていた。


 当時の少年漫画ギャグの定番とばかりに「パンチラ」や「スカートめくり」といった要素、さらにはヒロインの「オールヌード」と、石森のチーフ・アシスタント(助手)出身の永井豪(ながい ごう)の漫画『ハレンチ学園』(68~72年。70年にTVドラマ化)を想起させる描写が増える。特に紅一点のモモレンジャーがその餌食に遭うことが目印になった。


 さらに、『ごっこ』編の第3話からは、『がんばれ!! ロボコン』の主人公・ロボコンまでがレギュラーメンバーに加入する! テレビ版では実現しなかった夢の共演で、当時の東映・石森作品の2大特撮作品の両巨頭がジョイントする前代未聞のクロスオーバーものとなったのだ。


 とはいえ、ロボコンは実は『ゴレンジャー』原作漫画版にも「うそつきロボット」の回で、倉庫内のロボットの1体として登場していたこともあった。この時は特にセリフもなく、単なる楽屋落ち的な「モブ(その他大勢)キャラクター」の扱いではあった。もちろん、あとになって思えば、この処置に対する読者からの意表外な大反響などもあって、のちのレギュラー化への布石になった可能性を想定できなくもないのだが。


 ここに興味深い証言がある。『ゴレンジャー』や『仮面ライダー』の当時はエキスプロダクションにてキャラクター造形を担当していた、のちにレインンボー造型を立ち上げる前澤範(まえざわ のり)がこう語っていたのだ。



「番組がスタートする前に、石ノ森さんやプロデューサーを交えて話したんですけど、僕はコミカルでおもしろいものをつくろうよって話したことがあるんですよ。子供にね、舞台でしか観られないショーみたいなものを、テレビで魅せてあげよう、とね。」
(『怪獣とヒーローを創った男たち』(辰巳出版刊)2002年)



 原作者やプロデューサーが、スタッフの意見にも耳を傾けて、それらを取り入れていった様子がうかがえる発言だ。


 この『ゴレンジャーごっこ』は、奇(く)しくも翌76年に子ども向けキャラクター番組誌『テレビマガジン』(講談社刊)にて連載された石森原作の『宇宙鉄人キョーダイン』(76年)の漫画版(画・成井紀郎)にも影響を与えている。
 こちらの『キョーダイン』でも原作漫画版『ゴレンジャー』とも同様に、最初はシリアス路線でスタートしていた。しかし、途中からSD体型のギャグ路線に変更。その破壊的なギャグと悪役のゲスト怪人ロボット・ダダロイドたちの強烈なキャラクター性とが、いつしか主人公のキョーダイン以上の存在感を見せるようになっていた。世代人にとっては、石森章太郎が『月刊少年マガジン』に連載していた本家の原作漫画版以上の印象を与えている存在に昇格したのだ。


*石森ヒーローのネーミングの絶妙さ! 確信犯的での適度なB級感も交えた語感の強さ!


 ところで、石森作品の特徴とは「メインタイトル」と「ヒーローキャラクター」のネーミングの上手さだ。特に『人造人間キカイダー』(72年)や『イナズマン』(73年)などでも冴え渡っていた「日本語」と「英語」の組み合わせの妙や「語感」とのマッチングだ。


 本作『ゴレンジャー』でもそれが発揮されている。そのインパクトや「目印」としての覚えやすさが本作の特徴でもあった。メンバーの人数でもある“5”を“ファイブ”ではなく“ゴ”としてカタカナに置き換える。
 さらにそこに、現実世界でも「軍隊」「自衛隊」「救助隊」などの「レンジャー部隊」などで、体力・知力ともに優れたエキスパート隊員の通称的に扱われることから、ヒーローのネーミングとしても相応しい、この“レンジャー”を加えた。
 そして、「和製英語」的な力強い「語感」で、“ゴレンジャー”と命名したのだ。これ以上のネーミングはないだろう。


 「戦隊シリーズ」は、80年代には「○○マン」といったネーミングが多かった。しかし、1989年の『高速戦隊ターボレンジャー』、飛んで1992年の『恐竜戦隊ジュウレンジャー』以降は、この“レンジャー”と名の付く作品ばかりとなっていく。当時の一部の特撮マニア間では“レンジャー”はもう「死語」だとも揶揄されたのだが、そうではない。むしろ、「○○マン」よりもカッコいい! といったイメージのネーミングとして再生したのだ。もちろん、ひとえにこの元祖『ゴレンジャー』というビッグタイトルのインパクトとその記憶の再生ゆえだろう。



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*ピンクの頬の5人の戦士! レギュラー登場人物の顔ぶれ!


 テレビシリーズとしての、その作品の「目印」になるものは、なによりも登場人物である。


*アカレンジャー・海城剛=誠直也


 主人公・アカレンジャー・海城剛(かいじょう つよし)役には、当初は有名俳優・丹波哲郎(たんば てつろう)の子息・丹波義隆(たんば よしたか)が候補に上がっていたそうだ。しかし、本人がまだ俳優を始めたばかりであったので辞退をしてしまう(*8)。
 そして、円谷プロの特撮巨大ヒーロー番組『ファイヤーマン』(73年)での主演経験もあった誠直也(まこと なおや)に決まった。


 なお、丹波は当時はNHKテレビ小説『水色の時』(75年)に出演。そして実父・丹波哲郎が主演する1975年版のテレビ時代劇『鬼平犯科帳』(75年)での親子共演を経て、その2年後に本作の後番組にして、後年でいうところのスーパー戦隊シリーズ第2作『ジャッカー電撃隊』(77年)にて主役の座を射止めるのであった。


 この70年代当時は「長髪」が若者男性のヘアスタイルのトレンド・流行でカッコいいものとされていた(子ども間では、当時の彼らの両親世代の価値観もあって、「長髪」の男児の存在は少なかったが)。それだけに、誠の「五分刈り」のヘアスタイルとしての主人公青年は、当初は当時の子どもたちでさえも異色に思えていた。
 副主人公のアオレンジャー役の宮内洋が、『仮面ライダーV3(ブイスリー)』(73年)で主演した際には、撮影開始当初に別の映画での撮影のために髪を短く刈っていたヘアスタイルを隠すため、長髪のかつらを着用していたケースもあったくらいなのだ。短髪のままだったアカレンジャーこと海城剛のルックスは、ビジュアル的には非常に珍しい印象を与えていたのだ。


 もちろん、すぐに慣れてアカレンジャーこと海城のことをカッコいいと思うようにはなるのだが。しかし、そういったこともあったせいか、途中から誠が髪を伸ばし始めたことも、個人的には印象的であった。
 ところで、原作漫画版での海城の長髪のイメージとのギャップも大きかった。しかし、その短髪がかえって、海城の男っぽさや、今の草食系男子には見られない昭和の男性の男っぽさを色濃く発揮もできていたのだ。
 シリーズ途中からはやや長髪にはなっても、男っぽくて渋みのあったナイスガイの海城。今でも元祖戦隊レッドの頂点に位置する存在感を示している。


 なお、『ゴレンジャー』が2年間ものロングラン放映を終了したあとに、誠は人気刑事ドラマ『特捜最前線』(77~87年)にも刑事役としてレギュラー出演を果たして、ここでもその名を上げていく。しかし、この時には再び元の短髪に戻していた。


*アオレンジャー・新命明=宮内洋


 アオレンジャー・新命明(しんめい あきら)は、『仮面ライダーV3』の主人公・風見志郎(かさみ しろう)役で、すでに児童間の知名度は抜群であった宮内洋(みやうち ひろし)が演じた。


 本人の回想では、当時は人気テレビドラマ『刑事くん』(74~75年 3作目)と、渥美清(あつみ きよし)主演で山田太一(やまだ たいち)脚本のTBSのテレビドラマ『ヨイショ』(74年)との掛け持ちであったと語っている。それに加えて、『ゴレンジャー』のレギュラー出演も抱えることになったのだ。


 当初はアオレンジャーではなくアカレンジャー役が宮内の予定であったと本人は語っている(『京本政樹のヒーロー考証学』(バンダイ刊)1992年)。しかし、前述のように他作品との掛け持ちをしている以上は、出番の多いリーダー・アカレンジャー役は無理であった。


 それで、副主人公のアオレンジャー役となったのだが、宮内はリーダーの下につくようなキャラクターには難色を示した。そこで原作者の石森章太郎のところに向かうが、その席で石森は、アオレンジャーのシフトを「宮本武蔵に対する佐々木小次郎」の比喩を使って、2大隊長にしてアオレンジャーはクールな“一匹狼”的な存在であると説明することになった。


 それゆえに、スケジュール調整の難しさを回避する処置もとられた。シナリオでも新命明のシーンを着ぐるみのアオレンジャーに変更した回や、画面に素顔の宮内が登場しない回に、同じくシナリオでは本来は「新命編」として描かれていたものを他のメンバーに変更する処置を行い、トータルでは全84話への出演を成し遂げる。ゴレンジャーは「5人揃ってゴレンジャー」だから、全員揃わないと意味がないといったこともあっただろう。


 宮内は当時のTBSの人気ドラマ『刑事くん』にも並行して出演していた。『ゴレンジャー』と『刑事くん』は、竹本弘一(たけもと こういち)が監督を務めていた共通点でも興味深い。竹本も同作品との掛け持ちでスケジュールがタイトであったからこそ、この状況を察知でき、こうした処置がスムーズに行ったのかとも推測する。


 このクールな一匹狼キャラクターは、「戦隊シリーズ」の「ブルー」のキャラクターの定例的な位置づけになった。以後のシリーズでも、「ブルー」は「クールガイ」といった設定を用いるシリーズが時折見られる。
 だが、同じ「ブルー」であっても、『電子戦隊デンジマン』(80年)のデンジブルーといったコミカルな性格のブルーや、『光戦隊マスクマン』(87年)のブルーマスクといった子どもっぽい最年少ブルー、『超獣戦隊ライブマン』(88年)のブルードルフィン以後の女性ブルー戦士の増加など、実際には時代の変貌とともにブルー戦士のバリエーションは広がっている。


 それでも、「戦隊」の「ブルー」=「クールガイ」といった世間での認知度は高い。それはやはり、宮内洋といった俳優の個性を活かしたアオレンジャーの存在と、そのインパクトが強かったからだろう。そしてなにより「暖色」系の色より「寒色」系の「ブルー」にすることよって、その性格をビジュアルでも強調することに成功したからだろう。


 クールな一匹狼としてのアオレンジャーの設定は、以前に演じた『仮面ライダーV3』の主人公・風見志郎以上に宮内洋の個性を強調していた。しかし、クールな一匹狼としての性格設定だけにはとどまらない。それと同時に、彼の“相棒”的な存在のキレンジャーとのコンビネーションで、相対するユーモラスなやり取りも見せていた。「クール」なだけの性格には終わらない、明るく「コミカル」な面もまた、その両方が「個性」として表現されることになったことも忘れてはならないのだ。
 そのコミカルで軽妙でもある演技を、今までの「キザさ」と「強さ」の演技とも併せ持って表現していく。本作に続いて宮内が演じた東映特撮ヒーロー『快傑ズバット』(77年)の主人公・早川健(はやかわ けん)のキャラクター設定のプロトタイプ的な裏打ちにもなっており、宮内はさらに大きな飛躍を見せていった。


 なお、当時の『週刊TVガイド』1975年3月15日号でも、『ゴレンジャー』開始についての記事が掲載されていた。そこでは本来の主役である誠直也の名はなく、宮内洋の名の方を引き合いに出していた。



「看板番組の“仮面ライダーシリーズ”をTBSに持っていかれたNETが、かつてのライダー宮内洋を起用して対抗。」



 といった書き出しで始まっている点に、本作で宮内が再度ヒーロー役で出演することを、対外的な「セールスポイント」として打ち出していたことが明白になる。
 そしてこのキャスティングは、なによりも当時の児童にとっては、『ゴレンジャー』とは「ファイヤーマン」と「仮面ライダーV3」の2大ヒーローが共演する番組としての認識を与えることとなった。


*キレンジャー・大岩大太=畠山麦


 3人目のゴレンジャーことキレンジャーは、九州男児という設定だ。怪力戦士の豪傑的なシフトを担った。
 本作が有する「ギャグメーカーもヒーローになれる」といった要素には、ヒーローはハンサムな二枚目だけがなれるものではない、といった思想が伺える。戦隊のメンバー全員が美男美女になることが多くなってしまった80年代中盤以降とでは、時代の違いを確実に物語っているのだ。


 とはいえ、石森原作の『サイボーグ009』でも、ギャグメーカーの「006」と「007」といったメンバーが物語に彩(いろど)りを与えていたことは周知のとおりだ。その系列に属するギャグメーカーが、このキレンジャー・大岩大太(おおいわ だいた)だったのだ。
 演じた畠山麦(はたけやま ばく)は、先に東映制作の『柔道一直線』(69年)と『どっこい大作』(73年)にも助演。東映のテレビドラマではおなじみの俳優であった。


 ちなみに、このキャスティングは石森プロの漫画家で、『仮面ライダー』のコミカライズも担当していた、すがやみつるの尽力が大きいようだ。当時、すがやの従兄弟が芸能プロダクションのマネージャーを務めていたことから、すがやはプライベートで実は畠山と親しく付き合っていたのだそうだ。石森プロで『ゴレンジャー』の企画についての場に遭遇して、キレンジャーの設定を知って、すがやが石森たちに畠山をさりげなく推薦したところで、事が進んだそうだ。


 大食漢の力自慢的なヒーローは、カッコよくはなかったとはいえ、当時の児童層からも明るく親しみやすいイメージで大好評を博した。コミカルな側面も打ち出していた本作には、うってつけのキャラクターに位置していたのだ。
 そして、好物が子どもはもとより大人にも人気のあるカレーライスというあたりが大きな特徴だ。原作漫画版でもこのカレー好きのキャラクターが通されていた。はるかに飛んで21世紀に入ってからだが、永谷園よりこの『キレンジャー カレー 中辛ポーク』(06年)がレトルト形式で発売されてしまうくらいの浸透度を、後年でも誇っているのだ。


 彼は誰からも愛されるキャラクターであり、年上からも年下からも「大ちゃん」の愛称で呼ばれて、ユニークな九州弁で明るさを振りまいていた。そのうちに、新命明とのやりとりも、新命が大岩に合わせるように定型化する。


新命「大ちゃん」
大岩「あいな」
新命「まいりましょう」
大岩「まいりましょう」
新命「バリブルーン発進! GO!」


 このやりとりはアドリブであったらしい。しかし、いつしか台本にも記載されるようになった。畠山のキャラクターに合わせた宮内のアドリブがまた、作品の「名物」へと成長した実情を物語っているのだ。多人数で作り上げていく映像作品とは、こうした思いもかけない些細(ささい)なことでも効果を上げて、ヒットの要素を築いていくのだ。


 だが、その明るいキャラクターとは裏腹に、私生活では苦労があったのか、後年に畠山は東映制作の名作刑事ドラマ『特捜最前線』(77年)第71話にタクシーの運転士役にてゲスト出演したものの、その撮影中の1978年7月13日に自宅で34歳の若さで首吊り自殺といった最期(さいご)を迎えている。自殺した理由は年収が百万円にも満たない生活苦や役者としての伸び悩み、キレンジャーのイメージの払拭の失敗などが原因だと言われている。
 この死は当時は報道されずに、死後3年を経過して、フジテレビ系の関西テレビのプロデューサー・内海佑治による「くちこみ 無名戦士」といったコラムが、「朝日新聞」1981年5月22日夕刊に掲載されたことで、ようやく明らかにされた。なお、こちらでは死因はガス自殺と記述されている。「最近、見かけないな」と思っていた俳優が大衆には知られずに淋しく息を引き取っていた様は、この記事を読んだ世代人たちには衝撃を与えたことだろう。ちなみに、『特捜』で畠山の代役は、粟津號(あわづ ごう)が務めた。


*モモレンジャー・ペギー松山=小牧りさ


 モモレンジャー・ペギー松山役には、1972年のミス・エールフランス(*9)で準ミスの栄冠を勝ち取り、その後にやはり東映制作の名作刑事ドラマ『非情のライセンス』(73年)で活躍していた小牧りさが配役される。
 だが、このモモレンジャーについての記述を進めるうえで、歴史を変える大トリビアの存在について言及しなければならない。時は2010年秋、中央大学の学園祭にて、本作プロデューサーの吉川進と、彼の東映での後輩であった元東映プロデューサー・高寺成紀(たかてら しげのり)とのトークショーが開催された。吉川がその席で、


「モモレンジャーのキャスティングはあの竹下景子で内定しており、本人もやる気だったが当時、竹下が契約していたお菓子のスポンサー会社が番組のスポンサーとは別会社であったため、その話が流れた」


といった秘話を披露したのだ。ちなみに竹下は、上原正三も脚本を手がけたTBSの学園テレビドラマ『若い! 先生』(74年)第4話「ふたりだけの道どこまでも」にて、『ゴレンジャー』のレギュラーキャラでもあるイーグル諜報部員と同じ名前の加藤陽子の役名で出演していた。単なる偶然ではあるが、本作を語るうえでは面白いトリビアであろう。


 スタイル抜群で見事な「脚線美」を誇った彼女の御御足(おみあし)が見せる「ハイキック」により、本作の持ち味でもあった少々のさわやかなお色気要素も増強されていた(オーディションでも見せたこの「ハイキック」が、抜擢の決定打にもなったとか)。それこそ東映が『プレイガール』(69~76年)で確立した“女性のお色気とアクション”が醸し出す“美”、そして“エロス”が、子どもといっしょに見ている父親層をも惹(ひ)きつけたに違いない。
 モモレンジャーの“モモ”は「桃色」の意味だけでなく、「太もも」のモモでもあったことは、東映側の名プロデューサー・渡邊亮徳も物語っていた(『日本ヒーローは世界を制す」』角川書店))。



 「脚線美」は当然だが、彼女の「ヘアスタイル」と「顔立ち」が打ち出す“純和風美人”的なルックスも魅力のひとつであろう。前髪で隠すことのない「額」の美しさとのコントラストが織り成す、飾り気のない「ストレートな長髪の黒髪」の美しさは、茶髪や金髪が一般化した今だからこそ、なおさら和風美人のテイストを有する小牧りさの美しさを際立てている。
 そして、あの「頬」。ふっくらとした女性らしい柔らかみあふれる「顔立ち」。あの顔立ちがシャープで鋭角的なマスクなら、小牧の魅力はこれほどのものにならなかったことだろう。
 多くの女性はシャープでスリムな顔立ちにあこがれ、ふっくら=太め=デブ的な三段論法的に、まるみのある顔立ちを嫌がるケースが多い。しかし、男性はそうした柔らかみと包容力のある顔立ちの女性にあこがれる者が多い。むかしの女性の典型的な美人顔だったこともまた、彼女の人気の一因だとも思える。


 彼女はその美貌で子ども以外にも人気が高かった。『ゴレンジャー』放映中の、『格闘技世界一決定戦 アントニオ猪木対モハメド・アリ戦』(1976年6月26日。日本武道館)でも、当時の人気アイドル・山本由香里とともにモハメド・アリへの花束贈呈のプレゼンターや、TBS系の番組『輝け!! 新人紅白歌合戦』(76年)での紅組キャプテンとしての登場もあった。


*ミドレンジャー・明日香健二=伊藤幸雄


 ミドレンジャー・明日香健二(あすか けんじ)役には、前年74年に石森章太郎が監督を務めた映画『フィンガー5(ファイブ)の大冒険』(74年)に、畠山麦とともに出演していた岸昭彦が一度は決定。ファーストプレビューとなる新宿公園前の撮影会にも顔を見せていた。しかし、実際には『ウルトラマンレオ』(74年)の野村猛(のむら たけし)役でレギュラー出演していた伊藤幸雄(いとう ゆきお)に変わった。なぜ岸昭彦でなく、伊藤幸雄になったのだろうか?


 当然、理由があった。ここで思い出したむかし話を記載したい。それは『仮面ライダーX(エックス)』(74年)の主演俳優・速水亮(はやみ りょう)が、過去(2001年頃)にイベントで語っていたことだ。その席にて「友人にゴレンジャーの初代がいて、彼は撮影初日で十数針も縫うほどの大怪我をして番組を降りた」といった内容の秘話が、観客に披露されたことがあったのだ。
 そこでは俳優名の紹介こそなかったが、おそらく岸昭彦のことを指しているのだとも思われる。ちなみに、速水は岸とは本名での付き合いであったようで、岸昭彦の芸名を知らなかったようであった。
 実際、伊藤幸雄の起用も急であったようだ。本人のブログにて公開された当時の秘話では、いきなり吉川進プロデューサーに呼び出されて、翌日より撮影に入ったとのことらしい。


 それを裏付けるのが、書籍に掲載された竹本弘一監督のインタビューコメントである。



「ゴレンジャーは、第一話の撮影中にちょっとしたアクシデントがあったんですよ。ミドレンジャーの明日香健二役は当初、岸昭彦さんという方が演じたのですが、半分くらい撮り終えたところで、急遽伊藤(幸雄)君に代わったんですよ。」
(『秘密戦隊ゴレンジャー大全集』(講談社刊)1988年)



 先の速水の話も、この竹本の回想ともシンクロしてくる。竹本が話す「ちょっとしたアクシデント」が、速水の語る大怪我のことだろう。


 原作漫画版の明日香健二は最年少の末っ子的な存在で、ルックスとビジュアルは美少年ではなく、ギャグメーカーに近い色合いを有していた。


 しかし、テレビシリーズでは最年少(第4話の劇中でも17歳で、最年少だと語られる)といった年齢設定はそのままに、コミックリリーフではなく精神的な面や戦力・知能的にも発展途上の未熟な戦士としての描写が見られて、女性ファンからは母性本能をくすぐられるようなシフトのキャラクターを打ち出す。
 本作の脚本家・上原正三が、メインライターを務めた『帰ってきたウルトラマン』(71年)の主人公・郷秀樹(演・団時朗)や『宇宙刑事シャイダー』(84年)の主人公・沢村大(演・円谷浩)にも通じる性格設定だとの印象も受ける。


 また、原作漫画版ではイーグル関西支部隊員だということで、関西弁のキャラクターで描写されていた。しかし、テレビ版では標準語で会話をすることもあってか、第1話の関西支部襲撃シーンがなければ、彼が関西人であることには気付けない。



 本作では変身ヒーローが5人も登場。しかも、チームの隊員全員が変身する能力を得たことも、大きなセールスポイントとなっていた。これは見方を変えると、まさに「ウルトラマン」シリーズの防衛チームの隊員たち全員が変身能力を持つことに等しいといった比喩を使えばよいのかもしれない。それだけ豪華で各人が破格の扱いをされているように見えたのだ。
 後年のように、「複数の若者が変身する集団ヒーローもの」が「当たりまえ」になってしまった時代とは違って、レギュラーメンバーの隊員全員が変身できるといった、そういった前例の実写特撮作品などが少なかった時代だけに、そのインパクトは非常に大きかったのだ。


*コマンダー・江戸川権八総司令=高原駿雄


 ゴレンジャーを指揮するコマンダー・江戸川権八総司令役は、日本のテレビ草創期の大人気ドラマ『日真名氏飛び出す(ひまなし とびだす)』(55~62年)で主人公・日真名進介(演・久松保夫)の相棒・泡手大介役を演じたベテラン・高原駿雄(たかはら としお)が配役された。かの演劇集団「青年座」を立ち上げた高原には珍しい、キャラクター性の強い作品へのレギュラー出演となった。
 大ベテランだけあって、人の良さそうな「スナックのマスター」と、実は「切れ者でもある総司令」の二面性のある役を好演している。ある意味、この両面の使い分けも“変身”、いや“転換”だったといえるだろう。


 総司令がマスターを務めるスナック・ゴンの「ゴン」は、権八の「ゴン」でもあった。この店舗がゴレンジャーの本拠地「ゴレンジャールーム」への出入口ともなっていたのだ。これは往年の円谷プロ制作の空飛ぶ戦艦を描いたテレビ特撮『マイティジャック』(68年)にて、マイティジャック秘密基地への入口が地図屋・ガリレーであって、そこからシークレットロードで秘密基地にアクセスしていた形式に近いものを感じさせる。
 本作の脚本家・上原正三は円谷プロ文芸部時代、『マイティジャック』シリーズのシナリオは1本も手掛けてはいなかった。しかし、当時の学年誌掲載分の漫画の脚色は担当していたようなので、いつしかその要素がフィードバックされていた可能性も考察できるだろう。


*イーグル諜報部員・加藤陽子=鹿沼えり


 イーグル諜報部員・007(ゼロゼロセブン)こと加藤陽子役には、特撮マニアにはおなじみの鹿沼えりが起用されている。彼女は女子バレーボールを題材としたスポ根(スポーツ根性)もの『(新)サインはV(ブイ)』(73年)で知られている。他には、『快傑ライオン丸』(72年)・『電人ザボーガー』(74年)・『イナズマンF(フラッシュ)』(74年)などの特撮作品への客演でも、特撮マニア諸氏には知られている、特撮作品でのゲスト出演は多かったが、レギュラーとしての出演はこの『ゴレンジャー』が唯一であった。


 彼女は変身こそしなかったが、原作漫画版にも登場している。彼女にかぎらず、こうしたイーグルの諜報部員たちの存在が、「スパイアクション」ものとしての要素も多大にあった『ゴレンジャー』という作品を、組織の層の厚さ・リアリティー・情報入手や伝達といった作劇の面でも下支えていく「隠し味」としても物語を牽引していたのだ。事実、彼女はシリーズ後半では、通常はゴレンジャーたちが操縦していた特殊戦車「バリタンク」の操縦者(!)として、ゴレンジャーの窮地に助けに入ってくる活動も増えるのだ。こうした処置もまた、彼女の存在を際立ててもいたのだ。


*加藤陽子の弟・加藤太郎少年=小沼宏之


 その加藤陽子の弟・加藤太郎少年役は、小沼宏之が演じていた。そして、初代『ウルトラマン』におけるホシノ・イサム少年(演・津沢彰秀)、『帰ってきたウルトラマン』でいう坂田次郎少年(演・川口秀樹)に比肩する存在感を誇示していた。メインターゲットである児童層の視聴者との接点的な役柄を受け持ったのだ。ちなみに、太郎は原作漫画版には登場しない。テレビ版でのオリジナルキャラクターであった。


 この太郎とキレンジャー・大岩大太の「なぞなぞ」のやりとりも当時の子どもたちには印象的であった。原作漫画版でも「なぞなぞ」が劇中で使用されるコンセプトは踏襲されていた。1970年前後~中盤にかけての当時は、子どもたちの間で「なぞなぞ」が大流行していたからだ。
 そして、脚本家の上原正三の弁によると、これは『柔道一直線』での主人公・一条直也(演・桜木健一)と高原三平(演・藤江喜幸 現・伍代参平)との「なぞなぞ」のやりとりに起因するものでもあったとのことだ(『秘密戦隊ゴレンジャー大全集』)。


 ちなみに、『柔道』での「なぞなぞ」は、梶原一騎(かじわら いっき)の原作漫画版にあったものではない。テレビドラマ化に際して導入されたものであった。もとは同作のメインライター・佐々木守が、テレビ化に際して主人公の弟分であるヒロインの弟とのコミュニケーションを、テレビシリーズ特有の面白さ、そして児童を惹きつける要素として付加したのだと思われる。しかし、この「なぞなぞ」が後年に意外な方面で開花することになったのだ。


*ゴレンジャーの大規模戦力! 東映特撮ヒーロー史上初の公的組織による大型飛行メカ!


 ゴレンジャーが搭乗する各種マシン類の魅力も忘れてはならない。ゴレンジャーのマシンは「オートバイ」と「飛行機」が基本であった。これはまるでひとつの番組に、サイクロン号(『仮面ライダー』のオートバイ)とジェットビートル(『ウルトラマン』の科学特捜隊の戦闘機)が、同時に登場するくらいの豪華さを印象づけていた。そのメカニックは「合金製トイ」や「プラモデル」などでも商品化されて、作品の人気アイテムとしても君臨する。


 特に大型飛行機型メカの「バリブルーン」、その後継機の「バリドリーン」の印象が、世代人や特撮マニアには強いことだろう。東映特撮としては、こうした飛行機メカニックは宇宙SF『キャプテンウルトラ』(67年)のシュピーゲル号くらいしかなかった。その後の空飛ぶメカといえば、『ロボット刑事』(73年)のジョーカーと『イナズマン』のライジンゴーといった「空を飛ぶ自動車」が登場した程度で、「大型飛行機」的な存在はほとんどなかったからだ。だから、これは革命的でもあったのだ。


 これを契機に東映特撮テレビ作品に、等身大ヒーローが飛行機メカを操縦するケースが急増することもまた、本作のポイントになっている。自力で空を飛べない我々人間たちには、空を飛べる飛行機といったものへのあこがれが、やはり本能にも近い根源的な次元で存在するからだろう。


 そして、ゴレンジャーの乗用するオートバイをも収納できりることから、ゴレンジャーの空飛ぶ「空母」としての存在感をも示す大空の戦力にもなっていた。
 加えて、新宿駅西口の円筒型の格納庫から浮上してくる発進シーンもまた魅惑的であった。


*ゴレンジャーのオートバイ! ベース車種! 日本のオートバイ史とも連動!


 仮面ライダー同様に、オートバイもまたゴレンジャーたちの足となることもまたポイントであった。本作に登場する「レッドマシーン」「ブルーマシーン」「グリーンマシーン」の3台のことだ。


 このマシンのベース車種にも、日本のオートバイの歴史を語るうえでの重要なトリビアが存在する。


●「レッドマシーン」のベース車種は、スズキGT750
●「ブルーマシーン」「グリーンマシーン」は、スズキGT380


 実はこの当時の若者たちにも熱い視線で迎えられていた名車なのだ。この時期の他社に先駆けて、多くの新機能を搭載していたマシンでもあった。


 アカレンジャーの愛車「レッドマシーン」のベースとなったスズキGT750について、こうしたテレビ番組での使用例を挙げていこう。


 まず、国際放映と日本テレビによって映像化されたアクションテレビドラマ『ワイルド7(セブン)』(72年)での登場が有名だ。同作の原作漫画では、作者の望月三起也(もちづき みきや)がバイクマニアだったことも手伝って、ホンダCB750K0・ドカッディ・ハーレーダビッドソン・ヤマハDT250などの世界の名車が活躍していた。このテレビ版では、鈴木自動車の提供により、当時のスズキのフラグシップマシン・GT750が使用されていた。
 あの原作漫画のイメージを実際にも再現した、白バイ部隊のように革ジャンをまとった制服コスチュームで、7人のメンバーがGT750を乗り回すビジュアルは、原作との違いはあったものの、実写映像ゆえの質感・重量感で観るものを魅了するインパクトにあふれてもいた。世代人の中には、実写テレビドラマ版『ワイルド7』にあこがれて、長じてからGT750を購入して搭乗したユーザーもいたほどであった。


 続いて、『仮面ライダーV3』の主人公・風見志郎がこのバイクにまたがった。風見志郎がその両手をハンドルから離して、走行しながら変身ポーズを披露するパフォーマンスも印象的であった。当時の子どもの間では、この「両手離し変身」を自転車で真似をすることが流行った。これができないと、「ライダーごっこ」の中でのV3役ができなかったというくらいの世代人限定の共通逸話が存在したくらいのバリューを有していたのだ。


 『V3』より半年少々が経(た)ってスタートした、ピー・プロダクション制作のテレビ特撮作品『鉄人タイガーセブン』(73年)の主人公・滝川剛(たきがわ ごう)(演・南城竜也)がふだん乗用するバイクも、GT750であった。


 このGT750の特色は、当時の日本はおろか世界的にもバイクでは珍しかった「水冷システム」(エンジンをタンクの水で冷却するシステム)を他社に先駆けて採用し、その証でもある露出した「ラジェータータンク」(冷却水の貯蔵タンク)が見せる重量感あふれるスタイリングだ。別名「水牛」(ウォーターバッファロー)とも呼ばれて、今なお魅了されているファンは多い。
 この昭和40年代(1965~1974年)の「750(ナナハン。750ccのオートバイの通称)ブーム」は、海外輸出を前提に本田技研が発売していたCB750のヒットに由来する。これによって、日本にも「750旋風」が巻き起こった。同時期に並行していた日本各地の「高速道路」の開通による「ハイウェイ」の普及もまた、日本での「大型自動二輪」の開発を後押ししていたのだろう。


 1975年当時の日本の「二輪」大手4社で、代表車種を俯瞰(ふかん)すると、


●本田のCB750
●川崎重工業の750RS(別名・ZⅡ(ゼッツー))
●川崎重工業のSS750――『人造人間キカイダー』のライバル・ハカイダーの愛車「白いカラス」のベース車――
●ヤマハ発動機のTX750
●スズキGT750


 以上が時代のなかで競い合った好敵手であった。


 GT750の弟分・GT380も有名なマシンだ。特撮ファンなら何よりも、『仮面ライダー』が放映2年目の1972年4月からの「新1号編」に突入してから少しが経って、主人公青年・本郷猛(ほんごう たけし 演・藤岡弘、)が変身前に搭乗していたバイクが変わったことに気づいた人もいるだろう。


 最初は撮影所で購入したホンダSL350を使用していた。しかし、第2~4クールの「2号編」の後半からスズキ自動車が番組人気の急上昇とともに、車輌提供で番組をサポートすることとなった。そこで1971年当時の鈴木の最大排気量車種のスズキT500が使用された。


 しかし、同社が当時発売していた「Tシリーズ」の後継者となるべき「GTシリーズ」の代表選手・GT750を同年9月に発表。続けて、弟分であるGT380の登場となったのだ。「Tシリーズ」が「GTシリーズ」にモデルチェンジを行うとともに、『仮面ライダー』シリーズにもこのGTシリーズの看板マシン・GT380が登場することになったのだ。
 「空冷三気筒」のシステムに、エンジンの冷却効果を高めるためにエンジン上部に装着した「エアガイド」、別名「ラムエアカバー」のビジュアルと、エンジンから排出されるガスの「排気管」。3本あるうちの真ん中の排気管を途中から2股に分けて、左右2本ずつの排気菅で排出。
 まさにサイクロン号の複数本の排気菅にも通ずるデザイン・コンセプトの斬新さも手伝って、人気車種でもあったのだ。『仮面ライダー』シリーズでは1作目の「新1号編」と、『仮面ライダーストロンガー』でも活躍した、この名車がこのGT380(*10)なのであった。


 3台のこのマシンは、前述のようにベース車種とエンジンスペックに違いが生じている。GT750が単体のオートバイ、GT380がサイドカーなのだ。
 そして、リーダーのアカレンジャーが駆るGT750を中心に、アオレンジャーとミドレンジャーの駆るGT380のサイドカーが両脇を支えるように並列走行するOP(オープニング)主題歌での映像や、番組の各話でのラストシーンでの描写も実に印象的だった。なにげなくメンバー内の階級分けとマシンの排気量、そして走行スタイルのビジュアルまでもが確立されており、白バイ部隊の並走のようなインパクトを与えてもいた。


 このオートバイ関連の「提供」についての詳細が気になるバイクマニアもいるだろう。当時の制作担当だった伊東暉雄の弁では、一応は借りているかたちになっているということであった。しかし撮影が終わったら、もう酷使されて使いものにはならなくなっているために、タイアップというかたちで提供してもらっていたということだ。なお、「カウリング」や「装甲」は、ヒーローたちのコスチューム同様に、エキスプロダクションの制作であった。


 余談だが、鈴木自動車は当時、『仮面ライダー』のオートバイ「サイクロン号」をイメージしたスタイルで子どもたちに人気を博していたブリジストン社の「ドレミ自転車」に対抗して、ゴレンジャーの「レッドマシーン」風のカウルを装着した子ども向けの自転車「スズキ・ゴレンジャー」を発売もしていた。


*「仮面怪人」! シリーズ初期は、無機質・硬質・無表情なミステリ怪人!


 敵対する組織・黒十字軍の方にもスポットを当ててみたい。


 ゴレンジャーの宿敵・黒十字軍は、「黒十字総統」が支配する改造人間による組織であった。人類に代わって、この地球を征服する目的のために「仮面怪人」を送り込むかたちで暗躍するのだ。


 「黒十字総統」は、銀色の頭巾状の覆面で顔を隠しており、その素顔は構成員たちも知らない。その正体は何者なのか? といった視聴者の疑問を抱かせてもいるのだ。『仮面ライダー』シリーズの敵幹部たちのように、怪人に変身する展開を期待した子どもたちも多かった。しかし、シリーズが進むにつれて、それは実に意外なかたちでの正体明かしとなっていくのだ。


 放映序盤の「仮面怪人」は、「黄金仮面」「武者仮面」「青銅仮面」「ヒスイ仮面」「毒ガス仮面」の5人が代表的だ。彼らは第1話の冒頭で、日本各地区のイーグル支部を壊滅させていた。ゴレンジャーのメンバーそれぞれの宿敵でもあり、仇(かたき)でもあったのだ。
 彼らはシリーズの前半のED(エンディング)主題歌の映像にも登場しており、因縁の対決といわんばかりにゴレンジャーとの決戦を繰り広げてもいる。その戦いを1990年代後半以降に再開発される前の、今とは別世界の「お台場ベイエリア」で展開していたのだ。よって、シリーズを通しての彼ら初期「仮面怪人」5人の認知度は高い。
 それだけではなく、これまでは動物型の敵怪人の多かった東映特撮ヒーロー作品のなかで、新たなるイメージの怪人を作ろうとする意欲を感じ取ることのできるビジュアルでもあった。


 トップバッターの「黄金仮面」は、推理小説家・江戸川乱歩の名作古典『黄金仮面』(1930年)からのフィードバックやオマージュも当然あっただろう。シンプルなデザインの仮面の戦士・ゴレンジャーに対抗する初戦の相手としては、こちらもシンプルかつ「金色」単色のカラーリングのマスクは、原色を中心に構成されたゴレンジャーとは対極を成すビジュアルを色濃く呈しており、新時代のバトルフィールドをも映像的に構築していた。


 その次は「武者仮面」だ。日本の「侍」(さむらい)が着用する鎧(よろい)や兜(かぶと)をベースにしたスタイルだ。続いて、「青銅仮面」「ヒスイ仮面」と「鉱物」モチーフ路線を提示したのかと思いきや……。


 その後に登場した「毒ガス仮面」は、「ガスマスク」のビジュアルで「毒ガス」といった実体のない「気体」を紐付けてのビジュアル化であった。
 往年の人気ロックバンド・ビートルズのアルバム『サージェント・ペパーズ・ロンリーハーツ・クラブバンド』(67年)のジャケットでの衣装や、1960年代後半に日本の若者間で流行った「グループサウンズ」のグループのファッションでもあった、イギリスの「ミリタリールック」を想起させる「赤い衣装の軍服」でもあり、「黒十字軍」の“軍”といった要素も強調していた。以降は、


●同1975年度の石森漫画『鉄面探偵ゲン』(『週刊少年マガジン』(講談社刊)連載)のイメージがダブってもくる「鉄輪仮面」(てつりんかめん)
●「三日月」にそのまま目と鼻と口が付いて、まるで花王石鹸(かおう せっけん)のCI(コーポレート アイデンティティ)を思わせる「三日月仮面」
●「魔法使い」をそのまま「仮面怪人」にした「魔女仮面」


 などが登場。次回のモチーフが何になるのか? 何をコンセプトにするのか? それがわからないほどの振り幅を見せていた。



 「舟耳仮面」「翼仮面」「角(つの)仮面」「黒髪仮面」などは、東映特撮変身ヒーローの『超人バロム・1(ワン)』(72年)のシリーズ後半に登場した「人体怪人」的なテイストも部分的には有していた。
 しかし、そのままでもなく、そもそもの「仮面怪人」としてのコンセプトもあってだろう。『バロム・1』怪人の「生物的なイメージ」とは違って、「無機物的なイメージ」でリファインしたことから、対称的なビジュアルを提示していた。「仮面」というメインモチーフが持っている「硬質」な要素や「無機質」な要素を押し出して、新時代の“怪人”のスタイルを模索していたのだろう。「仮面怪人」は、まさに先輩格の『仮面ライダー』怪人たちへの挑戦でもあったのだ。


*幹部としての「仮面怪人」! 「日輪仮面」と「鉄人仮面テムジン将軍」!


 『ゴレンジャー』もシリーズ当初は、中間管理職としての敵幹部は存在せずに、首領の黒十字総統が自ら指揮を執っていた。思えば、『仮面ライダー』第1作目でも最初の半年間は、「首領」の命を怪人が直々に受けて暗躍する形式であった。
 そんな黒十字軍にも、第2クールの第15話から幹部がついに登場した。その名は「日輪仮面」! それは、『仮面ライダー』シリーズの敵幹部に見られるような、演じているベテラン俳優たちの素顔を前面に押し出して、演者の個性と人間味を強調していたスタイルとは対照的なインパクトを与えることになった。
 20世紀後半の日本の高名な芸術家・岡本太郎のようなアートセンスを示した「太陽のマスク」は、“仮面”で構成されている悪の組織の図式をより強調してもいた。


 だが、この映像的なインパクトも強かった「日輪仮面」は、予想以上に退場が早かった。全部で6話分の登場しかなく、第20話にてアカレンジャーとの一騎打ちに敗れて、実に印象的な最期を迎えている。


 その「日輪仮面」のあとを受けて、第21話より「鉄人仮面テムジン将軍」が登場した。モンゴルから来たという、その「テムジン」の名は、もちろん往年のモンゴル帝国の初代皇帝ジンギス・カン(チンギス・ハーン)の本名・テムジンから採られたものだ。
 そして、「鉄人仮面」の名が示すように、以後は「鉄」に通じる「金属製品」をモチーフにした「仮面怪人」たちが作品に続々と姿を現す。通称「鋼鉄軍団」で、「歯車仮面」「砲丸仮面」「針金仮面」「カミソリ仮面」「鉄グシ仮面」「軍艦仮面」などといった面々だ。
 「日用品」から「兵器」に至るまでの、さまざまな金属製品がモチーフの怪人たちであった。硬質な「金属」に包まれたビジュアルコンセプトは、前年度の『イナズマンF』の敵怪人たちでもあった「デスパーロボット」のイメージも感じさせる。


*「仮面怪人」! 遂に「ギャグ怪人」の草分けが登場! 愉快なトーク! 日用品モチーフも導入!


 しかし、じょじょに『ゴレンジャー』という作品に滲み出てきた「ギャグ」の「カラー」を持ち味とした「怪人」の登場を迎えるのだ。
 そんななかで、第26話に登場した「青すじ仮面」を忘れてはならない。人間の「青筋」をモチーフにしているのは明白だ。しかし、「白い顔」にただ「青いライン」で構成された幾何学(きかがく)的なビジュアルのイメージと、


「青すじ仮面は、青スジ立てて怒ったぞ!」


 といったベタな駄洒落(だじゃれ)を発して、それまでの「鉄人仮面」の部下のなかでは異質の存在感を示したのだ。以後の「戦隊シリーズ」や東映特撮ヒーローもの、あるいは他社の特撮やアニメのヒーローものにおける、いわゆる「ギャグ怪人」の草分け的な位置付けのキャラクターが登場したのだ。


 アニメ監督の庵野秀明(あんの ひであき)は、本話での演技が大いに気に入って、NHKで放映されたテレビアニメシリーズ『ふしぎの海のナディア』(90年)の悪の首領・ガーゴイルや、大人気ロボットアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』(95年)の冬月コウゾウ役などに、声優の清川元夢(きよかわ もとむ)を登用し続けているそうだ(『ロマンアルバム ふしぎの海のナディア』(徳間書店刊)1991年)。
 清川元夢は「ウルトラマン」シリーズでは世紀をまたがって、ウルトラマン一族の長老・ウルトラマンキングとババルウ星人の声を演じ続けたことでも、特撮マニア間では知られている。



 第33話には「鉄姫仮面」も登場。「姫」なので女の怪人であったのに、男性の声優が声を担当している。劇中でアカレンジャーこと海城が写真を見せて「この怪人を知らないか?」と変装した「鉄姫仮面」に聞くと、1975年当時に大流行していたヒット曲『港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ』(歌 ダウン・タウン・ブギウギ・バンド)のなかのセリフ「アンタ、あの娘(コ)のなんなのさ?」のパロディで、「アンタ、この美人のなんなのさ?」と返すギャグに、いま観返すと時代を感じてしまう。
 ここまで来ると、“鉄”の語句を名前に付けただけで、無理やり「鋼鉄軍団」にカテゴライズしていた印象も受ける。しかし、それだけ本作が「仮面怪人」のイメージコンセプトの許容範囲を広げていたことの裏付けにもなるだろう。



 そして、第37話の「フォーク仮面」である。知ってのとおり、食事に使用するあの食器「フォーク」をあしらったビジュアルなのだ。「金属製品」の怪人ゆえに、「鋼鉄軍団」のキャラクターにはかろうじて相応しいとはいえる。しかし、おおよそ敵の悪い怪人にはしにくいようにも思える単なる日用品を、ここまでシンボライズしたビジュアルが、以降の「仮面怪人」のデザインにも「ストレートさ」を色濃く導入していく契機にもなっていた。


 その「鉄」の「仮面怪人軍団」の頂点に立つ幹部「鉄人仮面テムジン将軍」も、ゴレンジャーの奮闘によって勝利を得ることはなかなかできなかった。黒十字総統は業を煮やした。そして、「テムジン将軍」の代わりにと「火の山仮面マグマン将軍」を招集したのだ。哀れ、「テムジン将軍」は第42話にてゴレンジャーの戦闘機「バリブルーン」を道連れにする戦果は残して、名誉の戦死を遂げることになったのだ。


 その後を受けて幹部に就任した「マグマン将軍」は、「テムジン将軍」以上の戦力を有していた。巨大な「移動要塞ナバローン」だ。この「ナバローン」を駆使して、ゴレンジャーとの激戦を繰り広げていくのだ。
 「ナバローン」とは、もちろん小説原作でエーゲ海の架空の島を舞台に、第2次大戦を描いていた戦争映画『ナバロンの要塞』(61年)からの引用である。奇しくも、アニメ映画『マジンガーZ対デビルマン』(73年)でも、敵の巨大な機械獣を複数体も搭載できる巨大な「飛行要塞ナバローン」が登場していた。


 しかし、同作が放映2年目の初夏に突入していた第54話にて、ゴレンジャーたちの愛車であった「レッドマシーン」「ブルーマシーン」「グリーンマシーン」に爆薬を積んでの「ナバローン」への決死の突入作戦で、この「ナバローン」ともども遂に最期を迎えるのであった……。


*「仮面怪人」! 表情豊かな日用品モチーフの「ギャグ怪人」へと遂に変貌!


 この「マグマン将軍」の時期より、本作を代表する「ギャグ怪人」が続々登場してくる。そして、彼らこそが作品の「目玉」としての色合いを強めてくるのが特徴であった。


 いまだに『ゴレンジャー』の怪人といえば、実は放映も2年目に突入した時期に登場を始めた、これから取り上げていく「機関車仮面」「野球仮面」といった「ギャグ怪人」を真っ先に思い浮かべるファンも多いことだろう。


 そして、この時代の「ギャグ怪人」は、ただ単に倒されるだけでなく、「遺言」でもある「最期の叫び」に個性が反映されている。放映2年目の4月の第2週に放映された第46話に登場を飾った「機関車仮面」の、


 「ワシの時代は終わった~~!!」


 といったセリフには、『ゴレンジャー』の放映開始の前年の1974年までに、日本の各地で「蒸気機関車」が相次いでその運行を止めていき、遂には本当に「電車」などに取って変わられることになってしまったご時勢も反映されていたのだ。この件は当時のマスコミ間でも惜別的に大きく報道されていたものだ。しかし、それを去る者の哀愁とともに、明るいパロディーの笑いにも変えていたのだ。


 第53話に登板した「仮面怪人」のエースこと「野球仮面」は、野球選手のユニフォームと帽子のビジュアルをもじったものではなかった。「野球のボール」そのものを頭部の全体にあしらっていたのだ。しかも、頭部のハッチが開くと、バッティングセンターなどに設置されている自動で投球する「ピッチングマシン」が装備されている!
 そういったナンセンスなアイデアがまずは勝利なのだ。そして、その声はテレビアニメ『サザエさん』(69年~)の波平(なみへい)役でも知られる永井一郎が担当。さらに、戦闘員を加えての「黒十字軍 野球チーム」の結成で、そのなかには「9人のメンバー」に加えて「補欠メンバー」まで顔を出す。ダメ押しで、全員での「番号」名乗りの際にも「俺は補欠だ!」と叫ばせることで、見る側の爆笑を誘ってもいた。「野球仮面」の回は「ギャグ怪人」の「王道」を築き上げてもいたのだ。


 とはいえ、他にも当時の「巨大な人食い鮫(ザメ)」を描いていたパニック映画の大ヒット洋画『ジョーズ』(75年)の影響が濃厚な「剣鮫(けんざめ)仮面」や、「鳥牙(とりきば)仮面」といった「動物怪人」たちも登場。「ギャグ怪人」とも並行するように登場してはいた。
 しかし、いつしか日用品をストレートにあしらった「仮面怪人」こそが、『ゴレンジャー』の「怪人」として認識される域にまで成長していったのだ。


 「火の山仮面マグマン将軍」の後任に着いた幹部は、「ゴールデン仮面大将軍」であった。スフィンクスを想起させるビジュアルは、黒十字軍の最高幹部に相応しい豪華さを見せていた。実際にも任期が一番長かった幹部怪人として君臨している。
 この時期の「仮面怪人」は、「ギャグ怪人」のみならず、『超人バロム・1』の「人体怪人」を彷彿させる「大耳仮面」「アバラ仮面」や、「死の鳥仮面」「妖貝(ようかい)仮面」「鉄グモ仮面」「鋼鉄虎仮面」などの「動物怪人」。
 そして、「日用品」をそのまま仮面化したビジュアルで、本作の「ギャグ怪人」の頂点を極めた「テレビ仮面」を筆頭に、「注射仮面」「ピアノ仮面」「ストーブ仮面」「鉄ビン仮面」といった面々が毎回入れ代わり立ち代わりで活躍した。
 第61話では、ヒーローの必殺技を研究の末に「ゴレンジャーハリケーン」ならぬ「黒十字ハリケーン」(!)を開発。このヒーローの存在を「パロディー」として笑い飛ばす域にまで達した『ゴレンジャー』の「ギャグ怪人」の王さまでもある「牛靴仮面」こそが、「仮面怪人」の頂点でもあり究極像でもあったと断言してもよいだろう。


 この「仮面怪人」は、今になれば『仮面ライダー』第1作目で始まった、子ども向けで基本は1話完結・ルーティン(繰り返し)の等身大ヒーロー活劇路線が潜在的に秘めていた、敵の「怪人」たちの「芸風」と、ヒーロー活劇そのものの「作風」、その両者の「間口の広さ」と「許容範囲の大きさ」を示すことにもなっていた。
 真っ先に思い出す「ギャグ怪人」の「野球仮面」や「機関車仮面」だけでなく、正統派の敵怪人を目指していた「黄金仮面」「青銅仮面」までもが、同一世界に存在しているのだ。不統一といえばそれまでだ。しかし、当時の子どもたちの大勢はそれを楽しんで、番組の高視聴率にも貢献していたのだ。あらためて、その試行錯誤も含めての守備範囲の広さには敬服してしまうのだ。
 もちろん、2年間もの長い放映期間があったゆえに、それだけの数をこなすことによって、個性的な怪人世界の発展がなされていったことも事実だ。そして、以後の東映以外の特撮ヒーロー作品も含めての「ギャグ怪人」なる存在が、日本の特撮史に連綿と継承されていくことにもなっていく。子ども向けエンタメとしての新たなインフラストラクチャー・基盤を遂にここで完成させたのだ。


 このユニークな「仮面怪人」を倒すために、ゴレンジャーの必殺技「ゴレンジャーストーム」もまた、「ニューパワー作戦」で単なる「爆弾ボール」から怪人の「苦手なもの」へと変形するナンセンスでコミカルなシステムを導入することにもなった。それに対する「仮面怪人」のリアクションもひとつの見せ場になって、これがまた「仮面怪人」の活躍場面における第二のクライマックスへと発展していくのだ。


 プロデューサーの吉川進は、



「企画には、欲張りすぎという言葉はありません。怪人デザインにも、あえて日常品を導入したり、ゴレンジャーストームにもくどいくらいのおまけをつけたりして、始めから最後の最後まで見ないと、なにが起こるか解らない、というイメージを視聴者に定着させたんです。」
(『超世紀全戦隊大全集』(講談社刊)1993年)



 本作の「仮面怪人」のビジュアルコンセプトと、そのトドメに至るまでのプロセスに、いかに尽力したかを回想しているのだ。


*黒十字軍の「仮面怪人」たちを演じた「声優」列伝!


 この黒十字軍の「仮面怪人」のキャラクターを語るうえで、やはり不可欠な存在は、この「仮面怪人」たちに声を吹き込み、独自のキャラクター性を描き出してみせた「声優」たちであろう。


 昭和の『仮面ライダー』シリーズは、「テアトル・エコー」所属の声優たちを多く起用した。しかし、『ゴレンジャー』では、「東京俳優生活協同組合」こと略称「俳協」所属の声優が多かった。


●丸山詠二(まるやま えいじ)
●依田英助(よだ えいすけ)
●渡部猛(わたべ たけし)
●増岡弘(ますおか ひろし)
●青森伸(あおもり しん)
●京田尚子(きょうだ ひさこ)


 しかし、シリーズを代表する「仮面怪人」声優といえば、この人にトドメを刺すだろう。


●『超人バロム・1』の敵首領・魔人ドルゲ
●『イナズマン』の敵首領・帝王バンバ


 そして、『人造人間キカイダー』と『キカイダー01』に連続登場したハカイダーの声優として、東映特撮怪人の悪役の重鎮と化していた飯塚昭三(いいづか しょうぞう)が、画面にクレジットこそ出ないが、あの声による存在感と重量感、そこに垣間見せるユーモラスなイメージで、本作を代表する悪役声優であったことは間違いない。


 すでに前述のキャラクターたちで、その強烈な個性を見せつけて、その下地をさらに発展させた本作の「仮面怪人」の「幹部」たちが今なお親しまれ、高い知名度を誇っているのは、飯塚のパーソナリティあってのものだろう。


 飯塚は第7話にて「三日月仮面」で本作に初登板後、「角(つの)仮面」「剣(つるぎ)仮面」を経て、「鉄人仮面テムジン将軍」を演じて以降、「火の山仮面マグマン将軍」「ゴールデン仮面大将軍」などの歴代幹部怪人を演じてきた。以後も飯塚は「戦隊シリーズ」では、


●『バトルフィーバーJ』(79年)の敵首領・サタンエゴス
●『太陽戦隊サンバルカン』(81年)の敵首領ヘル・サターン総統


 といったキャラクターを演じていた。他にも、


●『宇宙刑事ギャバン』(82年)の敵首領ドン・ホラー
●『仮面ライダーBLACK』(87年)の敵幹部・大神官ダロム


 最近でも、映画『オーズ・電王・オールライダー レッツゴー仮面ライダー』(11年)にて、大神官ダロムの声の再演と、『仮面ライダーX』(74年)の敵首領・キングダークの声を兼任して、健在ぶりを発揮した。


 飯塚はこう語る。



「確かに、僕たちとしては昔の怪人のように、いいたいことを言って、そしてやられていく、といった感じの方が、演(や)っていて楽しいですね。そうした“遊び”の部分があったからこそ、僕たちも非常にリラックスして演じられた、という感じはあります。」
(『秘密戦隊ゴレンジャー大全集』(講談社刊))



 あのユーモラスで個性的な「仮面怪人」の存在感は、「シナリオ」や「演出」だけではなく、声優自身の“遊び”も含めた「演技」が反映されていたゆえであったことを痛感するのだ。


*吉川進プロデュースの過去のアクションテレビドラマに見る、『ゴレンジャー』の隠れたルーツ!


 本作のプロデューサーは、平山亨と吉川進だ。しかし、本作では吉川の色合いが、彼がプロデュースした『人造人間キカイダー』以上に色濃く反映されている。


 その反映されたものの検証として、吉川が本作よりも先に手がけていた大人向けアクションドラマについても紹介したい。『ゴレンジャー』、ひいては「スーパー戦隊シリーズ」に言及するうえで見逃せない要素が存在するからだ。
 それは、『ブラック・チェンバー』(69年)・『ザ・ボディガード』(74年)・『ザ・ゴリラ7(セブン)』(75年)といった諸作品だ。


 『ブラック・チェンバー』は、1967年には直木賞に輝いたこともある作家・生島治郎(いくしま じろう)原作の作品だ。その頃に「劇団NLT(エヌ・エル・ティー)」に所属していた中山仁(なかやま じん)が主演を務めていた。フジテレビ系にて木曜夜10時枠のタイムテーブルで放映されていた作品だ。
 しかし、視聴率が1桁だったことと、当時はフジテレビ系列のテレビ局が少なかったことや、テレビ番組のカラーでの制作比率が上昇するなかで、白黒作品であったことが災いし、後年の再放送や映像ソフト化にも恵まれないマイナー作品扱いを受けている。そのためにテコ入れとして、1クールでの終了後に「続編」として『特命捜査室』と改題して放映が続行されている。しかし、それでも巻き返しはならなかった。


 なお、この作品についての言及で、日本の特撮史的に最も重要なことを記すなら、『仮面ライダー』第1作目のレギュラーであったFBI捜査官・滝和也(たき かずや)役で高名な俳優・千葉治郎(ちば じろう)のデビュー作が本作であったのだ。彼の芸名の由来は、千葉真一の弟であるから「千葉」の「姓」、「名」の「治郎」は作者の生島治郎に由来するのだ。


 『ザ・ボディガード』の方は、NET系で木曜の夜10時枠にて、『ゴレンジャー』の放映1年前の1974年4月より半年間・全26話が放映された。時間帯も手伝って、ハード志向のドラマであった。しかし、半年の間に海外ロケが2回も行われている(*11)。オイルショック直後の予算削減が謳(うた)われた時期の作品にしては、非常にぜいたくな扱いの作品であった。
 キャストは、千葉真一・千葉治郎・志穂美悦子(しほみ えつこ)・目黒祐樹(めぐろ ゆうき)・西村晃(にしむら こう)・高城丈二(たかぎ じょうじ)といった豪華な顔ぶれが配役されていた。監督は、特撮マニア的には『キカイダー01』の永野靖忠を筆頭に、降旗康男(ふるはた やすお)・吉川一義(よしかわ かずよし。『電子戦隊デンジマン』では平仮名で、よしかわいちぎ名義)・若林幹(わかばやし かん)といった布陣が揃った。
 しかし、東映の児童向けドラマ『どっこい大作』(73年)を終えて同作にやって来た、特撮マニア的には後年の『スケバン刑事(デカ)』シリーズ(85~87年)のメイン監督としても知られる田中秀夫が全7話分と、最多演出監督として活躍していた。


 昨年(2010年)の「日本経済新聞」に掲載された吉川による「戦隊シリーズ」への寄稿文には、特撮作品での活躍のきっかけについて、本作が引き合いに出されて、



「子供番組に専念せよとの命令は、渡りに船だった。テレビドラマの制約に飽き飽きしていたからだ。」



 と明言している。



「例えば74年の『ザ・ボディガード』。主演の千葉真一氏が悪者に空手チョップを見舞うラストシーンが必ずあり、私は「悪者を政財界の大物や弁護士など権力側の存在にしたい」と考えた。だが各方面からの圧力で実現しない。テレビ局も「中小企業のおじさんかサラリーマンでいいじゃない」とお茶を濁す始末だ。子供番組の方が自由に作れる。私は新天地に期待をかけた。」



 と回想するのだ(「日本経済新聞」2010年8月25日)。


 また、吉川は主人公の「歌」を作ろうと意気込んで、自ら作詞も手がけた。しかし結局、その「歌」は使用されなかったという(『東映ヒーローMAX』Vol.29(辰巳出版刊)『仮面の世界 吉川進』(後編)2009年)。



 『ザ・ゴリラ7』は、『ゴレンジャー』第1話放映の前日であった1975年4月4日に金曜夜9時枠にてスタートした。
 千葉真一・治郎の兄弟、志穂美悦子・目黒祐樹といった『ボディガード』のメンバーに、“スタア”の愛称で有名な往時の人気アイドル歌手・にしきのあきらや、アイドルグループ“ゴールデン・ハーフ・スペシャル”のメンバーのマリア・エリザベス(のちの森マリア)、ベテランの夏八木勲(なつやぎ いさお)・中丸忠雄を交えたキャストが顔を揃えていた。
 『ザ・ボディガード』とは違って、ライトな作風を打ち出したドラマだった。本作ではパイロット編(第1話)をかの石井輝男(いしい てるお)が演出。以後は野田幸雄(のだ ゆきお)や田中秀夫が主力演出陣として活躍した。しかし、この作品でも田中が8話分と最多演出本数を誇っている。


 ナレーターは大平透が担当。この『ゴリラ7』と並行して、途中から大平は『ゴレンジャー』のナレーションも担当。『ゴレンジャー』の前任ナレーター・田中信夫は、75年10月よりの東映特撮ヒーローの新番組『アクマイザー3(スリー)』の方に移行している。



 こうした諸作品に存在している『ゴレンジャー』への原点的な要素を書き連ねてきた。渡邉亮徳プロデューサーが語った海外テレビドラマ『スパイ大作戦』的なグループアクションドラマの要素が「戦隊シリーズ」の根底にあったことは確かだ。しかし、先に吉川の手がけてきたアクションドラマにもその萌芽(ほうが)があったことを、認識していただければ幸いである。


*5人のヒーローが1体の敵怪人を倒してしまうことを、どう正当化してみせるのか!?


 さらに、吉川についての言及を行ううえで重要なことは、本作ひいては「スーパー戦隊シリーズ」全作の打ち出したコンセプトでもある、「1人で怪人を倒すのではなく、5人が力を合わせることの重要さ」を念頭に置いていた姿勢であろう。


 「戦隊シリーズ」を語るうえで、常にネタになることだが、1人の怪人に5人で立ち向かうことが、まるで「弱い者いじめだ」「集団リンチだ」と批判されることである。
 吉川も当時、こうした状態を先回りして懸念して、制作に入る前にスタッフを集めて、「仮面ライダーは一人でも怪人を倒せますが、ゴレンジャーは五人揃わないと倒せません」とその理念を念押ししていたのだ。


 この姿勢を吉川は子ども向けに、より理解できるように噛み砕いて説いてもいる。



「なぜヒーローたちは、グループで戦うんでしょうか? 敵の怪人はそれだけ強いんです。
 たとえばアオレンジャーと仮面怪人が戦ったとします。力ではアオレンジャーの方が負けてしまうでしょう。これはけっしてアオレンジャーが弱いというのではなく、敵の腕力がものすごくつよいということなんです。
 でも最後には、ちゃんと「ゴレンジャー」が勝つというのはなぜなんでしょうか? それは五人いるからなんです。たとえ力では少し負けていても、ゴレンジャーの一人一人はすばらしいテクニックと知能的な戦術の持ち主です。だから五人が力をあわせれば、けっして負けるようなことはないんです。
 力が弱いものも、手をつなぎ団結して敵にたちむかっていくところに、悪をたおす力が生まれてくるんです。」
(『テレビランドわんぱっく 40 スーパー戦隊図鑑』(徳間書店刊)「吉川プロデューサーからのメッセージ 正義と人を愛する人間になってほしい」1982年)


*『ゴレンジャー』監督陣! 竹本弘一・山田稔・田口勝彦・折田至・北村秀敏・小西通雄!


 監督は、第1話をかの竹本弘一が務めた。もともとは東映特撮テレビドラマ『悪魔くん』(66年)でデビュー。続く『キャプテンウルトラ』と『ジャイアントロボ』(共に67年)で頭角を現した。そして、竹本の名を一躍高めたアクションテレビドラマ『キイハンター』(68~73年)で、その“アクションドラマ”の王道であるスケール感あふれるアクション場面を披露。その渦中で、『仮面ライダー』(1作目)の第1話を立ち上げたのだ。


 だが、竹本は東映のエース級の人材である。前述の『キイハンター』はもちろん、1971年9月にスタートした『刑事くん』(71年 1作目)のローテーション監督にも入ることが決定していたために、以後は『仮面ライダー』はもとより、他の東映特撮作品での活躍もなく、『キイハンター』から続いたTBS土曜9時枠のアクションドラマの作品群や、前述の『刑事くん』シリーズでの活躍が中心であった。そこに加えて、吉川進が担当する『ザ・ボディガード』『ザ・ゴリラ7』での登板もあった。


 そんな状況下で、4年ぶりに東映特撮作品に復活した竹本への期待は、関係者間では大きかったことだろう。


 その竹本の代表的な「演出」を語るのならこれだろう。OP主題歌の映像で、1人ずつ増えるゴレンジャーの雄姿!


 アカレンジャーが走る!


 続いてどこからともなく瞬間移動してきたイメージで、1人ずつメンバーが増えていく!


 いつしか5人になる!


 これらが瞬時に描かれていくのだ。


 この演出方法は、かつて竹本が手がけた『キャプテンウルトラ』における敵役のバンデル星人に対する「演出」と同様技法のものだ。突如として画面にどこからともなくバンデル星人が出現! まるでテレポート(瞬間移動)したかのように登場する手法で、地球人の概念では理解不可能な能力を映像化。「不思議さ」と「不気味さ」を兼ね備えた「ショッキング演出」が、未知の宇宙怪人が有しているキャラクター性の強化に貢献していたのだ。そして、『ゴレンジャー』ではそれをヒーロー側の演出に用いたのだ。


 「改造人間」でもなく「宇宙人」でもなく「ロボット」でもない。「生身の人間」がテクノロジーの助力を得て「超人」となった「強化服」の戦士たち。その「個性」と「人間離れした能力」を、前述のカテゴリのヒーローとは違ったイメージで表現したのが、この映像演出であったのだ。



 第1話での冒頭で描かれる、黒十字軍が全国のイーグル支部を襲撃するシーンでの、竹本の演出力にも目を向けてもらいたい。竹本は陸軍士官学校出の経歴を持つ。東宝の特撮映画で活躍したあの本多猪四郎(ほんだ いしろう)にも共通する、軍隊を実際に知っている人間が描けるリアリティ。そして、襲撃シーンで倒れる兵士の無念さ・悲惨さにも、年長マニア的には注目であろう。そして、そのシナリオが沖縄出身の上原正三の筆であった点も、それをより強調している。


 以後、この『ゴレンジャー』では、主人公の帰属組織であるイーグルの兵士が襲撃される場面が多々見られる。それは作品のメインテーマでこそなかったものの、それらのシーンを観返す機会があったのなら、そうした観点で見直すと、作品に副次的に込められていた、押しつけがましいものでは決してなかったものの、そんな監督の想いを今になって感じ取れることと思われる。


 他にも竹本は、『キイハンター』で培われた「野外でのロケーションの“雄大さ”もフルに活かしたアクションドラマ」の王道演出を見せていた。『仮面ライダー』以来、4年ぶりの特撮界復帰は大成功を収めたのだった。


 以後も竹本は、『太陽戦隊サンバルカン』(81年)までの「戦隊シリーズ」のパイロット監督(作品の演出的な方向性を決める第1~2話の監督)を務めている。
 特に『サンバルカン』では、実に細かいカッティング・ズームアップの多用・ヒーローが上空をジャンプ移動をする際にはカメラも横振り回転するなどして、もちろんカメラマンやアクション監督側のアイデアであったかもしれないが、新たな映像革命を達成している。これは1980年代におけるメタルヒーローをも含めた東映特撮ヒーローもの全般の演出の方向性を決定付けたとも思われるのだ。


 他には、「仮面ライダー」シリーズで、すでにその地位を確立していた山田稔(やまだ みのる)・田口勝彦・折田至(おりた いたる)・北村秀敏といった面々が、本作にシフトしていることも特徴であった。


 一方、その当時の「仮面ライダー」シリーズ最新作であった、『ゴレンジャー』とも並行して放映されることになった『仮面ライダーストロンガー』の監督陣にも目を向けてみよう。東映京都でテレビ時代劇で活躍してきたベテランで、あの女優・山咲千里(やまざき せんり)の実父としても高名な山崎大助が特撮番組への初参加を飾っている。塚田正煕(つかだ まさひろ)・内田一作(うちだ いっさく)といった面々も監督陣に収まっていた。ネット改変後のTBS系ライダーとして新たなる再出発を図っていたのだ。


 意外なところでは、小西通雄(こにし みちお)の登板だ。しかも、「戦隊シリーズ」には『ゴレンジャー』が唯一の登板になっている。これは当時、小西も参加していた『刑事くん』(76年 4作目)が、人気の高かった先代とは違って半年で終了してしまったために、『ゴレンジャー』に参加したのでは? とも推測できる(*12)。
 小西は第67話「真赤な特攻!! キレンジャー夕陽に死す」(脚本・上原正三 監督・小西通雄)で、2代目キレンジャーの殉職といったハードなエピソードを手堅く演出。突如として訪れたようやく馴染んだ新戦士の死、といったショッキングかつハードなシチュエーションを見事に名作として仕上げてみせていた。


 後年の小西は、『宇宙刑事シャリバン』(83年)第42話「戦場を駆けぬけた女戦士の真赤な青春」(脚本・上原正三 監督・小西通雄)にて、主人公青年の母星でもあるイガ星の女戦士ベル・ヘレンの最期も強烈に演出。東映特撮における小西の存在を認知していなかった当時の特撮マニアたちにも、同話でその名が刻印されたのであった。しかし、その原点としてこの2代目キレンジャー殉職編があったことも意識してもらいたいのだ。


*『ゴレンジャー』脚本陣! 上原正三・高久進・新井光・曽田博久!


 脚本陣は、上原正三(うえはら しょうぞう)・高久進(たかく すすむ)・新井光(あらい ひかる)・曽田博久(そだ ひろひさ)。当時は助監督でもあった平山公夫(ひらやま きみお)。そして、第19話のみの1本だけの参加ではあったものの、ベテラン・藤川桂介(ふじかわ けいすけ)も参加。往時の東映特撮の文芸陣の黄金の布陣と称しても過言ではない顔ぶれが一堂に介していた。


 だが、「仮面ライダー」シリーズから始まる東映特撮テレビ番組の流れで俯瞰するなら、『仮面ライダー』で高名な伊上勝(いがみ まさる)の参加がないことが不思議にも思えてくる。それで、吉川進の回想にピンと来るものを感じるのだ。



「ただね、当時、平山さんと私と二つの路線を作るときに、常に反面教師であるということを非常に意識して、監督、脚本家からカメラマン、証明技師、そしてスタッフの末端まで完全にタテ割りで、お互いに相手の領域には立ち入らず、それぞれが独自のシリーズを作り上げるという意欲にまい進していました。作品としての色分けを強調するといったテーマだったから、これは『人造人間キカイダー』のときとまったく同じです」
(『東映ヒーローMAX Vol.29』(辰巳出版刊)『仮面の世界』吉川進(後編)2009年)



 吉川の語る“反面教師”“タテ割り”の言葉に、伊上が登板しなかった理由を求めることもできるのだ。
 『ゴレンジャー』は、『仮面ライダー』の代替えから始まったものであった。しかし、同じものであってはいけない。対極をなすものであるには、似たり寄ったりしたものにはしないためにも、『ライダー』のスタッフではない人材が必要なのだ。特にメインを務める人物はそうでなければならないのだ。そういった主張を、伊上不在に垣間(かいま)見ることもできるのだ。
 そのために、伊上と相対する作風を持ち、また当時の彼同様に多くの量をこなせる脚本家として、上原に白羽の矢が立ったのではなかろうか?


 メインライターとして活躍した上原正三は、実は吉川進担当作品への参加はこれが初めてでもあった。
 高久進の方は、吉川作品では『ザ・ボディガード』『ザ・ゴリラ7』といった大人向けのアクションテレビドラマでともに仕事をしてきたが、本作では彼の愛弟子の新井光との合作で参加している(*13)。曽田博久は『キカイダー01』を皮切りに、吉川作品の「縁の下の力持ち」的な存在にまで成長。『ザ・ボディガード』では最終回を任されるほどにまでの活躍を見せていた。
 そんな“吉川作品経験者”が顔を揃えたライター陣の中で、上原は立ち上げと物語の主軸を担う大役を引き受けたのであった。


 この1975年時期の上原のワークスを俯瞰すると、『ゴレンジャー』を筆頭に、『がんばれ!! ロボコン』と1975年版の『少年探偵団』、東映制作の巨大ロボットアニメ『ゲッターロボG』(75年)と『UFO(ユーフォー)ロボ グレンダイザー』(75年)といった当時の児童向け作品で、しかも特撮・アニメの双方においても大ヒットメーカーとして活躍していたことがわかる。
 時代的には、上原の子どもが幼稚園から小学校に上がる時期であったことも手伝い、この頃の作品は我が子のために書いていたような部分があったことも回想している。



 上原に次いで、本作での活躍が目立ったのが曽田博久であった。後年の『大戦隊ゴーグルファイブ』(82年)から『地球戦隊ファイブマン』(90年)までのメインライターとしての印象が、特撮マニア諸氏には強いだろう。


 しかし、東映特撮や吉川作品への初登板は、『ゴレンジャー』ではなく『キカイダー01』なのだ。エレキテルを発明した平賀源内(ひらが げんない)を、現代の敵組織・シャドウに連れてくるために、タイムマシンを発明してキカイダー01と江戸時代での戦いが繰り広げられる、異色作の第36話「四次元世界のタイム旅行」。ビジンダーとワルダーの文通シーンが語り草となった「キカイダー」シリーズのセールスポイントでもある“ロボットの人間性”を色濃く強調していた第38話「必殺の仕掛 血闘三つ巴!」。


 『01』の作品の振り幅を広げて、前作『人造人間キカイダー』以上に強烈な印象を残した作家であったといった印象が、70年代東映特撮ファンには強いことだろう。
 元来、『人造人間キカイダー』と『キカイダー01』のキカイダーシリーズは、脚本家・長坂秀佳(ながさか しゅうけい)の代表作として語られることがむかしから多い。しかし、その物語のバリエーションを広げて、より印象的な作品世界を構築した曽田博久の功績も忘れてはならないのだ。


 曽田は『仮面ライダー』第1作目の裏番組でもあった、タツノコプロ制作の太平洋戦争を描いたテレビアニメシリーズ『アニメンタリー 決断』(71年)にて、師である松浦健郎(まつうら たけお)との合作でデビューを飾っている。その後、同社のテレビアニメ『樫の木(かしのき)モック』(72年)や『科学忍者隊ガッチャマン』(72年)で頭角を現した。
 師・松浦が手がけた東映の刑事ドラマ『非情のライセンス』で東映作品にも進出。続けて、『キカイダー01』に参入した。実際、曽田は『キカイダー』のベースにもある童話『ピノキオ』のアニメ化でもあった『樫の木モック』でも活躍していた。『キカイダー』のコンセプトでもあった童話のテレビアニメ化も手がけていたといった点から見れば、奇しくもそのドラマのコンセプトのルーツ(真髄)に迫っていった作家であったとの見方もできるだろう。


 その『01』のプロデューサー・吉川進が手がけることとなった『ザ・ボディガード』『ザ・ゴリラ7』を経て、曽田は『秘密戦隊ゴレンジャー』に参加することとなったのだ。



「僕は『非情のライセンス』を書いたときに初めて吉川さんとお会いしまして、その後キカイダー01やゴレンジャーを経て、バトルフィーバーからこのシリーズに参加させてもらっているわけです。」
(『スーパー戦隊大全集』(講談社刊)1988年)



 以後、「戦隊シリーズ」の「縁の下の力持ち」的な存在として活躍。上原正三がいったん「戦隊」から離れて、『宇宙刑事ギャバン』(82年)に始まる「宇宙刑事」シリーズを担当するようになると、曽田博久は『大戦隊ゴーグルファイブ』(82年)より『地球戦隊ファイブマン』(90年)に至るまでの足掛け10年もの長い間、それこそ本人いわく「馬鹿みたいに10年間も戦隊シリーズのメインライターをやりました」(ウェブサイト『Gpara.com』内「クリエイターズファイル」)とばかりに、「戦隊」文芸陣の要となって、新時代への発展と今日へと至るシリーズの継続に貢献するのであった。


 1975年当時の曽田は、『ゴレンジャー』と『ザ・ゴリラ7』、TBSで放映されていた児童向けテレビドラマ『それ行け! カッチン』と『刑事くん』(曽田の登板は3作目と4作目のみ)で活躍している。前述の『クリエイターズファイル』での「印象に残っている作品やエピソードなどはございますか?」といった問いにて、曽田は『ゴレンジャー』でなく『刑事くん』を上げていた。



「本数は書いていないのですが、TBSの局プロ(テレビ局のプロデューサー)が凄い人で、「ドラマとは何か」を叩き込まれましたね。」



 当時の彼のワークスを検証すること。そして、TBS側のプロデューサー・橋本洋二が、当時のTBSで放映されていたテレビドラマや児童向けドラマにウルトラマンシリーズなどの脚本家たちにも与えた影響の大きさは有名だが、実はその影響は曽田に対しても存在していたのだ、といった意味でも、実に貴重な証言でもあった。


*「大野剣友会」のアクションワールド! 「仮面ライダー」から「戦隊シリーズ」へのスケールアップ!


 本作のアクションは、「仮面ライダー」シリーズの「大野剣友会」が担当となった。「大野剣友会」といえば、『柔道一直線』に始まり、以後の「仮面ライダー」シリーズを筆頭に、平山亨プロデュース作品の多くで「殺陣(たて)」=「アクション」を担当していた。しかし、その前に吉川進がプロデュースしたテレビ時代劇シリーズ『日本剣客伝』(68年)にて、「大野剣友会」所属の中村文弥(なかむら ぶんや)が河合又五郎役で出演していたトリビアもある。「大野剣友会」は平山だけでなく吉川とも接点があったのだ。


 『ゴレンジャー』では、中屋敷鉄也(なかやしき てつや)・中村文弥・河原崎洋夫(かわらざき ひろお)といった、昭和の「仮面ライダー」シリーズを中心に活躍してきた「大野剣友会」の面々がゴレンジャーのスーツアクターに選出された。
 リーダー・アカレンジャー役には、『仮面ライダーV3』の仮面ライダー4号ことライダーマンや、『仮面ライダーアマゾン』のアマゾンライダーなどのスーツアクターで活躍した新堀和男(にいぼり かずお)が抜擢された。
 そのため、『アマゾン』のシリーズ後半のアマゾンライダー役は、前述の中村・中屋敷に中村裕を交えた顔ぶれが演じている。


 この当時ですでに4年のキャリアを誇る新堀。しかも、新番組でヒーローが複数名。その中心(シン=主役)を張るキャラクターへの指名であった。他のメンバーには、新堀の先輩たちがキャスティングされていたのだ。新堀は当初は先輩たちを差し置いてのリーダー役には抵抗があったようで、こう回想している。



「並びも俺が中心で。左(アオレンジャー)が中屋敷さん、右(ミドレンジャー)が文弥さん(または湯川泰男)だから、俺が彼らに命令する芝居のところでも、テストで「行け!」と演(や)っても、「お前が行けよ!」とか言われながら演ってました。もちろん本番は、ちゃんとやってくれますけどね(笑)……非常に照れ臭いというか、とてもやりにくかったですよ。先輩より偉い役なんて。」
(『ザ・スーツアクター』(ソニーマガジンズ刊)1999年)



 新堀和男をアカレンジャーに指名したのは、本作の「殺陣師」(たてし。クレジットでは“擬斗(ぎとう)”)の高橋一俊(たかはし かずとし 愛称・いっしゅん。のちに澤村竜王(さわむら りゅうおう)に改名)。
 そのむかし、高橋も『柔道一直線』で先輩を差し置き、“オヤジ”こと「大野剣友会」会長・大野幸太郎によって「殺陣師」に任命されていた。当然、プレッシャーを感じたが、前代未聞の映像映えする柔道アクションを完成。「殺陣師」の仕事を見事に務め上げたことから、「大野剣友会」の名を上げて、以後の東映特撮作品のアクションを一躍、世に知らしめるだけの力量を示した。
 その高橋が“オヤジ”の指名で殺陣師に就任したように、新堀を主役(シン)のアカレンジャーへと任命したのだ。かつての自分と同じ気持ちで、後輩が先輩の上に立つことで切磋琢磨し全体的な成長を見込んでの、"頭(かしら)”(やはり高橋の愛称)こと高橋の愛情でもあったのだろう。


 事実、新堀は知ってのとおりで、以後の「戦隊シリーズ」でレッド(リーダー)役をほとんど連続して、1991年度の『鳥人戦隊ジェットマン』まで務め上げて、まさに戦隊レッド=新堀和男だと、戦隊マニアやアクションマニアに認識させるだけの存在と偉業を成し遂げている。
 新堀はのちの1982年にレッドアクションクラブ(現 レッド・エンタテイメント・デリヴァー)を興した。今も新堀の愛弟子たちが東映特撮を支えている。『恐竜戦隊ジュウレンジャー』(92年)のレッドことティラノレンジャーを演じた前田浩は渡米して、『パワーレンジャー』シリーズ(93年~)の『ニンジャストーム』(03年。『忍風(にんぷう)戦隊ハリケンジャー』(02年)に該当)までの歴代レッド役を務めている。同じく弟子筋の福沢博文なども、『百獣戦隊ガオレンジャー』(01年)から『海賊戦隊ゴーカイジャー』(11年)までのほとんどのレッド役を務めて、「戦隊シリーズ」の歴史をより大きなものとして継続させている。


 また、新堀は2011年に公開された映画『ゴーカイジャー ゴセイジャー スーパー戦隊199(ひゃくきゅうじゅうきゅう)ヒーロー大決戦』(11年)にて、35年ぶりにアカレンジャーを演じている。


 新堀が演じるアカレンジャーのアクションでは、得意武器「レッドビュート」の華麗なる「鞭さばき」が特に印象的であった。実は過去に新堀は、後楽園遊園地で開催されたテレビアニメ『正義を愛する者 月光仮面』(72年)のショーにて月光仮面を演じたとき、アニメ版の月光仮面は初代実写テレビドラマ版(58年)と違って鞭を使うので、特訓によってアニメ同様の華麗な鞭さばきを実際に演じることができるようになっていたのだ。その成果が本作では結果的に活かされていたのだ。「人に歴史あり」といったところだろう。


 新堀は敵側の黒十字軍側の「リーダー」こと幹部怪人役も担当。撮影所のセット内でのシーン(新堀がアカレンジャーを演じないシーン)では、彼が幹部怪人役のほとんどを担当。本作にて正義と悪の両方で「リーダー」役を務め上げたことが、新堀のスーツアクターとしての力量をより高めたともいえるだろう。


 新堀以外の配役にも言及しよう。


●アオレンジャーは、中村文弥・中屋敷鉄也・河原崎洋夫・湯浅洋行
●キレンジャーは、前田直高・天野正登・上田弘司・田中耕三郎
●ミドレンジャーには、湯川泰男・中村文弥・橋本春彦
●モモレンジャーは、栗原良二・小沢章二・清田真妃・内藤みどり


 以上の面々が2011年現在の筆者が確認するところだ。しかし、「大野剣友会」で「仮面ライダー2号」なども演じた岡田勝(おかだ まさる)がアオレンジャーに入った写真もネット上で確認しており、岡田は他のキャラクターの中にも入っていた可能性は高いと思われる。


 “頭”こと高橋一俊は、『ゴレンジャー』の殺陣師に専念することになった。つまり、『仮面ライダーストロンガー』は、前番組『仮面ライダーアマゾン』から引き続いて、出だしだけを高橋が務めて、以後は岡田勝が担当することになったのだ。
 だがその後、半年も経たずに高橋は大野剣友会を脱退することになってしまった。そこで、池田力也が24話から26話を、27話以降は岡田勝が『ゴレンジャー』でも殺陣師を担当することになる。
 そのために、岡田が殺陣師はもとより(*14)、OP主題歌の映像の方にも顔を出していた『刑事くん』の方では、終盤の第46話・47話・49話~52話・第54話(最終回)の殺陣を「ワールド・アクション」の渡辺安章が担当するようにもなっていた。ちなみに、この渡辺が翌年の東映特撮変身ヒーロー『ザ・カゲスター』(76年)でも殺陣師を務めるのだ。


 高橋の功績は、あの「5人揃って! ゴレンジャー!!」の決めポーズだろう。これも今では有名な話だが、歌舞伎の「白浪五人男(しらなみ ごにんおとこ)」に範を得て、あの決め口上を発案したのだ。わかりやすくてインパクトが強いことで一躍、作品の「目印」になったのだ。


 必殺技「ゴレンジャーストーム」についての話もしよう。サッカーやドッジボールといった子どもに人気のある「球技」の要素も取り入れた。なおかつ、メンバー全員の「キック」としてのパスがないと「武器」としては成立しない特徴ゆえに、集団ヒーローものとしての「チームワーク」のテーマも強調されることになった。つまり、番組のクライマックスとしては、仮面ライダーの必殺技「ライダーキック」のような「格闘技」的な必殺技とも違ったコンセプトを押し出して、ビジュアル的にも先達との差別化に見事に成功したのだった。


 東映側のプロデューサー・平山亨はむかし見た映画での、何人かで手榴弾(しゅりゅうだん)をリズミカルにパスするシーンを記憶していた。それをヒントにラグビーボールをトライするような感じで何かをできないかと考えていた。それが「ゴレンジャーストーム」の発想の基になっていたのだそうだ(『秘密戦隊ゴレンジャー大全集』)。


 そして、「大野剣友会」のメンバーは、今日のマニア的な観点で見れば、イーグルの隊員役や研究所の所員役などを筆頭に、その他のエキストラ的な扱いでの出演も実は多いのだ。そういったところもまた、特撮マニア的には見どころなのだ。
 特にアカレンジャー役の新堀和男は、第1話ではイーグル九州支部の柔道道場で稽古中のイーグル隊員、第36話では研究所所員、第59話の応援団長(怪人の変装)役などでも活躍。
 アオレンジャー役の中屋敷鉄也も、第31話のバズーカ砲を構えるイーグル隊員、第47話では幼稚園バスの運転手役での活躍が見られる。
 この他にも、第53話で拘置所内でのキャッチボールを楽しむ囚人役に、殺陣師の岡田勝といった顔ぶれの活躍が散見される。これらをまともにリストアップしていくと、誌面がいくつあっても足りないくらいなのだ。


 長年の特撮マニアであればご存じのトリビアを、もうひとつだけ挙げよう。当時の「大野剣友会」に所属していた石塚信之(いしづか のぶゆき)だ。だが、本作『ゴレンジャー』のOPクレジットに目をやると、初期話数ではずっと「石塚」ならぬ「石田信之」名義で誤記されていたのだった。
 特撮ファンなら承知のとおりで、円谷プロの特撮巨大変身ヒーロー『ミラーマン』(71年)の主人公・鏡京太郎(かがみ きょうたろう)役で知られる石田信之(いしだ のぶゆき)とも同じ名前で誤記されていたのだ。もちろん、年長の特撮マニアになってから本作を再見すると、このテロップを見るたびに、『ミラーマン』の石田信之のことをつい連想してしまうだろう。
 第9話よりようやく「石塚信之」として正しく記載されるようになった。しかし、なかには「ミラーマンの石田信之も出ているのかな?」と最後まで画面をくまなく探してしまって「結局、出なかった、単なる同姓同名かな?」などと勘違いをしていた視聴者やマセた子どももいたのではなかろうか?


*バンバラ バンバンバン~♪ 「戦隊」宙明サウンドの確立!


 音楽についても言及しよう。特撮マニアや当時の東映特撮や東映の巨大ロボットアニメでもおなじみの渡辺宙明(わたなべ ちゅうめい 本名・わたなべ みちあき)が、『ゴレンジャー』の音楽を担当していた。
 初期スーパー戦隊シリーズの本作『秘密戦隊ゴレンジャー』から『大戦隊ゴーグルファイブ』(82年)までの楽曲を手がけてきたことから、今ではすっかり「“戦隊”の渡辺」といった印象が強い。平成以降の「戦隊シリーズ」で育った特撮マニアたちにとっても、「昭和戦隊」の王道サウンドを構築したアーティストとして高い認知度を誇っている。
 それは、2011年現在でも今なお現役であって、テレビや各種イベントでもその元気な姿を見せており、半世紀以上のベテランでもあるゆえのバリューからだろう。


 そして、この『ゴレンジャー』が幸いだったのは、『忍者部隊 月光』(64~66年)の音楽担当でもあった渡辺宙明が務めたことであった。そして、『科学忍者隊ガッチャマン』のサブリーダー「コンドルのジョー」役の声優も務めた、ロカビリー歌手から特撮・アニメの主題歌歌手へと転進を遂げていた佐々木功(ささき いさお)による力強いヴォーカルによる主題歌「進め! ゴレンジャー」が、音楽の「目印」としても存在したことであった。
 ちなみに、渡辺と佐々木の両名ともに、タツノコプロの吉田竜夫原作による現代の「忍者」作品であり、集団ヒーローものでもあった『忍者部隊 月光』と『科学忍者隊ガッチャマン』に縁があった御仁なのだ。
 もちろん、グループヒーロー作品の流れを紐解くと、この2大作品が日本のジャンル作品の分岐点に位置しているのだ。たとえ意図したことではなくとも、奇遇にも音楽の方での人脈で、『ゴレンジャー』はこれら2大作品にも接点が生じていたのであった。


 そして、菊池俊輔が『仮面ライダー』シリーズの音楽を手掛ける一方で、その相対する存在としての渡辺宙明が、東映特撮のなかでその立ち位置を確立していくのだ。


 特に吉川進プロデュース作品にそれが顕著であった。本作に始まる「戦隊シリーズ」、そして『宇宙刑事ギャバン』に始まる「メタルヒーローシリーズ」で、吉川は継続して渡辺を起用し続ける。


 実は渡辺は新東宝の和製スーパーマン映画のヒット作『スーパージャイアンツ』(57年)シリーズの音楽も手掛けていた。この当時でもヒーローサウンドでは「20年選手」の大ベテランとして君臨。それを考えれば、実はまさに日本のヒーローサウンドの宗家(そうけ)に相応しい人選でもあったのだ。渡辺は、



「こうした作品になれてきたということもあるのかもしれませんが、たいへんリラックスして作ることができましたね。」
「主題歌や挿入歌にも各人の歌があってバリエーションが豊かでした。」



と回想している。


 また、BGMの作曲に要した時間は、のべ10日くらいだったそうだ。放映開始1年後くらいにも、追加でBGMや挿入歌を制作。ロングラン作品を支えるうえで、音楽もそれに応じた対応が行われていたのが特徴であった(『秘密戦隊ゴレンジャー大全集』)。


 番組の顔ともいうべき「主題歌」についての秘話は、如何なるものであったのであろうか? 渡辺の弁では、



「これは作曲するときに、どういう思い出話があったかというのは特に記憶にないんですね。ただし、一つだけ記憶に残ってるのはね、このEDの『秘密戦隊ゴレンジャー』ですよ。で、(OPの)『進め!ゴレンジャー』は気に入ってもらって、ピアノスケッチの段階で、私が弾き語りで歌って。『秘密戦隊ゴレンジャー』も東映の吉川さん、テレビ朝日、代理店、ズラッ~と来て、それでOKが出た。木村(英俊)さんはまだチーフディレクターで、担当のディレクターの若い木村裕史さんていう人、2人揃っている。そのチーフディレクターの方の木村さんから電話がかかってきた。「あれはイイんだけどね、あの前に何かちょっと(擬音ぽいものが)付かないか? その前にアニメかなんかで、“ガンガンガン♪”とか色々やってるでしょ。なんか考えてくれ」・・・って言うので、「ちょっと待って下さい、すぐ後で電話しますから」と。で、「“バンバラバンバンバン♪”っていうのはどうですか?」「あっ、それそれ、それでやってくれ!」っていうので・・・電話での作曲ですよ(笑)!」
「“バンバラバンバンバン♪”も、あれが付いたために、番組のヒットに貢献できたし、EDの方がみんな印象に残ってる。」
(ウェブサイト『HERO BOX』渡辺宙明インタビュー 2003年)



 ウルトラマンシリーズの『帰ってきたウルトラマン』(71年)などでは、「ワンダバダ~ ワンダバダ~ ワンダバダ~♪」といった男性のコーラスが入る楽曲が劇中で流れる。その歌詞に起因して「ワンダバ」と呼称されて、ファンに親しまれてきたのだ。
 この「ワンダバ」を目印にした「ウルトラ」シリーズが『ウルトラマンレオ』(74年)でいったん終了後に、「バンバラ バンバンバン~♪」を売りにした『ゴレンジャー』がその楽曲も「目印」にして、児童間での人気の主役の座も獲得させることにも貢献したのだ。つい口ずさみたくなるメロディで、しかもこうしたわかりやすい「目印」もあったことから、より高い人気を獲得できたのだ。


*『秘密戦隊ゴレンジャー』の音盤展開! 本放映当時と後年! BGM集の音盤化が遅かった理由とは!?


 『ゴレンジャー』の音盤展開にも目をやろう。


 「主題歌シングル」は放映開始の1975年4月に、日本コロムビアより最初に発売。以後は同社より『アクションデラックス 秘密戦隊ゴレンジャー』として、1975年8月に「ヒット曲集アルバム」がリリースされている。


 その後、そのアルバムよりの「シングルカット」として、『ゴレンジャーストーム/赤い力だアカレンジャー』を同年9月に、『とべ! バリブルーン/青い空からアオレンジャー』を翌1976年2月にリリース。続いて、新曲『ゴレンジャーがやってくる/バリドリーンの歌』が同年4月に発売。以後は追加録音曲を、東映特撮ヒーロー『忍者キャプター』(76年)とのカップリングアルバムにて同年8月にリリース。最後に後期ED主題歌『見よ!! ゴレンジャー/戦いおわって』が、同年11月にシングル盤にて発売されている。


 コロムビアの実写作品をこの時点で振り返っても、あの大ヒットした『仮面ライダー』シリーズですら、ここまでハイペースな音盤展開ではなかった。新時代に呼応した音楽ビジネス展開の確立を感じ取れる。劇中でのキャラクターやマシン・メカニックなどの追加に準じた、楽曲の制作がコンスタントに行われ、順次リリースする体制が整っており、なおかつ作品人気がそれに呼応するだけの大きなバリューを有していた証しであろう。
 書籍『ウルトラマン対仮面ライダー メガヒーロー 光と影の神話』では、『ゴレンジャー』のシングル売上が42万枚と記載されている。しかし、『仮面ライダー』(1作目)が85万枚強とあるだけに(130万枚という説もある)、その半分に過ぎないとの声もあるだろうが、ヒット作としては十分な結果を残しているのだ(ただし、『ゴレンジャー』もミリオンセラーだったという説もある)。



 その本作の主題歌・挿入歌の多くは、佐々木功(現・ささき いさお)が歌唱した。佐々木は、ロカビリー歌手としてデビュー。1958年頃のロカビリーブーム時代には、“和製プレスリー”(*15)と称されて、人気シンガーとして有名であった。
 だが、ロカビリーブームが下降後、歌手のみならず俳優としての活躍が目立つようになる。映画会社の松竹に所属。数多くの映画に出演する。しかし、テレビの隆盛に伴った映画界の下降もあって、テレビに活路を見い出した。さらに松竹を退社してからは「劇団マールイ」に所属。舞台での活躍も増えている。


 そして、TBSプロデューサー・橋本洋二の指名で東映制作の特撮テレビ時代劇『妖術武芸帳』(69年)の主役に抜擢された。初のテレビレギュラーに全力投球したが、視聴率は伸び悩んで1クールで終了の憂き目を見る。以後はテレビドラマでの助演が多くなる。
 そんななか、佐々木は大人気テレビアニメ『科学忍者隊ガッチャマン』(72年)で副主人公・コンドルのジョー役で声優として出演。一躍脚光を浴びるようになった。
 その『ガッチャマン』制作のタツノコプロダクションのテレビアニメ『新造人間キャシャーン』(73年)の主題歌にて、佐々木は歌手への復帰を飾った。以後は東映の合体ロボットアニメ『ゲッターロボ』(74年)を経て、代表作になるテレビアニメ『宇宙戦艦ヤマト』(74年)の主題歌を担当。アニメ歌手としての注目を受けることとなったのだ。


 そして1975年。佐々木初のテレビ特撮作品『秘密戦隊ゴレンジャー』の「主題歌」を担当することになった。この時期、特撮ヒーロー番組の主題歌のシンガーとして、すでに子門真人(しもん まさと)・水木一郎・ヒデ夕樹(ひで ゆうき)などが群雄割拠とばかりに、数多くの作品の主題歌を担当していた。そこへ参入した佐々木の登板は、そのロカビリー歌手としての実績に裏打ちされた独自の重量感とパワーみなぎるヴォーカルで、作品のムードにマッチして、ヒーローソングの新時代を切り開くことになった。
 今思えば、『ヤマト』と『ゴレンジャー』といったヒット作の主題歌を歌ったことが、彼のアニソンシンガーとしての地位を確立したこととなったのだろう。


 また、我々メインターゲットの子どもたちはもちろん知らなかったことなのだが、この当時の芸能週刊誌などで騒がれていたのは、「“ささきいさお”があの“佐々木功”か?」といったような問い掛けであった。この時期、幼稚園児から小学生低学年くらいの子どもを持っていた母親が、ちょうど佐々木がロカビリー歌手時代にファンとして応援していた世代でもあったことから、子どもの観ている番組をたまたま目にした、あるいはレコード(シングルレコード)を買い与えて聞いていたら驚いた、といった現象が見られたようである。



 なお、「劇伴(BGM)」は本放送当時には本作にかぎらず音盤化・LPレコード化されること自体がなかった。「劇伴」の音盤化が子ども相手にかぎらず商売になるとは思われていなかった時代なのだ。
 しかし、当時はまだオタクという言葉はなかったものの、70年代末期には1960年前後生まれのオタク第1世代の青少年向けに新旧アニメ特撮の「劇伴」が発売されて、ヒットを飛ばすようにもなっていく。けれど、初期東宝特撮やウルトラマンシリーズの「劇伴」はともかく、70年代の東映特撮変身ヒーローはそれらと比べて「下」に見られていたために、80年代中盤まで音盤化されることがなかったのだ。


 はるかに飛んで1986年になってから、日本コロムビアが70年代前中盤の変身ブーム時代のテレビ特撮主題歌に劇伴をベストセレクトで収録した『特撮サウンドグラフィティ』シリーズをリリース。そのVol.3(1986年8月発売)にて、『ゴレンジャー』の劇伴数曲が初めて広く世に聴かれるようになった。
 また、当時の雑誌『宇宙船』Vol.32(1986年10月号)掲載の「ビデオ・レコードインフォメーション」コーナーには、「秘密戦隊ゴレンジャー全主題歌・挿入歌集」が発売予定(86年10月~11月)と記載されている。しかし、実際には発売されることはなかった。


 この1986年という時代は、ちょうどアナログの「レコード」とデジタルの「CD」との過渡期でもあった。しかし、この『特撮サウンドグラフィティ』は「LPレコード」と「カセットテープ」のみしか発売されておらず、1989年になってようやく再販時にCDでも発売されている。


 その後、「CD」へとシフトが完全に完了して、時も経過した1996年4月に、歴代の「戦隊シリーズ」の「劇伴」を単独収録により音盤化した『ミュージックコレクション』名義のラインナップにて、念願の音楽集アルバムのリリースが、本放送以来21年目にしてようやく実現したのであった。



秘密戦隊ゴレンジャー ミュージックコレクション
「秘密戦隊ゴレンジャー」ミュージックコレクション


*『ゴレンジャー』の作品世界観! そのシリーズ前半を追う!


 ここまで、作品誕生までの背景・登場人物・スタッフなどについて綴ってきた。ここからは、その物語の「世界観」への言及に入ろう。


●第1部 幹部不在時期~「日輪仮面」着任時期 第1話~第20話


 第1話「真っ赤な太陽! 無敵ゴレンジャー」(脚本・上原正三 監督・竹本弘一)は、原作漫画版でも描かれたイーグルの各地方支部の壊滅を導入部で描いた。そうして生き残ったメンバーが集結して、ゴレンジャーを結成するといった始まり方で幕を開けたのだ。
 この第1話の時点で、本作の「目印」になっていく「なぞなぞ」「キレンジャー・大岩大太の大盛りカレーを喰らう姿」に見られる、シリーズの「お約束」的な要素がすでにわかりやすく配置されている。
 さらに、昭和の特撮ヒーローものの定番行事的な「幼稚園バス襲撃」も描かれていた。しかも、このシーンは飛行メカ「バリブルーン」の大活躍の「特撮」場面的な「見せ場」といった重要な役割を担う場面であることがポイントであった。


 この「幼稚園バス襲撃」は、近年でも『海賊戦隊ゴーカイジャー』の第1話にて、ゴレンジャー登場シーンのシチュエーションとして再現されており、35年の歴史を強く意識したことを痛感した戦隊マニア諸氏も多かったことだろう。


 以後の各話では、世界的な発明や研究を行う「博士」や、イーグルの「秘密兵器」、組織内の「秘密」、といった「護衛」や「警備」に「アイテム輸送時」の「争奪戦」などをストーリーの軸にする。
 そのなかで、ゴレンジャーのメンバーひとりひとりの得意技や技術を生かして困難を乗り切る描写で各キャラを明確化もしていく「スパイアクションドラマ」を展開。これまでの東映特撮の変身ヒーローものでは類を見なかった、正攻法の「攻防戦」を描くことを主眼に置いた作劇が特徴でもあった。第1話から第7話まで、脚本はメインライターの上原正三が連続して執筆した。


 初期のエピソードでは、江戸川権八総司令と「スナック・ゴン」のマスターが同一人物であることが語られてはいなかった。江戸川もそれを隠していあたりに特徴があった。だが、第2話にてマスターの姿のときに、キレンジャーこと大岩のことを、


 「キー」


 と呼んでしまい、慌てて、


 「岩さんって言った」


 と誤魔化す描写が存在する。続く第3話でも、


 「キー! 逃すな!」


 と大岩に対して、つい総司令としての命令を行ってしまい、


 「マスター、やっぱりあんたは?」


 と返されて、弁解する間もなく


 「急げ!」


 と念押ししたことで、マスターと総司令が同一人物であることが明白になった。


 つまり、総司令の正体の謎も、初期編ではスパイアクションを彩る要素のひとつとして存在していたのだ。



 続いて担当した高久進と新井光が協作で手がけた「ハード路線編」も印象的である。


 第8話「黒い恐怖! 殺しの毒牙」(脚本・高久進 新井光 監督・山田稔)は、本作初登板を飾った高久進お得意の(子ども向けヒーローものの範疇ではあるが)ジャーナリスティックな社会派ドラマを展開している。
 来日したノーベル賞に輝いた平和主義者・スコットを狙って、黒十字軍は「毒牙仮面」の毒の餌食に遭わせる。15年前に捨てられるようにして別れた娘・エミがまた、スコットとの再会を拒んでしまうような、一筋縄ではいかない人間ドラマも展開。しかし、ゴレンジャーの説得と活躍で両者は再会をとげて父娘の雪解けを迎えるというものだ。
 「世界平和」という「大の虫」を生かすための「滅私奉公」に邁進したことで、それはそれでよいことなのだが、それがあまりにも行き過ぎてしまって、皮肉にも「妻子」という「小の虫」を犠牲にしてしまった男の罪悪感と、それに対する娘の憎しみまでもが描かれていたのだ。



 同じ高久・新井の第12話「銀色の超エネルギー! 焦熱地獄」(脚本・高久進 新井光 監督・山田稔)では、イーグル諜報部員の陽子が弟の太郎少年との約束でピクニックに出かける。しかし、「銀熱仮面」に太郎が怪人にとらわれて、敵は太郎を人質に脅迫。陽子に偽情報でゴレンジャーをおびき出させる。
 この回ではイーグルという軍事組織の非情の掟と、弟を人質に取られての狭間で苦しむ陽子の苦悩という、やはり人間ドラマも描いている。
 この両者のコンビが手がけたエピソードは、子ども向け番組としてはヘビーな印象を与える。しかし、大人向け刑事ドラマのシチュエーションを交えて、なおかつ“家族”の絆の中で揺れ動く人物を介するドラマ展開にて、『ゴレンジャー』の「スパイアクション」的な世界観を、「情操的」かつ「ヒューマン」な方向にも大きくしようと務めていることが顕著であり、重厚なドラマで視聴者を引きつけようとする工夫が見られる。


 一方、第2クールの7月中旬の放映となった第14話「赤い棺桶! ドクロ屋敷の怪」(脚本・曽田博久 監督・田口勝彦)にて、本作の影の尽力者である曽田博久が初参戦した。こちらは夏休みを意識した「怪談編」に仕上がっている。
 大岩大太が白滝博士に変装して敵地に乗り込む。しかし、そこにいる博士の名前が、平山・清崎・吉川といった名前であった。平山・吉川は明らかに「楽屋落ち」的に東映側のプロデューサーの名前を引用した身内ネタであったことが、長じてマニア化してから再鑑賞すると笑ってしまう。
 この曽田が見せる「怪奇色」の中にも本作らしい肩の力を抜いた「ユーモラス」なお遊びをつい仕込ませてしまうセンスは、後述する「ギャグ怪人編」で花開いていくのだった。


*敵幹部「日輪仮面」着任! ナレーターが大平透へ交代! 実はむしろ高度であった作劇!


 第15話「青い大要塞! 大暴れバリブルーン」(脚本・上原正三 監督・竹本弘一)より、『ゴレンジャー』はスケール感の大きな展開を見せていく。
 この回は第2話以来、久々の竹本弘一登板になった。竹本は本作だけでなく『刑事くん』『ザ・ゴリラ7』でも活躍しているため、3ヶ月ぶりの参戦であったからだ。


 アフリカより来日した連戦連勝の「日輪仮面」が登場。ゴレンジャーの戦闘機「バリブルーン」は敵の手に落ちてしまう! しかし、敵の要塞に潜入した新命明は「バリブルーン」の奪取に成功する。ヒーロー側が大きな危機に陥(おちい)ることにより、初陣の新幹部が強敵で手強いことを示しているのだ。


 『キイハンター』の竹本弘一らしく、新命が演じるロープウェイアクションと、海城が搭乗するモーターボートからそれを望んだ、竹本監督お得意のロング(遠景)のアングルで、野外ロケが織り成すパノラミックなバトルフィールドも大きな見せ場であった。


 本作のナレーターがこの回より田中信夫から大平透に交代。以後の「戦隊シリーズ」では『科学戦隊ダイナマン』(83)年まで、飛んで『恐竜戦隊ジュウレンジャー』(92年)でも、その名調子をナレーションで聞かせてくれた。
 大平は元祖超人ヒーローともいえる、海外アニメ版『スーパーマン』(41~43年 日本放映55年)とテレビドラマ版の『スーパーマン』(52~58年 日本放映56年)の主人公・スーパーマンことクラーク・ケント役から実質的なキャリアをスタートしている。その意味では、「ヒーローもの」作品それ自体にも大きな縁があった御仁なのだ。ご存じのとおりで、数多くの代表作を有している。しかし、ナレーターとしての硬軟取り混ぜた自在な口調を見せる「戦隊シリーズ」もまた、彼の代表作であったことは間違いないのだ。


 その大平に代わってから、「次回予告編」のナレーションが、第18話より「次回のあらすじ」を紹介する形式ではなくなり、「なぞなぞ」を出題する予告編に変わった。もちろん、映像は次回の放映話数のハイライトシーンを流している。しかし、いつしかこの「なぞなぞ予告編」が番組名物として定着。のちに通常どおりの予告ナレーションに戻ったときにはがっかりした視聴者もいたほどだ。


 第19話「青い火花! 海に浮かぶスパイ戦線」(脚本・藤川桂介 監督・田口勝彦)では、第1期ウルトラシリーズや『宇宙戦艦ヤマト』に『マジンガーZ』や『がんばれ!! ロボコン』なども手がけていた脚本家・藤川桂介が唯一の登板を見せた。欲に目の眩んだ女スパイ・ミスサファイヤに翻弄される幹部怪人「日輪仮面」と「剣(つるぎ)仮面」の対ゴレンジャーとの攻防戦が描かれた。
 サファイヤのスカーフに海水の塩分に反応して浮かび上がる設計図が隠されており、大岩大太がカレーを食べている皿に書かれた「はやくこい」のメッセージなど、細かい部分でのこだわりやディティールが「スパイアクション」を彩っている印象的なエピソードであった。


 第15話より海外から来た敵幹部の「日輪仮面」が登場し、彼を軸にしての攻防戦が幕を開けたことで、『ゴレンジャー』の世界観もさらに拡大されていく様相を感じ取れた。だが、その最期は予想以上に早く訪れることになった。
 それが第20話「真赤な死闘! 日輪仮面対アカレンジャー」(脚本・上原正三 監督・田口勝彦)だ。日輪仮面の相次ぐ失敗に業を煮やした黒十字総統。彼がゴビ砂漠より呼び寄せたモンゴルの鬼「鉄人将軍テムジン」が現れる。
 最後のチャンスとして、総統は「日輪仮面」に3日以内でゴレンジャーを倒すことを命じた。
 「日輪仮面」が敵の懐に飛び込み、ゴレンジャーをだまして捕獲する手段に踏み切る。海城剛を除いた4人がハリツケになるが、一度は温情でかばった「日輪仮面」の裏切りに、復讐の炎を燃やしたアカレンジャーの新兵器「ヤリビュート」が「日輪仮面」の剣を制したのだった。


 この「新幹部の出現によって立場が悪くなった現役幹部が、最後のチャンスに賭けた末での敗北」は、先に『仮面ライダー』第78話「恐怖ウニドグマ+(プラス)ゆうれい怪人」~第79話「地獄大使!! 恐怖の正体?」の連作(双方ともに脚本・伊上勝 監督・塚田正煕)での「ショッカー」→「ゲルショッカー」への敵組織交代のなかで、居場所を失いつつも組織への忠誠を誓ってショッカー組織のために殉じた敵幹部・地獄大使の姿を彷彿させるものであった。


 実際、『ゴレンジャー』での「幹部交代劇」の「テンプレート」を本話が確立。以後は、「相次ぐ敗退」→「新幹部の登場」→「追い込まれる現幹部」→「ヒーローへの敗北」→「幹部交代」の図式が、通算2年のロングランのなかでの「節目」を飾るようになった。


 大雑把にこの時期の作品カラーを検証しよう。メインライター・上原正三は、本作ではドラマ性やテーマ性を強調するような「変化球狙い」ではなく、メインライターとしての務めを果たすかたちで「基本設定」や「登場人物」の基礎的な「紹介」や地固めをしていく「直球」のかたちで、ひたすら「ストーリーテラー」に徹している。
 その反面、高久進・新井光のコンビは、サブライターとしての気安さゆえもあってだろう。むしろ、大人のライターにとっては書きやすくて筆もノリやすかったであろう、ハードな状況に追い込まれた登場人物の苦悩といった「人間ドラマ」の方を描いているのが特徴であった。
 もちろん、これはメインライターとサブライターの役割の違いであって優劣ではない。作品によって立場が変われば、この両者の作風も逆転していたことだろう。


 今になって『ゴレンジャー』を見直すと、『人造人間キカイダー』や『イナズマンF』のようなウェットな人間ドラマ主導のものを「尺度」にされてしまうと、やや物足りない印象があるだろう。
 実際、『ゴレンジャー』は確信犯的に乾いた「スパイアクション」を売りにしたシリーズでもあった。本作の根底には、常に「イーグル」という「国家組織」の存在が大きく位置しており、そのなかでの「発明」や「秘密」、「武器」や「兵器」、「薬品」や「要人」の「移送」や「警護」をめぐっての「攻防戦」といった印象が強い。
 事件をめぐっての被害者や犠牲者の人間ドラマや、主人公のロマンスなどにはウェイトがあまり置かれないこともあって、そうした人間ドラマ要素を強く求めるような層には、今ひとつといった印象を与えてしまうかもしれない。


 また、今日の視点で見直せば、『ゴレンジャー』とは、上原正三にとっての先輩・金城哲夫(きんじょう てつお)が描いていた初代『ウルトラマン』のような、「無垢(むく)」で「プレーン(淡泊)」で「無邪気」な作品への意図的なチャレンジであったといった位置付けもできるのだ。


 しかし一方で、先に『ウルトラ』シリーズでは、科学特捜隊・ウルトラ警備隊・MAT(マット)・TAC(タック)などの防衛組織のなかでの、「発明」や「秘密」、「武器」や「新兵器」を軸にしたドラマやスパイアクション作りの経験が、これまでの東映作品、特に70年代前半までの変身ブーム時代の作品には希薄だった“公的な組織内でのヒーローの存在と活躍”を確立したともいえるのだ。
 しかも、『帰ってきたウルトラマン』のような重厚な人間ドラマとは違って、初代『ウルトラマン』のように小難しい「人間ドラマ」よりも「怪獣」や「科学」に「発明」や「秘密」を軸にして、それらをめぐっての顛末をスイスイとテンポよく見せていくといった作劇。
 ベタつかずに適度に乾いて軽妙ですらあったソフトボイルドな『ゴレンジャー』の作風は、たしかにある意味での“上原正三の初代ウルトラマン”なのかもしれない。



「今、ビデオで観てみても、テンポは抜群だし、我ながら理屈抜きで伸び伸びやってますよ。前振りがほとんどないまま、ゴレンジャーと黒十字軍の闘いに入ってしまう。あのシンプルさというのは、今見ると憧れますよ。」
(『秘密戦隊ゴレンジャー大全集』(講談社刊)1988年 上原正三インタビュー)



 小難しい「ドラマ」や「テーマ」は抜きであったのに、実はむしろこちらの方こそが「高度な作劇術」&「センス」を要してしまうのであろう「シンプルな面白さ」。10数年後の自分自身でも、再現しがたいような難しさが逆にあって、自分でも「自分の過去の仕事にあこがれる」とまで、上原自身も語っていたのだ。


●第2部 「鉄人仮面テムジン将軍」着任時期 第21話~第42話


 第21話「青い驚異! 古代から来た怪飛行船」・第22話「黄色い空襲! アトランティスの悪夢」・第23話「みどりの空中戦! 怪飛行船の最期」(3作とも脚本・上原正三 監督・山田稔)の3部作で、「鉄人仮面テムジン将軍編」のオープニングを飾った。
 この3部作に登場した、元はアトランティス大陸を水没させるのに用いられたという超古代文明出自の大型飛行船「アトランティス号」の謎と秘密を軸に、この秘密を探る科学者・清水博士の存在、ゴレンジャーの空の戦力・バリブルーンとの大空中戦、「日輪仮面」の敗北による退陣後に新幹部に就任した「鉄人仮面テムジン将軍」の活躍とも相まって、ミリタリックな方向性での世界観を強化していた。前述の吉川進による『TVガイド』誌でのコメントにある「スケールも大型」を実証していくのだ。


 この大型飛行船「アトランティス号」は、以後の黒十字軍に「対バリブルーン戦力」として登場してくる各種兵器類の基盤ともなる大きな存在感が、当時の子どもたちにはあった。
 それもあってか、第35話「黒い大怪鳥! コンドラー戦斗爆撃隊」(脚本・曽田博久 監督・田口勝彦)より、戦闘員「ゾルダー」たちが操縦する、グライダーのような両翼が付いた三輪自転車型の黒い小型戦闘機「コンドラー」も登場してきて、各話で空中戦が展開されるようになる。これまでの東映等身大ヒーローものにはなかったスケールアップした空中戦が展開されるようになったのだ。



 第27話「黄色い物体Q! ゴレンジャー基地SOS」(脚本・上原正三 監督・折田至)で、なによりも目に付くトピックは、必殺技「ゴレンジャーストーム」が「ニューパワー作戦」にバージョンアップしたことである。
 今度は「エンドボール」がそのまま敵に激突して爆発するのではない。なにか別の「物体」に変化して、敵の「仮面怪人」が意表を突かれたような断末魔を見せることによって、まさに最後の最後まで目が離せない、アイデア満載の作品に進化していくのだ。
 こうしたコミカルな戦闘は、今まで一応は真面目であった作品での「戦い」を、ある意味では茶化してしまったような手法でもあって、受け容れられないと思った真面目な子どもの視聴者もきっとなかにはいただろう。それによって、「卒業」してしまった御仁もいたかもしれない。
 しかし、児童層の大勢には好評を博した。この処置は、『ゴレンジャー』が予想もしなかった方向へと大発展していく、その牽引力ともなっていくのだ。


 ゴレンジャー側の新しい仲間の登場も見逃せない。第32話「青い熱風! バリブルーン応答なし」(脚本・上原正三 監督・北村秀敏)より、スナック・ゴンの愛玩ペットとして九官鳥・ゴンがやってきたのだ。
 「なぞなぞ」に答えられない大岩をからかったりする描写が印象的であった。以後、『ジャッカー電撃隊』(77年)のハムスター、『バトルフィーバーJ』(79年)の九官鳥ロボット・九ちゃん、『電子戦隊デンジマン』(80年)のデンジ犬(けん)・アイシーなど、初期「戦隊シリーズ」に彩りを添えるペットの存在がシリーズの特色となっていく。
 子供ダマしだと思われるかもしれない。しかし、やはり本作は思春期の青少年向けの作品ではないのだ。そして、リアル・シリアス志向のマニアたちとはやはり異なる志向を持った、一般の子どもたちが喜ぶ趣向ではあったのだ。これらの人語をしゃべって戦隊メンバーたちとも会話ができる動物キャラクターたちもまた場をなごませて、子どもたちにも親しみが持てる存在としての立ち位置を確立していくのだ。


 その後の第33話「赤い標的! にせものゴレンジャー出現」(脚本・曽田博久 監督・北村秀敏)では、ヒーロー番組や時代劇の定番でもあった「偽ヒーローネタ」が登場した。
 しかし、同話はよくある、「ウルトラマン」や「仮面ライダー」に「水戸黄門」や「遠山の金さん」などの偽者に見られるような、ヒーローとほとんど同じ姿をした偽者たちとは違って、戦闘員「ゾルダー」と「仮面怪人」が背中にマントを羽織っただけのゴレンジャーであったのだ。良く言えば“パターン破り”、悪く言えばチープな“手抜き”といった印象を与えてもいた。
 もちろん、同話は「ゴレンジャー」を名乗った偽もの出現にまつわる影響・波紋といったコンセプトの方が大きい。偽ものの暗躍によって、イーグル上層部が「ゴレンジャー活動停止命令」を発せられてしまって、その窮地から立ち上がることの方にドラマの主眼が置かれているところに特色があったのだ。


 そんななか、本作のギャグメーカーである大岩大太の「お人好し」な面を付け狙った黒十字軍の「作戦編」も存在する。作劇的にはこれによって、キレンジャーのキャラクター性をも色濃く描いて肉付けしていく試みでもあった。
 第34話「黄色いスパイ戦! 見たかYTCの威力」(脚本・上原正三 監督・北村秀敏)では、「アンドロイド0(ゼロ)」としてゴレンジャーの懐に忍び込もうとする「赤面(せきめん)仮面」の暗躍で、アンドロイドの箱の中に入っていた「アンドロイド協会」の偽の「保証書」を信じ込んでしまった大岩大太が敵の策略にハマってしまう。この“アンドロイド0”はもちろん、上原正三が先に手がけた『ウルトラセブン』第9話「アンドロイド0指令」が出典だろう。


 1話を置いての第36話「真赤な猛進撃! 動く要塞無敵戦艦」(脚本・上原正三 監督・田口勝彦)は、なんと大岩大太には珍しい「ラブロマンス編」だ。黒十字軍は美女・サイボーグQを、異性にモテない大岩に近づけて、ゴレンジャーの秘密を探ろうとする。だが、大岩の真心に打たれたサイボーグこと亜矢は、「軍艦仮面」の弱点を大岩に教えて絶命するといった悲恋が待ち受けていた。
 物語も半年を経過。スケール感を増した戦闘シーンもだが、5人のヒーローそれぞれの個性をより生かしたドラマ作りにもウェイトの置かれた作品が増える時期であった。この時期の「大岩編」はそうした趣向をより強化し、観る側にも印象の強い作品になった。


 先に紹介した「偽ゴレンジャー」のバリエーションが登場する作品も存在する。第37話「真白い閃光! 黒十字総統の正体」(脚本・上原正三 監督・田口勝彦)では、「黒十字軍」と秘密結社「ブラックホール」の調印式が行われることとなる。ゴレンジャーはブラックホールの団員になりすまして調停式に出席する。しかし、そこにいた黒十字総統は偽ものであった! 逆に、総司令を人質に取られて、総司令とゴレンジャーの死刑を総統は命じた。しかし、そこに別のゴレンジャーたちが現われた!
 なんと捕らえられたゴレンジャーは替え玉であったのだ。しかも替え玉ゴレンジャーはモモレンジャーが陽子で、他はイーグル特殊部隊の精鋭隊員たちが正体であった。


 シリーズも中盤。総統の正体といった視聴者の関心をより強く抱かせるカンフル剤に加え、さらに少し前に「偽ヒーロー」ネタがあったなかで、今度はヒーロー側がその“偽ヒーロー”を替え玉として用意するのだ。
 年長のマニアになってから本話を再鑑賞をすると、先の展開は本話での「似て非なる展開」をも考慮してのことだったのかとも思わされてしまうのだ。もちろん、そうでなかったとしても、前後関係を合わせてみれば、そういった解釈でもうなずけてしまうクレバーなエピソードなのだ。


 そして、マニア化してからの再観賞だと、ゴレンジャーには実は予備の隊員や候補もいるといった感じで、イーグルという組織の層の厚みやスケールの大きさといった「リアリティー」をも感じてしまって、ちょっとワクワクしてしまうのだ。
 はるか後年の「戦隊シリーズ」における、『光戦隊マスクマン』(87年)のプロトタイプ戦隊戦士「X1(エックスワン)マスク」や、『鳥人戦隊ジェットマン』(91年)における、裏次元世界ディメンシアの鳥人戦隊3人に、地球防衛軍の第2鳥人戦隊ネオジェットマンなどに対するワクワク感とも同種のものだろう。


*冬季の「地方ロケ編」! そこにも栄枯盛衰を見る! 遠方ロケ編での「鉄人仮面テムジン将軍」の最期!


 こうして敵味方さまざまな手段での「攻防戦」が激化するなか、その決定版として、第38話・第39話、間を開けて第41話の3回分が、本作初の遠方ロケ編として、山陰・鳥取砂丘に出向いての撮影が敢行された。


 第38話「青い断崖! 悪魔の海賊宝さがし」・第39話「真赤な日本海! 怪隕石の超能力」(両作とも脚本・曽田博久 監督・山田稔)では、ペギーが入手した地図の半分と、それを渡してきた男の遺言を頼りに、ゴレンジャーは山陰地方の米子(よなご)に飛んだ。現地で男の弟の黒潮十兵衛と名乗る男に会って地図はそろった。しかし、そこに張り込んでいた「海賊仮面」に地図を奪われる。地図の場所にあった宝物の箱の中には隕石があった。その隕石をめぐっての黒十字軍との争奪戦が描かれていく。


 70年代中盤の東映特撮作品では、遠方地方ロケ編はしばらくなかった。1973年の『仮面ライダーV3』の四国ロケ編や『ロボット刑事』の沖縄ロケ編以来の大規模な地方ロケが実現したのだ。
 特に『仮面ライダーX』と『仮面ライダーアマゾン』の1974年の時期には、オイルショックによる物価急騰の真っただなかといった時代背景もあって、地方ロケ編がなかったのだろう。久々の遠方ロケの敢行には、本作の大ヒットぶりも大きく手伝ってのことであろう。


 「仮面ライダー」シリーズを手がけていた東映のプロデューサー・阿部征司(あべ せいじ)は、本放映当時に手がけた特撮作品での地方ロケについて、自ブログにてこう回想していた。



「結局、最初の1号、2号、V3と最初の頃は遠くまで行って撮影するといった事が一つの宣伝であったことだったと思われるのです。(中略)それに比べて、Xの速水亮君たちは、私自身があちこち探さなかった。(忙しくて、行く暇が無く、現場の進行主任に任せてしまった)それでも、一、二日の地方ロケはよく行っていましたが、東京近辺にも面白い所が沢山あったからです。例えば、那須温泉、草津温泉、浜松の観山寺温泉等熱海沖の初島、東京湾内の猿島等々、更に群馬県にも面白い山々がいっぱいあったのです。でも、思い出に残る程の地方ロケに連れて行ってあげなかった事は申し訳なく思っております。」
(阿部征司ブログ「仮面ライダー40周年記念 仮面ライダーを愛する男」)



 対するに、本作のプロデューサー・吉川進の弁では、



「撮影もおかげさまで、いろいろなところからお呼びがかかりまして、かなりたくさんの所でロケーションをさせていただきました。私もプロデューサーとして、よく同行しましたので、いろいろなところへ行けました(笑)。鳥取、松山を始めとして、ほんとうにしょっちゅうどこかへ行ってたんですよ(笑)。」
(『超世紀大戦隊大全集』(講談社刊)1993年)



 と地方ロケを思い起こしている。


 このふたりの対称的な証言に、人気作の栄枯盛衰と、その結果としての地方ロケの多寡までもが顕著に窺えるのだ。



 前述のように、山陰ロケ編の中休み(?)を飾った第40話「紅の復讐鬼! 地獄のモモレンジャー」(脚本・上原正三 監督・田口勝彦)では、ヒロインが洗脳されて、それによる過失から来る精神的ショックからモモレンジャーへ「転換」できなくなり、それを自力で乗り越えて戦線に復帰するストーリーであった。
 ペギーは洗脳されたフリをして単身で敵地に乗り込み、「“能”(の舞い)を見せたい」と「鉄カゴ仮面」の前に申し出る。しかも、その“能”のシーンが高名な能楽師・野村四郎の指導によるものだった。華麗な着物に身を包んでの舞いの見事さ!
 そして、この回は必殺技の「ゴレンジャーストーム」も「手鞠(てまり)」となっており、“和”のテイストを強調した異色作となっていた。後述するヒロイン・フィーチャー編へのステップとしても記憶されるべきだろう。


 第41話「黒い大逆転! 鳥取砂丘の攻防戦」(脚本・曽田博久 監督・山田稔)では、いったん東京に帰還したゴレンジャーが、東京で新型固形燃料・Z800の発明者・谷口博士を護衛する。その護衛中に、博士の娘・マコが誘拐されてしまう。そのマコをめぐって鳥取砂丘に向かうといった、バトルフィールドの広がりをも描いた作品でもあった。
 そして、ヒーローと怪人の決戦の舞台になった、鳥取砂丘に残った「雪」と「砂」のコントラストの美しさが印象的なエピソードに仕上がっている。実際、関東地方では、このエピソードがシリーズ最高の視聴率を獲得しているだけに、その存在も際立っている。


 こうして、半年近く続いた「鉄人仮面テムジン将軍」の活躍も、いよいよ終わろうとしていた。前述のように相次ぐゴレンジャー打倒の失敗から、今度は「鉄人仮面」が先に敗退した「日輪仮面」の立場に位置するようになった。


 第42話「黒の鉄人死す! さらばバリブルーン」(脚本・上原正三 監督・竹本弘一)がその最期を飾るエピソードに位置する。
 ゴレンジャーは最後の決戦とばかりに、ゴレンジャーストーム・ニューパワー作戦「メガトンストーム」で応戦する! しかし、「鉄人仮面テムジン将軍」は凍結装置でそれをさえぎる! 今度は「回転ゴレンジャーストーム」で反撃を実施! しかし、2度目の攻撃も冷凍装置で同様に封じた!


 「テムジン将軍」は凍結した2個の爆薬を抱いたまま、ゴレンジャーの母艦戦闘機「バリブルーン」に搭乗してしまう! 我が身を賭してまでゴレンジャーを倒そうとしているのだ。
 アオレンジャーは「バリブルーン」をオートコントロール操作するが、凍結していた爆薬が大爆発を起こした! ゴレンジャーへの体当たり特攻を遂げる前に「バリブルーン」ともども「鉄人仮面テムジン将軍」はここに絶命したのであった……。



 「日輪仮面」以上に壮絶な最期を遂げて、しかも「バリブルーン」を道連れにしたとはいえ、結局は敵を倒すことなく惨めに自滅した最期。結果的に組織に追われるようなかたちで去る者の、行き場のない哀れさが強く描かれてもいる。


 その時、「バリブルーン」を「テムジン将軍」に破壊されたゴレンジャー基地に、新たなる「空の要塞」の姿があった。それは万能飛行メカ「バリドリーン」であった。ゴレンジャーの新たなる闘いが幕を開けようとしていた。



 「番組は生きもの」と言わんばかりに、番組開始当初とは大幅に変貌を遂げていく『秘密戦隊ゴレンジャー』。元は『仮面ライダー』シリーズの代替え作品的な位置付けから始まったとはいえ、いつしか『ライダー』を超える人気を獲得し、時代の主役の座に収まるほどの躍進を見せていた。


 この大人気も手伝っての、同じメインタイトルによる2年目へと駒(コマ)を進めた状況に、『仮面ライダー』の1作目がやはり大人気となって、2年目の放映を達成していた快挙を想起させるのだ。放映2年目の物語については、こういった状況についての諸展開を俯瞰してからとしたい。



秘密戦隊ゴレンジャー 主題歌コレクション
<スーパー戦隊シリーズ 30作記念 主題歌コレクション> 秘密戦隊ゴレンジャー


*土曜夜7時台の視聴率戦争! 『ストロンガー』『頭の体操』『クイズダービー』『欽ドン』『まんが日本昔ばなし』!


 『秘密戦隊ゴレンジャー』第1話の視聴率は、関東では15.2%といった数値を上げていた。同じ1975年4月5日にスタートした『仮面ライダーストロンガー』は、関東では20.7%、関西では19.8%の結果であった。『ゴレンジャー』よりは高いが、以後はこの数字は下降傾向を見せていく。
 なお、参考までに言及しよう。前番組『仮面ライダーアマゾン』の最終回は、関東16.1%、関西14.9%と、これまで“西高東低”の見本であった「仮面ライダー」シリーズには珍しく、関西の方が低い終幕となっていた。


 当時の『週刊TVガイド』1975年4月25日号に掲載された、1975年4月の新番組の視聴率ベスト10の記事では、1位が『水戸黄門』(第6部)、2位に『仮面ライダーストロンガー』、そして第10位に我らが『秘密戦隊ゴレンジャー』がランクインしていた(いずれも関東地区の数字でランク付)。


 やがて『ゴレンジャー』は、先輩格の『仮面ライダーストロンガー』を超える視聴率を上げるようになる。しかし、これは『ライダー』が時間枠移動により、裏番組が絶賛放映中の朝日放送制作の大人気テレビアニメ『はじめ人間ギャートルズ』(74年)に当たってしまって、それに喰われてしまった状況に起因する部分もまた大きい。児童の視点で見れば、特撮ヒーローだけでなくギャグアニメだって面白いし好きなのだ。特にギャグアニメは男女を問わずに、高い人気を獲得することが多いこともあるだけに。


 『仮面ライダーストロンガー』の主人公・城茂(じょう しげる)役の荒木しげる(旧名・荒木茂)は、



「実際先輩ライダーが出てくるようになって視聴率もガンガン上がり始めたんですよね。一時は10パーセントを切っていた数字が、最終的には20パーセント近くに上がっていったわけですから。」
(漫画『仮面ライダーSPIRITS』(講談社刊)15巻 2008年)



 と回想している。こうした発言からも、『仮面ライダーストロンガー』の視聴率下降は顕著であった。


 好調に視聴率を上げて、1975年10月18日放映の第26話で遂に20%台に突入する『ゴレンジャー』。しかし、この時期に発売された雑誌『週刊TVガイド』1975年10月24日号には、『仮面ライダー』シリーズ終了の報が掲載されていた。とはいえ、同年の6月26日の制作会議の折にすでにシリーズ終了は決定していた。なお、この記事には「後番組として、75年1月から3月までの3ヵ月間だけ放映されたテレビアニメ『まんが日本昔ばなし』が再開する」ことも報じられていたことが興味深い。
 つまり、マスコミ向けに「仮面ライダー」シリーズ終了が公表されたのが、この10月中旬の時期だったことにはなるのだ。以後、スポーツ新聞の芸能欄などにも、『ライダー』終了関連の記事が掲載されて、ひとつの時代の終焉を物語るのであった。


 『ストロンガー』も最終回に至る「完結編5部作」(第35話~第39話)は、先輩ライダーたちがじょじょに集結してくる「共演」が「目印」となった。1971年からの5年間の集大成を見せるのだ。その最終回(第39話)では、仮面ライダー1号こと本郷猛(ほんごう たけし)を演じた藤岡弘から荒木茂までの素顔のヒーロー7人が、最初で最後の共演を実現。シリーズのフィナーレを締めくくった。
 その「完結編」で最初に登場した先輩ライダーは、『ゴレンジャー』でアオレンジャー・新命明を演じている宮内洋こと、仮面ライダーV3・風見志郎がそのトップバッターを飾っていた。満を持しての登場とばかりに、黒のスズキGT750に乗りながらの手放し変身を披露。この終盤の「完結編」には通算3話分も出演。文字どおり最多出演ライダーとしての地位をものにした。


 ちなみに、今になって思えば、関東地方のように『仮面ライダーストロンガー』が土曜夜7時、『ゴレンジャー』が土曜7時半枠で放送されていた地域に限定して言及すれば、宮内洋の勇姿を続けて1時間分も視聴できる現象が発生していたことにも注目してもらいたい。今風に例えると、この3週間の土曜夜7時台枠は「スーパー宮内ヒーロータイム」とでも表現すればいいかもしれない。
 放映局が違っても、この1時間はファンにとっても子どもたちにとっても記念碑のような一時であったに違いないのだ。演じたキャラクターは違っているので、こうしたロジックでの表現も何なのだが、まさに「日本一のヒーロー俳優」に相応しい状況であった。


 そして、『ゴレンジャー』の高視聴率は、裏番組の『お笑い頭の体操』の視聴率を下げることともなった。よって、1975年12月27日付をもって、TBS系の土曜の7時台の『仮面ライダーストロンガー』と同時に、7時半台の『お笑い頭の体操』も終了してしまうのであった(*16)。
 数年前には『仮面ライダー』の台頭で視聴率が下降した上に、今度はネット改変のために同じTBS系列に移動してきて、その「後座番組」に位置するといったシフトに甘んじ、さらにその後番組『ゴレンジャー』の躍進で番組にピリオドが打たれるという皮肉な末路を迎えたのだ。


 この『お笑い頭の体操』の視聴率下降の一助の役割を果たしたのが、フジテレビが『ゴレンジャー』の裏で放映を開始したバラエティー番組『欽ちゃんのドンとやってみよう!』(75~77年)の存在であった。
 「コント55号」のコンビで絶大なる人気を誇った人気コメディアン・萩本欽一(はぎもと きんいち)がソロでメイン・パーソナリティを務めて、これまでお笑いバラエティー未経験の有名タレントを一躍、コメディアンとしても開花させることで、日本のバラエティー番組史の流れを変えたあの番組である。


 しかも、7時半から9時までの1時間半枠なのだ。8時以降はあの強敵『8時だョ! 全員集合』(69~85年)にも重なることとなった。事実、『欽ドン』が『全員集号』を抜く回も時にはあって、これまでは“浮沈空母”的な存在で、最盛期には50%を超える視聴率を獲得した人気番組に対して大いに善戦したことは、日本のテレビ史上でも特異なケースとして扱えられるトピックだ。
 これらの事情からもおわかりのように、1作目の『仮面ライダー』放送開始時とは違って、たかがこの4年の間に裏番組の成長とその競り合いは、さらに熾烈(しれつ)なものとなっていたのだ。


 だが、TBS・ロート製薬は1976年1月3日より、『頭の体操』の後番組として、人気司会者・大橋巨泉(おおはし きょせん)をそのまま残して(これはスポンサーの意向もあった)、ギャンブル性の強いクイズ番組『クイズダービー』(76~92年)をスタートさせた。
 第1回は正月特番が裏に控えたことも手伝ってか、5.9%(ニールセン社調査分・関東地区)の出だしで、以後しばらくはひと桁の視聴率だった。しかも、2月には4.4%(放映日不明。出典『ゲバゲバ70年! 大橋巨泉自伝』(講談社刊)2004年)といった最低視聴率をはじき出して苦しんだ。
 しかし、当初の番組内での複雑なルールを改めて単純化すると、じょじょに数字を上げていく。同年6月には初の2桁を記録。秋には20%の大台に突入。裏番組である『ゴレンジャー』を追い抜く人気番組に成長。以降は通算17年にも渡るロングランを成し遂げることは、日本のテレビ史上でも極めて目を引くトピックだ。


 一方、『仮面ライダー』シリーズの後番組として、テレビアニメ『まんが日本昔ばなし』が、『クイズダービー』同様に1976年1月3日よりスタートした。同作はすでに前年度の“腸捻転”改変の直前であった1975年1月よりたった3ケ月間だけの放映があったために、純粋な新番組とは言い切れない部分もあるかもしれない。
 ちなみに、この75年版の関西地区での視聴率は13.6%でスタートを切った。しかし、最終回の視聴率は28.1%もの数値にまで達していた。同じ最終回が関東地区で14.4%にとどまったのに対して、東西で倍近い差をつけての幕引きを迎えていたのだ。


 実際、放映終了直前の時期には、すでに週1万通もの助命嘆願リクエストが来ているとも報じられていた(「毎日新聞」大阪版 1975年3月24日夕刊)。当時の毎日放送編成部部長・馬場昭男の弁では、



「はじめからワンクールの契約で、十三本しか制作していないため終了となりました」
(「読売新聞」大阪版 1975年3月29日夕刊)



 上記のとおりであったとのことだ。その後も続いた視聴者からの根強い復活コールを受けて、『仮面ライダーストロンガー』の後番組として、土曜の夜7時台に陣取ったのであった。


 『まんが日本昔ばなし』の新シリーズの視聴率は期待以上のものだった。関西地区では19.8%でスタート。翌週は27.7%と大幅に上昇。続いて29.9%、28.7%、29.1%と30%台を目前に控えて、すでにこの時点で旧シリーズよりも高い数字を獲得している。
 そして2月に入るや、放送開始からわずか1ヶ月なのに、31.1%の大台に突入。当時の関東ではまだ15~16%くらいの数字しか上げていないのに対して、まるで『仮面ライダー』1作目のスタート時以上の「東西格差」を見せつける高視聴率を獲得していたことは、特筆すべき事項であろう。


 やがて、関東でも視聴率は上昇。東西でともに30%以上の数字を稼ぎ出した。しかも、関西では「NHKテレビ小説」を差し置いて、週間視聴率のトップに来ることも多々見られた。1970年代後半=昭和50年代中盤のTBS=毎日放送系が土曜日のゴールデンタイムを首位独走する時代を築き上げていくのであった(*17)。


 なお、『仮面ライダー』シリーズは、以後は再放送によるリバイバルブームなども手伝って、『ストロンガー』終了の数年後や、10年強あとにも復活してきた。しかし、土曜日夜7時枠への復帰は、『昔ばなし』が高視聴率を維持するためにか当然かなわず、別の枠での放映となっていた(*18)。


*『ゴレンジャー』の出版展開! テレビランド・てれびくん・絵本・図鑑! マニア向け書籍の萌芽も!


 『秘密戦隊ゴレンジャー』の原作漫画版の連載誌が「週刊少年サンデー」であったために、出版展開は小学館が中心となった。「サンデー」だけでなく、小学館の学年学習雑誌に漫画や各種記事が掲載されることにもなった。
 学習雑誌の方は、『ゴレンジャー』の放映開始まではウルトラシリーズの『ウルトラマンレオ』をメインに掲載していた。しかし、「第2次怪獣ブーム」の人気下降とともに関連ページは減少。1974年10月よりスタートした『がんばれ!! ロボコン』で、ギャグものは男女を問わずに高い人気を獲得することを証明。『ロボコン』が当時の学年誌における実写作品の中心的な存在へと成長していった。


 当時の新聞記事によると、学年誌(『幼稚園』~『小学六年生』)が7種合計で545万部! 「週刊少年サンデー」も110万部。徳間書店の「テレビランド」が35万部、といった売上数が記載されていた。当時のこれらの子ども向け雑誌のそのウェーブの大きさを物語ってもいる(「読売新聞」東京版 1975年6月29日掲載記事『ロボコン“わりかしいいよ”』より)


 そのようにニューウェーブの『ロボコン』の存在は非常に大きかった。しかし、純粋な特撮ヒーロー作品を求める男児層にとっては、『ウルトラマンレオ』の終了による「ウルトラマン」シリーズの終焉は、ひとつの時代の幕引きを強く感じさせてもいた。


 そこへ『ゴレンジャー』が新たにスタート。新時代の実写ヒーローのニューウェーブの連載開始は、講談社が掲載権を有する『仮面ライダー』シリーズへの対抗馬としても、大きな威力を発揮する。


 また、学年誌と同じサイズの『小学館コミックス』の系列に属するキャラクター番組中心の児童誌『小学館BOOK』の後継者として、同誌を「小学館」ならぬ『小学生ブック』としてリニューアルした新雑誌が1974年4月に誕生した。しかし、弱体化していた「ウルトラ」シリーズは創刊号とその次の号くらいで鳴りを潜めてしまう。そして、宣弘社制作の実写カンフーアクションテレビドラマ『闘え! ドラゴン』(74年)をメインで扱ったものの結局、半年ほどで休刊の憂き目に遭ってしまう。


 そして、その約2年後。小学館は講談社の『テレビマガジン』、徳間書店の『テレビランド』に対抗する子ども向けキャラクター番組誌『てれびくん』を1976年5月に創刊した。キャッチコピーは「小学館のテレビ教育雑誌」だ。対外的には「学年誌」の兄弟分といった位置付けであったのだろう。
 メインキャラクターは当然、『ゴレンジャー』と『ロボコン』になった。『てれびくん』のシンボルキャラクターとなったそのコミカライズは、この2大作品の作者・石森章太郎自身が手がけていた。


 当時の小学館の全学年誌でも連載されていた人気漫画『ドラえもん』(69年~)も、テレビアニメ化などは当時はなかったものの、早くも1976年9月号より掲載されている。しかし、『てれびくん』が大ブレイクするのは、さらに2年後の1978年の『ウルトラマン』のリバイバルブーム(第3次怪獣ブーム)の時期であった。『ゴレンジャー』の時代は、まだまだ誌面を熟成させていくための過渡期にあったといえるだろう。



 「絵本」関連では、70年代前半の第2次怪獣ブームの折、ウルトラシリーズを筆頭に、『ミラーマン』(71年)・『シルバー仮面』(71年)・『アイアンキング』(72年)・『人造人間キカイダー』(72年)などの諸作品のスチル写真で構成された「絵本」を刊行した「小学館の絵文庫」シリーズにて、『ゴレンジャー』の「絵本」がリリースされている。『ゴレンジャー』の第73話でも、太郎少年が読んでいる本として劇中に登場していた。



 次は小学館に続いて、徳間書店のキャラクター番組誌『テレビランド』を紹介しよう。「変身ブーム」の絶頂期であった『仮面ライダーV3』の放映スタートと同時期の1973年2月に創刊。「変身ブーム」の中核であった東映ヒーローを実写・アニメの双方で扱ったことが幸いし、変身ブーム下降後も巨大ロボットアニメ『マジンガーZ』『ゲッターロボ』と、テレビ特撮の『がんばれ!! ロボコン』を連載したことで、高い人気を獲得していた。
 1975年4月号では、『仮面ライダーストロンガー』と『正義のシンボル コンドールマン』、そして『秘密戦隊ゴレンジャー』を「目印」に、“1975年春季の新番組・東映特撮御三家”が連載開始を飾っていた。


 以後は人気が下降していく「仮面ライダー」シリーズと、上昇していく『ゴレンジャー』とで、誌面での特撮ヒーロー作品主役の座を交替していく。つまり、グラビア記事では同誌の中心格へと成長。さらに兄弟誌の『別冊テレビランド』では、本誌以上の詳細な「特集記事」や「読み切り漫画」を掲載。『小学生BOOK』の休刊後に、小学館が児童向けテレビキャラクター雑誌を刊行していなかったこともあってか、キャラクター作品を一手に担っていたのだ。


 ちなみに、この『テレビランド』の「別冊」名義での『別冊テレビランド』の扱いで、1977年には本邦初の青少年向けのアニメムックの歴史を築いて、子ども向けから若者向け、そして大人向けのアニメ本の端緒(たんしょ)を築いたマニア向けムックの新レーベル『ロマンアルバム』も誕生して、1986年までは精力的に70冊近くも発行し続けていた。
 それは当時の新旧のテレビアニメ作品を映画専門誌なみのバリューで扱い、ストーリーガイド・スタッフ人名録・関係者インタビューを掲載するといった構成で編集。現在までに至るアニメ・特撮専門書籍の曙(あけぼの)として位置する、当時の青少年やマニア気質の子どもたちにも衝撃を与えた画期的なムックなのであった。
 この『ロマンアルバム』を母体にして、翌1978年には早くも中高生以上を読者対象として設定した、初のアニメ専門月刊誌『アニメージュ』が誕生することも、歴史上重要なトピックである。
 『ゴレンジャー』が、徳間書店の『テレビランド』の隆盛にも大いに影響を与えて、さらにこの『テレビランド』からは2大ブランドが発足したことを、ジャンルの歴史としては忘れてはならないのだ。


 『テレビランド』に連載された子ども向けテレビヒーロー作品のコミカライズの単行本化を行う『テレビランドコミックス』のレーベルも誕生した。そして、この『ゴレンジャー』がその口火を切ったのだ。
 以後は、『がんばれ!! ロボコン』『グレートマジンガー』『ゲッターロボG』などがこの1975年度に刊行されている。しかし、この種の子ども向けテレビ番組コミカライズ単行本の常ともいうべき現象も起きている。その作品の最終回に至るまでの全エピソードが収録されることはほとんどなくて、連載途中分までで終了。しかも、第1巻だけで終わることが多数であったのだ。


 そして、新書判サイズで「図鑑」形式の書籍シリーズ『テレビランドワンパック』(後に『テレビランドわんぱっく』に改題)も登場した。このブランドの発足も特筆すべき事項で、その栄光の第1巻がまたこの『ゴレンジャー』であった。以後も当時の『テレビランド』にて掲載されていたテレビ番組の「図鑑」を続刊する。しかし、やがて1980年代に入って、ファミリーコンピューター(83年~)に始まる家庭用テレビゲーム機器の大ブームから、「ゲーム攻略本」もこの『わんぱっく』のレーベルとして続刊されるようになっている。


 他には、朝日ソノラマ・栄光社・ひかりのくに出版・エルムなどから各種の絵本類が刊行されている。しかし、作品の大人気に比べると、その種類は1960年代後半の「怪獣ブーム」や70年代前半の「変身ブーム」時期に比べて減少した感は否めなかった。


*『秘密戦隊ゴレンジャー』の玩具展開! 合金玩具・ソフビ人形・プラモデル・各種小物・ほか!


 特撮ヒーロー番組の玩具展開も、70年代前半の「変身ブーム」を経て多岐多様化。その主役的な存在の『仮面ライダー』の大ヒットによって、「バンダイ」は大躍進を遂げた。その業績によって、同社の系列会社として今は亡き「ポピー」も設立。さらに枝葉を広げたアイテムが登場。子どもの目を引きつけるグッズ展開がなされた。


 『ゴレンジャー』の玩具は、「超合金」「ポピニカ」、それにミニサイズの「ソフビ人形(ソフトビニール人形)」の類を「ポピー」から、レッドマシーンやバリブルーンの「プラモデル」や、スタンダードサイズの「ソフビ人形」を「バンダイ」が発売していた。
 レッドマシーン・ブルーマシーン・グリーンマシーン・バリブルーン・レッドスター・ブルースター・グリーンスター・バリドリーン・バリタンク・バリキキューンの乗りもの類は、ポピーのダイキャスト製玩具ミニカーの「ポピニカ」ブランドで商品化。アカレンジャーからミドレンジャーのヒーロー5人が、それぞれ合金製フィギュアとして「超合金」のブランドで商品化された。


 特にポピニカ製のバリブルーンは、2011年公開の映画『ゴーカイジャーVSゴセイジャー スーパー戦隊199 ヒーロー大決戦』でも、その玩具それ自体が劇中に登場することになった。映画を観に来ていたお父さん世代の「これ(バリブルーンのポピニカ玩具)、むかし持っていたなぁ」といったノスタルジーを誘発する役割だ。そして、クライマックスでは劇中内での実物大の巨大戦闘機としても巨大化・実体化! 海賊戦隊ゴーカイジャーたちの巨大ロボット・ゴーカイオーの背中に合体してゴレンゴーカイオーとなって自由自在に空を飛び、世界の窮地を救う役どころでの大活躍を見せていた。


 「超合金」は元来、『マジンガーZ』の商品化でロボットヒーローの合金製フィギュアのブランドとして誕生。金属の質感でロボットの重量感を再現して、ソフビ人形やプラモデルにはない存在感を見事に表現して、ヒットアイテムとなっていた。しかし、そんななかで、ロボットでない等身大ヒーロー・仮面ライダーアマゾンの「超合金」も登場していた。
 右手はマジンガーにならって「ロケットパンチ」の発射ギミック、左手は「ギギの腕輪」の脱着ギミックと、劇中では存在しなかったギミックを投入して、玩具としてのプレイバリューに尽力していた。しかし、アマゾンライダーの「布製の衣装」と「FRP製マスク」が織り成す独自の質感は、「亜鉛合金」の玩具ではイメージが違ったのか、ヒットアイテムにはならなかった。
 そこで『ゴレンジャー』は、腕と脚の関節可動ギミックだけに落ち着いて、「レッドビュート」や「ブルーチェリー」といった武器の脱着は可能にし、実物の再現よりかは「合金製玩具」の実写ヒーローのニューウェーブとしての試行錯誤的な印象も見受けられる。


 前述の「合金製玩具」以外にも目を向ければ当時、サーカスなどでも行われていた、オートバイのアクロバット走行を玩具でも再現する『冒険オートバイ チャレンジマシーン』の存在が特筆ものであろう。
 実在のスタントマンであるイーブル・クニーブル(2007年死去)の「愛車」と「コスチューム」を立体化し、「専用スタンド」にバイクをセットして「コース」を走行させれば、ジャンプしてアクロバット走行を再現できるアイテムであった。そのシリーズ内にて『仮面ライダーストロンガー』のオートバイ・カブトローと、『ゴレンジャー』のオートバイ・レッドマシーンがラインアップされたのだ。
 当時としては大型商品の高級アイテムであったがゆえに、店頭に展示されているものを眺めているだけで、入手はできなかった世代人も多いかとは思われる。しかし、その商品名を聞けば、あの「チャレーンジマシーン~♪ ゆけ! アカレンジャー~!」のCMソングが脳内再生されるといった向きもあるかと思われる。


 この『チャレンジマシーン』を買うと、ゴレンジャーハリケーンの「ボール」が全員もれなくプレゼント、といった実に豪華な「チャレンジマシーン ハリケーン大作戦キャンペーン」も行われていた。売れにくい高額商品のプロモーションに腐心したメーカー側の尽力がうかがえる。


 他には、


●『おはなし』シリーズのトーキング機能付きのソフビ人形(アカレンジャーのみ発売)
●全長25cm前後のプラスチック製のバリブルーンとバリドリーン(のちの『プラデラ』シリーズの先駆け)
●すごろく形式のボードゲーム『ゴレンジャー大ぎゃくてんゲーム』


 なども登場した。またシリーズ後半になって、


●『ゴレンジャー隊員セット』の品名で、少年隊員手帳・銀玉鉄砲・バッジ・キーステッカー・レッドハンターをアタッシュケース内にセットしたアイテム
●変身前の海城剛から明日香健二までのヘルメット『ゴレンジャー隊員ヘルメット』(CMには誠直也のみが出演)


 先に『チャレンジマシーン』の箇所にて言及した、


●ゴレンジャーハリケーン用のボール


 なども発売されていた。



 なお、『仮面ライダー』で大好評を博していた「変身ベルト」については、セルロイドの「お面」とセットになった廉価版は発売されていたようだ(両腰部の飛行用の小型ロケットブースター「バーディー」も可動する)。しかし、電動ギミックを有するものは商品化されていなかった。
 劇中では「ベルト」を使って変身することがなく、また同じく劇中でもベルトの「バックル」にはギミックがなかったので、アイテム化する上での「目印」には欠けたせいかもしれない。


 ミニサイズの「ソフビ人形」は単体袋入りで発売。「超合金」同様に、ポリエチレン製の「武器」(レッドビュート・ブルーチェリーなど)が付属していた。
 しかし、シリーズ後半に入って、「ゴレンジャーハリケーン」の「ボール」もソフビで再現。スケールはヒーローたちのサイズには合わなかったものの、すでに発売済みのミニサイズソフビ人形5体とセットした『秘密戦隊ゴレンジャー ハリケーンセット』なるアイテムも発売されていた。


 バンダイは「プラモデル」が中心であった。アカレンジャーからミドレンジャーまでのフィギュアは、「単品箱入り」。駄菓子屋では、「台紙アソート売り」「5点セット売り」で発売された。つまり、予算に合わせて1点ずつ集めるか、一度に買うかの双方を選択できたのだ。
 また、接着剤を使用しないキットで、その名が示すとおり、「パズル」のようにパーツの分解組立が自在な商品『パズルモ』シリーズでも、アカレンジャーのみがキット化されている。
 「レッドマシーン」などのオートバイは、ゼンマイ動力のギミックを備えており走行可能であった。しかし、付属のヒーローのフィギュアは、前述の立ちポーズのフィギュアの流用で、ライディングポーズではなかったことが残念であった。これは以後の放映2年目の新しいオートバイ「スターマシーン」でも同様であった。


 バンダイのプラモデル「仮面ライダー」シリーズのオートバイは、「大サイズ」と「小サイズ」に別れていた(*19)。「大サイズ」の方では、バイクにまたがった仮面ライダーをそのまま商品化。ゼンマイボックスにより走行が可能であった。ボックスは取り外しも可能で、実車のプラモデルとも同様に、スタンドによるディスプレイモデルとしての側面も有するという構成であった。
 しかし「小サイズ」の方は、『マスコットシリーズ』の名称でリリースされて、立ちポーズのヒーローのフィギュアと、全長13cm前後のオートバイが付属する形式となっていた。


 『ゴレンジャー』のバイクキットは、ライダーの『マスコットシリーズ』のサイズとも、商品コンセプトで踏襲していた。そこに、『マスコットシリーズ』でも『仮面ライダーアマゾン』より導入されたゼンマイ走行ギミックを導入している。
 なお、シリーズ後期のオートバイ「ブルースター」「グリーンスター」は、『ミニゼンマイシリーズ』のラインで商品化されていた。しかし、シリーズ前期の「ブルーマシーン」「グリーンマシーン」に見られたようなヒーローフィギュアの同梱はなく、バイクのみのキット化となっていた。


 「バリブルーン」もゼンマイ走行で、「大サイズ」と「小サイズ」の2種類が発売された。『大サイズ』はコクピットが透明パーツで、搭乗するゴレンジャーのフィギュアも別パーツで再現されており、実に手の込んだキットに仕上がっていた。この「小サイズ」は単品売りのみならず、以前に同社より発売されていた『ウルトラセブン』の秘密基地の建物を流用していた『バリブルーン秘密基地』の商品の中にも同梱されていた。


 「バリブルーン」の後継者「バリドリーン」も大小の2サイズで商品化されていた。「大サイズ」はモーター走行のギミックを搭載。そして、同スケールの「バリタンク」を搭載も可能だった。これが伸縮自在のスロープを伝って走行できる優れもので、この時代のバンダイ実写ヒーロープラモでも破格の扱いのキットであった。
 だが、コクピットが「バリブルーン」とは違って、透明の別パーツではなく、ボディーパーツと一体成型で、青色などの絵の具による塗装で再現する形式となっていた。折り畳み式の両翼もプラスチックではなく厚紙製であった。手の込んだギミックとは裏腹に、ディティールで前作よりもランクダウンしていたので、残念な感も受ける。


 なお、「バリタンク」は『ミニゼンマイシリーズ』よりもコンパクトなサイズで、「コロ走行」(手押しでの車輪走行)のギミックを有していた。しかし、「レッドスター」「ブルースター」「グリーンスター」とともに、箱入りのミニキットをシュリンクでパックした「4点セット売り」の1体としての存在であった(「バリキキューン」はキット化自体がされなかった)。
 今となれば、ゼンマイやモーターでの走行ギミックを装備していた「バリタンク」なども欲しかった気にさせられる。


 「ソフビ人形」は、「袋入り」でマスク脱着可能のスタンダードサイズ(23cm前後)と、「箱入り」で両腰部のバーディーからミサイルが発射可能な『ミサイルゴレンジャー』なるアイテムも発売されていた。
 この時期は他社でも、ブルマアク社から『電人ザボーガー』や「メカゴジラ」のミサイル発射ギミック付きのソフビ人形が発売されており、新機軸を打ち出していた時代だった。それだけに、このミサイル発射システムは脚光を浴びていたのだろう。


*『東映まんがまつり』枠での「実写特撮」での『ゴレンジャー』のメインプログラム化!


 昭和の時代の東映映画を代表する児童向け興行枠として、劇場用長編アニメ映画と特撮・アニメのテレビシリーズ複数本をまとめて上映する『東映まんがまつり』(*20)の枠が存在していた。
 人気のテレビ作品も、当時は地方での民放(民間放送)の数が少なかったことから、オンエアが遅れていた作品や、未放映に終わった作品を観ることができる興行としてのアイデンティを有する枠としても人気があった。


 あの『仮面ライダー』(1作目)ですら、番組開始当初は未放映の地域が多かったのだ。この『東映まんがまつり』での上映が初視聴となった地方のファンも多かったと聞く。その『仮面ライダー』がこの『東映まんがまつり』の人気の火付け役となって、ライバルである東宝の『東宝チャンピオンまつり』に差を付けることにも成功する。最初はテレビシリーズの16ミリフィルムの35ミリへのブローアップ版による上映だったものの、劇場用完全新作映画の制作・公開に踏み切って、“変身ブーム”時代の『東映まんがまつり』の主軸を担うのであった。


 だが、1972年12月にスタートしたテレビアニメ『マジンガーZ』の大ヒット。その大ヒット作の劇場映画化に際して、同じく永井豪原作のテレビアニメ『デビルマン』(72年)を交えての、別世界のふたりの主人公が両雄として共演した革命的な映画『マジンガーZ対デビルマン』(73年)を、1973年度の夏季興行にて公開。これもまた大ヒットに至ったのだ。
 以後、「変身ブーム」の衰退も手伝って、「東映まんがまつり」の主役の座が「仮面ライダー」から「マジンガー」シリーズへと移行。さらに「マジンガー」と両輪で人気を集めることとなった合体ロボットアニメ『ゲッターロボ』の登場ともあいあって、それらのジョイント映画『グレートマジンガー対ゲッターロボ』なども1975年3月の春季興行にて公開された。まさに東映の昭和30年代(1955~1964年)における「オールスター時代劇」の作劇を子ども向け作品で実践した作りは、児童層の絶大なる支持を得ることになったのだ。
 『仮面ライダー』シリーズの新作劇場映画は、1974年度の夏季興行の『5人ライダー対キングダーク』(74年)(『仮面ライダーX』の劇場映画版)でいったん終了。以後は『東映まんがまつり』での『仮面ライダー』はテレビシリーズのブローアップ作品にとどまる結果になった。


 そんな時代の変化のなかで、『秘密戦隊ゴレンジャー』はこの『東映まんがまつり』でどのような展開を見せたのか?


 一番最初に『ゴレンジャー』が映画館で上映されたのは、放映開始から間もない1975年7月26日公開の『東映まんがまつり』の夏季興行であった。この際の同時上映作品に目を向けると、


●名作東映アニメ映画のリバイバル上映『ちびっ子レミと名犬カピより 家なき子』(75年)(『ちびっ子レミと名犬カピ』(70年)の改題・再上映)
●グレートマジンガーとゲッターロボGの競演作『グレートマジンガー対ゲッターロボG 空中大激突』(75年)
●永井豪原作で、同年秋からの「マジンガー」シリーズ第3作目のテレビアニメシリーズ『UFO(ユーフォー)ロボ グレンダイザー』(75年)の原型になったオリジナル新作映画『宇宙円盤大戦争』(75年)


 アニメ映画が3作もプログラムされていたのだ。実写特撮作品のブームの下降を痛感させられてしまう。その実写作品にも目を向けると、


●人工飼育の子ライオンを野生に返す、名作洋画『野生のエルザ』(66年)のダイジェスト版
●テレビシリーズ『仮面ライダーストロンガー』(第7話)
●『がんばれ!! ロボコン』(第30話)
●そして、この本題の『秘密戦隊ゴレンジャー』(第6話)


 以上のプログラムとなっていた。これらの7作品を合計すると、相当な上映時間になってしまう。そのために、この75年夏季の『東映まんがまつり』でのテレビシリーズのブローアップ作品は、本編が数分ずつカットされての上映になっていた。
 なお、第1期「仮面ライダー」シリーズの『まんがまつり』枠での上映はこれが最後になった。この1975年夏季興行でもって、『ライダー』から『ゴレンジャー』への実写作品の王座はバトンタッチされていたのだ。


 以後、『ゴレンジャー』は、


●1975年度の冬季興行(同年12月20日公開)にて、『秘密戦隊ゴレンジャー 青い大要塞』と題して、第15話を。
●翌1976年度の春季興行(同年3月20日公開)にて、『秘密戦隊ゴレンジャー 真赤な猛進撃!』の題にて、第36話を。
●1976年度の冬季興行(同年12月19日公開)にて、『秘密戦隊ゴレンジャー 火の山最後の大噴火』と改題して、第54話を上映している。


 そして、1976年度の夏季興行(1976年7月22日公開)では、唯一の劇場新作映画『秘密戦隊ゴレンジャー 爆弾ハリケーン!』(76年)が公開されている。


 この『爆弾ハリケーン!』は、以後に続く「スーパー戦隊シリーズ」初の劇場用新作映画となった。この時の同時上映作品に目を向けると、


●定番となっていた、過去の長編東映アニメ映画のリバイバル上映『アリババと40匹の盗賊』(初回上映・71年)
●劇場版マジンガーシリーズ最終作『グレンダイザー・ゲッターロボG・グレートマジンガー 決戦! 大海獣』
●『ゴレンジャー』同様の劇場用新作映画『ザ・カゲスター』
●テレビシリーズのブローアップ『宇宙鉄人キョーダイン』
●同じくテレビアニメシリーズのブローアップ『一休さん 虎たいじ』
●これまで「東宝チャンピオンまつり」での上映が多かった、「世界名作劇場」シリーズ(*21)のテレビアニメ『母をたずねて三千里』(76年)


 以上の計7本にて上映されていた。


 劇場新作映画『秘密戦隊ゴレンジャー 爆弾ハリケーン!』の制作体制については、1973年度の夏季興行にて公開された『仮面ライダーV3対デストロン怪人』同様に、テレビシリーズの地方ロケ編と並行して、劇場映画の撮影も行うといったシステムであった。テレビの方は第58話・第59話・第61話がその該当話数に相当している。
 『V3』同様に、日本高速フェリーK.Kの「さんふらわぁ」号と「ホテル奥道後(おく・どうご)」とのタイアップ、高知~愛媛を舞台に展開といったあたりまで、『V3』映画にならうかたちで行われていた。しかし、大きな違いとして、クライマックスのロケ地が、『V3』では高知県の高知城、『ゴレンジャー』では愛媛県の松山城といった差異は存在している。ひょっとして、モモレンジャーのペギー松山のネーミングから、松山城にしたのだろうか?(笑)


 この映画版のゲスト怪人の「ランク」や「名称」にも、映画版ならではの扱いが見られた。この映画の主役怪人「鋼鉄剣竜」はその名が示すとおりで、「鋼鉄仮面」や「剣竜仮面」に「鋼鉄剣竜仮面」ではなかった。「仮面」抜きでの「鋼鉄剣竜」なのだ。
 上半身を覆うまでに伸びる恐竜型のプロテクターは、もはや「仮面」の域を超えた面積を有している。「仮面怪人」ではない。それを超えた「ランク」扱いでの登場なのだ。
 彼の素性も、黒十字軍きっての「無法者」で、深山の牢獄に鎖で繋がれて幽閉されていたという、彼の凶暴性を強調する過去設定になっていた。この通常のテレビシリーズの「仮面怪人」以上の「ランク」と「出自」を感じさせるキャラクターも、映画版ゆえの大きなバリューであった。


 『仮面ライダーストロンガー』にて第1期「仮面ライダー」シリーズが終了。以後の実写特撮作品の筆頭格として、『東映まんがまつり』にもその座を確立した『ゴレンジャー』。同作放映末期の1976年度の冬季興行に至るまで途切れることなく、『まんがまつり』の枠内にて上映が行われていたことが、やはりその存在と人気の大きさを物語っているだろう。



秘密戦隊ゴレンジャー 爆弾ハリケーン!(アマゾン・プライム)
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*『ゴレンジャー』のゲストの数々! ゲスト俳優・名バイプレイヤー列伝!


 この項では、印象的なゲスト俳優とその役柄を順に列記していこう。ゲストの顔ぶれや名前の方で、各エピソードを検索する際の参考資料になれば幸いである。

●はやみ竜次(はやみ りゅうじ) 第1話(海城分隊長(海城剛の兄) 画面には役名は出ず)


 ご存じ、『快傑ズバット』の宿敵・首領L(エル)役として、特撮マニアには知られている。本作では、その『ズバット』の主人公・早川健(演・宮内洋)の親友・飛鳥五郎(演・岡崎二朗)のように、弟の胸の中で息絶える役を演じているのが興味深い。


●松谷紀代子(まつや きよこ) 第1話(幼稚園の保育士)


 『ウルトラマンタロウ』(73年)の防衛チーム・ZAT(ザット)の森山隊員としても有名。1970年代の塩野義製薬の鎮痛剤・セデスの新聞広告やテレビCMでもお馴染みのタレントであった。


●山本廉(やまもと れん) 第2話(工藤博士)、第59話(中林)


 東宝出身だが、のちに「劇団NLT」に移籍した経歴を持つベテラン。怪獣映画『ゴジラ』第1作目(54年)に始まり、テレビ特撮でも初代『ウルトラマン』における隕石を怪獣ギャンゴに変貌させた鬼田、『ウルトラセブン』のイカルス星人の人間態などで、特撮ファンにはおなじみの名優だ。


●長沢大(ながさわ だい) 第3話(イーグル工作員003)


 秘密爆弾の情報を得るために黒十字軍の研究所に潜入するが、正体がバレて「青銅仮面」の吹き矢の餌食になった。吉川進プロデュース作品はもちろん、変身ブーム時期には各社で多くの特撮作品にて助演。昭和の特撮界を代表する名優・岸田森(きしだ しん)とは古くからの親友で、『太陽戦隊サンバルカン』第2話でのゲスト出演は、長沢と同作に太陽戦隊の長官として出演する岸田との親交が深いことを知っての吉川の尽力による実現であった。


●杉義一(すぎ ぎいち) 第3話(研究所所長)、第49話(偽研究所の所長 「角骨仮面」の変装)、第60話(横井博士)、劇場版(ホテル支配人)


 大阪名物「くいだおれ人形」のモデルとして知られる俳優・杉狂児(すぎ きょうじ)の長男。芸能プロダクション・東京放映の社長でもある。子息・杉欣也(すぎ きんや)は後年の『太陽戦隊サンバルカン』で、青い戦隊ヒーロー・バルシャーク/鮫島欣也(さめじま きんや)役を演じていた。


●打田康比古(うちだ やすひこ) 第4話(無藤細菌研究所所員)


 「ヒスイ仮面」に占領された無藤細菌研究所の所員で、怪人の配下として暗躍するが、本物は研究所の地下室に幽閉されていた。特撮作品では『仮面ライダーX』のライバル戦士・アポロガイスト役、『超神(ちょうじん)ビビューン』(76年)の3人ヒーローのうちのひとりである超神ズシーンに変身する渡部剛(わたべ ごう)役での活躍が印象的だ。


●蝦名由紀子(えびな ゆきこ) 第10話(ユキ)


 悪人と知らず「翼(つばさ)仮面」になつく少女を好演。名子役としても活躍。本作以外にも多くの特撮作品に助演している。『がんばれ!! ロボコン』では、シリーズ後半に登場する小川家の長女・まゆみ役でレギュー出演。その後は、映画『東京大空襲 ガラスのうさぎ』(79年)で主演して脚光を浴びた。高校生時代に浅沼友紀子へと改名。月曜ドラマランド枠の『どっきり天馬先生』(83年)などにも出演したが、以後は芸能界を引退した。


●潮健児(うしお けんじ) 第14話(スピードメッセンジャー・コック(ゾルダーの変装))、第50話(弁士 「鉄ワナ仮面」の変装)


 ご存じ、『仮面ライダー』の敵幹部・地獄大使が当たり役で、「怪獣ブーム」~「変身ブーム」時期の東映特撮の悪役の帝王的な存在だ。第50話の撮影時には、氏としては珍しいことに正義のヒーローを演じた、東映特撮『忍者キャプター』の7戦士のなかのひとりでもあったオレンジ色のヒーロー「雷忍キャプター1(ワン)」を演じ始めた頃だと推測する。なお、第14話では「潮健二」と表記されていた。


●大田黒武生(おおたぐろ たけお) 第16話(イーグル隊員)、第28話(大田黒武生(労務者))、第73話(イーグル隊員)


 第28話では、劇中に大田黒が所有する免許証が映し出されて、そこに記載されている名前が演者の本名のままだったので、役名も大田黒武生になると判断してそう記載した。そのむかし、学園テレビドラマの大人気作『飛び出せ! 青春』(72年)にて女生徒・生田みどり役を演じた女優・大田黒久美(おおたぐろ くみ)の実兄だ。大田黒は前述の長沢大とも同様に「劇団NLT」出身でもあった。他にも、『仮面ライダー』第12話・『人造人間キカイダー』第5話・『イナズマン』第19話など、多くの特撮作品に助演している。近年では、ライブハウスでの音楽活動も行なっているそうだ。


●賀川雪絵(現・賀川ゆき絵) 第19話(ミス・サファイヤ)


 黒十字軍とゴレンジャーの双方を手玉に取ろうとする女スパイを好演。元は映画会社・大映の出身だ。のちに東映に移籍し、石井輝男監督の映画で「お色気」と「女の業」を持ち味にしたキャラクターを多く演じて、日本の映画史に足跡を残した。彼女も吉川作品の常連として名高い。古くは『ブラック・チェンバー』に始まり、『スパイダーマン』(78年)・『太陽戦隊サンバルカン』(81年)・『巨獣特捜ジャスピオン』(85年)と、レギュラーの女敵幹部を存在感あふれる気高い演技で演じ切っていた。


●上野山功一(うえのやま こういち) 第31話(黒十字軍諜報部員)


 日活・大映と渡り歩いた邦画黄金期の名バイブレーヤー(脇役)は、「変身ブーム」期にも特撮界の名バイブレーヤーとして活躍した。その代表作『イナズマンF』の副主人公・荒井誠役では、人間ドラマ部分のハードな世界を色濃く肉付け、頼れる主人公の兄貴分を好演していた。


●中田博久(なかた ひろひさ) 第33話(イーグル参謀)


 東映の宇宙SFテレビドラマ『キャプテンウルトラ』の主人公として世代人には高名。それ以降の世代には現代劇・時代劇の両方での「悪役」としての方が馴染み深い。本作ではゴレンジャーの上官として登場。「正義」側での年齢に応じた出世ぶりには感激するが、どちらかといえば冷徹なイメージを有する上官役を演じることになった。


●八名信夫(やな のぶお) 第53話(死神博士)


 シリーズ屈指の「ギャグ怪人編」での登場。しかも、『仮面ライダー』第1作目にも同名の「死神博士」なるキャラクターがいるので、最初に役名を知ったときは驚かされた。すぐ直後に、レギュラーとして敵首領「黒十字総統」の役を名優・安藤三男(あんどう みつお)より引き継いだ。しかし第54話・第55話は、安藤の演技に彼が声を当てたものであった。第56話より八名が顔出しと声の両方で総統を演じるようになる。つまり、八名は第53話より最終回(第84話)までの連続出演になったわけだ。
 また、第53話での「野球」にちなんだエピソードでの登板は、彼が過去にプロ野球チーム・東映フライヤーズ(現・北海道日本ハムファイターズ)のピッチャーであったことにも起因していたのかもしれない。事実、後番組『ジャッカー電撃隊』での野球関連の怪人・デビルボールの回で、クライムボス役でゲスト出演していただけに。


●ラビット関根(現・関根勤) 第57話(トラックの運転手(劇中での名前は不明))


 本作を代表する最大級メジャー・ゲストスターが彼であろう。今やベテラン・コメディアンとして不動の地位をものにしている。本作への出演は、TBS夕方5時台の平日帯番組で人気若者向け番組であった『ぎんざNOW(ナウ)!』(72~79年)で、彼が世に出始めた時期のことでもあった。


●藍ともこ(あい ともこ) 第77話(小村道子)


 村で起こった異変をゴレンジャーに手紙で知らせたが、すでに抹殺されており、「鉄ヘビ仮面」にその姿を奪われてしまった女子高生役。『ウルトラマンレオ』の防衛チーム・MAC(マック)の松木隊員役で女優デビュー。以後は映画『メカゴジラの逆襲』で悲劇のヒロイン・真船桂(まふね かつら)役を好演した。本来、『ザ・カゲスター』の変身ヒロイン・風村鈴子も演じる予定であったが、実際は早川絵美(現・誠直也夫人)に変わってしまった。


●大前均(おおまえ ひとし) 第78話(黒川隊員)


 イーグル第三支部隊員・黒川役で、敵の猛攻に倒れて、その姿を「マンモス仮面」に利用される役柄だ。むかしからその身長190センチの巨体を生かして、迫力あふれる怪力漢専門の魔王的な存在の俳優でもあった。特撮作品での助演も数多い。レギュラーキャラでは、『電子戦隊デンジマン』終盤のバンリキ魔王役が有名だ。本作『ゴレンジャー』では、本来は悪役でないイーグルの隊員役を演じることになった。


●伴直弥(ばん なおや)(現・伴大介) 第81話(横田少尉)


 ミドレンジャー・明日香健二の先輩という役柄だ。明日香役の伊藤幸雄とは、後年のスーパー戦隊シリーズ『バトルフィーバーJ』(79年)でも、先輩・後輩の間柄でキャスティングされていたのが何やら奇遇であった。『人造人間キカイダー』の主人公・ジローが出世作だ。そして、この作品にゲスト出演する直前まで、『忍者キャプター』の主人公ヒーロー・火忍キャプター7(セブン)こと出雲大介(いずも だいすけ)役で活躍していた。「変身ブーム期」の東映ヒーローの「西の横綱」級の俳優なのだ。なお、本作では「伴直也」として表記されていた。


●滝雅也(たき まさや) 第82話(魔術師)


 実際にもヨーヨーの名人としても知られる滝が、素顔で華麗なヨーヨーアクションを披露。さらに、声優としても実績があるだけに「ヨーヨー仮面」の声も自らが演じている。のちに、東映制作の大人気テレビドラマ『スケバン刑事』シリーズ(85~87年)のヨーヨーアクション指導も滝が務めていたのは有名だ。


●池田駿介(いけだ しゅんすけ) 第83話(大古二郎(だいご じろう))


 イーグル北海道支部ではペギーの上官だったが、黒十字軍の襲撃で行方不明になり、突如としてペギーの前に姿を現した。『ゴレンジャー大全集』などでは「醍醐次郎」と記載されていて、おそらくシナリオではその表記なのだろうが、劇中でのマンションの表札には「大古二郎」の表記で記載されていたので、映像に準拠してこう記載した。『キカイダー01』の主人公・イチロー役として、日本はおろか、同作が放映されて大ヒットしたハワイでも有名。伴直弥に続く「キカイダーシリーズ」主演俳優のゲスト出演に、当時の子ども視聴者は度肝を抜かれた。


●轟謙二(とどろき けんじ) 第21話~23話(清水博士)、第38話~第39話(黒潮十兵衛)、第59話~第60話(イーグル四国支部上官)、劇場版(ケン・伊藤)


 意外にも最多ゲスト出演俳優がこの轟であった。博士・秘宝のキーマン・イーグルの上官・死の商人。それぞれ違った素性の役柄を見事に演じ分けていた。俳優でありながら、ツアー・コンダクターとしての顔も持つ。実は大御所の時代劇俳優・市川右太衛門(いちかわ うたえもん)の愛弟子でもあり、歌手としての側面も有する多才な人物であった。本作でも地方ロケ編ではツアコン&俳優として活躍。



 この『ゴレンジャー』自体が、「イーグル」という組織と「黒十字軍」という組織とのプロフェッショナル同士の対決といった図式を持っていたことから、民間人のゲストが実は少ない。黒十字軍も着ぐるみの幹部・仮面怪人・戦闘員なので、顔出しの悪役ゲストもあまりいなかったせいか、リストアップしてみてもゲスト俳優の数が少ない。


 ちなみに、長じてマニア化してから本作を再鑑賞すると、イーグル隊員役の多くを演じていたのは、大野剣友会やJAC(ジャック=ジャパン・アクション・クラブ)のメンバーたちであることがわかって、そこがまた楽しめてしまうところだ。


*放映2年目の『ゴレンジャー』! 新武器! 新バイク! 新メカがぞくぞく登場!


 『ゴレンジャー』は1年目の放映を終えて、2年目へと延長された。『仮面ライダー』第1作目も放映2年目への突入を境に、ヒーローのコスチュームのカラーリングをチェンジ。愛車サイクロン号のニューサイクロン号へのモデルチェンジ。少年仮面ライダー隊の発足。宿敵ショッカーの幹部交替。そして、敵組織がショッカーからゲルショッカーへの拡大などの変更が大きな「目印」となって、新展開への牽引力となっていた。『ゴレンジャー』でも同様に、いくつかのマイナーチェンジを行っている。
 これはマーチャンダイジングの要請でもあり、キャラクター商品ありきでの制作体制が確立されたゆえの模様替えでもあった。しかし、「目先」を新しくすることで、子どもたちにも新鮮さを感じ取ってもらって、飽きを回避することにもつながるのであれば、それは決して悪いことではないだろう。


 まず、飛行機メカ「バリブルーン」が、「鉄人仮面テムジン将軍」に奪われてゴレンジャーへの特攻を目論むが、それに失敗して双方ともに大空に散ったことにより大破する。そして、シャープなデザインの「バリドリーン」が後継機種として活躍を開始するのだ。
 それに加えて、装甲車「バリタンク」が第44話より登場する。「ハンドジャイロ」と称する長大なマジックハンドを装備。それを使って地中に潜ったり、谷間を越えたりする大掛かりな「特撮」場面も見ものだ。ポピーの玩具・ポピニカも、このマジックハンドの可動ギミックの再現を売りにしていた。


 次に主人公の駆るオートバイだ。仮面ライダーのサイクロン号がニューサイクロン号に変わったケースと同様に、「レッドマシーン」「ブルーマシーン」「グリーンマシーン」のオートバイが、「レッドスター」「ブルースター」「グリーンスター」の通称「スターマシーン」としてモデルチェンジした。ベース車種も前回同様に、スズキGT750とGT380の同じ車種を使用してのモデルチェンジの実行でもあった。
 その交替劇もきちんとドラマとして描かれている。第55話にて「レッドマシーン」「ブルーマシーン」「グリーンマシーン」は、「ナバローン要塞」への自爆特攻によって最期を迎えたからだ。


 だいぶ時期を置いて、飛行メカ「バリキキューン」が第69話から登場。「空母」「戦車」「気球」を交えて、より戦力を強化して、黒十字軍への対抗戦力を拡大することで、映像的にもスケール感を拡大していくのだ。


 商品化を前提にして、変身前の5人が着用するヘルメットも、ふつうのバイク用ヘルメットではなく、彼らのシンボルマークを配した統一感あふれるイメージに変更。実際、当時はこのヘルメットもポピーより玩具化されていた。「ウルトラマン」シリーズにおける防衛チームのヘルメットが、定番商品化されていたこともあってだろうが、このスタイルは後番組『ジャッカー電撃隊』にも継承されていく。



 そして、ゴレンジャーのマスクから取り出す武器も、「ゴレンジャースーツ」のパワーアップとともにモデルチェンジした。


●アカレンジャーの「レッドビュート」が、「ニューレッドビュート」&マジックハンドを装備した「レッドハンター」へ。
●アオレンジャーの「ブルーチェリー」は、「ウルトラブルーチェリー」に。
●キレンジャーは通信器の「YTC」で、以前は武器になるものは保持していなかったのだが、棒型の「キーステッカー」。
●モモレンジャーは「モモミラー」から、「モモカード」に。
●ミドレンジャーの「ミドメラン」は、「ウルトラミドメラン」、さらに「ミドパンチャー」も加えたモデルチェンジを実行。


 当時、ポピーから発売中の「超合金」シリーズのゴレンジャーの付属武器も、テレビに合わせてモデルチェンジされていた。


*『ゴレンジャー』のアクション演出! 「大野剣友会」から「JAC」への交代!


 アクションも、第1話から担当してきた「大野剣友会」から、第66話より「JAC」(ジャック=ジャパン・アクション・クラブ。現ジャパン・アクション・エンタープライズ)に交替した。同時期の東映特撮作品のアクション担当を俯瞰すると、


●『秘密戦隊ゴレンジャー』『宇宙鉄人キョーダイン』『ザ・カゲスター』 大野剣友会
●『アクマイザー3』『超神ビビューン』 JAC
●『忍者キャプター』 ビッグアクション


 なお、『忍者キャプター』(76年)の殺陣を担当した「ビッグアクション」は、「大野剣友会」の高橋一俊が1976年に独立して興したアクションチームだ。キレンジャーのスーツアクターを務めた田中耕三郎や、同じく大野剣友会所属の中村裕を引き連れて設立したものだ。
 2011年現在では、この田中が代表役に就任。そして、大阪に拠点を移動。総合芸能プロダクションの有限会社「オフィス・ビッグ」として事業を拡大。そのなかの1セクションとして、今も「ビッグアクション」は存在している。


 「JAC」は設立当初の「日本アクションクラブ」時代から、『柔道一直線』にてトランポリンアクションを担当。引き続いて『仮面ライダー』でも同様のトランポリンアクションのパートで参加した。しかし、1973年の『ロボット刑事』で全面的にアクションを受け持つことになった。なお、『ロボット刑事』シリーズ前半の殺陣師は、元キックボクサーで少林寺拳法の有段者の武道家というよりも、今では俳優・筒井道隆の実父として名高い風間健(かざま けん)が担当したことは、アクションマニア間では有名である(*22)。


 以後、『正義のシンボル コンドールマン』『アクマイザー3』『超神ビビューン』でのアクション演出を経て、当時の特撮作品の人気の中枢にあった『ゴレンジャー』のアクションを全面的に、しかも前任の「大野剣友会」からの「引継ぎ」といったかたちで、JACが担当することとなったのだ。



 アカレンジャーのスーツアクターは、当初は新堀和男だけが引き続いて番組に残るような話もあったらしい。しかし、彼の「仲間を置いて自分だけが残れない」といった意思表示から、結果的には降板している(漫画『仮面ライダーSPIRITS』(01年〜)15巻(講談社刊)2008年)。そして、JACの高橋健二(現・大葉健二)が、後任として担当することになったのだ。


 つまり、JACに入団後、着実にキャリアを積んできた高橋が、初のメインスーツアクターの座に収まったのだ。なお、新堀と高橋は後年の『バトルフィーバーJ』と『電子戦隊デンジマン』にて、スーツアクターとしての共演を成し遂げている。高橋は1979年に千葉真一の命名で、千葉から「葉」の1文字をもらって「大葉健二」に改名。しかも、この2作品では「変身前の素顔」のシーンと「変身後のヒーロー」のシーンの両方を演じる大活躍であった。


 他には、以下の配役であった。


●『人造人間キカイダー』でライバル・ハカイダーを演じた益田哲夫が、アオレンジャー
●建部豊が、キレンジャー
●横山稔(よこやま みのる。のちに『星雲仮面マシンマン』(84年)のアクション監督)が、モモレンジャー
●当時、若干19歳だった村上潤(むらかみ じゅん。のちに『宇宙刑事ギャバン』(82年)のスーツアクターや『仮面ライダーBLACK(ブラック)』(87年)などのアクション監督)が、ミドレンジャー


 そして、2011年現在も現役で活躍中の岡本美登(おかもと よしのり)が時折、アカレンジャーやアオレンジャーの着ぐるみスーツに入っていた。


 殺陣師はJACの山岡淳二が担当(本作では山岡順二と記載)。断続的ながら、1996年の『激走戦隊カーレンジャー』のシリーズ前半まで、長きに渡って「戦隊シリーズ」を代表する殺陣師=アクション監督として、その地位を不動のものにする第一歩を踏み出したのであった。


 JACが担当になり、ゴレンジャーの決めポーズや名乗りポーズもすべて変更になった。前任の「大野剣友会」に負けじと大きな動きを見せており、さらなる新時代のヒーローアクションへの確立が始まるのだ。


 特徴として、『ロボット刑事』などとも同様に、画面からは見えないところに小型トランポリンを多用。軽快なアクションも増えた。さらに、シリーズ後期の必殺技「ゴレンジャーハリケーン」も、空中宙転してから「エンドボール」をパスするパターンを導入した。また、六段蹴り・六人斬りなどに見られるアクションの高度化も顕著であった。
 なお、後楽園遊園地でのショーは引き続いて「大野剣友会」が担当した。テレビシリーズではJACと山岡淳二が引き続いてアクションを担当した後番組『ジャッカー電撃隊』でも、後楽園遊園地でのショーは「大野剣友会」が担当していた。しかし、さらなる後番組が非ヒーロー路線の『透明ドリちゃん』(78年)となったために、その後のショーのプログラムを埋めるために誕生した作品が、大野剣友会の創設者・大野幸太郎原作で、1978年4月から東京12チャンネル(現・テレビ東京)でテレビ放映されることになった『UFO(ユーフォー)大戦争 戦え!レッドタイガー』(78年)(制作・創英舎)なのであった。


 プロデューサーの吉川進は、当時のJACの主宰者・千葉真一とは親交が深かった。吉川が担当した『キカイダー01』のビジンダー役にて、JAC出身にしてかの後年の名女優・志穂美悦子もデビューを飾っていたくらいだ。しかも、そのエピソードは千葉真一自らがアクションを指導したのだ。吉川は以降も、千葉主演の『ザ・ボディガード』『ザ・ゴリラ7』をプロデュースしてきた。


 この「大野剣友会」から「JAC」への交代(*23)については、吉川進がこう語っている。



「当時は大野剣友会が、ライダーとかいろいろな作品をやっていたので、ゴレンジャーでの彼らがちょっと疲れているように見えたんですね。それで途中からJACに交代したんです。ただ、これには剣友会が怒ってね、「吉川ブン殴ってやる」という感じで険悪な空気になったんです。それでJACの金田(治)くんなんかは「吉川さんは僕らが身体を張って守ります」ってなっちゃって(笑)。勿論(もちろん)、後でちゃんと和解しましたから。」
(『特撮ニュータイプ』(角川書店刊)2011年1月号)


*『ゴレンジャー』の影響! 1976年のテレビ特撮が激増! ヒーローの戦隊化! 玩具会社も戦国時代!


 『ゴレンジャー』が2年目に入って、「仮面ライダー」シリーズは終了したこともあってか、同時期の各社の特撮作品は明らかに『ゴレンジャー』にインスパイアされた、「複数名のヒーローユニット」も「目印」にした、個性的な作品を送り出してきていた。
 まず東映では、『ゴレンジャー』開始から半年後の1975年10月よりタカトクトイス提供でスタートした、「3人」の超人ヒーローが活躍する『アクマイザー3(スリー)』の存在を忘れてはならない。


 スポンサーの玩具会社・タカトクが力を入れて、バンダイ=ポピー&東映の路線に対抗すべく、東映の実写特撮作品を提供することとなったのだ。
 なお、意外に思われるかもしれないが、タカトクも実は『仮面ライダー』の商品をリリースしていた。特にポピーでも大ヒットした「変身ベルト」だ。実は一番最初はタカトクで「変身ベルト」は商品化されていたのだ。しかし、ベルトの「風車」の「電動回転ギミック」がなかったので、ヒットはしなかったのだ。ポピーが商品化したときにはタカトク製品との差をつけるために、「電動ギミック」を搭載することになった。値段もその分、高くなったが、テレビ番組同様にベルトの風車が回転するシステムで大ヒットとなり、東映&『仮面ライダー』=バンダイ&ポピーの連携をより強める結果となっていた。


 いま思えば「軒(のき。ひさし)を貸して、母屋(おもや)を取られる」的な現象でもあった。特撮作品の商戦に出遅れてしまったタカトクは、スポンサーとして特撮作品に参加することによって、攻めの商品展開に乗り出す。
 しかし、『アクマイザー3』は、75年4月よりスタートした人気テレビアニメ『サザエさん』(69年~)の火曜夜7時枠での「再放送」(75~97年)が裏番組になってしまった。第1話の視聴率は、7.8%とひと桁に終わっている。しかし、以後も実写特撮路線を開拓するために、タカトクは積極的に放映枠の獲得に乗り出していく。
 以後はアニメも含めて、バンダイ=ポピー以外の玩具会社も東映作品のスポンサーの位置に収まることが増えていった。そして、より加速した商品展開が行われるようにもなっていく。


 『ゴレンジャー』放映2年目の1976年4月にスタートした東映特撮の新番組についても言及しよう。


●『人造人間キカイダー』と『キカイダー01』で確立された「ロボット兄弟」のコンセプトを押し進めて、「身代わりロボット」として、その母体となった「人間の兄弟」の存在をも軸に見据えて、新しいロボットヒーローの確立を目指していた、「2人」のヒーロー体制の『宇宙鉄人キョーダイン』。
●元・石森プロの野口竜をキャラクターデザイナーに迎えて、「平社員」と「社長令嬢」とのミスマッチングな組み合わせによる男女“格差”ペアで、サラリーマン社会を俯瞰する要素も有して、カゲスターとベルスターのやはり「2人」の男女の変身ヒーローが活躍する『ザ・カゲスター』。
●そして、おなじみ「忍者」のモチーフを使って、SF漫画『超人ロック』(67~20年)で有名な聖悠紀(ひじり ゆき)による独自のビジュアルワークスにて、「忍者版ゴレンジャー」的なコンセプトも有していた、「7人」で「7色」のグループヒーロー『忍者キャプター』。


 なお、これらの作品のメインスポンサーは皆、ポピーであった。


 1976年度の東映以外の、他社の特撮ヒーロー作品も見渡そう。


●当初は東映での制作を意図していたが、円谷プロでの制作へと至った、永井豪・石川賢原作の『プロレスの星 アステカイザー』(76年)
●同じく永井豪・石川賢原作だが、こちらは国際放映が制作して、テレビアニメの永井作品を多く手掛けてきた辻真先(つじ まさき)が桂真佐喜(かつら まさき)名義でシナリオを担当し、監督は山田健(やまだ たけし)・土屋啓之介(つちや けいのすけ)といった新東宝の出身者に、東宝出身の長野卓(ながの たかし)といった異色の人材が集結していた、「3人」の男女ヒーローが活躍する『バトルホーク』(76年)


 これらのダイナミックプロ原作の特撮ヒーローたちの存在も忘れられない。両作ともに1976年10月のスタートであった。


●「実写」と「アニメ」の合成を「売り」に、「アニメ」(日本サンライズ担当)で「人物」、「実写特撮」で「恐竜」と「メカニック」を描いた、円谷プロの意欲作『恐竜探検隊ボーンフリー』(76年)


●初代『ウルトラマン』の成田亨(なりた とおる)をビジュアルワークスに招いて、当時のUFOブームに便乗して、東宝版『ゴレンジャー』的なイメージも有する、子ども2人も含めた「5人」のグループヒーローとして送り込まれた『円盤戦争バンキッド』(76年)


 こういった実に個性的な特撮ヒーロー番組が登場。これまた、1976年10月のスタートでもあった。この時期を基準にすると、その数年前の70年代前半の「変身ブーム」の絶頂期に近い大量の作品が、突如として放映される活況を見せていく。これらも『ゴレンジャー』の大ヒットが後押しして実現した企画でもあっただろう。



 ちなみに、1976年度の春の新番組の放映開始時期のキャラクター番組の視聴率を集計した記事が、当時の『トイジャーナル』(1976年5月号)に掲載されていた。その数字をここに掲載しておこう。


≪新番組≫


大空魔竜ガイキング   16.4%
UFO戦士ダイアポロン  7.6%
忍者キャプター     12.7%
宇宙鉄人キョーダイン  12.1%
ザ・カゲスター     11.5%
ゴワッパー5ゴーダム   5.7%
マシンハヤブサ     10.2%


≪主な続映番組≫


サザエさん       34.6%
元祖天才バカボン    13.9%
グレンダイザー     20.9%
タイムボカン      24.8%
鋼鉄ジーグ        7.6%
アクマイザー3      8.6%
母をたずねて三千里   24.5%
秘密戦隊ゴレンジャー  19.0%


(東京地区 ビデオ・リサーチ社調べ いずれも1976年度4月初回分)
(*番組名は出典元に準じて記載)



 当時の諸作品の視聴率の度合いが、これでご理解いただけると思う(巨大ロボットアニメ『ゴワッパー5(ファイブ) ゴーダム』(76年)の低視聴率は、絶賛放映中であった同じく巨大ロボットアニメ『UFOロボ グレンダイザー』の裏番組であったことが大きい)。


 『仮面ライダー』のヒットで特撮界が活性化したように、『ゴレンジャー』のヒットが再度、特撮界を再活性化させたのでもあった。しかし、これにはスポンサーである玩具会社の存在も大きい。各社も“ポスト・ゴレンジャー”を目指して、新番組のスポンサードに取り組むこととなったからだ。


 ここでは諸作品のスポンサーである玩具会社に目を向けて、1976年度の各社の実写特撮作品の「提供シェア」を俯瞰してみたい(テレビアニメ作品は誌面の都合上、今回は扱わない)。



●ポピー
 『秘密戦隊ゴレンジャー』『宇宙鉄人キョーダイン』『ザ・カゲスター』『忍者キャプター』『がんばれ!! ロボコン』『5年3組魔法組』


●タケミ
 『バトルホーク』


●タカトク
 『円盤戦争バンキッド』『アクマイザー3』『超神ビビューン』『ぐるぐるメダマン』


●米沢玩具 
 『プロレスの星 アステカイザー』


●トミー
 『恐竜探検隊ボーンフリー』



 明らかにポピー=バンダイグループが優勢なのだ。これに、テレビアニメの『UFOロボ グレンダイザー』(75年)に、『大空魔竜(だいくうまりゅう)ガイキング』『超電磁ロボ コン・バトラーV』『マシンハヤブサ』『ポールのミラクル大作戦』(いずれも76年)も加えれば、さらに大きなものであったことがわかるだろう。


 だが、1976年度の後半よりジワジワと人気を集めていた新たなるウェーブが、キャラクター玩具業界の淘汰を迫ってきていた。「週刊少年ジャンプ」(68年~)に連載されていた大人気漫画『サーキットの狼』(75~79年)に端を発する、外国製の高級・高性能スポーツカーこと通称「スーパーカー」に対する、当時の子ども間での大人気による「スーパーカーブーム」の到来であった。これについては、別にしたためる『ジャッカー電撃隊』の「総論」にて言及したい。


 それから、当時のキャラクター玩具界を語るうえで、かのブルマアク社の存在がないと気づかれた向きもあると思う。この時期、同社の特撮作品での活躍はたしかになかったのだ。しかし、巨大ロボットアニメ『UFO(ユーフォー)戦士ダイアポロン』(76年)(*24)、その後番組のギャグアニメ『ロボっ子ビートン』(76年)をスポンサード。「ウルトラマン」シリーズを失ってしまったあとも健闘はしていたのだ。しかし、翌1977年に到来した「スーパーカーブーム」には乗れなかったこともあってか、あえなく倒産の憂き目を迎えてしまった。


 奇しくも、さらに翌年の1978年には「ウルトラマン」のリバイバルブームが巻き起こった。しかし、倒産したブルマアクに代わって、ポピー=バンダイが「ウルトラマン」関連の商品(ヒーロー・怪獣)を売り出していくのだ。
 この「ウルトラマン」のリバイバルブームがもう少し早ければ、ブルマアク倒産は免れたのかもしれない。ブルマアク世代のファンの間には、そうした無念が常に存在している。


*『ゴレンジャー』の5人グループ体制は、隆盛を極めていた巨大ロボットアニメにまで影響!


 さらに、「戦隊」のコンセプトは実写作品のみならず、合体ロボットアニメの方にも導入されていった。


●東映本社と創映舎(のちの日本サンライズ→現・サンライズ)による『超電磁ロボ コン・バトラーV』
●タツノコプロ制作の『ゴワッパー5 ゴーダム』(76年)


 これらの作品では、5人で構成されたパイロットによるチームを結成。前者は彼らが操縦する5機の飛行メカが合体すると巨大ロボットが完成するコンセプトであった。後者はその逆に、1体のロボットを5人のメンバーで操縦することによって、『マジンガーZ』のようなひとりの主人公が1体の巨大ロボットを操縦するパターンからの脱却を実現させた。


 奇しくもその後、本家の「戦隊シリーズ」がこのパターンを、シリーズ第3作目となる『バトルフィーバーJ』(79年)での巨大ロボット導入とともに加えていったのであった。


 余談ではあるが、『ゴーダム』企画時の候補タイトルには、『アバレンジャー』というものもあったそうだ。スーパー戦隊シリーズ『爆竜戦隊アバレンジャー』(03年)を四半世紀以上もさかのぼる時点でだ。これには同作を企画したのであろう75年当時には『ゴレンジャー』の影響で、「集団ヒーロー」=「〇〇レンジャー」といった発想がはたらいて、それにあやかろうとしたのであろう。他にも、ギャグアニメ『ロボっ子ビートン』にも、悪ガキたちで結成した「ガキレンジャー」なる集団が登場していた。


 そして、ヒーローの複数化に次ぐ路線として、今度は主役の人型の巨大ロボットそれ自体が「4体」も同時に登場してしまう、タツノコプロ分派の「葦(あし)プロダクション」が制作したロボットアニメ『ブロッカー軍団Ⅳ(フォー) マシーンブラスター』(76年)まで登場している。


 当時の『ゴレンジャー』の影響が、業界も含めていかに大きく、その波及効果は絶大なるものであったことを、世代人の子どもたちであれば、その時代の記憶と実感とともに理解してもらえることとも思うのだ。
 もちろん、玩具を売るためのストーリー展開が重視はされている。それゆえに、ひとりよりも複数のヒーローキャラクターやメカを出すほうがその分、商品点数も増やせて売上も上がるのだといった、当時の玩具会社の大人たちの商魂に準じてのものであったことも、理解はしてはいるものの……。



秘密戦隊ゴレンジャー オリジナル・サウンドトラック
Columbia Sound Treasure Series「秘密戦隊ゴレンジャー」オリジナル・サウンドトラック


*放映2年目の『秘密戦隊ゴレンジャー』の新展開&ストーリー!


 本項では、2年目の『ゴレンジャー』のストーリー展開を軸として、そのトピックを追ってみよう。


●第3部 「火の山仮面マグマン将軍」着任時期 第43話~第53話


 第43話「真赤な不死鳥(フェニックス)! 無敵バリドリーン登場」(脚本・上原正三 監督・竹本弘一)では、まだ3月下旬の放映だったが、実質的には放映2年目に突入せんとする新シリーズを飾るのに相応しく、盛りだくさんの内容で送るエピソードに仕上がっていた。


 前回で「鉄人仮面テムジン将軍」の手により大破してしまった「バリブルーン」の後継機種として、新たなる飛行メカ「バリドリーン」が登場! 対する黒十字軍が迎えた新幹部「火の山仮面マグマン将軍」と「侵略要塞ナバローン」の登場と猛襲! 同話のゲスト怪人「ダイヤモンド仮面」に「ゴレンジャースーツ」の秘密を奪われてしまって、そのために「ニューゴレンジャースーツ」と必殺技「ゴレンジャーストーム」の強化版である「ゴレンジャーハリケーン」へのバージョンアップを迫られるといった展開であった。


 『仮面ライダー』(1作目)に例えるならば、「新1号編」の第1話となった第53話「怪人ジャガーマン 決死のオートバイ戦」(脚本・伊上勝 監督・山田稔)に位置するような作品でもある。2年目突入の第1回目、敵幹部の交代などの共通項を有しているので、ここで『ライダー』を引き合いに出しての表現とした。
 しかし、『ゴレンジャー』の方が、意外にも“激戦”“苦闘”の印象を色濃く描いてもいた。等身大の変身ヒーロー第1号として試行錯誤であった『仮面ライダー』第1作目と、すでに膨大なる変身ヒーローものでの各種の作劇的な蓄積の上に立っていた『ゴレンジャー』との違いもあったのだろう。
 「敵の将軍交代による戦力の強大化」→「これまでの正義側の戦力では敗北」→「ヒーローの強化」の図式が明確に描かれていたのだ。変身ヒーロー特撮番組の作り方が「より激しく」そして「高等化」して、そのエピソードでは何を描いて何を魅せるのか、といったことを明確化している印象さえ与えるのだ。


 他には、「目印」として、OPとEDの主題歌の映像も、登場メカのモデルチェンジを受けて、映像パターンが大幅に変わっていた。


 第44話「青い万能戦車! バリタンク発進」(脚本・上原正三 監督・竹本弘一)より、新型戦車「バリタンク」が登場した。宿敵・黒十字総統のスタイルも、これまでの頭巾で素顔を覆ったものから、人間の顔面としての素顔を露出し、それが黒い十字の中心に来るコスチュームに変更となった。
 この回に登場した「エレキ仮面」はゴレンジャー基地を探すために「スナック・ゴン」に出没。店の調理台からカウンターまでをも破壊してしまった。


 続く、76年4月の第1週に放映された第45話「暗黒の剣鮫! 海の殺し屋襲来」(脚本・上原正三 監督・山田稔)より、これまでのヒーローの憩いの場であり、秘密基地への入口でもあった「スナック・ゴン」は、「フルーツパーラー・ゴン」として新装開店することで、番組の「目先」を変えるのであった。


 さらに、番組フォーマットに目を向けると、中CMの前後にはさむ「アイキャッチ」のアートを変更。そして、「次回予告編」がこれまで半年間続いてきた「なぞなぞ」形式でなくなり、通常の「次回エピソードのあらすじ紹介」形式に戻っている点が目に付く。


 新規展開のフォーマットが一段落したと思ったら、続く4月の第2週に放映された第46話「黒い超特急! 機関車仮面大暴走」(脚本・上原正三 監督・山田稔)では、本作が誇るギャグ怪人の代表選手の1体である「機関車仮面」の登場であった。
 懐かしのテレビ番組を扱う80年代中盤以降のバラエティー番組や、特撮マニア間でも語り草となってきた、「新幹線」を追い抜く走行シーンに見られるように、ただひたすらに走り回るキャラクターだけでなく、「怪人形態」から「機関車形態」に変形するフォームチェンジも見ものとなった。
 当時期の東映の新番組『宇宙鉄人キョーダイン』でも、この後年でいうところのフォームチェンジがセールスポイントであって、人型ヒーローがミサイルやジェット機にも変身(変型)すらしていたのだ。敵のゲスト怪人ロボット・ダダロイドも同作のシリーズ初期にはフォームチェンジをしており、「怪人形態」と「マシン形態」への変形合戦がセールスポイントであっただけに、そうした子どもウケする変型ギミック要素からのインスパイアも感じられるのだ。


 この1976年初夏の時期には、「機関車仮面」と並ぶ名物「ギャグ怪人」がもう1体いたことも忘れられない。第53話「赤いホームラン王! 必殺の背番号1」(脚本・曽田博久 監督・山田稔)に登場した「野球仮面」のことだ。
 ゴレンジャーは「野球仮面」に一度は敗退するが、再度挑戦。最後はゴレンジャーハリケーン「変化球」でアタック。「野球仮面」をリモコンボールで見事に三振に追いやった。そして、「野球仮面」は、


 「遂に引退の時が来たか……。さらば……」


 などと、1974年秋のプロ野球チーム・巨人軍の長嶋茂雄選手の有名な引退演説時の「引退」の語句とも掛けている遺言とともに爆死する!
 野球のフォーマットを盛り込んだバトルシーン。しかも、戦闘員を加えたチームワークの乱れが敗北につながって、そして何よりもわかりやすい「三振」での敗退。トドメに「引退」の語句! といった作劇で、『ゴレンジャー』を代表する人気エピソードの地位へと押し上げたのだ。


 個性的な「ギャグ怪人」の印象が強かったこの時期も、いよいよ1976年6月放映の最終話でもある第54話「真赤な挑戦! 火の山最期の大噴火」(脚本・上原正三 監督・田口勝彦)で、ひとまず幕となる。すでにフォーマット化していた、相次ぐ失敗のなかで次期幹部候補の将軍怪人の登場によって、「火の山仮面」は退陣を迎えるのだった。


 「火の山仮面」が見たのは、黒十字総統と戦闘員たちが黄金の「棺桶」に向かって何かの祈祷(きとう)を捧げている光景であった。「火の山仮面」はその「棺桶」が次期幹部候補の「ゴールデン仮面大将軍」のもので、彼を甦らせるための儀式だと知った。
 名誉挽回とばかりに「火の山仮面」は残った戦闘員を集めて、「ナバローン要塞」でイーグル基地を破壊していく。しかし、対するゴレンジャーは3台のオートバイ「レッドマシーン」「ブルーマシーン」「グリーンマシーン」を使って、「ナバローン」内部への特攻反撃に挑んだ。
 「ナバローン」の爆発破壊には成功したが、「火の山仮面」はまだ死んではいなかった。傷つきながらも復讐に燃えるが、ゴレンジャーハリケーンの前に敗れ去るのであった……。


 「火の山仮面マグマン将軍」の最期となった必殺技「ゴレンジャーハリケーン」のシーンだけは、物語の本筋はハードであっても、見ていて思わず噴いてしまうような描写を行っている。「ゴレンジャーハリケーン」のギャグセンスも番組の独自の大きな要素・特色として成長していたことを物語ってもいるのだ。しかも、ふだん食事で日常的に接しているニワトリの「卵」がネタで、「火の山」の熱でゆでようとするのだが、


 「生(ナマ)じゃ喰えん。ゆでてやる。うまそうだ。喰っちまえ。(……体内で「卵」が大爆発!) ……俺は悔しい~~~!!(爆炎のイメージのなかで……)」


 といった最期のセリフが大将軍らしからぬ滑稽(こっけい)さを醸し出し、大笑いのうちに「幕」になるといった「ゴレンジャースタイル」の典型を行くフィナーレでもあった。


●第4部 「ゴールデン仮面大将軍」着任時期 第55話~第84話


 まず、なによりもこの「第4部」突入した第1話に該当する、1976年7月の第1週に放映された第55話「金色の大将軍! ツタンカーメンの呪い」(脚本・上原正三 監督・田口勝彦)が、シリーズでも「イベント目白押し」のエピソードであったことが注目である。


 前話で登場した、次期幹部となる「ゴールデン仮面大将軍」の存在はもちろんだが、それ以上に最大の「目印」となった、キレンジャーの交代について言及しよう。突如としてゴレンジャールームに現れたひとりの男・熊野大五郎が、2代目キレンジャーになるのだ。
 この熊野大五郎は、イーグル内で選抜されていた「ゴレンジャー予備隊員」であった。しかし、大岩が古巣の九州支部の教官として赴任したために、成績優秀の大五郎が2代目キレンジャーに就任することが総司令より明かされる。


 書籍『ゴレンジャー大全集』では、畠山麦のスケジュールの都合と記載している。実際、当時の「大阪新聞」1976年7月5日掲載の記事によれば、76年4月スタートの日本テレビの下町人情コメディーのテレビドラマ『あがり一丁!』(76年)(主演・松方弘樹)に専念するために、降番したような旨で記載がなされていたのだ。
 後年、畠山の自殺の件を世に知らしめた「朝日新聞」掲載のコラム『くちこみ 無名戦士』では、松方弘樹も畠山の個性的な演技を買って、自分が主演の映画にも出していたといった旨が記載されていた。よって、実際にもこの『あがり一丁!』に出演するための一時降番だったのだろう。


 特にこの回では、2代目キレンジャー・熊野大五郎が初の転換(変身)で失敗したために、アカレンジャーに「精神を統一するんだ」と言われて、ようやく変身に成功する描写が子ども心にも印象的であった。
 テレビの前の子どもたちも、最初の変身がうまくいかなかったキレンジャーに対して、学校で勉強やスポーツでうまくいかなかった、あるいはテストで良い点が取れなかったときのコンプレックスを、この2代目キレンジャーのシーンに対しては微量には投影してしまったことだろう。
 子どものみならず大人も含めて、基本的には「あこがれ」「憧憬」の対象でもあるべきものとしてのヒーローではある。しかし、複数ヒーロー制を採ったことで、結果的にではあっても、「弱さ」や「身近さ」といった「親近感」をも喚起するヒーロー像を、同時に一挙に配置もできてしまっていたのだ。こんなところにも、「戦隊シリーズ」などの集団ヒーローものの作劇的な利点があったのだ。そして、子ども向け番組の範疇ではあったのだが、ドラマ的・テーマ的な広がりをも担保ができていくのだ。


 だるま次郎が演じる2代目キレンジャー・熊野大五郎は大食漢で力自慢。そして、名前に“大”の字がつくために、愛称も「大ちゃん」といった先代との共通点はあった。しかし、こちらは甘党で「あんみつ」が好物といったキャラクターで差を付けていた。これには「ゴレンジャールーム」の仮の姿が「フルーツパーラー・ゴン」に変わったゆえの設定でもあったのだろう。だが、キレンジャーはカレーが大好物というイメージが強かったのか、熊野もカレーを食するシーンも以降は存在した。


 さらに、前回で「要塞ナバローン」破壊のために、爆破してしまった「レッドマシーン」などのあとを受けて登場するニューマシーン「レッドスター」「ブルースター」「グリーンスター」も含めて、多くの「目印」が放映2年目への快走を目指していたのだ。


*ヒロインの「七変化編」登場! その来歴とは!? 後世への多大なる影響!


 その新キレンジャー就任後の第56話「青い夏休み! 魔の殺人海岸」(脚本・高久進、新井光 監督・山田稔)にて、伊豆ロケによるゴレンジャーの「夏休み編」を挟んで、以後の戦隊シリーズでは「定番」としての立ち位置を確立する「ファッションショー」的なコンセプトを交えた「ヒロインの七変化編」も登場した。それが第57話「黒い包囲網! 五つの顔のペギー」(脚本・曽田博久 監督・山田稔)であった。


 西多摩市上流から流れ込んだ火薬成分の謎を調べるため、ペギーは単身西多摩市に乗り込む。しかし、街は黒十字軍に占領されていた。その敵の追跡より逃れるために、変装して敵地をパトロール。地震爆弾の正体をつかむのが大筋だ。しかしペギーは「ウェディングドレスの花嫁」「火消しの纏(まとい)持ち」「テニスの選手」「金髪の外人」「フロッグマン」に変化(へんげ)する。ここまでだと5種類の「五変化」しかなかった。しかし、変身前のペギー松山と、変身後のモモレンジャーを加えれば、「七変化」にはなるのだ(笑)。
 戦後の昭和20~30年代に大ヒットした映画シリーズで、時代劇映画の名優・片岡千恵蔵(かたおか ちえぞう)主演の、変装を得意とした『名探偵 多羅尾伴内(たらお ばんない)』シリーズのキャッチコピーでもあった“七つの顔”のパロディーを実践したのだ。


 このエピソードがスタッフ間でも強烈な印象を残したのか、以後の「戦隊シリーズ」でも、


●『電子戦隊デンジマン』(80年)第43話「謎なぞ七色レディ」
●『大戦隊ゴーグルファイブ』(82年)第22話「呪い人形の攻撃!」
●『電撃戦隊チェンジマン』(85年)第44話「麻衣(まい)におまかせ」
●『恐竜戦隊ジュウレンジャー』(92年)第38話「メイ姫七変化!!」
●『超力戦隊オーレンジャー』(95年)第43話「切り札は七変化」
●『救急戦隊ゴーゴーファイブ』(99年)第33話「ウブな災魔の戦士」
●『未来戦隊タイムレンジャー』(00年)第22話「桃色の誘惑」
●『爆竜戦隊アバレンジャー』(03年)第35話「アバレナデシコ七変化たい!」
●『轟轟(ごうごう)戦隊ボウケンジャー』(06年)第38話「虹の反物(たんもの)」


 などの「七変化」話が登場している。良くも悪くも、90年代以降はマニア上がりの作り手がスタッフになったことで、明らかにヒロインへのフェティッシュさや、「戦隊シリーズ」での先行作へのオマージュも交えた、確信犯的で重層的なパロディーにもなっていた。
 最近でも、『海賊戦隊ゴーカイジャー』第29話「アバレ七変化で新合体」といった、ヒロインの華麗なメタモルフォーゼを売りにした作品が放送されており、これらは特に男女を問わずに年長の特撮マニア諸氏によって、好意的に迎えられている。


*夏季の「地方ロケ編」! ギャグ怪人の頂点・牛靴仮面! サブライター・曽田博久の功績!


 そして、夏季を控えて、「地方ロケ編」も制作されている。先の第38話・第39話・第41話が、山陰地方の「鳥取砂丘」だったのに対して、今度は四国の「高知」と「愛媛」が舞台となっていた。


●第59話「真赤な南国! 謎のゴールド大作戦」(脚本・上原正三 監督・山田稔)
●第60話「青い瀬戸内海! 浮ぶ秘密要塞島」(脚本・上原正三 監督・山田稔)
●第61話「桃色のKOパンチ! エンドボール勝負」(脚本・曽田博久 監督・山田稔)


 テレビでは76年9月放映分となった、以上の3本であった。


 『東映まんがまつり』の項にて言及したように、この3本は、76年7月18日に公開の映画『秘密戦隊ゴレンジャー 爆弾ハリケーン!』(脚本・上原正三 監督・山田稔)と同時進行で撮影されている。ここでは一応、この3話プラス劇場版といった扱いで紹介してみせた。しかし、第61話は基本的には「東京」が舞台になっていた。


 その第61話では、「牛靴仮面」の必殺技「黒十字ハリケーン」(!)が披露された。その威力に対策を練るゴレンジャーも描かれる。前話で「ゴレンジャーハリケーン」の「エンドボール」を戦士間でのパスに失敗して紛失したことから、敵にその「エンドボール」を奪われてしまって、「黒十字ハリケーン」の改良に使われたら大変だと、先の四国に飛んで、受けそこねた「エンドボール」を探すといった描写があったからだ。年長マニア目線で本編を観返してみても、そこは明らかに四国で撮られたシーンであったのだ。もちろん、この3本と映画で1班体制の山田稔組での「まとめ撮り」であったのだろう。
 前述したように、その度肝を抜かれる「黒十字ハリケーン」や「必殺技」にまつわるエピソードになっており、作品の舞台展開の面でも実にスケールの大きい作品に仕上がっていた。


 この時期は、「ギャグ怪人」の描写が「完成」の域にまで達している。「作品カラー」の重要な要素として完熟していたのだ。これらの強烈なキャラクターと彼らの「名(迷?)セリフ」を生み出したのは、サブライターの脚本家・曽田博久の功績であった。曽田は『ゴレンジャー』時代をこう回想している。



「メインの上原さんが頑張って「ゴレンジャー」なんて三分の二くらいやっちゃってくれてる。サブの僕が多少外れたものを書いても見逃してもらえちゃうんですよね(笑)。だから僕は本線よりちょっと外れたところでね、ちょっとギャグっぽくしてみたりして遊んでもみまして。やっぱりサブの方が気楽ですから若かったこともあって割とメインの人がやらない、プロデューサーも最初はやらせないといっていたものでも、僕がやると「まァいいや」みたいなものになるんでしょうか。それに責任もかぶらないですむし(笑)。」
(『ファンタスティックコレクション NO37 科学戦隊ダイナマン 超電子バイオマン』(朝日ソノラマ刊)1984年)



●第51話「青いニセ札づくり! 夕陽のガンマン」(脚本・曽田博久 監督・山田稔)では、「金の亡者」的な取引相手に偽札で応戦。しかも、ゴレンジャーが潜り込んでの作戦失敗。
●第53話「赤いホームラン王! 必殺の背番号1」では、「野球」を題材に、黒十字軍の組織で編成した「野球仮面」が率いる野球チームによるゴレンジャーとの攻防戦。
●第57話「黒い包囲網! 五つの顔のペギー」では、若手コメディアンだったラビット関根をゲストに招いて、華麗なるヒロイン編をよりコミカルに彩った珍作を完成。
●第61話「桃色のKOパンチ! エンドボール勝負」では、ヒーローの必殺技のパロディ。
●第63話「黒い電光石火! 飛び出す大砲」(脚本・曽田博久 監督・田口勝彦)での「テレビ仮面」を倒した「ゴレンジャーハリケーン」は、手の先が飛来してきてテレビの電源スイッチを切って「おわり」と画面に表示――あまりにもストレートな断末魔に、当時の子どもたちも大爆笑するしかないといった結末であった!――。


 数え上げればキリがないのだ。本作での曽田があえて本線を外したことで作品は活性化した。以後の「戦隊シリーズ」での“ギャグ”“ユーモア”のセンスは、『大戦隊ゴーグルファイブ』(82年)から『地球戦隊ファイブマン』(90年)まで長らくメインライターとして活躍してきた、彼の手によっても堅持されてきたのだ。
 そして、『ウルトラマン』『仮面ライダー』のシリーズの後期以上に、“ギャグ”“ユーモア”のセンスを「売り」にすることに成功していく。そして、10数年~四半世紀という時間は要したものの、「日本特撮」の作劇的な可能性を押し広げて、特撮マニアたちのリアル&シリアス至上主義一辺倒の価値観をも相対化・解体していったのだ。


 「ギャグ」や「コミカル」に「不条理劇」や「ナンセンス」に「ノンテーマ」の作品。ひいては、「テイスト」「表層」は「チャイルディッシュ」であっても、その内実の「ドラマ性」や「テーマ性」は「高度」であるといった作品。
 もちろん、ひょっとすると、やはり「ドラマ」や「テーマ」もある真面目な作品や、「芸術的」な作品の方が上なのかもしれない。しかし、それ以外の作品がこの世に存在してはいけない、などといった主張を始めたり、そういった空気を漂わせ始めたならば、それはもうファシストとも変わらないのだ。特撮マニアの側でも、個人としての好み・美意識・哲学はいったん棚上げ・カッコにくくって、作品批評においては「定規」や「三角定規」に「分度器」などの異なるモノサシも、同時に複眼的に併用できるようになるかたちでの進化を遂げていったのだ。


*黒十字軍の飛行母艦「バットラー」と「忍団」参入! 2代目キレンジャー退場!


 この時期は、第64話よりプロデューサーに深沢道尚(ふかざわ みちなお)が参加していることが目を引く。氏はもともとは「進行」出身で、その前職時代に担当していた『キャプテンウルトラ』では、OPにこそクレジットはなくとも、金属人間・メタリノームのスーツアクターとしても活躍していたといった逸話が存在している(*25)。
 この頃、深沢は東映のテレビドラマ『ベルサイユのトラック姐(ねえ)ちゃん』(76年)を担当していた直後で、『非情のライセンス』(75~77年 2作目)の担当中に本作に加わった。しかし、その後に『特捜最前線』(77~86年)に移るために、第71話を最後に番組を降りている。なお、誠直也を『特捜』にキャスティングしたのは、この深沢であった(『刑事(デカ)マガジン』Vol.1(辰巳出版刊)2003年)。


 その深沢が参入を飾った、第64話「青いUFO!! 宇宙軍団大襲来」(脚本・上原正三 監督・竹本弘一)より、黒十字軍の新兵器・飛行母艦「バットラー」と、強化戦闘員的な存在でもあった「忍団(にんだん)」が参入。より激戦の色合いを強めていく。
 その初陣は、新兵器「バットラー」をUFOに見せかけて、そして「忍団」と称する新戦闘員を「宇宙人」だと思わせて攻撃をする戦法を見せていた。これは70年代中盤の「UFO大ブーム」もあっての処置であろう。
 この回より登場した「忍団」は、これまでの戦闘員「ゾルダー」とは違って、「戦闘能力」も「階級」も上とされており、『仮面ライダー』第1作目の「ショッカー戦闘員」における「赤戦闘員」的なシフトに近いキャラクターでもあった。戦闘員にも「階級」を付けて、さらに上下関係を明確化したことで、『ゴレンジャー』の敵もまた強化されたといったかたちで、子どもたちをワクワクとさせていたのだ。



 そんななかで、畠山麦の出演していたテレビドラマ『あがり一丁!』が終了したこともあって、初代キレンジャーが戻ってくることとなった。そのむかし、『仮面ライダー』第1作目で、主役の藤岡弘がバイク事故で重傷を負った際に、スタッフが劇中にて死んだ設定にして「新ライダー」を出そうとしたとき、東映プロデューサーの平山亨は「それでは、藤岡が治っても、番組には復帰できなくなる」と反対。別人物による「2号ライダー」を登場させて、窮地を切り抜けたことがあった。この前例とは裏腹に、初代キレンジャーの復帰は2代目キレンジャーの殉職による降番によっての実現となってしまった。


 それが、第67話「真赤な特攻!! キレンジャー夕陽に死す」(脚本・上原正三 監督・小西通雄)だ。細菌兵器・カビカX(エックス)を「カンキリ仮面」に奪われて、追い打ちをかけるように、これを原因としたパトカーの交通事故によって太郎少年が怪我をしたことに責任を感じて、大五郎は太郎のために単身戦った。しかし、「カンキリ仮面」が放った「カンキリカッター」を腹部に直撃! アカレンジャーの胸のなかで息絶えたのであった。
 4人になって窮地に陥ったゴレンジャーだが、そこへ太郎の姉・陽子が九州から急遽帰還した大岩大太を連れて「バリタンク」で現れた! 仇討ちとばかりにひさびさにキレンジャーに変身した大岩の力添えもあって、「カンキリ仮面」を倒すのであった……。


 「5人でなければゴレンジャーではない」。今のように6人目の追加戦士がフォーマットに導入される前の時代ゆえの試行錯誤。あるいは、東映特撮『ジャイアントロボ』の最終回などにも見られた「自己犠牲」の美学の投影だったのかもしれない。
 のちの『バトルフィーバーJ』の戦隊戦士・バトルコサックの殉職による降番、『恐竜戦隊ジュウレンジャー』(92年)の6人目の緑の戦隊戦士・ドラゴンレンジャーといった生命のタイムリミットを迎えての死による降番、『未来戦隊タイムレンジャー』(00年)での小鳥を捕まえるところを戦闘員・ゼニットによって射殺されてしまった6人目の赤い戦士・タイムファイヤーなどで、死を迎えることになってしまった戦隊ヒーローもまれには見られるが……。


*「バリキキューン」投入! 終盤ではハードなドラマも展開!


 初代キレンジャーの復帰後の第69話「五色の新兵器!! バリキキューン発進」(脚本・上原正三 監督・山田稔)より、追加メカニックとして大型戦闘機「バリドリーン」とは違って、小回りが効く飛行メカ「バリキキューン」も登場した。敵はすでにゴレンジャーの武器や兵器を研究し尽くしていた。「バリドリーン」も「バリタンク」でも歯が立たない。そこで開発中の気球メカ「バリキキューン」の発進を迎えたのだった。
 カプセル状の姿で空中に打ち上げられて、風船部分(球皮(きゅうひ))がふくらんで、「マジックハンド」と「プロペラ」が露出しており、「気球」のスタイルに変形するメタモルフォーゼも斬新であった。
 「バリキキューン」が本作最後のスーパーメカの登場でもあった。年末年始(クリスマスと正月)の玩具商戦を意識しての商品展開ではあったろう。しかし、裏番組の『クイズダービー』の視聴率的な台頭も影響してか、さらに新たなる関心を引き付けるための「目印」「キーアイテム」の存在が要求された面もあるだろう。
 「気球」をメカニック化するというアイデアは類を見ない。しかし、番組末期での登場といったこともあり、「バリキキューン」の玩具アイテムは、ポピーのポピニカくらいしか見かけなかった。


 第71話を最後に、第1話からゴレンジャーの縁の下の力持ちとして活躍してきた諜報部員007・加藤陽子が降板する。劇中での降板劇も描かれず、いつしか姿を消していたが、弟の太郎少年は最終回まで出演していただけに、残念な感もある。それだけでなく、陽子の降板の前から「フルーツパーラー・ゴン」の描写もいつしか消滅していた。こちらは定着しないうちに、いつの間にか見なくなった印象ではあったが。


 番組が末期に入ろうとも、「ギャグ怪人」の個性はより加速して描かれた。それを退治する「ゴレンジャーハリケーン」も比例して「ギャグ度」が上昇した点も見ものになっているのだ。


 特にゴレンジャーハリケーン「ピアニスト」により、足(!)でピアノを弾く「踊り子の人形」の攻撃を受けて、かつて上原正三が手がけた『柔道一直線』のライバル青年・結城真吾(演・近藤正臣)を思わせるハチャメチャなプレイに苦しんで爆死する「ピアノ仮面」(第71話「真赤な大決戦!! 地球移動計画」 脚本・上原正三 監督・山田稔)を、筆頭にあげておきたい。


 「武士道」をモットーとするがゆえに、ゴレンジャーを一気に仕留めることができずに撤退。結果、黒十字軍によって改造手術を受けて殺人マシーンに変貌を遂げたが、最後に我に帰って、敗北を認めて切腹したフェアプレイのファイター「剣道仮面」(第73話「黒いつむじ風!! 勝負だ! 一直線」 脚本・上原正三 監督・竹本弘一)も忘れられない。


 「仮面怪人」特有のユニークな変形能力を有するキャラクターも続出。


●ストーブに変装してその身を隠すが、その部屋に住んでいた夫婦の喧嘩の仲裁(!)に思わず入ってしまう「ストーブ仮面」(第75話「真赤な火炎地獄!! ストーブ仮面の陰謀」 脚本・上原正三 監督・田口勝彦)
●富士急ハイランド・スケートリンクでのホッケーによるゴレンジャーとの決戦と、大きな「スケート靴」への変形が観る者に強烈な印象を与えた「スケート仮面」(第79話「真赤な追跡!! 姿なき暗殺者の正体」 脚本・上原正三 監督・山田稔)


 ギミックやアクションも手伝って、その存在感だけで十分に楽しめる域の完成度を見せる「仮面怪人」が続出。最後まで気を抜くことのないスタッフの「意気込み」と、そのギャグセンスを支える遊び心の「余裕」すら感じさせていた。


 実際、この時期には裏番組の『クイズダービー』が視聴率を上げだしてきていた。ターゲットが異なるので、直接的な対抗意識を燃やしたようなことはなかったかもしれない。しかし、客商売の人気は「水もの」であって常に気が抜けないのが、テレビマンといったものだろう。「ギャグセンスの奇抜さ」、それを大真面目に実写特撮で行うことで魅せていく「独自の面白さ」に重点を置いていたことは明白であろう。
 いまだに『ゴレンジャー』といえば、「ギャグ怪人」が話題に上がる。そのコンセプトとパフォーマンスの数々が視聴者を引きつけて観る側に念押ししたのが、この時期のエピソードなのであった。


 とはいえ、物語のメインストリームとしては、イーグルという組織を中心に、黒十字軍側も兵器や怪人のパワーアップによる猛攻が過熱していく。敵の攻撃で多くの兵士が死ぬ描写がお約束となって、熾烈な「戦争ドラマ」的な印象も有していく。
 だが、作品世界が暗くならずに独自の明るさも放っていた理由が、これらギャグ怪人の描写と、ギャグメーカーでもあるキレンジャー・大岩大太の存在であった。
 むしろそれゆえに、作劇的にもイーグルと黒十字軍の激闘をヒートアップさせることができたのであろう。「コミカル」と「戦争」のその二股に分かれて接地している、本作が日本特撮では初めて到達した「バランス感覚」にも着目すべきなのだ。つまり、今ではおなじみのこういった手法もまた、結果的なものではあっても『ゴレンジャー』が偉大な元祖であったのだ。


 一方、「ギャグ」怪人の個性に反比例するかのごとく、ハード化を進めていくその物語は、最終回直前のエピソードでいっそう強調されている。しかも、戦隊メンバーの先輩にして恋人といった境遇の人間を容赦なく襲うこととなっていくのだ。


 第81話「黒い疑惑!! 殺人スパイの罠」(脚本・上原正三 監督・田口勝彦)には、『人造人間キカイダー』で主演を務めた伴直弥(ばん なおや)が横田少尉役として登場。妹の幼稚園に爆弾を投げると脅迫されて、後輩を罠にハメる役どころを演じた。


 第83話「オレンジ色の初恋!! 吼える大都会」(脚本・上原正三 監督・田口勝彦)では、『キカイダー01』で主演を務めた池田駿介が、ペギーのイーグル北海道支部での元上官・大古次郎(だいご じろう)としてゲスト出演した。


 吉川プロデュース作品のヒーローの先輩との競演。しかも、前者はヒーローの先輩、後者はヒロインの元恋人に配役されたのだ。そのヒーロー出身役者の登場といったバリューもあって、当時の児童層にも認知度が高かった俳優を通じて、「非情の掟」に翻弄されてしまう人物像を描いていたのだ。特撮マニア的には、次作『ジャッカー電撃隊』のシリーズ序盤でのシリアスな空気感へのシフト移行を、再視聴では感じさせたりもするのであった。


 特に第81話のキャスティングは、のちの戦隊シリーズ『バトルフィーバーJ』第34話「コサック愛に死す」(*26)を想起してしまう。この時はミドレンジャーにして初代バトルコサックも演じた伊藤幸雄と、2代目バトルコサックを演じることになる伴大介(伴直弥)で、そのキャラクターシフトは逆転していたが。


 こうして、『ゴレンジャー』では希薄だった先輩・恋人などの裏切りによるヒーロー苦悩のドラマが、後番組『ジャッカー電撃隊』では同作の王道路線になってしまうことを示唆するかのような、シリーズ終盤の『ゴレンジャー』ではあった。


*『秘密戦隊ゴレンジャー』最終回! その出来は如何に!?


 2年間のロングランのゴールを飾った最終回は、1話完結形式でまとめることとなった。第84話「真赤な大勝利!! 永久(とわ)に輝け五ツ星」(脚本・上原正三 監督・山田稔)である。


 星占いの結果に、総統を心配する「ゴールデン仮面大将軍」。だが、それを跳ねのけて、力でねじ伏せようとする黒十字総統は、ゴレンジャーに挑戦状を叩きつけた。
 雌雄(しゆう)を決する時が来たのだ。しかし、総統にはゴレンジャーの各種武器や必殺技は通用しなかった。逆に、総統の黒十字スパークを受けて、ゴレンジャーはあえなくダウンする。敵は最後のトドメを刺そうとした。しかし、突如として苦しみだして倒れてしまうのであった。


 代わって、「ゴールデン仮面」が最後の勝負に乗り出す。しかし、ゴレンジャーの攻撃を受けて、「ゴールデン仮面は死なず! ただ散り逝くのみ!」と言って、「金色の粉」になって散っていく。もちろん、このセリフは先の終戦直後に日本を統治した米軍のGHQ・最高司令官・マッカーサー元帥の退任演説の一節「老兵は死なず。ただ消え去るのみ……」の、子どもたちにはわからない、当時のパパ・ママ層向けのパロディなのであった。
 だが、その「金粉」は大空に輝く「虹」と化した。そして、その「金粉」はゴレンジャーのスーツにも付着して、これまでいくら手を尽くしても発見できなかった「ゴレンジャー基地」の「目印」となった。黒十字軍がそこに総攻撃を掛けてきて、ゴレンジャー基地は壊滅してしまう!


 ゴールデン仮面の発した「カシオペア」の言葉に鍵があると睨んだ海城は、単身で黒十字城に乗り込んだ。そして、「カシオペアX(エックス)線」が弱点だと確証を取って、最後の決戦に挑んだ。ゴレンジャーは「カシオペア・スクラム」と、ゴレンジャーハリケーン「カシオペア」で、黒十字総統にトドメを刺さんと最後のアタックを加えた。しかし、頭部だけになった総統は、なんと「黒十字城」に自身の「脳」を移植して一体化していたのだ!
 ゴレンジャーは最後の燃料で「バリドリーン」「スターマシーン」に爆弾を仕掛けて、敵地への特攻に挑んだ。「黒十字城」は総統の絶叫ともに大爆発を起こた。黒十字軍はようやく滅んだのだった。


 夕日に照らされるゴレンジャー基地の廃墟で、敬礼をする総司令とゴレンジャーの面々。空はいつしか暗くなり、ゴレンジャーの五つ星であるカシオペア座が輝いていた……。


(完)



 ゴレンジャーの秘密基地のルートをめぐっての攻防戦は、先のエピソードでも多々行われてきた。しかし、彼らはうまくそれをかわしてきた。だが、最終回にて敵はそこを押さえて、ついに本拠地を壊滅させたあたりのスケール感の大きさは、子ども視聴者たちの度肝を抜いた構成であったろう。ヒーローを絶体絶命に追い込んで、どうしようもなくなった状況下で、唯一の弱点を見つけて、それを頼りに敵を倒すことで、物語は完結を見たのだ。


 とはいえ、2年間も続いたドラマの終わり方にしては、たった1話だけの最終回では物足りない、というファンもいるかと思われる。連続ドラマ仕立てのシリーズや、後年のジャンル作品群のように、「完結編」を数週間に渡って放映する図式に馴染んでしまった世代からは、今昔の感を強く抱かれるとは思うのだ。
 あるいは、リアルタイム世代であっても、この『ゴレンジャー』の同級生的な存在の諸作品も、『アクマイザー3』『超神ビビューン』『宇宙鉄人キョーダイン』なども、その最終回では「前後編」で、これまでの物語の総決算を行って、丹念な描写で「有終の美」を飾っていたことや、前年度の『仮面ライダーストロンガー』での全5回に渡っての「完結編」を先に見ていれば、そういったことも痛感せざるを得ないだろう。


 この最終回では、「カシオペア」の単語と、それが敵を倒すキーワードにもなるという「伏線」の存在が肝(きも)になる。実は『ゴレンジャー』の初期企画の時点で、この「カシオペア」は設定されていた。番組名が『レッド・1(ワン)』と命名されていた頃に、登場人物5人の名前が実際の本作『ゴレンジャー』と同じものになって、彼らの頭文字が「カシオペア」になるように設定されたのだ。
 そして、その初期設定をいさかか唐突でメタフィクション的ではあったが、「最終回」の秘密として用いられたことにもなるのだ。さすがに「秘密戦隊」を題した作品だけのことはあった!?


 つまり、好意的に深読みすれば、「カシオペア」という「5つの星」を「線」でつないだ「星座」によって、彼ら5人の「チームワーク」を示唆した作戦でもあり勝機でもあったのだ。そこで太郎少年が大岩に出した「なぞなぞ」でも、


 「ゴレンジャーが宇宙旅行に行きました。さて、どこの星でしょう?」


 といったかたちで、最後に番組の名物「なぞなぞ」にも紐付けての展開は、物語を盛り上げるうえでは、当時としては見事であったと称賛したい。


 その宿敵・黒十字総統それ自体が「黒十字城」であったことも、無理やりで強引すぎるといった声もあるとは思う。ただこれも、これまでの「岩石大首領」(『仮面ライダーストロンガー』)、「大魔王」と「ガルバー」(『超神ビビューン』)、「ガブリン」(『宇宙鉄人キョーダイン』)といった、巨大なスケール感あふれるラスボスが等身大ヒーロー作品にも増えつつあったなかで、首領が超巨大なメカニックとも合体したといったアイデアもまた、時代に合わせてのスケールアップだとの解釈はできるのだ。
 これまでのエピソードで、それを示唆する描写が特になかっただけに、唐突な印象があったとはいえ、観る側に敵の強大さを伝えることでは成功したはずなのだから。


 最終回の監督は、『ジャイアントロボ』を筆頭に、東映特撮ヒーロー番組の多くで第1話と最終回を手堅くまとめてきた山田稔が担当した。『仮面ライダー』シリーズでは、特に第1話を手がけていた印象が強かったが、80年代中盤までの「戦隊シリーズ」では「最終回」でその手腕を発揮する監督といった感を受けていた。
 とはいえ、次作『ジャッカー電撃隊』では、「前後編」かつヒーローとヒロインとのラブロマンスを軸にした、実に見事な「最終回」を手がけているだけに、やはり物足りなさを痛感する戦隊マニア諸氏も多いかもしれない。
 ちなみに、先の『ジャイアントロボ』では、山田が第1話と最終回を担当。その最終回で、ロボが命令を聞かずに敵首領・ギロチン帝王を宇宙の果てまで連れ去って道連れにして爆死した悲しいラストは、多くの視聴者にインパクトを与えており、今なお語り草となっている。



 本作の最終回では、ゴレンジャーのメンバーも総司令も無事であった。よって、それほどのショッキングな描写こそなかったが、物語の流れをスムーズに見せて、理路整然としたまとめ方としての堅実なフィナーレを飾ってはいた。新時代のスタンダードを確立した作品は、その完結もスタンダードな様式でまとまったのだった。


*『ゴレンジャー』終了の時 放映テレビ局名の改名とともに……


 2年間のロングランを誇った『ゴレンジャー』も、いよいよ番組終了の時を迎えた。予想を超える大ヒットで、『仮面ライダー』に代わる新時代の変身ヒーロー像を構築できたのだ。しかし、1977年4月より、「NET」は「テレビ朝日」へとテレビ局名を変更することが決定。その他にも、この局名改称とともに、いくつかの人気番組が終了を迎えることになった。
 15年もの歴史を持っていた名作刑事ドラマ『特別機動捜査隊』(61~77年)が『特捜最前線』に、『がんばれ!! ロボコン』が『ロボット110番』(77年)へと、前番組のイメージを残しつつも、新時代へのモデルチェンジを行うことになったのだ。


 そのためもあってか、『秘密戦隊ゴレンジャー』も1977年3月で終了。この作品の後継者として『ジャッカー電撃隊』が1977年4月より開始されることとなった。


 2年間以上も同一のヒーローで番組を継続することには限界もあったかとも思われる。この当時は現在とは違って、追加戦士の加入やフォームチェンジなどは今ほどハイペースで行われてはいなかっただけに。
 そこで、『仮面ライダー』第1作目が『仮面ライダーV3』としてシリーズが継続したケースとはまったく同じだったとは言い切れないが、同路線の特撮ヒーロー番組があとを受けることとなったのだ。そして、その流れは今日に至るまで続いているのだ。



秘密戦隊ゴレンジャー DVD VOL1
秘密戦隊ゴレンジャー Vol.1


*その後の『秘密戦隊ゴレンジャー』! 再放送! 映像ソフト!


 『秘密戦隊ゴレンジャー』は、『ウルトラマン』『仮面ライダー』に続く第3の特撮ヒーローとして認識されていることもあり、番組終了後の展開も多々見られる。ここでは作品世界の解説ではなく、その後の『ゴレンジャー』を取り巻く動きを俯瞰してみたい。


 『秘密戦隊ゴレンジャー』は知名度も高く、地方によっては再放送も多かった。特に福岡圏・関西圏では多かった。その影響もあって、地域的には他の地区以上に幅広い世代に浸透している。
 その逆に関東地区での再放送は、本放送の終了直後に行われたテレビ朝日での夕方のものだけであった。テレビ埼玉や千葉テレビなどのUHF局でもほとんど再放送がなかった。はるかに飛んで21世紀に入ってから、1999年に開局したばかりであった「とちぎテレビ」で再放送をしたくらいにとどまった。
 CS放送では、キッズステーションにて1994年頃に放送。以後は1998年にファミリー劇場(現在のリマスター版でなく、古いフィルムを使用)や、2006年の東映チャンネル、2011年のファミリー劇場(リマスター版)と、いくつかの放送局で放映されてきた。


 ビデオソフトも、第1巻が1986年5月21日に東映ビデオより発売。第1話と、第42話の「鉄人仮面テムジン将軍」の最期と、劇場映画『ゴレンジャー爆弾ハリケーン』の計3本を収録していた。以後も当時のビデオ販売の流儀で「傑作選形式」にて順次発売されていった。しかし、話数が全84話と多いためか、全エピソードをソフト化できずに、途中でストップしている。
 その後、LD(レーザーディスク)にて、全3巻のボックス形式によるソフトの第1巻が、1998年11月21日に発売された。翌99年の5月21日発売の最終巻でようやく初の全話ソフト化を実現できたのだ。しかし、時代はすでにDVD(ディー・ブイ・ディー)への移行を始めていた頃でもあった。ゆえに、買い控えをしてしまったファンも多かったのではと推測する。
 そして、DVDはLD発売から早くも3年後の2002年10月21日に、単品売りの1巻に6話収録の形式にて、第1巻から3巻までを同時発売。以後は3ヶ月の間を置いて、第4巻より毎月3巻ずつ発売のペースにアップして、2003年8月8日にリリースされた第14巻にて完結している。


*その後の『秘密戦隊ゴレンジャー』! 『日本特撮映画史 SFヒーロー列伝』での再評価!


 出版・雑誌や単行本にも目を向けよう。ラポート社刊のアニメ雑誌『アニメック』にて、特撮・アニメライターの重鎮・池田憲章(いけだ のりあき。いけだ けんしょう とも呼称)連載による『日本特撮映画史 SFヒーロー列伝』において、同誌の1986年6月号より、この『秘密戦隊ゴレンジャー』評の連載が開始されている。
 ちなみに、この『日本特撮映画史』は、連載開始の1978年当初には1回につき5頁くらいの文量でスタート。じょじょにページ数を増やしていった。やがて、1回では扱いきれない作品は「前後編」として2号にまたがっての掲載となった。1983年に連載された『怪奇大作戦』(68年)では全3回。1984年に連載された『人造人間キカイダー』では全4回。1985年に連載された『仮面ライダー』第1作目では全6回と、隔月連載であったので1年を費やしての大連載へと成長した(*27)。
 その奮闘は、アニメ誌唯一の「硬派特撮連載」としてコアな読者の支持を集めていた。1986年度の「日本SF大会」の「ノンフィクション部門」で「星雲賞」も受賞。日本特撮ジャーナリズム界にとっても最高の栄誉を獲得していた。


 池田の『ゴレンジャー』記事の内容はこうであった。まず、1986年2月に放映が終了したばかりで、「連続大河ドラマ性」や「宇宙規模」でのスケールで、多数のゲストキャラが最終展開では再登場するなどして、当時の特撮マニア人気も非常に高かった『電撃戦隊チェンジマン』(85年)に魅了された旨を語ってみせる。
 当時は一段低く見られていた現行の東映特撮をためらいもなく評価するイントロダクションが意表を突いていた。そして、そこから「戦隊シリーズ」の原点でもある『ゴレンジャー』の足跡を振り返ろうとする導入部がまた斬新でもあった。


 すでにこの時代でも、特撮ファンの新世代が次々と勃興してきており、各作品に対する思い入れの相違から来る「好き嫌い」や、それをもととした「作品評価」の「高低」や「優劣」に対する、悪く言えば分裂、良く言えば価値観の多様化が、目立つようにはなってきていた。


 そのなかで、現在(1980年代)の作品で育った若い世代、今の現役の最新作品にも魅了されている若いマニア世代にも、「そのルーツを知っていくと、もっと面白い!」といったかたちで、旧作への関心を誘おうとしていていたのだ。そんな池田の啓蒙精神に、当時の筆者は感服もしていた。


 だが、この連載は1987年2月号掲載の第5回目にて、完結を前に中断してしまうのだ。その理由は、掲載誌『アニメック』の休刊であった。最新情報の紹介よりも批評性の方に重きを置いていたこのアニメ雑誌は、1980年前後の大アニメブームと比べれば低調になってしまった時代で、なおかつ良くも悪くも大判のカラーグラビア主体のアニメ情報誌として創刊された角川書店の『月刊ニュータイプ』(85年~)などの勃興とともに、売上が厳しくなっていったからだ。
 それ以後は、別の雑誌で連載を再開したわけでもなかったために、『日本特撮映画史』の『ゴレンジャー』編は、四半世紀が経った現在も未完のままとなっている。


 現在はプロとなった当時の青少年であった特撮ライター諸氏はもちろん、世代人の特撮マニア諸氏にとっても、この『日本特撮映画史』が「特撮作品を語る楽しさ」「その語られた文章を読む楽しさを教えてくれた」といった意味では、「経典」のような存在として意識している方も多いだろう。
 もちろん後年の今でこそ、インターネットなどで「何でも好意的に語りすぎ」「提灯記事(ちょうちんきじ)」だとの揶揄(やゆ)を受けることも故なしとはしない。しかし、まだまだ資料も批評も不充分であった時代には、この連載だけが唯一の資料や評論であった時代もあったのだ。


*その後の『秘密戦隊ゴレンジャー』! 『秘密戦隊ゴレンジャー大全集』での再評価!


 1970年代末期から1980年代中盤までの特撮マニア間でのムック本の王道は、朝日ソノラマの『ファンタスティックコレクション』シリーズであった。しかし、1980年代後半は、講談社の『大全集』シリーズにその座を譲った感が強い。
 この『大全集』は、1986年4月に発売された『テレビマガジン創刊15周年記念 仮面ライダー大全集』を第1弾として刊行。講談社では放映開始当初から『仮面ライダー』を扱ってきた実績による、カラースチルをはじめとする豊富なビジュアル。モノクロページの文章の詳細さ。それは、この時期の「ウルトラシリーズ」や「東宝特撮怪獣映画」に対して批評面でも資料面でも露出面でも大きく劣ってきた「東映特撮」の発掘・再評価の狼煙(のろし)となったのだ。
 以後、『仮面ライダー怪人大全集』(86年9月)・『ウルトラマン大全集』(87年3月)・『ウルトラマン大全集Ⅱ』(87年7月)『ビジュアル全集 人造人間キカイダー』(87年11月)・『巨大ヒーロー大全集』(88年9月)を発行。


 1988年3月には、『スーパー戦隊大全集』と銘打って、現在では「戦隊シリーズ」第3作として扱われている『バトルフィーバーJ』からこの年に放映を開始したばかりであった『超獣戦隊ライブマン』までのシリーズを収録した「戦隊シリーズ」の書籍も刊行したのだ。
 だが、『ゴレンジャー』と『ジャッカー』は省かれていたので、がっかりした読者もいたことだろう。しかし、巻末の奥付を見たときには、衝撃が走ったと思われる。


 「次回発売予定 ゴレンジャー&ジャッカー大全集」


 そして、1988年5月25日、『秘密戦隊ゴレンジャー大全集』と題して、『ジャッカー電撃隊』を含めた石ノ森章太郎原作の初期2大戦隊の『大全集』本が発売されたのだ。しかも、カラースチルは満載。1作品あたりの分量も多くて、これまた前述の記述の使い回しになってしまうが、「ウルトラシリーズ」や「東宝特撮怪獣映画」に対して、あるいは同じ東映の「仮面ライダーシリーズ」に対しても、評価面でも資料面でも露出面でも大きく劣っていた「戦隊シリーズ」の再評価の推進力になり得たのだ。


 特に本書が刊行された時期は、京都地区(KBS京都)や福岡地区(九州朝日放送)での再放送が行われていた頃であった。再放送のガイドブックとして重宝した、当地の特撮マニアや、彼らから録画ビデオをダビングしてもらっていた特撮マニア諸氏も多かったと推測する。


 以後の『大全集』シリーズは、1988年9月発行の『巨大ヒーロー大全集』を最後にいったんストップした。しかし1990年代に入って、『仮面ライダー映画大全集』(93年5月)・『ゴジラ大全集』(94年8月)を刊行。
 そして、80年代後半~90年代初頭には「石森原作戦隊」と「以後の戦隊」とを分けて扱っていたものを、「超世紀全戦隊」との名称で包括するかたちで、東映の吉川進が命名(この名称自体は定着せずにすぐに消滅。全シリーズを「スーパー戦隊シリーズ」名義で再統一して現在に至る)。この当時の全戦隊シリーズを扱った『超世紀全戦隊大全集』も1993年10月に発行。
 以後も、『新・ウルトラマン大全集』(94年9月)・『変身ヒーロー大全集』(95年11月)を刊行し、いったんこのレーベルは再終了となった。しかし、そのノウハウを活かした『テレビマガジン特別編集』シリーズでは、「平成ウルトラマンシリーズ」や「平成仮面ライダーシリーズ」のムック本も発売されて、今も講談社の『大全集』シリーズの系譜として、年長者対象の特撮ムック本の歴史を地道に継続している。



秘密戦隊ゴレンジャー大全集
秘密戦隊ゴレンジャー大全集: ジャッカー電撃隊


*その後の『秘密戦隊ゴレンジャー』! ヒーローショー・パロディの数々・スーパー戦隊最新作での客演!


 他に言及すべきなのは、イベントの類だ。後楽園遊園地にて開催の「戦隊ショー」にも、ゴレンジャーを扱ったトピックが存在する。
 1995年12月から翌年の年明けにかけての開催で、当時放映中の『超力戦隊オーレンジャー』のヒーローショーにて、『復活! 伝説の戦士ゴレンジャー!』と題してゴレンジャーの5人が加勢してくる内容の演目が上演されたのだ。もちろん、『超力戦隊オーレンジャー』の中CMでも恒例の「後楽園遊園地で僕と握手!」のCMで、告知が打たれてもいた。
 この年、「戦隊シリーズ」は20周年を迎えていた。また、1995年の暮れから年明けにかけては、バラエティー番組『ダウンタウンのごっつええ感じ』(91~97年)内にて登場した『世紀末戦隊ゴレンジャイ』(95年)といったパロディヒーローもヒットしていた。子どもの親世代がゴレンジャー・ジェネレーションになった状況も手伝って、後楽園遊園地の野外劇場に20年ぶりにゴレンジャーが復活したのだ。
 なお、おなじみ野外劇場のMC“ヒロちゃん”こと、なりた洋(ヒロ)が、「『ゴレンジャイ』じゃないですよ」などといったベタな紹介をしていたことを記憶している。


 それ以外にも、ゴレンジャーの影響の絶大なる大きさは、パロディヒーローの存在にも顕著であった。こうしたパロディヒーローの話題となれば、お笑いコンビ・とんねるずがバラエティー番組『とんねるずのみなさまのおかげです』(88~97年)で演じた『仮面ノリダー』(『仮面ライダー』第1作目のパロディ。88~90年)があまりにも有名である。しかし、『ダウンタウンのごっつええ感じ』内で登場した先述の『世紀末戦隊ゴレンジャイ』も存在しており、相応にウケてもいたのだ。
 見てのとおりで、ヒーローのデザイン的にも顕著なゴレンジャーのパロディであった。しかし、これは東映と石森プロよりきちんと許可をもらった上での公認ヒーローなのだ。そこが『仮面ノリダー』とは異なっていたところなのだ。近年、発売されたDVDソフトにも収録されているので、『世紀末戦隊ゴレンジャイ』は今でも再見可能である。


 21世紀に入って登場した、キリンビバレッジ社の清涼飲料水『キリン アミノサプリ』のCMキャラクター『麒麟戦隊(きりんせんたい)アミノンジャー』(03~05年)も忘れてはならない。こちらも『ゴレンジャイ』同様に、石森プロと東映の公認パロディだ。主題歌も本家『ゴレンジャー』を手がけた渡辺宙明の作曲と、佐々木功のヴォーカルであった。そして、主題歌だけでなく、携帯電話用のストラップやバッジなどのオマケ、Tシャツといったノベルティグッズも多数製作されて、特撮ファンではない若者の間でも小流行していたのだ。


 それ以外にも、近年「街おこしヒーロー」として、地域のイベントなどで活躍するローカルヒーローの存在が巷で話題となっている。静岡の『からくり侍 セッシャー1(ワン)』(11年)や沖縄の『琉神(りゅうじん)マブヤー』(08年)など、DVD化で全国的な知名度を上げつつある作品も存在している。そんなローカルヒーローの多くは、「ウルトラマン」や「仮面ライダー」ではなく「戦隊ヒーロー」のパロディ的な集団キャラクターであることが多い。彼らも『ゴレンジャー』などのパロディやオマージュ的な視点から出発して、地方から全国へと羽ばたこうとしているのだ。


 他には、2004年9月20日のダイエーホークス対ニッポンハムファイターズ戦(札幌ドーム)にて、プロ野球の再編問題から発展した、史上初のストライキ明けの初戦となったこの試合前に、ニッポンハムファイターズの新庄剛志(しんじょう つよし)たち5人が、前々日・前日の試合中止のお詫びとして「おととい、昨日と試合できなくてゴメンジャイ」と称して、パーティグッズ用のゴレンジャーマスクを着用してベンチに登場したことで、テレビのニュースやワイドショーなどでも大いに話題となったことがあった。この「宇宙人」の愛称を持った球界の人気者のパフォーマンスには、世代人ならずとも思わず頬がニンマリしてしまったことだろう。


 その主題歌がバラエティ番組のコーナーでテーマ曲として使用されて、オリジナルを知らない世代にも波及させてしまったケースも存在している。2011年現在も続いているフジテレビの正午の人気番組『笑っていいとも!』(1982~2014年)にて、お笑いコンビ・ウッチャンナンチャンの南原清隆がMCを担当していたコーナー『ナンバラ バンバンバン コンテスト』(90年)のコーナーのテーマ曲として、ED主題歌曲『秘密戦隊ゴレンジャー』のイントロダクション「バンバラ バンバンバン~♪」が使われたのだった。


 最近(2011年)では、ダイドードリンコより発売されて話題を集めている、缶全体にヒーローキャラクターの図柄をプリントした清涼飲料水がある。ウルトラマン・仮面ライダーに続いて、今度は2011年2月より、『復刻堂 秘密炭酸ゴレンジャー』と称した商品(中身は「レモンスカッシュ」)を発売して好評を博していた。ここでも「野球仮面」の図柄のアイテムが存在しており、人気を誇っている。



 そして、なにより2011年度のスーパー戦隊シリーズ『海賊戦隊ゴーカイジャー』では、『ゴレンジャー』から始まる歴代の全戦隊ヒーローが登場するといった大盤振る舞いの展開が、35作目に相応しく大きな話題となっている。その第1号であるゴレンジャーが当然、その第1話から早くも登場。必殺技の「ゴレンジャーストーム」を披露して世代人を喜ばせていた。
 おまけに、第1話の冒頭の全戦隊が集結した「レジェンド大戦」の場面には、アカレンジャーがリーダーとして登場! 誠直也も35年ぶりに声を演じていた。さらに、6月公開の映画『スーパー戦隊199ヒーロー大決戦』では、海城剛役として誠直也が35年ぶりに顔出しで登場したのだ。加えて、宿敵であった黒十字総統がリアルクリーチャー風にリニューアルされて復活。8月公開の『海賊戦隊ゴーカイジャー THE MOVIE 空飛ぶ幽霊船』では、あの「野球仮面」も甦っていた。これまた、その声を本放送当時の永井一郎が35年ぶりに再演しており、ゴレンジャーに再決戦を挑んでいた。


 誌面の都合もあって、まだまだ取り上げたい話題はたくさんある。しかし、締切の都合も手伝って、これくらいにとどまってしまうのが残念ではある。


*平成特撮世代の台頭! 「戦隊」はゴジラ・ウルトラ・ライダーをも超えた!?


 世代にもよるとは思うのだが最近、特に強く感じることがある。「特撮マニア」のなかでの「戦隊ファン」の比率のことである。特撮ファンダムの最初の成り立ちを支えたのは第1次怪獣ブーム(1966~1968年)世代が最初であった。次に、その下の第2次怪獣ブーム=変身ブーム(1971~1974年)世代。そして、それらのリバイバルの第3次怪獣ブーム(1978~1980年)世代が続いて、特撮ファンダムを牽引してきた。
 つまり、西暦2000年前後までの特撮ファンダム界は、前述の3世代が中心となっていたのだ。しかし、すでに21世紀も10年以上が経過した。1989年(平成元年)生まれの子どもたちが社会人になるほどの時も流れた。上記の世代以降の年齢層が、特撮ファンダムの中核にまで成長するだけの歳月を積み重ねているのだ。


 21世紀の特撮ファンダム界は、今や90年代以降の平成特撮ヒーローの世代が軸に位置するまでの世代交代を成し遂げているのだ。


●“『ウルトラマンティガ』(96年)が、「ウルトラマン」とのファーストコンタクト”
●“最初にリアルタイムで観た「仮面ライダー」は、『仮面ライダークウガ』(00年)”


 これはかなり大雑把な例えだが、すでにそんな年齢層がファンダムの中核にまで成長しているのだ。


 そして、その平成特撮ヒーロー世代にとって、「ウルトラ」や「ライダー」以上に、「戦隊シリーズ」の存在は大きいのだ。すでに、自分が生まれる前から今日まで連綿と続くヒーローでもあって、生まれたときに最初に出会った、しかも『ゴレンジャー』由来のポップでカラフルな特撮ヒーローであったことにも起因する。
 そうした事例のひとつに、有名タレント・中川翔子(なかがわ しょうこ)のアピール度をあげたい。中川は大の「戦隊ファン」を公言している。戦隊のヒロインを演じることがむかしからの夢であったることは有名である。他にも「戦隊グッズ」のコレクションや「戦隊俳優」との交友をブログで公開し、筋金入りの特撮ファンとしても高名なのだ。


 だが、「特撮ファン」というよりも、明らかに「戦隊ファン」であるのだ。「仮面ライダー」のことは近年の平成ライダーシリーズくらいで、「ウルトラマン」のことはほとんど話題に出さない。
 中川は1985年生まれだ。彼女が物心ついた時代は、実写特撮ヒーロー番組が「戦隊シリーズ」くらいしかなかった時代だ。厳密に言えば、「仮面ライダー」シリーズは『仮面ライダーBLACK(ブラック)』(87年)と『仮面ライダーBLACK RX(ブラック アールエックス)』(88年)は存在。『宇宙刑事ギャバン』(82年)に端を発するメタルヒーローシリーズも並行して放映されていたとはいえ、知名度的にはこの時点ですでに10数年も継続していた「戦隊シリーズ」の方が上だった時期である。
 もちろん、「ウルトラマン」の新作は放映されておらず、地域的には旧作「ウルトラ」の再放送があった程度のもので、レトロブームに準じてリリースされた関連商品で名前くらいは知ってはいても、「ウルトラ」や「ライダー」作品に対する強烈な思い入れは、この年代のファンならば「戦隊」よりも下回るケースの方が多い。
 そういったこともあって、1980年代に生まれた世代は、全員がそうだとはいわないし、個人の好みも大きいのだが、「戦隊」>「ライダー」>「ウルトラ」の図式がおおよそ当てはまるのだ。



 1980年代前半、前述のように当時の特撮マニア間では「戦隊」は、「ゴジラ」「ウルトラ」どころか、「仮面ライダー」や「変身ブーム」時代の特撮作品よりも非常に低く見られていた。だが、それからすでに30年もの歳月が経過した。今や80年代の「戦隊シリーズ世代」が台頭。つまり、現役特撮ヒーロー本来のターゲットである未就学児童の親の世代が、まさにこの“80年代戦隊世代”であるのだ。物心がついて初めて見たヒーローが、その時期の「戦隊シリーズ」であったからだ。地位向上に要した時間はおそろしいほどにかかったかもしれない。しかし、今や「“戦隊”の時代」に到達している感は強いのだ。
 少し前になるが、1990年代後半の「平成ウルトラマンシリーズ」の隆盛は、親子2世代向けのヒーローとして、昭和時代の「ウルトラ」で育った親世代と、「平成ウルトラシリーズ」の子ども世代の相乗効果も、大きなヒットの要因だとして分析されていた。
 その当否はともかく、それからでももう15年ほどが経った。今やそういった現象面でも世代交代が進行。前述のように1980年前後に生を受けた「戦隊シリーズ世代」が親になって、その子どもが現在の「戦隊シリーズ」を支えてもいるのだ。


 ここで思い出したのは、雑誌『OFFICIAL FILE MAGAZINE ULTRAMAN(オフィシャルファイルマガジン ウルトラマン) Vol.3 (初代)ウルトラマン第2集』(講談社刊 2005年6月24日)に掲載された「ウルトラマンの今」における、広告代理店・電通(一連の「CBCウルトラ」の担当代理店)の山西太平(やまにし たへい)のコメントに顕著な、視聴者とその親の世代交代についての話題である。



「実は『ウルトラマン80』終了から平成ウルトラまでの時間が空いているときに幼少時代を過ごした人達が今の3~6歳の子の親になりつつあるのですよ。原体験にリアルタイムのウルトラマンがない。この世代の親たちにいかにウルトラというコンテンツを理解させるかが今は非常に難しいんです」



 6年前に危惧していたことが現実となっているのかもしれない。この書籍は『ウルトラマンネクサス』(04年)放送末期に発売されたものだ。事実、以後の『ウルトラマンメビウス』(06年)の某話では、歴代ウルトラシリーズ最低視聴率の新記録を更新してしまった。深夜特撮なので単純比較はできないものの、『ウルトラセブンX(エックス)』(07年)はTBS系番組にしては異常に少ない、テレビ東京系以下の全国5カ所のみでの放映となっていた。
 BS11(ビーエス イレブン)や地上波UHF局のTOKYO MX(東京エムエックス)にて放映された『ウルトラギャラクシー 大怪獣バトル』(07年)以降では、「ウルトラ」を扱った番組は、地上波ではテレビ東京系に移動して放映(言い換えればTBSに捨てられた?)。2011現在では、歴代ウルトラシリーズのグラフィティ形式の番組『ウルトラマン列伝』(11~13年)が同局で放映されているだけである。しかし、視聴率は1%台といった現状である。これは現在放映中の「戦隊シリーズ」「仮面ライダーシリーズ」をはるかに下回る数字でしかない。「ウルトラマン」こそがトップの支持を受けていた時代からは信じられないほどの凋落なのだ。
 ここで指摘されている、『ウルトラマン80(エイティ)』(80年)終了から「平成ウルトラ」(96年~)までの「空隙」の期間に、幼少時代を過ごした世代が、まさに「戦隊世代」なのでもあったのだ。


 「戦隊シリーズ世代」がファンダムだけでなく、子どもの親世代でも中心になった現在だからこそ、そのシリーズの幅の広さと、そこから来る作品世界の大きさを見直して、「戦隊シリーズ」が「ウルトラ」や「ライダー」よりも低いものではなく、遜色もない作品であることを認識する時代が遂に来たのだ、といった思いを新たにするのだ。ほとんど中断を挟まなかったので、実はシリーズの作品数も最多を誇っているだけに、その世界観の多様性や作劇的な自由度は、「ウルトラ」や「ライダー」を上回ってもいるのだし。


 そんな一大ロングランシリーズの第1作目について、吉川進はこう語っていた。



「やはりスーパー戦隊シリーズは、『秘密戦隊ゴレンジャー』が発祥ですよ。」
(『東映ヒーローMAX』Vol.29『仮面の世界 吉川進(後編)』(辰巳出版刊)2009年)



 「発祥」であり「原点」でもある作品には、以後の作品にはない、それゆえの大きさ・凄さがある。そのことをこの吉川の発言には痛感させられたりもするのだ。


 人間ドラマ性・大河ドラマ性・SF性などでは、他の「特撮シリーズ」や後年の「戦隊シリーズ」の方が勝っているのかもしれない。それでも、「原点」としての存在の大きさと、「発祥」の作品が生み出したフォーマット・インフラストラクチャーには敵わない面もあるのだ。歴代の「戦隊シリーズ」と比較してみても、それを色濃く感じさせられたりもするのだ。


 そんなアニバーサリーイヤーの今年に、その第一歩を踏みしめた『秘密戦隊ゴレンジャー』の魅力や歩みを振り返ることができて、さらに愛着が湧いてきた。だが、これはあくまで筆者の主観論でしかない。読者諸氏が自分自身で作品を鑑賞して向かい合うと、また違った感じ方や、筆者の気付かなかった魅力を感じ取れるのではないかとも思われるのだ。



脚注


*1
 むかしは朝日放送が誇る『部長刑事』こそ、日本一の長寿連続テレビドラマであったが、去る2002年3月をもって、44年の長い歴史に幕を閉じ、今ではNHKの「大河ドラマ」や同局の「テレビ小説」にその歴史を更新されてしまった。
 なお、『部長刑事』の終焉の理由には、視聴率の下降はもちろんだが、土曜日の夜のゴールデンタイムに関西だけで別番組を放送するのが難しくなったことにも起因するのだ。


*2
 『お笑い頭の体操』は、関西地区では火曜日夜7時半枠にて放送。1973年10月~1974年9月の時期には、毎日放送で放映中の『イナズマン』の裏番組にはなった。そのために、『仮面ライダー』とは重ならず、視聴率はこの1975年初頭でも25%前後の高い数字を獲得していた(関東では15%前後の視聴率)。


*3
 関東地区なら、間に再放送を入れて水増し放映した『電人ザボーガー』があるとの声も耳にするが、関西地区や福岡地区では、関東地区での第4クールの「恐竜軍団編」を1~3月期の中断を挟んで1975年4月から日曜朝11時枠にて放映した処置とは異なり、当時の『冒険王』『テレビマガジン』の連載にシンクロして、1年間で全52話の放映を1975年3月末までに終了している。
 なお、関西での『ザボーガー』の放映時間帯は、第1~3クールの「Σ(シグマ)団編」が毎週土曜夕方6時、「恐竜軍団編」が毎週土曜朝7時半であった。


*4
 それまで、『カバトット』(71年)・『クレクレタコラ』(73年)・『ウリクペン救助隊』(74年)の5分枠のアニメ・特撮を放映していた枠にて登場した短編作品。ズク博士が作ったロボット・ロックバットとブレイザーが、悪魔の黒雲ワルジャンの手下・ドラダヌギーの巻き起こす珍騒動から「どうぶつ王国」を守るために戦うのがその大筋。


*5
 花王の洗剤『スパーク』のこと。当時の児童誌に載った新連載告知の多くは、『仮面ライダースパーク』のタイトルで記載されていた。


*6
 最初の映画2作『サイボーグ009』(66年)と『サイボーグ009 怪獣戦争』(67年)は、009のみが白、紅一点の003がピンク、他のメンバーが紫色の制服で設定されていた。1968年の白黒アニメ版もそれに準じて、モノトーンでその色彩を再現していた。


*7
 『少年同盟』(62年)はその後、1967年に『朝日小学生新聞』にて新規連載開始の新聞漫画としての再スタートを切った。ちなみに、石森は同じく1967年に雑誌『冒険王』に連載していた『アンドロイドV』(65年)を、ライバル誌『毎日小学生新聞』へも新規の新連載としてスタートさせているのが興味深い。


*8
 『秘密戦隊ゴレンジャー大全集』での当人の発言。


*9
 ミス・エールフランスは、香山美子(かやま よしこ)・中村晃子(なかむら あきこ)・長谷直美(はせ なおみ)などの大物女優を輩出したミスコンテスト。


*10
 『仮面ライダーストロンガー』のカブトローは、GT380ベースのオンロードタイプのものと、ハスラーTS250改造のアクション用の2種類が存在する。
 なお、『仮面ライダーX』にて主人公・神敬介(じん けいすけ)が乗るバイクはGT380でなく、GT550である。見かけはほとんど同じなのだが、エンブレムのアップシーンで識別できる。


*11
 『ザ・ボディガード』は、ニューヨークロケ(第9話・第10話)と香港ロケ(第19話・第20話)がそれぞれ前後編で制作されて、通算4話分も海外ロケ編が敢行されていた。


*12
 『刑事くん』シリーズは、1作目が全57話、2作目が全55話、3作目が全54話と、いずれも1年と少々のロングラン放映であった。


*13
 高久進と新井光は、他にも『Gメン’75』(75年)・『ザ・ゴリラ7』(75年)・『大非常線』(76年)・『大空魔竜ガイキング』(76年)・テレビ時代劇『隠し目付参上』(76年)などでも合作を手がけていた。


*14
 『刑事くん』(3作目)の殺陣師は、クレジットによると、第1話から28話までが岡田勝。第29話~第45話・第48話・第53話が大野剣友会の名義(殺陣師個人の名前はなし)といった状況になる。第29話以降も岡田勝が担当したのか、それとも他の人物が担当したかの詳細は不明。


*15
 “和製プレスリー”。ロカビリーブームの火付け役になったアメリカの人気歌手エルビス・プレスリーの名前が出典。


*16
 『お笑い頭の体操』終了には、大橋巨泉の意向も大きく関与する。「てこ入れするならオレは辞める。新番組をつくろう。新番組ならやる」。大橋はすでにこの番組に寿命が来ていたことを意識し、テコ入れしても野垂れ死に(番組打ち切り)が待っていると判断した。「まだ視聴率が二桁あるうちに、新番組で勝負すべきなのである」との大英断が、裏番組を打ち破り、新時代への長寿番組を生んだのだ(『巨泉・人生の選択』大橋巨泉(講談社刊)2000年)。


*17
 夜7時より『まんが日本昔ばなし』、7時半より『クイズダービー』、8時より『8時だョ! 全員集合』、9時より『Gメン’75』、10時より推理ドラマ『横溝正史(よこみぞ せいし)シリーズ』(77年)。土曜のゴールデンタイムを首位独走するラインナップがこれらであった。しかも、TBS発の人気番組を、トップ(7時枠)とエンド(10時枠)で大阪の毎日放送の制作作品が挟んでいたことにも注目である。


*18
 この『まんが日本昔ばなし』が絶賛放映中にも、毎日放送は『仮面ライダー』シリーズを再開させることがあった。しかし、土曜夜7時台の枠は『昔ばなし』が不動であったために、金曜夜7時に『仮面ライダー(スカイライダー)』(79年)と『仮面ライダースーパー1(ワン)』(80年)――1981年4月より土曜日夕方5時に時間帯変更。ローカル枠なので地域で差異あり――、日曜朝10時に『仮面ライダーBLACK』(87年)と『仮面ライダーBLACK RX』(88年)といった枠での放映になってしまった。


*19
 1作目の『ライダー』のみ、さらにコンパクトなサイズのサイクロン号のキットが存在する。しかし、単品売りではなく、仮面ライダーと怪人1体のセット売りに同梱されていた(定価150円)。


*20
 東映がテレビで放映されているアニメ作品を複数本上映した「まんが大行進」(1964年7月21日公開)を端とする、児童の長期休み期間に行った興行で、1967年3月より「東映まんがまつり」に改称。以後は1990年7月より「東映アニメフェア」に改称。アニメ作品オンリーになるが、2002年7月をもって終了。 


*21
 『ムーミン』(69年・72年)・『山ねずみロッキーチャック』(73年)・『アルプスの少女ハイジ』(74年)が、『東宝チャンピオンまつり』にて上映された『世界名作劇場』(『カルピスこども劇場』)枠の作品であった。


*22
 余談だが、俳優の筒井道隆に芸能界入りを勧めたのも、父の風間健であった。なお、この「道隆」の名は風間が四国本山少林寺に入門して与えられた僧名である。その名を息子に命名したのだとか。また、風間健の芸名は有名俳優・高倉健(たかくら けん)との絆を意識して採った名前だという。


*23
 同時期の作品で、「大野剣友会」から「JAC」にアクション担当が変更になった作品としては、『刑事くん』シリーズがあった。こちらは4作目のスタートとともに、主役が桜木健一から星正人に変わっただけでなく、アクション担当も変更となっていた。殺陣師はTBS土曜夜9時枠の『キイハンター』~『Gメン‘75』の近藤照雄プロデュースドラマでその名を不動のものにした西本良治郎が担当(最終回周辺では斎藤一之)。そのせいか、栗原敏・益田哲夫・春田三三夫(春田純一)・井上清和といった、当時のJACの面々が劇中で犯人グループのひとりとして出演。明らかな前作との環境変化を物語る。


*24
 巨大ロボットアニメ『UFO戦士ダイアポロン』は、視聴率は振るわなかったが、「ウルトラ」亡きあとのブルマアクを支え、スポンサーサイドの要求で、放送局を東京12チャンネルに変えて、『UFO戦士ダイアポロンⅡ(ツー)』(76年)として再開する。


*25
 東映社内報『とうえい』(東映株式会社総務部発行)1987年2月号掲載「温故知新 TV倶楽部」より。ちなみに、この記事を執筆したのは、2011年現在では角川大映に籍を置いている、東映出身で『仮面ライダークウガ』(00年)などを手掛けた高寺成紀。「怪人・メタリノームが倒されるシーン、その縫いぐるみの中身が、何を隠そう深沢氏だったとのことです。」(原文のまま)


*26
 この回で初代バトルコサック・白石謙作は敵のイーグル怪人の攻撃により殉職した。残された後輩のバトルスーツを先輩・神誠(じん まこと)が受け継いで、2代目バトルコサックが誕生したのだ。


*27
 当初は隔月刊誌だった『アニメック』は、1983年より月刊誌に昇格する。しかし、池田の希望もあって、この連載は月刊ペースでは進められないために、間に『特撮カルチャーセンター』と題した「日本特撮」をランダムに扱う隔月連載を挟んで、従来通りのペースで進行していた。そのために1年をかけて全6回で終了している。さすがに全98話もあったロングラン作品『仮面ライダー』第1作目になると、2~3回での完結はとても不可能で実際、「旧1号編」だけで2回の連載を費やしていたこともあってか、シリーズ最長の回数となっていた。


(文中敬称略)


*視聴率は、特記なしものはすべてビデオ・リサーチ社調査分で記載。
*作品タイトル直後の放映・公開年度は、原則として下2桁で記載。



(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2012年号』(2011年12月29日発行)所収『秘密戦隊ゴレンジャー』総論より抜粋)


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『厨病激発(ちゅうぼう・けきはつ)ボーイ』

(2019年秋アニメ)
(文・T.SATO)
(2019年12月15日脱稿)


 「厨病(ちゅうびょう)」の「厨」とは、「中二病」の「罵倒」的な意味での云い換えのネットスラング(俗語)で、ネット上の超巨大掲示板・2ちゃんねるの草創期に誕生した用語だったと思う。次第に「罵倒」の意味ではなく明るい「自虐」や「自嘲」や「謙遜」の意味での使用がメジャーとなって、そのニュアンスも変えていった。この云い換えの歴史も20年近いものとなるのだ。



 男女共学高校の「ヒーロー部」(笑)の残念なイケメン男子たちの珍妙な活動に翻弄されて、勝手に「スーパー戦隊」のピンク扱いにされることになった、サメてはいてもフェミニンでゆるふわな茶髪で小柄な少女が主人公を務めている逆ハーレムアニメでもあった。


 といっても、イケメン男子たちはスカした男子クンたちではなく、特撮ヒーローものが大好きらしい精神年齢が幼稚園児な少年ばかりが登場している。なので、野郎が観てもイヤ~ンな感じはしないと思う。


 また、本作のような作品がスキな女子たちも、きっと思春期のモテ/非モテのカーストの前では勝ち目がナイことを直感的に悟ったり、3次元世界でのちょいワル男子が怖くて甘ったるい男子の方がスキなので、虚構世界で擬似的恋愛の代償行為を得ようとするオボコい女子たちなのだろうとも憶測するのだ――バカにしているワケではないですよ――。


 筆者が散見してきた範疇でも、こーいう女子向け逆ハーレム作品の視点人物である少女主人公といったものは、女子向けの男性アイドル歌手アニメ『うたの☆プリンスさまっ♪』(11・13・15・16年)をはじめとして、不自然なまでに無色・無個性・フラット・無主張・プレーンな傾向があった。しかしそれゆえに、女性オタクが鑑賞するにあたって、主人公少女の存在が媚びた感じでハナにつく……といったあたりを脱臭することができている。
 主人公の存在が彼女ら女性視聴者にとっては邪魔にならずに、適度な塩梅での自分個人を投影させたかたちでの感情移入をさせるといったあたりが、劇中世界へのあくまでも媒介役としてはウマく機能させることができている……といったところなのだろう。


 しかし、そーいった確信犯的な作劇的意図(?)とは別に、こーいう地味子ちゃんな主人公もけっこう魅惑的である。我々のような野郎オタクたちがナゼにこういった番組にイナゴのように群がってきて毒牙にかけないのかが不思議なくらいだ(笑)。


 同列には論じられないけど、


●直前の夏季の深夜アニメ『荒ぶる季節の乙女どもよ。』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210411/p1)に登場した、小説家志望の低血圧なボソボソと低音でしゃべる黒髪の地味子ちゃん
●戦車アニメ『ガールズ&パンツァー』(12年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190622/p1)の冷泉マコ(れいぜい・まこ)
●同季の秋アニメ『星合の空(ほしあいのそら)』(19年)の地味子ちゃん


 女性としての性的な魅力には欠けるやもしれない。しかし、低身長の黒髪もっさりヘアで、異性に媚びてはいなくて、声も可愛く作っていなくて、ローテンションかつ少々ブッキラボウには見えても、やっぱり弱そうで誠実そうな娘たちの系譜といったものは、ベストではなくてもベターとしてはイイとも思うのだけれどもなぁ(笑)。


 もちろん、そんなキャラへのフェティッシュな想いだけでも視聴継続を決意する決定打にはならない。よって、悪印象はないけれども、オサラバしてしまうのであった(汗)。


 ググってみると、本作はヒットした「ボーカロイド楽曲」――人工の声による楽曲ソフトを使ったアマチュア楽曲――が原作(14年)なのだそうで、それを基に小説化やマンガ化(共に16年)が進行していった企画だそうである。げに昨今のオタクジャンルの状況や出自は多様なのであった。
厨病激発ボーイ (りぼんマスコットコミックス)

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.76(19年12月28日発行))


『厨病激発ボーイ』

(金曜 22時30分 TOKYO-MX他)
(文・久保達也)
(2019年10月20日脱稿)


 第1話は転校してきた女子高生が「ヒーロー部」に所属する「中二病」の男子たちの奇行に振り回される内容である。今後、面白くなっていくのかどうかは現時点ではなんともビミョ~な印象である。その中二病男子たちの生態描写におもわず注目したから、かろうじて観つづけることができたといったところだ。


 黒板の前で自己紹介する茶髪ショートボブにヘアバンドをした転校生少女に対して、やたらと騒々しくて落ち着きのない主人公男子は「おまえはピンクだ!」と叫ぶ。当然ながら、転校生のみならずクラスの大半がその意味を理解できずにポカ~ンとしてしまう(笑)。


 フィクション作品のお約束で(笑)、例によって隣の席となった転校生の少女に、主人公男子が「オレはレッドだ!」と自己紹介したことで、視聴者は先述した「おまえはピンクだ!」の意味をやっと理解することになる。


 つまり、このレッドは「スーパー戦隊」をはじめとする特撮変身ヒーローが大好きな少年であり、すでに「ヒーロー部」にはイエロー・ブラック・パープルまでそろっていたことから、彼は転校生少女をピンクとしてスカウトしたのだ(笑)。


 ちなみに、レッドは小学生が体育の時間に頭に着用する、紅白がウラ表リバーシブル仕様の帽子のツバを頭頂部に立ててかぶっている。これは昭和の時代に小学生だった男子ならば特撮変身巨大ヒーロー・ウルトラマンたちやウルトラセブンなどのマネとして同じかぶり方をしたことがあった者は圧倒的な大多数だろう。


 ウルトラセブンの必殺技・アイスラッガーをマネして、その帽子を飛ばしていたヤツも定番であった。ウルトラマンはロクに観てはいなくても、いまどきの小学生でもそういったマネは定番であるとも聞く。


 そして、そんな描写こそが、レッド少年が重度のヒーロー好きであるどころか、いかにイタいヤツであるかを一目瞭然としてくれる小道具ともなるのだ。


 そして、転校生少女は右目に眼帯をしている。古くはSF巨大ロボットアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』(95年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220306/p1)のヒロイン・綾波レイ(あやなみ・れい)の傷ついた姿、京都アニメ製作の大ヒットラブコメ『中二病でも恋がしたい!』(12年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190904/p1)のヒロイン・小鳥遊六花(たかなし・りっか)などで、後者のような演技やポーズやセルフプロデュース、どころか本人の思い込みでその眼帯で自身の超能力が発露することを抑え込んでいる! といった展開になるのかと思いきや……


 レッド少年の方が、彼女の眼帯にはその右目に秘められた特殊能力が覚醒するまで、これを防御している機能があるのだと思いこむ!(笑)


 しかし…… 実は「ものもらい」を隠しているだけであった(爆)。



 ちなみに、レッドが使っている筆箱には、ボタンを押すと鉛筆やペンなどの収納部分が上部にせり上がってくる機能があった。


 これはオジサンである筆者が小学生だった1970年代後半に突如として登場して大ヒットした、可変部分も付いて遊べる玩具性(後年でいうプレイ・バリュー)も濃厚にあった筆箱商品でもあるのだ。
 上部にせり上がるどころか、筆箱の裏面にもフタがついていて、そちらにも鉛筆などが収納可能な二面筆箱。側面自体にもフタが付いている三面筆箱。上部側面にもフタが付いている四面筆箱。消しゴム収納部分も開閉フタがついている五面筆箱・六面筆箱などなど、ドンドンとエスカレートしていったものだ。


 しかし、子供は実に移り気。小学校中学年以上の児童間でもこういった変型筆箱は急に幼稚だとされる風潮がはじまって、シンプルな布製かつチャックの筆箱や金属製のカンペン筆箱の方がオシャレだとされるようにもなっていく(爆)。


 そんなロートル世代から見ると、このような筆箱が現在でもいまだに存在していたことにも驚いた!(笑) しかし、彼のような少年がこういう筆箱を好みそうだという意味では、彼のさらなる念押しのキャラ付けとしても、この小道具でさらに増強させてもいるのだ。



 そんなカラ騒ぎぶりでクラスでは浮いた印象のレッド少年とは異なり、金髪イケメンのイエロー相当の男子クンには男子の友人も大勢いるリア充であった――リアル=3次元世界で充実している人間のこと……って説明不要ですよネ――。


 しかし、彼もマトモな少年ではなかった。アイドルアニメ『ラブライブ!』(13年~・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20160709/p1)をおもいっきりモチーフにした『アイライブ』(笑)なるスマホゲームに登場する特定の女子キャラに夢中になっているオタク男子なのだ(爆)。「リアル女子には興味ない」とまで公言! 転校生女子には「残念なイケメン」と云われてしまうのであった(笑)。



 第1話の後半では、教室の窓からサッカーボールが飛びこんできたり、運動場でバスケットボールのゴールが倒れてくる! 転校生少女がさまざまな危険な目に遭(あ)うミステリー的な展開となっていくのだ。


 レッド少年は主人公少女の右目の特殊能力が覚醒する前に、彼女を始末しようとしてくる「悪の組織」の仕業(しわざ)だと推理する!(笑)
 しかし、銀ブチ眼鏡の秀才タイプのブラック相当の少年クンが「犯人はおまえだ!」と指さしたのは…… なんと同じ「ヒーロー部」に所属するパープル相当の少年クンであった!


 かなりヤンキーっぽい雰囲気で、レッドやイエローの日頃の振る舞いを「バカバカしい」と軽蔑(けいべつ)しているパープルであった。そんな彼が自身の性向とは真逆ともいえる「ヒーロー部」になぜ所属しているのか? なぜ転校生女子を狙うのか? 第1話を観るかぎりではイマイチその立ち位置が不明である。


 しかしまぁ、「平成仮面ライダー」作品のようにナゾ解きをタテ軸にして展開する、本格的な群像劇ドラマとなっていくようにはとうてい思えない(笑)。あくまでもギャグでコミカルに押し通していくノリが容易に想定されてくるのだ。


 本作のコミカライズ(16年)が集英社の少女漫画雑誌『りぼんスペシャル』に連載されていたことから推測するに――2019年10月に完結したばかりだ――、イケメン王子さまたちのカラ騒ぎを描いた路線のなかでの変化球的な作品でもあるのだろう。


 だから、特撮オタクの女子がその趣味の是非や意義、社会の中で正体を隠すことや仲間を探すことの葛藤を描いたような、小学館『ビッグコミックスピリッツ』連載の人気漫画『トクサツガガガ』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190530/p1)のような深みと滋味もあるような内容を期待しても、たぶんムダであろう(笑)。
厨病激発ボーイ

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『DEATH-VOLT』VOL.83(19年11月3日発行))


『ド級編隊エグゼロス』

(2020年夏アニメ)
(文・T.SATO)
(2020年8月7日脱稿)


 ご町内の平和を守るために、主人公の男子高校生が戦隊ヒーロー・エグゼレッドに変身! 「キセイ蟲(ちゅう)」なる昆虫型怪人と戦う!


 といっただけの内容に思えたが、やわらか可憐なボイスの加隈亜衣(かくま・あい)ちゃんが演じる金髪ショートでクラスでも快活なメインヒロインも魅惑的に描かれている。


 彼女は「性」には潔癖で忌避(きひ)さえしている。しかし、幼少時の回想シーンでは幼児時代の主人公クンに公園の遊具の中の密閉空間で積極的に迫っていた。


 そう、幼少期などは「性」的なものに関心はあっても、その後は罪悪感とともに性欲を抑制してきた娘なのだ。


 そして、劇中では「Hエネルギー」(笑)が常人の数十倍だったので、劇中内ヒーローたる資格があったとされるのだ!――ナンでやねん! 性欲が資格かい!?――


 それによって、ナシ崩し的に地球防衛隊・サイタマ支部の宿舎――それも木造の宿舎(笑)――に応召されて、エグゼイエローとして任命されるのだ!


 その他にも、エグゼピンク・エグゼホワイト・エグゼブルーに変身する女子中高生たちが登場している――女子ばかりといったあたりで、幼い男児たちが視聴すれば忌避してしまうだろうけど、その逆に思春期以降の少年クン向けとはなることで、いわゆるハーレムものの文法にも合致する作品であったこともこれで明々白々となるのだ(笑)――。


 そして、極め付け。『ド級編隊』の「編隊」とは、「戦隊」と「変態」を掛けている語句であることが判明していく。要はダジャレとしてのメインタイトルなのだ(汗)。


 一般の少年マンガ雑誌で連載されている作品とは異なり、純オタク向けの媒体が出自である作品の場合には、主人公少年クンは能動的ではなく、受動的で繊細ナイーブで内向的かつ巻き込まれ型が多いものだ。


 しかし、本作の主人公クンはやや能動的である。性欲・煩悩も全開である(笑)。原作は月刊「ジャンプスクエア」の連載マンガであり、「週刊少年ジャンプ」と比すればややマニアックな媒体ではあるものの、角川書店や一迅社などの媒体に比べればそこまでオタッキーな媒体ではないのだ。両極の中間のやや一般層寄りに位置する媒体といったところだろう。それらの媒体の客層の性格類型の違いによっても、主人公少年の性格設定にも相違が出てしまうのだ……といったところだろう。


 特撮ヒーローをパロった深夜のヒロインアニメ『俺、ツインテールになります!』(14年)や『アクションヒロイン チアフルーツ』(17年)なども同様だったけど、最初から「B級路線」をねらった「イロモノ作品」に対して、「もう少しだけ叙述の仕方を工夫すれば、たとえイロモノ・B級作品ではあっても、もうちょっとドラマ的な密度感も出せるんじゃネ?」なぞといったツッコミはヤボなのだろうナ、やっぱり。


 個人的には本作の鑑賞を継続していくのがキッツい作りではある――本作をスキな方々にはゴメンなさい――。


 でもまぁ、メインヒロインはルックス・作画・ボイス・性格ともに魅力的に描かれている。それだけです。……それだけしかないともいう(笑)。
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(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.77(20年8月13日発行))


『ド級編隊エグゼロス』

(土曜24時 TOKYO-MX他 放映終了)
(文・久保達也)
(2020年11月11日脱稿)


 「誰かが云った。『HERO(ヒーロー)』は『H(エッチ)』と『ERO(エロ)』でできていると……」


 人類から「Hエネルギー」を吸い取って、その活力を奪うことで地球侵略をたくらむ「キセイ蟲(ちゅう)」と戦う高校生男女で結成された、地球防衛隊・サイタマ支部・HERO課に所属する「エグゼロス」が本作の主人公チームとなる戦士集団だ。


 きただりょうま氏の原作は集英社『ジャンプスクエア』に連載中である。こう書くと一応、ヒーローもののかたちを借りただけの「ドタバタHコメディ」だと思われるかもしれない。


 実際、全編に渡ってエロ描写はかなり多い。たとえばエグゼロスのメンバーは文字盤に大きく「H」(笑)と書かれた腕時計型のアイテムである「XERO(ゼロ)ギア」でその肉体を強化する。しかし、スーパー戦隊ヒーローもどきの戦闘用の「XEROスーツ」が開発されるまでは、増幅されたエネルギーに耐えられずに衣服がビリビリに裂けてしまうことから、「キセイ蟲」とは全裸で戦っていたほどだ(笑)。


 それでも、本作にはさほどのエロさは感じられない。「淫靡」ではなく、視聴者を笑わせようとする「さわやかエロ」である。それどころか、きわめてまじめなヒーローものとの印象も強い。これは主人公像によるところが大きいのだろう。


 先述したような設定や世界観ならば、本来なら主人公は「H」&「エロ」全開で、いかにも「少年ジャンプ」系の「オレさまが世界でいちばん強い!」的なオラオラキャラになるところだ。


 だが、本作の赤っぽい茶髪ギザギザヘアの高校生主人公・炎城烈人(えんじょう・れっと)=エグゼレッドは、その髪型から連想されるイメージに反して、教室での同級生たちのエロ話に加わることもできない。
 小学校からの幼なじみで黄色ショートヘアにアホ毛がそびえる美少女高校生・星乃雲母(ほしの・きらら)にひそかに想いを寄せつづける奥手な少年である。エロさのかけらもないのだ。


 そして、烈人がエグゼロスに入隊した動機がマジメで彼の人間性を色濃く象徴している。キセイ蟲は5年前から地球で暗躍していた。しかし当時、小学校高学年だった烈人と雲母が公園でふたりでいたところを、蚊型のキセイ蟲怪人が襲ってきて、雲母の「Hエネルギー」を吸い取ろうとした。けれど、


「これだけエネルギーを吸い取っても平然としてるなんて、なんてどエロい人間なんだ!!」


とキセイ蟲怪人はなげいた末に、「Hエネルギー」を吸いきれずに爆死してしまったのだった(大笑)。


 このキセイ蟲怪人の発言に大きなショックを受けてしまった雲母(笑)。彼女は以来、「アイアン・メイデン=鋼鉄の処女」と呼ばれるほどに男子をキラって、男子がさわったものには手をふれられないほどの潔癖性(けっぺきしょう)となってしまった。幼なじみの烈人とも疎遠(そえん)となってしまったほどだ。


「誰かが云った。『スキ』の対義語は『キライ』ではなく、無関心だと……」――そのとおり!(汗)――


 雲母=初恋の相手をそこまで変えてしまったキセイ蟲に対して、当時はいっしょにいながら何も反撃できなかった烈人は、贖罪の念とともに復讐も果たすため……といった、相応に理はあるものの、いわば「私(わたくし)」としての動機でエグゼロスに入隊したのだった。


 だが、あれから5年を経てキセイ蟲の本格的な侵略がはじまった! 人々から次々と「Hエネルギー」が奪われていく光景を見るなかで、「もう誰にもこんな想いはさせない!」と、その戦いは「個人の復讐」から「市民を守る」ために「公(おおやけ)」の動機へと昇華をとげていたのだ!


――いや、吸収しきれないほどの「Hエネルギーを持っていて、そのことを敵の怪人に指摘されて傷つくような一般人もいなさそうだけど(笑)――



 烈人の声を演じる松岡禎丞(まつおか・よしつぐ)氏は、


●『冴(さ)えない彼女(ヒロイン)の育て方』(第1期・15年 第2期・17年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190901/p1)では、オタク高校生ながら名前をもじって「倫理くん」と呼ばれたほどに曲がったことがキライな安芸倫也(あき・ともや)


●『エロマンガ先生』(17年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20221211/p1)でも高校生主人公で、ライトノベル作家でもあり(爆)、義理の妹でイラストレーターの和泉紗霧(いずみ・さぎり)に恋愛感情を抱く和泉正宗(いずみ・まさむね)


なども演じている。しかし、烈人のキャラは云ってしまえば、その性格や精神性はオタクな倫也と正宗とも同じ系列ではなかろうか? 彼らふたりはオタク系ラブコメ主人公としてはやや能動的だったかもしれないが、「ジャンプ」などのオラオラ系ほどでは決してない。


 もちろん、松岡氏の演技によるところも大きいが、倫也や正宗を彷彿(ほうふつ)とさせる烈人の好感度の高さもまた、その作風からエロい印象をウスめて、勧善懲悪ヒーロー性を高めるための効果を存分に発揮しているかと思われるのだ。


 第1話の前半で、烈人をはじめとする同級生男子にさんざんに悪態をついた雲母は、夕焼けに染まる帰り道で5年ぶりにふたたびキセイ蟲に襲われたことで、烈人はとっさに雲母の手を握って駆けだしていく!


 導入部では5年前の小学生時代の回想として語られたが、その手の握り方は当時はおマセさんであった雲母が「オトナの恋人同士の手の握り方」の練習として烈人に示したものであった。これを契機に5年前から止まっていた雲母の時間がふたたび動きだすかのような展開は実にドラマチックなのだ!



 回想の冒頭シーンにあった、公園内にふたりのランドセルが仲良く並んで置かれている描写は、5年前の烈人と雲母の関係性を端的に象徴したものでもあった。


 そして、


「この日、オレは生まれて初めてヒーローになりたいと思った……」


という烈人の語りも、雲母が5年前にキセイ蟲に襲われる直前のものであった――遊具にキセイ蟲の黒い影が迫る暗示的な演出も実に効果を発揮している!――。烈人にとっては、雲母が小学生当時からしてすでに「守りたい存在」と化していたことの証(あかし)なのだ。


「今だけ許してあげるから、もうちょっと握ってて……」


 終始、烈人に対して拒絶気味の態度であった雲母が「オトナの恋人同士の手の握り方」を覚えていた烈人を5年ぶりに「れっくん」と呼ぶほどに心を開くさまもまた劇的なのだ。


 そのためか、烈人の「XEROギア」にある「H」の文字が回転してまばゆい光を放った!!


 そして、全身がオーラに包まれたふたりの前に、大量の「Hエネルギー」で巨大化したカマキリ型のキセイ蟲が現れた!


「いっしょにおもいっきりブチかますぞ!!」


 協力してキセイ蟲を撃破した烈人と雲母!


 しかし、ふたりは公園で全裸姿で取り残されることとなってしまった(笑)。やはりオチはギャグとして落としているのだが、その関係性の変化の末に変身ヒーロー&ヒロイン誕生へと至る過程は実にドラマ性が高かった。そして、青春学園群像劇としても、出色の出来かと思えたほどだ。


 原作漫画家は本当はまじめなヒーロー&恋愛を描きたいのに、編集部の意向でエロ強調路線にされてしまったのでは? そんな気もしてくるほどだ。
ド級編隊エグゼロス 1(完全生産限定版) [Blu-ray]

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『DEATH-VOLT』VOL.86(2020年12月20日発行)所収)


『アクションヒロイン チアフルーツ』

(2017年夏アニメ)
(文・T.SATO)
(2017年12月13日脱稿)


 「ローカルご当地アイドル」が地方で町興し(まちおこし)する深夜アニメというと、『サクラクエスト』(17年)や『普通の女子高生が【ろこどる】やってみた。』(14年)の2作を想起する。


 しかし、本作の「ローカルアイドル」は、いわゆる「ご当地ヒーロー」ならぬ「ご当地ヒロイン」! 全国各地で「ローカルヒロイン」が隆盛を極めているというウソっぱちの世界観で、地方の女子高生がオリジナルの「スーパー戦隊」――むろん顔出し(笑)――を結成して、悪の怪人と戦うのではなく、ヒーローショーを披露するといった内容であった(笑)。


 ホンモノの「スーパー戦隊」出身であり、『海賊戦隊ゴーカイジャー』(11年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20111107/p1)のゴーカイイエローをナマ身で演じてきたM・A・O(まお)ちゃんが、またまたあまたの2017年の深夜アニメ(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190924/p1)とも同様に主演声優を務めている!


 しかし、主人公なのにクールな性格の女子役なので、筆者には「赤」「青」「黄」などの色を苗字に持った、劇中では第1話よりも以前からヒーローショーのステージに立っていたというキャラたちの方が、アイドル性や華(はな)があって印象に残ってしまう。


 この「スーパー戦隊」でもある女のコたちの集団のなかには、「特オタ(特撮オタク)」も「鉄オタ(鉄道オタク)」も同時に並存している天文学的な確率(笑)については、そこは漫画アニメなのだからツッコミを入れるのはヤボであろう。とにかく、この作品世界においてはそうなっているということでイイのだ。


 本作の脚本は特撮・アニメ作品も幅広く手掛けている荒川稔久(あらかわ・なるひさ)。なので、特撮パロディも満載だ。同じく荒川が手掛けた特撮パロが満載のヒロイン戦隊もののラノベ原作の深夜アニメ『俺、ツインテールになります!』(14年)同様に、90歳を超えた大御所・渡辺宙明(わたなべ・ちゅうめい)センセイが別のチームの先輩「ご当地ヒロイン」のために楽曲を提供しており、そこにワザワザ1980年代風の特撮変身ヒーローもののオープニングを再現したイメージ映像などもカブせている――字幕テロップも21世紀の今日における微量にオシャレでセンスもある小さな書体とは異なり、当時の小さなTV画面ではともかく今見るとヤボなほどに巨大な書体が再現されてもいるのだ!――。


 とはいえ、そういった描写があるからといって、特オタである筆者も本作を認める! なぞといった気にはならない(笑)。


 さまざまな性格の女子高生たちが仲間を集めて、自分の得意分野でヒーローショーの興行に協力し、困難を乗り越えて勝利をつかんでいく……といった展開であったあたりで、全国各地でスクールアイドルが勃興中! という、やはりウソっぱちな世界観でも、実に楽しい物語を紡いで内容的にも人気面でも大成功していたアイドルアニメ『ラブライブ!』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20150615/p1)なども想起させてはくる。
 しかし、あちらが「バカ設定」であるにもかからず「ガチ熱血」「ガチギャグ」「ガチ萌え」で取り組んでいたのに比すると、ユル~く流して作っている印象なのである。


 それ自体がまた「ねらい」なのだろうけど、個人的にはそこが物足りないのだ。


 では、ドーすればイイのだろうか?


 「日常場面」では女のコたちの「萌え」を前面に押し出す。しかし、劇中劇でもある「ヒーローアトラクショー」における「正義の戦隊ヒロインズvs悪の軍団」の方では、シナリオなりアクション演出の温度を、本編とは多少遊離してでも高めてみせたり、さらにはテーマもどきの道徳説教(笑)などを絶叫させれてみれば、もっとメリハリが付いたのではなかろうか!? などとも愚考をしてしまうのだ。


 とはいえ、「作画」も「動き」も一級レベルではない並みの予算のアニメなので、そういった増強や演出もまた高望みであったり、「付け焼き刃」で「焼け石に水」といったオチになってしまったかもしれないけど(笑)。
アクションヒロイン チアフルーツ Vol.4【Blu-ray】

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.70(17年12月30日発行))


『恋は世界征服のあとで』

(2022年春アニメ)
(文・T.SATO)
(2022年8月7日脱稿)


●5色の戦士である「スーパー戦隊」のリーダーでもあるレッド
●悪の軍団の女幹部


 この両者の許されざる恋の物語を描いた作品である! ……といってもギャグ作品ではある。


 プライベートでも逢瀬を重ねて、時に戦闘中でも仲間がいない場所では安息の会話を交わして、そこに敵味方が乱入してくるや否や、即座に組み合って戦闘しているフリをする。時にフリではあるけどガチで打撃し合っていたりするので、フリである意味がないのだけど(笑)。


 広義では特撮変身ヒーローもののパロディー作品である。今年2022年冬季にも、悪の軍団側にスポットを当てて、憎めない存在どころかホワイト企業(笑)として描いてみせていた『怪人開発部の黒井津さん』や短編アニメ『お昼のショッカーさん』などが放映されている。


 もう40年も前の1982年に製作された自主映画の金字塔『愛国戦隊大日本』などにおける、特撮変身ヒーロージャンルの「型」をナゾって笑いに変えるパターンではない。悪の軍団の内情だったり、敵味方間での男女の密通だったりなど、同じパロでもそこは隔世の感があるのだ。


 筋トレ(筋肉トレーニング)が趣味である禁欲的なレッド。戦場ではSMの女王さまのような悪の女幹部。


 ストーリーが進むにつれて判明していく。この両者は高校生だったのだ(爆)。20代の適度に枯れて達観した男女にもまだ残っていたウブな交流にも見えていたのにィ(汗)。


 まぁ、そこは絵柄的にもリアリズムが優先されていないマンガなのでご愛嬌である。


 この悪の幹部でもある女子高生は肉体的には頑強。しかし、素はかわいいモノが大好きな乙女であった。ギャップ萌えをねらってきている。加えて、なぜか自身の女子力には劣等感があるあたりもまたポイントを上げている(笑)。


 ただ、シリーズの序盤は破裂的に面白かったものの、何らかの工夫やセンスが足りないのか、シリーズ後半では徐々にテンションは低落していくようにも思うのだ。


 序盤はイマイチだナと私見したものの、徐々に面白くなっていく『怪人開発部の黒井津さん』とは、その一点では真逆であった――単なる筆者の個人的な主観であれば、ゴメンなさい――。



 エッ? 本作も「マガジン」系マンガが原作? なんと角川書店や一迅社などのオタク向け媒体ではなく、「月刊少年マガジン」連載作品なのであった。いったい2010年代以降の「マガジン」は同季に何作品がアニメ化されているのやら(汗)。


 ちなみに、本作の悪の軍団は首領(声・杉田智和)以外は女幹部ばかりである。花澤香菜・金元寿子・佐倉綾音・沢城みゆきで中堅どころが勢揃い!


 そして、本家『魔進戦隊キラメイジャー』(20年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220503/p1)で女幹部・ヨドンナを演じたコスプレイヤー上がりの桃月なしこも女幹部役で声の出演! 終盤の究極怪人の声も、「永遠の17歳」の第2号(笑)こと田村ゆかりであった。


 ムダに豪華でギャラは大変そうだが、新人声優には醸すことができない幹部級としての貫禄が、これによって出せていることも事実なのだ(笑)。
恋は世界征服のあとで Blu-ray BOX 上巻

恋は世界征服のあとで Blu-ray BOX 下巻
(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.83(22年8月13日発行))


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(文・T.SATO)
(2022年4月10日脱稿)

『ゼンカイジャー』を通じて「戦隊」史も透かし見る!


 赤・青・黄・桃・緑などといった原色のカラフルなスーツで身をまとった複数名の変身ヒーローと悪の組織が繰り出す敵怪人とが、歌舞伎的様式美なコミカル・オチャラケ・ゲーム的でスポーティーなバトルを繰り広げる、今や日本の新古典・お家芸になったともいえる「スーパー戦隊シリーズ」。本作はその節目の第45作目といったアニバーサリー作品でもある。


 しかして、本作におけるスーパー戦隊のリーダー格の戦士は、従来のシリーズであれば「赤」の体色であるべきところがナンと「白」!


 しかし、その仮面も両眼に当たるところが、80年代中盤以降のスーパー戦隊の戦士たちのような黒いサングラス状のスマートでシャープなゴーグルなどではない。戦隊ヒーローというよりかは昆虫を模した日本の古典特撮変身ヒーローシリーズ・仮面ライダーたちのような巨大な複眼状の両眼にもなっている!
 そして、スーパー戦隊の基本構成が「5人」であることをローマ数字の「Ⅴ」でも代替できることから、「スーパー戦隊シリーズ」それ全体のロゴとしても引用されてきた「Ⅴ」を引用したのだろう、「V」字型の突起が額から伸びていることで、ますます昆虫の触覚状の突起を額から生やしている「白い仮面ライダー」といった風にも見えてしまう(笑)。


 むろん、ヒョウタンを横倒しにしたようなその両眼は中央で細くつながっているあたりで仮面ライダーとは異なっている。今となっては実は不要である多数の小さなノゾキ穴状の模様も穿たれていることで、この戦隊ヒーローは元祖『秘密戦隊ゴレンジャー』(75年)のリーダーことアカレンジャーの顔面デザインを模していたことが、戦隊マニアたちにはわかってくる趣向である。


 元祖『ゴレンジャー』世代のオジサンとしては、シンプルなデザインのゴレンジャーの5人は子供たちにもマネがしやすく、ご近所や級友たちの大勢が模写をしていたことなども思い出す――むろん、模写のしやすさをデザインの至上の条件に挙げているワケではない。現今の子供たちにはゴレンジャーのデザインは古びてヤボったく見えているであろうとも思うので(汗)――。


白い主役ヒーローの周囲を固める4人の戦隊巨大ロボ!?


 そして、この白い戦隊リーダーの周囲を固める残りの4人のメンバーが、人間体型でレオタード地のスマートないつもの戦隊ヒーローたちではない。過去のスーパー戦隊シリーズに登場してきた戦隊ヒーローならぬ、戦隊巨大合体ロボットたちの手脚や胴体などが箱っぽい無骨な着ぐるみを模している、人間サイズのヒーローたちなのだ!


 ロートルオタクたちやリアルタイム世代ではなくても、さかのぼってスーパー戦隊シリーズの旧作までをもチェックをするような特撮マニア諸氏であれば、やはりコレも元ネタがわかったことであろう。


●『恐竜戦隊ジュウレンジャー』(92年)における同作の戦隊巨大合体ロボット第1号こと赤と黒の色彩が主体である「大獣神(ダイジュウジン)」!――異世界の赤い機械人間ことオジサンくさいジュランが変身した姿であるゼンカイジュラン!


●『百獣戦隊ガオレンジャー』(01年)における戦隊1号ロボこと「ガオキング」!(黄色主体なので即座にそうは見えないモノの……)――異世界の機械人間こと黄色くてネコっぽいライオンをモチーフとした陽気な善人若者キャラであるガオーンが変身したゼンカイガオーン!


●『魔法戦隊マジレンジャー』(05年)の1号ロボことトンガリ帽子が印象的な「マジキング」!――コミュ力弱者だけど趣味の方面だと冗舌になるオタク少女である機械人間・マジーヌが変身したゼンカイマジーヌ!


●『轟轟(ごうごう)戦隊ボウケンジャー』(06年)における巨大な自動車型マシンが合体した1号ロボこと「ダイボウケン」!――生真面目な理系学究キャラである青い体色の機械人間・ブルーンが変身したゼンカイブルーン!


 80年代における初期スーパー戦隊の青や黒が主体であった巨大ロボット・モチーフのキャラはココには存在しななかった(笑)。むろん、80年代のスーパー戦隊の巨大ロボットは、ミリタリックな現実科学・SF科学の延長線上にてノン・モチーフ、もしくは無骨な戦闘機や戦車などがモチーフであったものだ。それはそれで当時としてはよかったのだが、今となってはたしかに地味で無個性にも映るだろう。
 90年代以降のファンタジックな原理に依拠するようになったスーパー戦隊は、恐竜・伝説獣・忍者・動物・自動車・魔法使い、あるいはそれらの複合モチーフといったかたちで、戦隊合体巨大ロボの見た目を実に多彩にデザインしてきた。そして、その方が見た目・ルックスも個性的・キャッチーでキャラクターも立っている。


 よって、今の子供たちにアピールするのも、たしかに「大獣神」以降の戦隊巨大ロボたちなのであろう。それと同時に、往年の戦隊巨大ロボのセレクトのあたりにも、マンネリなルーティンのようでいて、確実に変化――時に「歴史の断絶」的な急変化!――などもあったスーパー戦隊シリーズの長い歴史なども、ロートルオタクとしては自然と想起がされてしまうのだ。


――その逆に80年代でも、地球という惑星自体が放った神秘のパワーによるドラゴン・グリフォン・ペガサスといった伝説獣の力を有した戦隊ヒーローでありながら、戦隊巨大ロボに合体するメカが軍属のヘリコプターや戦車だったりする『電撃戦隊チェンジマン』(85年)など、その一点については当時のもう中高生以上であった戦隊マニアたちも不整合は感じており、マニア誌の読者投稿欄や同人誌などではその旨の表明などはあったと記憶する。この矛盾は妖精が見える高校生5人がファンタジー風の悪党軍団と戦うも、無公害エンジンだとはいえ自動車型の巨大メカが合体する戦隊巨大ロボを駆使していた『高速戦隊ターボレンジャー』(89年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191014/p1)などでも指摘されてきたことだ――


 この戦隊巨大ロボットをモチーフとした変身後の4人の戦隊ヒーローことゼンカイジャーたちは、そのままの姿で巨大化までしてみせる! そして、特撮巨大バトルも演じてみせる!
 加えて、着ぐるみではなくCG表現ではあるものの、非人間体型であるティラノサウルス・ライオン・ドラゴン・ダンプ車両型にも変型! しかも、それらが左右の半身となるかたちの2体1組にて合体! 人型の巨大ロボットにもなってみせるのだ!


 ティラノサウルスは、『恐竜戦隊ジュウレンジャー』や『爆竜戦隊アバレンジャー』(03年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20110613/p1)に『獣電戦隊キョウリュウジャー』(13年)といった、恐竜をモチーフとしたスーパー戦隊において主役の戦隊レッドや彼が操るメカ恐竜のモチーフともなってきた、子供たちにも人気がある二足歩行で最強の人気恐竜でもある。


 ライオンも、『超獣戦隊ライブマン』(88年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20110919/p1)の戦隊イエローが操縦した戦隊巨大合体ロボの胴体となったライオン型メカを筆頭に、『星獣戦隊ギンガマン』(98年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/19981229/p1)の戦隊レッドが操る赤いギンガレオン、『百獣戦隊ガオレンジャー』の戦隊レッドが操るガオライオンなど、やはり百獣の王にしてそのタテガミが印象的なところから、子供たちにも人気がある動物であった。


 ドラゴンも、『五星(ごせい)戦隊ダイレンジャー』(93年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20111010/p1)の戦隊レッドが操る赤い東洋の竜型メカを端緒に、『ギンガマン』の戦隊グリーンが操る西洋風ドラゴンことギンガルコン等々が登場してきた。


 ダンプことクルマは、子供や若者間におけるモービル(乗り物)幻想が減退したせいか、昨今では特に人気が高いモチーフではなくなったけど、平成初頭の『高速戦隊ターボレンジャー』(89年)では、5台の自動車型の大型メカが合体して戦隊巨大ロボとなるコンセプトが大ウケして、同作の戦隊巨大ロボことターボロボが子供たちに爆売れしたものだ。


 巨大ロボットに戦隊ヒーローたちが搭乗するのではなく、戦隊ヒーロー自身が巨大化変身してみせるといったあたりも珍しい趣向ではある。しかし、45作も重ねてきたシリーズのこと。この試み自体もまた本作が初だということでもない。
 『忍者戦隊カクレンジャー』(94年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20120109/p1)でも5人の戦隊ヒーローが忍法(笑)で人型獣面の巨大戦士である5獣将(従来の巨大ロボに相当)へと巨大化変身して戦い、さらに5体合体して同作における戦隊巨大合体ロボ1号こと日本の近世城郭がモチーフである「無敵将軍」ともなっていた!――つまり5体の人型ロボが変型して1体の人型ロボへと合体を遂げたのだ!――。『魔法戦隊マジレンジャー』でも同じ趣向が採られており、1号ロボことマジキングの5素体ともなっていた。
 『カクレンジャー』に登場した着ぐるみの追加戦士・ニンジャマンや、『超力(ちょうりき)戦隊オーレンジャー』(95年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20110926/p1)に登場した着ぐるみの追加戦士・ガンマジンに、『轟轟戦隊ボウケンジャー』(06年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20070108/p1)の着ぐるみキャラにして7人目の戦士・大剣人ズバーンや、『天装戦隊ゴセイジャー』(10年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20130121/p1)の6人目の白銀の着ぐるみ戦士・ゴセイナイトなども、人間体が存在しないヒーローで、人間サイズからの巨大化を可能として活躍していたのだ。


 本作はヒーローたちの「見た目」の次元で、随分と大きな変化球をねらってきている。前年度から世界的に蔓延した新型コロナウイルス対策として、顔出しのレギュラー出演者などが感染した場合に、着ぐるみキャラであれば中の人であるスーツアクターの一時交代だけで済ませられるという計算もあったのやもしれない――東映の白倉プロデューサーはその意図はなかったと語っているが、真に受けるのは危険である(笑)――。
 そして、スーパー戦隊シリーズの玩具における最大の収益ともなってきた戦隊巨大ロボの売上高が、近年では長期低落傾向でもあったのだ。そこで、彼ら戦隊巨大合体ロボの素体ともなる人型ロボットたちを、特撮巨大バトル場面のみならず、人間サイズの存在として日常ドラマ部分でもユカイに活躍させることで、露出を増やして親しみも持ってもらい、それによってもロボット玩具の売上を増やそうという計算もあったことであろう。


45作記念作品として、先輩スーパー戦隊の勇姿も露出!


 しかし、アニバーサリーとは長命なるシリーズ全体をも祝うものであろう。そのためには何をなすべきか? その答えは、10年前のスーパー戦隊シリーズ第35作『海賊戦隊ゴーカイジャー』(11年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20111107/p1)や、平成ライダーシリーズ第10作『仮面ライダーディケイド』(09年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20090308/p1)に、ウルトラシリーズ40周年記念作『ウルトラマンメビウス』(06年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20060625/p1)などといった、長命シリーズにおけるここ15年ほどのアニバーサリー作品などとも同様に、歴代先輩ヒーローたちの多彩なビジュアルを全面的に押し出す手法に出ることであった!


 本作『ゼンカイジャー』TVシリーズでは、ホンモノの先輩スーパー戦隊たちは実質的には登場・共演はしなかった。しかし、『ディケイド』や『ゴーカイジャー』のパターンで、いかにも玩具チックな多数の種類がある「センタイ(戦隊)ギア」なる周囲が歯車状となっているコイン型のメダルに、各スーパー戦隊ごとのパワーが秘められているとする。そして、そこから過去の戦隊ヒーローたちの得意ワザ・必殺ワザ・武器の力を引き出すことができるといった設定で、先輩スーパー戦隊たちのビジュアルを披露するかたちを採っているのだ。


 その際には、ごていねいにも一度、実景の中に半透明のビジュアルにて合成された先輩スーパー戦隊たちの勇姿もイチイチに出現! それが瞬時に最新現役のスーパー戦隊メンバー個々の身体に合体することで、子供たちにもわかりやすい「絵」として、先輩スーパー戦隊の能力が現役スーパー戦隊に宿ったことが示唆される。そして、現役スーパー戦隊の背中にツバサが生えてきて高速で空を飛んだり、忍者のワザを駆使したりもするのだ!


 加えてそれらのパワー召喚の際には、『ゴーカイジャー』に登場していた鳥型マスコットメカも想起させる、オウムのような赤い鳥型メカこと「セッちゃん」が、ごていねいにも先輩スーパー戦隊についての解説までしてくれる! 「一見(いちげん)さんお断り」ではなく、ジャンク知識収集癖などもある子供たちへの興味関心をも惹起ができているのだ(笑)。


 元祖『ゴレンジャー』の5人の戦士たちは額に「1」「2」「3」「4」「5」といった番号マークも付与されることで、チーム内での一応の序列も表現されていた――リアルタイム世代のオジサンとしては、こういった通俗的な「番号」といった要素もまた、子供心に実に魅力的であったことなども思い出す――。本作ではその趣向をアレンジして、


●白い主役ヒーロー・ゼンカイザーの額に「45」
●大獣神もどきのゼンカイジュランの額に「16」
●ガオキングもどきのゼンカイガーンの額に「25」
●マジキングもどきのゼンカイマジーヌの額に「29」
●ダイボウケンもどきのゼンガイブルーンの額に「30」


といった番号が付与されている。これはもちろん、彼らのデザインの出自である『ジュウレンジャー』がスーパー戦隊シリーズ第16作目、『ガオレンジャー』がシリーズ第25作目、最新『ゼンカイジャー』は第45作目、以下も同様……で、各作がシリーズ通算で何作目かといったことを意味していることは、我々のような腐れスーパー戦隊シリーズマニアであれば即座にわかったことだろう。
 加えて、「数字」「番号」をデザインに組み込むこともまた、全員とはいわずとも「ひらがな」や「数字」を識字ができるようになった子供たちには、魅惑的な趣向だとも思われる。膨大なグループが存在する先輩スーパー戦隊たちをナンバリングを通じて何らかの法則性を感知させて認識させやすくもするからだ。幼児誌『てれびくん』や『テレビマガジン』、幼児向けの書籍や絵本などにおいては、70~80年代のむかしから過去作の日本特撮の先輩ヒーローたちのビジュアルや集合写真などが列挙されてきた。それらを通じて改めてネタ元の歴代スーパー戦隊やシリーズ全体に対する興味関心も喚起されて、次代のマニア予備軍となっていくような子供たちも相応にはいるのだから。


悪の貴公子の先輩戦隊&巨大ロボ召喚に歴史も垣間見る!


 さらに、歴代スーパー戦隊のビジュアルの露出をもっと増やすためにか、早くも#6で顔見せして#7で変身を果たした、敵の帝国側の一応の王子さまだともいえる美少年が変身したダークヒーロー・ステイシーザーも登場!
 その姿はスーパー戦隊シリーズ第3作『バトルフィーバーJ』(79年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20120130/p1)のリーダー戦隊ヒーローこと、白い全身スーツに赤い顔面マスクをしたバトルジャパンのアレンジで、原典とも同様に昭和の時代の変身ヒーローではよくあったマフラー(スカーフ)をも首に巻いている! しかし、体色を紫色に両眼部分を6つ目のような細目のスリットにすることで、一応の悪党っぽさも出せているのだ――しかも顔面を少々大ぶりに造形したそうで、変身前の不安定な細身痩身の少年ぽさをも出せている!――。


 彼に至っては、今度は半透明の瞬時にだけ出現する先輩スーパー戦隊などではなく、物理的にも短時間だけ先輩スーパー戦隊を実体化させることが可能だと設定されたことで――もちろん、明瞭な人間的自我などはない操り人形としての存在なのだけど――、ゼンカイジャーよりもアドバンテージ(優位)を誇って、彼1人だけでもゼンカイジャー5人に拮抗できるだけのパワーバランスも達成ができている! どころか、スーパー戦隊1組だけではなく先輩2~3大スーパー戦隊の合計10~15名までをも召喚して使役! かつての彼らの手持ちの武器(!)まで使って戦わせることで、敵も味方もそれぞれが先輩スーパー戦隊のパワーを召喚できるとするのだ!


 悪の軍団に所属する異形で強面の戦闘系幹部ではなく、シャープでスマートなデザインを与えられた悪のヒーローとでもいった存在は、『科学戦隊ダイナマン』(83年)のシリーズ後半に登場したダークナイト、『超電子バイオマン』(84年)の後半に登場したバイオハンター・シルバが嚆矢(こうし)であって、共に第3勢力として登場することで、子供向けヒーロー番組ひいては当時のスーパー戦隊シリーズに顕著であった善vs悪の1話完結ルーティンを崩して、ストーリーにもバリエーションをもたらしていく存在でもあった。


 悪のスーパー戦隊とでもいうべき存在も、各話に人間サイズのゲスト敵怪人が登場しない(!)というパターン破りを行なった『バイオマン』にレギュラー敵キャラとして毎回、戦場まで出張ってくる幹部怪人級の悪のスーパー戦隊だったともいえるジューノイド五獣士、『地球戦隊ファイブマン』(90年)にセミレギュラーとして登場した星獣戦隊ならぬ銀河戦隊ギンガマン、1話かぎりのゲスト悪役としても『激走戦隊カーレンジャー』(96年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20110521/p1)に暴走戦隊ゾクレンジャーが登場してきた。しかし、いずれも異形の怪人たちであり、悪のヒーローといった感じではない。


 スーパー戦隊シリーズにおけるカッコいい系の悪のヒーロー集団は、『忍者戦隊カクレンジャー』にイレギュラーで登場した「花のくノ一組」や『電磁戦隊メガレンジャー』(97年)終盤に登場した邪電戦隊ネジレンジャーであろうか?――『大戦隊ゴーグルファイブ』(82年)終盤に登場したデスダークファイブは新造スーツではなくゴーグルファイブの着ぐるみそのままだったので―― 『魔法戦隊マジレンジャー』では、マジレンジャーとも同じデザインラインで装飾やマスクをメタリックパープル色の硬質パーツとした、悪の戦隊ヒーローともいえる魔導騎士ウルザードがレギュラーとして登場して巨大化まで果たしていた。



 そして、このダークヒーロー・ステイシーザーが戦隊巨大ロボット複数体をも白昼・自然光でのオープン撮影によるビル街に召喚! しかもそれはご都合主義にも、ゼンカイジャー4人の元ネタデザインでもある往年の戦隊巨大ロボこと大獣神・ガオキング・マジキング・ダイボウケン! しかも、我々マニアやマニア予備軍のガキどもの期待にたがわず、大獣神もどきvs大獣神、ガオキングもどきvsガオキング、以下同様! といった「待ってました!」」(笑)な夢のマッチメイクも見せてくれるのだ!


 どころか、先の4体の先輩戦隊巨大ロボが撃破されたところで、


●『電子戦隊デンジマン』(80年)の巨大ロボことダイデンジン!
●『超電子バイオマン』(84年)の巨大ロボことバイオロボ!


 この2大戦隊巨大ロボをも召喚! 彼らを筆頭に合計12体もの歴代戦隊巨大ロボまで召喚! さらに加えて、先の4体も含めた20数体もの戦隊ロボを召喚して、合計30数体が登場!!――ダイデンジンとバイオロボはもちろん放映当時の着ぐるみではなく、後年にアトラク部門のマニア上がりの人間が個人の好みで新造させて活躍させてきたモノであろう(憶測です)――


 今となってはダイデンジンとバイオロボは、「80年代の戦隊巨大ロボ」として一括りにカテゴライズされてしまうモノなのかもしれない。しかし、


●いかにも箱の固まりで、股関節部分の可動域も狭くて動きにくそうにしていたダイデンジンの着ぐるみ
●股関節部分はスーツアクターが着用している厚めの黒いインナースーツをまるだしにすることで、可動域を拡げていたバイオロボの着ぐるみ


……といった感じで、後者の放映時期になると筆者なども青年マニアとしての自意識で観賞していたロートルなので(汗)、4年ほどの期間における技術の長足の進歩を感じて感服していたことなども思い出す。玩具デザイン画稿を収録した書籍『スーパー戦隊アートコレクション 戦隊ロボ編』(メディアワークス・02年8月30日発行)などでも、漫画家・長谷川裕一と玩具デザイナー・野中剛がバイオロボに受けた衝撃を語っている。


――しかし、コレも作品に遭遇した視聴年齢によりけりで個人差も大きいだろう。子供番組卒業期にちょうど『バイオマン』を観賞したせいか、バイオロボの股関節が人間のインナースーツまるだしだったことに幻滅したとのたまっていた戦隊マニアに遭遇したこともあったので(笑)――


 そして、腐れスーパー戦隊オタクとしては、『侍(さむらい)戦隊シンケンジャー』(09年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20090712/p1)から特撮巨大バトルセットが広大となり、天井・ホリゾント(背景)なども高くなったセットが新築されていたことなども思い出す――『仮面ライダー電王』(07年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20080217/p1)での莫大な売上で新築されたとか?――。そう。20世紀の戦隊巨大ロボ戦とは異なり、この広い特撮ステージがあってこそ、10数体もの戦隊巨大ロボを並べてのパラノミックな映像表現も可能になっているのだ!


 2010年代以降のウルトラシリーズの実に狭苦しい特撮セットとは比較にならないほどの広大なセットを活かして――10年代末期以降はデジタル技術で実にウマくゴマかせているようで不満もないけど――、セットの遠方に行くほどにヒナ壇がビミョーに高くなっていることでの錯覚も援用。後方の戦隊巨大ロボたちはカメラ手前の戦隊巨大ロボたちの陰にご都合主義にも隠れることなく(笑)、敵側に使役されるキャラクターとしてではあれキレイに整然と勢ぞろい!!
――勢ぞろい場面にあとから出現した20数体については、もちろん着ぐるみがすべて残存しているワケもなく、スタジオにすべてを持ち込めるワケもないので、既存の静止画像の正面写真などを素材として合成したものなのだろうが、そこはデジタル合成における個々の明度や彩度の微調整さまさまで、まるで違和感がなかった!――


 もちろん、ナンでもアリになってもアレなので、巨大ロボの大量召喚は召喚アイテムのエネルギーの急速な枯渇を招くという言い訳をつけることで、これらの戦隊巨大ロボは一斉に消滅。以降の回では同じ手を使わない言い訳もできていたあたりもウマいのだ。


6人目!? 第3勢力!? さらなる追加戦士に歴史も見る!


 さらに加えてこの#8では、ラストにダークヒーロー・ステイシーザーにも負けていない、従来のスーパー戦隊シリーズでは正義側の戦隊メンバー追加戦士のポジションにも相当する、しかして本作では第3勢力キャラである金色の戦士までもが畳み掛けるように初登場!
 海賊(界賊=世界海賊)だと名乗る金髪のチャラチャラとしたホストのようなイケメン青年クンが変身したその姿は、本作の10年前に放映されたシリーズ35作の記念作品『海賊戦隊ゴーカイジャー』の海賊帽子をモチーフとしていた顔面マスクとも同様であり、ゴーカイジャーの一員にして10年後の7人目の戦士(笑)だと呼称されても違和感がないゴーカイゴールドならぬツーカイザーなる新ヒーローが見参! 額にも「35」番のマークが付いている。決めゼリフもゴーカイレッドの「派手に行くぜ!」ならぬ「痛快に行くぜ!」であった(笑)――むろん、主役ヒーロー・ゼンカイザー(全開ザー)に対応してのツーカイザー(痛快ザー)といったネーミングでもあるのだろう――。


 そして、『侍戦隊シンケンジャー』のシリーズ後半におけるシンケンジャーたちの強化形態のような赤い陣羽織をまとった姿のツーカイザー・シンケンフォームへと変身するや、その額は『シンケンジャー』の戦隊シリーズ内での通算番号である「33」番へと変化! 云われてみないとわかりづらいけど、『超力戦隊オーレンジャー』の黒色の追加戦士・キングレンジャーを模したともいえる、しかして色はキングレンジャーのそれの金色ならぬ青色の胸肩アーマーをまとったツーカイザー・オーレンフォームの姿に変身するや、その額には『オーレン』の通算番号である「19」番へと変化する!


 加えて、ツーカイザーは先輩スーパー戦隊の初期メンバーたちのパワーではなく、6人目などの途中参加の戦隊追加戦士たちのパワーを召喚!


●『忍風(にんぷう)戦隊ハリケンジャー』(02年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20021110/p1)の6人目の緑色の戦士・シュリケンジャーが野球のバットでボールを連射する「秘打千本ノック!」
●『五星戦隊ダイレンジャー』(93年)の6人目の白の戦士・キバレンジャーの人語を発する武器・白虎真剣を用いて敵を大音量で苦しめる「吼新星・乱れやまびこ!」
●『獣拳戦隊ゲキレンジャー』(07年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20080817/p1)の白の追加戦士・ゲキチョッパーが用いた手甲型の武器でチョップ!
●『宇宙戦隊キュウレンジャー』(17年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20180310/p1)の水色の追加少年戦士・コグマスカイブルーの巨大化能力!


 これによって、主役ヒーロー・ゼンカイジャーたちや悪のヒーロー・ステイシーザーとの差別化も図れているのだ!
 『ジャッカー電撃隊』の白い追加戦士・ビッグワン行動隊長の力で、先のステイシーが召喚した偽ジャッカーたちを屈服させるあたりや(笑)、『星獣戦隊ギンガマン』(98年)の牛をモチーフにした追加戦士・黒騎士の力で牛に懐かれたりするあたりは(笑)、年長マニア向けのギャグではある。しかし、かつての我々のようなマニア予備軍のマジメな子供はともかく、大抵の子供たちは元ネタがわからなくても一般的なギャグシーンとして楽しんでいるとも思うのだ。
 ツーカイザーとしての特殊能力の初披露がビッグワンの命令ネタだったならば問題だけど(爆)、そーではないのであればマニア転がしのイロモノ要素のブレンドで、息抜きのコミカルシーンを構築することもアリなのだし、特に本作にかぎった話でもないのだけど、ここ10数年の円谷作品における往年の「卑怯もラッキョウもあるのものか!?」といったセリフの適宜の引用(笑)などとも同様に、東映であろうが円谷であろうが、受容されたあとの意味合いの解釈は異なることになっても、子供にもマニアにもウケそうなメタフィクション的なギャグが成功するようになって久しい。


 戦隊途中追加戦士も、シリーズ第16作『恐竜戦隊ジュウレンジャー』に登場した緑色の戦士ことドラゴンレンジャー・ブライに端を発している。すでに追加戦士が登場しなかった初期戦隊15作品よりも、追加戦士が登場するようになった時代の作品の方が倍の30作品ほどにも達している。往時は斬新ではあったものの、今では女児向け集団ヒロインアニメ『プリキュア』などでもシリーズ数作目からは途中追加戦士が恒例ともなっており、今や立派な「新古典」芸に昇華したともいえるだろう。
 ちなみに、ドラゴンレンジャーは当初は悪の手先として6話連続ストーリーで登場して、敵首領の魔力で巨大化まで果たしてあの大獣神とも戦って圧倒(!)するなどのパターン破りも見せつけて、視聴者を喜ばせてもいた――この時期になると脚本家の純粋なアイデアではなく、バンダイ側にもオタク第1世代が入っているので、会議などで新キャラ・新メカ活躍のためのストーリーや戦闘シチュエーションの要望なども出していたとも邪推する――。


 もちろん、単発ゲストであれば、『ジュウレン』の前作『鳥人戦隊ジェットマン』(91年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20110905/p1)中盤にも「裏次元」の3人戦隊、終盤にも地球防衛軍の隊員たちが変身するネオジェットマンが、『光(ひかり)戦隊マスクマン』(87年)にもマスクマンのプロトタイプ戦士として緑色のX1マスク(エックスワン・マスク)が登場している。元祖『ゴレンジャー』が所属する秘密組織・イーグルのレギュラー女性隊員・007(ゼロゼロセブン)こと加藤陽子も、その#37と#58においてはモモレンジャーへと変身することで、実は予備戦士だとしての意味合いも出せていた――当方があまりに子供すぎたせいか、長じてからの再鑑賞ではともかく『ゴレンジャー』におけるこの趣向は個人的には子供心にあまり印象には残らなかったものの……(汗)――。


 余談だけど、純粋な変身ヒーローとは云い難いものの、『大戦隊ゴーグルファイブ』(82年)#41「変身パパの大冒険」に登場したヒーロー「変身パパ」も忘れちゃイケナイ。関東圏ではTV-CMもよく流されていた、栃木県にあった今は亡き「小山(おやま)ゆうえんち」での『ゴレンジャー』当時のアトラクでは、茶色の戦士・チャレンジャーも登場したというウワサも聞いたことがある――仮に実話だった場合、著作権元の本家も関わった正規のキャラクターではなさそうだけど(汗)――。


『ゼンカイ』はスーパー戦隊らしさが全開とはいえない!?


 ところで、この『ゼンカイジャー』#8では、敵軍団の戦闘員たちまで巨大化(!)するようなパターン破りも果たされる大盤振る舞いであった――敵戦闘員のセミレギュラー的な巨大化も本作が初だというワケではない。『侍戦隊シンケンジャー』(09年)が初出で、『特命戦隊ゴーバスターズ』(12年)や『獣電戦隊キョウリュウジャー』(13年)でも同様のパターン破りの前例がある――。


 そして、この海賊戦隊ゴーカイジャーもどきのツーカイザーなるヒーローとは何者ぞ!? といった感じで終わる#8のラストにかぎった話でもないのだけど、人々の頭頂部にキノコが生えてきて「エッ!?」となって終わる#1のラストシーンからして『ゼンカイジャー』各話のラストは、昭和の時代の1話完結形式であった日本特撮のような「メデタシめでたし」的なラストでは終わらない。何らかの異変が生じて、劇中キャラが「エエ~~~ッッッ!!!」と驚いてみせて、次回へのキョーレツな「引き」を作ったところで、CMすら挟まずに即座に次回予告編も流されるといった作りにもなっているのだ。


 そして、第1クールの最後である#13でも、70年代前半の東映特撮作品の#13前後にはよくあったように(笑)、それまでの話数に登場してきた再生怪人軍団まで登場してみせるのだ!


●ライバル・ポジションである悪のヒーローの登場!
●正義側とは慣れ合わずに、善悪ともまた別の第3勢力として登場する戦隊追加戦士の登場!
●それらが三つ巴に組み合っているという構図!
●敵側が疑似的に召喚した存在だとはいえ、戦隊巨大ロボが数十体も登場!
●再生怪人だとはいえ、一挙に5体もの敵怪人が敵のメインゲスト怪人の応援として参戦!


 実に喜ばしい趣向ではある。しかし、こうも思う。これは必ずしも往年の「スーパー戦隊」らしさの再現ではないのだと……。
 往年の「スーパー戦隊」らしさとは何か? それは、『人造人間キカイダー』や『快傑ライオン丸』(共に72年)には登場したライバル・キャラクターなどは存在せず、第3勢力も登場せず、再生怪人軍団も登場せず、前後編もほとんど存在せずに、ひたすらに1話完結形式で、年間を通じてのスケールアップやインフレーション感にも乏しくて、さらには戦隊巨大ロボがラストでノルマ的に登場することでお約束蛇足タイム感が強調されてもおり、人間サイズのヒーローにも巨大ロボにも必殺ワザが1種に限定されていることで、特撮雑誌『宇宙船』Vol.1(創刊号・80年2月20日発行)ではオタク第1世代の論者たちに「VSOP(ベリー・スペシャル・ワン・パターン」と揶揄されていたようなことどもである。


 むしろ、本作『ゼンカイジャー』は、70年代末期~80年代の幼児はともかく小学校高学年以上の視聴者や年長マニアたちが望んでいた、あの当時に観たかった理想、あるいはその理想をはるかに超えてすらいる「スーパー戦隊」作品であるくらいなのだ。


 つまり、本作は1話完結ルーティンな「作劇」としての往年の「スーパー戦隊」らしさの再現では決してないのだ。懐かしの「キャラクター」たちを列挙していくことで、「意匠」や「点描」として「スーパー戦隊」らしさを醸し出す! という手法に打って出ているのだ。


 むろん、それが悪いということではない。オールド世代や若くはあっても特撮マニア層には「懐かし感」を、一般層や子供たちには「スペシャル感」を醸し出すという手法自体は、コスパも高くてクレバーな方法論だとも思うので絶賛すべきでもあるのだ。


――ラストで事件が起きてドーなる!? と次回へのヒキを作る手法は、戦前・戦中の月刊児童雑誌『少年倶楽部(しょうねん・クラブ)』(1914(大正3)~1962(昭和37))の連載読みものが始原だという説も聞いたことがあるけど、さすがにその時期のモノだと裏付けを取るのがムズカしい。ところで、伝説化されてきた同誌だけど、やや裕福層の子供たちしか読んでいなかったとも推測している。筆者の狭い観測範囲でだが、この雑誌を実際に読んでいたという世代人や親戚などにはリアルで会ったことがないからだ――


20世紀のスーパー戦隊批評とはいかなるものだったのか!?


 80~90年代前半の時代における年長戦隊マニア諸氏が切望していたような、


●#1にて5人全員がそろわずに、1話ずつを要して各メンバーが集結
●戦隊巨大ロボの初登場エピソードも、ソレだけをメインとするかたちで、5人全員の集合が達成されたあとの話数で魅惑的に配置してほしい
●その方が各キャラも立つのだし、かえって戦隊巨大ロボの玩具ももっと売れるハズだ!


といったような願望などは、90年代以降に徐々に達成されていき、21世紀以降は特にパターン破りだとも気張らずにデフォルトでナチュラルに達成されてすらいる。


 90年代後半以降のインターネットが普及するはるか以前の時代なので、アーカイブ化されて記録が残っていないことから下の世代にその記憶が継承されていないが、ジャンル作品を卒業できずに中高生や青年期に至っても、80年代のスーパー戦隊シリーズを観賞しつづけて、同時期に隆盛を極めていた『機動戦士ガンダム』(79年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/19990801/p1)などにはじまる、いわゆるリアルロボットアニメの作品群と比して、あまりにチープでチャイルディッシュで1話完結の極度なルーティンで連続性にも乏しいノリに不満を感じていたのが、当時の年長特撮マニアの大多数でもあったのだ。
――メインターゲットが幼児や小学校低学年であったスーパー戦隊に、ナイものねだりな不当なモノサシを当てていたと、今となっては自己相対視もできるけど(笑)――


 先にもふれたが、たとえば特撮雑誌『宇宙船』創刊号などでも、当時のスーパー戦隊や現行TV特撮については「VSOP」(ベリー・スペシャル・ワン・パターン)などと揶揄しており、人間サイズの戦隊ヒーローvs敵怪人&敵戦闘員とのバトル~お決まりの必殺ワザでのトドメ~敵怪人の巨大化~戦隊巨大ロボの登場&バトル~戦隊巨大ロボによるバンクフィルムでの必殺剣! といった極度にルーティン化された展開が批判的に言及されてもいたものだ。


 そして、実作においても、人間サイズの戦隊ヒーローとしての戦闘シーンと戦隊巨大ロボによる特撮巨大バトルの分断感もヒドかった。付け足し・付け焼き刃感はやはり大なるモノがあったのだ。もちろんそれは、幼児であれば気にはしなかったであろうが、小学校の中高学年ともなれば、誰でもそのように感じていたし、ナマイキにもその点を同級生たちと揶揄もしていたモノなのだ――まぁ、それでも卒業できずに鑑賞していたのだけど(汗)――。


 しかし、往時の作り手たちもソコに作品としての弱点があることは百も承知であった。早くも84年に放映されたスーパー戦隊『超電子バイオマン』では、人間サイズの戦隊ヒーローにも戦隊巨大ロボにも、各々に1種ではなく10種前後(!)の必殺ワザを与えることでパターン破りの妙味、戦闘シーンを単なるお約束の蛇足タイムではなく、視聴者の興味関心を少しでも惹起するシーンとすることにチャレンジもしている。
 個人的にはこの試み自体はスキだったのだが、次作『電撃戦隊チェンジマン』(85年)からは、人間サイズの戦隊ヒーローたちによる必殺ワザも玩具会社主導の個人個人のバズーカ砲が合体して巨大な必殺バズーカ砲兵器となったことで、後続シリーズに『バイオマン』のバリエーショ豊富な必殺ワザが継承されることは直接にはなかったことは残念ではあった。
――とはいえ、初期スーパー戦隊のようなスピード感には乏しいブーメラン武器でのトドメよりも、打撃力も強そうな合体バズーカ砲も個人的にはキライではなかったし、当時の子供たちにもインパクトはあったハズで、よってこの合体バズーカ砲が戦隊シリーズには連綿と継承されて、スーパー戦隊の新たなシンボルとも化していく――


 よって、当時の年長マニアたちによるスーパー戦隊批評とは、同シリーズにおいてたまに散見されるパターン破りのアクションや必殺ワザの変化球への驚きを指摘・言語化してみせることでもあったのだ。加えて、そのようなパターン破りの要素をもっともっと拡充してほしいと提言するような文調でもあったのだ。たとえば、


●某話ではドラマ重視で巨大ロボ戦自体がなかった
●『ファイブマン』#14では戦隊ヒーローにヤラれたゲスト敵怪人を巨大化させる巨大素体ロボット・ゴルリンことゴルリン12号が、当話にかぎっては戦地に向かう途中で転んでしまって、怪人も巨大化できずに爆散するのをギャグにしていた(笑)
●同作#38では巨大ロボ戦がなく、#1の戦闘機特撮の流用だったとはいえメカ戦だけでカッコよくキメていた
●その1話前の#37では初登場した強化服・ファイブテクターをまとった戦隊ブルーを戦隊ロボのロケットパンチ発射口から発射して、人間サイズの戦隊ヒーローひとりだけで敵巨大怪人を貫通して撃破してみせるカタルシス!
●『ファイブマン』の前作『ターボレンジャー』からの趣向であったが、5人戦隊が必ず協力して敵怪人を倒すのではなく、時にそのエピソードの主役となる戦隊ヒーローが名乗りのセンターや先頭に来たり、個人ひとりだけで敵怪人を倒してみせたり
●あるいは、戦隊レッドと交代して戦隊巨大ロボの操縦席のセンターに陣取って、敵巨大怪人にもトドメを刺してみせることで、ドラマの感情面でのピークとロボ戦のピークも合致させたり……


といったところに、年長の戦隊マニアの全員とはいわずとも多くは大きなサプライズ&喜びを感じており、そのへんを成文化するのがもっぱらでもあったのだ。


 アクション演出面でのパターン破りは、実は『高速戦隊ターボレンジャー』(89年)&『地球戦隊ファイブマン』(90年)の時期に一旦の頂点を極めてもいる。『ファイブ』の次作『鳥人戦隊ジェットマン』(91年)もパターン破りの文脈で語られてはいるものの、同作のメインライター・井上敏樹はドラマ面でのパターン破りは志向していたとしても、アクションやメカロボには関心がウスかったと見えて、その部分での変化球はむしろ後退していた。


 90年代のスーパー戦隊を通じて、散発的なパターン破り自体は継続されていく。しかし、『ターボ』『ファイブ』期のアグレッシブさには勝っていないようにも思えて、個人的にはそこが少々残念ではあった――先にも言及したが、インターネットが登場する前であったために、この時期のスーパー戦隊批評がアーカイブ化されて流通しなかったことで、後続世代にその成果が継承されていないことも残念である――。


 とはいえ、00年代に入るや人間サイズの戦隊ヒーローたちの武器もますます増えて、しかも80年代の東映ヒーロー作品のように#1~2ですべてを画面に登場させるなどの逆効果なノルマもなくなって久しく、それらのアイテムは年間シリーズを通じて小出しに印象的に登場させるかたちを採るようにもなっていく。それによって、必殺ワザのバリエーションも再度増えていき、集団ではなく戦隊レッドでもなくメンバー個人ひとりひとりだけでも敵怪人を倒してみせる展開も増えたことで、メンバー個人の感情ドラマのピークと戦闘のピークも合致ができて、バトル&ドラマがますます両立するようにもなっていく!


戦隊ロボ戦の特撮史! 屋外・ビル街・CG・デジタル!


 『ゼンカイジャー』#7~8における戦隊巨大ロボット数十体召喚! もの大ネタは、シリーズも序盤の第1クールなどではなく、シリーズ中後盤以降にエスカレートしていく敵味方の攻防劇のネタとして映像化してほしかったようにも脳裏の片スミではビンボー症にも微量に思ってはしまったものの、先回りして云ってしまうと、本作はシリーズ後半においても充分に面白かったのであった。


 そして、ここに登場した戦隊巨大ロボたちは、特撮セットだけにかぎらず実景ビル街との合成や、白昼ピーカン自然光でのオープン撮影なども交えて、巨大感あふれるビル街での巨大特撮や、まさかの重たそうな巨大ロボの着ぐるみ自体がトランポリン・ジャンプ! さらに、往年のバンクフィルムの流用映像だったとはいえ、必殺剣技まで見せてくれたのだ!
――ネット上でマニア有志が加筆していく「ピクシブ百科事典」などによれば、この#8においては、戦隊巨大ロボが初登場したシリーズ第3作『バトルフィーバーJ』(79年)のバトルフィーバーロボ~『ファイブマン』(90年)のファイブロボ! 1作飛ばして、『ジュウレンジャー』(92年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20120220/p1)の大獣神~『宇宙戦隊キュウレンジャー』(17年)のキュウレンオー! つまりは38体もの戦隊先輩ロボが登場していたとのことだそうだ――


 そして、またも思い出す。超低予算作品であるがゆえに、80年代におけるスーパー戦隊の巨大ロボット戦は特撮スタジオ自体が狭かったことを。ビルや家屋などの特撮美術セットなどもほとんど存在しなかったことを。初期東宝特撮・初期円谷特撮至上主義であるオタク第1世代の特撮オタクたちの一部は、スーパー戦隊の巨大ロボ戦など「特撮」としても認めない! などと云っていたことも(汗)。


 初期スーパー戦隊世代の子供であった我が身にとっても、東映の特撮巨大ロボットもの『大鉄人17(ワンセブン)』(77年)の時点で、円谷プロ製作のウルトラマンシリーズと比すればビル街のミニチュアが少ないとも思ってはいた。しかし『17』と比しても、80年代のスーパー戦隊の巨大ロボ特撮ではミニチュアの数がますます減少していくことには、やはり幻滅感があったことを(爆)――まぁ、それでも卒業できずに視聴は継続していたのですけどネ――。


 しかし、90年代に転機が訪れる。『鳥人戦隊ジェットマン』(91年)のために300万円だかの予算が奮発されたとかで、新造の鏡状のガラス窓なども再現されたモノも含んだ高層ビルのミニチュアが多数新造されたのだ! そして、このビルを大通りの両脇を固めるビル街に見立てて遠近感を強調し、そこを地球防衛軍の鳥人戦隊5人が操縦する5機の戦隊戦闘機が並んで雄飛する特撮ビジュアルを見せることで、スーパー戦隊シリーズも視聴する当時の特撮マニアたちを瞠目させたのであった!


 とはいえ、『ジェットマン』のために準備されて、放映開始の数週間前から新番組予告編映像などで披露されていた高層ビル群は、堪え性もなくてビンボー症だったと云おうか、直前作『ファイブマン』最終回にて超巨大ラスボス怪獣こと銀河超獣バルガイヤーが登場している特撮カットのために、実は先行して使用されちゃってたりもするけれど(笑)――撮影自体は『ジェットマン』序盤およびバンク映像となる特撮カットの撮影のあとだったのであろうと憶測――。


 それはさておき、『ジェットマン』のシリーズ中盤でも同作のメイン監督・雨宮慶太(あめみや・けいた)が担当した戦隊2号ロボ登場編合わせで、この高層ビル街は屋外ロケにもトラックで持ち出された。そして、いかにも狭いスタジオ内での照明などではなく、自然光のオープン撮影でリアルな空気感・質感・巨大感も出すといった、スレた年長特撮マニアたちが商業映像作品でも観てみたかったビジュアルをついに見せてもくれたのだ! それが同作における戦隊巨大ロボ1号ことジェットイカルスvsいつものゲスト巨大化敵怪人ではなく最初から巨大怪獣として登場する魔獣セミマルとの巨大バトル! 実にカッコよくてリアルな質感にもあふれた巨大キャラクター同士のバトルを見せてくれて、当時の特撮マニアたちを狂喜乱舞もさせたのだ!


――ただその後、裏次元ことディメンシアから助っ人参戦した戦隊2号ロボことジェットガルーダがすぐに敗退して、しかも敵幹部に強奪かつ操縦までされてしまったり、1号&2号ロボが合体した最強ロボなども初登場なのに大活躍せずに辛勝だったり、挙げ句の果てに死してしまった裏次元の3人戦隊の魂の眠る場所だなどと辛気クサい締め方をしてみせたりして、共に変化球・ストーリー展開の意外性をねらいすぎたことで高揚感についてはハズしてしまっており、このへんにオモチャやヒロイズムにはやや無関心な脚本家・井上敏樹の欠点などが出ていたとも私見する――


 『ジェットマン』以降のスーパー戦隊でもこれらの高層ビルのミニチュア群は流用。そして、『ジェットマン』でのオープン特撮が印象的であったせいもあろう。90年代中盤のスーパー戦隊では、雨宮以外によっても幾度かオープン撮影による巨大ロボ戦が描かれてもいる。94年の『カクレンジャー』では、再生巨大怪人軍団vs巨大獣将ファイターのバトルを長尺で描いた#12「出たァ!! 新獣将」(監督・小笠原猛)や#18「ハローきのこ君」(監督・渡辺勝也)なども、大成功していたとはいえないまでも実に印象深いのだ。


 さらに21世紀以降は、平成ゴジラ・平成ガメラ・平成ウルトラに特撮ミニチュアを提供してきたマーブリング・ファインアーツ社などからおそらくレンタルしてきているのであろうけど(?)、新ロボ登場などのイベント編での特撮回などでは特に多数のビル街ミニチュアが登場するようになって久しいのはご承知の通りだ。


 ところで、オープン撮影でリアルな巨大感を出すという手法は、平成『ガメラ』シリーズ(95~99年)が初であるというような誤解が今ではある(汗)。もちろん、特撮雑誌『宇宙船』Vol.83(98年冬号・98年3月1日発行・2月1日実売)の村山実編集長の連載コーナー「宇宙船談話室」にてゲストで登場した特撮評論家の池田憲章が正しく指摘してみせたように、その前年94年のビデオ販売作品『ウルトラマンVS仮面ライダー』においては佛田洋(ぶつだ・ひろし)特撮監督が、先行する91年においても『ジェットマン』にて雨宮慶太監督も、共にすでに高い精度でリアルなオープン撮影でのビル街巨大戦特撮を達成できており、東宝・円谷以外の日本特撮も観賞するようなマニアたちには当時から高い評価も得ていたのだ。


 もっと云うならば、スーパー戦隊シリーズ第8作目にして、早くも当時なりにあまたのパターン破り・新機軸が模索された『超電子バイオマン』(84年)でも、全話ではなかったものの屋外ロケでの自然光の元での特撮巨大バトルが披露されており、当時の年長マニアたちにプチ・サプライズを与えていた。ただまぁ、シリーズ序盤での岩山でのロケなどだとあまり粗(あら)は出なかったのだけど、シリーズ中盤以降になると平野でのロケで超遠方に画面を左右に横切っていく自動車が小さく写ってしまった巨大ロボ戦映像などもあったりして、常に成功していたとも云いがたかったことも事実ではあったけど。


 ちなみに、筆者個人は先の序盤の岩山での屋外特撮などはスキだったものの、たしかに巨大感を出すための対比物となるミニチュアが送電線1本のみだったりして、ヒトによっては往年の屋外ぶっつけ本番撮影ミニ特撮番組『ウルトラファイト』(70年)のようにチープだと感じていたという意見もたしかにあった。その意見に個人的には賛同はしないものの、自身の見解とは異なるからといって無視して記録にも残さないというような行為もまた歴史修正主義なのであって(爆)、公平を期するためにもここに記しておこう。


戦隊巨大ロボ戦は、特撮班の担当か!? 本編班の担当か!?


 なお、『ジェットマン』では特撮監督ではなく各話担当のメイン本編監督である雨宮慶太が戦隊巨大ロボvs魔獣セミマル戦を演出していたことは、当時の『宇宙船』Vol.57(91年夏号・91年9月1日発行・8月1日実売)などでの雨宮インタビュー記事の図版キャプションなどでも明かされている。このへんの事情はロートル戦隊オタクであればご記憶のことだろう。『ジェットマン』の前作『ファイブマン』からスーパー戦隊シリーズの「特撮監督」職を特撮研究所の矢島信夫から拝領した佛田洋が同作放映当時に『宇宙船』Vol.54(90年秋号・90年12月1日発行・11月1日実売)にて受けたインタビュー記事で、スーパー戦隊シリーズの特撮巨大ロボット戦は『光戦隊マスクマン』から本編班が担当するようになっていたという発言があったからだ。


 ずっと後年のマニア向け書籍『スーパー戦隊 Official Mook(オフィシャル・ムック) 21世紀 Vol.8 炎神戦隊ゴーオンジャー』(講談社・2017年5月25日発行)でも、『マスクマン』(87年)~『ギンガマン』(98年)の10年間ほどは、バンクフィルムとして各話で流用される特撮ミニチュアメカの発進・活躍シーン、それらが戦隊巨大ロボとなる合体シーン、戦隊巨大ロボの必殺ワザのシーンのみに仕事をしぼっており、戦隊巨大ロボvs敵巨大怪人戦は本編班、もっと云うならアクション監督の担当になっていたことが明かされている。


 東映特撮ヒーロー以外にも佛田が在籍する「特撮研究所」には特撮関連の仕事の注文は当然ながら相応にはあっただろうから、巨大ロボ戦を引き受けなくても収益的にはむしろその方がワリがよかったといったところだったのであろうか?(憶測) とはいえ、少なくとも『ジュウレンジャー』における白昼の港湾に上陸して大暴れする2号ロボ・剛龍神の素体となる銀色のメカ獣・ドラゴンシーザーの大暴れや、『ギンガマン』で5星獣が石化するシーンの2点などは特撮班が担当したとも記事化がされている。
 よって、『ジュウレン』~『ギンガマン』の時期でも、新ロボや追加ロボット登場編における新撮ミニチュア特撮はもちろん、着ぐるみの戦隊巨大ロボvs巨大化敵怪人との戦闘シーンなども――特に『オーレンジャー』の3号ロボこと新主役合体ロボ・オーブロッカーの5素体ともなる5体の人型巨大ロボが空・海中・宇宙などを舞台に再生巨大怪人軍団と戦う#33「5大ロボ大暴れ」などは――、見るからに通常回での数日間を要した本編撮影の片手間の残り1日だけでチャチャッと早撮り的に撮影したような巨大戦などとは異なり、いかにもカネ・時間・日数もかけてカメラアングル・照明・構図・ギミック・吊り・ミニチュアの飾り付けなどもカッチリと決めた感じで、多数の合成などもあるカットではあったので、それらについてはカメラマンや照明マンなども含めて、本編班ではなく特撮班の担当だったのだろうと推測するけれど……。


 ちなみに、同書によると、『救急戦隊ゴーゴーファイブ』(99年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/19991103/p1)からは再度、特撮班が巨大ロボ戦を担当するようになったのだそうだ。コレはミニチュアを吊るしているピアノ線をデジタル技術で消すことが容易となり、メカの変型・合体特撮などもCG処理が増えたことで、時間的な余裕ができたからだとのこと。とはいえ、同書では一方で、「初期10話分くらい」・「2号ロボ登場編」・「夏映画&追加戦士編」・「後半の最強ロボ登場編」といった塩梅で年に4回、特撮班を組んでいるとも語っている。ということは、この年4回以外の通常編については、巨大ロボ戦は特撮班ではなくやはり本編班が担当しており、しかし本編班の担当なのでテロップ上も「特撮監督」扱いはされていない、ということになるのであろう。


 巨大ロボ戦の映像クオリティーは照明や美術(ミニチュアの飾り付け)も含めて新ロボ登場編と通常編とではその差はあまりにも歴然としている。エピソードによっては本編監督であるマニア上がりのベテラン・竹本昇(たけもと・のぼる)監督などが特撮巨大戦を担当していることが、『獣電戦隊キョウリュウジャー 公式完全読本』(ホビージャパン・14年6月20日発行)や『烈車戦隊トッキュウジャー 公式完全読本』(同・15年6月20日発行)などでも明かされている。よって、21世紀以降の「スーパー戦隊」作品でも特撮班が全話の巨大ロボ戦を担当しているワケではなさそうだ。


 もっと云うならば、出典は失念してしまって恐縮だが、シリーズ初期作『バトルフィーバー』でも戦隊巨大ロボが初登場した#5~6だけは――非常に凝っていて、巨大ロボが足底からのジェット噴射で空中に浮遊屹立していたり、巨大敵怪人がロボを格納した飛行中の空中戦艦に斬りかかってきたり、巨大ロボvs巨大怪人との剣戟のカット割りも実に細かくてカッコいいので必見!――、佐川和夫が巨大ロボ戦の特撮監督を務めていたように読める記述を何かのマニア向け書籍で読んだ記憶もあるのだ――つまり、#7以降のロボ戦は本編班が担当していたということか?――。
 書籍『東映スーパー戦隊大全 バトルフィーバーJ・デンジマン・サンバルカン』(双葉社・03年2月1日発行)などでも、#7以降は同作同話からのアクション監督に就任した、のちにJAC社長となる金田治が巨大ロボ戦を演出していたという記述もある。これは佐川特撮監督ありきでその補助である擬斗(ぎとう=殺陣師(たてし))としての参加であったのか、佐川特撮監督ナシでのロボ戦の撮影現場のトップとしての参加であったのかがよくわからない。ご存じの方は教えてください(笑)。


先輩戦隊との戦い! 『ゼンカイ』と『199』の相違!


 歴代スーパー戦隊のクローンや偽モノが全員集合して、しかも敵キャラとして最新スーパー戦隊を襲撃してくるパターンは、10年前の35作記念映画であった『ゴーカイジャー ゴセイジャー スーパー戦隊199(ひゃくきゅうじゅうきゅう)ヒーロー大決戦』(11年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20201108/p1)にも実はあった趣向ではある。


 あの映画自体も、短い尺数の中で先輩スーパー戦隊の活躍やその必殺ワザなどもビジュアルとして見せるためには、最新スーパー戦隊vs敵怪人ではなく最新スーパー戦隊vs偽モノ先輩スーパー戦隊といった構図を採らざるをえなかった……というような作り手側の事情なども、作劇の技巧面にも目が行くようなスレたマニア諸氏であれば、想起もしていたことであろう。先輩スーパー戦隊の活躍を描くためとはいえ、それを悪党として描くことを、たとえ文学的なレトリックだったのだとしても「おぞましい悪夢」などといった極端な修辞で形容して、自身の繊細ナイーブ・敏感さを暗に誇ってソコで他人よりも優位に立とうとするようなさもしい論調などは読者のケーベツを誘うものですらある(爆)――サラリと「少々イヤな感じがしてしまった」程度の物言いで語って、自身の人格的な安定や器量の大きさを暗に誇っておいた方がよっぽどイイほどのものを(笑)――。
 ゼロか100かではなくその中間である40であるのか? 60であったのか? といったグラデーション・階層的な心情を腑分けして、正確に言語化してみせることこそが「批評」といったモノである。それこそが矛盾も内包している事物の複雑微細なディテールについての取りこぼし感も少ない、視聴者の心情の最大公約数的な言語化、読者にとっての「あるある感」「この作品はたしかにそうなっている感」を惹起するものでもあるからだ。


 そーいった前提を付けた上で云うけれど、映画『スーパー戦隊199』自体はトータルでは傑作であったとは思うものの、たしかに偽モノのスーパー戦隊との攻防シーンはやや長くて重苦しい。対するに、先述した『ゼンカイジャー』#8における4体の巨大化した現役戦隊ヒーローvs30数体もの先輩戦隊巨大ロボのシーンには重苦しさがなくて、むしろ爽快感や祝祭感の方が大きい。
 この相違はドコに原因があるのであろうか? 「愛の有無」などといったオカルト・縁起担ぎ的な非合理的な話なぞではなく(笑)、おそらくはチョットしたアクション演出の組み立て方・その技巧に起因するのであろう。すなわち、『スーパー戦隊199』においてはマジメなアクション演出になりすぎて、苦戦・死闘といった印象が強くなりすぎており、対するに本作『ゼンカイジャー』では偽モノ先輩巨大ロボたちとは拮抗して善戦までしており、敗北一歩手前にまで追い込まれてしまっている……などといった印象にはなってはいないからだ。


 であれば、比較対象ができたことでわかってきたこともある。『スーパー戦隊199』でもアソコまで苦戦させるのではなく、敵キャラ化した先輩戦隊たちの必殺ワザや必殺バズーカ兵器などの映像も存分に見せはするものの、そのすぐ直後には即座にソレらを払いのけて反撃、各個撃破をしていくことでテンポもよくして、現役スーパー戦隊の強さを活写! そして、音楽演出面でも悲愴なBGMなどではなく壮快なBGMを流しておけば(笑)、本作『ゼンカイジャー』と同様の祝祭感あふれる名シーンにできたのではなかろうか? しかし、たしかにこのあたりはシナリオでの裁量の範疇を超えている。撮影現場での本編監督・アクション監督や選曲担当者の裁量・センスに関わる部分であるだろう。


ライバル格の悪の巨大ロボの系譜! 2世・再生・改造!


 第1クール終盤である#12では、この『バトルフィーバー』のバトルジャパンを模したステイシーザーが搭乗する専用巨大ロボこと濃いパープル色が基調のバトルシーザーロボまで登場! もちろん、そのモチーフは日本の侍武者(さむらい・むしゃ)を模していた日本の国防省のバトルフィーバーロボである。


 フィーバーロボはシリーズ前半では、日本刀状の長剣こと電光剣による唐竹割り(からたけ・わり)ではなく、両太モモ脇から取り出すふたつの短剣を左右双方で円月状にゆっくり振り回してから投げつけて刺す「クロスフィーバー」が必殺ワザであった。そして、コレを踏襲した必殺ワザ「ソードシーザー」まで披露する!
 話数をまたいで数話にわたって登場したあとには敗退したものの、のちの話数では「バトルシーザーロボ2世」や「バトルシーザーロボ3世」として同型機体が着ぐるみの微改造にて再登場を果たすことで、視聴者を喜ばせてくれてもいる。


 ところで、70年代前半のいわゆる変身ブームの時代からあった、クールの変わり目などになると放映されていた、既存の敵怪人の着ぐるみを多数流用して再登場させる再生怪人軍団登場編、ウルトラマンシリーズでも同種族の別個体の怪獣や宇宙人として「2代目」「3代目」や「2世」「3世」といった称号などを与えたり、「再生○○」だの「改造○○」だのといった接頭辞を付けた2代目怪獣・宇宙人などが登場すると、子供たちはヒーロー作品など虚構だとはわかってはいても博物学的な興味関心を大いにそそられたものだった。


 オタク第1世代がはじめて作り手側のトップ(プロデューサー職)に立った『激走戦隊カーレンジャー』(96年)にも「再生UU(ウーウー)ウーリン」「改造ブレーキング」のような再生怪人や改造巨大ロボットといった敵キャラが再登場を果たしていた。これなども同作を手掛けていた東映側の高寺茂紀(たかてら・しげのり)プロデューサーが敵キャラに「再生」だの「改造」だのと名付けてみたかった! といったところが真相なのだろうと私見もするのだ(笑)――もちろん、当時の年長マニアたちにも実に楽しい趣向であったし、当時の子供たちも(おそらく今の子供たちでも!)喜ぶような趣向であろう!――。


 話数をまたいで登場する悪側やライバルのポジションの巨大ロボットも、スーパー戦隊『バイオマン』のシリーズ後半が初である。それがやはり悪のヒーローにして第3勢力キャラでもあるバイオハンター・シルバが操縦することになった、シャープでメカニカルな巨大ロボット・バルジオンであった。バルジオンの登場にも当時の年長戦隊マニアたちは全員とはいわずとも喜んだものである――といっても、80年代の戦隊マニアの中心は10代の中高生で、上限もせいぜいが20代中盤であって、それ以上の年齢層は存在しない。そも特撮マニアの上限が30歳前後といった時代でもあった――。


 飛んで、『地球戦隊ファイブマン』のシリーズ後半において途中参加の敵幹部・初代艦長ショバリエが召喚する、セミレギュラーの敵巨大ロボット・黒ゴルリンなども印象的であった。この黒ゴルリンも、スーパー戦隊のシリーズ各作の後半において正義側の戦力に1号&2号ロボが定番となったことに対応するために、敵側もヤラれ担当のゲスト巨大化怪人&セミレギュラーの巨大怪人の2体を配置してみせることで、敵味方のパワーバランスを取ったものでもあっただろう。


『ファイブマン』戦闘演出を再評価。70年代前半に萌芽!


 『ファイブマン』も今では批評的なエアポケットになってしまって、金曜夕方という放映時間帯的にもシリーズ最低視聴率を記録してしまったことばかりが言及されている。しかし、先行戦隊作品では2号ロボ登場以降はその2号ロボばかりが登場しつづけたり、1号と2号の交互活躍でしかない新ルーティンになっていたところを、1号&2号の合体攻撃や1号&2号の再合体ロボで倒してみせたり、2号の戦闘機形態に1号ロボが搭乗して空中から必殺剣をふるったり、はたまた1号ロボだけ、2号ロボだけでトドメを刺したりして、純アクション演出・純エンタメ活劇としての作劇方面では眼を見張るものがあったのだ。


 先の当時の『宇宙船』Vol.54(90年秋号)などでも、


「新展開・新兵器・掟やぶり応酬のイケイケ的様相を見せているファイブマンは、ひょっとすると戦隊の新たなターニングポイントになるかも」


と当時の戦隊マニアたちの気持ちも代弁するかたちで好意的に言及されている――当時の若手特撮ライター・江口水基(えぐち・みずき)か古怒田健志(こぬた・けんじ)の筆によるものと憶測――。


 とはいえ、『ファイブマン』が子供間で特に人気であったワケではないのも事実ではあるのだ。おそらく子供たちはスーパー戦隊各作ごとのモチーフそれ自体によっても興味関心をそそられるものなので、クルマがモチーフであった前作『ターボ』、鳥がモチーフであった次作『ジェット』と比すれば、実質的にはノン・モチーフであった『ファイブ』という作品自体が地味に見えてキャッチーではなかった……といったところなのだろう。
――筆者個人は『ファイブマン』が大スキだし、その活劇としての作劇も実に高く評価はするけれど。『ゴレンジャー』もノンモチーフだったが、アレは5原色のヒーローの初登場それ自体のインパクトが人気の理由となる――



 70年代前半の特撮変身ブームが原体験である世代の子供たちは、72年に放映されたピー・プロダクション製作の特撮時代劇『快傑ライオン丸』や東映特撮『人造人間キカイダー』などで、各々に各話のゲスト敵怪人とはまた別に話数をまたいでセミレギュラーとして登場するライバルヒーローであるタイガージョーやハカイダーといった悪のヒーローキャラクターを登場させて、ストーリーも1話完結などではなく連続要素も加味していく手法をすでに観てもいた。
 あるいは、『仮面ライダーV3(ブイスリー)』(73年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20140901/p1)などでも、シリーズ前半では前作との差別化か、2話で1本といったスタイルで一度に2体もの敵怪人を登場させており、1体ずつなり2体まとめて倒していく手法が試みられてもいた。必殺ワザも要はライダーシリーズ定番のライダーキックだったとはいえ、トランポリン・ジャンプのシーンにも変化を付けて、キックした直後にその反動でまた空中で再回転をしてから再キックを放つなどして、各々に「V3回転キック」だの「V3ダブルキック」だの「V3きりもみキック」だのといった名称も多数付けることで、必殺ワザにもバリエーションを増やしていたのだ。


 そういった作品を幼少期に体験していたのに、70年代中盤~80年代のスーパー戦隊や戦隊巨大ロボの必殺ワザが固定化されてしまったことや、各話があまりにも1話完結にすぎて、ウルトラシリーズとは異なり通常回とは異なる強敵相手の前後編などもほぼ用意がなされていないようなストーリー展開なども含めて、子供心に一度は高みに達していたように思えた特撮ジャンルの作劇やアクション演出からは後退してしまったようにも見えていたことは記録に残しておきたい。
――とはいえ、バッチリと決まった、何度でも観たくなる様式美的・舞踏的な名乗りやアクション、戦隊巨大ロボの必殺剣によるトドメ技のバンクフィルムなどに、また別種の良さがあったことも強調はしておきたいけど――


悪の巨大ロボに戦隊巨大ロボの変型・合体史も垣間見る!


 なお、ステイシーザーが操縦するバトルシーザーロボの原典でもあるバトルフィーバーロボも変型・合体はしなかった。次作『電子戦隊デンジマン』(80年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20120205/p1)に登場した戦隊巨大ロボことダイデンシンこそ飛行機形態から変型して人型へとなったものの複数マシンの合体などではない。その後も2~3機のメカが合体して巨大合体ロボとなるコンセプトのままであったのだ。5人の集団ヒーローものとしても相応しい5機によるメカ合体を初めて実現したのは、『マスクマン』(87年)の巨大ロボ・グレートファイブに至ってであった。


 ここに日本の合体玩具の進化史を見る歳若い特撮マニア諸氏もいるのやもしれない。しかし、チョット待ってほしい。ごくごく草創期の70年代末期のマニア向けムックなどではともかく、編集手法が確立されて久しい商業誌では、作品に対してあまりに否定的なことは書けないし、またほとんどはワザワザ書くべきようなことでもない些事であろう。だが、それによって漏れてしまう放映当時の年長マニアたちの微細な感慨なども一部にはたしかにあるのだ。


 たとえば、5機のメカが合体して人型巨大ロボとなる玩具コンセプトは、『マスクマン』より10年以上も先行して、スーパー戦隊シリーズと同じく玩具メーカー・バンダイ(ホピー)主導でデザインされた合体ロボットアニメ『超電磁ロボ コン・バトラーV』(76年)ではとっくに実現して、次作『超電磁マシーン ボルテスⅤ(ファイブ)』(77年)なども含めて5機合体の人型ロボ玩具が大ヒットを飛ばしており、それらは『六神合体ゴッドマーズ』や『百獣王ゴライオン』(共に81年)といった合体ロボットアニメにも継承されていったものなのだ。
 よって、80年代中盤までのスーパー戦隊の巨大ロボットがいつまで経っても2~3機合体であることが腑に落ちなかったし、フラストレーション(欲求不満)が溜まるものがあったというのが、同時代の年長戦隊マニアたちのほぼ共通の見解でもあったのだ――社会人になって以降に思えば、玩具会社内での設計部署・設計チーム自体が異なっており、スーパー戦隊担当チーム側が保守的・怠慢だったのであろうと憶測している――。


 なお、『マスクマン』(87年)や『ターボ』(89年)では5機合体を実現していた戦隊巨大ロボだったが、不可解なことに3機合体に戻ってしまった『ファイブマン』(90年)という例もあった――ロボット名もファイブロボだったのにナゼ!?(笑)――。


戦隊の若者像や役者さんの人となりの変遷にも歴史アリ!


 『ゼンカイジャー』は映像的には先輩スーパー戦隊たちを大量に露出しつつも、作劇面においては実はスーパー戦隊らしくない、少なくとも初期スーパー戦隊らしくはないであろう……ということを述べてきた。


 むろん、作品というものはインフラ・ハードウェアに相当する基本設定に大いに規定されつつも、それだけで決定されるものでもない。当初の基本設定や脚本も越えて、キャラクターを演じる役者さんのルックスや人柄、声優さんの演技や声質などにも影響されて、それらが還流してくることで、ドラマやテーマも越えたところでの作品自体の作風・空気感といったものも変わってきてしまうということはあるものなのだ。そーいう意味でも、作家個人だけで作劇ができる小説などとは異なり、映像作品とは総合芸術でもあるのだ。


 通常はほぼ新人である若手役者5人を主人公チームに据えてきたスーパー戦隊だったが、本作では戦隊の残りの4人は着ぐるみの機械人間だという設定なので、顔出しの役者さんはひとりだけ。ゆえに、彼ひとりだけに相応な重責を担わせることにはなる。ということで、新人役者だとはいえ、できれば演技力が相応にある御仁をキャスティングしたいところだ。
 ゼンカイジャーのリーダーにしてセンターでもあるゼンカイザーに変身することになる若者・五色田介人(ごしきだ・かいと)を演じる駒木根葵汰(こまぎね・きいた)。ややユルめでも元気いっぱいな役柄だけど、ここは役者さん本人のルックスなり人格なりなのであろうが、イイ意味での育ちのよいお坊ちゃま的ではある。義憤にかられて絶叫していていも決して下品にはならずに上品さは保たれてあり、暑苦しくてもイヤミにならずに爽やかさや明るさの方が前面に出てくる――我々オタとは真逆ですらある(笑)――。メインターゲットである幼児や子供たち、女児層やママ層などにも好感を持たれそうだが、画面の中での存在感も強いのだ。


 素っ頓狂なことにナンでもカンでも「世界初!」だと口走ってソレを目指してみせたり、本作のタイトルとも関連付けて「全力全開!」なる口癖も与えられている。本作にかぎった話ではなく、ある時期以降のスーパー戦隊に共通することなのだが、悪い意味ではなく良い意味で漫画アニメ的・記号的な性格設定も与えられているのだ。


 とはいえ、古い世代としてスーパー戦隊の半世紀にも近い歴史を通史的に見てしまうと、このあたりの性格設定にも隔世の感を抱いてしまうのだ。1960年代までの日本における仮面や覆面に超人ヒーローたちは、今から見ると20代でも老成したまさにオジサンであったり完成した優等生の副隊長格であったりもする。70年代に入るや発展途上の悩める未熟な若者といった要素が入ってきて、早々に熱血バカ主人公といった要素も強調されてくるのだが、70年代前半の東映特撮ヒーローの変身前の若者たちは80年代中盤以降の若者と比すれば老成しており、哀愁や余裕といったものも感じられたのだ。


 75年に誕生した元祖『ゴレンジャー』も大ワクで云えば70年代風の若者たちなのだが、設定的にはプロ・軍属でもあるからか、青年期的な悩みを一度は脱したオトナでありながら、決してオジサンではなく洒脱さや軽妙さなども強調されており、80年前後の大漫才ブームを経過して以降に定着した空騒ぎ・軽躁的な若者間でのコミュニケーション流儀などとも異なり、シブくて自然体で落ち着いたものではあった。こういった若者像は終戦直後生まれの「団塊の世代」と1960年前後生まれの「新人類世代」――後者の中でもイケてない系をオタク第1世代という(笑)――との狭間の1955(昭和30)年前後生まれの「優しさ世代」(=シラケ世代ともいう)が戦隊メンバーを演じていた『大戦隊ゴーグルファイブ』(82年)あたりまではつづいていく。


 しかし、80年代中葉の『バイオマン』『チェンジマン』あたりからは往時の若者像の変化や空騒ぎなイッキ飲み強制ノリ笑いの大流行なども反映してか、それとも演じる役者さんたちもイコールではなくとも役とも通じる一面があったのか、大声でドナったり泣きワメいたりといった演技付けがなされるようにも変化していく。90年代初頭の『ジュウレンジャー』では戦隊レッド&ブラックといった正副リーダー格はともかく、残りの3人の戦隊メンバーにはもう若者ですらなく無邪気な子供といったメンタルが与えられてもいる。たしかにそれまでの若者像とも異なり、良くも悪くもいつまでも元気な子供のままでいられるようなメンタルが、この時期の日本の若者たちのメンタルとも連動していたようには思うのだ。


――おそらく先進各国で同時多発的に進行していた現象でもある。第3次産業化の進展・高度大衆消費社会化でモラトリアム・青年の期間が延長されて、調子のよい営業マン的トーク力や遊び人的なスキルをこそが賞揚されて、マジメでコツコツや老成などはダサいとされて、そーいう連中は異性にもますますモテなくなってしまったのだ(笑)。コレによってマジメで控えめな性格類型の人種たちは、前代と比しても自信を持っての人格形成ができなくなってしまったのだとも私見する(汗)――


 やや完全無欠の隊長格といった印象が残っていた戦隊レッドも、オタク第1世代の高寺プロデューサーが主導権を握った90年代中盤以降は、熱血人格をギャグ方向へもシフトさせて、サル顔三枚目の熱血キャラ路線なども台頭。飛んで、『天装戦隊ゴセイジャー』(10年)や『烈車戦隊トッキュウジャー』(14年)に代表されるように2010年代の時期になると、やや華奢で細い首に斜めチョップを入れたら折れちゃいそうな(笑)、甘さの残る可愛くてサッパリとして肌のキメも細かい小顔系の戦隊レッドなども登場している。


 ちなみに、リアルでナチュラルな人間像ではなく、漫画アニメ的・記号的な半分はカッコいいけど半分は笑ってしまう決めセリフや名乗りセリフを与えることで、視聴者にインパクトを与えたり、ネタ的にもマネをしてみたいと思わせる手法が実写特撮で誕生したのは、『仮面ライダーカブト』(06年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20070211/p1)と『仮面ライダー電王』(07年)の2作だろう。その後は「スマイル、スマイル」「ハッピー」「ラッキー」「ブレイブだぜ!」「マッスル、マッスル!」や「○○の力、お借りします!」「オレ色に染め上げろ!」などといった、各キャラの性格・個性を漫画アニメ的に特徴付ける定型セリフが、戦隊シリーズでもウルトラマンシリーズでも一般化していくのだ。


 ある意味で非リアルかつ非シリアスな方向へと寄っていったのだが、今では誰もそのことを批判もしないどころか、マニア連中も喜んでマネをしたりまでしている。非リアルだともわかっいてあえてそれを楽しむまでになっている。それらを「幼稚だ」などと批判をする者がいると、逆に「君こそが中二病だ」などと逆批判を返すような頼もしい事態にまでなっている(笑)。70年代末期~00年前後のリアル至上主義の風潮に筆者自身も一度はどっぷりと染まった前科(汗)を持つものの、しかして90年代からはそれらを全否定はせずとも相対化はして表現の流儀の幅も拡げるべきなのだ! などと、及ばずながらも非力ながら戦ってきた者としては隔世の感でもあるのだ。



 早くも、#6で顔見せして#7では悪のヒーローへと変身した、やや痩身小柄で色白の長髪美少年クンことステイシーも広義では同様の存在である。変身前の見た目はクールでも、いかにも繊細ナイーブそうな懊悩する「内面」、つまり文学でいうところの「近代的自我」(笑)なども持っていそうなミドルティーンであって、自称も「オレ」ではなく「ボク」である。


 こーいう性格類型かつ美形のキャラクターは、70~80年代においては実写特撮作品には登場せず、アニメや漫画にしか登場しなかった印象があるのだ。それが80年代中盤以降は男性の若者も美容院に行くようになって、頭髪や服飾などの若者文化が発達するようになったことともパラレル・同時進行でもあっただろう。実写特撮変身ヒーローにおいても、往年の『勇者ライディーン』(75年)や『コンバトラーV』のシリーズなどの長浜忠夫監督による通称・ロマンロボアニメシリーズなどに登場していたような美形の若者悪役をナマ身の役者さんが演じても、イヤミやムリがない時代がいつのまにか到来していたのだ。



 本作における戦隊追加戦士に相当する、とはいっても第3勢力キャラである金色の戦士・ツーカイザーに変身する世界海賊ことチャラそうな金髪青年・ゾックスも、ホントにホントのケーハクそうな感じの人相ではなく、甘くて優しそうな顔立ちをしている。コレなどもメインターゲットである子供たちが怖がらないような人相の持ち主をキャスティングしているのだろうけど、絶妙なる塩梅ではなかろうか?――コレが初期の平成ライダーシリーズだと、少し怖そうで無愛想だったりホリが深いイケメン青年がキャスティングされることで、作品世界のリアリティーラインを高くすることにも貢献していたとは思うのだ。しかし、ライダーも2010年代以降は作風をイイ意味でマイルドかつ非リアルな方向へと作品世界を持っていくためにか、甘くてソフトな顔面の持ち主がキャスティングされるように変化してきて久しい――


肉親ガラみの動機も付与。往年の『フラッシュマン』懐古


 そして、この3人には本作のタテ糸にもなりうる設定も付与されていた。


●ゼンカイザーこと主人公・介人には、10年前に行方不明となった科学者の両親捜しを……
●悪の貴公子でもある美少年・ステイシーにも、戦車を模した敵幹部と893番目の妻(爆)である人間の女性との間に生まれて邪険にされ、偶然に出逢った介人の祖母に母親の面影を……
●金髪海賊青年のゾックスにも、元は少年の姿をしていたものの、今では手乗り・肩乗りで3頭身のSD(スーパーデフォルメ)体形で赤と青の2体のミニミニ人型ロボットと化してしまった双子の弟の回復を……


 彼ら本作のメインの3人に、肉親ガラみという意味では似通った行動動機も与えているのだ。


 それらの設定やドラマも実にイイとは思う。とはいえ、そこで即座に思い出されるワケではないものの、35年ほども前のスーパー戦隊シリーズ『超新星フラッシュマン』(86年)でも、戦隊メンバー5人の両親捜しをテーマとしていたことなども思い出す。実際には、同作は劇中ではほとんどこのテーマが忘れ去られており(爆)、しかも全員が両親と再会できたワケでもなかったあたりで、いかがなモノかと思ったものだけど。


 もちろん、今となっては、全編が父母恋しで作風があまりに哀しげになってしまっても……といった、東映の鈴木武幸(すずき・たけゆき)プロデューサーあたりの意向であったのやも……とは思われるし、その見解に一理も認めはするけれど、やはり基本設定はキチンと活かして登場人物のふだんからの行動原理に昇華させてほしかったものではあるから、物足りなかったものではあったのだ。のちのち、80年代には世を騒がせていた、第2次大戦での日本の敗北に伴なうソビエト(現・ロシア)軍の侵攻による日本の傀儡国家・満州国からの引き揚げ時に、やむをえず子供を現地の中国人に託してきた「中国残留日本人孤児問題」が本作のベースにあったと知って、両親との再会によるメデタシめでたしエンドとはならなかったことの意味はソコにあったのか!? ……とは思ったものの、子供に見せる番組としては再会のハッピーエンドでは終わらせなかった展開はいかがなものなのか?(汗)


――その上で云うけれど、同作シリーズ終盤においては、地球から誘拐されたあとに正義のフラッシュ星人に救われてフラッシュ星で育ったことの副作用による反フラッシュ現象が戦隊メンバーたちに生じてしまう。地球上の事物にふれようとするや互いに電撃的な衝撃が走る拒絶反応が起きてしまって、近いうちに地球にはいられなくなってしまうという追加設定が付与された。そのようなタイムリミット・サスペンスでも盛り上げて、最後には宿敵を倒せはしたものの両親との再会は叶わずに涙を飲んで地球を去っていく……といった悲劇オチは、当時の年長マニア目線でも泣かせる方向性での傑作の最終回には仕上がったとは思ったものだった――


主役以外が人外は前例アリ。マニアの価値観の大地殻変動


 本作『ゼンカイジャー』の5人は主役の好青年を除いて、キカイトピアなる並行宇宙のひとつと意図せず合体してしまった我々の世界で、膨大な人数が人間たちとも共生することになってしまったキカイノイドなる機械人間種族の中の4人であった――といっても、この4人も含めてメンタルは人間(もっと云うならば日本人・汗)とも変わらないし、食事も人間の食するモノを食べているし(笑)、見た目も冷徹さはなくコミカル寄りに戯画化されたポップなデザインだったけど――。


 もちろん、スーパー戦隊シリーズの長い歴史においては、主人公の戦隊レッド以外の人物が人外の存在である獣人族であったり――『動物戦隊ジュウオウジャー』(16年)――、戦隊レッドのみが現代人であって残りの4人は1000年後から来た未来人であった――『未来戦隊タイムレンジャー』(00年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20001102/p1)――といった作品なども存在している。
 しかし、前者には素面の新人の若者役者さんが演じる「人間態」が存在しており彼らがメインで活躍していたワケで、後者も未来人ではあってもホモ・サピエンスこと「現世人類」ではある以上は、両作ともにドラマ面ではともかくビジュアル的にはフツーの「スーパー戦隊」作品であったとはいえるのだ。よって、人間としての姿を持たないキカイノイドなる機械生命体としての着ぐるみキャラが、番組の開始当初からレギュラーの戦隊ヒーローとして登場する本作は、カナリの別格感というのか例外感・特別感を醸すことには成功していたとはいえるだろう。


 ところで、特撮マニア諸氏の見解も長い年月の間には変わっていくものである。それは本作『ゼンカイジャー』の戦隊メンバーのモチーフに『ジュウレンジャー』や『ガオレンジャー』が採用されていることでも痛感してしまう。


 たとえば、往年の『鳥人戦隊ジェットマン』(91年)や『未来戦隊タイムレンジャー』(00年)などは、その一応のややリアル寄りな年長マニアの観賞にも堪えうるストーリーが、当時の特撮マニアの全員とはいわず総体としての志向がやはりリアル&シリアス至上主義であったために、実に高く評価されてもいたのだ。
 そして、上記作品群に対する作り手側での反省なり差別化もあってか、チャイルディッシュな作風へと意図的に舵を切った次作『恐竜戦隊ジュウレンジャー』(92年)や『百獣戦隊ガオレンジャー』(00年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20011113/p1)などは子供間での絶大なる大人気と反比例して、年長マニア間では「幼稚」「ドラマ性が低い」ものとして酷評の憂き目にあってきたのだ――前者は特撮評論同人界、後者はネット上の設立間もない時期であった超巨大掲示板・2ちゃんねるが舞台であったけど。むろん、コレらの2作をその「幼児性」ゆえに評価するような、一周回ったようなスレたマニアも少数ながら往時から存在はしていた――。


 しかし、00年代前半には主に2ちゃんねるにて、「子供向けヒーロー番組なのだから少々の稚気(ちき)は当たり前」「むしろそういった要素にツッコミを入れる方がヤボだ」といった論調の方がカッコよくて理があるようにも見えてきたのか、急速に勃興してきたのであった――特撮評論同人界では90年前後に隆盛した論法ではあったのだけど、その時点では一般の特撮マニアレベルにも還流していくことはなかったので(汗)――。そして、ウルトラシリーズでは20世紀の特撮マニアであれば「ハードでリアルでシリアスな本格志向作品だ!」などと絶賛されたであろう『ウルトラマンネクサス』(04年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20041108/p1)などは、ネット上でも「アリかもしれないけど、子供向け番組としてはいかがなモノか? 失敗作なのでは?」といった、しごく常識的な論法で批判されるようにもなっていくのだ。


 スーパー戦隊シリーズでも、飛んでシリアス志向で製作された『特命戦隊ゴーバスターズ』(12年)あたりになると、マニア間でも高評価を与えられてきた辣腕脚本家・小林靖子がメインで手掛けた作品にしては、はじめてややイマ半な出来に仕上がったようにも見えたこともあったのであろうが、前作『海賊戦隊ゴーカイジャー』に比して地味で物足りないとの批判が飛ぶようにもなっていった。


●チャイルディッシュに作ったことでマニア間で酷評された2001年の『ガオレンジャー』
●アダルティーに作ったことでマニア間で酷評された2004年の『ウルトラマンネクサス』


 特撮マニア間でも特に指摘はされてはこなかったのだが、筆者個人の体感・ハダ感覚としては、この間の2002~3年にかけて2ちゃんねるでの特撮板の各所各所でのあまたの小論争を契機として、全員とはいわずとも多数の特撮マニアの価値観に「大地殻変動」が発生している。そして、特定のオピニオンリーダーがいたというワケでもないのだけど、この時期にリアル至上主義を急速に相対化・離脱して、子供という名の「他者」を発見して、非リアルな歌舞伎的様式美やチャイルディッシュの善さをモノサシとするような大変化が起きており、それが急速に普及したのがこの時期であったと私見をしているのだ。


 そして、本作においては#1冒頭で、人間世界と並行世界であるキカイトピアことキカイノイド(機械人間)の世界が一部融合してからしばらくが経っており、しかも両者が平和裏に共生しているといった世界観ともなっている。これは本作のメインライターでもある香村純子(こうむら・じゅんこ)がほぼ全話を手掛けた『動物戦隊ジュウオウジャー』最終回で、人間世界と獣人族の世界がモザイク状に混在することで両者の共生を謳ったことのテーマ的な続編といった意味もあるのだろう。


 もちろん、妥当な処置ではあるのだろうが、正義&平和を子供向けに訴える特撮変身ヒーロー番組に対してガチなことを云ってみせても仕方がないことは重々承知もしている。しかし、シニカル(冷笑的)な筆者などは民族や宗教以前に学閥や同好の趣味人同士の間でさえも争いが絶えないというのに、人見知りでコミュ力弱者な我が身を棚に上げて、あるいはイジメやパワハラなどの他人の悪意に遭遇してきた当事者でもあるハズなのに、あるいは同じ日本人であってもヤンキーDQN(ドキュン)やイケてる系やファッション&スイーツな人種とは気が合わないし同席していることすら苦痛であるだろうに、よくも左翼リベラルなキレイ事で歯の浮くような「みんな仲良く」的な「他者との共生」などを唱えられるよなぁと感じられてならないのだ(笑)。
 むろん、哲学者・ホッブスが云うような人間同士が「万人の万人に対する闘争」状態だとまでは思わないし、そうであれば人類はとっくに絶滅している。筆者個人は「共生」と「闘争」の中間を採って「棲み分け的な共生」に現実性を感じている者ではある。


――往年の円谷プロ製作の特撮アニメ併用作品『恐竜探検隊ボーンフリー』(76年)における肉食恐竜と草食恐竜の棲み分け的な保護のイメージでもよい。肉食系&草食系の性格類型を一時的にはともかく長期にわたって同一空間に共存させると、親の教育とか安倍ちゃんトランプによらずとも、前者が後者に嗜虐心をそそられて、「価値」判断としてはまったく肯定はしないけど「事実」傾向としては覇気なり得意分野がある人間がそーではない人間に対して物足りなさやイラつきなどを感じてイジメ出すことが、人間にも内在している動物的な本性の必然でもあるのだろうとも思うので(爆)。むろん、それにブレーキをかける役割が後天的に処置される理性や道徳である――


 もちろん、棲み分けにしたことで溝が深まり闘争へと至る可能性も原理的には残るのだけど、接近しすぎても譲れないアイデンティティー面でブツかってサードインパクトが起きるのだとすれば、その危険性は等価ではある(汗)。付かず離れずとしての棲み分けなのだ。


 ……というようなことなどは、子供向け作品である『ジュウオウジャー』や『ゼンカイジャー』では描かなくてもイイけれど(笑)。


仮面キャラを声優がアテることでの作品テーマ的メリット


 とはいえ、平成ライダーシリーズまで比較対象に入れてしまえば、本作の東映側のプロデューサーを務めた白倉伸一郎が担当した『仮面ライダー電王』においては、悪の敵怪人と同種族でもある、キモ可愛い正義の怪人キャラ複数体をレギュラーに設定して――「週刊少年ジャンプ」連載の大人気漫画『DEATH NOTE(デスノート)』(03~06年)に登場した死神・リュークからの着想かと憶測――、スーツアクター&声優によるコミカルでアドリブ満載のユカイな演技も披露させることで、子供たちや女性オタクたちをも大いに喜ばせており、同作を大ヒットに導いた一因ともなっていた。
 バンダイ側の入れ知恵という気もするけど、円谷プロ製作のウルトラマンシリーズでもこの手法は流用されており、映画『ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国』(10年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20111204/p1)においては、70年代前半の円谷特撮巨大ヒーローのリメイクかつ、人間としての姿は持たずに人気中堅声優がユカイな声の芝居を務めるかたちで、ミラーナイト・グレンファイヤー・ジャンボット・ジャンナインといった仮面キャラクターたちが登場。こちらも相応に人気を博して、後継シリーズにも登場していく。


 たしかに、ナマ身の役者さんが大仰な人情芝居を演じたり、オオゲサな道徳的教訓を説いたりすると、たとえそれがいかに正しくても鼻についてきたりクサくなってきたりすることもあるものだ。しかし、仮に論理的にはまったく同一のストーリー展開であっても、最初から漫画やアニメなどの「絵」としての抽象化されたキャラであったり、着ぐるみキャラが誇張・単純化して演じるのであれば、リアリティーの許容線が自動的に下がるのか往々にして許せてきたりもする。そーいう機微に気が付いたのは筆者の場合、90年代中盤の催事イベント「ウルトラマン フェスティバル95」で上演されたウルトラマンネオスとウルトラセブン21(ツーワン)が活躍して、特に後者がやや子供っぽいメンタルで言動・お芝居していたライブステージであった。たしかに仮面劇に声優が声をアテることで、表層・意匠はチャイルディッシュでも深層では普遍的なテーマや心情を描ける鉱脈があるのだとも思うのだ。


 従来の戦隊シリーズでは、特に戦隊レッド&ピンク以外は当時のJAC(ジャパン・アクション・クラブ)の若手イケメン3人を揃えた『科学戦隊ダイナマン』(83年)以降に、3枚目のコミックリリーフを務める戦隊メンバーがあまり登場しなくなったことが、ブ男の居場所すらもがなくなってしまったようで残念でもあった。しかし、本作では大獣神もどきに変身するジュランはオジサン的なメンタルだし、ガオキングもどきに変身するガオーンはやや高めの声質によってヒトの善さも感じられて、マジーヌも女性言葉を使うことがテレくさいのか語尾を「○○っす!」と体育会系にしてバリアを張りつつも声質的にはビビリの気弱そうな少女そのもので(笑)、ブルーンもビン底メガネのガリ勉くんといった感じであって、通常だとカッコいいとはされない性格類型のキャラたちが大集合も果たしており、そんな多様性にも好印象を持ってしまうのだ。


 もちろん、『仮面ライダー電王』以前にスーパー戦隊でも『爆竜戦隊アバレンジャー』(03年)において、同作の巨大メカ獣こと爆竜たちはユカイな人語をペラペラと発する存在だとして、往年のアニメ特撮・名作人気ドラマや映画のパロディーセリフもしゃべらせることで笑いを取っていた。
 この手法を拡張して、『炎神(エンジン)戦隊ゴーオンジャー』(08年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20080824/p1)でも、大きな可愛いお目めの意匠が付いた巨大自動車型メカこと炎神たちは特撮バトル部分のみならず、変身前の戦隊メンバーたちが繰り広げる日常生活シーンにも小型アイテム化して常住し、本編ドラマ部分にも会話劇のかたちでカラませて露出も増やす方法を採っていた。まぁ、両者ともに語尾が「~テラ」だったり「~ドル」だったりと漫画アニメ的・記号的で、メンタルも子供そのものであってコミックリリーフ的な扱いではあったけど。


 いやまぁ、考えようによっては、90年代前半の『恐竜戦隊ジュウレンジャー』や『忍者戦隊カクレンジャー』あたりからイケメンキャラでも複数の戦隊メンバーが、21世紀初頭の『百獣戦隊ガオレンジャー』に至ってはシリーズ途中からは戦隊メンバー全員(!)がコミックリリーフ化していたともいえるけど(笑)。
 『電磁戦隊メガレンジャー』(97年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20111121/p1)のメガブラックの変身前の中の人が端緒ではあるけど、朴念仁(ぼくねんじん)に近いマジメな優等生キャラに対しては「世事には疎(うと)いがゆえのボケをカマさせる」ことで、嘲笑ではなく爽やかにプッとほほえましく笑わせるような新たなギャグパターンなども確立。その後の戦隊シリーズにかぎらずジャンル作品全般にも継承されていく。


――元祖『ゴレンジャー』の生みの親のひとりである東映の平山亨(ひらやま・とおる)プロデューサーは「ボクは敵の怪人をコミカルに描くことは考えても、正義側をコミカルに描くことまでは考えてはいなかった」といった主旨の発言をドコかでしていたとも記憶する。もちろん賛否や好みはあるだろうし、そのサジ加減もまた非常に重要ではある。しかし、正義側の戦隊メンバーをもコミカルに崩して描いていくという変化は、大局においては時代の空気の変化とも付かず離れずで絶妙に(結果的に?)連動しており、それゆえに成功したのだとも私見するのだ――


戦隊&敵怪人の源泉は、並行宇宙個々を内包したメダル!


 本作ではナマ身の役者さんが演じる3人のキャラクターと4人の機械人間たちが善悪の戦隊ヒーローへと変身している。


 2010年前後からの日本の特撮ヒーロー作品は、種類が多いことによるコレクション性・収集癖を刺激して、比較的に安価なカードやカプセルにメダル型のミニ玩具を大量に頒布することで売上を向上させるという、新たなビジネスモデルを構築するようになった大変化を迎えた。本作でそれに該当するのは、「センタイギア」なる円周が歯車型になっているメダル状の複数種アイテム。1枚ごとに各「並行世界」に存在している歴代の各スーパー戦隊のパワーが秘められているとされている。


 加えて敵の軍団側も、あまたの「並行世界」それ自体をまるごとひとつずつ、超科学で1枚のメダル内へと閉じ込めて(!)、そこからその並行世界を象徴するあまたのパワーを発揮するゲスト敵怪人を産み出しているのだともしたのだ。といっても、キノコだの氷だのボクシングだの寿司だのゴミだの鬼ごっこ(!)といった事象をモチーフとした、戦隊シリーズおなじみのコミカルでユカイなおしゃべりをするB級ギャグ怪人たちが出現するだけなのだけど(笑)。


 ギャグ怪人は元祖『ゴレンジャー』の放映2年目に登場した日常生活の器物をモチーフとした怪人たちを端緒としている。そして、彼らは初期スーパー戦隊シリーズを彩(いろど)ってもきた。しかし、ややシリアス・SF的に大河ドラマ性なども高めていた『超電子バイオマン』(84年)~『超獣戦隊ライブマン』(88年)の5年間の時期のゲスト敵怪人たちは、イロモノ臭を排した本格志向のものであった。それはそれで当時の年長戦隊マニア諸氏にもカンゲイされたものである。


 けれども、ファンタジックな設定の『高速戦隊ターボレンジャー』(89年)や『恐竜戦隊ジュウレンジャー』(92年)では、敵怪人にもポップでライトな色彩&デザインが導入されるようになる。『鳥人戦隊ジェットマン』(91年)や『五星戦隊ダイレンジャー』(93年)では、再帰的に再発見された「子供性」とでもいうべきか、元祖『ゴレンジャー』のギャグ怪人の自覚的な現代的アップデートといったデザインともなっており、当時のマニア諸氏にも好意的な大カンゲイを受けていた。そして、以降のシリーズでは、この流れが敵怪人の在り方のメインストリームともなっていく。



 そして、並行世界の設定である。当初は基本的には各作が独立した作品世界であって、前作の戦隊ヒーローが助っ人参戦はしないものとして製作されてきたスーパー戦隊シリーズではあった。しかし、やはりマニアや子供たちの願望としては、ヒーローたちが共演して巨悪と戦うような物語を観てみたい! という願望自体は潜在はしていたのだ――ただし、80~90年代の前半においては、第1世代特撮マニアたちによる原点至上主義、続編やシリーズ化や先輩ウルトラ兄弟の客演自体が悪である! といった風潮が強かったので、それに洗脳されてしまったり、あるいはウルトラではダメでも戦隊ではOKだといったダブルスタンダードな発言をしている特撮マニアも多かったモノではあった――。


 けれども、90年代中盤以降の新旧2大戦隊共演のビデオ販売作品の連発以降は、そして作り手側が世代交代したこともあってか、歴代スーパー戦隊シリーズは同一の世界観での出来事だといった新設定によって次第に上書きもされていく。そして、この趣向に多くの特撮マニアも大いに賛同していったのだ。


 それを思えば、歴代スーパー戦隊の各作は各々が別世界での出来事であったとする描写は、コレまた21世紀以降のスーパー戦隊シリーズで描かれてきたこととも、再度の矛盾が発生してしまう新設定でもあったのだ。それに加えて、本作においては過去作の先輩スーパー戦隊がシンプルなかたちでのゲスト出演や助っ人参戦することはナイのだということにもなってしまう。そこも少々残念なことでもあっただろう。


 けれども、歴代シリーズが同一世界の出来事だったとして、先輩スーパー戦隊の各作ごとに戦隊OBのゲスト出演を実現することができていた『海賊戦隊ゴーカイジャー』を後続作が後追いすることは非常に困難なことではある。そして、同作と同じ方向性をねらってしまうと、マニア諸氏からは同作を無意識的なモノサシとされてしまって、「『ゴーカイジャー』の域には達していない」などと酷評にさらされてしまう光景も眼に見えてきてしまうのだ。よって、『ゴーカイ』とは別方向をねらうこともある意味では正しいのだ。


 しかし、これらの新設定に少々ガッカリはしている感の「空気」を特撮マニア間にも感じつつ、ここにヒステリックな反発や糾弾を与えるような動きも大きくは見られないのだ。それは単純に我々特撮マニアたちもスレてきて枯れてきていることも大きいのかもしれないが(笑)。


 つまり、特撮マニア諸氏もまた無意識・直観的に、歴代スーパー戦隊の世界を以下のように捉えているのではなかろうか? 歴代スーパー戦隊が個々に活躍している世界はたしかに45個はある。けれども、並行世界の概念を拡張してみせれば、歴代スーパー戦隊すべてが同一世界に存在している46個目(笑)の並行世界も当然にあるのだろうと。別世界であったハズの昭和ライダーと平成ライダーが同一世界での歴史になっていた映画『オーズ 電王 オールライダー レッツゴー仮面ライダー』(11年)や映画『スーパーヒーロー大戦GP(グランプリ) 仮面ライダー3号』(15年)もまた同じリクツであったのだと。


 よって、本作における、ある意味でのマニア諸氏に対するウラギリ的な設定(汗)も、個々が勝手に脳内で好意的に補完してSF合理的に自己解釈して許容しているのではなかろうか? あるいは、製作スタッフも無意識にそのような自己正当化を図っているのではなかろうか?(笑)


――『宇宙戦隊キュウレンジャー』(17年)が前作『動物戦隊ジュウオウジャー』(16年)とは別世界の地球での出来事であったことは、ココでは置いといてくださいまし。欲を云えば、『炎神戦隊ゴーオンジャー』も並行世界が11個あるという作品世界だったので、『ゼンカイジャー』でもサムライワールドだのガンマンワールドだのクリスマスワールド(爆)だのの並行世界は再登場させてほしかったけど(笑)――


可動プレイバリューも高めた銃器の変身アイテムの系譜!


 本作『ゼンカイジャー』のもうひとつのメインアイテムは、やや大きめの拳銃型をしている「ギアトリンガー」。武器として用いるだけではなく、戦隊ヒーローへの変身にも用いている。右側部に小さなクルマのハンドル状のモノが取っ手付きで付いていて、銃を顔面ヨコに引き寄せてから取っ手でグルグルと廻したり、回転ガトリング砲のような複数の銃口なども持っていて、銃の上層部には開閉ギミックなどもある。そこに銃弾ならぬ「センタイギア」を着脱可能! 可動部も相応にあることで、手許に持つことでイジくり倒したくもなる、いわゆるプレイバリューにも富んでいる。
 劇中でもヒーローへの変身なり巨大化する際にも、この銃器をまさに字義通りのトリガー・引きガネともしており、歴代スーパー戦隊の能力もこの銃器による銃撃によって発揮されることで、この「センタイギア」にも存在意義を持たせることができているのだ。


 ロートル特撮オタクとしては、こういった設定や劇中での活かし方のイチイチについても、日本特撮の通史や日本のヒーロー玩具の歴史といったモノが、脳裏の片スミに浮上してくる。東映メタルヒーローやスーパー戦隊が銃器も携行するようになったのは1980年代からだろう。その時代においても商品点数を増やすための成りきり玩具的なモノとして、銃器や盾などの玩具なども連綿と発売されていた。しかし、変型・可動といったギミックは少なかったために、子供たちにとっての魅力にはやや欠けてはいたであろうし、入手してもすぐに飽きてしまいそうな玩具たちではあったのだ。


 しかし、21世紀に入るや、平成仮面ライダーシリーズにおいては、『仮面ライダー555(ファイズ)』(03年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20031108/p1)における3号ライダーこと仮面ライダーデルタや、『仮面ライダーカブト』(06年)における3号ライダーこと仮面ライダードレイクなどを皮切りに、変身アイテムを銃器としても兼用するような流れが始まった。極めつけは、『仮面ライダーディケイド』(09年)における2号ライダー(3号ライダー?)こと仮面ライダーディエンドだ。ライダー恒例の変身ベルトは存在せず、銃器で銃撃することで変身も果たす特撮ビジュアルが印象に深く残るかたちで描かれた。近年では『仮面ライダーゼロワン』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200921/p1)における2号&3号である仮面ライダーバルカン&仮面ライダーバルキリーも同様で、銃器を使って変身を果たすサマがここでも鮮烈に描かれていた。


 この流れはスーパー戦隊にも派生する。『獣電戦隊キョウリュウジャー』(13年)や『怪盗戦隊ルパンレンジャーVS(ブイエス)警察戦隊パトレンジャー』(18年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190402/p1)などがソレだ。直接的な銃器のかたちこそしていないが、『ウルトラマンギンガS(エス)』(14年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200404/p1)に登場した2号ウルトラマンことウルトラマンビクトリーや、記憶に新しい『ウルトラマントリガー』(21年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20211021/p1)なども、変身アイテムが銃器に変型することでプレイバリューを高めてもいる。


 リアルに考えれば、前方に発射した銃弾状のエネルギーの弾道がUターンして戻ってきて、それで変身ができるというのはオカシなことではある(笑)。しかし、このテの虚構度が高い特撮変身ヒーロー作品においては、むしろそれこそが「非日常性」を強調して、ヒーローやその武器が持っている「万能性」といった方向性でも機能して、オモチャおもちゃした玩具もまた魅惑的に見えてくるものでもあるのだ。


 さらに加えて、本作『ゼンカイジャー』では宇宙海賊の金髪青年もいかにもオモチャな変身銃器を構えて、「ヨホホイ、ヨホホイ、ヨホホイ、ホイ♪」と脱力する歌を歌いながら各話で参上してくる。そして、変身する際には意味もなく長くて軽快でキャッチーなダンスも交えるのだ――それに対して周囲の登場人物たちも「ナゼ?」と正しくツッコミを入れている(笑)――。もちろん、戦隊オタクであれば、コレは『獣電戦隊キョウリュウジャー』のメンバーが銃器で変身する際に長々とサンバ的で軽快なダンスも披露していたことの踏襲でもあった。
 ホントにもうこの2010年代以降になるや、ソレが非リアルで不謹慎だからケシカラン! などと叩かなくなったどころか、その稚気満々さを年長マニアもいっしょになって楽しむような真逆の方向に変わってきている。若手役者さんたちもいかにも不条理でデタラメな基本設定ではあっても、イイ意味でガチで演技もしてくれているのだ――80年代中盤~90年代初頭には、学園ドラマや熱血演技などをチャカした漫才ブームやタレント・タモリの影響で、このテのオフザケや熱血芝居をクサいものとして異様に恥ずかしがる空気が若者間には濃厚にあったものであり、『ジェットマン』序盤の戦闘機の訓練シーンにおける戦隊メンバーの武器名・攻撃名の絶叫のお芝居などにもその気配を微量に感じ取ったものであった(汗)――。


 こういった玩具的な要素は、メインターゲットの子供たちにはともかく、60年前後生まれのオタク第1世代が青年年齢に達して、70年代前半の変身ブームで育ったオタク第2世代の特撮マニアたちも中高生や20代の若者年齢に達した1980~90年代においては、特撮ジャンルに市民権を得させるためにも「唾棄すべき、非リアルで幼稚なモノだ!」「商業主義だ!」などとして糾弾されるような風潮もあったのだ――この理屈によって、80~90年代当時の現役東映ヒーロー作品の武器や兵器玩具などはもちろん、『ウルトラマンタロウ』(73年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20071202/p1)に登場する怪獣攻撃隊・ZAT(ザット)のカラフルで奇抜なフォルムをした戦闘機などは特にヤリ玉にも挙がっていた――。




 本作『ゼンカイジャー』を通じて、スーパー戦隊シリーズの歴史を、あるいは日本特撮の歴史を、場合によっては日本の歴史なども透かし見ようと欲張って、煩雑な内容となり収拾もつかなくなってしまって恐縮である。本作終盤に登場した「神さま」なども実は『アバレンジャー』中盤回などでもっと卑近な姿(笑)で登場していたりなど、語りたいウンチク・トークはまだまだあるのだけど(汗)、いずれ機会を改めて語り直したい。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2022年号』(22年8月13日発行)所収『機界戦隊ゼンカイジャー』合評3より抜粋)


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(2021年9月10日東映系公開)
(文・久保達也)
(2021年10月3日脱稿)

*「ラブ・ユー・チェンジ! スーパー戦闘、純烈ジャー!!」


 ムード歌謡コーラスグループ「純烈(じゅんれつ)」が初主演した、彼らが同姓同名で登場して戦隊ヒーローにも変身して戦う! といった特撮映画『スーパー戦闘 純烈ジャー』(21年・東映ビデオ)が、全国77館という小規模な興行ながらこのほど公開された。



 「温泉の神」(笑)が正義のヒーロー「純烈ジャー」として選んだ者に手渡した変身アイテム「純烈マイクチェンジャー」。それは、赤・青・紫・緑と各自に色分けされただけの単なるフツーのマイクロフォンであった(笑)。


「愛の熱湯、火傷(やけど)にご注意! 純レッド!」


などと名乗る際もそのマイクをまんま使用する。


 そして、変身直後の「純烈ジャー」は、左手に各自の色に染まるバスタオルが入った黄色い洗面器をかかえている(爆)。


 また、クライマックスにおいて、「温泉の神」は「純烈ジャー」に最強の飛行メカとして「スーパー銭湯機(せんとうき)・純烈026(おふろ・笑)号」を与える!


 これは、


●主翼の両端にはシャンプーとリンスのボトル
●コクピットの上には水とお湯をひねり出す栓(せん)
●それと尾翼をつなぐかたちでシャワーホースがそびえ
●機体底部には水道の蛇口とやはり洗面器


などがゴテゴテと装飾された、一見とんでもないデザインの戦闘機なのだ!


 だが、それらは決してギャグとして機能させるためだけに描かれたものではない。


 単なるマイクにしか見えないマイクチェンジャーで「純烈」が「ラブ・ユー・チェンジ!」と声をそろえて叫ぶ、様式美としての変身アクション!


 「スーパー銭湯」ならぬ「スーパー戦闘、純烈ジャー!」の名乗りとともに、近年では「本家」でもあまり見られない


●赤
●青
●紫
●緑


ときれいに色分けされた噴煙が各自の背景にドカ~ン! とわきあがる華(はな)のある演出!


 そして、


●「純レッド」が日本刀
●「純ブルー」がハンドガン
●「純バイオレット」がロッド型武器
●「純グリーン」が二刀流


となる短刀などのさまざまな「マイク・ウェポン」(笑)を召還し、それを手にした「純烈ジャー」が敵集団を倒すカタルシス!


 軽自動車の車内で撮影された(笑)、あまりに狭苦しいコクピット内で「純烈」は口々にボヤく。


 しかし、「FLY(フライ)」なるボタンが押されるや、発進ゲートが開いて「026(おふろ)号」を乗せたカタパルトがゆっくりとせり上がる!


 合成された御老公の湯の屋上から発進して高速飛行し、時空転移能力までをも披露する、実にリアルでSFチックな特撮メカ描写!


 一見おマヌケに見えるアイテムやメカがカッコよく見えるように心血が注(そそ)がれた「アクション演出」と「特撮演出」はまさに本気度満点であり、これらは「本家」のスーパー戦隊にも見られる演出センスそのものなのだ!


 なお、「純烈ジャー」の変身時やマイク・ウェポン召還時の「スーパー銭湯機・純烈026号」の描写などには、『仮面ライダー電王』(07年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20080217/p1)の正義側のイマジン(怪人)・リュウタロスや、近年では『魔進(マシン)戦隊キラメイジャー』(20年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220503/p1)の魔進ファイヤ=レッドキラメイストーンなどを演じ、大の特撮好きで知られる声優の鈴村健一氏がリュウタロスや魔進ファイヤのようなはっちゃけた口調とは180度異なる、かなりシリアスな声でナレーションを入れており、画面に説得力とカッコよさを加味するのにおおいに貢献していた。


 さらに、最も秀逸かと思えるのは、「純烈ジャー」のデザインである。黒地に各自のパーソナルカラーのラインが走り、胸のプロテクターにはそれぞれの色で「純」と書かれている。頭部や両肩のメタリックな印象、さらに両足の関節部分にはまるで可動フィギュアのようなパーツ分けが施(ほどこ)されており、どちらかといえば戦隊ヒーローというよりメタルヒーローの趣(おもむき)が強いのが全員に共通する意匠(いしょう)なのだ。


 そして、


●白川が変身する純レッドには、カブトムシの触覚!
●酒井が変身する純バイオレットには、猛牛のツノ!
●小田井が変身する純ブルーの両耳部分には、ロッドアンテナ状のパーツ!


がそれぞれの頭部にデザインされている。


 これは明らかにかつて、


●白川氏が変身した、カブトライジャー!
●酒井氏が変身した、ガオブラック!
●小田井氏が変身した、仮面ライダーゾルダ!


をモチーフとしており、往年のファンとしては狂喜せずにはいられなかったものだ。


 なお、劇中キャラと演者が同姓同名であるために、「現実世界」の歌謡グループである「純烈」メンバー諸氏の場合には「敬称」をつけ、「劇中キャラ」として登場する「純烈」メンバーは「敬称略」として表記していく。



 ちなみに、後述する後上(ごがみ)が初変身した「純グリーン」の頭部には、ゴーグルの上に「ふたつの星」が重ねてデザインされている。これは新星=ニュースターとしての意匠と解釈すべきところだし、後述するがもっと深い意味もある。


 そして、「純グリーン」の両腕にのみ、まるで1950年代におけるロック音楽の創始者のひとりである伝説の歌手として名高い故・エルヴィス・プレスリーを彷彿(ほうふつ)とさせる緑のビラビラ――正式な名称がわからない(汗)――がデザインされている! 左腕には熱湯と冷水を出すためのハンドルまで装着している特別仕様だ!


 「なんか、おまえだけメッチャ豪華やなぁ~」と、現実世界でも空想世界でも後上にうらやましがられてきた先輩たちが、逆にグリーンをうらやましがるのは微笑(ほほえ)ましいだけではなく、メンバー間の関係性の変化を最大に象徴する実にドラマ性の高い描写に仕上がっていたのだ。


*「純烈」 ~栄光までの軌跡(きせき)!


 一応の説明をさせていただくと「純烈」とは、


●酒井一圭(さかい・かずよし)氏→『百獣戦隊ガオレンジャー』(01年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20011113/p1)の牛込草太郎(うしごめ・そうたろう)=ガオブラック
●白川裕二郎(しらかわ・ゆうじろう)氏→『忍風(にんぷう)戦隊ハリケンジャー』(02年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20021110/p1)の霞一甲(かすみ・いっこう)=カブトライジャー
●小田井涼平(おだい・りょうへい)氏→『仮面ライダー龍騎(りゅうき)』(02年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20021109/p1)の北岡秀一(きたおか・しゅういち)=仮面ライダーゾルダ――『龍騎』出演時の名義は「涼平」――
●後上翔太(ごがみ・しょうた)氏


と、4名の内3名がかつて東映ヒーロー作品にレギュラー出演した経歴をもつメンバーで構成される歌謡グループである。


 ちなみに、『仮面ライダーアギト』(01年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20011108/p1)に葦原涼(あしはら・りょう)=仮面ライダーギルス役で出演していた友井雄亮(ともい・ゆうすけ)氏も過去に所属していたが、ご存じのとおりで氏は2019年に女性がらみのパワハラのスキャンダルが大きく報じられたことにより、純烈の脱退どころか芸能界引退にまで追いこまれてしまった(汗)。2021年現在、友井氏は出身地の大阪市にある焼肉店の店長として勤務しているそうだ。


「夢がなくても生きていける……」


 かつて、仮面ライダーギルス=葦原涼はそんなセリフを吐いていた。まさに至言であろう。たいていの人間はそんなに明瞭な夢や大それた夢などは持っていない。夢を持っていた場合でも、それが実現できるとは思ってはいない。だからといって、人生に完全に絶望しているワケでもない。そんな中途半端な状態や適度にアキラめた状態が、大半の人間のリアルというものだろう。狭いながらも楽しい我が家や、たとえ孤独でも人付き合いに煩わされない気安さや平穏の価値も「ネクラ」や「陰キャ」だと否定せずに認めてあげるべきなのだ。
 しかしそういった心の平安は、現代社会ではふつうは「夢」とは認められずに、後ろ向きなものとして否定されてしまう。そして、むしろ「夢」を持て! 持たない方がオカシい! として、人々や特に内向的だったり謙虚だったりする子供たちや若者たちに、プレッシャーを与えてかえって厭世的にしたり劣等感を持たせてしまっているのではあるまいか!?


 友井雄亮氏と葦原涼を同一視するワケにもいかないが(笑)、そのセリフにかつて勇気づけられた視聴者としては、その返礼として友井氏の第二の人生にもエールを贈りたいところだ。



 さて、「親孝行」「紅白歌合戦出場」「全国47都道府県で唄うこと」を結成以来の目標としてきた「純烈」の誕生は15年近く前の2007年にさかのぼるそうだ。


 かのバカ映画の巨匠・河崎実(かわさき・みのる)監督作品の常連俳優でもあり、ものまね芸人で映画監督の顔ももつレイパー佐藤氏が監督したヒーロー映画『クラッシャーカズヨシ 怒る』(07年・Otaku Production――オタク・プロダクション(笑)――)に主演した酒井氏は、撮影中に右足を複雑骨折して40日間も入院するハメになった。


 その入院中、氏は昭和を代表するムード歌謡コーラスグループであり、筆者のような昭和の特撮世代にとっても、当時としても「懐メロ」として、テレビの歌謡曲番組などで散々に耳になじんできた『長崎は今日も雨だった』(69年)・『そして、神戸』(72年)・『東京砂漠』(76年)などの数多くのヒット曲を誇る「内山田洋(うちやまだ・ひろし)とクール・ファイブ」の夢を何度も見たらしい。


 これを「神」からの啓示(けいじ・!)だと考えた酒井氏は(笑)、「クール・ファイブ」のような歌謡グループの結成を思いつくに至った。そして、先述した白川氏・小田井氏・友井氏・後上氏にロックバンドの元ボーカルだった林田達也(はやしだ・たつや)氏を加えた計6人で「純烈」はスタートしたのだ――林田氏は家庭の事情で2016年末に脱退した――。


 林田氏以外のメンバーはほとんど歌の経験がなかったことから、数年間のボイストレーニングや下積みを経て2010年にようやくデビューを果たしたものの、2012年に早くも当時所属していたレコード会社との契約を打ち切られるハメになったそうだ(汗)。


 「純烈」は歌える場所を求めて「キャバレー」や「健康センター」、そして流行りの「スーパー銭湯(せんとう)」など、全国各地を巡業の旅で回った。この地道な営業努力がやがて追い風となった。


 健康センターやスーパー銭湯に客として訪れていたオバチャンたち、もとい熟女・マダムのみなさま(笑)に、「純烈」のステージは熱狂的な大歓迎を受けることとなったのだ!
 2016年に発売した7枚目のシングル『幸福あそび・愛をありがとう』がオリコン演歌・歌謡曲ウィークリーチャートで初の第1位(!)となって以降、リリースしたシングルは同部門でそのすべてが第1位を獲得!


 2018年の大晦日(おおみそか)に放送された『第69回NHK紅白歌合戦』に、「純烈」は9枚目のシングル『プロポーズ』で初出場を果たしたのだ!


 ある意味では頂点に登り詰めたのにも関わらず、『紅白』の終了直後にも、「純烈」は本来のホームベースである関東圏内の「健康センター」をそのまま回り、深夜に待ちかまえていた大勢のファンに対して「凱旋(がいせん)ライブ」を行ったそうだ!
 これまで最も支えてくれた人々へのそうした配慮・姿勢こそが、「純烈」がその後も快進撃をつづけるに至った秘訣なのだろう。


*虚実ごちゃまぜで「純烈」をカッコよく描く!


 さて、本作は、


●スーパー戦隊や仮面ライダーの出身者が主演するのみならず、酒井氏が製作にあたって「僕らがかつて観ていた『電子戦隊デンジマン』(80年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20120205/p1)や『太陽戦隊サンバルカン』(81年)などのとてつもなく熱い部分を継承したい」と切望したこと
●後上氏が変身する純グリーンを、『電撃戦隊チェンジマン』(85年)のチェンジフェニックス以来、主に女形(めがた)のスーツアクターとして活躍してきた大ベテランの蜂須賀祐一(はちすか・ゆういち)氏
●白川氏が変身する純レッドを、『仮面ライダーリバイス』(21年)の仮面ライダーリバイや『仮面ライダーゼロワン』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200921/p1)の仮面ライダーゼロワンなど、近年の主人公ライダーを務める若手の縄田雄哉(なわた・ゆうや)氏
●スーパー戦隊『超新星フラッシュマン』(86年)から『天装戦隊ゴセイジャー』(10年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20130121/p1)に至る四半世紀に渡ってスーパー戦隊のアクション演出を手がけつづけた竹田道弘(たけだ・みちひろ)アクション監督が、実に10年ぶりに(!)戦隊に帰ってきたこと
●『地球戦隊ファイブマン』(90年)以来、スーパー戦隊・メタルヒーロー・仮面ライダーなど、東映ヒーロー作品の特撮を一手に担(にな)ってきた佛田洋(ぶつだ・ひろし)特撮監督が、特撮のみならず本編をも演出していること――佛田監督が戦隊の本編を演出するのは『特命戦隊ゴーバスターズ』(12年)以来だ――


 つまりキャストもスタッフもすべてが「本物」であって、バラエティ番組などによくある単なる「戦隊パロディ」のような安直な作りではないのだ。


 だが、本作に注目すべきところは決してそればかりではない。


 先述したようにムード歌謡コーラスグループ「純烈」の大きな特徴として、


●メンバー4名の内3名が元特撮ヒーロー役者であり、最年少の後上氏のみが特撮どころかそもそも演技が未経験だったこと
●グループ結成へと至ったのは、リーダーの酒井氏が「神」からの啓示を受けたこと(笑)
●結成からしばらくは苦難の道がつづいたが、健康センターやスーパー銭湯につめかけたオバチャンたちの大声援によって一躍メジャーな存在へと押し上げられたこと


 以上の3点があげられるのだ。


 本作で秀逸(しゅういつ)だと思えるのは、空想世界の戦隊ヒーロー「純烈ジャー」をカッコよく描くために、現実世界の歌謡グループ「純烈」の先述した大きな特徴をそのまま活(い)かすかたちで設定や物語が構築されていることだ。


 冒頭で「純烈」のメンバーがオープンセットのミニチュアのビル街に巨大化した姿で現れたと思いきや、同じミニチュアセットが背景に飾られた健康センターのステージで等身大の「純烈」が歌いだす描写が、本作の世界観を如実(にょじつ)に象徴している。


 本作に登場する「キャラクター」としての「純烈」を、「純烈ジャー」に変身する以外は現実世界に存在する「歌謡グループ」の「純烈」とほぼ変わらない姿で描いた作劇は、特撮ファンとしての視点・観点で捉えた場合にも地に足のついたリアルな印象が感じられたのは確かである。


 だが、その手法が用いられたのはスーパー戦隊や仮面ライダーの「まじめ」な視聴者・観客の目線以上に、やはり「純烈」の最大の支持層であるオバチャンたち、もとい熟女・マダムのみなさまを意識してのものだろう。


 いくらヒーロー作品だとはいえ、あまりにも浮き世離れした印象だけを観客に与えたら、「アタシたちの純烈」(爆)もどこかに行ってしまうのだ。着ぐるみ怪人や怪獣・合体巨大ロボの登場や、戦隊ファンしか喜ばないような楽屋オチなどをあえて排除した最大の理由は、まさにそこにあるのだろう。


 そんな印象をギリギリ回避するために、オバチャンたちの目線からしたらウソ・絵空事にすぎるヒーロー誕生・変身・スーパーメカ・必殺技などの要素に、現実世界の「純烈」の特徴を絶妙にブレンドすることで説得力を与えた本作の作劇は、特撮ファンへの内輪ウケだけにとどまらない、「純烈」最大の支持層をスクリーンに釘づけにすること必至の完成度の高さも感じられたのだ。


*空想と現実にまたがる最年少メンバーの成長物語!


 本作で実質的な主役となるのは「純烈」のメンバーの中で最年少であり、特撮ヒーロー作品、そして演技の経験が初となる後上氏だ。
 ふつうに考えれば、すでに特撮を経験済みの酒井氏・白川氏・小田井氏のいずれかが中心となるところだろうが、あえてそうではない後上氏を主役に据(す)えたこと自体がまず秀逸である。


 劇中の「純烈」は現実世界同様に、健康センターやスーパー銭湯でのライブステージでオバチャンたちの熱い視線・声援を浴びる歌謡グループとして描かれている。
 だが、酒井=純バイオレット・白川=純レッド・小田井=純ブルーの3名には実は温泉の平和を守る伝説の歌い人「純烈ジャー」としてのウラの顔があり、とある浴場で高齢の男性が変死した事件に遭遇したのを機に、彼らは唯一(ゆいいつ)、「純烈ジャー」ではない後上に知られないように、極秘に捜査活動を展開するのだ。


 先輩たちが自分には何も云わずに陰で謎の行動に出ていることに、蚊帳(かや)の外にされた後上は苦悩する……


 本作のパンフレット(東映ビデオ・2021年9月10日発行)掲載のインタビューによれば、後上氏は自身のみが特撮ヒーロー未経験の元・大学生――東京理科大学!――であることについて、健康センターのオバチャンたちには「カタカナのヒーローの名前」よりも「大学の名前」の方が覚えてもらえる(笑)と、特にコンプレックスとは感じなかったそうだ。


 ただ、活動当初のころは「みんなヒーローなんだよな、いいなぁ」などと思っていたそうであり、本作で「スーパー戦隊」の撮影現場に20年ぶりに戻ってきた酒井氏・白川氏・小田井氏がスタッフたちと久々の再会を果たして、昔話に花を咲かせていたのを見て、やはりうらやましかったと語っている。
 なにか現実のアイドルグループに実写映画やアニメの劇中内アイドルを演じさせるような作品(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200621/p1)にも見られるダブル・ミーニングな作劇なのだが(笑)、そんな「純烈」のメンバー間の微妙な距離感をそのまま活かすように務めた作劇によって、特撮作品そして演技自体が初体験であった氏の成長物語が名実ともに描かれたことで、「純烈」ファンのオバチャンたちの感情移入を高めるには絶大な威力を発揮したかと思えるのだ。


 詳細は後述するが、劇中の後上は「4番目の新戦士」=「純グリーン」への変身能力を得るに至った。


 本作では「グリーン=緑」が「未熟」を意味するとされており実際、英語では「幼い」「若い」「青二才」などの表現を果実が熟していない色である「green(グリーン)」と呼称する用法があるそうだ。


●『秘密戦隊ゴレンジャー』(75年)の最年少メンバー・明日香健二(あすか・けんじ)=ミドレンジャーから、
●近年の『騎士竜戦隊リュウソウジャー』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191102/p1)のトワ=リュウソウグリーン
●『魔進戦隊キラメイジャー』(20年)の速見瀬奈(はやみ・せな)=キラメイグリーンに至るまで、


スーパー戦隊によっては「緑」のメンバーが存在しない事例もあったが、たしかに「緑」は「若さ」を最大にイメージするキャラに割り振られてきた色だった。


 「緑」=「未熟」という、万国共通かもしれないイメージは「純烈ファン」のオバチャンのみならず、我々特撮ファンにも説得力をもって伝わることだろう。


 もっとも、『魔法戦隊マジレンジャー』(05年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20110228/p1)では、小津(おづ)家の長男・蒔人(まきと)=マジグリーンが「緑」だったが、序盤では三男で末っ子の魁(かい)=マジレッドと戦闘中に兄弟ゲンカ(汗)する場面があったので、その意味では「未熟」ということだったのかもしれない?(笑)


*おもしろカッコいい=「本家」にあふれる魅力がここでも!


 さて、先述したように現実世界に「純烈」が誕生したのは、リーダーの酒井氏が「神」の啓示(笑)を受けて、「内山田洋とクール・ファイブ」のようなグループを結成しようと思いついたのが発端(ほったん)だった。
 その「クール・ファイブ」のメインボーカルを務めて、近年はソロ活動が多い大物歌手・前川清氏(!)が、本作では「温泉の神」=「御前川清(おまえかわ・きよし)」(笑)を演じているのだ!


 「神」はあくまでウラの顔であり、御前川はふだんは温泉施設「御老公の湯」(笑)で売店の店長を務めている。、カウンターでガーガーいびきをかいて寝てみたり、商品の菓子を平気でつまみ食いしたり、女店員とイチャついてみたりと職務怠慢もはなはだしい(笑)――女店員を演じたのは、『帰ってきたウルトラマン』(71年)のヒロイン・坂田アキを演じたことで有名な榊原(さかきばら)るみ氏の実の娘・松下恵(まつした・めぐみ)氏だ!――。


 筆者のようなロートル世代には、前川氏といえばバラエティ番組『欽(きん)ちゃんのドンとやってみよう!』(75~80年・フジテレビ)でコメディアンの萩本欽一(はぎもと・きんいち)氏にイジられたのを機にお笑いの才能を発揮して以降、その裏番組だった『8時だョ! 全員集合』(69~85年・TBS)や『ドリフ大爆笑』(77~98年・フジテレビ)など、お笑いグループのザ・ドリフターズの冠番組にたびたびゲスト出演しては、そのすっとぼけたキャラでお茶の間をわかせてくれた姿が印象深いところだろう。


 前川氏も「神」役での出演とはいえ、現実世界での氏のキャラとほぼ変わらぬ役どころであり(笑)、やはりステージでの軽妙なトークでオバチャンたちを笑いの渦に包んでいる「純烈」と氏によるボケとツッコミの掛け合い漫才的なやりとりが実に楽しいのだ。
 日曜朝放映の本家・スーパー戦隊も、元祖『ゴレンジャー』の時代はともかく、昭和の末期~平成の初頭からすでにそんな作風になって久しい。コミカル色の強い演出もまた、違和感どころかむしろ「スーパー戦隊らしさ」を感じさせるほどだった(笑)。


 さらに、「温泉の向こう側」(笑)=「別の時空」(!)に存在する「悪」として登場する、敵組織の描写も好印象だった。


 自身の永遠の美しさを保つために全人類から「若返りエキス」を奪おうとたくらむ、大物演歌歌手・小林幸子氏(!)が演じる「女王フローデワルサ」!


 その配下として、フローデワルサ四天王(してんのう)――「風呂で悪さしてんの~」の語呂遊びネーミング(爆)――が「純烈ジャー」の前に立ちはだかる!


●ザウナ
●ゾープ
●ガラン
●ジャワー


と名前こそは風呂に由来するものが元ネタであり、しかも全員の額(ひたい)には温泉を表す地図記号の刺青(いれずみ)があるが(笑)、


●ザウナは怪力!
●ゾープは剣術!
●ガランは射撃!
●ジャワーは格闘!


と、「本家」の敵幹部でさえ近年ではあまり見られないような、各自の特性を明確に差別化しているのには目を惹(ひ)いた。


 また、先述したように若返りのために人類からエキスを奪うフローデワルサの作戦自体は、良い意味で笑ってしまうものがあるが、それを忠実に実行する四天王は近年では珍しいほどに非情に徹した凶悪・凶暴な集団として描かれており、このバランス感覚の良さも「本家」ゆずりのものだろう。


 この四天王を演じた役者たちも、まるで「純烈」に合わせたかのように


●ザウナ役は、『仮面ライダーOOO(オーズ)』(10年)の伊達明(だて・あきら)=仮面ライダーバースや、オリジナルビデオ作品『宇宙刑事シャイダー NEXT GENERATION(ネクスト・ジェネレーション)』(14年・東映ビデオ)の烏丸舟(からすま・しゅう)=二代目宇宙刑事シャイダーなどを演じた岩永洋昭(いわなが・ひろあき)氏
●ゾープ役は、『仮面ライダー鎧武(ガイム)』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20140303/p1)の初期に登場した悲劇的キャラ・初瀬亮二(はせ・りょうじ!)=仮面ライダー黒影を演じた白又敦(しらまた・あつし)氏
●ガラン役は、『ウルトラマンX(エックス)』(15年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200405/p1)の防衛組織・Xio(ジオ)の隊員・貴島ハヤト(きしま・はやと)や、『仮面ライダーエグゼイド』(16年)の花家大我(はなや・たいが)=仮面ライダースナイプを演じた松本享恭(まつもと・うきょう)氏


と、4名中3名が特撮経験者であるのには注目せずにはいられない。先述した作品群では正義側・主人公側を演じることが多かった諸氏の徹底した悪役ぶりも大きな見どころのひとつだろう。


 なお、白川氏がかつて出演した『忍風戦隊ハリケンジャー』で尾藤吼太(びとう・こうた)=ハリケンイエローを演じた山本康平(やまもと・こうへい)氏も、「御老公の湯」に勤める垢(あか)すり職人であり、御前川の正体を知る三井康助(みつい・こうすけ)役で出演している。


*オバチャンたちの疑似体験としてのヒーロー誕生・変身・バトル!


 さて、本作最大のキモかと思えたのは、先述したムード歌謡コーラスグループ「純烈」の特徴のひとつである「オバチャンたちの熱狂によってメジャーな存在に押し上げられた」を、「純烈ジャー」の誕生・変身・バトルなどに絶妙に取り入れることでオバチャンたちの「願望」を実現させ、感情移入を大きくさせていることである。


 「純烈ジャー」の変身システムは、「純烈」が「純烈マイクチェンジャー」で「ラブユーチェンジ! カモン!!」と叫ぶことで、「神の湯」の女神たちであるアフロディーテならぬオフロディーテ(笑)が召還され、「純烈」と「合体変身」(!)をとげるかたちとなっている。


 これはまさに、


●『ウルトラマンA(エース)』(72年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20070429/p1)のダブル主人公で防衛組織・TAC(タック)の隊員・北斗星司(ほくと・せいじ)と南夕子
●『超人バロム・1(ワン)』(72年)のダブル主人公でガキ大将の木戸猛(きど・たけし)と優等生の白鳥健太郎(しらとり・けんたろう)


などの「合体変身」を彷彿とさせるものだ。


 いや、「合体変身」のビジュアル自体は、『A』や『バロム・1』をはるかに超越しており、各メンバーと降臨してきたオフロディーテが抱きしめあいながらグルグルと回って「純烈ジャー」に変身する(爆)。


 実際、戦闘中にオフロディーテは「背後に怪しい気配を感じる」と危険を知らせたり、「ハウリング攻撃(笑)を使うのよ!」などと有効な戦術を教えてくれたり、かと思えば敵であるザウナの逆三角形型のマッチョ体型に大喜びしたりするのだ(笑)。


 「ふたりでひとり」による変身やバトルは、オバチャンたちそれぞれのお好みのメンバーと「ひとつ」になれる疑似体験とでもいうべきであり、これ以上に感情移入を呼び覚ますものはないだろう。


 後上に先行して酒井・白川・小田井がそれぞれのオフロディーテと出会った際の回想場面が、それを強烈に象徴する。


●公園のベンチでくつろいでいた白川を、健康センターの寝間着(ねまき)みたいな赤い衣装を来たショートカットのオバチャンがすべり台から降りてきて背後からいきなり抱きしめてみたり
●映画を観ていた酒井に、山盛りのポップコーンをトレーに乗せたハワイアンみたいな紫のムームーを着たソバージュ髪のオバチャンが近づき、ポップコーンをひっくり返しながら酒井の隣の席をゲットしてもたれかかってみたり
●神社にお参りしていた小田井のもとに、色白で髪を束ねた青い巫女(みこ)姿のオバチャンが現れて鬼ごっこをしてみたり


 もうみんなが満面の笑(え)み(爆)。


 このオフロディーテを演じた女優たちも、「紫のオフロディーテ」役のしのへけい子氏は、『仮面ライダーフォーゼ』(11年)でゴス少女・野座間友子(のざま・ともこ)の母を演じたほか、近年の仮面ライダーやスーパー戦隊にたびたびゲスト出演しており、「赤のオフロディーテ」役のふせえり氏は、東映不思議コメディーシリーズ『有言実行三姉妹シュシュトリアン』(93年・東映 フジテレビ)で「怪猫(かいびょう)黒猫」を演じた過去があったりする。


 個人的に少々驚いたのは「青のオフロディーテ」を演じたのが、1971年度ミス・パシフィック日本代表に選ばれたほどの美貌を誇り、1970年代から1980年代にかけての東映劇場映画や数多くのテレビドラマで主に悪女役が多かった中島ゆたか氏であることだ。
 モロにコメディエンヌという感じのふせ氏やしのへ氏とは対照的に、今なお神々(こうごう)しいまでのお姿を保つ中島氏に個人的には数十年ぶりにお目にかかったため、おもわず手を合わせて拝(おが)まずにはいられなかったものだ(笑)。


 後上だけが「純烈ジャー」でないのは、その「オフロディーテ」と契(ちぎ)りをかわしていないからと語られたことで焦(あせ)りを感じた後上。彼は黒ミサ風の衣装に身を包んだ黒髪ロングヘアの若い女占い師で額に緑の宝石をつけた桶川アリサ(おけがわ・ありさ)――実は後上の若いエキスを狙うフローデワルサの変身した姿!――を「運命の人」と思いこんだ末に一味にとらわれてしまう!


 このひとりだけ出遅れた感を与える作劇は、筆者のようなオタクにはアニメーション製作の舞台裏を描いた深夜アニメ『SHIROBAKO(シロバコ)』(14年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20160103/p1)で高校時代に所属していたアニメーション同好会のメンバーたちがアニメ製作にたずさわる夢を次々と実現する中で、人気声優として活躍する夢になかなか届かないで鬱々と劣等感の中で過ごしている主要女性キャラ・坂木しずかに集まった、視聴者たちの同情などを思い出すが、それはともかく、これまた観客の感情移入を集めるには打ってつけの手法だろう。


 そして、後上の「運命の人」となるのは、高校生当時にワルだった後上を常日頃、叱(しか)りつけていた担任教師であり、詳細は省くがオレのせいで先生は結婚指輪を校舎の屋上から投げ捨てて、教師を辞職するに至ったのだ! と、後上のトラウマの相手ともなっている天地星子(あまち・せいこ)であった!


 現在、星子は第一の事件の発生現場となった「御老公の湯」で清掃員として勤めているのだが、15年ぶりに再会したその「因縁(いんねん)」の相手に対する後上の発言・態度が星子を再び退職へと追いこんでしまう! そのことで、後上がいまだに「未熟」であり、オフロディーテとの契り以前に「純烈ジャー」の資格がないとして描いているのがまた秀逸なのだ。


 母校の近所の川で、星子が15年前に投げ捨てた指輪を発見し(笑)、地方の田園風景を傷心してトボトボ歩きつづける星子に追いついた後上は、これまでの非礼を詫びて、星子の指に「緑」の宝石が付いたあの指輪をハメてあげるのだ……


 この年増女の秘かな願望・ロマンス描写を描いた一連で、「純烈」の楽曲『プロポーズ』を延々と流すことで、後上と星子の「契り」を描いていく演出も心憎い。しかしこの場面が、ふたりが田んぼの中の農道で向き合っているのに、その背景にある丘を建設資材を積んだトラックの群れが走るなど、「超現実的」で「非日常的」なシーンとして撮られている映像にも目を惹かれるのだ。
 後上が星子の指に指輪をハメるや、舞台が「御老公の湯」の秘密の入り口からしか入ることができない、小さなステージの背景に富士山の書き割り(笑)がポツンとある異空間「神の湯」へと瞬時に移って、星子がニューヨーク――「入浴」の語呂遊びだろう(爆)――にある「自由の女神」をモチーフにしたとしか思えない姿(笑)へと変わる、「非日常」との対比が充分に機能するからだ。


 後上が「神」から「緑」のマイクチェンジャーを手渡され、ようやく「純烈ジャー」の一員に任命されるに至るまでの過程は、「本家」のスーパー戦隊とも同様に、後上と星子の心の変遷・関係性の変化が実に細やかに描かれており、フザケているようでも新ヒーロー・純グリーンの誕生には観客たちの涙を誘わずにはいられない、本作の高いドラマ性の象徴なのだ!


 星子=「緑のオフロディーテ」を演じた小林綾子(こばやし・あやこ)氏といえば、なんといっても最高視聴率が62.9%(!!)を記録し、ビデオリサーチの統計史上テレビドラマの最高記録をいまだに誇るほどに大ヒットしたNHKの連続テレビ小説『おしん』(83年・NHK)の主人公・谷村しんの少女時代を演じたのが世間では最も広く知られているところだ。
 だが、幼少のころから東映児童演技研修所に所属していた氏は、それ以前に『(新)仮面ライダー』(79年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210102/p1)第14話『ハエジゴクジン 仮面ライダー危機一髪』と第22話『コゴエンスキー 東京冷凍5秒前』、『太陽戦隊サンバルカン』第1話『北極の機械帝国』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20120206/p1)などのゲスト出演で、すでに「仮面ライダ」ーも「スーパー戦隊」も経験済みであって、まさに「純烈」の大先輩にあたるのだ!
 その意味では、そんな由緒もある小林氏が後上氏の相手役としてキャスティングされたのは極めて妥当といえるだろう(笑)。


 さらに、クライマックスバトルではオバチャンのみならず、日本国民全員(爆)が狂喜すること必至の展開が用意されている。


 小林幸子氏がデビュー以来、10数年にもおよぶ苦節からようやく脱したほどに大ヒットした『おもいで酒』(79年)が流れる中で、四天王の命を得たフローデワルサは「純烈ジャー」の前でグングン巨大化し、その背中にはキラキラと輝く幾重(いくえ)もの羽根が広がっていく!


 フローデワルサが「『おもいで酒』を歌いながら巨大化する」とのアイデアは、佛田監督が完成台本に書き足して小林氏の事務所に送ったのだそうだ(笑)。


 ある程度の年齢が上の人ならご存じの方も多いと思うが、小林氏といえば「純烈」が目標にしていた『NHK紅白歌合戦』で1990年代から2000年代にかけて、超豪華な衣装と大型舞台装置を融合させたステージで歌を披露していた。
 あの大がかりな仕掛けによる「見せもの」こそが、観客をアッといわせる意味ではまさに「特撮」に通じる魅力にあふれるものではなかったか!?


 本作は「特撮」が本業である佛田監督作品としては、予算的にも「特撮」が占める比重は少なめだ。しかし、そのクライマックスとして、小林氏が実際に『紅白』で使用した衣装を組み合わせて、往年のステージを「特撮」で再現した演出には、観客の多数が「純烈」ファンの「オバチャンたち」であることからすれば、巨大怪獣や巨大ロボットが登場してはシラケてしまっただろうから、ここでのラスボス表現も大成功ではあっただろう!


 ちなみに、小林氏が「小林さち子」の名義で、『キカイダー01(ゼロワン)』(73年・東映 NET→現テレビ朝日)第35話『振袖(ふりそで)娘ビジンダー地獄絵巻』にゲスト出演したことは、年長の特撮マニア間では知られている。
 しかし、氏は少女歌手としてデビュー以来元々役者活動も行っており、オリンピックをめざす水泳選手が主人公の青春ドラマ『青い太陽』(68年・東映 NET)では主演まで務めて、主題歌も歌唱していたそうだ。


 特撮変身ヒーロー作品とは異なり、東映はこういった作品の映像ソフト化や配信に消極的であるために、筆者も鑑賞したことがないのだが、これもまたリマスターするにも高額の金銭がかかるし、ニーズも少ないと見込まれているからだろう。
 ウワサではカネ勘定に厳しい東映では金銭がかかってしまう旧作フィルムのリマスターには消極的であるようだし、そこにこだわっている社員もごく少数であるようだ。しかし、小林幸子ほどの大物が出演していた作品であれば…… 映画会社の社員であっても特撮マニアや古い日本映画のマニアだとはかぎらないので、そんな作品が埋もれていることを知らない社員の方が多いのだろうな(汗)。


 フローデワルサの各種光線攻撃によって「純烈ジャー」は莫大な量のナパームの炎に包まれて、その変身が解除されてしまう!――ちなみに、ラストバトルの舞台は採石場で、予算的にもミニチュアセットなどは一切なかった(笑)――


 ここで赤・青・紫・緑の「オフロディーテ」が、


「自分たちだけで戦ってると思わないで!」


などと叫んで、「純烈」には全国の大勢のファンがついていることを示唆(しさ)するのだ!


 舞台は一転して健康センターのステージとなり(笑)、『勇気のペンライト』を熱唱する「純烈」に、大勢のオバチャンたちがペンライトを手に大声援を贈る!


 これはかの女児向けアニメ『プリキュア』シリーズ(04年~・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20040406/p1)の劇場版(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191108/p1)などに見られるように、観客の子供たちがペンライトを振るとピンチだったプリキュアが立ち上がる定番演出から佛田監督が発想したそうだ。


 思えば筆者が幼かったころにも、ライブステージの公開収録という異色の形式で放映された変身ヒーロー作品『突撃! ヒューマン!!』(72年・ユニオン映画、モ・ブル 日本テレビ)で、観客が「ヒューマン・サイン」なる紙製の円盤を指にハメていっせいにクルクル回すや、ピンチだった主人公がヒューマンに変身可能となる演出がすでにあったものだ。


 筆者も当時、小学館の学習雑誌の付録についてた「ヒューマン・サイン」を自宅のテレビの前でクルクル回したものだが(笑)、こうした演出こそ観客・視聴者が劇中の主人公との一体感を最も得られるところだろう。
 本作はアイドル映画・アイドルアニメのように要所要所で「ミュージカル」風の演出が見られるが、ラストバトルに挿入された『勇気のペンライト』のステージこそ、オバチャンたちが現実と空想の垣根を超え、「純烈」とともに戦う疑似体験を存分に味わうための道しるべとして機能しているのだ!


「みんなの力をひとつに!」


 少年バトル漫画やスーパー戦隊では定番のセリフだが、全国何百万人(?)の「純烈」ファンにとっては共感すること必至なのだ。


 「勇気のペンライト」を受けて再び変身した「純烈ジャー」は、みんなの力を「スーパー銭湯機・純烈026号」に集めて、等身大の姿のままで超巨大でキラびやかな剣に変形させて、全長何百メートル(!)にも巨大化したフローデワルサをブッた斬る!!


 その役目を合体巨大ロボではなく、等身大の「純烈ジャー」自身とした佛田監督の演出意図は、もはや記すまでもないだろう。


 オバチャンたちでも楽しめる特撮映画・変身ヒーロー作品という新たなジャンル・ファン層を開拓した『スーパー戦闘 純烈ジャー』の功績は、個人的には決して小さくはないと考える。私事で恐縮だが、劇場で販売されていた「純烈」全員のビジュアルがデザインされた抗菌マスクケースを実家の母に送ったら大喜びされたくらいだから(笑)。


 そうなのだ。スーパー戦隊シリーズは昭和の末期~平成の初頭に「ユルさ」と「王道」を見事に両立させた理想的な「子供番組」としての作風を確立させている。ここにヒントがあるのだ。
 逆転の発想で、「別のジャンル」と「特撮ジャンル」を接合させて、「起承転結」がハッキリとした読後感もよい「勧善懲悪」のカタルシスを有する、気持ちの良いエンタメ作品を製作していくことこそが肝要なのだ。


 リーダーの酒井氏も語っているが、「ユルさ」と「王道」を両立させた『純烈ジャー』の続編や、そのような作品を継続して製作していくこと。アメリカであれば滅びてしまった西部劇映画、日本でもその存亡が危うい時代劇などのようにはさせないためにも、少子化が深刻化する未来に向けて「スーパー戦隊」、どころか「特撮」ジャンルそれ自体の存続を確かなものとする、あるいは日本にキチンとした「娯楽活劇」作品を定着させるための、ひとつの重要なカギとなるのではあるまいか!?

2021.10.3.


(了)
(初出・当該ブログ記事)


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スーパー戦闘 純烈ジャー

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  • アーティスト:純烈
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(東映系・2021年2月20日(土)公開)
(文・久保達也)
(2021年3月5日脱稿)


 前年2020年度の『スーパー戦隊MOVIE(ムービー)パーティー』内の2本立ての1本として上映された映画『魔進戦隊キラメイジャー エピソードZERO(ゼロ)』(20年・東映・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200322/p1)は、同年3月から放映が開始されるテレビシリーズ『魔進戦隊キラメイジャー』(20年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200712/p1)に先立って、たとえ後付けで製作されたのだとしても、前日譚(ぜんじつたん)というよりかは実質的な「第1話」といっても差し支えのない作品に仕上がっていた。
 これに対して、2021年3月7日(日)に放映開始となる『機界戦隊ゼンカイジャー』(21年)に先だって公開された本作は、公開初日舞台あいさつでのキャストたちによれば、テレビシリーズの「第7話ごろ」の話だということだ。


 おそらく当初は『赤い戦い! オール戦隊大集会!!』も、本来ならば前作の映画『エピソードZERO』を踏襲するかたちで実質的な「第1話」や「前日譚」として製作して、映画を観に来た子供たちを現行の『魔進戦隊キラメイジャー』で卒業させずに、次回作『機界戦隊ゼンカイジャー』へと誘導するつもりだったのかもしれない。
 だが、本作が公開された2021年2月20日(土)は実際にも第2回目の「緊急事態宣言発令」の真っ只中(まっただなか)になってしまったように、もしも本作を「第1話」的な作品として製作して万が一、公開が延期にでもなったりすれば、それこそテレビシリーズの『ゼンカイジャー』第1話とは少々の不整合や不自然さが発生してしまった可能性もあっただろう。


 加えて、第1話よりも前の前日譚として製作されたエピソードが、テレビシリーズの第1話よりもあとに映画で公開された場合に、小学生はともかく幼児であれば「回想シーン」や「前日譚」といった時系列をさかのぼった作劇を理解ができずに、今現在での出来事だとして混乱してしまうような子供たちも相応にはいることだろう。
 往年の『仮面ライダーストロンガー』(75年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20201231/p1)第2話では、第1話では描かれなかった主人公青年・城茂(じょう・しげる)がどのような経緯で仮面ライダーストロンガーになったのか、といった過去の回想が描かれていた。しかし、当時まだ幼児や小学校低学年であった世代人には「第1話と第2話が間違って逆に放映されてしまったのだろうか?」と不審に思ったという声を複数名から聞いたことがあるのだ(笑)。
――幼児の時分ですでにマニア予備軍であった我々特撮オタク諸氏には、「回想」や「前日譚」を今現在の出来事だと誤認してしまうようなリテラシー(読解能力)の低い子供は少なかったかもしれない。しかし、それは決してホメ言葉ではない。フィクション・非現実に対するリテラシーの高い子供ほど、現実世界で生きていくことが苦手なタイプが多かったりもするものなので(汗)――


 加えて、本作『オール戦隊大集会!!』を「『ゼンカイジャー』第7話ごろ」の話としたのは、仮に公開が延期になったとしても、ゴールデンウィークあたりの時期の延期公開であればちょうどよくなるし、さらに初夏以降の公開になったとしても、今現在を舞台とした作品として観てもらっても支障がないだろうという保険的な高等計算なども働いていたのかもしれない(笑)。


 ところで、80年代中盤のスーパー戦隊シリーズはリーダーの戦隊レッドだけがドラマ性を持っていて、あとの戦隊メンバーはオマケといった感もあったものだ(汗)。90年代以降になるとさすがにそういうこともなくなってくる。シリーズの序盤では週替わりの各話で各メンバーにスポットを当てて、リーダーとなる主人公青年との対立・和解などが描かれて、5人のメンバーが次第にチームとしての結束力を固めていくさまを描くのが定番の流れとなってきたのだ。


 本作『オール戦隊大集会!!』の冒頭で描かれるバトルでは、ゼンカイジャーが「仲間」としてのチームワークの良さを存分に披露している。街の人々が「ゼンカイジャ~~!!」などと声援を送る描写で、彼らが地球ではすでに周知がなされたヒロイックな頼もしい存在となっていることも示されている。
 本作が「第7話ごろ」のエピソードだというのは、スーパー戦隊シリーズの時間軸としては、細かい設定説明や登場人物説明も不要となる、実に作劇的にも都合がよい時期を舞台とするためなのだろう(笑)。


 なので、本作『オール戦隊大集会!!』は前年度の『キラメイジャー エピソードZERO』のような物語の発端(ほったん)となる事件や細かな設定紹介などは描かれてはいない。
 『ゼンカイジャー』とはトータルでいったいどのような作品であるのか? 通常編はどのようなノリであるのか? その作風・雰囲気を観客に事前に周知・広報してテレビシリーズに誘致するための、いわば「お試し視聴」版としての趣が強いのだ。


アニバーサリー作品なのに、「原点回帰」「王道復古」ではなく、「明朗」でも思いっきりの「変化球」!


 さて、2021年は仮面ライダー50周年・ウルトラマン55周年ということで、特撮マニア界隈(かいわい)も一応は盛り上がっていることと思う。
 スーパー戦隊シリーズも『機界戦隊ゼンカイジャー』で第45作目となり、日本を代表する特撮ヒーローのメモリアルイヤーが、5年ごとの恒例行事だとはいえ見事に重なっているのだ。
――個人的には各シリーズのメモリアルイヤーはバラけていた方が、各シリーズごとに目立ててよかったのに…… とも思うのだけど、こればかりは時計の針を戻せない以上は致し方(いたしかた)がないところだ(笑)――



 機界戦隊ゼンカイジャーのリーダーであるゼンカイザーの頭部にそびえる金色の大きなアンテナは「スーパー戦隊シリーズ」のロゴの背景にデザインされたローマ数字で「5」を意味する「Ⅴ」がモチーフであり、その額(ひたい)には「45」の数字がモールドされており、まさに『ゼンカイジャー』がメモリアル作品であることを象徴するデザインとなっている。


 ただし、ゼンカイザーのデザインを最初に見て、「コレ、仮面ライダーやろ!」とツッコミを入れたのは決して筆者だけではないだろう(笑)。
 両眼が青であり体色は白を基調とした全身に赤のラインが走るデザインには、『仮面ライダードライブ』(14年)の2号ライダー・仮面ライダーマッハを彷彿とした人も多かったのではなかったか?
 まぁ、それ以前に今回のクライマックスで登場した、スーパー戦隊の記念すべき第1作『秘密戦隊ゴレンジャー』(75年)のリーダー・アカレンジャーのごとく、


「おまえ、赤じゃないのか!?」


などと唖然(あぜん)とした人の方が圧倒的に多かったことだろうが(笑)。


 だから、筆者のように昭和からいる古い特撮マニアや歳若くてもスーパー戦隊マニアの諸氏であれば、白地に赤のみならず青・黄・緑・ピンクのラインが添えられたデザインに、スーパー戦隊シリーズ第2作『ジャッカー電撃隊』(77年)のシリーズ後半で加入して新たなリーダーとなった白いヒーロー・ビッグワンを連想した人もいたかもしれない。
 だが、両目を中央でつなげたようなゴーグル部分、背中でマントを翻(ひるがえ)すデザインは、まぎれもなく『秘密戦隊ゴレンジャー』のアカレンジャーがモチーフなのだ! そして、往年の戦隊ヒーローを模していたのは彼だけではなかった!


・赤いヒーローであるゼンカイジュランは『恐竜戦隊ジュウレンジャー』(92年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20120220/p1)の合体巨大ロボ・大獣神(ダイジュウジン)がモチーフであり(!)、額の番号は『ジュウレンジャー』がスーパー戦隊第16作目であることを象徴する「16」
・黄色いヒーローであるゼンカイガオーンは『百獣戦隊ガオレンジャー』(01年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20011113/p1)の合体巨大ロボ・ガオキングがモチーフで(!)、額番号は『ガオレンジャー』が第25作であることを示す「25」
・ピンクのヒロインであるゼンカイマジーヌは『魔法戦隊マジレンジャー』(05年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20110228/p1)の合体巨大ロボ・マジキングがモチーフ(!)で、額番号は『マジレンジャー』の第29作と同じ「29」
・青いヒーローであるゼンカイブルーンは『轟轟(ごうごう)戦隊ボウケンジャー』(06年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20070108/p1)の合体巨大ロボ・ダイボウケンをモチーフにした(!)、額番号は『ボウケンジャー』が第30作なのと同じで「30」


 5人全員が往年のレジェンド戦隊をモチーフとしたデザインなのは、「メモリアル作品」としてのスタッフの本気度がうかがえるというものだ!


 ただ、それにしても、ゼンカイザー以外の4人が歴代レジェンド戦隊をモチーフとするも、等身大の戦隊ヒーロー&ヒロインではあるのに皆が巨大ロボとしか云いようのないデザインであることには誰もが驚いたことだろう。
 だが、こんなにゴテゴテとした造形で戦闘員たちを相手に動けるのか!? と半信半疑の観客に対して、冒頭のバトル場面は「お試し視聴」としての役割を充分に果たせたのではなかったか?
 素材の軽量化や見た目は硬質そうでも実は軟質な素材といった技術的な進歩もあったのだろうが一見、動きにくそうなゴテゴテのスーツをもスピーディにアクロバティックに動かしてしまうほどの、スーツアクター&アクトレスの身体能力の高さを存分に目にすることとなったのだから!


 とはいえ、『手裏剣(しゅりけん)戦隊ニンニンジャー』(15年)のオトモ忍(笑)として登場した忍者型巨大ロボのシノビマルやロデオマル、古いところでは『救急戦隊ゴーゴーファイブ』(99年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/19991103/p1)の3号ロボ・ライナーボーイなど、メインとなる合体巨大ロボよりもひとまわりほど小さい巨大ロボが、ミニチュアセットのビルの屋上から飛び降りて、宙返りをしてから巨大化怪人にキックを見舞ってみせる! などといったカッコいい描写を、我々はここ20年強ほどでも何度も目にしてきたのだ。
 それらを思えば、着ぐるみの中で高下駄を履かせて、硬質な素材で実に動きにくそうにしていた初期スーパー戦隊シリーズの巨大ロボットたちとは異なり(笑)、ロボット型のスーツでもアクションには致命的な支障がないことはすでに実証済みなのであり、舞台が特撮スタジオのミニチュアセットから屋外のロケ現場に移っただけのことではあるまいか?


 既存のレオタードスーツ型のリーダーヒーローであるゼンカイザー以外のゼンカイジャーたちが一見は戦隊ヒーロー&ヒロインらしからぬ巨大ロボのようなデザインであることは、この姿に変身する前の彼ら自身もまた人間ではなく、キカイノイドなる機械生命体であったからだ…… って「メモリアル作品」なのに「王道」ではなくエラい「変化球」を投げてきたものである(笑)。


 とはいえ、実はこれとて前例がないワケではない。近年でも最終的には総勢12人(!)の戦隊ヒーローが登場した『宇宙戦隊キュウレンジャー』(17年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20180310/p1)では、オオカミ型の獣人・ガル=オオカミブルー、金色のロボット・バランス=テンビンゴールド、猛牛型ロボット・チャンプ=オウシブラック、女性型アンドロイド・ラプター283=ワシピンク、竜の頭をした宇宙人のショウ・ロンポー=リュウ・コマンダーなど、異形の宇宙人と地球人とが半々の混成スーパー戦隊だったからだ。
 また、その前作『動物戦隊ジュウオウジャー』(16年)でも、風切大和(かざきり・やまと)=ジュウオウイーグル以外のジュウオウジャーの4人のメンバーは異世界・ジューランドの出身であり、顔は動物だが人間のような衣装を着て二足歩行する獣人・ジューマンとして描かれていたのだ。ただそうはいっても、実際にはジューマンは人間態としての姿を採っていることが圧倒的に多かったのだが。


人間態がない着ぐるみ戦隊メンバーに想う、戦隊イケメン役者人気の40年史!


 『ゼンカイジャー』の戦隊メンバーであるキカイノイドたちは、変身前の姿もまたややスマートな機械人間たちであって、若手役者が演じるような人間態にはならないようであり、リーダーの五色田介人(ごしきだ・かいと)=ゼンカイザーのみが人間の姿であとは全員が着ぐるみスーツのキャラだというのには……
 ウ~ン、筆者のようなロートル(オールド)世代からすると、コレは正直かなりビミョーで危険な賭けをしているような気もしてくるのだ(汗)。


 いや、『キュウレンジャー』の宇宙人戦士たちや『キラメイジャー』の魔進、『炎神戦隊ゴーオンジャー』(08年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20080824/p1)の炎神(エンジン)や『爆竜戦隊アバレンジャー』(03年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20110613/p1)の爆竜、はたまた『特命戦隊ゴーバスターズ』(12年)の相棒ロボット・バディロイドなど、たとえ姿は人間ではない宇宙人や機械生命体ではあっても、声優・スーツアクター・CG担当者のコラボによる表情演技・仕草・ボディーランゲージ・口調などによって、見事に生命を吹きこまれた彼らによる「人間ドラマ」に、我々は時には涙するほどに感動させられてきたのだ。
 その実績からすれば、着ぐるみキャラのみでも彼らの関係性や心の変遷(へんせん)を描いてみせる群像劇は立派に成立するハズだと、この点では個人的にはまったく不安を抱いてはいない。


 ただ、スーパー戦隊シリーズば、『ゴジラ』シリーズや『ウルトラマン』シリーズといった古典タイトルと比べれば、70年代末期にはじまったマニア向け出版物のラッシュの時代においてはまったく顧みられることがなく、それらと比すれば一段も二段も低いものとしてマニア間では扱われてきたものだ。
 1980年に創刊された今は亡き朝日ソノラマ社の特撮情報誌『宇宙船』でも、初期の号では基本的にはスーパー戦隊作品はほぼ紹介や言及などもなされていなかった。
 しかし、往時なりに世代交代が進んで、『秘密戦隊ゴレンジャー』世代が成長して中高生や成人などの年齢に達してくる80年代中盤になると、彼らの一部がスーパー戦隊シリーズを卒業できずに鑑賞しつづけているという事態が、次第に可視化されるようになってきたのだ(笑)。


 『大(だい)戦隊ゴーグルファイブ』(82年)のゴーグルピンクこと変身前も可憐で弱そうな桃園ミキ(ももぞの・みき)や『科学戦隊ダイナマン』(83年)のダイナピンクこと立花レイ(たちばな・れい)が年長戦隊マニア間でも人気を集めて、同時期の『宇宙刑事シャイダー』(84年)に登場していた顔出しの女宇宙刑事アニー人気とも連動して、『宇宙船』誌でも表紙のモデルを務めたりカラーグラビアが掲載されたり、東映ヒロイン専門の大判の写真集なども発行がなされる。つまり、戦隊ヒロインにも執着している男性マニアがここで商業誌レベルで可視化もされたのだ。


 スーパー戦隊シリーズ『超電子バイオマン』(84年)や『電撃戦隊チェンジマン』(85年)の時期になると、スーパー戦隊シリーズは「作品紹介」としても誌面を飾るようになってきた。


 そして、読者投稿欄の作品感想・イラスト投稿・文通希望欄などでも、今で云うイケメン役者の男優、戦隊ヒーローの変身前も顔出しで演じている当時のJAC(ジャック。ジャパンアクションクラブ)の若手ホープたちにも熱い声援を送っている女性ファンたちも、少なからず存在することが可視化されていくのだ――といっても、20歳以上の女性戦隊マニアはまだ存在していないような時代なので、基本的にはまだ中高生であって、今で云うオタク女子たちの元祖であった――。


 ただし、筆者も含む当時の男性戦隊マニア層は、自身たちが戦隊ピンクなどに秘かに傾倒しているのに、あくまでもファン活動とは「作品批評」をメインとするべきなのであって、役者に対するミーハー的な関心を邪道のものとして見る風潮も強かったのだけど(汗)。
 女性マニア層や子供たちのママ層の間での人気も含めた総合的なものとして、作品を評価するような流儀が一般化してくるのは、はるか後年の21世紀以降のことであった。


 こうした女性特撮ファン・女性東映ヒーローファンの存在は、主にスーパー戦隊シリーズを中心に途切れることはなかった。
 常に下の世代の女性ファンが補充されていき、そういった女性向けのイラストエッセイや短編バロディー漫画中心の同人誌なども隆盛を極めていくのだ。
――云っておくと、90年代のむかしから特撮批評・感想系同人誌のサークルの数は実は少なくて、女性向けの同人誌サークルの数の方が桁違いに多かったのだ(笑)――


 こうした水面下での主に女性オタク層による特撮変身ヒーロー人気やそれらを演じる役者さん人気は、絵を描けたり文が書けたりするというハードルを超えることができるようなマニア気質の人種であれば、当時のマニア雑誌の同人誌紹介欄での通信販売や文通希望欄などを通じて、サークル的な交流も生み出していった。
 00年前後になると、急速にインターネットが普及する。ネット上に新たに出現したファンの交流サイトや掲示板なども通じて、もちろん一般ピープル寄りではあるのだが、マニア・オタク的な感性も持っている女性層や主婦層たちが、特撮変身ヒーロー作品や役者さんたちに熱烈にハマっていたり、強く支持をしている様子なども今度はもっと大きく可視化されて、3大新聞や各種マスコミなどでも取り上げられて、ムーブメントとしても社会に認知されるようになっていく。


 それが『仮面ライダーアギト』(01年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20011108/p1)や『百獣戦隊ガオレンジャー』(00年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20110613/p1)の前後に起きたイケメンヒーローブームなのであった。
 旧態依然の特撮マニア諸氏はこのブームを快くは思わなかったようだが(汗)、これによって特撮ブームは一気に加熱して、世間にもヒーロー俳優の存在を広く知らしめることとなっていく。以降は特撮ヒーロー出身の役者さんたちが番組終了後に一般のテレビドラマにも続々と主役級で出演できるようになって、往時とは比較にならないくらいに特撮ジャンルのステータスも上がっていったのだ。


 あのブームからでも2021年時点で、早くも20年が経ってしまったが……(遠い目)


 その当時と比べればやや沈静化はしているもの、たとえば東京ドーム・シアターG(ジー)ロッソで開催されているスーパー戦隊アトラクションショーでは、各作のシリーズも終盤に至った時期になると、テレビシリーズのキャストたちが出演する公演がもう30年近くも継続している。
――Gロッソの前代・スカイシアターよりも前の前身である後楽園ゆうえんち野外劇場に、『恐竜戦隊ジュウレンジャー』(92年)で途中加入した緑色の6人目の戦士・ドラゴンレンジャーの変身前であるブライが登場したことがおそらく初出である――


 『百獣戦隊ガオレンジャー』(01年)以降はテレビシリーズ終了直後に全国各地を公演していくキャスト総出演の『ファイナルライブツアー』もはじまって、今も隆盛を極めている。
――放映終了後のイベント自体は、規模ははかるかに小さかったもののイベント会社に在籍しているらしい特撮マニア有志によって、これもまた『恐竜戦隊ジュウレンジャー』以降は、公民館の壇上などでのキャストによる着席トーク中心の『フェアウェル・パーティー(送別会)』の名義で、やはりマニア雑誌の文通・情報欄などで告知・募集をするかたちで開催がはじまって、その事後レポートが白黒ページの小さな小さなベタ記事で『宇宙船』誌などでも紹介されていたことがあった(特撮同人誌まで含めれば、大々的なレポート記事などはあった)――


 今でも作品自体や変身後のヒーローはもちろんのこと、それぞれの変身前である「推(お)し」の若手役者たちを実際に見てみたい、あるいは会ってみることを楽しみにしている年長マニア層は増えている。
 こうした感性が自分だけではないと知って勇気づけられたり、その気持ちが高じて5年10年15年と継続して参加しているようなアクティブな特撮マニアたちも大量に存在している。そこで同好の友人を見つけたり、サークル的な交流を長年にわたって継続しているような例も多々あるそうだ。
――同じオタクでも、我々のようなインドアな評論オタク・物書きオタクたちとはちょっと人種が違っているかもしれないが(笑)――


 少子化の時代とはいえメインターゲットとなる数百万人もの子供層と比較すれば、彼らの数は2桁ほども小さいので、変身前の若手役者の欠如自体は作品にとっては致命的な欠陥でもないのだろう。
 しかし、こうしたイベント興行や役者人気のことまで考慮すれば、大きなお友達の購買意欲やイベント参加意欲には少々の影響はありそうなので、女性マニア向けの書籍や映像ソフトなり映画やイベントなどの興行などには微量に影響を及ぼすのではなかろうか?


 もちろん、そういった周辺イベントへの考慮以上に、『キラメイジャー』で主人公・キラメイレッドこと熱田充瑠(あつた・じゅうる)を演じた小宮瑠央(こみや・りお)が、放映開始からほどなくして軽度で済んだとはいえコロナウィルスに感染したことなどから、撮影中断のリスクを考慮して顔が見えないことで代役を立てることが比較的には容易であるからという理由で、複数の着ぐるみキャラを戦隊メンバーに据えてみせた可能性も高いだろう。
――後日付記:本作を担当している東映の白倉伸一郎プロデューサーによれば、戦隊メンバーが着ぐるみキャラとなったことはコロナ対策ではなかったとのことだそうだが…… ホントウだろうか?(笑)――


主人公の祖母を演じる榊原郁恵は、第3次怪獣ブーム期であった70年代末期の特撮変身ヒロインだ!?


 今回の劇場版には登場しなかったが、本作『ゼンカイジャー』のトピックのひとつは、主人公・介人の祖母役として、有名タレントである榊原郁恵(さかきばら・いくえ)がレギュラー出演を果たしたことだ。
 おそらく彼女のギャラは高いだろう。それによって、彼らがいくら安月給だとはいえ(爆)若手役者をキャスティングする予算さえも捻出できなくなってしまったのだろうか?(笑)
――むろん冗談であり、この手の特撮変身ヒーロー作品は玩具コンセプトが先にありきの番組なので、玩具売上には直接に結びつかない榊原郁恵のキャスティングがまずありきで、それゆえに戦隊メンバーの方を過去の戦隊巨大ロボもどきにせざるをえなかった……などといった処置もまたアリエないのであった――


 ちなみに、元祖『秘密戦隊ゴレンジャー』世代のご同輩であれば自明のことだろうが、榊原は同作の2年目が放映されていた1976年にCMや映画の端役(はやく)などで出演したあとに77年にアイドル歌手としてデビューした。
 我々的には狂乱の第3次怪獣ブーム真っ最中であった78年の熱い夏に『夏のお嬢さん』が大ヒットを飛ばしていた記憶とともにあるだろう。


 やはり当時の大人気アイドル・大場久美子とともにダブル主演を果たしたドラマ形式の30分枠バラエティ番組『マジカル7(セブン)大冒険』(78年・TBS)では、第3次怪獣ブームに便乗してウルトラマンジャック(『帰ってきたウルトラマン』)やウルトラマンタロウとも競演した経歴を持っているのだ(笑)。
 同枠の後番組でも大場久美子とダブル主演で『少女探偵スーパーW(ダブル)』(79年・TBS)にも連続出演を果たしており、同作では顔出しだが宇宙人だという設定で、赤半袖・赤ホットパンツ・赤ブーツ姿の健康的な変身ヒロインも演じていたので、そうした変身ヒーロー文脈の傍流としても彼女の存在を捉えることができるだろう。



 一応の危惧をイチャモン芸的に語ってみせたが、そうは云いながらも、本作を「お試し視聴」してみて、戦隊チームから人間の俳優が演じるキャラクターを主演のひとりだけにしたことによる、特撮変身ヒーローものとしての違和感や作劇面での弊害(へいがい)などは、実は個人的には皆無(かいむ)に近かったりもしたものだ(笑)。
 この大胆にすぎる試みが果たして吉と出るのか凶と出るのか、それは子供たちやマニア諸氏の反響次第なのだが、「メモリアル作品」であるだけに、作品それ自体のみならず、作品をめぐっての周辺状況や受け手の各層のさまざまなリアクションなども観察していきたいところだ。


スーパー戦隊シリーズ歴代の敵幹部たちが大挙復活のカタルシス! そして、その功罪とは!?


 さて、『ゼンカイジャー』のレギュラー悪はすべての「並行世界」を消し去ろうとしている「トジテンド王朝」なる軍団である。
 この作品では歴代レッドが全員集合する一応の大作風味の劇場版のゲスト敵怪人としてはまことにふさわしい、『ゴレンジャー』の敵組織・黒十字軍の首領であった黒十字総統の姿のごとく顔の周囲には大きな黒い十字型の突起がそびえており、その全身にはこれまでの悪の組織の幹部たちを象徴するパーツがゴテゴテと飾られている最強怪人・スーパー悪者(わるもの)ワルドが登場していた。
――これまた確信犯でのB級なネーミングで、80年代の戦隊マニアたちはそういうセンスをイヤがっていたものだが、今となってはそれもまたイイ意味でキッチュ(通俗的)でチャイルディッシュなスーパー戦隊作品らしくて実にイイのだ!(笑)――


 このスーパー悪者ワルド怪人の呪術的なパワーによって、


・『海賊戦隊ゴーカイジャー』(11年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20111107/p1)でゴーカイジャーと「宇宙最大のお宝」の争奪戦を展開した宇宙海賊のバスコ・タ・ジョロキア!
・『快盗戦隊ルパンレンジャーVS(ブイエス)警察戦隊パトレンジャー』(18年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190402/p1)の敵組織・ギャングラーの幹部怪人で、ルパンレンジャーの家族や友人たちを氷づけにした因縁の宿敵として描かれていたザミーゴ・デルマ!
・『手裏剣戦隊ニンニンジャー』(15年)の敵組織・牙鬼軍団の小姓(こしょう)で十六夜九衛門(いざよい・きゅうえもん)!
・『動物戦隊ジュウオウジャー』(16年)に登場した巨獣ハンター・バングレイ!


などなど、これまでの歴代シリーズにレギュラーやセミレギュラーとして登場してきた幹部クラスの敵怪人たちが次々と人間の世界に現れるのだ!


 クライマックスでは、


・『秘密戦隊ゴレンジャー』(75年)のゲスト怪人・野球仮面!
・『超電子バイオマン』(84年)のバイオハンター・シルバ!
・『轟轟戦隊ボウケンジャー』(06年)の敵幹部・闇のヤイバ!
・『天装戦隊ゴセイジャー』(10年)の敵幹部・ビッグフットの筋(きん)グゴン!
・『海賊戦隊ゴーカイジャー』(11年)の敵幹部・ダマラス!
・『烈車(れっしゃ)戦隊トッキュウジャー』(14年)の敵幹部・シュバルツ将軍!
・『手裏剣戦隊ニンニンジャー』(15年)の敵幹部・蛾眉雷蔵(がび・らいぞう)!
・『動物戦隊ジュウオウジャー』(16年)の敵幹部・クバル!
・『宇宙戦隊キュウレンジャー』(17年)の敵幹部・エリードロン!
・『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』(18年)の敵幹部デストラ・マッジョ!


といった、着ぐるみがまだ残存していた分であろう、ここ10年ほどの歴代戦隊の敵幹部までもが姿を見せてくれるのだ!――野球仮面だけは幹部怪人ではないけれど、出オチ怪人としてはナイスなセレクトだ!(笑)――


 敵戦闘員に至っては、『電撃戦隊チェンジマン』(85年)以降のスーパー戦隊のすべてと云わず、ほとんどの作品の戦闘員が姿を見せてくれていた!(感激)


 野球仮面とシルバは、今から10年前のメモリアルイヤーに製作された映画『仮面ライダー×スーパー戦隊 スーパーヒーロー大戦』(12年・東映・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20201115/p1)の際に新規に造形され直した着ぐるみのリサイクルだろうが、着ぐるみが残存しているのであれば、やはりこういった機会にこそ再登場してほしいではないか!?


 こういった趣向をマニアしか知らない内輪ウケだとツッコミされてしまうと、たしかにそのとおりではあるのだ。そして、それゆえの危険性もたしかにあるのだ。
 しかし、そうは云っても劇場にいる観客の中に占めるマニアの比率も20世紀の「東映まんがまつり」や「東映ヒーローフェア」のむかしに恥を忍んで観に行って、ファミリー層の観客の中では大きなお友達がひとりしかいなかった(爆)ような不遇の時代と比べれば桁違いには増えており、商業的にもまぁまぁ無視はできない比率に達していることだろう。


 怪獣博士やマニア予備軍気質のある子供たちも相応にはいるのだし、やはり彼らに歴代シリーズにも関心を持ってもらい、大きくなっても卒業せずに各種アイテムで散財してもらって、いずれはバンダイのプレミアム高額商品を購入してもらうためにも、こうした趣向は有効であるハズだ(笑)。
 もちろん子供であっても、数年前の作品であれば敵幹部や敵戦闘員のビジュアルは憶えているだろうし、子供なりに懐かしく思うものだろう。やはり歴代シリーズの名悪役たちが再登場してこその「メモリアル作品」でもあるのだ!


 個人的には役者が人間態を演じていたバスコとザミーゴが再登場した際が最も盛り上がった。
 特にバスコは相棒だった着ぐるみマスコットの宇宙猿サリーを先に登場させて、バスコの背後や足下をとらえたカットで、世代人やマニア層の観客の期待感を高めていく演出が実に効果的に発揮されており、筆者が女子ならばバスコが表情を見せた瞬間にスクリーンに向かって黄色い歓声を上げたいところだった(笑)。


 また、バスコとザミーゴは衣装がともに西部劇調で、ツバが広いテンガロンハットにポンチョスタイルでありながらその色は、敵に対しても妙にフレンドリーな表情と語り口を見せるバスコが赤、めっちゃ冷淡で無愛想なザミーゴが青と、似て非なるキャラクターの違いを対比的に見せていたのも実によかったものだ。


ゲスト敵怪人・スーパー悪者ワルドの必殺ワザの名称が声優の演技ともどもイカレまくっていた!(笑)


 ゼンカイジャーはスーパー悪者ワルドに苦戦を強(し)いられる。


 そのスーパー悪者ワルドが悪の必殺ワザとして放ったのが「イーヅカリバー!」


 ……って、このワザ名は、『ゴレンジャー』の2代目敵幹部・鉄人仮面テムジン将軍や4代目敵幹部・ゴールデン仮面大将軍、『バトルフィーバーJ(ジェイ)』(79年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20120130/p1)の敵首領・サタンエゴス、『電子戦隊デンジマン』(80年)のほとんど全話のゲスト敵怪人(爆)、『太陽戦隊サンバルカン』(81年)の敵首領・ヘルサターン総統をはじめ、『天装戦隊ゴセイジャー』(10年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20130121/p1)第1クールの敵首領である大王モンス・ドレイクに至るまで、数多くの「悪者」の声を演じてきた飯塚昭三(いいづか・しょうぞう)の名前からの引用だよな(笑)。


 そればかりか、「ソガニックビーム!」などと叫ぶや、年長マニア層には聞き覚えのある女性の高笑いとともに光線が発射されるという必殺ワザもあった!
 こちらも、『電子戦隊デンジマン』(80年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20120205/p1)と『太陽戦隊サンバルカン』(81年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20120206/p1)に連続して登場したヘドリアン女王や、『恐竜戦隊ジュウレンジャー』(92年)の魔女バンドーラを演じた故・曽我町子(そが・まちこ)の名前からの引用だろう。というか、あの特徴的な高笑いの音声そのものが……(爆)


 スーパー悪者ワルドの声優を務めた関智一(せき・ともかず)は、本作では明らかに先述した飯塚氏の名調子を意識して演じている。悪者ワルドによる数々の敵首領の名前や敵組織名を織り込んだ言葉遊び的なセリフも脚本上にすべての記述がなかったのであれば、その一部は氏の当意即妙なアドリブであった可能性が高い(笑)。大の特撮好きであるどころか実に濃ゆい特撮オタクとしても知られる氏ならではの、歴代戦隊や先人の声優や悪役俳優たちに対するリスペクトたっぷりでユカイ極まりない演技もまた好印象であった。


ゼンカイザーが劇場版限定アイテムで反撃開始! 銃型変身アイテムを通じた特撮評論の今昔!


 ゼンカイザー=介人は幼いころに両親からもらった、赤い歯車型で歴代戦隊レッド多数が描かれている歯車状のアイテム・センタイギアを使って、スーパー悪者ワルドに対抗しようとする。
 その介人の両親の名前が「功(いさお)」と「美都子(みつこ)」!! ……って、これまた『ゴレンジャー』の主題歌『進め! ゴレンジャー』などを歌唱した、70年代のアニメ・特撮ソングの2大レジェンドである、ささきいさおと堀江美都子(ほりえ・みつこ)の下の名前からパクっていた!(笑)


 ところで、そういう目線で見てみると、介人を演じる駒木根葵汰(こまぎね・きいた)の髪型や顔の輪郭(りんかく)、太い眉(まゆ)に目つきなどは、ロカビリー歌手から俳優へと転向しようとしていた1960年代後半当時の若き日のささきいさおに似ている気がしてくるのだ(笑)。
――当時の氏は、特撮時代劇『妖術武芸帳』(69年・東映 TBS)の主演をはじめ、『怪奇大作戦』(68年・円谷プロ TBS)第14話『オヤスミナサイ』、『恐怖劇場アンバランス』(73年 製作は69~70年・円谷プロ フジテレビ)最終回(第13話)『蜘蛛(くも)の女』などのジャンル作品にも「佐々木功(ささき・いさお)」の名義で出演して、俳優への転身を図っていた。
 もちろんその後、アニメ歌手に転向する直前には、スーパー戦隊作品の元祖だともいえるタツノコプロ製作の大人気アニメ『科学忍者隊ガッチャマン』(72年)のニヒルで喧嘩っ早い副リーダーこと「コンドルのジョー」の声優も務めており、同作での名演も忘れてはイケナイ!――



 介人は「大事なものだから……」とお財布(さいふ)に入れていたセンタイギアを取り出した!
――宙に浮いたお財布からセンタイギアが飛び出してくる映像では、同時に周囲に散らばっていくおカネがCG表現による5円玉&1円玉の小銭ばかりとなっており、カッコよさと同時にここでも観客の笑いを誘っている(笑)――


 そして、そのセンタイギアを攻撃用の銃と変身アイテムを兼ねているギアトリンガーの上部のフタの中に弾倉のように格納する!
――銃口の上部にも、介人の両親がつくった小鳥型のマスコットメカ・セッちゃんにも似た黄色いクチバシの赤い鳥の顔がデザインされているのにも要注目だ!――


 さらに、ギアトリンガーの右側面にある取っ手つきのハンドルをグルグルと回し出す!


 近年の特撮ヒーローの変身アイテムには必ずこういうアナログな可動部分がついている。リアルであるか否かSF的であるか否かといったら、それらとは相反するものではあるけれど、やはり子供でもあるいは大きなお友達でも可動部分があると動かして遊んでみたくなるものではないか!?(笑)
 こういった人情の機微を玩具業界では「プレイバリュー」という概念で総称するようにもなった。特撮マニア諸氏もその観点から変身アイテムの良否を評価するようになって久しいのだ。
――実は20世紀の特撮オタクたちは、こういった玩具的な要素をガチで「子供っぽい」だの「幼稚」だの「商業主義」だのとボロカスに罵倒して、全否定的に批判をしていたのだ(爆)――


歴代の戦隊レッドが全員集合! 全員が名乗りを上げるべきだったのか!? 「間」と「テンポ」の重要性!


 ハンドルをグルグルと回してエネルギーの充填が終わるや、第1作『秘密戦隊ゴレンジャー』~第44作『魔進戦隊キラメイジャー』に至るまでの歴代「45大レッド戦士」(!!)が、ギアトリンガーを通じてセンタイギアから飛び出してきて、ゼンカイジャーの眼前に大集結を果たした!!
――第42作『ルパンレンジャーVSパトレンジャー』はきちんとルパンレッドとパトレン1号が2大レッド扱いで登場してくれているので、44大戦隊でも総勢45人となっていたのだ!(感涙)――


 アカレンジャー~キラメイレッドに至る歴代レッドが次々に名乗りをキメて、そこに登場作品のタイトルロゴがデジタル合成でかぶっていく!
 先述したセッちゃんがナレーション形式でその作品名を早口で読みあげていく演出には、古い世代の特撮マニアや子供たちのみならず、一般層の親たちも自身がかつて視聴していた作品が一瞬脳裏(のうり)によみがえるほどに感無量だったことだろう!


 ……と思いきや、 歴代レッドの人数が多すぎるので、次第に4分割・16分割画面になっていく。そして、そのすべてを読みあげずに「以下略!」ってなんやねん!?(笑)


 前作の『キラメイジャー エピソードZERO』の尺は約30分だったが、本作『赤い戦い! オール戦隊大集会!!』はそれよりかは数分程度は短かかったようだ――後日付記:27分枠となっていた――。
 本作と同時上映であった『キラメイジャー THE MOVIE』が約40分、『リュウソウジャー 特別編』が約15分であり、トータルで約1時間20分程度の尺数は、小学生はともかく幼児が集中力を持続することができるギリギリの時間だろうから、ちょうどイイところだろう。


 もちろん、「メモリアル作品」の劇場版としての観点からすれば、45作品をかぞえるスーパー戦隊の壮大な歴史を占めている、シリーズ中後盤の作品群についてを「以下略」にしてしまったのは惜しい。
 こういう場面でこそ、子供たちを啓蒙(けいもう)できるのだし、今の若いパパ・ママ層にも彼らが子供時代に観ていればシリーズ中期のスーパー戦隊のレッドが画面で名乗りを上げれば、その場面では懐かしがってもらえる有効なシーンともなりうるからだ。


 とはいえ、映像作品というものは、仮に脚本がまったくの同一内容であったとしても、「間(ま)」とか「テンポ」といったものの扱い・演出で、その仕上がりは天と地ほどの差が出てしまうものなのだし、実はそこで傑作か駄作かといった相違も発生してしまうものなのだ。


 全スーパー戦隊を紹介することの効能など、スタッフの全員がわかっていたことでもあろうし、しかし全スーパー戦隊を紹介することで「間延び」して「ダレて」しまったことで、そこで観客や子供たちの集中力も途切れてしまって、作品の流れも寸断されてしまい、ラストバトルも盛り上がらないとなってしまっては元も子もないのである。
――往年のビデオ販売作品『百獣戦隊ガオレンジャーVS(たい)スーパー戦隊』(01年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20011102/p1)もトータルでは傑作ではあったものの、高額なビデオソフトを購入できる年長マニア向けの趣向であったとはいえ、中盤では往年の戦隊ヒロインたちの名場面を延々と流してしまったことで「間延び」してしまっていたものだ――


 歴代レッド個々人の連続名乗りを観たい方々は、『百獣戦隊ガオレンジャーVSスーパー戦隊』で口直しをしよう!(笑)――やはり同作における25人連続名乗りくらいが限界だろう(汗)―― しかしその上で、作品自体のテンポとも調整しつつ、4分割画面のままで次第に早口になっていき、各戦隊が戦隊名ヌキでのレンジャー名だけの1~2秒程度の照会になってもイイので(笑)、全スーパー戦隊を紹介してほしかったという気持ちもやはり残るのだ。


歴代レッドのバトル増量、先代&先々代レッドからのバトンタッチ希望も、スタッフ想定内の要望か!?


 いつもの採石場いっぱいに展開されるクライマックスバトルでは、


・ゼンカイジャーVSスーパー悪者ワルド
・45大レッド戦士VS悪者大軍団


双方のバトルが並行しているハズなのだが、実はコレもゼンカイジャーVSスーパー悪者ワルドの最終決戦ばかりが映し出されるのみであった。
 そして、ゼンカイジャーが勝利するや、同時に「45大レッド戦士」によって倒されたらしい悪者たちも瞬時に消滅するといった演出になっており(笑)、「45大レッド戦士」のまともなバトルアクションは全然描かれることはなかった(汗)。
――おそらく多少は撮影されたものの、尺やテンポの都合でカットされたのだとも思われる…… いや、本作もまた突貫工事での製作だっただろうし、敵味方も含めれば総勢100名前後はいるであろう撮影なので、スーツアクターやスーツの脱着を手伝う補助スタッフへのギャラやロケ地への人員&着ぐるみスーツを運搬する複数車両のバスやトラックなどのレンタル費用や弁当代などの総額を考えれば1日だけしか拘束できなかっただろうから(2日にわたれば諸経費も2倍になるのだし・汗)、まともなバトルアクションの撮影自体がなされていなかったりして(笑)――


 なので、『ゼンカイジャー』の「お試し視聴」としてならば申し分ない出来だと思う。しかし、『赤い戦い! オール戦隊大集会!!』と名づけられた「メモリアル作品」としてはやや充実感には欠けていたかもしれない。


 突貫製作のウラ事情をも忖度(そんたく・笑)ができてしまう大きなお友達としては、それらは45歩ほど(笑)は譲ってもよいだろう。
 しかし、同時上映作品のスーパー戦隊のメンバーになることが事前にわかっていたのだから、各作での主役を張っていたキラメイレッドとリュウソウレッドにはご本人たちに声をアテてもらって、一言や二言くらいはゼンカイザー=介人に先輩としてのアドバイスやバトンタッチを与えるようなシーンも観てみたかったとも思うのだ――それとも、そういうシーンも存在はしていたけど、これもまた尺の都合でカットされたのかもしれないなぁ(汗)――。


 本作も含めた3本立て映画『スーパー戦隊MOVIEレンジャー2021(ニイゼロニイイチ)』(21年)の短いプロローグとして配された、キラメイレッド・リュウソウレッド・ゼンカイザーの3大レッドによる観客へのごあいさつでは、テレビシリーズに先駆けてこの映画で最速デビューを果たすことになったゼンカイザーに対して、キラメイレッドとリュウソウレッドが「君だれ~?」などとたずねる描写があった。やはりコレと係り結びとなるような場面を、本作『ゼンカイジャー THE MOVIE』の中でも観てみたかったと思うのだ。
 リュウソウレッドやキラメイレッドのちょっとした「声の出演」だけでも、予算や契約やスケジュールなどに影響してくるのだろうから大変なこともあるのだろう。しかし、「顔出し出演」した場合のギャラと比べればはるかに少額ではあるのだし、そういうところでもう一押しだけがんばってほしかった気はする。


 とはいえ、『スーパー戦隊MOVIEレンジャー2021』のような「3本立て」映画の理想的なつくり方は、2000年代末~2010年代前半に新旧2大仮面ライダーが共演する「正月映画」として公開されていた『仮面ライダー×仮面ライダー MOVIE大戦(たいせん)』シリーズ(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20101220/p1)のような3部構成だったのかもしれない。
 たとえば、『キラメイジャー』と『リュウソウジャー』各々(おのおの)の世界での物語を描いたあとに、『ゼンカイジャー』の世界に一時的に2大戦隊世界が融合してしまったり、2大戦隊のメンバーが『ゼンカイジャー』の世界に召喚されてくる、といったような作劇とするのだ。


 しかしこれもまた、アニメ作品であれば声優たちを遠方のロケ地ではなく都内の録音スタジオに集めたり、あるいはスケジュールの都合で全員集合ができなくても後日に「別録り」すれば済むだけなのだけど、他にも仕事を持っている場合もあるであろう3大戦隊のナマ身の役者さんたちを全員集合させるようなスケジュール調整は実に困難を極めることだろうし、そのために要するギャラも、低予算作品である東映変身ヒーローものではバカにはならないハズなのだ。


 ここまで述べてきたような我々アマチュアでも思いつくようなクレームは、プロのスタッフたちであればすでに想定していたことでもあるだろう。シナリオなり準備稿なり初期構想などではこれらの要素は満たされていた可能性も高いのだ。仮にそれらが満たされていなかったとしても、スタッフ間での会議や雑談などでも当然に議題にされていた可能性は高いだろう。
 しかし、理想としてはそうしたいと思っても、結局は形而下(けいじか)の雑事や些事(さじ)によって、モノづくりは限定されてしまうものなのだ。それが我らの住まう並行世界のひとつである「現実ワールド」(笑)でのキビしい現実なのである(爆)。


 だから、スタッフは限られた所与の条件下で最善を尽くすしかないのだ。「作品批評」の方でもそんなウラ事情に対してもスポットを当てたり忖度をしたりして、その上で作品を解題・批評もしていくべきなのである。


本作ではスーパー戦隊各作が独立した「並行世界」扱いでも、メタ的にはつながっている「歴史」だった!


 クライマックスバトルの直前、


・ゼンカイザーは『秘密戦隊ゴレンジャー』のアカレンジャー
・ゼンカイジュランは『恐竜戦隊ジュウレンジャー』のティラノレンジャー
・ゼンカイガオーンは『百獣戦隊ガオレンジャー』のガオレッド
・ゼンカイマジーヌは『魔法戦隊マジレンジャー』のマジレッド
・ゼンカイブルーンは『轟轟戦隊ボウケンジャー』のボウケンレッド


から、それぞれのスーパー戦隊のパワーを秘めているセンタイギアを授かった。


 そして、ラストシーンでアカレンジャーは変身前の海城剛(かいじょう・つよし)の姿に戻って(!)、ゼンカイジャーに激励のメッセージを贈るのだ!


 これらのシーンで観客が大きな感動に包まれてしまうのは、海城剛を演じた誠直也(まこと・なおや)が久々の客演を果たしてくれたからだけではない!
――氏登場の場面はおそらくロケ地での撮影ではなく、スタジオで撮影したものをデジタル合成したものだろうが、今の時代の技術だと素人目にはもう合成だとはわからないだろう!――


 ゼンカイジャー個々人が、各々のデザインの元ネタとなっている先輩戦隊レッドから、直々にセンタイギアを手渡しされるかたちでバトンタッチされたことで、世界を防衛する任務と正義の熱い魂が継承されたことを、観客たちもビジュアルのかたちでダイレクトに感じ取ってしまうからなのだ!


 ビデオ販売作品『超力(ちょうりき)戦隊オーレンジャー オーレVS(たい)カクレンジャー』(96年)以降、いくつかの例外はあったものの、それまでは各作が独立した世界観だとされてきたスーパー戦隊シリーズが同一世界での出来事であったとされるような大転換を迎えた。
 本作『ゼンカイジャー』ではそれをまた引っ繰り返しており、歴代スーパー戦隊シリーズ個々の作品はまたまた別世界であり、並行宇宙での出来事だとされてしまったのだ。


 しかし、そうは云ってもセンタイギアなる「メダル」のかたちで、あるいは「メダル」から召喚されたとはいえ、ニセモノではなく半ばは本人たちであるとしか云いようがない歴代戦隊レッドたちがお手軽に大量に登場してしまった以上は(笑)、もうこれは幼児が観ようが大きなお友達が観ようが、実質的には本作においても歴代スーパー戦隊シリーズは並行宇宙を越境してメタ的には「番号」(笑)でつながっている壮大な「歴史」なのだということを改めて実感させられる描写になっているのだ。
――80~90年代の戦隊マニアたちは、幼児誌でのカラーグラビア記事での歴代レッド集合写真などではともかく、いくつかの例外を除いて歴代スーパー戦隊が同一世界の出来事ではないとされていることに漠然とした不満を抱えていた(汗)。そんな過去を思い起こしてみると、かつて観たかったスーパー戦隊の在り方がとっくのとうに実現している今はまさに夢のようでもあるのだ!――



 テレビシリーズの『ゼンカイジャー』のメイン監督であり、この劇場版でもメガホンをとった中澤祥次郎(なかざわ・しょうじろう)監督は、意外にもマニア上がりではなかったようだが、10年前のスーパー戦隊シリーズ第35作の「メモリアル作品」として製作された戦隊マニア泣かせの名作『海賊戦隊ゴーカイジャー』のメイン監督でもあった。
 歴代スーパー戦隊シリーズを「一本線の歴史」だとしていた『ゴーカイジャー』とは異なる料理方法が要求されてしまう、歴代戦隊世界を「並行世界」だとして扱う『ゼンカイジャー』ではある。しかし、期待してその料理方法を注視していきたいところだ。

2021.3.5.


(了)
(初出・当該ブログ記事)


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『赤い戦い!オール戦隊大集会!!』 TV本編への誘導もバッチリな快作映画!
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